特許第6649961号(P6649961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6649961
(24)【登録日】2020年1月21日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】アミノ酸アシル化試薬及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/46 20060101AFI20200210BHJP
   C07D 498/08 20060101ALI20200210BHJP
   A61K 31/537 20060101ALN20200210BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20200210BHJP
【FI】
   C07D263/46CSP
   C07D498/08
   !A61K31/537
   !A61P35/00
【請求項の数】16
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2017-548972(P2017-548972)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公表番号】特表2018-510157(P2018-510157A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】US2016022797
(87)【国際公開番号】WO2016149464
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】62/134,065
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515254806
【氏名又は名称】レゲネロン ファーマシューティカルス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】トマス ニトリ
(72)【発明者】
【氏名】スリナトフ トヒルマライ ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】トマス ピー. マーコタン
(72)【発明者】
【氏名】ナレシュクマル ジャイン
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/052537(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/140317(WO,A2)
【文献】 特表2008−528493(JP,A)
【文献】 特開昭46−1375(JP,A)
【文献】 米国特許第02649458(US,A)
【文献】 特表平02−503923(JP,A)
【文献】 特表2003−532708(JP,A)
【文献】 米国特許第04399163(US,A)
【文献】 HANS R KRICHELDORF,UBER HERSTELLUNG UND EIGENSCHAFTEN VON 2-THIOXO-OXAZOLIDONEN-(5),CHEM. BER,1971年,VOL:104,PAGE(S):3156 - 3167,URL,http://dx.doi.org/10.1002/cber.19711041021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
又はその塩
(式中、R1及びR2は、それぞれメチルである)。
【請求項2】
式(I)の化合物が式(Ia)又は(Ib)の化合物である、請求項1の化合物:
【化2】
(ここで、式(Ia)又は(Ib)の化合物は立体異性的に純粋である)。
【請求項3】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物である、請求項1の化合物:
【化3】
(ここで、式(Ia)の化合物は立体異性的に純粋である)。
【請求項4】
式(Iaa)の化合物:
【化4】
(ここで、当該化合物は立体異性的に純粋である)。
【請求項5】
式(II)の化合物:
【化5】
を調製する方法であって、式(II)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(I)の化合物:
【化6】
を求核剤と接触させることを含む方法
(式中:
R1及びR2は、それぞれメチルであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【請求項6】
求核剤がアルコールである、請求項5の方法。
【請求項7】
アルコールが、式RA-OH(式中、RAは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロシクロアルキルである)を有する化合物である、請求項5又は6の方法。
【請求項8】
求核剤がC−3水酸基を有するマイタンシノイドである、請求項5〜7のいずれか一項の方法。
【請求項9】
求核剤が式(IV)の化合物:
【化7】
である、請求項5〜8のいずれか一項の方法。
【請求項10】
式(II)の化合物が式(IIa)の化合物:
【化8】
であり、且つ式(I)の化合物が式(Ia)の化合物:
【化9】
であり、ここで、式(Ia)及び(IIa)の化合物は立体異性的に純粋である、請求項5〜9のいずれか一項の方法。
【請求項11】
一つ以上のルイス酸が、Zn(OTf)2、AgOTf、Sc(OTf)3、Cu(OTf)2、Fe(OTf)2、Ni(OTf)2、又はMg(OTf)2からなる群から選択される、請求項5〜10のいずれか一項の方法。
【請求項12】
一つ以上の塩基が、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンからなる群から選択される、請求項5〜11のいずれか一項の方法。
【請求項13】
当該方法が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセタミドからなる群から選択される、一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤中で行われる、請求項5〜12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
調製された式(Ia)の化合物が少なくとも95%の鏡像体過剰率を有する、請求項10〜13のいずれか一項の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物:
【化10】
を調製する方法であって、一つ以上の塩基の存在下において、式(III)の化合物:
【化11】
を1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させることを含む、方法
(式中、R1及びR2は、それぞれメチルである)。
【請求項16】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物:
【化12】
であり、且つ式(III)の化合物が式(IIIa)の化合物:
【化13】
であり、ここで、式(IIIa)の化合物は立体異性的に純粋である、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本出願は、2015年3月17日に出願された、アミノ酸アシル化試薬及びその使用方法という標題の米国仮特許出願第62/134,065号に対しての優先権及び利益を請求している。この出願の内容は、全ての目的のために、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本件開示は、アミノ酸アシル化試薬及び当該試薬で求核剤をアシル化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
α−アミノ酸は、タンパク質の基礎構造単位であり、且つ多くの生物学上重要な化合物の化学構造中に存在する。α−アミノ酸のアルファ炭素は、非水素側鎖に結合した時、キラル中心である。そのようなアミノ酸、例えばアラニンは、L−及びD−と呼称された二つの立体異性体の一つであることができる。アミノ酸の立体化学は、例えば、マイタンシノイドの性質を包含して、化合物の生物学的性質に影響を与え得る。マイタンシノイドは、天然物であるマイタンシンに構造的に関連している細胞毒性化合物である。マイタンシノイドは、マイタンシノールのC−3アミノ酸エステルのような、マイタンシノールのC−3エステル及びその誘導体を包含する。マイタンシノールのある種のC−3 N−メチル−L−アラニンエステルは、対応するD型のものよりも細胞毒性が強いことが報告されている。立体異性的に純粋なマイタンシノールのC−3アミノ酸エステルを合成する現在の方法は、低い収率の反応を含む多段階を必要とし、入手し難い試薬を必要とし、及び/又は望まれていない立体異性体を除去するための精製工程を必要とする。したがって、効率的にアミノ酸を組み込んで、例えば、マイタンシノールのC−3エステルのようなエステルを高い立体異性体純度で提供する合成方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要約)
ここで提供されるのは、式(I)の化合物である:
【化1】
式中、
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである。
【0005】
さらに、ここで提供されるのは、求核剤をアシル化する方法であって、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、求核剤を式(I)の化合物と接触させることを含む、前記方法である。いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib)の化合物である:
【化2】
式中、R1及びR2は上で定義されたとおりである。ある種の実施態様において、当該方法は、立体異性的に純粋である、アミノ酸が結合した生成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(詳細な説明)
ここで提供されるのは、式(I)の化合物である:
【化3】
式中、
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、又は少なくとも一つの炭素を含むアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、又はアラルキルである。
【0007】
さらに、ここで提供されるのは、求核剤をアシル化する方法であって、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、求核剤を式(I)の化合物と接触させることを含む、前記方法である。
【0008】
さらに、ここで提供されるのは、求核剤をアシル化する方法であって、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、求核剤を式(Ia)の化合物又は式(Ib)の化合物と接触させることを含む、前記方法である。
【0009】
1.定義
ここで使用される場合、「アルキル」は、一価で且つ飽和された炭化水素ラジカル部分を指す。アルキルは、任意に置換されており、且つ、線状、分岐又は環状、即ちシクロアルキル、であることができる。アルキルは、これらに限定されないが、1乃至20の炭素原子を有するもの、即ちC1-20アルキル;1乃至12の炭素原子を有するもの、即ちC1-12アルキル;1乃至8の炭素原子を有するもの、即ちC1-8アルキル;1乃至6の炭素原子を有するもの、即ちC1-6アルキル;及び1乃至3の炭素原子を有するもの、即ちC1-3アルキルを包含する。アルキル部分の例は、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル部分、ヘキシル部分、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルを包含する。
【0010】
ここで使用される場合、「アルケニル」は、少なくとも二つの炭素原子及び一つ以上の非芳香族炭素−炭素二重結合を含む、一価の炭化水素ラジカル部分を指す。アルケニルは、任意に置換されており、且つ、線状、分岐又は環状であることができる。アルケニルは、これらに限定されないが、2乃至20の炭素原子を有するもの、即ちC2-20アルケニル;2乃至12の炭素原子を有するもの、即ちC2-12アルケニル;2乃至8の炭素原子を有するもの、即ちC2-8アルケニル;2乃至6の炭素原子を有するもの、即ちC2-6アルケニル;及び2乃至4の炭素原子を有するもの、即ちC2-4アルケニルを包含する。アルケニル部分の例は、これらに限定されないが、ビニル、プロペニル、ブテニル、及びシクロヘキセニルを包含する。
【0011】
ここで使用される場合、「アルキニル」は、少なくとも二つの炭素原子及び一つ以上の炭素−炭素三重結合を含む、一価の炭化水素ラジカル部分を指す。アルキニルは、任意に置換されており、且つ、線状、分岐又は環状であることができる。アルキニルは、これらに限定されないが、2乃至20の炭素原子を有するもの、即ちC2-20アルキニル;2乃至12の炭素原子を有するもの、即ちC2-12アルキニル;2乃至8の炭素原子を有するもの、即ちC2-8アルキニル;2乃至6の炭素原子を有するもの、即ちC2-6アルキニル;及び2乃至4の炭素原子を有するもの、即ちC2-4アルキニルを包含する。アルキニル部分の例は、これらに限定されないが、エチニル、プロピニル、及びブチニルを包含する。
【0012】
ここで使用される場合、「アリール」は、環原子は炭素原子のみである芳香族化合物のラジカルである一価の部分を指す。アリールは、任意に置換されており、且つ、単環又は多環、例えば二環又は三環であることができる。アリール部分の例は、これらに限定されないが、6乃至20の環炭素原子を有するもの、即ちC6-20アリール;6乃至15の環炭素原子を有するもの、即ちC6-15アリール、及び6乃至10の環炭素原子を有するもの、即ちC6-10アリールを包含する。アリール部分の例は、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、及びピレニルを包含する。
【0013】
ここで使用される場合、「アルカリール」は、少なくとも一つのアルキルで置換されているアリールを指す。アルカリールは、任意に置換されている。
【0014】
ここで使用される場合、「アラルキル」は、少なくとも一つのアリールで置換されているアルキルを指す。アラルキルは、任意に置換されている。
【0015】
ここで使用される場合、「ヘテロアルキル」は、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルキルを指す。ここで使用される場合、「ヘテロアルケニル」は、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルケニルを指す。ここで使用される場合、「ヘテロアルキニル」は、一つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されているアルケニルを指す。適切なヘテロ原子は、これらに限定されないが、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子を包含する。
【0016】
ここで使用される場合、「ヘテロアリール」は、芳香環の一つ以上の環原子が、酸素、硫黄、窒素、又は燐原子で置換されているアリールを指す。
【0017】
ここで使用される場合、「任意に置換されている」とは、一価のラジカル部分を記載するために使用されるとき、例えば、任意に置換されたアルキルは、そのような部分が任意に一つ以上の置換基に結合されていることを意味する。そのような置換基の例は、これらに限定されないが、ハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アジド、エポキシ、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、
【化4】
を包含し、式中、RA、RB、及びRCは、各存在において独立に、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアリール、もしくはヘテロシクロアルキルであり、又は、RA及びRBは、それらが結合している原子と一緒になって飽和又は不飽和の炭素環式の環を形成し、ここで、当該環は任意に置換されており、及びここで、一つ以上の環原子は、任意にヘテロ原子で置換されている。いくつかの実施態様において、RA、RB、及びRCは水素原子ではない。ある種の実施態様において、一価のラジカルが、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、又は任意に置換された飽和もしくは不飽和の炭素環式環で任意に置換されているとき、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、又は任意に置換された飽和もしくは不飽和の炭素環式環上の置換基は、仮にそれらが置換されているならば、追加の置換基でさらに任意に置換されている置換基で置換されてはいない。
【0018】
ここで使用される場合、「アミノ酸側鎖」は、例えば、天然の、非天然の、標準の、非標準の、タンパク質を構成する、又はタンパク質を構成しないα−アミノ酸を包含するα−アミノ酸の、α−炭素に結合している一価の非水素置換基を指す。アミノ酸側鎖の例は、これらに限定されないが、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びシトルリン、並びにそれらの誘導体の、α−炭素置換基を包含する。
【0019】
ここで使用される場合、「求核剤」は、求電子中心と反応し、それによって共有結合を形成する孤立電子対を含む物質を指す。典型的な求核剤は、そのような共有結合を形成する、反応性の高い酸素、硫黄、及び/又は窒素原子を含む。
【0020】
ここで使用される場合、「ルイス酸」は、孤立電子対を受け入れる分子又はイオンを指す。ここに記載された方法で使用されるルイス酸は、プロトン以外のルイス酸である。ルイス酸は、これらに限定されないが、非金属酸、金属酸、硬ルイス酸、及び軟ルイス酸を包含する。ルイス酸は、これらに限定されないが、アルミニウム、ホウ素、鉄、錫、チタン、マグネシウム、銅、アンチモン、燐、銀、イッテルビウム、スカンジウム、ニッケル、及び亜鉛のルイス酸を包含する。実例となるルイス酸は、これらに限定されないが、AlBr3、AlCl3、BCl3、三塩化ホウ素硫化メチル、BF3、三フッ化ホウ素メチルエーテル、三フッ化ホウ素硫化メチル、三フッ化ホウ素テトラヒドロフラン、ジシクロヘキシルホウ素トリフルオロメタンスルホン酸塩、臭化鉄(III)、塩化鉄(III)、塩化錫(IV)、塩化チタン(IV)、チタン(IV)イソプロポキシド、Cu(OTf)2、CuCl2、CuBr2、塩化亜鉛、ハロゲン化アルキルアルミニウム(RnAlX3-n、式中、Rはヒドロカルビル;Xは、F、Cl、Br又はIから選択されるハロゲン化物;及びnは0乃至3の整数である)、Zn(OTf)2、Yb(OTf)3、Sc(OTf)3、MgBr2、NiCl2、Sn(OTf)2、Ni(OTf)2、及びMg(OTf)2を包含する。
【0021】
ここで使用される場合、「塩基」は、孤立電子対を提供する分子又はイオンを指す。ここに記載した方法に適する塩基は、非求核性である、即ち、当該塩基は、プロトン以外の求電子剤に電子対を提供せず、プロトン以外の求電子剤と結合を形成しない。
【0022】
ここで使用される場合、「立体異性的に純粋」は、化合物を表し、ここで、当該化合物の供試試料のために、示された立体異性体は、その化合物の他の立体異性体よりも、より大きな程度で存在する。いくつかの実施態様において、ここに記載された立体異性的に純粋な化合物は、当該化合物の一つの立体異性体の重量で、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は97%以上含む。立体異性体純度は、化合物の鏡像体過剰率、即ち、一方の鏡像異性体が他方の鏡像異性体を超えて存在する程度によって定量され得る。立体異性的に純粋な化合物は、0%超の鏡像体過剰率(ee)を有する、即ち、ラセミ体ではない。用語「立体異性的に純粋」は、二つ以上の立体中心を有する化合物を表すためにも使用され得、ここで、シングル・ジアステレオマーは、他の立体異性体よりもより大きな程度で存在する。この程度は、化合物のジアステレオマー過剰率の観点から定量され得る。用語「ジアステレオマー過剰率」は、組成物中における、所望のシングル・ジアステレオマーのモル分率を残りのジアステレオマーのモル分率と比べたときの差を指す。ジアステレオマー過剰率は、次のように計算される:(シングル・ジアステレオマーの量)−(他のジアステレオマーの量)/1。例えば、1を90%、2、3、4又はそれらの混合物を10%含有する組成物は、80%のジアステレオマー過剰率を有する[(90−10)/1]。95%の1及び5%の2、3、4又はそれらの混合物を含有する組成物は、90%のジアステレオマー過剰率を有する[(95−5)/1]。99%の1及び1%の2、3、4又はそれらの混合物を含有する組成物は、98%のジアステレオマー過剰率を有する[(99−1)/1]。ジアステレオマー過剰率は、1、2、3、又は4のいずれか一つのために、同様に計算され得る。過剰率を決定する方法は、これらに限定されないが、NMR、キラルHPLC、及び旋光度を包含する。
【0023】
ここで使用される場合、「希釈剤」は、その中に、反応成分、例えば、反応物質、基質、及び/又は試薬が所望の化学反応を促進するために溶解され及び/又は懸濁されている、非水性の液体有機化合物/溶剤又は有機化合物/溶剤の混合物を指す。希釈剤は、これらに限定されないが、低沸点希釈剤、高沸点希釈剤、極性非プロトン性希釈剤、及び非極性希釈剤を包含する。
【0024】
ここで使用される場合、「求核剤の付加部分」は、参照された求核剤の、前記求核剤の前記求電子剤との反応の結果として求電子剤に付加される構造部分を指す。
【0025】
ここで使用される場合、「アミド合成条件」は、例えば、カルボン酸、活性化されたカルボン酸、又はハロゲン化アシルとアミンとの反応の間にアミドの形成を生じさせるのに適する反応条件を指す。適切な条件は、これらに限定されないが、カルボン酸と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)、ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBrOP)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム 3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HATU)、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジニウム ヘキサフルオロホスフェート(CIP)、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)及びカルボニルジイミダゾール(CDI)を包含するがこれらに限定されないアミンとの間の反応を生じさせるために、試薬を使用する条件を包含する。
【0026】
ここで使用される場合、「活性化されたカルボキシル」は、次の構造を有する部分を指す:
【化5】
式中、Aは、それが結合しているカルボニルを求電子的にする、例えばアルコール、アミン、又はチオールに対してよく反応するようにする部分である。活性化されたカルボキシル部分は、これらに限定されないが、酸ハロゲン化物、エステル、及び無水物を包含する。
【0027】
ここで使用される場合、「アミン保護基」は、窒素原子に結合されており、且つ当該窒素原子の求核的性質を弱めている部分を指す。アミン保護基の例は、これらに限定されないが、Peter G. M. Wuts及びTheodora W. Greene、“Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis(有機合成におけるグリーネの保護基)”、第4版、2006年(これは、その全体が、参照により、ここに組み入れられる)に開示されているものを包含する。実例となる基は、これらに限定されないが、BOC、Troc、Cbz、及びFMOCを包含する。
【0028】
ある種の基、部分、置換基、及び原子は、当該原子によって当該基、部分、置換基、原子が結合されているその原子を示すために、結合を切断している波状の線で描写されている。例えば、
【化6】
として描写されているプロピル基で置換されているフェニル基は、次の構造:
【化7】
を有する。
【0029】
2.方法
ここで提供されるのは、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、求核剤を式(I)の化合物:
【化8】
と接触させることを含む、求核剤をアシル化する方法であり、
式中、
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである。
【0030】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib)の化合物である:
【化9】
式中、R1及びR2は上で定義されたとおりである。
【0031】
いくつかの実施態様において、式(Ia)の立体異性的に純粋である化合物又は式(Ib)の立体異性的に純粋である化合物は、キラル・クロマトグラフィーによって単離される。キラル・クロマトグラフィーは、当業者によって適切であると考えられるキラル・カラム及び分離条件を使用して実施され得る。
【0032】
ここで提供されるのは、また、式(II)の化合物:
【化10】
の調製方法であって、式(II)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(I)の化合物:
【化11】
を求核剤と接触させることを含む方法である、
式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である。
【0033】
ここで提供されるのは、また、式(IIa)の化合物:
【化12】
の調製方法であって、式(IIa)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(Ia)の化合物:
【化13】
を求核剤と接触させることを含む方法である、
式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である。
いくつかの実施態様において、立体異性的に純粋な式(IIa)の化合物は、クロマトグラフィーによって単離される。クロマトグラフィーの条件及び方法は、当業者によって適切であると看做された条件及び方法のいずれかである。
【0034】
ここで提供されるのは、また、式(IIa)の化合物:
【化14】
の調製方法であって、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(Ia)の化合物:
【化15】
を求核剤と接触させることを含む方法である
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0035】
ここで提供されるのは、また、式(IIb)の化合物:
【化16】
の調製方法であって、式(IIb)の化合物(ここで、式II(b)の化合物は立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(Ib)の化合物:
【化17】
を求核剤と接触させることを含む方法である
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0036】
いくつかの実施態様において、前記方法は、希釈剤中で実施され、ここで、前記希釈剤は、一つ以上の極性非プロトン性溶剤であるか、又は一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む。
【0037】
いくつかの実施態様において、前記方法は、0乃至100℃、10乃至80℃、15乃至70℃、15乃至60℃、20乃至60℃、又は40乃至60℃の温度で実施される。いくつかの実施態様において、前記方法は、45乃至55℃の温度で実施される。いくつかの実施態様において、反応は、少なくとも、2、4、6、8、10、12、24、36、48、60、72、84、96、108、又は120時間混合される。いくつかの実施態様において、反応は2乃至50時間実施され、ここで、反応は、初めは室温で且つその後は40乃至60℃で実施される。ある種の実施態様において、前記方法は、少なくとも24時間、15乃至60℃の温度で実施される。ある種の実施態様において、前記方法は、少なくとも24時間、20乃至60℃の温度で実施される。いくつかの実施態様において、前記方法は、40乃至60℃で4乃至8時間、DMFを含む希釈剤中で実施される。いくつかの実施態様において、前記方法は、50℃で6時間、DMFを含む希釈剤中で実施される。
【0038】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、無水条件下で、ここに記載されたような求核剤と接触させられる。ある種の実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、無水希釈剤中で、ここに記載されたような求核剤と接触させられる。ある種の実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、活性化された分子篩の存在下において、希釈剤中で、求核剤と接触させられる。
【0039】
(a)式(I)の化合物
ここで提供されるのは、式(I)の化合物:
【化18】
であり、
式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである。
【0040】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)又は(Ib)の化合物である:
【化19】
【0041】
(i)R1部分
いくつかの実施態様において、R1は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである。いくつかの実施態様において、R1は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールである。いくつかの実施態様において、R1はC1-12アルキルである。いくつかの実施態様において、R1はC1-6アルキルである。いくつかの実施態様において、R1はC1-3アルキルである。ある種の実施態様において、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールは、置換されていない。いくつかの実施態様において、R1はメチルである。
【0042】
いくつかの実施態様において、R1はアミノ酸側鎖である。いくつかの実施態様において、R1は:
【化20】
である。
【0043】
いくつかの実施態様において、R1は:
【化21】
である。
【0044】
いくつかの実施態様において、R1は:
【化22】
である。
【0045】
いくつかの実施態様において、R1は、ヘテロ原子を含まないアミノ酸側鎖である。
【0046】
(ii)R2部分
いくつかの実施態様において、R2は、水素原子、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである。いくつかの実施態様において、R2は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールである。いくつかの実施態様において、R2は水素原子ではない。いくつかの実施態様において、R2はC1-12アルキルである。いくつかの実施態様において、R2はC1-6アルキルである。いくつかの実施態様において、R2はC1-3アルキルである。ある種の実施態様において、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリールは、置換されていない。
【0047】
(iv)量
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、0.05乃至1.00Mの反応濃度で存在する。いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、又は1.0Mで存在する。いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、0.3乃至0.5Mの濃度で存在する。
【0048】
いくつかの実施態様において、求核剤に対して化学量論量の式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物が使用される。いくつかの実施態様において、求核剤と比較して過剰量の、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物が使用される。いくつかの実施態様において、求核剤と比較して、1.0乃至20eq、2.0乃至15eq、5乃至15eq、又は8乃至12eqのルイス酸が使用される。
【0049】
(v)実例となる実施態様
いくつかの実施態様において:
R1はアミノ酸側鎖であり;及び
R2は、水素原子、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである。
【0050】
いくつかの実施態様において:
R1は、置換されていないC1-6アルキル、又はベンジルであり;及び
R2は、水素原子又は置換されていないC1-6アルキルである。
【0051】
いくつかの実施態様において:
R1は、置換されていないC1-6アルキル又はベンジルであり;及び
R2は、置換されていないC1-6アルキルである。
【0052】
いくつかの実施態様において:
R1は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり;
ここで、R1及びR2の前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、及びアリールは、置換されていない。
【0053】
いくつかの実施態様において:
R1は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり、及び
R2は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり;
ここで、R1及びR2の前記アルキル、アルケニル、アルキニル、及びアリールは、置換されていない。
【0054】
いくつかの実施態様において、R1及びR2は、それぞれ独立にC1-6アルキルである。
【0055】
いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物である:
【化23】
【0056】
いくつかの実施態様において、当該化合物は、式(Ia)を有し、式中:
R1は、置換されていないC1-6アルキル、又はベンジルであり;及び
R2は、置換されていないC1-6アルキルである。
【0057】
いくつかの実施態様において、当該化合物は:
【化24】
である。
【0058】
(vi)式(I)の化合物の調製
式(I)の化合物は、それらに対応するアミノ酸から、一工程で直接に入手可能である。いくつかの実施態様において、式(I)の化合物は、対応するアミノ酸、即ち、式(III)の化合物:
【化25】
又はその塩から調製される。例えば、式(I)の化合物は、例えば米国特許第4,411,925号(これは、その全体が、参照によりここに組み入れられる)にしたがって、式(III)の化合物を1,1′−チオカルボニルジイミダゾール又はO,S−ジメチルエステルと接触させることによって、調製され得る。式(Ia)及び(Ib)の化合物は、それらに対応するキラルL−又はD−アミノ酸から、直接的に得られ得る。
【0059】
いくつかの実施例において、式(Ia)及び(Ib)の立体異性的に純粋な化合物は、当業者に知られているクロマトグラフィー技術を使用して単離され得る。いくつかの実施態様において、式(Ia)の立体異性的に純粋な化合物又は式(Ib)の立体異性的に純粋な化合物は、異性体の混合物をキラル・カラムに供することによって得られる。キラル・カラム及び分離条件は、当業者によって適切であると看做されたもののいずれかであり得る。いくつかの実施例において、キラル・カラムは、フェノメネクス・ルック・5μm・アミロース−1・カラム(Phenomenex Luc 5μm Amylose-1 column)である。いくつかの実施例において、キラル・カラムは、キラル・テクノロジーズ・キラルパック(Chiral Technologies CHIRALPAK)(登録商標)5μエイ・ディー−エイチ・カラム(5μ AD-H column)である。
【0060】
例えば、式(Ia)の化合物:
【化26】
は、式(Ia)の化合物を形成するために、一つ以上の塩基の存在下で、式(IIIa)の化合物:
【化27】
を1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させることを含む方法で調製され得る、式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである。
【0061】
さらに、式(Ib)の化合物:
【化28】
は、式(Ib)の化合物を形成するために、一つ以上の塩基の存在下で、式(IIIb)の化合物:
【化29】
を1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させることを含む方法で調製され得る、式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである。
【0062】
いくつかの実施態様において、R1及びR2は、共にアルキルである。いくつかの実施態様において、R1及びR2は、共に置換されていないC1-6アルキルである。いくつかの実施態様において、R1及びR2は、共にメチルである。
【0063】
いくつかの実施態様において、式(Ia)の立体異性的に純粋な化合物又は式(Ib)の立体異性的に純粋な化合物は、式(I)の化合物をキラル・カラムに供することによって得られる。キラル・カラム及び分離条件は、当業者によって適切であると看做されたもののいずれかであり得る。
【0064】
ある種の実施態様において、反応は、2乃至72時間混合される。ある種の実施態様において、反応は、少なくとも2、4、6、8、10、12、24、又は36時間混合される。いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物は、−100乃至60℃;−80乃至30℃;−50乃至20℃、−20乃至10℃、又は0℃において、1,1′−チオカルボニルジイミダゾール及びさらなる塩基の一つと接触させられる。いくつかの実施態様において、1,1′−チオカルボニルジイミダゾールは、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物及び塩基の混合物に、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10時間にわたって、小分けして添加される。ある種の実施態様において、添加は、約0℃において行われる。ある種の実施態様において、反応は、1,1′−チオカルボニルジイミダゾールの添加後、追加の2、4、6、8、10、12、又は24時間混合される。特定の実施態様において、1,1′−チオカルボニルジイミダゾールは、0℃において4時間にわたって添加され、且つその後、室温まで温められる。
【0065】
ある種の実施態様において、(式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物に関して)化学量論量又は過剰量の1,1′−チオカルボニルジイミダゾールが使用される。いくつかの実施態様において、1.0乃至4.0eq.、1.05乃至3.0eq.、又は1.1乃至2.0eq.の1,1′−チオカルボニルジイミダゾールが使用される。いくつかの実施態様において、少なくとも1.1eq.の1,1′−チオカルボニルジイミダゾールが使用される。
【0066】
適切な塩基は、これらに限定されないが、三級アミン及びピリジン塩基を包含する。ある種の実施態様において、塩基は、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、又はトリエチルアミンである。ある種の実施態様において、塩基は、ジイソプロピルエチルアミンである。
【0067】
いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)、又は(IIIb)の化合物と比較して、過剰量の塩基が使用される。いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)、又は(IIIb)の化合物と比較して、1.01乃至20eq.、1.1乃至10eq.、1.1乃至5eq.、1.5乃至3eq.、1.5乃至2.5eq.、又は2.0eq.の塩基が使用される。
【0068】
いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)、又は(IIIb)の化合物は、希釈剤中で、一つ以上の塩基の存在下で、1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させられ、ここで、希釈剤は、一つ以上の極性非プロトン性溶剤であるか又は一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む。いくつかの実施態様において、希釈剤は、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、又はアセトンである。いくつかの実施態様において、希釈剤はジクロロメタンである。いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物は、希釈剤中に、0.001M乃至0.5Mの濃度で存在する。いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物は、希釈剤中に、0.01乃至0.10Mの濃度で存在する。いくつかの実施態様において、式(III)、(IIIa)又は(IIIb)の化合物は、希釈剤中に、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.3、0.4、0.5Mの濃度で存在する。
【0069】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物を調製する方法は、さらに、シリカゲルを通して反応混合物をろ過し、且つ式(Ia)又は(Ib)の化合物を溶出させることにより、式(I)、(Ia)又は(Ib)の化合物を単離することを含む。ある種の実施態様において、溶出は、ジクロロメタンで行われる。ある種の実施態様において、溶出は、酢酸エチルとヘキサンとの混合物で行われる。特定の実施態様において、溶出は、ヘキサン中0乃至50%の酢酸エチルでの勾配溶出を使用して行われる。
【0070】
いくつかの実施態様において、式(Ia)又は(Ib)の化合物は、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80%の収率、又は少なくとも90%の収率で得られる。
【0071】
ある種の実施態様において、式(Ia)の化合物:
【化30】
は、式(Ia)の化合物を形成するために、三級アミン塩基の存在下で、式(IIIa)の化合物:
【化31】
(式中、R1及びR2はメチルである)
を1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させることを含む方法で調製される。
【0072】
(b)求核剤
適切な求核剤は、これらに限定されないが、アルコール、アミン、及びチオールを包含する。いくつかの実施態様において、求核剤は、式R-SH又はR-OH(式中、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクロアルキルである)の化合物である。いくつかの実施態様において、求核剤は、式RXRY-NH(式中、RXは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクロアルキルであり、且つRYは、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクロアルキニルである)の化合物である。ある種の実施態様において、RYは水素原子である。
【0073】
ある種の実施態様において、求核剤は、一級又は二級アルコールである。いくつかの実施態様において、求核剤は、C−3水酸基を有するマイタンシノイドである。いくつかの実施態様において、求核剤は、式(IV)を有する化合物:
【化32】
又はその立体異性体、塩、もしくは溶媒和物である。
【0074】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、希釈剤中で、求核剤、ルイス酸、及び塩基と接触させられ、ここで、前記希釈剤中の求核剤の濃度は、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20Mである。
【0075】
(c)ルイス酸
ここで提供される方法は、プロトンを発生するもの以外の、一つ以上のルイス酸の存在下で行われる。いくつかの実施態様において、ルイス酸は、Zn(OTf)2、AgOTf、Sc(OTf)3、 Cu(OTf)2、Fe(OTf)2、Ni(OTf)2、Sn(OTf)2、Ni(acac)2、Cu(acac)2、Zn(acac)2、TiCl4、及びZnCl2、又はMg(OTf)2である。ある種の実施態様において、ルイス酸は亜鉛のルイス酸である。いくつかの実施態様において、ルイス酸はZn(OTf)2である。
【0076】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、希釈剤中で、求核剤、ルイス酸、及び塩基と接触させられ、ここで、前記希釈剤中のルイス酸の濃度は、0.05乃至1Mである。いくつかの実施態様において、前記希釈剤中のルイス酸の濃度は、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、又は1Mである。
【0077】
いくつかの実施態様において、求核剤と比較して過剰量のルイス酸が使用される。いくつかの実施態様において、求核剤と比較して、1.01乃至20eq.、1.1乃至10eq.、1.1乃至5.0eq.、又は2.0乃至4.0eq.、又は2.0乃至3.0eq.のルイス酸が使用される。
【0078】
(d)塩基
ここで提供される方法は、一つ以上の非求核性塩基の存在下で行われる。実例としての塩基は、これらに限定されないが、立体障害されたアミン、例えば、二級及び三級のアミン及びピリジンを包含する。いくつかの実施態様において、塩基は三級アミンである。いくつかの実施態様において、塩基は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、又は2,6−ジ−t−ブチルピリジンである。ある種の実施態様において、塩基はジイソプロピルエチルアミンである。
【0079】
いくつかの実施態様において、式(I)、(Ia)、又は(Ib)の化合物は、希釈剤中で、求核剤、ルイス酸、及び塩基と接触させられ、ここで、前記希釈剤中の塩基の濃度は、0.1、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、又は0.5Mである。
【0080】
いくつかの実施態様において、求核剤と比較して過剰量の塩基が使用される。いくつかの実施態様において、求核剤と比較して、1.01乃至20eq.、1.5乃至15eq.、2乃至10.0eq.、3.0乃至8.0eq.、又は4.0乃至6.0eq.の塩基が使用される。
【0081】
(e)希釈剤
いくつかの実施態様において、一つ以上の極性非プロトン性溶剤であるか又は一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤中で、ここに記載された求核剤アシル化方法が行われる。適切な希釈剤は、これらに限定されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、又はN,N−ジメチルアセタミドを包含する。いくつかの実施態様において、希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミドである。いくつかの実施態様において、希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミドもしくは2−メチルテトラヒドロフランであるか、又はそれを含む。いくつかの実施態様において、希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミド及び2−メチルテトラヒドロフランを含む。ある種の実施態様において、希釈剤は、N,N−ジメチルホルムアミド及び2−メチルテトラヒドロフランを含み、ここで、N,N−ジメチルホルムアミドの容量の、2−メチルテトラヒドロフランの容量に対する比は、1:1乃至約1:10である。ある種の実施態様において、その比は1:2である。いくつかの実施態様において、希釈剤はDMF(ジメチルホルムアミド)からなる。
【0082】
(f)実例となる実施態様
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化33】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化34】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0083】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化35】
は、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化36】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0084】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化37】
は、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(I)の化合物:
【化38】
を求核剤と接触させ、式(II)の化合物:
【化39】
を形成し、及びその後、式(IIa)の化合物を単離する(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)ことを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0085】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化40】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化41】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0086】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化42】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化43】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立にC1-6アルキルであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0087】
いくつかの実施態様において、式(IIaa)の化合物:
【化44】
は、式(IIaa)の化合物(ここで、式(IIaa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化45】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中、Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0088】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化46】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化47】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、アミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0089】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化48】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化49】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、
【化50】
であり、
R2は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0090】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化51】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化52】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、
【化53】
であり、
R2は、未置換のC1-6アルキルであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
【0091】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化54】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化55】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0092】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化56】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化57】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0093】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化58】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化59】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1はアミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0094】
いくつかの実施態様において、式(IIaaa)の化合物:
【化60】
は、式(IIaaa)の化合物(ここで、式(IIaaa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化61】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、又はアリールであり、
RAは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロシクロアルキルであり、及び
求核剤は、式RA-OHを有する化合物である)。
【0095】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化62】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸、
(ii) 一つ以上の塩基、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤
の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化63】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0096】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化64】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸、
(ii) 一つ以上の塩基、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤
の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化65】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1はアミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0097】
いくつかの実施態様において、式(IIaaa)の化合物:
【化66】
は、式(IIaaa)の化合物(ここで、式(IIaaa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸、
(ii) 一つ以上の塩基、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤
の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化67】
を求核剤と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、又はアリールであり、
RAは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロシクロアルキルであり、及び
求核剤は、式RA-OHを有する化合物である)。
【0098】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化68】
は、式(IIa)の化合物(ここで、式(IIa)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化69】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1はアミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分であり、ここで、アルコールは、C−3水酸基を有するマイタンシノイドである)。
【0099】
いくつかの実施態様において、式(IIa)の化合物:
【化70】
は、式(IIa)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(I)の化合物:
【化71】
をアルコールと接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1はアミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールであり、及び
Nuは、アルコールの付加部分である)。
【0100】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化72】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化73】
を式(IV)の化合物:
【化74】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである)。
【0101】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化75】
は、式(V)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(I)の化合物:
【化76】
を式(IV)の化合物:
【化77】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである)。
【0102】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化78】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化79】
を式(IV)の化合物:
【化80】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである)。
【0103】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化81】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化82】
を式(IV)の化合物:
【化83】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、C1-6アルキルである)。
【0104】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化84】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化85】
を式(IV)の化合物:
【化86】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1及びR2は、それぞれ独立に、未置換のC1-6アルキル又はベンジルである)。
【0105】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化87】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化88】
を式(IV)の化合物:
【化89】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1はアミノ酸側鎖であり、
R2は、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである)。
【0106】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化90】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化91】
を式(IV)の化合物:
【化92】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、
【化93】
であり、
R2は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、又はC6-10アリールである)。
【0107】
いくつかの実施態様において、式(V)の化合物:
【化94】
は、式(V)の化合物(ここで、式(V)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Ia)の化合物:
【化95】
を式(IV)の化合物:
【化96】
と接触させることを含む方法で調製される
(式中:
R1は、
【化97】
であり、
R2は、置換されていないC1-6アルキルである)。
【0108】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化98】
は、式(Va)の化合物(ここで、式(Va)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化99】
を式(IV)の化合物:
【化100】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0109】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化101】
は、式(Va)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式2の化合物:
【化102】
を式(IV)の化合物:
【化103】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0110】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化104】
は、式(Va)の化合物(ここで、式(Va)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸、
(ii) 一つ以上の塩基、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤
の存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化105】
を式(IV)の化合物:
【化106】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0111】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化107】
は、式(Va)の化合物を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸、
(ii) 一つ以上の塩基、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤
の存在下において、式(2)の化合物:
【化108】
を式(IV)の化合物:
【化109】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0112】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化110】
は、式(Va)の化合物(ここで、式(Va)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、
(i) 一つ以上のルイス酸(ここで、一つ以上のルイス酸は、Zn(OTf)2、Ag(OTf)2、Sc(OTf)2、Cu(OTf)2、Fe(OTf)2、Ni(OTf)2、Mg(OTf)2、Ni(acac)2、Cu(acac)2、Zn(acac)2、TiCl4、及びZnCl2、並びにBF3*Et2Oからなる群から選択される)、
(ii) 一つ以上の塩基(ここで、一つ以上の塩基は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンからなる群から選択される)、及び
(iii) 一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤(ここで、一つ以上の極性非プロトン性溶剤は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセタミドからなる群から選択される)
の存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化111】
を式(IV)の化合物:
【化112】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0113】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化113】
は、式(Va)の化合物(ここで、式(Va)の化合物は、立体異性的に純粋である)を形成するために、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(zinc triflate)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルホルムアミド、及び2−メチル−テトラヒドロフランの存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化114】
を式(IV)の化合物:
【化115】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0114】
いくつかの実施態様において、式(Va)の化合物:
【化116】
は、式(Va)の化合物を形成するために、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルホルムアミド、及び2−メチル−テトラヒドロフランの存在下において、式2の化合物:
【化117】
を式(IV)の化合物:
【化118】
と接触させることを含む方法で調製される。
【0115】
ここに記載されたアシル化反応のいくつかの実施態様において、求核剤はマイタンシノールであり、ここで、反応しなかったマイタンシノールは回収される。いくつかの実施態様において、前記の反応しなかったマイタンシノールは、回収され、且つここに記載されたアシル化条件に再び供される。
【0116】
ここに提供されているのは、また、式(VI)の化合物:
【化119】
を調製する方法であって、アミド合成条件下において、式(Va)の化合物:
【化120】
を式(VII)の化合物:
【化121】
と接触させることを含む方法である、
式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、
R3はメチルであり、
Lは、エチレン、n-プロピレン、
【化122】
であり、
Yは、カルボキシル又は活性化されたカルボキシルであり、並びに
ここで、式(V)の化合物は、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下に、式(Iaa)の化合物:
【化123】
を式(IV)の化合物:
【化124】
と接触させることを含む方法によって調製される。
【0117】
いくつかの実施態様において、式(VI)の化合物は、
【化125】
である。
【0118】
ここで提供されるのは、また、式(VIII)の化合物:
【化126】
(式中、Raは水素原子又はメチルであり、及びnは2又は3である)
の下記工程を含む調製方法である:
(i) アミド合成条件下において、式(Va)の化合物:
【化127】
を式(IX)の化合物:
【化128】
(式中、PGはアミンの保護基であり、Yはカルボキシル又は活性化されたカルボキシルであり、並びにRA及びnは、上で定義したとおりである)
と接触させ、式(X)の化合物:
【化129】
(式中、PG、RA、及びnは、上で定義したとおりである)
を形成する、及び
(ii) 式(X)の化合物のアミン保護基を取り除いて、式(VIII)の化合物を提供する、
ここで、式(Va)の化合物は、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下に、式(Iaa)の化合物:
【化130】
を式(IV)の化合物:
【化131】
と接触させることを含む方法によって得られ、又は当該方法において調製される。
【0119】
いくつかの実施態様において、式(VIII)の化合物は
【化132】
である。
【0120】
ここで提供されるのは、また、式(XI)の化合物:
【化133】
(式中、Z′は、
【化134】
である)
の調製方法であって:
(i) アミド合成条件下で、式(Va)の化合物:
【化135】
を、式(XII)の化合物:
【化136】
(式中、Z′は上で定義したとおりであり、PGはZ′の窒素に蓋をかぶせているアミン保護基であり、及びYはカルボキシル又は活性化されたカルボキシルである)と接触させて、式(XIII)の化合物:
【化137】
(式中、PG及びZ′は上で定義したとおりである)
を形成する工程、及び
(ii) 式(XIII)の化合物のアミン保護基を取り除き、式(XI)の化合物を形成する工程を含み、
ここで、式(Va)の化合物が、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下において、式(Iaa)の化合物:
【化138】
を、式(IV)の化合物:
【化139】
と接触させることを含む方法で調製される、前記方法である。
【0121】
いくつかの実施態様において、式(XI)の化合物は、
【化140】
である。
【実施例】
【0122】
3.実施例
本発明のある種の実施態様が、以下の非限定的実施例によって説明される。
【0123】
プロトンNMRスペクトルは、バリアン・イノバ(Varian Inova)300MHz又はブルカー(Bruker)500MHzの機器で得られ、一方、マス・スペクトルは、エレクトロスプレー・イオン化源と、四重極型又はイオン・トラップ解析装置を有するアジレント(Agilent)1100又は1200シリーズの液体クロマトグラフィー・質量選択検出器(LC/MSD)で収集された。溶剤は、活性化された分子篩で乾燥された。ルイス酸は、減圧デシケーター内で、五酸化リンで乾燥された。
【0124】
(実施例1)
【化141】
3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン(化合物2):
マグネチック・スターラー、凝縮器、熱電温度計及び窒素注入口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、N−メチル−L−アラニン(化合物1、1.0g;9.70mmol)及びDCM(600mL)を入れ、その後DIEA(3.7mL;21.4mmol;2.2eq)を入れた。この溶液は、氷浴で0℃まで急冷された。反応混合物に、1,1′−チオカルボニルジイミダゾール(TDI、1.82g;10.2mmol、1.05eq)が、4時間にわたって小分けして添加された。氷浴内で、反応系が撹拌され、且つ一晩かけて、室温までゆっくりと温められた。反応系は、DCMと共に、シリカゲルの栓を通って濾過され、その後、酢酸エチル/ヘキサンで溶出された。濾液は、乾燥するまで濃縮されて、標題の化合物を、オレンジの油として提供した(1.29g、収率91%)。MS (ESI, pos.): C5H7NO2Sに対する理論値, 145.18; 実測値 146.00 (M+H), 168.2 (M+Na).
【化142】
【0125】
3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン(化合物2、別の調製方法):
マグネチック・スターラー、追加/滴下漏斗、熱電温度計及び窒素注入口を備えた1Lの三つ口丸底フラスコに、N−メチル−L−アラニン(化合物1、2.0g;19.40mmol)及びDCM(400mL)を入れ、その後DIEA(7.4mL;42.8mmol;2.2eq)を入れた。この溶液は、室温で5乃至10分間撹拌され、その後、氷浴で0℃まで急冷された。氷のように冷たい溶液に、1,1′−チオカルボニルジイミダゾール(TDI、3.45g;19.40mmol、1.0eq)のDCM(200mL)溶液が、追加漏斗を通じて、5時間にわたって、0℃で滴加された。反応混合物は、TDIの追加の間、その色は薄茶色であり、且つ、これを一晩かけて、室温までゆっくりと温めた。反応系は、シリカゲルの栓を通して濾過され、且つDCMで洗浄された。一緒にされた濾液は、蒸発させられて黄色の油となり、これは、その後、順相カラム・クロマトグラフィーで、ヘキサン中EtOAcのグラディエント(0%v/v乃至70%v/v)での溶出で精製された。その後、所望の生成物を含有する画分がプールされ、且つ乾燥するまで濃縮されて、標題の化合物を、オレンジの油として提供した(2.3g、収率82%)。
【0126】
(実施例2)
【化143】
(S)3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン(3)及び
(R)3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン(4)
【0127】
方法1: 実施例1で得られた生成物2は、4.6×100mmのフェノメネクス・ルックス・5μm・アミロース−1(Phenomenex Lux 5μm Amylose-1)(トレンス、カリフォルニア州)カラムに注入され、且つ、230nmでの紫外検出を伴って、0.1%v/vTFAを含むヘキサン:エタノールの80:20混合物の移動相で、1ml/分で10分間にわたって溶出された。保持時間は、4.1分及び5.4分であった。
【0128】
方法2: 実施例1で得られた生成物2は、30×250mmのキラル・テクノロジーズ・キラルパック(Chiral Technologies CHIRALPAK)(登録商標)5μm・エイ・ディー−エイチ(5μm AD-H)(ウェストチェスター、ペンシルベニア州)に注入され、且つ、230nmでの紫外検出を伴って、0.1%v/vTFAを含むヘキサン:エタノールの80:20混合物の移動相で、40.0mL/分で15分間にわたって溶出された。保持時間は、10.0分[α]20589nm=−0.1(c=0.65、CDCl)及び13.2分[α]20589nm=+0.1(c=0.4、CDCl)であった。
(−)3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン:
MS (ESI, pos.): C5H7NO2Sに対する理論値, 145.18; 実測値 146.00 (M+H).
【化144】
(+)3,4−ジメチル−2−チオキソ−オキサゾリジン−5−オン:
MS (ESI, pos.): C5H7NO2Sに対する理論値, 145.18; 実測値 146.00 (M+H).
【化145】
【0129】
(実施例3)
【化146】
マイタンシン−3−N−メチル−L−アラニン(化合物6):
マグネチック・スターラーの入った乾燥したバイアルに、マイタンシノール(化合物5、45mg、0.0796mmol)が量り取られ、化合物2(102mg、0.703mmol)の2−MeTHF(1.2mL)溶液で処理され、その後、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.080mL、0.459mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(86mg、0.237mmol)、及び最後に乾燥DMF(0.60mL)で処理された。バイアルが、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)で補強された蓋で密閉され、且つ、反応は、周囲温度で20時間、撹拌された。バイアルは、グローブボックスから出され、且つ、さらに24時間、撹拌しつつ、50℃の砂浴中で加熱された。反応は周囲温度まで冷却され、塩水で処理され、且つ1時間撹拌された。粗混合物が、酢酸エチルで3回抽出され、一緒にされた有機層は、NaSO上で乾燥され、且つひだ付きろ紙で濾過された。濃縮された濾液は、20×20cm、1000umシリカゲル分取プレートで精製され(9:1 ジクロロメタン/メタノールで溶出)、及び、主生成物のバンドが粉にされ、濾過され、並びに濾液は真空中で蒸発させられ且つ乾燥されて、標題の化合物を金色の固体として与えた(11mg、21%)。マイタンシノールは、この反応から回収可能である。MS (ESI, pos.): C32H44N3O9Clに対する理論値, 649.28; 実測値 650.4 (M+H), 672.3 (M+Na).
【化147】
所望のマイタンシン−3−N−メチル−L−アラニンのジアステレオマー過剰率は、H NMRに基づいて(5.44ppm(望まれていない)対5.51ppm(望まれた)のH−NMRピークの積分の比較及び検出限界5%に基づいて)95%以上であると決定された。
【0130】
マイタンシン−3−N−メチル−L−アラニン(化合物6、別の調製方法1):
すべての計量及び溶解は、グローブボックス内で行なわれ、グローブボックスには、複数回、不活性ガスが充填された。マグネチック・スターラーの入った乾燥したバイアルに、マイタンシノール(化合物5、28.1mg、0.05mmol)が量り取られ、化合物2(102mg、0.703mmol、14eq.)の乾燥DMF(0.3乃至0.5mL)溶液で処理され、その後、無水ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.052mL、39mg、0.3mmol、6eq)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛(127mg、0.35mmol、7eq)で処理され、及び最後に追加量の乾燥DMF(0.3乃至0.5mL)ですすがれた。バイアルは、PTFEで補強された蓋で密閉され、グローブボックスから出され、且つ、反応は、予め加熱された油浴中で、50℃で4時間撹拌された。[注:反応は、TLC(EtOAc中、2%v/vNHOH+5%v/vMeOH)及びLC−MSの両者で監視された。]反応混合物の分割量(アリコート)のLC−MS解析は、約50%の化合物3及びいくらかの不純物を伴って、生成物混合物への43%の転換を示した。反応は、周囲温度まで冷却され、塩水で処理され、且つ1時間撹拌された。粗混合物が、酢酸エチルで3回抽出され、一緒にされた有機層は、NaSO上で乾燥され且つひだ付きろ紙で濾過された。濃縮された濾液は、20×20cm、1000umシリカゲル分取プレートで精製され(EtOAc中、2%NHOH+6%MeOHで溶出)、及び、所望の生成物のバンド(ゆっくりと動いているバンド)が粉にされ、濾過され、並びに濾液は真空中で蒸発させられ且つ乾燥されて、標題の化合物を金色の固体として提供した(12mg、21%)。マイタンシノール及び約20%の他のエピマーも、この反応系から回収された。MS (ESI, pos.): C32H44N3O9Clに対する理論値, 649.28; 実測値 650.4 (M+H), 672.3 (M+Na).
【化148】
所望のマイタンシン−3−N−メチル−L−アラニンのジアステレオマー過剰率は、H NMRに基づいて(5.44ppm(望まれていない)対5.51ppm(望まれた)のH−NMRピークの積分の比較及び検出限界5%に基づいて)95%以上であると決定された。他のエピマーの解析データ:MS (ESI, pos.): C32H44N3O9Clに対する理論値, 649.28; 実測値 650.3 (M+H), 672.3 (M+Na).
【化149】
【0131】
(実施例4)
【化150】
マイタンシン−3−N−メチル−L−アラニン(化合物6):
マイタンシノール(化合物5)は、実施例3と同様のやり方で、化合物4と反応させられ、化合物6を得る。
【0132】
上記した実施態様及び実施例は、単に実例であり且つ非限定的であることが意図されている。当業者は、単なるルーティンの実験を使用して、特定の化合物、材料及びやり方の多くの等価物を認識し又は解明することができるであろう。そのような等価物の全ては、範囲内であるとみなされ、且つ添付された請求項に包含される。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
式(I)の化合物:
(化1)
又はその塩
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである)。
(構成2)
式(I)の化合物が式(Ia)又は(Ib)の化合物である、構成1の化合物:
(化2)
(ここで、式(Ia)又は(Ib)の化合物は立体異性的に純粋である)。
(構成3)
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物である、構成1の化合物:
(化3)
(ここで、式(Ia)の化合物は立体異性的に純粋である)。
(構成4)
R1及びR2が、それぞれ独立に、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C7-20アルカリール、C7-20アラルキル、又はC6-20アリールである、構成1乃至3のいずれか一項の化合物。
(構成5)
R1及びR2が、それぞれ独立に、置換されていないC1-20アルキルである、構成1乃至4のいずれか一項の化合物。
(構成6)
R1及びR2がそれぞれメチルである、構成1乃至5のいずれか一項の化合物。
(構成7)
式(Iaa)の化合物:
(化4)
(ここで、当該化合物は立体異性的に純粋である)。
(構成8)
式(II)の化合物:
(化5)
を調製する方法であって、式(II)の化合物を形成するために、一つ以上のルイス酸及び一つ以上の塩基の存在下で、式(I)の化合物:
(化6)
を求核剤と接触させることを含む方法
(式中:
R1は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、
R2は、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールであり、及び
Nuは、求核剤の付加部分である)。
(構成9)
求核剤がアルコールである、構成8の方法。
(構成10)
アルコールが、式RA-OH(式中、RAは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロシクロアルキルである)を有する化合物である、構成8又は9の方法。
(構成11)
R1及びR2が、それぞれ独立に、置換されていないC1-20アルキルである、構成8乃至10のいずれか一項の方法。
(構成12)
R1及びR2がメチルである、構成8乃至11のいずれか一項の方法。
(構成13)
求核剤がC−3水酸基を有するマイタンシノイドである、構成8乃至12のいずれか一項の方法。
(構成14)
求核剤が式(IV)の化合物:
(化7)
である、構成8乃至13のいずれか一項の方法。
(構成15)
式(II)の化合物が式(IIa)の化合物:
(化8)
であり、且つ式(I)の化合物が式(Ia)の化合物:
(化9)
であり、ここで、式(Ia)及び(IIa)の化合物は立体異性的に純粋である、構成8乃至14のいずれか一項の方法。
(構成16)
R1及びR2がメチルである、構成8乃至15のいずれか一項の方法。
(構成17)
一つ以上のルイス酸が、Zn(OTf)2、AgOTf、Sc(OTf)3、Cu(OTf)2、Fe(OTf)2、Ni(OTf)2、又はMg(OTf)2からなる群から選択される、構成8乃至16のいずれか一項の方法。
(構成18)
一つ以上の塩基が、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン、及び2,6−ジ−t−ブチルピリジンからなる群から選択される、構成8乃至17のいずれか一項の方法。
(構成19)
当該方法が、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、及びN,N−ジメチルアセタミドからなる群から選択される、一つ以上の極性非プロトン性溶剤を含む希釈剤中で行われる、構成8乃至18のいずれか一項の方法。
(構成20)
調製された式(Ia)の化合物が少なくとも95%の鏡像体過剰率を有する、構成15乃至19のいずれか一項の方法。
(構成21)
式(I)の化合物:
(化10)
を調製する方法であって、一つ以上の塩基の存在下において、式(III)の化合物:
(化11)
を1,1′−チオカルボニルジイミダゾールと接触させることを含む、方法。
(構成22)
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物:
(化12)
であり、且つ式(III)の化合物が式(IIIa)の化合物:
(化13)
であり、ここで、式(IIIa)の化合物は立体異性的に純粋である、構成21の方法。
(構成23)
R1が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロアリール、又はアミノ酸側鎖であり、及び
R2が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカリール、アラルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、又はヘテロアリールである、構成21又は22の方法。
(構成24)
R1及びR2が、それぞれ独立に、置換されていないC1-6アルキルである、構成21乃至23のいずれか一項の方法。
(構成25)
R1及びR2がメチルである、構成21乃至24のいずれか一項の方法。