【実施例】
【0062】
本発明はさらに、以下の実施例によって例示されるが、決して限定するものではない。本出願全体にわたって引用した全参考文献、特許および公開された特許出願の内容ならびに図面は、あらゆる目的のために全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【0063】
1.本発明のペプチド例、svL4
svL4と称されるGalNAcのペプチド模倣体は、Helix pomatiaのGalNAc特異的レクチンでファージディスプレイライブラリーをスクリーニングして見いだされた(EgginkおよびHoober、2009年、2010年)。このペプチドの4価型は構造「(VQATQSNQHTPRGGGS)
2K]
2K−NH
2(配列番号3、
図1)を有する。このペプチドは、標準的固相化学法によって合成し、クロマトグラフィー手法によってエンドトキシンを除去して純度>95%で調製した(
図2〜4)。
【0064】
2.ヒトレクチン型受容体に対するsvL4の結合活性
svL4の結合活性は、組換えヒトCLEC10a、ASGPR1およびランゲリンで測定した。
図5は、svL4の様々な制御レクチンへの結合活性を表す。試験したレクチンのうち、svL4はCLEC10a、ランゲリン、ASGPR−1およびDectin−1に強く結合する。
【0065】
3.野生型マウスの免疫細胞の成熟に対するsvL4群ペプチドの効果
腹腔免疫細胞の成熟を調べるために、マウス(C57BL/6種、雄、6〜8週齢)に4価svL4 1nmol/gを0、2、4および6日目に皮下注射した。マーカーに対する抗体で染色した細胞のバイオマーカーの発現を
図6に示す。これらの動物の免疫機能の主要部位である腹腔から得られた細胞で劇的な変化が生じた。
図6で例示したように、2回の治療後、免疫細胞の成熟は細胞のいくつかの集団で見いだされ、3日目に、治療したC57BL/6マウスでは強く染色した細胞の増加が示された。したがって、svL4を皮下投与すると腹腔における免疫細胞の成熟が増強される。
【0066】
CD11c(樹状細胞)に対する抗体で染色した集団では増加が認められ、ほとんどの活性化抗原提示細胞(樹状細胞、マクロファージおよびB細胞)で上方制御されている。マクロファージ(F4/80
+CD11b
+)細胞の集団は、治療の最初の3日間で劇的に増加した。樹状細胞(CD11c
+)および活性化樹状細胞の数も上昇した。CD8
+細胞はわずかに上昇し、CD49b
+CD69
+(活性化)NKは強く上昇した。1日おきに注射して3日目の変化を
図6に示す。
【0067】
第2の実験では、追加的細胞集団の変化の時間経過を調べ、それらには、マクロファージ(F4/80 CD11b)、活性化マクロファージ(F4/80 CD11b CD86)、DC(CD11c)、NKT細胞(NK1.1 CD3
+)、活性化NKT細胞(NK1.1 CD3
+ CD69)、活性化NK細胞(NK1.1 CD3
− CD69)、活性化Th細胞(CD4 CD69)、細胞傷害性T細胞(CD8 CD69)、B細胞(CD19)およびB記憶細胞(CD19 CD73 CD80 CD273)が含まれる。5日間にわたって1日おきに注射して、各細胞型の数によって表された応答を
図7に示す。
【0068】
4.乳がんを有するマウスの血清に対するsvL4の効果
血清タンパク質における応答が担がんマウスと健康なマウスとでは異なるかどうかを測定するために、乳がん4T1細胞を移植した雌マウスから血清を収集した。腫瘍が10から12日間の期間で約500mm
3のサイズに成長した後、4価svL4を0.1および1.0nmol/gの用量で皮下注射した。血液を採取し、血清は注射の4時間後に調製した。4時間後の未治療動物の血清のサイトカインおよびケモカインのレベルは低かった。典型的な免疫細胞の活性化を反映する因子を表1に挙げる。IL−1β、IL−2、IL−6およびTNFαなどいくつかのタンパク質は、未治療動物では値が非常に低く、svL4で治療すると増加したもののアレイブロットではまだほとんど検出不可能であった。治療は全般的に、タンパク質の多くの増加、典型的には3から5倍の範囲の増加を引き起こした。増加したもののまだ量が少ないいくつかのサイトカインには、GM−CSF、CCL4、IGFBP−1、IL−21、リンホトキシン−αおよびIL−17が含まれた。主要なタンパク質には、CCL1、CCL8、CCL28、エンドスタチン、Fas、HVEM、IL−11、IL−12p70、IL−16、IL−27、IL−28、MIP−2、MMP−9、NOV、Soggy−1、SPARC、TIMP−2、TLR2およびVEGF−Bが含まれる。場合によっては高用量では大量のタンパク質が生じたが、いくつかのタンパク質では高用量でも量が少なかった。ほとんどのサイトカインでは、変化の程度はこの範囲でも用量依存応答性を示唆した。いくつかの可溶性タンパク質は、Fas、HVEMおよびTLR2などの細胞表面受容体として同定され、活性化細胞によってかなりシェディング(shedding)されることが示された。可溶性HVEMは、健康なマウスのように担がんマウスにおいて主要なタンパク質であるが、対照マウスでのレベルは乳がんを有するマウスよりも大きく、svL4で治療した後でも生じる増加は2倍にとどまった。
【0069】
【表1】
【0070】
これらのタンパク質は、活性化CD4
+およびCD8
+T細胞、樹状細胞ならびにマクロファージを含む様々な細胞型で発現し、ほとんど全てが免疫系の制御に関与する。サイトカイン/ケモカインの発現パターンは、強い抗がん免疫応答をもたらす。特に注意することは、多数のサイトカインおよびケモカインが治療に応答して血清中で増加するが、毒性のある「サイトカインストーム」の典型的なパターンは起こらなかったことである。
【0071】
健康なマウスと担がんマウスの血清タンパク質の間で、顕著な差が認められた。健康なマウスでは、IL−16、MMP−9、P−セクレチン、Soggy−1、TLR2、TRAILおよびTIMP−2が減少した一方、これらの因子は担がんマウスではsvL4に応答して劇的に増加した。IL−1α、IL−6、IFNγ、TNFαおよびTGFβは、健康なマウスでは非常に低レベルで存在し、増加しないが、担がんマウスでは検出可能で、svL4に応答して顕著に増加した。さらなる比較を表1に示す。表1の最も右の欄は、健康なBalb/cマウスによる別の実験で得られた治療(1nmol/g)対未治療試料の比を示す。いくつかのタンパク質、特に、IL−15、IL−17、IL−21、IL−28、IL−31およびCCL8/MCP−2は、未治療マウスでは無視できるほどの値であったので、治療した値は高い比となった。興味深いことに、担がんマウスで強く上昇したサイトカインは、健康なマウスではsvL4に応答して低下することが多いか、または変化を示さなかった。
【0072】
5.svL4およびα−CTLA−4によるメラノーマの治療
研究によって、GM−CSF源を追加しなければα−CTLA−4はマウスのメラノーマに対して効果がないことが示され、GM−CSF源は、常法では、照射した遺伝子改変GVAX細胞の注射によって供給した(Quezada等、2006年)。抑制性受容体、CTLA−4は腫瘍内のTreg細胞によって高レベルで発現したが、α−CTLA−4が結合した細胞の破壊にはFcγRIVを発現するマクロファージが必要であった(Simpson等、2013年)。svL4の投与は、単球の増殖および成熟を引き起こすので、svL4がGM−CSFの代わりとなるかどうかを試験した。この実験では、雄C57BL/6マウスの右側腹部にB16腫瘍細胞1.5×10
5個を移植した。4価svL4 1nmol/gの皮下注射を0日目に開始し、実験全体にわたってQ2Dで投与した。α−CTLA−4モノクローナル抗体(BioXCell社のクローン9H10)100μgを3日目から開始してQ3Dで腹腔内注射した。併用治療はこれらの注射頻度で維持した。
【0073】
腫瘍増殖は1日おきに測定した。α−CTLA−4単独で治療した群内で生じた腫瘍量の増加は最も迅速であったが、α−CTLA−4と共に4価svL4 1nmol/gで治療した群では生じた増加は最も遅かった(表2)。
【0074】
【表2】
【0075】
未治療群の腫瘍の大部分が1500mm
3の最大体積に達したとき、マウスを安楽死させ、各群の2匹の代表的動物の原発腫瘍を切除し、フローサイトメトリーによって分析した。エフェクターT(Teff)細胞は、CD3
+CD4
+CD25
−CD39
−として規定し、一方、Treg細胞はCD3
+CD4
+CD25
+CD39
+と規定した(Dwyer等、2010年)。特徴付けられていないCD25
+/CD39
−およびCD25
−/CD39
+細胞はTeff:Treg計算から排除した。T細胞分析を
図8にまとめて示す。(フローサイトメトリーデータプロットの例は、
図9に示す)。全T細胞集団の中で最も割合が低いTreg細胞は、svL4 1nmol/g単独で治療した動物の腫瘍で生じた(
図8A)。興味深いことに、治療群の中で最も高い割合はα−CTLA−4で治療した動物で生じた。α−CTLA−4による治療にsvL4 1nmol/gを追加すると、Treg細胞の割合が劇的に低下した。同様に、治療群の中で最高のTeff:Treg細胞比は、svL4 1nmol/g単独で見いだされた(
図8B)。
【0076】
これらのデータは、svL4 1nmol/gがTreg細胞集団を軽減することによってα−CTLA−4の活性を補完したことを示す。実際に、svL4はα−CTLA−4−依存性の機構によってTreg細胞の数を減少させた。Treg細胞が抗体に依存して強く減少することは、乳がんを有するBalb/cマウスの血清によるサイトカインデータによって説明することができる(表1)。svL4は、4時間以内にIL−12p70、IL−21およびIL−27の数倍の増加を誘導した。これらのサイトカインは、Treg細胞増殖を抑制し、IL−2受容体発現を減少させるとされている(Zhao等、2012年)。svL4は、Treg細胞によって分泌される抑制性サイトカインであるIL−10の増加を誘導しなかった。臨床研究では、Treg細胞の減少は、好ましい治療成績のためにTeff:Treg比よりも有意であるものと考えられる(Sim等、2014年)。したがって、svL4で治療した群においてTreg細胞が減少すると、svL4投与に応答して認められたマクロファージ、樹状細胞、CD8
+細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞の成熟(
図6)と共に、がんに対する免疫系の攻撃が強力に増強されると予想される。
【0077】
これらのデータは、svL4単独およびα−CTLA−4との組合せが、腫瘍における免疫抑制性制御性T細胞の低下に主要な役割を担うことを示す。これらのデータは、2つの因子が別々であるが補完的な活性を有することを示唆する。したがって、このような治療が様々ながんに適切であるという仮説が生じる。実際に、α−CTLA−4は、メラノーマにおける第II相および第III相の治験で、その他の腫瘍型では第I/II相の治験で現在試験されている。腫瘍の退縮および長続きする応答の証拠は、卵巣がん、前立腺がんおよび腎細胞がんを有する患者におけるモノクローナルイピリムマブで認められた(Weber、2010年)。CTLA−4に対する抗体は、マウスよりもヒトのがんに対してより有効である。svL4は、マウスにおいて有効で、ヒトにおいても有効であることが予測される。CTLA−4に対する抗体(イピリムマブ)は、患者の20から30%にのみ有効で、有効性は別のチェックポイントマーカーPD−1に対する抗体、ニボルマブと組み合わせたとき、約2倍である(Wolchok等、2013年)。これらの組合せでは、異なる抑制性受容体を標的とするので、有効性が増加した。したがって、メラノーマのマウス研究のデータに基づいて、α−CTLA−4、α−PD−1またはα−PD−L1による治療に対するsvL4の追加は、利益を高めると予想される。本発明は、一連の細胞を活性化し、免疫系を「刺激する」という非毒性の根本的または基本的な療法のために、腫瘍学者が述べた必要性を満足させる。次に、これらのチェックポイントを遮断する抗体は、より低い用量で、より毒性の少ない集中療法を提供することができる。
【0078】
がんの治療は通常診断後に開始されるが、疾患が進行してしまっていることが多い。免疫系を初期に活性化するために、svL4は、1日おきに皮下注射によって投与される。免疫細胞の活性化は、2回目または3回目の注射の後、すなわち、治療開始後3または5日目にマウスで検出される。イピリムマブは通常、3週間毎に静脈内注射する。svL4の投与を1日おきに継続すると、免疫系が高い活性化状態で維持され、したがってα−CTLA−4の注射の利益を最大限実現する免疫系の状態が確立される。類似の方法がα−PD−1でも実現可能である。
【0079】
6.svL4による神経膠芽腫の治療
神経膠芽腫および転移性脳腫瘍では、サイトカイン分泌およびエフェクターリンパ球の増殖を効率よく抑制する制御性T(Treg)細胞の大量浸潤が認められた(Joannes等、2009年)。最も悪性の細胞はPD−L1を発現するが、PD−1はTエフェクター細胞の一部で発現した。svL4が脳腫瘍に対して有効性を示すかどうかを試験するために、マウス(C57BL/6種、雌、6〜8週齢)の脳の片方の半球に神経膠腫細胞(マウスGL261細胞系)を移植した。1週間腫瘍を進行させた後、4価svL4を1nmol/gの用量で1日おきに2週間皮下注射した(Kushchayev等、2012年a、2012年b)。
【0080】
神経膠腫細胞(マウスGL261細胞系)を移植したマウス(C57BL/6種、雌、6〜8週齢)の生存を、照射(7および9日目に4Gy)単独、7日目の開始から1日おきにペプチド(1nmol/g)単独、または照射およびペプチドによる治療の後に測定した。
図10Aに示したように、腫瘍のサイズは、ペプチド治療動物でわずかに低下したが、動物の寿命はあまり延長しなかった(表3)。しかし、照射と組み合わせて、ペプチドは劇的に寿命を延長させ、治療開始から2倍に増加した(
図10B)。これらの結果は、腫瘍は最初のうちは貪食細胞の浸潤によって拡大するようだが、脳において活性化した貪食細胞は固形がんを効率よく攻撃することができないことを示唆している。照射後、腫瘍細胞は損傷を受けて貪食細胞によって十分に破壊されるようで、このことは腫瘍サイズの著しい低下によって示された。併用療法によって腫瘍の大きさが19日目に最小限になったことは、腫瘍増殖が遅延したことを示唆しており、これは臨床上有望で重要な指標である(Teicher、2006年)。
【0081】
【表3】
【0082】
7.svL4の投与応答研究
マウスによる実験のほとんどにおいて、4価svL4は1日おきに1nmol/gの用量で常法通り投与したが、これは最大限有効であるが必ずしも最適な用量ではないと考えられる。その他の実験において、0.1から0.2nmol/g(0.68から1.4mg/kg)の用量でより有効であることが見いだされた。神経膠腫細胞を脳に移植したマウスの実験において、1日おきに0.1nmol/gを投与するだけで、より高い用量よりも神経膠芽腫の腫瘍サイズの低下を引き起こすのに有効であった(
図11)。
【0083】
電離放射線は、
図10に示したように、免疫系に対してペプチドと相乗効果を有する。実際に、がん治療の成功は、放射線療法と宿主の免疫応答との相乗作用に大きく左右されることが見いだされた。しかし、1Gy超と規定した高用量の照射では、免疫は抑制される。それにも関わらず、照射はがん細胞におけるストレスタンパク質を上方制御し、抗原提示細胞が抗腫瘍応答を惹起して食作用または細胞溶解活性によって損傷を受けた細胞を除去する能力を高める(Manda等、2012年に概括されている)。
【0084】
治療薬がα−PD−1抗体である類似の実験を実施した。svL4と同様に、α−PD−1療法と照射を組み合わせると生存の改善が示された。生存の中央値は対照マウスでは25日で、α−PD−1のみの群は27日、照射群は28日、照射およびα−PD−1群は53日であった(Zeng等、2013年)。これらの実験を一緒に考えると、svL4およびα−PD−1と照射の併用治療によって長期生存が実現する。
【0085】
したがって、免疫療法はsvL4の適切な用量の投与とα−PD−1、α−PD−L1および低用量照射などのその他との療法の組合せによって最適化することができる。この組合せによる治療は相乗的で、神経膠芽腫腫瘍の手術による減量を最初に行った患者の生存の劇的な改善を示すことが予測される。
【0086】
8.svL4による卵巣がんの治療
svL4の最適な濃度が約0.1nmol/gであることは、卵巣がんのマウスモデルによる実験でさらに立証された(Roby等、2000年)。卵巣がん細胞系をC57BL/6雌マウスの腹腔に移植し、ほとんどの女性が診断を受ける後期を模倣するために、4価svL4による治療を45日後から開始した。治療は50日間継続し、がんの進行は腹水の発生の徴候として動物の体重によってモニターした。(腹水は、浮遊性腫瘍細胞を含有する液体の腹部における異常な蓄積を示す用語である)。この系では、腹腔における腫瘍の進行は、最初はゆっくりであるが、その後迅速に進行し、最終的には腫瘍腹水が発生する。対照動物の体重は約70日目から迅速に増加し(
図12A)、129日目までには対照マウス全てが死亡した(
図12B)。0.1nmol/gで治療した動物の体重は、正常な成長速度を上回って増加することはなく、8匹の動物全てが治療終了後20日の110日目まで生きて(
図12B)、8匹のうち4匹は150日目でもまだ生きていた。1nmol/gで治療した動物が1匹、治療中(約80日目)に死亡したが、130日目までに死亡したのはさらに1匹だけだった。治療終了後、動物の体重は最終的に増加し、svL4による治療は腹水の発生を抑制するが、腫瘍は排除しなかったことが示唆された。しかし、治療中止後5週間、生存したマウスは健康そうであった。治療を継続すると、腹水の形成をいつまでも抑制することができる。マウスのほとんどは治療中止後数週間生き続けたことは重要で、記憶B細胞の発生が示唆される。
【0087】
多種多様な免疫調節アプローチは、α−CTLA−4(イピリムマブ)、α−CA−125(オレゴボマブ)およびα−PD−L1などのいくつかのモノクローナル抗体を含めて、卵巣がんの治療について現在評価中である(Tse等、2014年)。臨床研究の早期の結果では、患者が通常疾患後期と診断されているので、ほとんどが芳しくなかった。
図12に示したように、svL4は後期卵巣がんをおそらくいつまでも制御し、したがって、チェックポイント遮断抗体を可能な範囲で補完すると予想される。この併用治療によって、抗体による免疫療法は短期の補助的な治療計画としての使用に制限されなくなると予想される。
【0088】
全治療、3種類の用量および2種類の投与頻度(月曜日/水曜日、MWまたは1日おき、Q2D)の比較を表4に示す。生存中央値の比較は、1日おきに0.1nmol/gの用量を投与すると生存が最大限延長されることを示した。
【0089】
【表4】
【0090】
薬物投与中および投与後に、マウスの体重および挙動に変化がなかったことは重要で、治療に関連した明白な毒性がないことが示された。同じ領域に薬物を繰り返し注射しても、見かけ上刺激作用も繊維組織または肉芽腫組織の形成も生じなかった。さらに、100日間svL4で治療したマウスの血清へのペプチドの結合を検出する試みは陰性で、ペプチドはマウスにとって抗原性ではないことが示唆された。
【0091】
9.多様ながんのイヌへのsvL4の静脈注射の有効性
様々ながんのイヌにおける低用量svL4の効果の予備試験では、4価svL4を単独で毎週注射すると、標準的な化学療法薬よりも、さらにはsvL4と組み合わせた化学療法薬よりも単独の方が寿命が顕著に延長して有効であった(
図13)。これらのデータは、化学療法薬がsvL4の免疫刺激作用を妨害することを示唆する。したがって、この組合せ免疫療法は、化学療法なしで使用することが最も良い。したがって、svL4およびα−CTLA−4またはα−PD−1を混合物として1回の注射で提供することが有利であろう。各成分の用量は最適の利益を得るために個々に、例えば、週1回注射の頻度で調整することができる。
【0092】
発明の態様
[1]ペプチドの治療有効量および第1抗体の治療有効量を含む医薬組成物であって、該ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、該抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、医薬組成物。
[2]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[1]に記載の医薬組成物。
[3]薬学的に許容される担体をさらに含む、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]第2抗体をさらに含み、第2抗体が第1抗体とは異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、[1]〜[3]のいずれかに記載の医薬組成物。
[5]治療有効量が、対象の免疫応答を活性化するために十分な量である、[1]〜[4]のいずれかに記載の医薬組成物。
[6]治療有効量が、がんを有する対象におけるがんを治療するために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[7]がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がんである、[6]に記載の医薬組成物。
[8]がんが、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌である、[7]に記載の医薬組成物。
[9]治療有効量が、ウイルス、マイコバクテリアまたは寄生虫によって生じる感染症を治療するために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[10]治療有効量が、腫瘍内の制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である、[1]〜[9]のいずれかに記載の医薬組成物。
[11]治療有効量が、エフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である、[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物。
[12]治療有効量が、IL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27、TNFαおよびIFNγからなる群から選択される少なくとも1つの抗がんサイトカインのレベルを増大させるために十分な量である、[1]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物。
[13]対象における免疫系を活性化するための医薬品の製造における組成物の使用であって、該組成物が免疫系を活性化するために十分な量のペプチドおよび第1抗体を含み、ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、第1抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、使用。
[14]対象における免疫系の活性化に使用するための組成物であって、組成物が免疫系を活性化するために十分な量のペプチドおよび第1抗体を含み、ペプチドが配列番号1によって表される活性配列を有し、第1抗体が免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、組成物。
[15]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[13]または[14]に記載の組成物の使用または組成物。
[16]免疫系を活性化するために十分な量が、対象におけるがんを治療するために十分な量である、[12]〜[15]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[17]がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん、結腸がん、頭部および頸部がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、卵巣がん、腎臓がんまたは皮膚がんである、[16]に記載の組成物の使用または組成物。
[18]がんが、結腸直腸腺癌、神経膠芽腫、肝細胞癌、ホルモン不応性前立腺がん、卵巣上皮癌、卵巣腺癌、メラノーマ、中皮腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がんまたは腎細胞癌である、[16]に記載の組成物の使用または組成物。
[19]免疫系を活性化するために十分な量が、ウイルス、マイコバクテリアまたは寄生虫によって生じる感染症を治療するために十分な量である、[13]または[14]に記載の組成物の使用または組成物。
[20]免疫系を活性化するために十分な量が、制御性T細胞集団を抑制するために十分な量である、[13]〜[19]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[21]免疫系を活性化するために十分な量が、エフェクターT細胞集団を増加させるために十分な量である、[13]〜[20]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[22]免疫系を活性化するために十分な量が、IL−2、IL−12p70、IL−21、IL−27およびIFNγからなる群から選択される少なくとも1つの抗がんサイトカインの対象血清レベルを増大するために十分な量である、[12]〜[21]のいずれかに記載の組成物の使用または組成物。
[23]ペプチドの治療量が約0.1nmol/kg体重から約1500nmol/kg体重の間である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[24]第1ペプチドおよび第2ペプチドの治療量が約1nmol/kg体重から約1000nmol/kg体重の間である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[25]第1ペプチドおよび第2ペプチドの治療量が約1nmol/kg体重である、[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物。
[26]免疫チェックポイントタンパク質がCTLA−4、PD−1、PD−L1およびPD−L2の少なくとも1つである、[1]〜[12]のいずれかに記載の医薬組成物または[13]〜[22]のいずれかに記載の組成物の使用または[14]〜[25]のいずれかに記載の組成物。
[27]抗体が、α−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1およびα−PD−L2からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、[26]に記載の医薬組成物または組成物の使用または組成物。
[28]対象における免疫応答を活性化する方法であって、
対象にペプチドの治療有効量を投与するステップ、ここで該ペプチドは配列番号1によって表される活性配列を有する、および
抗体の治療有効量を対象に投与するステップ、ここで該抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、
を含む方法。
[29]抗体がα−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1、α−PD−L2およびそれらの組合せからなる群から選択される、[28]に記載の方法。
[30]ペプチドが、抗体の前に投与される、[28]または[29]に記載の方法。
[31]ペプチドが、抗体の少なくとも5日前に投与される、[30]に記載の方法。
[32]ペプチドが、抗体の少なくとも3日前に投与される、[30]に記載の方法。
[33]ペプチドが、1日おきに投与される、[28]〜[32]のいずれかに記載の方法。
[34]抗体が抗体治療期間に投与され、抗体治療期間の後、ペプチドの投与が継続される、[28]〜[33]のいずれかに記載の方法。
[35]抗体が、少なくとも2つの異なる免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体を含む、[28]〜[34]のいずれかに記載の方法。
[36]対象ががんを有し、対象に照射治療を投与することをさらに含む、[28]〜[35]のいずれかに記載の方法。
[37]免疫応答を活性化するためのキットであって、
ペプチドの治療有効量、ここで該ペプチドは配列番号1によって表される活性配列を有する、および
1つまたは複数の抗体の治療有効量、ここで該抗体は免疫チェックポイントタンパク質に対するものである、
を含む、キット。
[38]少なくとも1つの抗体がα−CTLA−4、α−PD−1、α−PD−L1、α−PD−L2からなる群から選択される、[37]に記載のキット。
[39]ペプチドが、配列番号3に記載の構造を有する、[37]または[38]に記載のキット。
【0093】
【表5-1】
【0094】
【表5-2】
【0095】
【表5-3】