【実施例】
【0038】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0039】
アンビル1にフレーム2が設けられ、このフレーム2に昇降するラム3が設けられ、アンビル1には下型4が、ラム3には上型5が設けられ、下型4と上型5とで被加工物を打撃挟持して鍛造を行なう本実施例の鍛造装置について以下に説明をする。
【0040】
アンビル1は、
図1に図示したように適宜な金属製の部材で形成された土台構造体であり、上部中央位置に下型4を固定する下型固定部12(ソーブロック)が設けられ、この下型固定部12の左右部位には後述するフレーム2が載置される。
【0041】
下型固定部12の上面には、底に向かって溝幅が広がる断面台形状(アリ溝形状)の凹条12aが設けられ、一方、この凹条12aに合致する断面台形状(アリ形状)の凸条4bが下型4に設けられており、この下型4の凸条4bを下型固定部12の凹条12aにスライド係合させて両者が連結するように構成されている。尚、この凹条12aと凸条4bとの間隙には下型4を位置決めするコッター(図示省略)が差し込み固定される。
【0042】
また、アンビル1の上部左右位置には、
図2,3に図示したように後述するフレーム2の右部2A及び左部2B夫々の外面と対向する右立ち上がり部1A及び左立ち上がり部1Bが設けられ、この右立ち上がり部1A及び左立ち上がり部1Bの内面には、後述する左右の調整用コッター6を差し込む調整用空隙13を構成するガイド面部1aに設定され、この左右のガイド面部1aの近傍部位には後述する作動手段7を構成する雄螺子部8が前方に突出する状態で設けられている。
【0043】
また、アンビル1の右立ち上がり部1A及び左立ち上がり部1Bの前後面は、
図4,5に図示したようにフレーム2の右部2A及び左部2Bの前後面との間で前後調整用コッター14(4つの各前後調整用コッター14は、一側面(外面)がテーパー面に形成された棒体である。この前後調整用コッター14は、螺子24によってアンビル1に固定されている。)を差し込む4つの調整用空隙15を構成するガイド面部1bに設定されている。従って、この前後の調整用コッター14を適宜抜き差しすることで上型5と下型4との前後方向の位置合わせが行われる。
【0044】
下型4は、
図1,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成された金型構造体であり、上面に被加工物を成形するための3つの型面4a(右から粗用、仕上げ用、中間用)が設けられ、下面に前記した凸条4bが設けられている。
【0045】
尚、アンビル1の下面と接地面との間には適宜な衝撃吸収部材が設けられている。
【0046】
フレーム2は、
図1に図示したようにアンビル1の上部に載置される金属製の部材であり、シリンダー部25の下部に右部2A及び左部2Bが連設された構成である。
【0047】
シリンダー部25には、ピストンロッド17を介してラム3が設けられ、右部2A及び左部2Bの内側には、ラム3のガイド3b(凹凸部)と係合し、ラム3の昇降をガイドするガイド16(凹凸部)が設けられている。
【0048】
ラム3は、適宜な金属製の錘体であり、下面に、底に向かって溝幅が広がる断面逆台形状(アリ溝形状)の凹条3aが設けられ、一方、この凹条3aに合致する断面逆台形状(アリ形状)の凸条5bが上型5に設けられており、この上型5の凸条5bをラム3の凹条3aにスライド係合させて両者が連結するように構成されている。尚、この凹条3aと凸条5bとの空隙には上型5を位置決めするコッター(図示省略)が差し込み固定される。
【0049】
また、右部2A及び左部2Bの外面は、アンビル1の右立ち上がり部1A及び左立ち上がり部1Bの内面との間で後述する左右の調整用コッター6を差し込む調整用空隙13が設けられ、この右部2A及び左部2Bの外面は、前後方向に長さを有するガイド面部2aに設定されている。
【0050】
また、右部2A及び左部2Bの前後面は、
図4に図示したようにアンビル1の右立ち上がり部1A及び左立ち上がり部1Bの前後面との間で前後の調整用コッター14を差し込む調整用空隙15を構成するガイド面部2bに設定されている。
【0051】
上型5は、
図1,9に図示したように適宜な金属製の部材で形成された金型構造体であり、下面に被加工物を成形するための3つの型面5a(右から粗用、仕上げ用、中間用)が設けられ、上面に前記した凸条5bが設けられている。
【0052】
シリンダー部25には、圧縮空気でピストンロッド17を昇降させるエアーシリンダー装置(図示省略)が内装され、このピストンロッド17の下端部にラム3が設けられている。
【0053】
従って、下型4と上型5の間に被加工物を配設し、この状態でエアーシリンダー装置を作動させてラム3を上昇させた後に所定高さ位置から降下させると、このラム3の降下により上型5と下型4とで被加工物を打撃挟持し鍛造が行われる。
【0054】
また、本実施例では、アンビル1とフレーム2は、連結棒材18a(図面は螺子棒)とこの連結棒材18aに被嵌される衝撃吸収用の付勢部材18b(図面はコイルスプリング)とから成る連結構造体18を介して連結されている。
【0055】
また、本実施例は、アンビル1とフレーム2との間にしてフレーム2の両側には前述の調整用コッター6が設けられ、この左右の調整用コッター6の抜き差し動によりフレーム2をアンビル1に対して左右方向に移動可能に構成されている。
【0056】
左右の調整用コッター6は、
図1,2に図示したように適宜な金属製の部材で形成された内方の一側面がテーパー面に形成された棒体6’である。
【0057】
この左右の調整用コッター6は、アンビル1のガイド面部1aとフレーム2のガイド面部2aとで構成される前述の調整用空隙13に抜き差し動自在に差し込まれ、この左右の調整用コッター6の前後方向への抜き差し動に応じてフレーム2が左右方向に移動可能となる。
【0058】
具体的には、左側の調整用コッター6を差し込み動し、右側の調整用コッター6を引き抜き動すると、フレーム2は右方向へ移動し(
図7参照)、左側の調整用コッター6を引き抜き動し、右側の調整用コッター6を差し込み動すると、フレーム2は左方向へ移動する(
図8参照)。従って、この左右の調整用コッター6の差し込み移動量により、フレーム2の左右方向移動量を調整できる。
【0059】
尚、調整用コッター6は、左右両側でなく、左右いずれか1つでも可能である。
【0060】
次に、本実施例の型ずれ修正装置について詳述する。
【0061】
本実施例は、左右の調整用コッター6を同時に抜き差し動させる作動手段7を具備している。
【0062】
具体的には、作動手段7は、左右の調整用コッター6夫々に設けられ、アンビル1に設けられる雄螺子部8と、この雄螺子部8に螺着される一対のギア部11とで構成され、この一対のギア部11間にして雄螺子部8には、調整用コッター6のL型に屈曲された基部の貫通孔6aが遊嵌され、一対のギア部11には回転駆動源20により可動するチェーンやベルトなどの無端体9が懸環され、雄螺子部8に対して一対のギア部11が螺動することで一対のギア部11は前後方向へ移動し、調整用コッター6が抜き差し動するように構成されている。
【0063】
一対のギア部11は、
図2,3に図示したように適宜な金属製の部材で形成された2つの歯車11aであり、雄螺子部8に螺着される螺子孔を有し、外周面には回転駆動源20から延設される無端体(チェーン)が巻き掛けられている。
【0064】
本実施例では、この一対の歯車11aは、雄螺子部8が貫通する調整用コッター6の基部を前後で挟持するように設けられている。
【0065】
従って、この前後の一対の歯車11aが前後方向に移動することに伴い、調整用コッター6は前後方向に移動することになる。
【0066】
回転駆動部10は、
図1,3,6に図示したように駆動部本体19に設けられる回動駆動源20と、この回動駆動源20と駆動伝達機構21(チェーン21a及びスプロケット21b)を介して連設される回転軸部22と、この回転軸部22の前後位置に設けられたスプロケット22aと一対のギア部11に懸環される無端体9とを有する
。
【0067】
従って、回動駆動源20が作動すると、この回動駆動源20の回転は駆動伝達機構21を介して回転軸部22に伝達されて該回転軸部22は軸回転し、この回転軸部22の回転は無端体9を介して一対のギア部11に伝達され、この一対のギア部11は雄螺子部8を螺動しながら前後方向に移動し、この一対のギア部11の前後方向の移動に伴い調整用コッター6は前後方向に移動することになる。
【0068】
本実施例は、一対のギア部11にチェーンが懸環されている為、不意にギア部11が螺動することが防止される。
【0069】
また、本実施例は、雄螺子部8及び一対のギア部11を回転駆動源20と離して設けるべく、一対のギア部11と回転駆動源20とを無端体9で連設している。これは、アンビル1,雄螺子部8及び一対のギア部11に加わる衝撃から回転駆動源20を保護するためである。
【0070】
尚、本実施例は、作動手段7(回転駆動部10)における左右の調整用コッター6を抜き差し動させるタイミングや移動量などは制御部(図示省略)で制御される。
【0071】
また、駆動部本体19は台部23の上に載置されており、この駆動部本体19の下部には、台部23の上部に設けられたレール23a上を摺動する摺動部19aが設けられ、このレール23aの向きは左右の調整用コッター6が抜き差し動する方向に設定されている。
【0072】
従って、回転駆動部10は、左右の調整用コッター6が抜き差し動する方向に移動可能となる。
【0073】
尚、本実施例では、前述したように固定した雄螺子部8に螺着される一対のギア部11を螺動させて調整用コッター6を前後方向に移動させる構成としたが、アンビル1に回転自在に設けられた雄螺子部に調整用コッターを螺着し、この雄螺子部と回転駆動源とをチェーンやベルトなどの無端体を介して連設した構成とし、雄螺子部を回転させ、調整用コッターを抜き差し動するように構成しても良い。
【0074】
次に、本実施例に係る鍛造装置に本実施例の型ずれ修正装置を用いた型ずれ修正方法について説明する。
【0075】
鍛造作業中における左右方向の型ずれは、型面に被加工物がある為、更に、上型5と下型4との熱膨張の差も原因となる(前後方向の型ずれは前述した通りほとんど生じない。)。
【0076】
具体的には、
図9に図示したように型ずれしていない合致した初期設定状態において下型4と上型5の間に被加工物を配設し、ラム3の降下により上型5で被加工物を打撃して鍛造を継続していると、具体的には、右側の粗用、左側の中間用、中央の仕上げ用の3回の打撃により、一つの被加工物が完了する鍛造作業において、下型4と上型5とに型ずれが生じて修正が必要となった場合(
図10参照)、上型5による打撃の際、フレーム2をアンビル1に対して左右方向に移動させることで調整する。
【0077】
即ち、
図11に図示したようにラム3を上昇させた後に上型5で打撃した際、フレーム2は反力によりアンビル1とフレーム2との接面の摩擦力が限りなく低減した状態となり、このとき、作動手段7により左右の調整用コッター6を抜き差し動させてアンビル1に対してフレーム2を左右方向に移動させ、型ずれを修正する(
図12参照)。
【0078】
この僅かな時間だけフレーム2は反力によりアンビル1に対して浮いた状態ともなり(実際は、打撃によりアンビル1が沈み込み、その沈み込みにフレーム2が追従できず、フレーム2とアンビル1との間に隙間ができる状態。従って、上型5と下型4との間にも隙間ができる。)、アンビル1に対する摩擦力が限りなく低減する為、フレーム2は左右に動かし易い状態となり、よって、このタイミングを狙ってフレーム2を左右方向に移動させて型ずれを修正できる(回転駆動源20を待機状態にしておけば、前記摩擦力が小さくなった際に、フレーム2は所定方向に所定量移動させることができる。)。
【0079】
よって、本実施例によれば、型ずれの修正を鍛造装置を停止せず鍛造作業中に行えるから、前述した従来例に比し、稼働率が高くなる。また、鍛造作業中に生じる打撃力(衝撃力)を利用するから、頻繁に且つ簡易に左右方向の型ずれを修正でき、それだけ高精度の製品を得ることができる。
【0080】
尚、
図9,10は、説明のための図であり、上型5が下型4に対して左へずれ、それにより左側の調整用コッター6が引き抜き動し、従って、型ずれ修正は左側の調整用コッター6を復帰動(差し込み動)させる場合であるが、実際には、上型5が下型4に対して左へずれた場合、左側の調整用コッター6が引き抜き動し、右側の調整用コッター6が差し込み動しているから(温度変化にも影響する。)、型ずれ修正は、左側の調整用コッター6を差し込み動させ且つ右側の調整用コッター6を引き抜き動させる。
【0081】
また、本実施例は、アンビル1とフレーム2との間にして前記フレーム2の両側に設けられる左右の調整用コッター6を同時に抜き差し動させる作動手段7を具備せしめ、この左右の調整用コッター6の抜き差し動によりフレーム2をアンビル1に対して左右方向に移動可能に構成されているから、確実且つ的確に型ずれを修正できる。
【0082】
また、本実施例は、作動手段7は、アンビル1に設けられる雄螺子部8と、この雄螺子部8に螺着される一対のギヤ部11とで構成され、この一対のギア部11の間にして雄螺子部8には棒体6’の基部が遊嵌され、一対のギア部11には、回動駆動源20により可動するチェーンが懸環され、雄螺子部8に対して一対のギア部11が螺動することで該一対のギア部11は前後方向へ移動し、棒体6’が抜き差し動するように構成されているから、前述した作用効果を確実且つ良好に発揮することができる。
【0083】
また、本実施例は、回転駆動部10は、左右の調整用コッター6の抜き差し方向に移動可能に構成されているから、この点においても前述した作用効果を確実且つ良好に発揮することができる。
【0084】
更に、本実施例に係る型ずれ修正装置は、ラム昇降適正化装置としても機能する。
【0085】
温度変化により、フレーム2のガイド16とラム3のガイド3bとの係合に支障が生じた場合は、装置を停止することなく、前記同様、アンビル1からの反力が作用してアンビル1とフレーム2の接面の摩擦力が低減した際、左右の調整用コッター6をともに差し込み動させたり、ともに引き抜き動させたりすることで、フレーム2のガイド16とラム3のガイド3bとのクリアランスの調整ができる為、円滑なラム3の昇降を実現することができ、更に、この調整を装置の稼働中にラム3による衝撃を利用して行うから、それだけ簡単に前記クリアランスの調整ができることになる。
【0086】
更に、ラム3の昇降に支障が生じる一場面として、ラム3がガタつく場合があるが、この場合は、上型5が下型4に対して左右方向若しくは前後方向への型ずれが生じ得る。
【0087】
この点、ラム3の昇降の支障を解消し、適正化することで上記型ずれの修正も実現できることになる(前記のクリアランスを適正にする為、左右の調整用コッター6を適宜抜き差し動する。)。
【0088】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。