特許第6649953号(P6649953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649953
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】免疫療法による治療および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20200210BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200210BHJP
   A61N 5/00 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200210BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20200210BHJP
   C07K 7/08 20060101ALN20200210BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20200210BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   A61K38/10
   A61K39/395 D
   A61K39/395 U
   A61N5/00
   A61P37/04
   A61P43/00 121
   A61P35/00
   A61P31/12
   A61P31/04
   A61P33/00
   A61P43/00 107
   A61P43/00 105
   !C07K7/08ZNA
   !C07K5/103
   !C07K16/18
【請求項の数】18
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-533220(P2017-533220)
(86)(22)【出願日】2015年12月17日
(65)【公表番号】特表2018-501247(P2018-501247A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】US2015066400
(87)【国際公開番号】WO2016100679
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】62/094,944
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509167914
【氏名又は名称】スサヴィオン バイオサイエンシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】エギンク,ローラ・エル
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,ジェイ・ケネス
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/096829(WO,A1)
【文献】 米国特許第08168757(US,B1)
【文献】 国際公開第2005/087793(WO,A1)
【文献】 FEBS Lett.,2014,588(2),p.368-376
【文献】 Adv.Drug Deliv.Rev.2013,65(9),p.1271-1281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドの治療有効量および第1抗体の治療有効量を含む医薬組成物であって、該ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、該第1抗体がCTLA−4に対するものである、医薬組成物。
【請求項2】
ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
第2抗体をさらに含み、第2抗体が、PD−1、PD−L1、およびPD−L2からなる群より選択される第2の免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
治療有効量が、対象の免疫応答を活性化するために十分な量である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
治療有効量が、がんを有する対象におけるがんを治療するために十分な量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんおよび皮膚がんからなる群から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
がんが、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんおよび腎細胞癌からなる群から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
治療有効量が、ウイルス、マイコバクテリアまたは寄生虫によって生じる感染症を治療するために十分な量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療有効量が、腫瘍内の制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
治療有効量が、エフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療有効量が、IL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27、TNFαおよびIFNγからなる群から選択される少なくとも1つの抗がんサイトカインのレベルを増大させるために十分な量である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ペプチドの治療有効量が、約0.1nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重、約1nmol/kg体重から約1000nmol/kg体重、または約1nmol/kg体重である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
第1抗体が、CTLA−4に対するモノクローナル抗体である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象における免疫系を活性化するための医薬品の製造における組成物の使用であって、該組成物が免疫系を活性化するために十分な量のペプチドおよび第1抗体を含み、ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、第1抗体がCTLA−4に対するものである、使用。
【請求項16】
対象における免疫応答の活性化に使用するための、請求項1、2、4、および6〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
対象ががんを有し、照射治療と組み合わせて用いられることを特徴とする、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
免疫応答を活性化するためのキットであって、請求項1、2、および16のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ
本出願は、本明細書に参考として全体を組み込んだ2014年12月19日出願の米国特許仮出願第62/094944号の優先権の利益を主張する。
【0002】
電子出願された文書の参照
本明細書と同時に提出し、以下に特定した、コンピュータによって読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リスト、2015年12月16日作成の名称「配列リスト」のASCII(テキスト)ファイル895バイトを本明細書に参考として全体を組み込む。
【0003】
技術分野
本発明は、免疫応答を活性化するペプチドを含む組成物およびがんの治療を含む免疫療法のためのこの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
脊椎動物では、免疫系には、自然免疫系および適応免疫系が含まれる。自然免疫応答は、例えば、宿主の分子から病原体を区別するパターン関連分子パターンによって、非特異的な方法で病原体を認識する一方、適応免疫系は特異的な抗原を対象とする。適応免疫応答の特異性は、抗原との相互作用によって授けられ、抗原は適応免疫細胞に主要組織適合分子(MHC)との複合体として提示される。抗原提示によっていくつかのT細胞サブグループが活性化され得る。
【0005】
ナイーブT細胞とMHC複合体との相互作用には、T細胞受容体(TCR)に抗原が結合することに加えてCD4またはCD8と相互作用することも必要である。クラスIMHCは、体の有核細胞のほとんど全てにおいて発現することができ、細胞傷害性型のT細胞において主に発現するCD8と相互作用する。これらの細胞は、細胞の活性化を引き起こす抗原を提示している細胞の死を誘導することができるので、組織損傷を防御するために強く制御されている。細胞傷害性T細胞の活性化には、MHC複合体の強いシグナルまたはヘルパーT細胞によるさらなる活性化が必要である。ヘルパーT細胞はCD4の発現により特徴付けられ、したがってクラスIIMHCと相互作用する。これらの細胞は、その活性化を引き起こす抗原を有する細胞を殺滅する能力はないが、これらの細胞は抗原によって開始した免疫応答を管理する。ナイーブヘルパーT細胞の活性化によって、抗原提示細胞を活性化するか、または細胞傷害性T細胞を活性化することができるサイトカインの放出が引き起こされる。例えば、Th1またはTh2ヘルパーT細胞は異なる型の抗原に対して免疫応答を増強する。Th1応答は、インターフェロン−γ(IFNγ)を放出することが特徴で、貪食細胞、細胞傷害性T細胞の活性化および抗原に応答して様々なサイトカインの放出を導く。Th2応答は、インターロイキン−4(IL−4)を放出することが特徴で、細胞外液中に認められる分泌抗体、補体タンパク質およびある種の抗菌ペプチドなどの高分子が媒介する応答を導く。
【0006】
免疫系はまた、免疫応答が損傷をもたらす可能性を制限する免疫抑制も提供する。T細胞の免疫抑制的な制御性T細胞亜集団は、細胞傷害性T細胞応答を弱め、通常は過剰刺激および自己免疫の発生を防ぐ。ナイーブT細胞への分化の前であっても、T細胞前駆体の一群は、自己ペプチドMHC複合体と適度に相互作用することによって胸腺中の天然の制御性T細胞に分化する。制御性T細胞には、胸腺の外側のCD4T細胞から発生した誘導性制御性T細胞も含まれる。天然の制御性T細胞は、抗原提示細胞との相互作用によってT細胞活性化を抑制し、T細胞活性化に負のシグナルを与える一方、誘導性制御性T細胞はT細胞増殖を阻害するサイトカインを産生する。
【0007】
活性免疫応答と抑制免疫応答との間の不均衡は、がん、免疫不全(例えば、後天性免疫不全症候群)、自己免疫疾患または過敏症反応もしくはより悪化した疾患および感染症、例えば、結核、リーシュマニアもしくはマラリアなどの疾患および病態を引き起こすことがある。
【0008】
免疫細胞は、体に起こり得る危険性を見回るので、免疫細胞は腫瘍も排除する。強い抗がん免疫応答には、抗体(適応型、体液型)および活性細胞媒介型が必要である。これらの2つの型の間の相互関係は、樹状細胞(一次抗原提示細胞型、APC)の活性化およびその後のB細胞による抗体産生によって行われる。次に、がん細胞の破壊が2つのプロセス、好中球、ナチュラルキラー細胞、細胞傷害性T細胞およびマクロファージによる細胞傷害性細胞応答ならびに活性化マクロファージおよび好中球によって行われる抗体依存性細胞傷害(ADCC)によって生じる。腫瘍細胞はしばしば、放射線治療または化学療法によって抗原提示のために消化されやすくすることができる。これらの細胞が活性化されると、がんの主要な特徴である免疫抑制または「免疫破壊の回避」を打ち負かす多岐にわたる取り組みが実現する(HanahanおよびWeinberg、2011年)。HanahanおよびWeinbergががんの起源について「体細胞突然変異説」を提唱する一方、Sonnenschein等(2014)は、がんは組織の組織化の破綻、または「組織の組織化フィールド理論」から生じるというもう1つの案を提唱した。
【0009】
免疫療法の目的は、免疫系がこれらの疾患を克服する能力を回復させることである。伝統的な免疫療法の標的は、腫瘍関連抗原(例えば、T抗原もしくはT抗原)あるいはウイルスもしくは細菌の表面上またはウイルスもしくは細菌が感染した細胞の表面上で発現した糖鎖付加基などの標的細胞に特異的な抗原であった。例えば、これらの抗原を使用するワクチン接種は、これらの抗原に対する抗体の体内産生を誘導し、免疫応答を開始させる。伝統的な取り組みはまた、免疫系の刺激を促進するためにアジュバントを使用するが、免疫応答をより理解することによって、免疫細胞を活性化して免疫系を直接または間接的に刺激して免疫応答を開始することができる潜在的な因子候補が増えた。免疫チェックポイントを理解することによって、免疫療法が免疫応答平衡の制御に関連するタンパク質を標的とすること、例えば、制御性T細胞集団を抑制または増強することが可能となった。したがって、免疫療法は現在、1)抗体の体内産生を誘導し、2)開始する免疫応答の型を操作する外来性抗体を提供し、3)免疫系チェックポイントからの因子によって特定の免疫細胞を活性化または抑制することができる。
【0010】
本発明は、例えば、腫瘍の免疫原性を促進するために、免疫療法を改善するためのこれらの取り組みの組合せを対象とする。特に、本発明は、免疫チェックポイントタンパク質またはがんマーカーに対する外来性抗体などの抗体と組み合わせたペプチドの使用を対象とする。糖を模倣した、免疫系の重要な細胞によって発現される制御性レクチン型受容体に結合するペプチドは、免疫応答を増強することができ、外来性抗体は治療上有益となり得る。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、配列番号1(VQATQSNQHTPR;本明細書では、「svL4」とも称する)によって表される活性ペプチド配列を有するペプチドの治療有効量および第1抗体の治療有効量を含む、適応免疫応答を活性化する組成物およびキットを提供する。このペプチドは4価であってもよい。例えば、このペプチドは構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)K]K−NH(配列番号3)を有する。一部の実施形態では、第1抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するものである。一部の態様では、組成物およびキットは第2抗体を含み、この第2抗体は第1抗体とは異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対するものである。本発明の実施形態はさらに、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。免疫チェックポイントタンパク質は、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA−4)、プログラム死1(PD−1)または一部の実施形態におけるプログラム死−リガンド1(PD−L1)およびプログラム死−リガンド2(PD−L2)などのPD−1のリガンドの少なくとも1つから選択される。
【0012】
治療有効量とは、対象における免疫応答を活性化するために十分な量である。一部の態様では、治療有効量とは、対象におけるがんを治療するために十分な量である。がんは、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がん、例えば、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌であってもよい。
【0013】
一部の実施形態では、治療有効量は制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である。別の実施形態では、治療有効量はエフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である。さらに別の実施形態では、治療有効量はIL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27、TNFαおよびIFNγなどの抗がんサイトカインのレベルを上昇させるために十分な量である。一部の態様では、抗がんサイトカインのレベルは数倍上昇する。一部の実施形態では、第1のペプチドおよび第2のペプチドの治療量は、約0.1nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重の間、約1nmol/kg体重から約1 1000nmol/kg体重の間、または約1nmol/kg体重である。
【0014】
本発明はさらに、対象に配列番号1によって表される活性ペプチド配列を有するペプチドの治療有効量を投与するステップ、および免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体の治療有効量を投与するステップによって、対象における適応免疫応答を活性化する方法を提供する。一部の態様では、抗体には、2つの異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体が含まれる。一部の実施形態では、投与するペプチドは4価である。これらの実施形態では、活性ペプチド配列はリンカー配列によってコアに連結される。好ましい実施形態では、コアは3リシンコアで、リンカー配列は−GGGS−(配列番号2)である。例えば、4価ペプチドは構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)K]K−NH(配列番号3)を有する。
【0015】
一実施態様では、この方法には、抗体を投与する前に、例えば、抗体を投与する少なくとも3日前にペプチドを投与するステップが含まれる。その後、ペプチドは抗体の投与と並行して投与する。その他の実施態様では、ペプチドおよび抗体は治療の開始時に一緒に投与する。一部の実施態様では、ペプチドは1日おきに、または週1回の頻度で投与する。一部の実施形態では、ペプチドの投与は、抗体治療期間後も継続される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1-1】4価svL4の構造および配列番号1(VQATQSNQHTPR)で表される活性配列を示した図である。A:ペプチドの概略図。活性配列を有する腕(1、2)はスペーサー配列(3)を介して3リシンコア(4)に連結している。
図1-2】B:C末端アミドを有するペプチドの化学構造。ペプチドは全て、天然に生じるL−アミノ酸から構成され、Aはアラニン、Gはグリシン、Hはヒスチジン、Kはリシン、Lはロイシン、Nはアスパラギン、Pはプロリン、Qはグルタミン、Rはアルギニン、Sはセリン、TはトレオニンおよびVはバリンである。配列−GGGS−(配列番号2)は活性12マー配列とトリリシンコアとの間のリンカーである。したがって、示された4価ペプチドは構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)K]K−NH(配列番号3)を有する。
図2】svL4のHPLC観測結果を示した図である。クロマトグラフィーは、C8カラムで、0.1%TFA/水に溶かしたアセトニトリルの勾配を用いてCBLによって実施した。ペプチドの純度は>95%である。
図3】svL4のエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析を示した図である。各シグナルのペプチドのイオン化状態を示す。
図4】CM−セファデックスC50のカラムから溶出したsvL4を示した図である。svL4は、DEAE−セファデックスA25のカラムにNaCl 25mMで通過させた。次に、NaClの濃度を100mMに上昇させ、試料をCM−セファデックスカラムに添加した。カラムを100mM NaCl 25mL、次に200mM NaCl 50mLで洗浄し、その後、画分24からはNaCl 500mMで洗浄した。画分(1:100希釈)は、ペプチド含量については210nmのODで、エンドトキシンについてはリムルスアメボサイトライセート(Lonza、Walkersville、MD、USA)比色アッセイ法によって405nmでモニターした。
図5】svL4の(左から右へ)CLEC10a、ランゲリン(Langerin)、ASGPR1、デクチン−1(Dectin-1)、CLEC9a、DC−SIGN、CD44、IL−4RおよびSiglec−1への結合活性を示した図である。
図6】svL4 1nmol/gをQ2Dで投与したC57BL/6マウスの高度に染色した腹腔細胞マーカー集団の増加倍率を示した図である。未治療の値を1.0(灰色の棒)に正規化してsvL4投与による増加倍率(黒い棒)を示し、治療3日目の細胞型の間の応答を比較した。
図7-1】経時的実験においてsvL4 1nmol/gで治療したC57BL/6マウスで見いだされた腹腔細胞型の増加を示した図である。各細胞型について、各群の3本の棒は、1日目、3日目および5日目、すなわち、それぞれ0日目、2日目および4日目に皮下注射した翌日のデータを示す。マクロファージ(F4/80 CD11b)の細胞数は図Aに示し、活性化マクロファージ(F4/80 CD11b CD86)は図Bに、DC(CD11c)は図Cに、NKT細胞(NK1.1 CD3)は図Dに、活性化NKT細胞(NK1.1 CD3 CD69)は図Eに、活性化NK細胞(NK1.1 CD3 CD69)を図Fに、活性化Th細胞(CD4 CD69)は図Gに、細胞傷害性T細胞(CD8 CD69)は図Hに、B細胞(CD19)は図Iに、B記憶細胞(CD19 CD73 CD80 CD273)は図Jに示す。データは分析した実際の細胞数として表す。
図7-2】経時的実験においてsvL4 1nmol/gで治療したC57BL/6マウスで見いだされた腹腔細胞型の増加を示した図である。各細胞型について、各群の3本の棒は、1日目、3日目および5日目、すなわち、それぞれ0日目、2日目および4日目に皮下注射した翌日のデータを示す。マクロファージ(F4/80 CD11b)の細胞数は図Aに示し、活性化マクロファージ(F4/80 CD11b CD86)は図Bに、DC(CD11c)は図Cに、NKT細胞(NK1.1 CD3)は図Dに、活性化NKT細胞(NK1.1 CD3 CD69)は図Eに、活性化NK細胞(NK1.1 CD3 CD69)を図Fに、活性化Th細胞(CD4 CD69)は図Gに、細胞傷害性T細胞(CD8 CD69)は図Hに、B細胞(CD19)は図Iに、B記憶細胞(CD19 CD73 CD80 CD273)は図Jに示す。データは分析した実際の細胞数として表す。
図8-1】分離したB16メラノーマ腫瘍におけるTreg細胞の割合(A)および腫瘍におけるエフェクターT細胞の制御性T細胞に対する比(B)を示す図である。svL4は、1日おきに1.0nmol/g体重の用量で皮下投与した。細胞傷害性Tリンパ球関連分子4(α−CTLA−4)に対する抗体を動物1匹当たり100μgの用量で3日間隔で腹腔内注射した。棒は、2回のフロー分析の平均を示す。
図8-2】分離したB16メラノーマ腫瘍におけるTreg細胞の割合(A)および腫瘍におけるエフェクターT細胞の制御性T細胞に対する比(B)を示す図である。svL4は、1日おきに1.0nmol/g体重の用量で皮下投与した。細胞傷害性Tリンパ球関連分子4(α−CTLA−4)に対する抗体を動物1匹当たり100μgの用量で3日間隔で腹腔内注射した。棒は、2回のフロー分析の平均を示す。
図9】B16メラノーマ細胞を移植した動物の腫瘍細胞のフロー分析および図8の説明文で記載したように各動物が受けた治療を示した図である。
図10】マウスの脳内に神経膠腫細胞を移植して19日後の腫瘍サイズ(A)および脳に神経膠腫を移植したマウスの生存率(B)を示した図である。低用量の照射を7日目および9日目に行い、その後1日おきにsvL4(1nmol/g体重)を皮下注射した。
図11】1日おきに皮下投与したsvL4の用量の、脳内に神経膠腫細胞を移植したマウスの腫瘍サイズに対する効果の研究を示した図である。この実験では、ペプチド単独で治療した。腫瘍サイズは、未治療対照マウスにおける腫瘍のパーセントとして表す。
図12-1】卵巣がん細胞系を移植したマウスに対する治療効果を示した図である。A:svL4 0.1nmol/gを45日目から98日目(下の線)に皮下治療した群または未治療群(上の線)のC57BL/6マウスの、8匹の群における平均体重。90日目頃の対照マウスの平均体重の迅速な減少は、動物の死を示している。興味深いことに、治療を終了すると、腹水は増加するように見えた。
図12-2】B:95日目に治療終了した後の未治療マウスおよび治療マウスの生存曲線。未治療動物は全て129日目までに死亡したが、0.1nmol/g群の8匹の治療マウスのうち4匹は、治療を終了して8週間後の150日目でも生存していた。
図13】その他の薬物を終了した後、化学療法薬(列挙した)およびsvL4またはsvL4のみで治療したときの様々ながんを有するイヌの生存率を比較して示した図である。1mgの注射を1週間毎の計画で静脈内投与した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この記述および特許請求の範囲で使用した動詞「含む」およびその活用形は、非限定的な意味で、その語に続く事項を含むことを意味するため使用されるが、明確に言及していない事項を排除しない。さらに、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」によってある要素を参照する場合、要素の1つおよび1つのみが存在することを文脈が明らかに要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0018】
本明細書では、「自然免疫応答」または「自然免疫」という用語は、病原体からの急性の脅威に対する免疫細胞の応答を意味する。この応答は病原体認識因子に対する遺伝性の反応であることが多い。
【0019】
本明細書では、「適応免疫応答」または「適応免疫」という用語は、免疫記憶の形成を含む抗原特異的リンパ球(例えば、T細胞およびB細胞)の抗原に対する応答を意味する。適応免疫応答は、リンパ球のクローン選択によって生じる。
【0020】
本明細書では、「エフェクターT細胞」という用語は、さらに分化することを必要とせず病原体または細胞の除去を媒介することができるT細胞を意味する。したがって、エフェクターT細胞はナイーブT細胞および記憶T細胞とは区別され、これらの細胞はエフェクター細胞になる前に分化し、増殖しなければならないことが多い。
【0021】
本明細書では、「制御性T細胞」または「Treg細胞」という用語は、特に、エフェクターT細胞の誘導または増殖を抑制または下方制御することによって、T細胞応答を阻害するT細胞を意味する。したがって、これらの細胞は免疫寛容を誘導することができる。CD25、CD39、CD73およびFoxp3の少なくとも1つの発現は、制御性T細胞を誘導する。制御性T細胞の大部分はCD4であるが、CD8であってもよい。制御性T細胞を示すもう1つのものは、細胞傷害性Tリンパ球関連分子−4(CTLA−4)または糖質コルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)の高発現である。
【0022】
本明細書では、「免疫チェックポイント」という用語は、付随する組織の損傷を最小限に抑えるために、自己寛容を維持し、末梢組織における生理学的免疫応答の期間および大きさを調節するために重要な免疫系の阻害経路を意味する。
【0023】
本明細書では「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導、増強または抑制することによる疾患または病態の治療を意味する。
本明細書では、「病原体」という用語は、疾患を起こすことができるものなら何でも意味する。したがって、この用語には、腫瘍細胞に形質転換した宿主細胞と共に、ウイルス、細菌、プリオン、真菌または原虫などの感染因子が含まれる。
【0024】
本発明は、免疫応答を活性化または増強するために免疫療法を組み合わせる取り組みに関する。最適な適応免疫応答には、病原体ならびにマクロファージ、細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー細胞および樹状細胞を含む活性化した細胞成分を標的とする抗体の存在が含まれる。本発明は、免疫抑制応答を阻害するか、エフェクターT細胞応答を増強してもよく、またはその両方であってもよい。一部の態様では、本発明は、例えば、腫瘍および腫瘍微小環境内の制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増加させることによって、エフェクターT細胞機能の有効性を増強する。本発明は、腫瘍および腫瘍微小環境内の制御性T細胞の集団を抑制することが好ましい。一部の態様では、本発明は、例えば、血清中のIL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27、TNFαおよびIFNγを誘導して数倍増加させることよって、エフェクターT細胞機能の有効性を増強するために、対象のサイトカインプロファイルを変化させる。好ましい実施形態では、これらのサイトカインの血清レベルの増加は、併用療法の投与の約4時間以内に生じる。
【0025】
本発明は、対象の免疫系が開始した免疫応答が外部からの支援なしでは対象を疾患または病態から防御することができない場合の対象の疾患または病態を治療する。このような疾患および病態は、がんおよび持続性の感染であってもよい。本発明によって治療することができるがんの非限定的な例は、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がんである。一部の態様では、がんは、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣腺癌、卵巣上皮癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌である。持続性の感染症の非限定的な例には、ウイルス感染症、マイコバクテリア感染症および寄生虫感染症が含まれる。一部の態様では、ウイルス感染症は、HIVなどのレトロウイルスによって引き起こされる。一部の態様では、マイコバクテリア感染症は結核であってもよい。一部の態様では、寄生虫感染はリーシュマニアまたはマラリアであってもよい。
【0026】
併用療法のペプチド
免疫療法薬(例えば、抗体)によって誘導される所望の免疫応答を増強することができる「既成の」非毒性の根本的計画は、免疫療法の効果をより高め、毒性をより少なくする。免疫療法薬の作用は、免疫系が「刺激されて」療法薬の存在に対して最大限応答することが重要である。本発明の併用療法では、基本計画は、糖リガンド、例えば、グリカン複合体の末端の糖を模倣したペプチドを含む基本的なペプチド計画である。ペプチドは、免疫療法にとりわけ適している。ペプチドの設計は自由自在で、大規模に合成することが容易で、水溶性であり比較的安定で、高い結合力で受容体に選択的に結合する。免疫療法におけるペプチドの使用は、糖を模倣できること、したがって制御性レクチン型受容体、例えば、免疫系の細胞が発現するC型レクチン細胞表面受容体に結合することに基づいている(GeijtenbeekおよびGringhuis、2009年;Garcia−Vallejoおよびvan Kooyk、2009年)。ペプチドはグリカンリガンドよりもずっと高い結合力で結合し、薬物としての開発に適している。免疫療法のこの取り組みには顕著なレベルの毒性が伴わないことは重要である。
【0027】
好ましくは、本発明のペプチドは、免疫応答の増幅に特に有益な制御性レクチン型受容体に結合する。一実施形態では、ペプチドはCD45に見いだされるN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を模倣し、例えば、ペプチドはsvL4(VQATQSNQHTPR;配列番号1)である(実施例1〜7参照)。広く発現していて豊富な細胞表面タンパク質であるCD45のホスファターゼ活性は、リンパ球の活性化および発達に必要である(TrowbridgeおよびThomas、1994年)。CD45はSrcファミリーシグナル伝達キナーゼから阻害ホスフェートを除去し(Roskoski、2005年;McNeil等、2007年)、T細胞活性化においてTNFα分泌の増加として表れる(van Vliet等、2006年)。マクロファージおよび未成熟DCなどのヒト抗原提示細胞は受容体CLEC10a(CD301)を発現し、これはGalNAcに特異的である(van Vliet等、2008年)。免疫細胞の活性化の戦略的標的であるCLEC10aを標的にすると、DCによる抗原の内部移行、抗原のCD4T細胞への提示およびIFNγ産生CD4T細胞の分化が促進される(Streng−Ouwehand等、2011年)。リガンドがCLEC10aに結合すると、抗原特異的IFNγ産生CD8T細胞応答が増強され、ナイーブCD4T細胞がTh1細胞に傾き、T細胞の増殖が増加する。さらに、DCはNK細胞の活性化および増殖を媒介する(Degli−EspostiおよびSmyth、2005年)。DC上のCLEC10aのT細胞上のCD45のGalNAc残基へのトランス結合は、T細胞阻害を引き起こす(van Vliet等、2006年)。GalNAc含有因子の誘導は、CD45を解放し、抑制性受容体を脱リン酸化(不活性化)し、シグナル伝達キナーゼから抑制性リン酸基を除去し、T細胞を活性化する。CD45シグナル伝達によって不活性化され得る抑制性受容体には、CTLA−4およびPD−1が含まれる。
【0028】
併用療法の抗体
基本的ペプチド計画に加えて、本発明の併用療法には、免疫療法剤、例えば、抗体が含まれる。本発明の併用療法の好ましい実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0029】
一部の実施形態では、抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するモノクローナル抗体である。免疫チェックポイントの遮断は、腫瘍退縮を誘導し、疾患を安定化し、免疫系の操作によって生存を延長させる新しい有望な戦略である(Weber、2010年)。免疫チェックポイントタンパク質はT細胞、または抗原提示細胞が発現していてもよい。T細胞免疫チェックポイントタンパク質は、例えば、CTLA−4およびPD−1であってもよい。抗原を提示している細胞免疫チェックポイントタンパク質は、例えば、PD−L1およびPD−L2であってもよい。
【0030】
一実施形態では、抗体はCTLA−4(α−CTLA−4)に対する抗体である。CTLA−4に対する完全なヒトモノクローナル抗体、イピリムマブまたはヤーボイ(Bristol Myers Squibb)の使用は、がん治療の主要な免疫療法アプローチになった。マウスにおける研究で、腫瘍内のT細胞はTreg細胞の割合が高く、この細胞はCTLA−4発現が高く、したがって腫瘍細胞に対する免疫応答を抑止することが示された。α−CTLA−4の導入はTreg細胞をタグ付けし、マクロファージによって抗体による破壊を受けるようにこれらの細胞を標的化した。したがって、α−CTLA−4はTreg細胞集団を減少させる。
【0031】
別の実施形態では、抗体はPD−1に対する抗体(α−PD−1)で、これはPD−1とリガンドの相互作用を阻害してT細胞の阻害を妨害する。PD−1は、T細胞制御因子の広範なCD28/CTLA−4ファミリーの1メンバーである(Ishida等、1992年)。免疫系を刺激するPD−1を標的とするモノクローナル抗体はがん治療のために開発された[Weber、2010年]。FDAは、その他の薬物に対してもう応答しなくなった進行性の切除不能なメラノーマのためのメルク社製の抗PD−1薬、キイトルーダ(ペムブロリズマブ;MK−3475)を迅速に承認した。メラノーマは、メラノサイトと呼ばれる色素形成細胞から発生する皮膚がんである。この疾患は特に進行が速く、体のその他の部位、特に脳に転移すると命に関わる。米国では今年約76000人がメラノーマと診断され、約10000人が亡くなった。キイトルーダは、イピリムマブ(ヤーボイ;Bristol−Myers Squibb)の後に使用するものとされているが、現在では、CTLA−4と呼ばれる別のT細胞受容体を遮断するヤーボイと組み合わせて臨床使用されている(上記参照)。Bristol−Myers Squibbのα−PD−1薬、オプジーボ(ニボルマブ)は日本で承認され、米国で承認されたのが最初だったかもしれないとの憶測が生まれた。ニボルマブで永続的な腫瘍寛解を示すために詳細な研究が実施された(Topalian等、2014年)。
【0032】
抗体は、別の実施形態ではPD−1リガンドに対する抗体であってもよい。PD−1の2つのリガンドであるPD−L1およびPD−L2は、B7ファミリーのメンバーである(Freeman等、2000年;Latchman等、2001年)。多くの腫瘍細胞は免疫抑制性PD−1リガンド、PD−L1を発現し、PD−1とPD−L1との間の相互作用の阻害は、インビトロにおけるT細胞応答を増強し、前臨床抗腫瘍活性を媒介することができる。PD−L1は、IFNγによる治療のときに、PA1骨髄腫、P815肥満細胞腫およびB16メラノーマを含むほとんど全てのマウス腫瘍細胞系で発現する。PD−L2発現はより限定的で、主にDCおよびいくつかの腫瘍系で発現する。PD−L1タンパク質は、マクロファージおよび樹状細胞(DC)ではリポ多糖(LPS)およびGM−CSF治療に応答して、T細胞およびB細胞ではTCRおよびB細胞受容体シグナル伝達に応答して上方制御される(Iwai等、2002年)。LPSに対するこの応答は、がん治療薬から内毒素を確実に排除するための重大な理由である(図4参照)。
【0033】
臨床研究によって、イピリムマブとニボルマブの組合せはそれぞれの単独よりも有効性が大きいことが示された(Curan等、2010年;Wolchok等、2013年)。したがって、本発明の一部の実施態様の抗体は1つの免疫チェックポイント経路を攻撃する一方、本発明のその他の実施態様の抗体は2つ以上の免疫チェックポイント経路を攻撃してもよい。例えば、併用療法は、2つの明確に異なる免疫チェックポイント経路であるCTLA−4経路およびPD−1経路に対する抗体と共にペプチドを含んでいてもよい。
【0034】
併用療法のキットまたは医薬組成物
併用療法は制御性レクチン型受容体を標的とするペプチドおよび免疫細胞に直接影響を及ぼす抗体を含むので、本発明の併用療法は免疫調節手段の組合せを標的とする。例えば、抗体が細胞表面のチェックポイントタンパク質に結合することによって作用する一方、CD45によるホスファターゼ活性およびその他のホスファターゼの刺激はCTLA−4およびPD−1およびこれらのタンパク質の作用を媒介する付属タンパク質SHP−1の脱リン酸化を引き起こし、したがって、本発明のペプチドおよび抗体を含む併用療法は細胞内の抑制性受容体も不活性化する。しかし、本発明の併用療法は複数のペプチドおよび/または複数の抗体を使用することによって免疫調節手段のより多くの組合せを標的とすることができる。したがって、併用療法は少なくとも1つのペプチドの治療有効量および少なくとも1つの抗体の治療有効量を含む。一部の実施形態では、併用療法のペプチドは、配列番号1(VQATQSNQHTPR)によって表される活性ペプチド配列を有する。このペプチドは4価であってもよい。4価ペプチドの活性ペプチド配列はリンカー配列を介してコアに連結する。一部の実施形態では、コアは3リシンコアで、リンカー配列は−GGGS−(配列番号2)である。4価ペプチドの1例は構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)K]K−NH(配列番号3)を有する。
【0035】
キットまたは組成物の一部の実施形態では、ペプチドは同じ制御性レクチン型受容体を標的とする異なる模倣体である。例えば、2つのペプチドを含むキットまたは組成物の場合、両方のペプチドはCLEC10aを標的とするが、それぞれはGalNAcまたはGalのいずれかの模倣体である。キットまたは組成物のその他の実施形態では、ペプチドは異なる制御性レクチン型受容体を標的とする異なる模倣体である。
【0036】
キットまたは組成物の一部の実施形態では、抗体は異なる免疫チェックポイント経路を標的とし、例えば、抗体はCTLA−4チェックポイント経路またはPD−1チェックポイント経路を標的とする。したがって、併用療法の抗体は、α−CTLA−4およびα−PD−1またはα−PD−L1の1つを含んでいてもよい。
【0037】
ペプチドおよび抗体の薬学的に許容される誘導体およびそれらの塩ならびに本明細書で記載した方法のためのそれらの使用も本発明の範囲内である。このような塩は、製薬業界の知識を使用して調製することができる。医薬組成物は、個々の投与形態で調製することができる。したがって、本発明の医薬組成物および投与形態は、本明細書で開示した活性成分を含む。「医薬品」の表記は、本明細書で記載した本発明の化合物またはそれらの塩を示す。本発明の医薬組成物および投与形態はさらに、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。
【0038】
一実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、連邦または州政府の規制当局によって承認されているか、あるいは動物、より詳細にはヒトにおいて使用するために米国薬局方またはその他の一般的に認識された薬局方に挙げられたことを意味する。「担体」という用語は、それらと共に活性成分を投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤または媒体を意味する。このような医薬担体は、水および油などの液体であってもよく、ピーナツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などの石油、動物、植物または合成由来のものが含まれる。医薬担体は、生理食塩水、アカシアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素などであってもよい。もちろん、その他の賦形剤を使用してもよい。
【0039】
本発明の投与形態の組成物、形状および型は典型的に、投与経路および治療する対象に応じて変化する。例えば、非経口投与形態は、同じ疾患を治療するために使用した経口投与形態が含むよりも少ない量の1つまたは複数の活性成分を含有していてもよい。本発明に包含される特定の投与形態が互いに異なるこれらおよびその他の方法は、当業者ならば容易に理解すると予想される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing、Easton Pa.(1990年)を参照のこと。
【0040】
典型的な医薬組成物および投与形態は、1つまたは複数の賦形剤を含む。適切な賦形剤は製薬業界の当業者には周知で、適切な賦形剤の非限定的な例を本明細書に挙げる。特定の賦形剤が医薬組成物または投与形態への組込に適しているかどうかは、限定はしないが、投与形態を患者に投与する方法を含む当業界で周知の様々な要素に左右される。例えば、錠剤などの経口投与形態は、非経口投与形態において使用するには適さない賦形剤を含有していてもよい。特定の賦形剤の適応性はまた、投与形態中の特異的な活性成分に左右される。例えば、いくつかの活性成分の分解は、ラクトースなどのいくつかの賦形剤によって、または水に曝露したとき、加速することがある。
【0041】
本発明はさらに、活性成分を分解する割合を低下させる1つまたは複数の化合物を含む医薬組成物および投与形態を包含する。このような化合物は、本明細書では「安定化剤」と呼び、限定はしないが、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤を含む。
【0042】
特定の治療条件および方法について、投薬は公知の方法を使用して経験的に決定するが、使用した特定の化合物の生物学的活性、投与手段、宿主の年齢、健康状態および体重、症状の性質および範囲、治療頻度、その他の療法の投与および所望する効果などの事実に左右される。様々な可能性のある投薬および投与方法を以下に記載するが、以下は単なる例示にすぎないことを理解されたい。実際の投薬および投与または送達方法は、当業者が決定することができる。投薬の頻度はまた、使用する化合物および持続放出性製剤を使用するかどうかに応じて変化することがある。
【0043】
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、限定はしないが、錠剤(例えば、咀嚼型錠剤)、カプレット、カプセルおよび液剤(例えば、フレーバーシロップ剤)などの個別の投与形態として存在していてもよい。このような投与形態は、予め決定された量の活性成分を含有し、当業者に周知の製薬方法によって調製することができる。例えば、全般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、1990年)を参照のこと。
【0044】
本発明の典型的な経口投与形態は、従来の製剤配合技術に従って、均一に混合した活性成分と少なくとも1種の賦形剤とを一緒にすることによって調製する。賦形剤は、投与に望ましい調製形態に応じて、多様な形態を取ることができる。例えば、経口液体またはエアロゾル投与形態での使用に適した賦形剤には、限定はしないが、水、グリコール、油、アルコール、矯臭剤、保存剤および着色剤が含まれる。固形経口投与形態(例えば、粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)での使用に適した賦形剤の例には、限定はしないが、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が含まれる。
【0045】
投与が簡単なので、錠剤およびカプセルは最も有利な経口投与単位形態であり、この場合固形賦形剤を使用する。所望するならば、錠剤は標準的な水性または非水性技術によってコーティングすることができる。このような投与形態は、製薬方法のいずれかによって調製することができる。全体的に、医薬組成物および投与形態は、活性成分と液体担体、超微粒子状固形担体またはその両方とを均一かつ均質に混合し、次に、必要ならば、生成物を所望する状態に成形することによって調製する。
【0046】
例えば、錠剤は圧縮または成型することによって調製することができる。圧縮した錠剤は、活性成分を、場合によっては賦形剤と混合して、適切な機械で粉末または顆粒などの易流動形態に圧縮することによって調製することができる。成型した錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を適切な機械で成型することによって形成することができる。
【0047】
本発明の経口投与形態で使用することができる賦形剤の例には、限定はしないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および滑沢剤が含まれる。医薬組成物および投与形態での使用に適した結合剤には、限定はしないが、コーンスターチ、馬鈴薯デンプンもしくはその他のデンプン、ゼラチン、アカシアゴムなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、その他のアルギン酸塩、粉末化トラガカント、グアガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、第2208、2906、2910番)、微結晶セルロースおよびそれらの混合物が含まれる。
【0048】
微結晶セルロースの適切な形態には、限定はしないが、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC Corporation、American Viscose Division、Avicel Sales、Marcus Hook,Pa.から市販されている)として販売されている物質およびそれらの混合物が含まれる。特異的な結合剤は、微結晶セルロースとAVICEL RC−581として販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。適切な無水または低水分賦形剤または添加物には、AVICEL−PH−103およびデンプン1500LMが含まれる。
【0049】
本明細書で開示した医薬組成物および投与形態で使用するために適した充填剤の例には、限定はしないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプンおよびそれらの混合物が含まれる。本発明の医薬組成物における結合剤または充填剤は典型的に、医薬組成物または投与形態の約50から約99重量パーセントで存在する。
【0050】
崩壊剤は、水性環境に曝露したとき崩壊する錠剤を形成するために、本発明の組成物で使用する。含有される崩壊剤が多すぎると錠剤は貯蔵中に崩壊することがあるが、含有される崩壊剤が少なすぎると所望する速度または所望する条件下で崩壊しないことがある。したがって、多すぎたり、少なすぎたりして活性成分の放出を不利に変化させることのない十分な量の崩壊剤を使用して本発明の固形経口投与形態を形成するべきである。使用した崩壊剤の量は、製剤の種類に基づいて変化し、当業者は容易に確認することができる。典型的な医薬組成物は、約0.5から約15重量パーセントの崩壊剤、好ましくは約1から約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0051】
本発明の医薬組成物および投与形態で使用することができる崩壊剤には、限定はしないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、馬鈴薯またはタピオカデンプン、その他のデンプン、アルファ化デンプン、その他のデンプン、粘土、その他のアルギン、その他のセルロース、ゴムおよびそれらの混合物が含まれる。
【0052】
本発明の医薬組成物および投与形態で使用することができる滑沢剤には、限定はしないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水添植物油(例えば、ピーナツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物が含まれる。他の滑沢剤には、例えば、シロイドシリカゲル(AEROSIL200、Baltimore、MDのW.R.Grace Co.によって製造される)、合成シリカ凝集エアロゾル(Plano、TXのDegussa Co.より販売)、CAB−O−SIL(Boston、MAのCabot Co.より販売されている発熱性2酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が含まれる。もし使用するならば、滑沢剤は典型的に、組み込む医薬組成物または投与形態の約1重量パーセント未満の量で使用する。
【0053】
本発明の好ましい固形経口投与形態は、活性成分、無水ラクトース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカおよびゼラチンを含む。
投与方法
本発明はまた、ペプチドおよび抗体を別々に、または一緒にした薬物を1回の適用で投与することができる製剤で投与する、本発明の併用療法の投与方法を提供する。例えば、実施例8におけるように、本発明は、svL4およびモノクローナル抗体α−CTLA−4の1回の適用での投与を提供する。
【0054】
一実施形態では、併用療法の投与は、抗体と同時にペプチドの投与を開始するステップを含む。別の実施形態では、適応免疫応答を活性化するための併用療法は、抗体を投与する前に免疫系を刺激するためにペプチドをまず投与するステップによって投与する。例えば、ペプチドは、抗体を投与する少なくとも2週間前、少なくとも10日前、少なくとも1週間前、少なくとも5日前、少なくとも3日前または少なくとも1日目に投与される。一部の態様では、ペプチドの投与は、抗体の投与後も継続する。したがって、ペプチドの投与はまた、抗体の投与期間と並行する。例えば、イピリムマブは通常3週間毎に静脈内注射するので、イピリムマブ治療の期間中、ペプチドも投与される。
【0055】
一部の実施態様では、ペプチドの投与は、抗体治療期間後も継続される。この方法の利点は、抗体でその後の治療を行わなくても、抗体治療の治療上の利点を維持できることである。
【0056】
投与方法ならびに頻度および用量は、すでにFDA承認された抗体について先行技術で確立されている。例えば、イピリムマブは通常、90分間にわたって静脈内注射し、各単位用量は3週間毎に投与し、1回の治療期間は投与4回までである。しかし、一部の態様では、ペプチドおよび抗体の並行投与は、毎週の頻度であってもよい。
【0057】
ペプチドの単位用量は、1日おきに、または週1回の頻度で投与してもよい。本発明のペプチドの1回の単位投与形態は、患者への経口、粘膜(例えば、経鼻、舌下、経膣、頬側または直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、大量瞬時投与、筋肉内または動脈内)または経皮投与に適している。投与形態の例には、限定はしないが、錠剤、カプレット、軟ゼラチンカプセルなどのカプセル、サシェ、トローチ、ドロップ、分散剤、坐剤、軟膏、パップ剤(湿布)、ペースト、粉末、ドレッシング剤、クリーム、硬膏剤、液剤、パッチ、エアロゾル(例えば、点鼻薬または吸入薬)、ジェル、懸濁剤(例えば、水性もしくは非水性液体懸濁剤、水中油エマルジョンまたは油中水液体エマルジョン)、液剤およびエリキシル剤を含む患者への経口もしくは粘膜投与に適した液体投与形態、患者への非経口投与に適した液体投与形態ならびに再構成して患者への非経口投与に適した液体投与形態を形成することができる滅菌固形物(例えば、結晶もしくはアモルファス固形物)が含まれる。ペプチドは、非経口経路、最も好ましくは皮下経路を介して投与することが好ましい。ペプチドはまた、静脈内投与することができる。ペプチドは、単独で、または抗体との組成物で投与してもよい。
【0058】
ある特定の態様では、ペプチドは約0.1nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重の単位投与量で投与することができ、これは、約0.7μg/kg体重から約10mg/kg体重に対応する。ペプチドの単位投与はまた、約100nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重、約100nmol/kg体重から約1000nmol/体重、約3nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重、約3nmol/kg体重から約1000nmol/kg体重、約3nmol/kg体重から約10nmol/kg体重、約1nmol/kg体重から約1000nmol/kg体重または約0.1nmol/kg体重から約1nmol/kg体重であってもよい。
【0059】
その他の態様では、ペプチドは約1500nmol/kg体重未満、例えば、約1000nmol/kg体重、約500nmol/kg、約100nmol/kg、約10nmol/kg、約1nmol/kg、または約0.1nmol/kgの単位投与量で投与してもよい。一態様では、ペプチドは約5nmol、約10nmol、約15nmol、約25nmol、約30nmol、約50nmol、約75nmol、約100nmol、約225nmol、約250nmol、約500nmol、約750nmol、約1μmol、約10μmolまたは約50μmolの単位投与量で投与してもよい。
【0060】
非経口投与形態は、限定はしないが、皮下、静脈内、大量瞬時投与、筋肉内および動脈内を含む様々な経路によって患者に投与することができる。非経口投与形態は、皮下送達に適していることが好ましい。本発明の非経口用形態は、好ましくは無菌であるか、または患者に投与する前に滅菌することができる。非経口用形態の例には、限定はしないが、注射用溶液、注射用の薬学的に許容される媒体に溶解または懸濁するための乾燥製品、注射用懸濁液およびエマルジョンが含まれる。
【0061】
本発明の非経口投与形態を提供するために使用することができる適切な媒体は、当業者に周知である。例には、限定はしないが、注射用水USP、限定はしないが、リン酸緩衝生理食塩水、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液および乳酸リンゲル注射液などの水性媒体、限定はしないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどの水混和性媒体、ならびに、限定はしないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルなどの非水性媒体が含まれる。
【実施例】
【0062】
本発明はさらに、以下の実施例によって例示されるが、決して限定するものではない。本出願全体にわたって引用した全参考文献、特許および公開された特許出願の内容ならびに図面は、あらゆる目的のために全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0063】
1.本発明のペプチド例、svL4
svL4と称されるGalNAcのペプチド模倣体は、Helix pomatiaのGalNAc特異的レクチンでファージディスプレイライブラリーをスクリーニングして見いだされた(EgginkおよびHoober、2009年、2010年)。このペプチドの4価型は構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)K]K−NH(配列番号3、図1)を有する。このペプチドは、標準的固相化学法によって合成し、クロマトグラフィー手法によってエンドトキシンを除去して純度>95%で調製した(図2〜4)。
【0064】
2.ヒトレクチン型受容体に対するsvL4の結合活性
svL4の結合活性は、組換えヒトCLEC10a、ASGPR1およびランゲリンで測定した。図5は、svL4の様々な制御レクチンへの結合活性を表す。試験したレクチンのうち、svL4はCLEC10a、ランゲリン、ASGPR−1およびDectin−1に強く結合する。
【0065】
3.野生型マウスの免疫細胞の成熟に対するsvL4群ペプチドの効果
腹腔免疫細胞の成熟を調べるために、マウス(C57BL/6種、雄、6〜8週齢)に4価svL4 1nmol/gを0、2、4および6日目に皮下注射した。マーカーに対する抗体で染色した細胞のバイオマーカーの発現を図6に示す。これらの動物の免疫機能の主要部位である腹腔から得られた細胞で劇的な変化が生じた。図6で例示したように、2回の治療後、免疫細胞の成熟は細胞のいくつかの集団で見いだされ、3日目に、治療したC57BL/6マウスでは強く染色した細胞の増加が示された。したがって、svL4を皮下投与すると腹腔における免疫細胞の成熟が増強される。
【0066】
CD11c(樹状細胞)に対する抗体で染色した集団では増加が認められ、ほとんどの活性化抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージおよびB細胞)で上方制御されている。マクロファージ(F4/80CD11b)細胞の集団は、治療の最初の3日間で劇的に増加した。樹状細胞(CD11c)および活性化樹状細胞の数も上昇した。CD8細胞はわずかに上昇し、CD49bCD69(活性化)NKは強く上昇した。1日おきに注射して3日目の変化を図6に示す。
【0067】
第2の実験では、追加的細胞集団の変化の時間経過を調べ、それらには、マクロファージ(F4/80 CD11b)、活性化マクロファージ(F4/80 CD11b CD86)、DC(CD11c)、NKT細胞(NK1.1 CD3)、活性化NKT細胞(NK1.1 CD3 CD69)、活性化NK細胞(NK1.1 CD3 CD69)、活性化Th細胞(CD4 CD69)、細胞傷害性T細胞(CD8 CD69)、B細胞(CD19)およびB記憶細胞(CD19 CD73 CD80 CD273)が含まれる。5日間にわたって1日おきに注射して、各細胞型の数によって表された応答を図7に示す。
【0068】
4.乳がんを有するマウスの血清に対するsvL4の効果
血清タンパク質における応答が担がんマウスと健康なマウスとでは異なるかどうかを測定するために、乳がん4T1細胞を移植した雌マウスから血清を収集した。腫瘍が10から12日間の期間で約500mmのサイズに成長した後、4価svL4を0.1および1.0nmol/gの用量で皮下注射した。血液を採取し、血清は注射の4時間後に調製した。4時間後の未治療動物の血清のサイトカインおよびケモカインのレベルは低かった。典型的な免疫細胞の活性化を反映する因子を表1に挙げる。IL−1β、IL−2、IL−6およびTNFαなどいくつかのタンパク質は、未治療動物では値が非常に低く、svL4で治療すると増加したもののアレイブロットではまだほとんど検出不可能であった。治療は全般的に、タンパク質の多くの増加、典型的には3から5倍の範囲の増加を引き起こした。増加したもののまだ量が少ないいくつかのサイトカインには、GM−CSF、CCL4、IGFBP−1、IL−21、リンホトキシン−αおよびIL−17が含まれた。主要なタンパク質には、CCL1、CCL8、CCL28、エンドスタチン、Fas、HVEM、IL−11、IL−12p70、IL−16、IL−27、IL−28、MIP−2、MMP−9、NOV、Soggy−1、SPARC、TIMP−2、TLR2およびVEGF−Bが含まれる。場合によっては高用量では大量のタンパク質が生じたが、いくつかのタンパク質では高用量でも量が少なかった。ほとんどのサイトカインでは、変化の程度はこの範囲でも用量依存応答性を示唆した。いくつかの可溶性タンパク質は、Fas、HVEMおよびTLR2などの細胞表面受容体として同定され、活性化細胞によってかなりシェディング(shedding)されることが示された。可溶性HVEMは、健康なマウスのように担がんマウスにおいて主要なタンパク質であるが、対照マウスでのレベルは乳がんを有するマウスよりも大きく、svL4で治療した後でも生じる増加は2倍にとどまった。
【0069】
【表1】
【0070】
これらのタンパク質は、活性化CD4およびCD8T細胞、樹状細胞ならびにマクロファージを含む様々な細胞型で発現し、ほとんど全てが免疫系の制御に関与する。サイトカイン/ケモカインの発現パターンは、強い抗がん免疫応答をもたらす。特に注意することは、多数のサイトカインおよびケモカインが治療に応答して血清中で増加するが、毒性のある「サイトカインストーム」の典型的なパターンは起こらなかったことである。
【0071】
健康なマウスと担がんマウスの血清タンパク質の間で、顕著な差が認められた。健康なマウスでは、IL−16、MMP−9、P−セクレチン、Soggy−1、TLR2、TRAILおよびTIMP−2が減少した一方、これらの因子は担がんマウスではsvL4に応答して劇的に増加した。IL−1α、IL−6、IFNγ、TNFαおよびTGFβは、健康なマウスでは非常に低レベルで存在し、増加しないが、担がんマウスでは検出可能で、svL4に応答して顕著に増加した。さらなる比較を表1に示す。表1の最も右の欄は、健康なBalb/cマウスによる別の実験で得られた治療(1nmol/g)対未治療試料の比を示す。いくつかのタンパク質、特に、IL−15、IL−17、IL−21、IL−28、IL−31およびCCL8/MCP−2は、未治療マウスでは無視できるほどの値であったので、治療した値は高い比となった。興味深いことに、担がんマウスで強く上昇したサイトカインは、健康なマウスではsvL4に応答して低下することが多いか、または変化を示さなかった。
【0072】
5.svL4およびα−CTLA−4によるメラノーマの治療
研究によって、GM−CSF源を追加しなければα−CTLA−4はマウスのメラノーマに対して効果がないことが示され、GM−CSF源は、常法では、照射した遺伝子改変GVAX細胞の注射によって供給した(Quezada等、2006年)。抑制性受容体、CTLA−4は腫瘍内のTreg細胞によって高レベルで発現したが、α−CTLA−4が結合した細胞の破壊にはFcγRIVを発現するマクロファージが必要であった(Simpson等、2013年)。svL4の投与は、単球の増殖および成熟を引き起こすので、svL4がGM−CSFの代わりとなるかどうかを試験した。この実験では、雄C57BL/6マウスの右側腹部にB16腫瘍細胞1.5×10個を移植した。4価svL4 1nmol/gの皮下注射を0日目に開始し、実験全体にわたってQ2Dで投与した。α−CTLA−4モノクローナル抗体(BioXCell社のクローン9H10)100μgを3日目から開始してQ3Dで腹腔内注射した。併用治療はこれらの注射頻度で維持した。
【0073】
腫瘍増殖は1日おきに測定した。α−CTLA−4単独で治療した群内で生じた腫瘍量の増加は最も迅速であったが、α−CTLA−4と共に4価svL4 1nmol/gで治療した群では生じた増加は最も遅かった(表2)。
【0074】
【表2】
【0075】
未治療群の腫瘍の大部分が1500mmの最大体積に達したとき、マウスを安楽死させ、各群の2匹の代表的動物の原発腫瘍を切除し、フローサイトメトリーによって分析した。エフェクターT(Teff)細胞は、CD3CD4CD25CD39として規定し、一方、Treg細胞はCD3CD4CD25CD39と規定した(Dwyer等、2010年)。特徴付けられていないCD25/CD39およびCD25/CD39細胞はTeff:Treg計算から排除した。T細胞分析を図8にまとめて示す。(フローサイトメトリーデータプロットの例は、図9に示す)。全T細胞集団の中で最も割合が低いTreg細胞は、svL4 1nmol/g単独で治療した動物の腫瘍で生じた(図8A)。興味深いことに、治療群の中で最も高い割合はα−CTLA−4で治療した動物で生じた。α−CTLA−4による治療にsvL4 1nmol/gを追加すると、Treg細胞の割合が劇的に低下した。同様に、治療群の中で最高のTeff:Treg細胞比は、svL4 1nmol/g単独で見いだされた(図8B)。
【0076】
これらのデータは、svL4 1nmol/gがTreg細胞集団を軽減することによってα−CTLA−4の活性を補完したことを示す。実際に、svL4はα−CTLA−4−依存性の機構によってTreg細胞の数を減少させた。Treg細胞が抗体に依存して強く減少することは、乳がんを有するBalb/cマウスの血清によるサイトカインデータによって説明することができる(表1)。svL4は、4時間以内にIL−12p70、IL−21およびIL−27の数倍の増加を誘導した。これらのサイトカインは、Treg細胞増殖を抑制し、IL−2受容体発現を減少させるとされている(Zhao等、2012年)。svL4は、Treg細胞によって分泌される抑制性サイトカインであるIL−10の増加を誘導しなかった。臨床研究では、Treg細胞の減少は、好ましい治療成績のためにTeff:Treg比よりも有意であるものと考えられる(Sim等、2014年)。したがって、svL4で治療した群においてTreg細胞が減少すると、svL4投与に応答して認められたマクロファージ、樹状細胞、CD8細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞の成熟(図6)と共に、がんに対する免疫系の攻撃が強力に増強されると予想される。
【0077】
これらのデータは、svL4単独およびα−CTLA−4との組合せが、腫瘍における免疫抑制性制御性T細胞の低下に主要な役割を担うことを示す。これらのデータは、2つの因子が別々であるが補完的な活性を有することを示唆する。したがって、このような治療が様々ながんに適切であるという仮説が生じる。実際に、α−CTLA−4は、メラノーマにおける第II相および第III相の治験で、その他の腫瘍型では第I/II相の治験で現在試験されている。腫瘍の退縮および長続きする応答の証拠は、卵巣がん、前立腺がんおよび腎細胞がんを有する患者におけるモノクローナルイピリムマブで認められた(Weber、2010年)。CTLA−4に対する抗体は、マウスよりもヒトのがんに対してより有効である。svL4は、マウスにおいて有効で、ヒトにおいても有効であることが予測される。CTLA−4に対する抗体(イピリムマブ)は、患者の20から30%にのみ有効で、有効性は別のチェックポイントマーカーPD−1に対する抗体、ニボルマブと組み合わせたとき、約2倍である(Wolchok等、2013年)。これらの組合せでは、異なる抑制性受容体を標的とするので、有効性が増加した。したがって、メラノーマのマウス研究のデータに基づいて、α−CTLA−4、α−PD−1またはα−PD−L1による治療に対するsvL4の追加は、利益を高めると予想される。本発明は、一連の細胞を活性化し、免疫系を「刺激する」という非毒性の根本的または基本的な療法のために、腫瘍学者が述べた必要性を満足させる。次に、これらのチェックポイントを遮断する抗体は、より低い用量で、より毒性の少ない集中療法を提供することができる。
【0078】
がんの治療は通常診断後に開始されるが、疾患が進行してしまっていることが多い。免疫系を初期に活性化するために、svL4は、1日おきに皮下注射によって投与される。免疫細胞の活性化は、2回目または3回目の注射の後、すなわち、治療開始後3または5日目にマウスで検出される。イピリムマブは通常、3週間毎に静脈内注射する。svL4の投与を1日おきに継続すると、免疫系が高い活性化状態で維持され、したがってα−CTLA−4の注射の利益を最大限実現する免疫系の状態が確立される。類似の方法がα−PD−1でも実現可能である。
【0079】
6.svL4による神経膠芽腫の治療
神経膠芽腫および転移性脳腫瘍では、サイトカイン分泌およびエフェクターリンパ球の増殖を効率よく抑制する制御性T(Treg)細胞の大量浸潤が認められた(Joannes等、2009年)。最も悪性の細胞はPD−L1を発現するが、PD−1はTエフェクター細胞の一部で発現した。svL4が脳腫瘍に対して有効性を示すかどうかを試験するために、マウス(C57BL/6種、雌、6〜8週齢)の脳の片方の半球に神経膠腫細胞(マウスGL261細胞系)を移植した。1週間腫瘍を進行させた後、4価svL4を1nmol/gの用量で1日おきに2週間皮下注射した(Kushchayev等、2012年a、2012年b)。
【0080】
神経膠腫細胞(マウスGL261細胞系)を移植したマウス(C57BL/6種、雌、6〜8週齢)の生存を、照射(7および9日目に4Gy)単独、7日目の開始から1日おきにペプチド(1nmol/g)単独、または照射およびペプチドによる治療の後に測定した。図10Aに示したように、腫瘍のサイズは、ペプチド治療動物でわずかに低下したが、動物の寿命はあまり延長しなかった(表3)。しかし、照射と組み合わせて、ペプチドは劇的に寿命を延長させ、治療開始から2倍に増加した(図10B)。これらの結果は、腫瘍は最初のうちは貪食細胞の浸潤によって拡大するようだが、脳において活性化した貪食細胞は固形がんを効率よく攻撃することができないことを示唆している。照射後、腫瘍細胞は損傷を受けて貪食細胞によって十分に破壊されるようで、このことは腫瘍サイズの著しい低下によって示された。併用療法によって腫瘍の大きさが19日目に最小限になったことは、腫瘍増殖が遅延したことを示唆しており、これは臨床上有望で重要な指標である(Teicher、2006年)。
【0081】
【表3】
【0082】
7.svL4の投与応答研究
マウスによる実験のほとんどにおいて、4価svL4は1日おきに1nmol/gの用量で常法通り投与したが、これは最大限有効であるが必ずしも最適な用量ではないと考えられる。その他の実験において、0.1から0.2nmol/g(0.68から1.4mg/kg)の用量でより有効であることが見いだされた。神経膠腫細胞を脳に移植したマウスの実験において、1日おきに0.1nmol/gを投与するだけで、より高い用量よりも神経膠芽腫の腫瘍サイズの低下を引き起こすのに有効であった(図11)。
【0083】
電離放射線は、図10に示したように、免疫系に対してペプチドと相乗効果を有する。実際に、がん治療の成功は、放射線療法と宿主の免疫応答との相乗作用に大きく左右されることが見いだされた。しかし、1Gy超と規定した高用量の照射では、免疫は抑制される。それにも関わらず、照射はがん細胞におけるストレスタンパク質を上方制御し、抗原提示細胞が抗腫瘍応答を惹起して食作用または細胞溶解活性によって損傷を受けた細胞を除去する能力を高める(Manda等、2012年に概括されている)。
【0084】
治療薬がα−PD−1抗体である類似の実験を実施した。svL4と同様に、α−PD−1療法と照射を組み合わせると生存の改善が示された。生存の中央値は対照マウスでは25日で、α−PD−1のみの群は27日、照射群は28日、照射およびα−PD−1群は53日であった(Zeng等、2013年)。これらの実験を一緒に考えると、svL4およびα−PD−1と照射の併用治療によって長期生存が実現する。
【0085】
したがって、免疫療法はsvL4の適切な用量の投与とα−PD−1、α−PD−L1および低用量照射などのその他との療法の組合せによって最適化することができる。この組合せによる治療は相乗的で、神経膠芽腫腫瘍の手術による減量を最初に行った患者の生存の劇的な改善を示すことが予測される。
【0086】
8.svL4による卵巣がんの治療
svL4の最適な濃度が約0.1nmol/gであることは、卵巣がんのマウスモデルによる実験でさらに立証された(Roby等、2000年)。卵巣がん細胞系をC57BL/6雌マウスの腹腔に移植し、ほとんどの女性が診断を受ける後期を模倣するために、4価svL4による治療を45日後から開始した。治療は50日間継続し、がんの進行は腹水の発生の徴候として動物の体重によってモニターした。(腹水は、浮遊性腫瘍細胞を含有する液体の腹部における異常な蓄積を示す用語である)。この系では、腹腔における腫瘍の進行は、最初はゆっくりであるが、その後迅速に進行し、最終的には腫瘍腹水が発生する。対照動物の体重は約70日目から迅速に増加し(図12A)、129日目までには対照マウス全てが死亡した(図12B)。0.1nmol/gで治療した動物の体重は、正常な成長速度を上回って増加することはなく、8匹の動物全てが治療終了後20日の110日目まで生きて(図12B)、8匹のうち4匹は150日目でもまだ生きていた。1nmol/gで治療した動物が1匹、治療中(約80日目)に死亡したが、130日目までに死亡したのはさらに1匹だけだった。治療終了後、動物の体重は最終的に増加し、svL4による治療は腹水の発生を抑制するが、腫瘍は排除しなかったことが示唆された。しかし、治療中止後5週間、生存したマウスは健康そうであった。治療を継続すると、腹水の形成をいつまでも抑制することができる。マウスのほとんどは治療中止後数週間生き続けたことは重要で、記憶B細胞の発生が示唆される。
【0087】
多種多様な免疫調節アプローチは、α−CTLA−4(イピリムマブ)、α−CA−125(オレゴボマブ)およびα−PD−L1などのいくつかのモノクローナル抗体を含めて、卵巣がんの治療について現在評価中である(Tse等、2014年)。臨床研究の早期の結果では、患者が通常疾患後期と診断されているので、ほとんどが芳しくなかった。図12に示したように、svL4は後期卵巣がんをおそらくいつまでも制御し、したがって、チェックポイント遮断抗体を可能な範囲で補完すると予想される。この併用治療によって、抗体による免疫療法は短期の補助的な治療計画としての使用に制限されなくなると予想される。
【0088】
全治療、3種類の用量および2種類の投与頻度(月曜日/水曜日、MWまたは1日おき、Q2D)の比較を表4に示す。生存中央値の比較は、1日おきに0.1nmol/gの用量を投与すると生存が最大限延長されることを示した。
【0089】
【表4】
【0090】
薬物投与中および投与後に、マウスの体重および挙動に変化がなかったことは重要で、治療に関連した明白な毒性がないことが示された。同じ領域に薬物を繰り返し注射しても、見かけ上刺激作用も繊維組織または肉芽腫組織の形成も生じなかった。さらに、100日間svL4で治療したマウスの血清へのペプチドの結合を検出する試みは陰性で、ペプチドはマウスにとって抗原性ではないことが示唆された。
【0091】
9.多様ながんのイヌへのsvL4の静脈注射の有効性
様々ながんのイヌにおける低用量svL4の効果の予備試験では、4価svL4を単独で毎週注射すると、標準的な化学療法薬よりも、さらにはsvL4と組み合わせた化学療法薬よりも単独の方が寿命が顕著に延長して有効であった(図13)。これらのデータは、化学療法薬がsvL4の免疫刺激作用を妨害することを示唆する。したがって、この組合せ免疫療法は、化学療法なしで使用することが最も良い。したがって、svL4およびα−CTLA−4またはα−PD−1を混合物として1回の注射で提供することが有利であろう。各成分の用量は最適の利益を得るために個々に、例えば、週1回注射の頻度で調整することができる。
【0092】
発明の態様
[1]ペプチドの治療有効量および第1抗体の治療有効量を含む医薬組成物であって、該ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、該抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、医薬組成物。
[2]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[1]に記載の医薬組成物。
[3]薬学的に許容される担体をさらに含む、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]第2抗体をさらに含み、第2抗体が第1抗体とは異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、[1]〜[3]のいずれかに記載の医薬組成物。
[5]治療有効量が、対象の免疫応答を活性化するために十分な量である、[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]治療有効量が、がんを有する対象におけるがんを治療するために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がんである、[6]に記載の医薬組成物。
[8]がんが、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌である、[7]に記載の医薬組成物。
[9]治療有効量が、ウイルス、マイコバクテリアまたは寄生虫によって生じる感染症を治療するために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]治療有効量が、腫瘍内の制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である、[1]〜[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]治療有効量が、エフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]治療有効量が、IL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27、TNFαおよびIFNγからなる群から選択される少なくとも1つの抗がんサイトカインのレベルを増大させるために十分な量である、[1]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]対象における免疫系を活性化するための医薬品の製造における組成物の使用であって、該組成物が免疫系を活性化するために十分な量のペプチドおよび第1抗体を含み、ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、第1抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、使用。
[14]対象における免疫系の活性化に使用するための組成物であって、組成物が免疫系を活性化するために十分な量のペプチドおよび第1抗体を含み、ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、第1抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、組成物。
[15]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[13]または[14]に記載の組成物の使用または組成物。
[16]免疫系を活性化するために十分な量が、対象におけるがんを治療するために十分な量である、[12]〜[15]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[17]がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がんである、[16]に記載の組成物の使用または組成物。
[18]がんが、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌である、[16]に記載の組成物の使用または組成物。
[19]免疫系を活性化するために十分な量が、ウイルス、マイコバクテリアまたは寄生虫によって生じる感染症を治療するために十分な量である、[13]または[14]に記載の組成物の使用または組成物。
[20]免疫系を活性化するために十分な量が、制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である、[13]〜[19]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[21]免疫系を活性化するために十分な量が、エフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である、[13]〜[20]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[22]免疫系を活性化するために十分な量が、IL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27およびIFNγからなる群から選択される少なくとも1つの抗がんサイトカインの対象血清レベルを増大するために十分な量である、[12]〜[21]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[23]ペプチドの治療量が約0.1nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重の間である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[24]第1ペプチドおよび第2ペプチドの治療量が約1nmol/kg体重から約1000nmol/kg体重の間である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[25]第1ペプチドおよび第2ペプチドの治療量が約1nmol/kg体重である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[26]免疫チェックポイントタンパク質がCTLA−4、PD−1、PD−L1およびPD−L2の少なくとも1つである、[1]〜[12]のいずれかに記載の医薬組成物または[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物の使用または[14]〜[25]のいずれかに記載の組成物。
[27]抗体が、α−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1およびα−PD−L2からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、[26]に記載の医薬組成物または組成物の使用または組成物。
[28]対象における免疫応答を活性化する方法であって、
対象にペプチドの治療有効量を投与するステップ、ここで該ペプチドは配列番号1によって表される活性配列を有する、および
抗体の治療有効量を対象に投与するステップ、ここで該抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、
を含む方法。
[29]抗体がα−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1、α−PD−L2およびそれらの組合せからなる群から選択される、[28]に記載の方法。
[30]ペプチドが、抗体の前に投与される、[28]または[29]に記載の方法。
[31]ペプチドが、抗体の少なくとも5日前に投与される、[30]に記載の方法。
[32]ペプチドが、抗体の少なくとも3日前に投与される、[30]に記載の方法。
[33]ペプチドが、1日おきに投与される、[28]〜[32]のいずれかに記載の方法。
[34]抗体が抗体治療期間に投与され、抗体治療期間の後、ペプチドの投与が継続される、[28]〜[33]のいずれかに記載の方法。
[35]抗体が、少なくとも2つの異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体を含む、[28]〜[34]のいずれかに記載の方法。
[36]対象ががんを有し、対象に照射治療を投与することをさらに含む、[28]〜[35]のいずれかに記載の方法。
[37]免疫応答を活性化するためのキットであって、
ペプチドの治療有効量、ここで該ペプチドは配列番号1によって表される活性配列を有する、および
1つまたは複数の抗体の治療有効量、ここで該抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、
を含む、キット。
[38]少なくとも1つの抗体がα−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1、α−PD−L2からなる群から選択される、[37]に記載のキット。
[39]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[37]または[38]に記載のキット。
【0093】
【表5-1】
【0094】
【表5-2】
【0095】
【表5-3】
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]