特許第6649949号(P6649949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6649949組み合わされたシムとボアの冷却アッセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649949
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】組み合わされたシムとボアの冷却アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20200210BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   A61B5/055 332
   A61B5/055ZAA
   G01N24/00 610E
   G01N24/00 610Y
   A61B5/055 360
   G01N24/00 620R
   G01N24/00 620Y
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-513716(P2017-513716)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公表番号】特表2017-532999(P2017-532999A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2015070558
(87)【国際公開番号】WO2016038068
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年9月6日
(31)【優先権主張番号】1416170.7
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1504523.0
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516298515
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Healthcare Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ポール アレイ
(72)【発明者】
【氏名】ニール ジョン ベルトン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ハワード ヘンプステッド
(72)【発明者】
【氏名】マルセル クライプ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ウィリアム レッツ
【審査官】 伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0061202(US,A1)
【文献】 特開平05−220127(JP,A)
【文献】 特開2012−011060(JP,A)
【文献】 特開2008−220923(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103675734(CN,A)
【文献】 特開2009−269694(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0191698(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101334455(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/235448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00 − 24/14
G01R 33/28 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像装置用の円筒状の超伝導磁石の背景磁場をシミングするための装置であって、前記装置は、円筒状の外側真空チャンバ(OVC)ボアチューブを有していて、前記OVCボアチューブは、前記OVCボアチューブの半径方向内側の面上のレール、各レールの間に取り付けられたシムエレメントを含むシムトレイとを有し、前記シムトレイと前記レールは、前記円筒状のOVCボアチューブの周囲にわたって延在しており、前記円筒状のOVCボアチューブの前記半径方向内側の面の周囲に互いに隣接するように、前記シムトレイの複数の配置が前記レールによって保持され、
前記レールは、各シムトレイの各縁部を収容する溝を有しており、
前記装置は、各シムトレイと前記各溝のうちの少なくとも1つとの間に締まり嵌めを有し、
前記レールのうちの少なくともいくつかは、通路を有しており、該通路は、導管によって接続されて、クーラント流体の循環用のクーラント回路を形成しており、
前記レールと前記シムトレイとは、少なくとも部分的に熱伝導材料から構成されていて、互いに、かつ前記OVCボアチューブに熱接触して、前記クーラント流体は、前記OVCボアチューブ、前記シムトレイ、及び前記シムエレメントの温度を安定化させ、
各シムトレイは、底部部分と、前記底部部分に固定される蓋とを有しており、前記蓋は前記レールに熱接触して、前記シムトレイと前記レールが前記OVCボアチューブの熱シールドを形成する、
シミングするための装置。
【請求項2】
前記シムトレイは、前記レールの長さに沿って摺動するように取り付けられ、前記装置は、前記シムトレイを前記レールの長さに沿った所望の位置に保持する固定装置を有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの前記シムトレイは、強磁性材料又は常磁性材料を有している、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
シムトレイはそれぞれの縁部を有し、各縁部が横方向リップを有しており、前記溝が前記横方向リップにより前記シムトレイを保持する、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記レールのうちの少なくとも1つは、強磁性材料又は常磁性材料を有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記クーラント回路はクーラを有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記クーラント回路はサーキュレータを有している、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記各レールはそれぞれ内部に溝を有しており、該溝はそれぞれ、2つの隣接するシムトレイのそれぞれの各縁部を保持している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記各レールはそれぞれ内部に溝を有しており、該溝はそれぞれ、2つの隣接するシムトレイのそれぞれの各横方向リップを保持している、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記底部部分と前記蓋とは互いに熱接触して、前記底部部分も前記レールと熱接触する、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
磁気共鳴画像(MRI)装置では、背景磁場の均一性及び安定性は、測定の品質に大きく関わるものである。背景磁場の均一性を改善するためにパッシブシムを使用することができ、このパッシブシムは、イメージング領域の近くに配置された良好な磁気特性を有する鋼片であるシムエレメントを含む。シムエレメントは磁化され、背景磁場を歪ませる。シムは、生じた歪みが、背景磁場をより均一にさせるように配置される。
【0002】
MRI装置用の超伝導磁石は、一般的に円筒状の形状であり、円筒状のクライオスタット内に収容されている。円筒状のクライオスタットは外側真空チャンバ(OVC)を有しており、この外側真空チャンバには、イメージング領域を取り囲む円筒状のボアチューブが設けられている。外側真空チャンバボアチューブ及びシムにおける温度の上昇は、材料の透磁性の変化により、磁気共鳴画像装置内の磁場のドリフトを引き起こす恐れがあることが知られている。このような温度の上昇は、OVCボアチューブ内に収容された、MRIシステムによるイメージングに必要な振動磁場を発生させる勾配磁場コイルによって引き起こされる場合がある。勾配コイル自体は作動中に発熱し、その振動磁場は、シムやOVCボアチューブなどの近くの伝導面に電流を誘導し、これらの表面は加熱される。
【0003】
以下に本発明を、好適な実施形態に基づき図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】ボアチューブの内側のレール上に取り付けられた例示的なシムトレイを有する外側真空チャンバボアチューブを切り取って示す3次元的な図である。
図2】円筒状のOVCボアチューブの周囲にわたって互いに隣接して位置している、通路内のシムトレイの複数の配置を示す、図1と同様の装置の図である。
図3】冷却流体を含む通路システムを上方から見た図を含む、図2の装置を別の視点から示した図である。
図4】本発明の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図5】本発明の別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図6】本発明のさらに別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図7】本発明のさらに別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図8】本発明のさらに別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図9】本発明のさらに別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
図10】本発明のさらに別の実施形態で使用可能な通路と導管の配置を極めて概略的に示した図である。
【0005】
本発明の課題は、イメージング中、シムとOVCボアチューブの温度を安定化させることにある。従って、本発明は、独立請求項に規定された装置を提供する。従属請求項には好適な実施形態が示されている。
【0006】
以下の説明では主に「冷却」と言われるが、本発明は温度の安定化に適用される。例えば、以下に記載される「冷却流体」及び「クーラント」は、装置のある部分を加熱し、別の部分を冷却するように作用してよく、これにより全体の温度を安定化させるように作用することができる。
【0007】
磁気共鳴画像装置の磁場をシミングするための装置が提案されており、この装置は外側真空チャンバボアチューブを有しており、シムエレメントを含むシムトレイが設けられていて、シムトレイはレール上に取り付けられていて、レール自体は外側真空チャンバボアチューブに取り付けられており、シムトレイはレールに沿って摺動することができ、このレール内には冷却流体を含む通路システムが少なくとも部分的に配置されている。
【0008】
シムトレイにより、シムエレメントをコンパクトに固定することができる。このことは、シムエレメントには磁場により生じる高い力が加えられるので、適切である。
【0009】
シムトレイとレールとを少なくとも部分的に熱伝導性材料から形成することにより、冷却流体は、OVCボアチューブ、シムトレイ、及びシムエレメントを冷却するように作用する。
【0010】
レールのうちの少なくともいくつかに、冷却流体を含む通路システムを配置することにより、冷却流体を含む通路システムの間に直接的かつ良好な熱接触が可能となるので、熱はシムエレメントからシムトレイとレールとを通って、通路システム内の冷却流体へと極めて効果的に伝達されることができる。さらに、外側真空チャンバボアチューブの冷却も、冷却流体を含む通路システムのこのような配置によって達成される。
【0011】
通路内のシムトレイの複数の配置が、円筒状のOVCボアチューブの周囲にわたって互いに隣接して位置していてよい。冷却されたシムトレイは、今度は、勾配コイルアッセンブリから放出される放射熱からOVCボアチューブを保護する熱シールドとしても作用することができる。シムエレメントと、可能であればシムトレイも導電性であり、OVCボアチューブを、勾配コイルアッセンブリによって発生する振動磁場に対してシールドすることもできる。従って、このようなシムトレイアッセンブリは、外側真空チャンバボアチューブの温度をさらに安定化させることができる。
【0012】
好適な冷却流体は水である。水は、室温付近の温度で高い比熱を有し、無毒で、安価であり、容易に入手可能である。別の冷却流体も使用することができる。
【0013】
レールは好適には、OVCボアチューブの対称軸と整列していて、レールに沿ったシムトレイ位置の調節を可能にしており、これによりシムトレイにおけるシムエレメントのシミング作用を調節することができる。レール及び/又は少なくとも1つのシムトレイのうち少なくとも一方は、シミング作用をさらに向上させるように、少なくとも部分的に強磁性材料から製作することができる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、シムトレイは、底部部分と、底部部分に固定される蓋とを有している。このような装置により、シムエレメントを、これらシムエレメントに大きな力が安全に作用することができるようにシムトレイ内に配置することができる。底部部分と蓋とは、両方ともレールに熱接触していなければならない。このことは、底部部分と蓋とを互いに熱接触するように配置し、底部部分及び蓋の一方又は他方が例えば締まり嵌めによってレールに熱接触していることにより、達成することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、シムトレイは立方体形状である。利用可能なシムエレメントは、通常、鋼板の薄い長方形の片である。このようなエレメントは、スペース的に有利な形式で立方体状のトレイ内に配置することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態では、レールは溝を有しており、これによりシムトレイはレールの溝に沿って摺動することができる。溝を備えたレールは極めて良好なガイドを提供する。溝とシムトレイを適切に形作ることにより、レールとシムトレイとの間の効果的な熱接触を保証することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、シムトレイ及び/又はレールは、シムエレメントのシミング作用に加えて付加的にシミング作用を有している。このことは通常、シムトレイ及び/又はレールのために少なくとも部分的に強磁性材料又は常磁性材料を使用することにより達成される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、シムトレイの位置を、大きな範囲の磁場の不均一性をシムすることができるように調節することができる。これを実現する方法は、上述したようなレールと、シムトレイをこのレールの長さに沿った所望の位置に保持するための適切な固定装置を伴う。
【0019】
本発明の別の実施形態では、冷却流体は、レール内の通路システムを通って流れることができ、クーラを通って流れることにより冷却されることができる。クーラ内で、冷却流体に伝達された熱は取り出され、散逸される。冷却流体は冷却され、通路システムへと再び供給することができる。多くの場合、クーラは、その中で冷却流体の熱が別の流体に移されるか又は周囲に移される冷却器である。
【0020】
本発明の別の実施形態では、冷却流体の熱質量は、シム、シムトレイ、及び外側真空チャンバボアチューブの温度を本質的に安定化させるために十分である。このようにして、シムエレメントの温度は安定化させられる。この場合、上述したようなクーラは必要ない。クーラ内で冷却流体を冷却するというアプローチと、多量の熱質量を提供するというアプローチの、2つのアプローチを組み合わせることができる。多量の熱質量を提供するためには、適切な冷却流体、通常は水を使用すべきである。さらに、冷却システムは、十分大きな熱容量を提供するために十分な大きさを有していなければならない。冷却流体用の外部のリザーバにより、冷却流体の熱質量を増大させることもできる。多量の熱質量の利点は、自己安定的な機構であり、従って、単純な制御しか必要ではなく、又は制御は全く必要ではない。
【0021】
通路システムのサイズが十分に大きい場合には、冷却流体の循環が必要ない場合もある。クーラント回路は、クーラントの循環が、サーモサイフォンとして公知のメカニズムで、クーラント流体の熱膨張及び熱収縮によってゆっくり駆動されるように、配置されてもよい。
【0022】
図1には、外側真空チャンバボアチューブ1の一部が示されている。外側真空チャンバボアチューブ1の半径方向内側の円筒面には、シムトレイ4が取り付けられている。シムトレイ4は、蓋なしで図示されているので、シムトレイ内にシムエレメント10を収容するために設けられたシムポケットを見ることができる。しかしながら使用中は、シムポケットを閉鎖するために通常、蓋が設けられる。シムエレメントが他の形式でシムトレイに固定されている場合には、蓋を省くこともできる。
【0023】
OVCボアチューブ1の半径方向内側の面に固定されたレール8,9が見えている。OVCは真空密でなければならないので、レール8,9は好適には、ろう接や接着接合のように、OVCに穴をあける必要がない手段により取り付けられる。シムトレイは、横方向リップ11を有していて、このリップ11はレール8,9に設けられた対応する溝12内に位置している。好適には、効率的な熱接触を提供するためにリップ11とレール8,9との間では締まり嵌めがなされている。レール8,9はそれぞれ少なくとも1つの流体通路13を有している。この流体通路13は、概略的に図示したようにチューブエレメント13であってもよいし、又はレール自体の特徴として形成されてもよい。好適にはレール8,9は、金属又はその他の熱伝導材料の機械加工又は押出成形により、流体通路を含むように形成される。流体通路は適切な導管14によって互いに接続され、冷却流体の循環用の1つ以上の回路を形成する。
【0024】
レール8,9とシムトレイ4とは、少なくとも部分的に、熱伝導材料から構成されていなければならず、シムエレメント及びOVCボアチューブから冷却流体への熱の効果的な伝達を保証するために、シムエレメント10はシムトレイと熱接触していなくてはならない。
【0025】
シムトレイ4をレール8,9によって保持することにより、レールの長さに沿ってシムトレイを動かすことができる。シムトレイの移動により、シムエレメント10の位置とシム効果とを調節することができる。選択した位置に各シムトレイを保持するための機構が設けられなければならない。
【0026】
各レール8,9内の通路13は導管14によって互いに接続され、冷却流体の循環用の少なくとも1つの回路を画定している。図2に示した配置では、円筒状のOVCボアチューブは、図示しやすくするために平面的に示されている。各レール8,9は溝12を有しており、この溝12は、隣接する2つのシムトレイ4のそれぞれの各横方向リップ11を保持している。図示したシムトレイはそれぞれ、機械的に互いに接続された底部16と蓋18とを有している。代替的に、より深い溝12が各レールに設けられてもよく、シムトレイの縁部を収容してもよい。好適には、底部16と蓋18とは両方とも熱伝導性であり、互いに熱接触している。図2に示したような装置では、円筒状のOVCボアチューブ1全体に、シムトレイ4及びレール8,9が並べられてよく、好適には並べられており、上述したように、OVCボアチューブ1用の熱シールドを形成する。
【0027】
シムトレイ4、レール8,9、及び外側真空チャンバボアチューブ1は全て、少なくとも部分的に熱伝導性材料又は熱伝導性複合材料から形成されている。これは、レール8,9内に配置された、冷却流体を含む通路システムに対して熱接触を可能にするために必要である。
【0028】
図3には、OVCボアチューブの軸線から半径方向外側を見た場合の、図2の配置を異なる視点から見た図が示されている。従って、OVCボアチューブ1の面は平面的に示されている。図示したように、好適には、導管14は、OVCボアチューブ1の軸方向端部を越えて突出しない。シムトレイ4は、OVCボアチューブ1の半径方向内側面のまわりに設けられており、図1を参照して説明したようにそれぞれ一対のレール8,9の間に位置している。
【0029】
クーラント回路20は、導管14と、レール8,9内の通路13とを有している。別の導管22は、ポンプ24、又はクーラント流体を回路20内で循環させる他のサーキュレータに、レール8,9を接続することによりクーラント回路を閉じている。付加的なタンク又はクーラ26は、回路内で再循環させるための冷却流体を提供する。クーラントの温度上昇を制限するために多量のクーラントを供給することができ、かつ/又は、アクティブ又はパッシブな冷却装置を設けることができる。
【0030】
サーキュレータ24を必要とせず、クーラント流体の循環が、サーモサイフォンとして公知のメカニズムで、加熱及び冷却の際のクーラント流体の膨張と収縮によってのみ駆動されるように、導管14及び別の導管22を配置することができることがわかるだろう。
【0031】
いくつかの実施形態では、いくつかのレール8,9には通路13が設けられていなくてよく、かつ/又はレール8,9はクーラント回路20の外に設けられていてよい。
【0032】
図1図3には、全ての通路が直列に接続されている単純な配置形式が示されている。導管14は、隣接するレール8,9の通路13の隣接する端部を互いに接続して1つの直列接続を形成しており、この直列接続は次いで、別の導管22によって、ポンプ24と、設けられているならばクーラ26とに接続される。
【0033】
通路13を互いに接続して1つの冷却回路とするために、別のより複雑な配置が設けられてよく、このような配置のいくつかの好適な例が図4図10を参照して以下に説明される。図4図10にはそれぞれ、極めて概略的に、上述したような通路13と導管14の配置が示されている。図4図10に示された隣接する通路13の各対は、図1に示したようなシムトレイ装置を示している。図面は、図2及び図3の場合と同様に、「平面的に」示されているので、この図面は、OVCボアチューブの軸線から外側を見た、その軸を中心に回転させたようなものである。軸線(Z)方向と周(R)方向とが、TDC及びBDC、及びサイドの位置に沿って図示されている。冷却流体用の入口と出口とは、適切な矢印のシンボルにより示されている。
【0034】
選択された導管の配置は好適には、以下の特徴のうちのできるだけ多くを提供する。
−OVCボア温度の安定化に効果的である。
−必要なマニフォルドの複雑性を最低限にする。
−全ての導管接続部が、OVCボアチューブの一方の軸方向端部に配置され、好適には、勾配コイル電気接続部の位置に対して対向する軸方向端部に配置される。
−流れの受動的制御が提供される。
【0035】
以下の説明で、「上死点」又は「TDC」とは、OVCボアチューブの全周の最も上方の位置を示している。同様に、「下死点」又は「BDC」とは、OVCボアチューブの全周の最も下方の位置を示している。OVCボアチューブの「サイド」は、TDCとBDCの間の真ん中に位置する、OVCボアチューブの全周において直径方向で対向する位置を意味する。円筒状のOVCボアチューブに関しては、これらサイドは、水平方向で互いに最も離れている周方向の位置であり、この周方向の位置は、円筒状のOVCボアチューブの幾何学的軸線を通る水平面に交差している。
【0036】
図4には、図1図3に既に示した単純な配置が示されている。TDC、BDC、及びサイドの位置が示されている。単一の流体入口と単一の流体出口とが示されている。全ての通路13は導管14により直列に接続されている。この例では、流体入口と流体出口とは両方ともTDCに位置している。これは単純な配置を示していて、入口及び出口マニフォルドの必要性を不要にしているが、導管と通路の直列接続を通る冷却流体には大きな圧力降下が生じる。直列の配置に入る冷却流体(例えば水)は全ての通路を通って流れ、進みながら熱を受け取る。従って、OVCボアチューブの全面にわたって効果的な冷却を提供するためには冷却流体の高速流を提供する必要がある。
【0037】
OVCボアチューブ1の特定の領域は、いくつかの他の領域よりも使用時に加熱されることが観察されている。通路接続に関する配置は、最も加熱される領域に最も効果的な冷却を提供するように適合させることができ、これにより、OVCボアチューブの表面全体にわたってより均一な温度分布が提供される。一例では、使用中のOVCボアチューブは、TDC及びBDCにおいて加熱が増大し、サイドでは加熱が減じられることが見出されている。
【0038】
図5図8には代替的な配置が示されており、この配置では、通路と導管の構造が、TDC及びBDCの位置を中心として対称的に配置されている。
【0039】
図5には、2つの平行な配置が設けられており、それぞれが、直列に接続された導管14の半分から成っている。TDCに2つの入口が設けられていて、BDCに各出口が設けられている。軸線、TDC及びBDCを通る1つの平面の一方の側における全ての通路は、一方の直列配置で接続されており、この1つの平面の他方の側における全ての通路は、他方の配置で接続されている。これにより、新鮮な冷却流体を、最も大きな加熱を受ける場所の1つであるTDCに導入することができ、OVCボアチューブの対称的な冷却が提供される。冷却流体は、BDCで通路と導管から出ていく。この流れは自然対流に対向し、冷却を改善するものと考えられている。代替的に、一方の冷却流体入口がTDCに、他方がBDCにあってもよく、同様に一方の冷却流体出口はTDCに、他方はBDCにあってもよい。このような配置により、より等しい冷却効果をTDC及びBDCで提供することができる。
【0040】
図6の配置では、通路は、OVCボアチューブの4つの象限に対応する4つのグループに分けられている。各グループで、冷却流体は、高レベルの加熱にさらされる領域であるTDC又はBDCから導入され、使用中それほど加熱されないので、冷却の必要性が低い領域であるサイドから出ていく。生じる温度はOVCボアチューブの表面にわたってより一定である。通路を4つのグループに分けることにより、新鮮な冷却流体は、4つの分離した場所から導入することができ、図4の配置と比較して減少した冷却流体流で効果的な冷却を達成することができる。
【0041】
図7に示した装置では、通路は8つのグループに分けられている。冷却流体入口と出口は、OVCボアチューブのまわりに対称的に配置することができ、効果的な対称的な冷却が提供される。通路の各グループは、OVCボアチューブの減少した表面積を冷却すればよく、減少した流量で作動させることができる。
【0042】
図8の装置は、この原理を極端に示しており、通路の各対が、それ自身の冷却流体入口及び出口を有している。各通路対における冷却流体の流量は、各対に必要な冷却量を提供し、OVCボアチューブの表面にわたって一貫した温度を保証するために、例えば弁を使用して制御することができる。
【0043】
図4図8の配置は、全ての通路が複数の等しいグループに分割されている対称的な配置を示している。図9には代替的な配置が示されており、通路のグループのサイズは等しくない。より多くの冷却が必要な、この例ではTDC及びBDC近くの領域には、より小さなグループの通路が設けられており、必要とする冷却がより少ない、この例ではサイド近くの領域には、より大きなグループの通路が設けられている。各グループに同様の冷却流体の流量を循環させることにより、より多くの冷却が必要な領域には増大した冷却能力が提供され、必要とする冷却が少ない領域には減少した冷却能力が提供される。勿論、各グループの冷却能力をさらに制御するために、各グループに流量を適合させることもできる。異なるグループに異なる冷却流体を使用することにより得られる冷却を変化させることもできる。
【0044】
図4図9の実施形態の全ては、連続的に接続された通路13を使用している。即ち、各通路13は、導管14によって、1つ又は2つのすぐ隣の通路に接続されている。しかしながら、このことは必ずしもあてはまらず、図10には、通路の各グループが螺旋状に接続された別の実施形態が示されている。各グループにおいて、冷却流体は、グループ内の通路の外側の1つに導入され、グループの中心近くの通路のうちの1つを離れるまで螺旋状に進む。冷却流体の流れの方向は勿論、逆にされてよい。同様に、通路を他の順序で互いに接続するために、別の配置、例えば部分螺旋配置、部分連続配置を形成することができる。
【0045】
図4図10に示した実施形態は、48のシムトレイまで収容するように配置することができるそれぞれ48の通路13を含んでいる。当業者には明らかであるように、他の実施形態は、より多くの又はより少ない通路及びシムトレイを備えて提供されてもよい。
【0046】
例示的な実施形態を用いて本発明をより詳細に説明してきたが、本発明は開示した例に限定されるものではなく、添付の請求項に記載した全保護範囲にわたって拡張される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10