(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
インクを供給する供給ローラーと、印刷パターンが表面に形成されており、前記供給ローラーから供給された前記インクを前記印刷パターンに付着させ、幅方向に並ぶ複数本の光ファイバに前記インクを転写することによって、それぞれの前記光ファイバにマークを印刷する印刷ローラーと、を備え、前記供給ローラーの表面であって、前記印刷ローラーの前記印刷パターンと対向する前記表面に、凹凸が形成されていることを特徴とする印刷装置が明らかとなる。このような印刷装置によれば、光ファイバテープを構成する複数本の光ファイバに対して印刷ローラーで同時印刷する際に、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0012】
前記供給ローラーの周方向の全周に、凹凸が形成されていることが望ましい。これにより、供給ローラーと印刷ローラーの回転を同期させなくても、供給ローラーの凹凸を印刷ローラーの印刷パターンと対向させることができる。
【0013】
前記印刷パターンの幅は、前記幅方向に並ぶ前記複数本の光ファイバの両端の光ファイバの間隔以上であり、前記供給ローラーの前記表面の前記凹凸の形成領域の幅は、前記印刷パターンの幅以上であることが望ましい。これにより、供給ローラーの凹凸を印刷ローラーの印刷パターンと対向させることができる。
【0014】
前記供給ローラーの前記表面の凹凸を形成する凹部と凸部が、前記幅方向に沿って交互に配置されていることが望ましい。これにより、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0015】
前記供給ローラーの前記表面にメッシュパターンが形成されることによって、前記凹凸が形成されていることが望ましい。これにより、供給ローラーの表面に、多数の凹部を均一に配置させることができる。
【0016】
前記凹凸を構成する凹部の深さは、20〜80μmの範囲内であることが望ましい。これにより、高速印刷時においても、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0017】
前記凹凸を構成する凹部の1インチ当たりの数は、50〜250の範囲内であることが望ましい。これにより、高速印刷時においても、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0018】
前記凹凸の形成領域の面積に対する凹部の総面積の割合を示す開口率は、50〜80%の範囲内であることが望ましい。これにより、高速印刷時においても、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0019】
前記インクの粘度は、10mPa・s以上であることが望ましい。これにより、高速印刷時においても、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0020】
前記インクの粘度は、100mPa・s未満であることが望ましい。これにより、インクミストの発生を抑制できる。
【0021】
前記インクは、紫外線硬化型インクであり、前記印刷装置は、紫外線照射装置を更に備えることが望ましい。これにより、インクを速やかに硬化させることができるため、高速印刷を好適に行うことができる。
【0022】
表面に印刷パターンの形成された印刷ローラーに供給ローラーからインクを供給すること、及び、前記供給ローラーから供給された前記インクを前記印刷パターンに付着させ、幅方向に並ぶ複数本の光ファイバに前記インクを転写することによって、それぞれの前記光ファイバにマークを印刷すること、を行う印刷方法であって、前記供給ローラーの表面であって、前記供給ローラーの前記印刷パターンと対向する前記表面に、凹凸が形成されていることを特徴とする印刷方法が明らかとなる。このような印刷方法によれば、光ファイバテープを構成する複数本の光ファイバに対して印刷ローラーで同時印刷する際に、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができる。
【0023】
表面に印刷パターンの形成された印刷ローラーに供給ローラーからインクを供給すること、前記供給ローラーから供給された前記インクを前記印刷パターンに付着させ、幅方向に並ぶ複数本の光ファイバに前記インクを転写することによって、それぞれの前記光ファイバにマークを印刷すること、及び、前記マークの印刷された複数本の前記光ファイバを連結して光ファイバテープを製造すること、を行う光ファイバテープ製造方法であって、前記供給ローラーの表面であって、前記供給ローラーの前記印刷パターンと対向する前記表面に、凹凸が形成されていることを特徴とする光ファイバテープ製造方法が明らかとなる。このような光ファイバテープ製造方法によれば、それぞれの光ファイバに均一にマークを印刷することができるため、光ファイバテープのマークの視認性の低下を抑制できる。
【0024】
===第1実施形態===
<光ファイバテープ1とマーク5について>
図1A〜
図1Cは、光ファイバテープ1の説明図である。
図1Bは、
図1AのA−A断面図である。
図1Cは、
図1AのB−B断面図である。
【0025】
以下の説明では、次のように、各方向を定義する。
図1A〜
図1Cに示すように、光ファイバテープ1の長手方向のことを単に「長手方向」と呼ぶ。なお、光ファイバテープ1を構成する複数の光ファイバ2を横に並べて配置した状態(
図1Aに示す状態)での光ファイバ2に平行な方向を「長手方向」と呼ぶこともある。また、
図1Aに示す状態での複数の光ファイバ2の並ぶ方向を「テープ幅方向」と呼ぶ。また、
図1Aに示す状態での光ファイバテープ1のテープ面に垂直な方向を「テープ厚方向」と呼ぶ。
【0026】
本実施形態の光ファイバテープ1は、いわゆる間欠連結型(間欠固定型)の光ファイバテープである。間欠連結型の光ファイバテープ1は、複数の光ファイバ2を並列させて間欠的に連結した光ファイバテープである。隣接する2心の光ファイバ2は、連結部3によって連結されている。隣接する2心の光ファイバ2を連結する複数の連結部3は、長手方向に間欠的に配置されている。また、光ファイバテープ1の複数の連結部3は、長手方向及びテープ幅方向に2次元的に間欠的に配置されている。連結部3は、接着剤(テープ化材)となる紫外線硬化樹脂を塗布した後に紫外線を照射して固化することによって、形成されている。なお、連結部3を熱可塑性樹脂で構成することも可能である。隣接する2心の光ファイバ2間の連結部3以外の領域は、非連結部4(分離部)になっている。非連結部4では、隣接する2心の光ファイバ2同士は拘束されていない。連結部3のテープ幅方向には非連結部4が配置されている。これにより、光ファイバテープ1を丸めて筒状(束状)にしたり、折りたたんだりすることが可能になり、多数の光ファイバ2を高密度に収容することが可能になる。
【0027】
間欠連結型の光ファイバテープ1は、
図1Aに示す構成に限られるものではない。例えば、光ファイバテープ1の心数を変更しても良い。また、間欠的に配置されている連結部3の配置を変更しても良い。また、光ファイバテープ1は、複数本の光ファイバ2を一括被覆した一括被覆型の光ファイバテープでも良い。
【0028】
本実施形態の光ファイバテープ1には、マーク5が形成されている。マーク5は、光ファイバテープ1を識別するためのマークである。マーク5のパターンは、識別番号(テープ番号)を示している。マーク5は、光ファイバテープ1の長手方向に所定間隔(例えば15cm間隔)で繰り返し形成されている。それぞれの光ファイバ2に共通のパターンで形成されたマーク5がテープ幅方向に並ぶことによって、光ファイバテープ1のマーク5が構成されている。
【0029】
図2は、隣接する光ファイバ2の断面図である。
【0030】
以下の説明では、
図2に示すように、光ファイバ2の断面において、光ファイバ2の中心から外周へ至る線に沿う方向(円筒座標系のr軸方向に相当する方向:半径方向)のことを「径方向」と呼ぶことがある。また、光ファイバ2の断面において、光ファイバ2の中心軸周りの方向(円筒座標系のθ軸方向に相当する方向)のことを「周方向」と呼ぶことがある。
【0031】
光ファイバ2は、
図2に示すように、ファイバ部2Aと、被覆層2Bと、着色層2Cとを有する。光ファイバ2の直径は、例えば約250μmである。ファイバ部2Aは、コア及びクラッドから構成されている。ファイバ部2Aの直径(クラッド径)は、例えば約125μmである。被覆層2Bは、ファイバ部2Aを被覆する層である。被覆層2Bは、例えば一次被覆層(プライマリー・コーティング)及び二次被覆層(セカンダリー・コーティング)から構成されている。被覆層2Bの直径(外径)は、例えば約240μmである。着色層2Cは、被覆層2Bの表面に形成された層である。着色層2Cは、被覆層2Bの表面に着色材を塗布することによって形成される。なお、隣接する2本の光ファイバ2は、連結部3を構成するテープ化材によって連結されており、着色層2Cの表面にはテープ化材の層が形成されている。
【0032】
また、本実施形態の光ファイバ2は、マーク5を有する。マーク5は、被覆層2Bと着色層2Cとの間に形成される。このため、マーク5は、着色層2C越しに視認されることになる。マーク5の上に着色層2Cが形成されるため、マーク5が着色層2Cによって保護されている。後述するように、マーク5は、マーキング用のインクによって印刷されている。本実施形態では、光ファイバ2の周方向の一部にマーク5が形成されている。
図1Aに示す光ファイバテープ1では、それぞれの光ファイバ2のマーク5が周方向のほぼ同じ位置に配置されている。但し、それぞれの光ファイバ2のマーク5が周方向の異なる位置に配置されていても良い。
【0033】
<製造システム10について>
図3は、光ファイバテープ1の製造システム10の説明図である。光ファイバテープ1の製造システム10は、ファイバ供給部11と、印刷装置12と、着色装置13と、テープ化装置14と、ドラム15とを有する。
【0034】
ファイバ供給部11は、光ファイバ2を供給する供給部(供給装置)である。本実施形態では、ファイバ供給部11は、着色層2C及びマーク5を形成する前の光ファイバ2を供給する。ここでは、ファイバ供給部11は、光ファイバ2(着色層2C及びマーク5を形成する前の光ファイバ)を巻き回したドラムで構成されている。但し、ファイバ供給部11は、ドラムではなく、光ファイバ製造装置でも良い。図中には、4個のファイバ供給部11が示されているが、12心の光ファイバテープ1を製造する場合には、12個のファイバ供給部11から光ファイバ2がそれぞれ供給されることになる。ファイバ供給部11は、印刷装置12に光ファイバ2を供給する。
【0035】
印刷装置12は、光ファイバ2にマーク5を印刷する装置である。印刷装置12には、ファイバ供給部11から光ファイバ2(着色層2C及びマーク5を形成する前の光ファイバ)が供給される。印刷装置12は、マーク5を形成した光ファイバ2(着色層2Cを形成する前の光ファイバ)を着色装置13に供給する。印刷装置12の構成については後述する。
【0036】
着色装置13は、光ファイバ2に着色層2Cを形成する装置である。着色装置13には、印刷装置12から光ファイバ2(着色層2Cを形成する前の光ファイバ)が供給される。着色装置13は、それぞれの光ファイバ2を識別するための識別色に従って、それぞれの光ファイバ2を個別に着色する。着色装置13は、それぞれの光ファイバ2の外周に着色剤を塗布し、着色剤を硬化させることによって、着色層2Cを形成する。例えば、着色剤は紫外線硬化型の着色用インクで構成されている場合、着色装置13は、それぞれの光ファイバ2に着色剤を塗布した後、着色剤に紫外線を照射することによって、着色層2Cを形成する。
【0037】
テープ化装置14は、複数の光ファイバ2を連結して光ファイバテープ1を形成する装置である。テープ化装置14には、着色装置13から光ファイバ2(着色層2C及びマーク5の形成された光ファイバ)が供給される。テープ化装置14は、テープ化材によって光ファイバ2を連結して、光ファイバテープ1を形成する装置である。例えば、テープ化装置14は、隣接する2心の光ファイバ2の間にテープ化材(紫外線硬化樹脂)を塗布し、紫外線を照射することによってテープ化材を硬化させることによって、間欠固定型の光ファイバテープ1を形成する。また、テープ化装置14は、並列する複数の光ファイバ2の周囲にテープ化材を一旦塗布した後に、塗布されたテープ化材の一部を除去してから紫外線を照射することによって、間欠固定型の光ファイバテープ1を形成しても良い。この場合、隣接する2心の光ファイバ2の間においてテープ化材の除去された部位が非連結部4(
図1参照)となり、テープ化材の残った部位が連結部3となる。なお、テープ化材は、紫外線硬化樹脂に限られるものではなく、熱可塑性樹脂や他の接着剤等でも良い。
【0038】
ドラム15は、完成した光ファイバテープ1を巻き取る部材である。テープ化装置14で製造された光ファイバテープ1がドラム15に供給され、ドラム15に光ファイバテープ1が巻きつけられることになる。
【0039】
<印刷装置12について>
図4は、印刷装置12の構成の説明図である。図中には、印刷ローラー40の回転軸の軸方向から見たときの印刷装置12の概略構成が示されている。既に説明したように、印刷装置12は、光ファイバ2にマーク5を印刷する装置である。印刷装置12は、インク槽20と、供給ローラー30と、印刷ローラー40と、ドクター刃50とを備えている。
【0040】
インク槽20は、マーキング用のインク21を収容する容器(インクパン)である。インク槽20に収容されたインク21には、供給ローラー30の一部が浸されている。本実施形態では、インク槽20に収容されるインク21は、例えば紫外線硬化型インクである。このため、印刷装置12は、印刷ローラー40よりも搬送方向下流側に、紫外線照射装置(硬化装置70)を更に備えている。インク槽20に収容されるインク21の粘度は、光ファイバ2に印刷可能な粘度であれば良い。但し、後述するように、5〜100mPa・sの範囲内であることが望ましく、10〜50mPa・sの範囲内であることが更に望ましい。
【0041】
供給ローラー30は、印刷ローラー40にインク21を供給するためのローラーである。供給ローラー30は、ファニッシャーローラーや、掻き揚げローラー等と呼ばれることがある。本実施形態では、供給ローラー30の一部は、インク槽20に収容されたインク21に浸されている。供給ローラー30は、回転可能に支持されており、供給用モーター32の駆動力によって回転する。本実施形態では、供給ローラー30は、図中の矢印Aの方向に回転することによって、インク槽20のインク21を掻き揚げて、印刷ローラー40にインク21を供給する。
【0042】
本実施形態の供給ローラー30の表面には、メッシュパターン31によって凹凸が形成されている。供給ローラー30のメッシュパターン31は、印刷ローラー40の印刷パターン41を構成するメッシュパターンと同様の構成である。但し、供給ローラー30のメッシュパターン31は、印刷パターン41を構成するメッシュパターンとは異なり、供給ローラー30の周方向の全周(少なくとも印刷パターン41と対向する領域)に形成されている。供給ローラー30の表面(外周面)に凹凸(メッシュパターン31)を形成することによって、複数の光ファイバ2のそれぞれに均一にマーク5を印刷することが可能になる。この理由は、供給ローラー30の表面に凹凸を形成することによって、供給ローラー30の凹部31A(後述)に充填されたインク21が幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。言い換えると、本実施形態では、供給ローラー30の表面に凹凸を形成することによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインク21が供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着することになる。この点については、後述する。
【0043】
印刷ローラー40は、光ファイバ2にインク21を転写して、光ファイバ2にマーク5を印刷するためのローラーである。印刷ローラー40の表面には、マーク5を印刷するための印刷パターン41が形成されている。印刷パターン41は、印刷ローラー40の表面に形成されたメッシュパターンによって形成されている。印刷ローラー40は、回転可能に支持されており、印刷用モーター42の駆動力によって回転する。本実施形態では、印刷ローラー40が図中の矢印Bの方向に回転する。印刷ローラー40の回転中に、供給ローラー30のインク21が印刷ローラー40の表面に付着し、印刷パターン41に付着したインク21が光ファイバ2に転写されることによって、光ファイバ2にマーク5が印刷されることになる。言い換えると、印刷ローラー40の表面には版が形成されており、印刷パターン41を構成する画線部にインク21を付着させ(版面の凹部(セル)にインク21を充填させ)、画線部に付着したインク21を光ファイバ2に転写することによって、光ファイバ2にマーク5が印刷されることになる。
【0044】
なお、印刷ローラー40は、光ファイバ2の線速(搬送速度)に同期した回転速度で回転することになる。このため、光ファイバ2の線速が速くなると、印刷ローラー40の回転速度も速くなる。また、供給ローラー30は印刷ローラー40にインク21を供給する必要があるため、光ファイバ2の線速が速くなると、供給ローラー30の回転速度も速くなる。
【0045】
ドクター刃50は、印刷ローラー40に付着した余分なインク21を掻き落とす部材である。言い換えると、ドクター刃50は、印刷ローラー40の表面の非画線部に付着したインク21を掻き落とす部材である。ドクター刃50によってインク21を掻き落とされた印刷ローラー40の表面では、印刷パターン41を構成する画線部(凹部、セル)のみにインク21が残ることになる。そして、画線部に付着したインク21が光ファイバ2に転写されることによって、光ファイバ2にマーク5が印刷されることになる。
【0046】
印刷装置12は、更に、搬送機構60と、硬化装置70と、コントローラー80とを有する。
【0047】
搬送機構60は、図中の矢印Cの方向(搬送方向)に光ファイバ2を搬送する。搬送機構60は、例えば搬送ローラーで構成されており、搬送用モーター62の駆動力によって回転することによって光ファイバ2を搬送する。また、搬送機構60は、搬送方向上流側のファイバ供給部11(
図3参照)から供給された光ファイバ2を、搬送方向下流側の着色装置13へ搬送する。また、本実施形態では、搬送機構60は、複数の光ファイバ2を幅方向に並べて搬送することになる。搬送中の光ファイバ2には、印刷ローラー40の印刷パターン41に付着したインク21が転写される。
【0048】
硬化装置70は、光ファイバ2に転写されたインク21を硬化させる。本実施形態では、インク21が紫外線硬化型インク(UVインク)であるため、硬化装置70は、紫外線照射装置(紫外線光源)である。インク21が溶剤インクの場合には、硬化装置70は乾燥装置(例えばヒーター)で構成されることになる。なお、溶剤インクは乾燥工程が長くなるため高速印刷に不向きであるが、本実施形態ではインク21が紫外線硬化型インクであり、紫外線の照射によって速やかにインクが硬化するため、高速印刷に好適である。不図示の硬化装置70(例えば紫外線照射装置)は、印刷ローラー40よりも搬送方向下流側(着色装置13よりも搬送方向上流側)に配置される。
【0049】
コントローラー80は、印刷装置12の制御を司る制御部である。コントローラー80は、供給制御部83と、印刷制御部84と、搬送制御部86と、硬化制御部87とを有する。供給制御部83は、供給用モーター32を制御することによって、供給ローラー30の回転を制御する。印刷制御部84は、印刷用モーター42を制御することによって、印刷ローラー40の回転を制御する。搬送制御部86は、搬送用モーター62を制御することによって、光ファイバの搬送を制御する。硬化制御部87は、硬化装置70を制御し、インク21を硬化させて、光ファイバ2にマーク5を定着させる。例えば、コントローラー80は、搬送制御部86によって光ファイバ2の線速を制御するとともに、光ファイバ2の線速に応じた回転速度になるように、供給制御部83によって供給ローラー30の回転速度を制御し、印刷制御部84によって印刷ローラー40の回転速度を制御する。また、コントローラー80は、光ファイバ2の線速に応じた照射強度になるように、硬化装置70(紫外線照射装置)に照射させる紫外線を制御する。
【0050】
なお、本実施形態では、コントローラー80は、供給制御部83及び印刷制御部84を備えており、供給用モーター32と印刷用モーター42とを別々に独立して制御可能である。これにより、本実施形態では、供給ローラー30の回転速度と印刷ローラー40の回転速度とをそれぞれ別々に独立して制御可能である。但し、コントローラー80は、1つの制御部によって供給用モーター32及び印刷用モーター42を制御しても良い。また、1つのモーターで供給ローラー30及び印刷ローラー40の両方を回転させるように構成しても良い。
【0051】
図5は、印刷装置12の構成の別の説明図である。印刷ローラー40の回転軸に垂直な方向であり、光ファイバ2の長手方向に垂直な方向から見たときの印刷装置12の概略構成が図中に示されている。言い換えると、図中には、上から見た印刷装置12の概略構成が示されている。
【0052】
本実施形態では、印刷ローラー40は、複数本(ここでは12本)の光ファイバ2に対して同時にマーク5を印刷する。このため、本実施形態では、印刷ローラー40の幅W41(幅方向の寸法)は、幅方向に並ぶ複数本の光ファイバ2の両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)の間隔W10以上の長さである。また、本実施形態では、複数本の光ファイバ2に対して同時にマーク5を印刷するため、印刷ローラー40の表面に形成されている印刷パターン41は、幅方向に延びた矩形状に形成されている。印刷パターン41の幅W42(幅方向の寸法)は、幅方向の両端の光ファイバ2の間隔W10以上の長さである。
【0053】
また、供給ローラー30は、印刷ローラー40にインク21を供給するため、供給ローラー30の幅W31は、印刷ローラー40の幅W41以上の長さである。また、供給ローラー30は、印刷ローラー40の印刷パターン41にインク21を供給するため、供給ローラー30の幅W31は、印刷ローラー40の印刷パターン41の幅W42以上の長さである。なお、印刷ローラー40の幅W41や印刷パターン41の幅W42は、両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)の間隔W10以上の長さであるため、供給ローラー30の幅W31は、両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)の間隔W10以上の長さである。
【0054】
更に、後述するように供給ローラー30が印刷ローラー40に均等にインク21を供給できるようにするため、供給ローラー30のメッシュパターン31の幅W32(凹凸の形成領域の幅方向の寸法)は、印刷ローラー40の幅W41以上の長さである。また、供給ローラー30が印刷ローラー40の印刷パターン41に均等にインク21を供給できるようにするため、供給ローラー30のメッシュパターン31の幅W32(凹凸の形成領域の幅方向の寸法)は、印刷ローラー40の印刷パターン41の幅W42以上の長さである。なお、供給ローラー30のメッシュパターン31の幅W32は、両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)の間隔W10以上の長さとなる。
【0055】
図中では、説明のため、供給ローラー30の幅W31が印刷ローラー40の幅W41よりも広くなっている。但し、供給ローラー30の幅W31と印刷ローラー40の幅W41とを同じ長さにしても良い。この場合、供給ローラー30の直径D3(
図4参照)と印刷ローラー40の直径D4を同じにして、供給ローラー30と印刷ローラー40を同じ材質で構成しても良い。これにより、印刷ローラー40の印刷パターン41を構成するメッシュパターンと同じ製法で、供給ローラー30の表面にメッシュパターン31を形成することが可能になる。
【0056】
また、図中では、説明のため、供給ローラー30の幅W31がメッシュパターン31の幅W32よりも広くなっており、供給ローラー30の両縁にメッシュパターン31の無い領域が存在している。但し、メッシュパターン31を供給ローラー30の幅方向の全幅に形成することによって、供給ローラー30の幅W31とメッシュパターン31の幅W32とを同じ長さにしても良い。これにより、メッシュパターン31に必要な幅W32を確保しつつ、供給ローラー30の幅W31の短縮化を図ることができる。
【0057】
本実施形態では、供給ローラー30の表面には、周方向の全周(360度)にわたってメッシュパターン31が形成されている。これにより、仮に供給ローラー30の回転が印刷ローラー40の回転と同期していなくても、印刷ローラー40の印刷パターン41に供給ローラー30のメッシュパターン31を対向させつつ、供給ローラー30から印刷ローラー40の印刷パターン41にインク21を供給させることができる。この結果、後述するように、複数の光ファイバ2のそれぞれに均一にマーク5を印刷することが可能になる。このため、コントローラー80が、供給ローラー30の回転速度と印刷ローラー40の回転速度をそれぞれ別々に独立して制御する場合、供給ローラー30の表面の全周にメッシュパターン31が形成されていることが望ましい。なお、供給ローラー30の回転速度と印刷ローラー40の回転速度とをそれぞれ別々に独立して制御する場合、供給ローラー30と印刷ローラー40とを非接触にすることが望ましい。但し、供給ローラー30と印刷ローラー40とを接触させても良い。一方、供給ローラー30の回転と印刷ローラー40の回転とを同期させる場合には、供給ローラー30の周方向の特定の部位(印刷ローラー40の印刷パターン41と対向する部位)だけにメッシュパターン31が形成されても良い。
【0058】
図6Aは、第1実施形態の供給ローラー30のメッシュパターン31の説明図である。図中の幅方向は、複数の光ファイバ2の並ぶ方向と平行な方向である。図中の周方向は、供給ローラー30の外面に沿った方向(供給ローラー30の中心軸周りの方向)である。
【0059】
第1実施形態の供給ローラー30の表面には、多数の正方形状の凹部31Aが配置されている。メッシュパターン31の凹部31Aは、メッシュやセル等と呼ばれこともある窪みである。また、凹部31Aは、インクを受容可能な凹状の窪み(インク受容部)である。凹部31Aと凹部31Aとの間には網目状の凸部31Bが形成されている。供給ローラー30の表面には、凹部31Aと凸部31Bとによって凹凸が形成されている。供給ローラー30の表面にメッシュパターン31を形成することによって、供給ローラー30の表面に多数の凹部31Aを均等に配置させることができる。なお、メッシュパターン31を供給ローラー30の表面に形成する方法は、印刷ローラー40の表面にメッシュパターンで印刷パターン41を形成する方法と同じである。
【0060】
本実施形態では、供給ローラー30のメッシュパターン31の幅W41の範囲にわたって、供給ローラー30の表面に凹凸が形成されている。これにより、供給ローラー30が回転したときに、幅方向に均等にインク21を掻き揚げることができる。この結果、印刷ローラー40の幅方向に均等にインク21を供給することができるため、また、印刷ローラー40の印刷パターン41の幅方向に均等にインク21を供給することができるため、複数の光ファイバ2のそれぞれに均一にマーク5を印刷することが可能になる。
【0061】
本実施形態では、凹部31Aと凸部31Bが幅方向に沿って交互に配置されている。これにより、供給ローラー30がインク21を掻き揚げるときに、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が凸部31Bによって幅方向への流れを止められるため、供給ローラー30の表面に付着するインク量の幅方向のバラツキを抑制できる。なお、仮に、凹部31A又は凸部31Bが幅方向に延びて形成された場合には、供給ローラー30が高速回転したときに、本実施形態と比べて供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り易くなり、この結果、端部の光ファイバ2のマーク5の厚さ(マーク厚)が薄くなる(後述)。
【0062】
また、本実施形態では、正方形状の凹部31Aの辺が、幅方向及び周方向に対して45度傾斜するように、多数の凹部31Aが千鳥状に配置されている。このため、本実施形態では、網目状(格子状)の凸部31Bが、周方向(及び幅方向)に対して45度傾斜するように配置される。これにより、供給ローラー30がインク21を掻き揚げるときに、供給ローラー30の表面に付着するインク量を均等にできる。仮に凸部31Bが周方向に平行に配置された場合には、供給ローラー30の表面に付着するインク量は、本実施形態と比べると幅方向に不均一になる。但し、凸部31Bが周方向に平行に配置された場合であっても、供給ローラー30に凹凸が無い場合と比べると、供給ローラー30の表面に付着するインク量を幅方向に均等にできる。このため、正方形状の凹部31Aの向きは、本実施形態の凹部31Aの向きに限られるものではない。また、凹部31Aの形状は、正方形状に限られるものではなく、長方形状、菱形状、平行四辺形状であっても良い。また、後述するように、凹部31Aの形状は、矩形状や多角形状に限られるものでもなく、溝状や、円形状、楕円形状でも良い。
【0063】
図6Bに示すように、本実施形態のメッシュパターン31の凸部31Bの幅をdとし、メッシュ数をMとしたとき、本実施形態のメッシュパターン31の開口率εは、図中の式のように算出される。なお、メッシュ数Mの単位となる「mesh」は、1インチ当たりの凹部31A(メッシュ、セル)の数を示す。このため、単位「mesh」は、いわゆる「dpi」に相当する。開口率は、単位面積当たりの凹部31Aの面積を示す値となる。このため、凹部31Aが正方形状でない場合には、開口率は、メッシュパターン31の面積に対する凹部31Aの総面積の割合として算出できる。
【0064】
<実施例>
図4及び
図5に示す印刷装置12を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して、
図7Aに示すマーク5を印刷ローラー40で同時に印刷した。12本の光ファイバ2は、互いに平行に4mm間隔をあけて配置した。印刷速度(光ファイバ2の線速)は、100〜1500m/minの範囲とした。供給ローラー30の直径D3及び印刷ローラー40の直径D4は、15cmとした。マーク5の印刷用のインクとして、粘度が50mPa・sの紫外線硬化型樹脂を用いた。
【0065】
測定対象は、印刷ローラー40の中央で印刷される2本の光ファイバ2(6番ファイバと7番ファイバ)と、両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)とし、測定対象の光ファイバ2のマーク厚をそれぞれ測定した。なお、マーク厚とは、
図7Bに示すように、マーク5の径方向の厚さである。また、印刷ローラー40の中央で印刷される2本の光ファイバ2(6番ファイバと7番ファイバ)のそれぞれ5箇所のマーク厚の平均値(計10箇所のマーク厚の平均値:以下、「中央平均値」)と、両端の光ファイバ2(1番ファイバと12番ファイバ)のそれぞれ5箇所のマーク厚の平均値(計10箇所のマーク厚の平均値:以下、「両端平均値」)と、2つの平均値の差(中央平均値から両端平均値を引いた値)とをそれぞれ算出した。
【0066】
・比較例:印刷速度とマーク厚の関係
比較例として、本実施形態の供給ローラー30の代わりにメッシュパターン31の無い供給ローラーを用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を印刷した。比較例での測定結果を次表に示す。
【0068】
比較例の「中央平均値」から理解できるように、印刷速度が速くても、印刷ローラー40の中央で印刷される光ファイバ2のマーク厚は、約10μmで安定している。一方、比較例の「両端平均値」から理解できるように、印刷速度が速くなるほど、両端の光ファイバ2のマーク厚が薄くなっている。この結果、印刷速度が速くなるほど、中央の光ファイバ2のマーク厚と、両端の光ファイバ2のマーク厚との差が大きくなっている。これは、印刷速度が速くなるほど、印刷ローラー40の端部で印刷された光ファイバ2のマーク5が淡くなることを意味する。このような光ファイバ2を連結して光ファイバテープ1を製造した場合、光ファイバテープ1のマーク5の幅方向に濃淡差が生じてしまうため、光ファイバテープ1のマーク5の視認性が低下することになる。つまり、比較例のようにメッシュパターン31の無い供給ローラーを用いて、幅方向に並ぶ複数本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を高速印刷した場合には、光ファイバテープ1のマーク5の視認性が低下することになる。
【0069】
なお、比較例のように印刷速度が速くなったときに両端の光ファイバ2のマーク厚が薄くなった理由は、供給ローラーに掻き揚げられたインクが供給ローラーの高速回転によって供給ローラーの中央部に寄せられて、この結果、印刷ローラー40の中央部と端部とでインクの付着量が異なったためだと考えられる。
【0070】
・第1実施例:印刷速度とマーク厚の関係、メッシュ深さとマーク厚の関係
第1実施例では、全周にメッシュパターン31の形成された供給ローラー30を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を印刷した。第1実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数は、150meshとした。
第1実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ深さ(凹部31Aの深さ)は、10〜100μmの範囲とした。具体的には、メッシュ深さは、10μm、20μm、40μm、80μm及び100μmに設定した。そして、比較例と同様に、印刷速度(光ファイバ2の線速)を100〜1500m/minの範囲として、マーク厚を測定した。
【0071】
図8は、第1実施例(及び比較例)のマーク厚の中央平均値と両端平均値との差を示すグラフである。グラフの横軸は、印刷速度(m/min)を示している。グラフの縦軸は、中央平均値から両端平均値を引いた値(差)を示している。なお、第1実施例の中央平均値は、8.2〜12.4μmの範囲内であった。
【0072】
第1実施例のグラフから理解できるように、第1実施例では、比較例と比べて、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できる。このような効果が得られる理由は、供給ローラー30の表面にメッシュパターン31で構成された凹凸が形成されることによって、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。つまり、供給ローラー30の表面にメッシュパターン31で構成された凹凸が形成されることによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着するためだと考えられる。
【0073】
また、第1実施例のグラフから理解できるように、メッシュ深さ(凹部31Aの深さ)が20〜80μmでは、マーク厚が比較的均一になっている。なお、メッシュ深さが10μmの場合には、メッシュ深さが浅いため、供給ローラー30にメッシュパターン31を形成した効果が低くなったものと考えられる。また、メッシュ深さが100μmの場合には、メッシュ深さが深すぎてメッシュ(セル)に入り込んだインクの表面張力が働きにくくなり、この結果、供給ローラー30が高速回転したときに、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄せられてしまったためだと考えられる。このため、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ深さ(凹部31Aの深さ)は、20〜80μmの範囲内であることが望ましい。
【0074】
・第2実施例:メッシュ数とマーク厚の関係
第2実施例においても、全周にメッシュパターン31の形成された供給ローラー30を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を印刷した。第2実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ深さ(凹部31Aの深さ)を40μmとした。
第2実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数(1インチ当たりの凹部31Aの数)は、10〜300mesh(10〜300dpi)とした。具体的には、メッシュ数は、10、50、150、250、300meshに設定した。そして、比較例や第1実施例と同様に、印刷速度(光ファイバ2の線速)を100〜1500m/minの範囲として、マーク厚を測定した。
【0075】
図9は、第2実施例(及び比較例)のマーク厚の中央平均値と両端平均値との差を示すグラフである。グラフの横軸は、印刷速度(m/min)を示している。グラフの縦軸は、中央平均値から両端平均値を引いた値(差)を示している。なお、第2実施例の中央平均値は、8.3〜11.9μmの範囲内であった。
【0076】
第2実施例のグラフから理解できるように、第2実施例においても、比較例と比べて、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できる。このような効果が得られる理由は、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。つまり、供給ローラー30の表面にメッシュパターン31で構成された凹凸が形成されることによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着するためだと考えられる。
【0077】
また、第2実施例のグラフから理解できるように、メッシュ数が50〜250mesh(50〜250dpi)では、マーク厚が比較的均一になっている。なお、メッシュ数が10mesh(10dpi)の場合には供給ローラー30の表面の凹凸が粗すぎるため、また、メッシュ数が300mesh(300dpi)の場合には供給ローラー30の表面の凹凸が細かすぎるため、供給ローラー30にメッシュパターン31を形成した効果が低くなったものと考えられる。このため、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数は、50〜250mesh(50〜250dpi)の範囲内であることが望ましい。
【0078】
・第3実施例:開口率とマーク厚の関係
第3実施例においても、全周にメッシュパターン31の形成された供給ローラー30を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を印刷した。第3実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数(1インチ当たりの凹部31Aの数)は、50mesh又は250meshとした。また、第3実施例では、印刷速度は1500m/minに設定した(高速の設定にした)。
第3実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31の開口率(
図6B参照)を10〜90%とした。
【0079】
図10は、第3実施例のマーク厚の中央平均値と両端平均値との差を示すグラフである。グラフの横軸は、開口率(%)を示している。グラフの縦軸は、中央平均値から両端平均値を引いた値(差)を示している。なお、第2実施例の中央平均値は、50meshでは8.7〜10.1μmの範囲内であり、250meshでは8.9〜10.7μmの範囲内であった。
【0080】
第3実施例のグラフから理解できるように、メッシュ数が50meshの場合には、開口率が90%になると、マーク厚の中央平均値と両端平均との差が大きくなった。また、メッシュ数が250meshの場合には、開口率が30%以下になると、マーク厚の中央平均値と両端平均との差が大きくなった。このため、供給ローラー30のメッシュパターン31の開口率は、50〜80%の範囲内であることが望ましい。なお、50mesh及び250meshは、望ましいメッシュ数の上限値と下限値であるため(第2実施例参照)、供給ローラー30のメッシュパターン31の開口率が50〜80%の範囲内であれば、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数が50〜250meshの範囲において、マーク厚の中央平均値と両端平均との差を同様に抑制できると考えられる。
【0081】
・第4実施例:粘度とマーク厚の関係
第4実施例においても、全周にメッシュパターン31の形成された供給ローラー30を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して印刷ローラー40で同時にマーク5を印刷した。第4実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ数は、150meshとした。また、第4実施例では、供給ローラー30のメッシュパターン31のメッシュ深さは、40μmとした。
第4実施例では、インクの粘度は5〜100mPa・sの範囲とした。具体的には、インクの粘度は、5、10、50、100mPa・sにした。そして、印刷速度(光ファイバ2の線速)を100〜1500m/minの範囲として、マーク厚を測定した。
【0082】
図11は、第4実施例のマーク厚の中央平均値と両端平均値との差を示すグラフである。グラフの横軸は、印刷速度(m/min)を示している。グラフの縦軸は、中央平均値から両端平均値を引いた値(差)を示している。なお、第4実施例の中央平均値は、8.3〜11.8μmの範囲内であった。
【0083】
第1実施例のグラフから理解できるように、インクの粘度が5mPa・sの場合、比較例のように、印刷速度が速くなると、両端の光ファイバ2のマーク厚が薄くなった。一方、インクの粘度が10mPa・s以上の場合、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できた。このため、インクの粘度は、10mPa・s以上であることが望ましい。
【0084】
なお、インクの粘度が100mPa・sの場合、多量のインクミストが発生した。これは、インクの粘度が100mPa・sの場合、供給ローラー30が多量のインクを掻き揚げて、印刷ローラー40に多量のインクが付着したためだと考えられる。このため、インクの粘度は、100mPa・s未満であることが望ましい。つまり、インクの粘度は、10〜50mPa・sの範囲内であることが望ましい。
【0085】
===別の実施形態===
<第2実施形態>
図12A及び
図12Bは、第2実施形態の供給ローラー30の概要説明図である。なお、第2実施形態の印刷装置12は、供給ローラー30を除いて、第1実施形態の印刷装置12と同じ構成である。
【0086】
第2実施形態の供給ローラー30の表面には、幅方向に沿った溝状の凹部31Aが周方向の全周に所定間隔をあけて配置されている。溝状の凹部31Aと凹部31Aとの間には、幅方向に沿った凸条の凸部31Bが形成されている。第2実施形態の供給ローラー30の表面には、幅方向に沿った凸部31Bが周方向の全周に所定間隔をあけて配置されることになる。これにより、供給ローラーの表面には、凹部31Aと凸部31Bとによって凹凸が形成されている。第2実施形態においても、供給ローラー30の表面に凹凸を形成することによって、複数の光ファイバ2のそれぞれに均一にマーク5を印刷することが可能になる。この理由は、供給ローラー30の表面に凹凸を形成することによって、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が粘性の影響で凸部31Bと凸部31Bとの間を幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。このため、第2実施形態においても、供給ローラー30の表面に凹凸を形成することによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインク21が供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着することになる。この点については、後述する。
【0087】
第2実施形態においても、溝状の凹部31Aの幅(凹パターンの形成領域の幅)は、前述のメッシュパターン31の幅W32と同じように、少なくとも印刷パターン41の幅W42以上である。溝状の凹部31Aは、供給ローラー30の全幅に形成されても良い。但し、供給ローラー30の幅方向の両縁に、凹部31Aの無い領域が存在しても良い。
【0088】
第2実施形態では、溝状の凹部31Aは、幅方向に沿って形成されている。これにより、供給ローラー30がインクを掻き揚げるときに、供給ローラー30の表面に付着するインク量を均等にできる。仮に溝状の凹部31Aが周方向に沿って形成されていると、供給ローラー30の表面に付着するインク量は、本実施形態と比べて幅方向に不均一になる。但し、溝状の凹部31Aが周方向に沿って形成された場合であっても、供給ローラー30に凹凸が無い場合と比べると、供給ローラー30の表面に付着するインク量を幅方向に均等にできる。このため、溝状の凹部31Aの向きは、幅方向に限られるものではない。
【0089】
<第3実施形態>
図13A及び
図13Bは、第3実施形態の供給ローラー30の概要説明図である。なお、第3実施形態の印刷装置12は、供給ローラー30を除いて、第1実施形態の印刷装置12と同じ構成である。
【0090】
第3実施形態の供給ローラー30の表面には、多数の丸状の凹部31Aが配置されている。丸状の凹部31Aと凹部31Aとの間には凸部31Bが形成されている。これにより、供給ローラーの表面には、凹部と凸部とによって凹凸が形成されている。第3実施形態においても、供給ローラー30の表面に凹凸(メッシュパターン31)を形成することによって、複数の光ファイバ2のそれぞれに均一にマーク5を印刷することが可能になる。この点については、後述する。
【0091】
第3実施形態においても、多数の凹部31Aの形成領域(凹パターンの形成領域)の幅は、前述のメッシュパターン31の幅W32と同じように、少なくとも印刷パターン41の幅W42以上である。凹部31Aは、供給ローラー30の全幅にわたって形成されても良い。但し、供給ローラー30の幅方向の両縁に、凹部31Aの無い領域が存在しても良い。
【0092】
<実施例>
第2実施形態及び第3実施形態の印刷装置12を用いて、幅方向に並ぶ12本の光ファイバ2に対して、マーク5を印刷ローラー40で同時に印刷した。12本の光ファイバ2は、互いに平行に4mm間隔をあけて配置した。第1実施形態の実施例と同様に、印刷速度(光ファイバ2の線速)は、100〜1500m/minの範囲とした。供給ローラー30の直径D3及び印刷ローラー40の直径D4は、15cmとした。マーク5の印刷用のインクとして、粘度が50mPa・sの紫外線硬化型樹脂を用いた。
【0093】
第5実施例では、第2実施形態の印刷ローラー40の凹部31Aの幅(周方向の寸法)を500μmとし、凹部31Aの深さを30μmとした。また、凹部31Aのピッチ(凹部31Aと凹部31Aのと間隔、凸部31Bの周方向の寸法)は、500μmとした。
【0094】
第6実施例では、第3実施形態の印刷ローラー40の表面に、幅方向及び周方向に対して45度傾斜して並ぶように、多数の凹部31Aを千鳥状に配置した。丸状の凹部31Aの直径は200μmとし、凹部31Aの深さを50μmとした。また、凹部31Aのピッチ(凹部31Aと凹部31Aとの間隔)は、300μmとした。
【0095】
図14は、第5実施例(第2実施形態)及び第6実施例(第3実施形態)のマーク厚の中央平均値と両端平均値との差を示すグラフである。グラフの横軸は、印刷速度(m/min)を示している。グラフの縦軸は、中央平均値から両端平均値を引いた値(差)を示している。なお、第5実施例の中央平均値は、8.0〜11.1μmの範囲内であった。また、第6実施例の中央平均値は、8.7〜11.2μmの範囲内であった。
【0096】
第5実施例(第2実施形態)のグラフから理解できるように、第5実施例では、比較例と比べて、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できる。このような効果が得られる理由は、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が粘性の影響で凸部31Bと凸部31Bとの間を幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。つまり、供給ローラー30の表面に溝状の凹部31Aで構成された凹凸が形成されることによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着するためだと考えられる。
【0097】
また、第6実施例(第3実施形態)のグラフから理解できるように、第6実施例では、比較例と比べて、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できる。このような効果が得られる理由は、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が幅方向に流れ難くなり、供給ローラー30の表面に付着したインク21が幅方向に流れ難くなるため、この結果、供給ローラー30の幅方向に均一にインク21が付着し、印刷ローラー40の幅方向に均一にインク21を供給できるためだと考えられる。つまり、供給ローラー30の表面に丸状の凹部31Aで構成された凹凸が形成されることによって、供給ローラー30が高速回転しても、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り難くなり、この結果、印刷ローラー40の幅方向に均一にインクが付着するためだと考えられる。
【0098】
なお、第6実施例(第3実施形態)では、第5実施例(第2実施形態)と比べて、印刷速度が速くなってもマーク厚の差を抑制できる。このような効果が得られる理由は、第6実施例(第3実施形態)では、凹部31Aと凸部31Bが幅方向に交互に配置されるため、供給ローラー30の凹部31Aに充填されたインク21が凸部31Bによって幅方向への流れを止められるため、供給ローラー30に掻き揚げられたインクが供給ローラー30の中央部に寄り難くなるからだと考えられる。このため、第1実施形態や第3実施形態のように、供給ローラー30の表面に、凹部31Aと凸部31Bが幅方向に交互に配置されることが望ましい。
【0099】
===その他===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。