(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬質体であり、且つ歯列弓に着脱可能に装着されるように構成される咀嚼ユニットであって、歯並びのずれた歯を収容するとき、前記咀嚼ユニットが変形を生じることがなく、且つ前記咀嚼ユニットの材料の強度は、咀嚼過程中に生じる咬合力を受けるのに十分である咀嚼ユニット、
前記咀嚼ユニット内に形成されて、前記歯列弓の矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯を収容するように構成され、前記第1の歯を初期位置から所望の位置に移動させる形状を有する第1の凹部、
前記咀嚼ユニットの咬合面に形成された第1の誘導溝、
前記第1の歯の対向する唇頬側表面と舌側表面にそれぞれ固定される複数の第1の連結部、および
前記咀嚼ユニットの前記咬合面を跨いで伸長するように構成され、前記第1の誘導溝内に保持されて、前記第1の歯に固定される前記第1の連結部と連結される第1の弾性部材であって、咀嚼するとき、前記咬合力は、前記咀嚼ユニットを介して前記歯列弓の歯に伝達され、前記第1の歯が前記第1の凹部内で移動することを可能にする第1の弾性部材を含み、前記第1の弾性部材は、弾性復元力を加えて、前記第1の歯を前記所望の位置に移動させるように構成され、前記第1の誘導溝の配置方向は、前記第1の歯の移動方向を決定する歯列矯正装置。
前記咀嚼ユニットは、前記歯列弓の矯正する必要のない複数の第2の歯を収容するように構成される複数の第2の凹部が更に形成され、前記第2の凹部の形状は、前記第2の歯の形状と一致し、咀嚼するとき、前記咬合力は、前記咀嚼ユニットの前記第2の凹部を介して、前記第2の歯および前記第2の歯と隣接した前記第1の歯に伝達される請求項1に記載の歯列矯正装置。
前記咀嚼ユニットは、前記咀嚼ユニットの対向する唇頬側壁および舌側壁にそれぞれ形成されて、前記第1の歯に対応する複数の誘導開口を更に有し、前記第1の弾性部材が前記第1の歯を移動させるとき、前記誘導開口は、前記第1の歯の前記唇頬側と前記舌側の前記第1の連結部をその中で移動させ、前記誘導開口の配置方向と配置長さは、前記第1の歯の移動方向と移動距離を決定する請求項2に記載の歯列矯正装置。
前記咀嚼ユニットは、前記咀嚼ユニットの対向する唇頬側壁および舌側壁にそれぞれ形成されて、前記第2の歯の中の1つに対応した複数の追加開口を更に有し、且つ前記歯列矯正装置は、複数の第2の連結部および第2の弾性部材を更に含み、前記第2の連結部は、前記追加開口によって露出された前記第2の歯の対向する唇頬側および舌側にそれぞれ固定され、前記第2の弾性部材は、前記咀嚼ユニットの前記咬合面を跨いで伸長し、前記第2の歯の前記第2の連結部に連結されるように構成され、前記歯列弓にある前記咀嚼ユニットの保持力を向上させる請求項2に記載の歯列矯正装置。
第3の連結部および第3の弾性部材を更に含み、前記第3の連結部は、前記咀嚼ユニットの前記唇頬側壁および前記舌側壁の中の一方に固定され、前記第3の弾性部材は、前記第3の連結部と、前記第1の歯に固定される前記第1の連結部の少なくとも1つと連結されるように構成され、補助的な弾性力を生じて、前記第1の歯の移動を誘導する請求項4に記載の歯列矯正装置。
前記咀嚼ユニットの前記咬合面、前記唇頬側壁、および前記舌側壁のうちの少なくとも1つに更に形成し、前記第3の弾性部材をその中に保持する、少なくとも1つの追加誘導溝を含む請求項6に記載の歯列矯正装置。
硬質体であり、且つ歯列弓に着脱可能に装着されるように構成される咀嚼ユニットであって、歯並びのずれた歯を収容するとき、前記咀嚼ユニットが変形を生じることがなく、且つ前記咀嚼ユニットの材料の強度は、咀嚼過程中に生じる咬合力を受けるのに十分である咀嚼ユニット、
前記咀嚼ユニット内に形成されて、前記歯列弓の矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯を収容するように構成され、前記第1の歯を初期位置から所望の位置に移動させる形状を有する第1の凹部、
前記咀嚼ユニットの唇頬側壁から、前記咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁を貫通して、前記咀嚼ユニットの前記唇頬側壁と対向する舌側壁に延伸する誘導孔、
前記第1の歯の対向する唇頬側表面と舌側表面にそれぞれ固定される複数の第1の連結部、および
前記誘導孔を貫入し、且つ前記第1の歯の前記第1の連結部と連結されるように構成される第1の弾性部材であって、咀嚼するとき、前記咬合力は、前記咀嚼ユニットを介して前記歯列弓の歯に伝達され、前記第1の歯が前記第1の凹部内で移動することを可能にする第1の弾性部材を含み、前記第1の弾性部材は、弾性復元力を加えて、前記第1の歯を前記所望の位置に移動させるように構成され、前記誘導孔の配置方向は、前記第1の歯の移動方向を決定する歯列矯正装置。
前記突出誘導部は、前記矯正ユニットの前記咬合面に形成されて、前記咬合面の唇頬側から前記咬合面の前記唇頬側と対向する舌側に延伸する一対の突出誘導部を含む請求項10に記載の歯列矯正装置。
前記突出誘導部は、前記矯正ユニットの前記咬合面に形成されて、前記咬合面の唇頬側と前記咬合面の前記唇頬側と対向する舌側との間に配置された複数の対の突出誘導部を含む請求項10に記載の歯列矯正装置。
前記突出誘導部は、前記矯正ユニットの唇頬側壁および前記矯正ユニットの前記唇頬側壁と対向する舌側壁にそれぞれ形成された複数の対の突出誘導部含む請求項10に記載の歯列矯正装置。
【背景技術】
【0002】
歯並びの悪さは、個人の歯科審美性、機能性および健康に悪影響を及ぼし得る。歯列矯正の目的は、機械的な力で歯科機能性および審美性が改善される位置または向きに歯を移動させる器具を使用することにより、歯を正しく配列させることである。
【0003】
従来の歯列矯正器(braces)は、アーチワイヤを動力発生器具として用いている。アーチワイヤは予め成形されたものであり、歯に固定されたブラケットを介して歯に連結する。取付け初期において、アーチワイヤは弾性変形して位置異常の歯を受け(accommodate)、それらに矯正弾性力を加える。アーチワイヤは歯並びのずれた歯に持続的に力を加え、それらの歯を徐々に矯正終了位置(finish position)まで押し動かす。
【0004】
もう一種の従来のクリアアライナー(clear aligner)は、歯列矯正に既に広く用いられており、アーチワイヤに比べて、見えにくい、着脱可能といった長所がある。アライナーの動作原理も、器具自体の弾性性を利用することである。歯並びのずれた歯にクリアアライナーが装着されると、アライナーの本体または殻体は可撓性があり、歯並びのずれた歯を収容し、その元の形状に戻ろうと(即ち、変形)するとき、矯正弾性力を生じることができる。継続的な矯正力を与えて歯列矯正効果を達成させるため、従来のクリアアライナーは、患者が咀嚼をする(食事をしている)ときに外す以外、1日に20時間以上の装着が要される。
【0005】
未萌出(unerupted)または部分萌出(partially erupted)の歯は、
矯正するのがかなり難しいケースであり、従来のアーチワイヤまたはクリアアライナーを用いてもこれらの歯を完全萌出の正常位置に誘導することはできない。現在、歯科医は一般に、インプラント矯正(temporary anchorage devices,TAD)(例えば、ミニスクリュー)、および未萌出または部分萌出の歯に固定されたコネクタに連結された弾性体を用いて、引っ張り力を加えてこの問題を矯正している。しかしながら、インプラント矯正は、患者自らが取り外しできるものではなく、且つこの装置の侵襲性(intrusive nature)は感染源となり、患者に不快感を招きやすい。
【0006】
従って、如何にして上述の欠点を改善することができる歯列矯正装置を提供するかが、当業者の重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の萌出不全の歯を矯正する、非侵襲的且つ患者が着脱可能な歯列矯正装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、咬合面の下方に位置する萌出不全の歯を完全萌出の矯正終了位置に効果的に誘導することができる、非侵襲的且つ患者が着脱可能な歯列矯正装置を提供することである。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態による、咀嚼ユニットを含む歯列矯正装置を提供する。咀嚼ユニットは、硬質体であり、且つ歯列弓に着脱可能に装着されるように構成されている。歯並びのずれた歯を収容するとき、咀嚼ユニットは、変形を生じることがなく、且つ咀嚼ユニットの材料の強度は、咀嚼過程中に生じる咬合力を受けるのに十分である。第1の凹部は、咀嚼ユニット内に形成されて、歯列弓の矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯を収容するように構成される。第1の凹部は、第1の歯が初期位置から所望の位置に移動するようにする形状を有する。第1の誘導溝は、咀嚼ユニットの咬合面に形成される。歯列矯正装置は、第1の歯の対向する唇頬側と舌側にそれぞれ固定された複数の第1の連結部を更に含む。また、歯列矯正装置は、咀嚼ユニットの咬合面を跨いで伸長ように構成され、第1の誘導溝内に保持されて、第1の歯の上述の第1の連結部と連結された第1の弾性部材を含む。咀嚼するとき、咬合力は、咀嚼ユニットを介して歯列弓の歯に伝達され、且つ第1の弾性部材を活性化し、第1の歯を所望の位置に移動させる。第1の誘導溝の配置方向は、第1の歯の移動方向を決定する。
【0010】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットは、歯列弓の矯正する必要のない複数の第2の歯を収容するように用いられる複数の第2の凹部が更に形成され、第2の凹部の形状は、第2の歯の形状と一致するように構成される。咀嚼するとき、咬合力は、咀嚼ユニットの第2の凹部を介して、第2の歯および第2の歯と隣接した第1の歯に伝達される。
【0011】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットは、咀嚼ユニットの対向する唇頬側壁および舌側壁にそれぞれ形成されて、第1の歯に対応する複数の誘導開口を更に有する。第1の弾性部材が第1の歯を移動させたとき、誘導開口は、第1の歯の唇頬側と舌側の第1の連結部をその中で移動させる。誘導開口の配置方向と配置長さは、第1の歯の移動方向と移動距離を決定する。
【0012】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットは、咀嚼ユニットの対向する唇頬側壁および舌側壁にそれぞれ形成されて、第2の歯の中の一方に対応した複数の追加開口を更に有し、且つ歯列矯正装置は、複数の第2の連結部および第2の弾性部材を更に含み、第2の連結部は、追加開口によって露出された第2の歯の対向する唇頬側および舌側にそれぞれ固定され、第2の弾性部材は、咀嚼ユニットの咬合面を跨いで伸長ように構成され、第2の歯の第2の連結部に連結されるように構成され、これにより、歯列弓にある咀嚼ユニットの保持力(retention)を向上させる。
【0013】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの咬合面は、第2の弾性部材をその中に保持するように用いられる、少なくとも1つの追加溝を更に形成する。
【0014】
いくつかの実施形態による、歯列矯正装置は、第3の連結部および第3の弾性部材を更に含み、第3の連結部は、咀嚼ユニットの唇頬側壁および舌側壁の中の一方に固定され、第3の弾性部材は、第3の連結部と、第1の歯の第1の連結部の中の少なくとも一方と連結されるように構成され、これにより、補助的な弾性力を生じて、第1の歯の移動を誘導する。
【0015】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの咬合面、唇頬側壁、および舌側壁の中の少なくとも一方は、第3の弾性部材をその中に保持する、少なくとも1つの追加誘導溝を更に形成する。
【0016】
いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの咬合面は、複数の窩特徴(fossae features)および複数の咬頭特徴(cusps features)を更に有する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態による、咀嚼ユニットを含む歯列矯正装置をまた提供する。咀嚼ユニットは、硬質体であり、且つ歯列弓に着脱可能に装着されるように構成されている。歯並びのずれた歯を収容するとき、咀嚼ユニットは、変形を生じることがなく、且つ咀嚼ユニットの材料の強度は、咀嚼過程中に生じる咬合力を受けるのに十分である。第1の凹部は、咀嚼ユニット内に形成されて、歯列弓の矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯を収容するように構成される。第1の凹部は、第1の歯が初期位置から所望の位置に移動するようにする形状を有する。誘導孔は、咀嚼ユニットの唇頬側壁から、咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁を貫通して、咀嚼ユニットの唇頬側壁と対向する舌側壁に延伸する。歯列矯正装置は、第1の歯の対向する唇頬側と舌側にそれぞれ固定された複数の第1の連結部を更に含む。また、歯列矯正装置は、誘導孔を貫入し、且つ第1の歯の第1の連結部と連結されるように構成された第1の弾性部材を含む。咀嚼するとき、咬合力は、咀嚼ユニットを介して歯列弓の歯に伝達され、且つ第1の弾性部材を活性化し、第1の歯を所望の位置に移動させる。誘導孔の配置方向は、第1の歯の移動方向を決定する。
【0018】
いくつかの実施形態による、矯正ユニットを含む歯列矯正装置をまた提供する。矯正ユニットは、歯列弓に着脱可能に装着されるように構成される。矯正ユニットは、歯列弓に装着するとき、歯並びのずれた歯を収容するように可撓性である。第1の凹部は、矯正ユニット内に形成され、歯列弓の歯列矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯を収容する。歯列矯正装置は、矯正ユニットの少なくとも一つの表面に形成され、第1の歯に対応し、且つ互いに平行する複数の突出誘導部を更に含む。歯列矯正装置は、第1の歯の対向する唇頬側および舌側にそれぞれ固定される複数の第1の連結部も含む。また、歯列矯正装置は、矯正ユニットの咬合面を跨いで伸長し、突出誘導部の間に保持されて、第1の歯の第1の連結部と連結されるように構成され、弾性力を生じて、第1の歯を所望の位置に移動させる第1の弾性部材を含む。突出誘導部の配置方向は、第1の歯の移動方向を決定する。
【0019】
いくつかの実施形態による、突出誘導部は、矯正ユニットの咬合面に形成されて、咬合面の唇頬側から咬合面の唇頬側と対向する舌側に延伸する一対の突出誘導部を含む。
【0020】
いくつかの実施形態による、突出誘導部は、矯正ユニットの咬合面に形成されて、咬合面の唇頬側と咬合面の唇頬側と対向する舌側との間に配置された複数の対の突出誘導部を含む。
【0021】
いくつかの実施形態による、突出誘導部は、矯正ユニットの唇頬側壁および矯正ユニットの唇頬側壁と対向する舌側壁にそれぞれ形成された複数の対の突出誘導部含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、2つの咀嚼ユニットを有する歯列矯正装置を患者が装着しているのを示す概略図である。
【
図1B】患者の咀嚼中における歯列矯正装置の第1および第2の咀嚼ユニットが互いに咬合している状態を示す概略図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、歯列矯正装置の第1の弾性部材の立体構成を示す概略図である。
【
図3A】いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの上面図、および咀嚼ユニットの咬合面に形成された第1の誘導溝(guiding groove)を示す部分拡大図である。
【
図3B】第1の弾性部材が如何にして咀嚼ユニットの咬合面を跨いで伸長し、第1の誘導溝内に保持されて、矯正が必要な第1の歯の対向する唇頬側表面と舌側表面に固定された2つの第1の連結部と連結されるかを示す上面図である。
【
図3C】咀嚼ユニットの上面図と、咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁に形成された誘導孔を示す部分拡大図である。
【
図4A】本発明の異なる実施形態による、矯正ユニットの誘導開口の構成を示す概略図である。
【
図4B】本発明の異なる実施形態による、矯正ユニットの誘導開口の構成を示す概略図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、歯列矯正装置の第2の弾性部材の立体構成を示す概略図である。
【
図6】本発明のいくつかの他の実施形態による、歯列矯正装置の第1の弾性部材と第3の弾性部材の立体構成を示す概略図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、
図1Bの咀嚼ユニットの咬合面の咬合の特徴を示す概略図である。
【
図8】第1及び、第2の咀嚼ユニットを互いに咬合した状態を示す概略断面図である。
【
図9】咀嚼ユニットの第1の凹部と第1の歯との間に配置された緩衝部材を示す概略図である。
【
図10A】いくつかの実施形態による、咬合面に一対の突出誘導部が形成された歯列矯正装置の矯正ユニットを示す概略図である。
【
図10B】いくつかの実施形態による、咬合面に複数の対の突出誘導部が形成された矯正ユニットを示す概略図である。
【
図10C】いくつかの実施形態による、唇頬側壁および舌側壁に一対の突出誘導部がそれぞれ形成された矯正ユニットを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、特徴および利点を説明するため、本発明の好ましい実施形態および図を以下に詳細に示す。
【0024】
以下の詳細な記載において、“上に”、“下に”、“左”、“右”、“前方の”および“後方の”といった方位は、説明のために用いられるもので、本発明を限定することは意図されていない。第1の構成要素が第2の構成要素に配置されるとは、第1の構成要素および第2の構成要素が直接接触しているか、その間隙に1つまたはより多くのその他の構成要素がある状態を含むことができる。
【0025】
説明を簡素化するために、本開示では、各種実施例において、参照符合および/または文字を繰り返すことがある。この繰り返しは、簡潔および明確にする目的でするものであって、それ自体が、記載される各種実施形態および/または構成間の関係を決定することはない。簡潔および明確にする目的のため、各種機構は異なる縮尺で任意に描かれ得る。
【0026】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態による、歯列矯正装置を患者が装着しているのを示す概略図である。
図1Aに示すように、歯列矯正装置1は、硬質体の第1の咀嚼ユニットおよび硬質体の第2の矯正ユニット20を含み、第1および第2の咀嚼ユニット10と20は、患者の上顎歯列弓100と下顎歯列弓200に着脱可能に装着されるようにそれぞれ構成される。従って、患者は必要に応じて第1および第2の咀嚼ユニット10と20を自由に着脱することができ、正常に歯を清掃することができる。
【0027】
第1および第2の咀嚼ユニット10と20は、硬質体であるため、患者は、日常生活において装着して咀嚼(例えば、食事をするまたはガムを噛む)することができ、咀嚼ユニット10と20が破損するかもしれない心配をする必要がない。いくつかの実施形態では、第1および第2の咀嚼ユニット10と20は、アクリルレジン、レジンスプリント材(resin splint materials)、またはレジン暫定義歯材(resin temporary denture materials)など、口腔内での使用に適した材料で作製され、生物学的および機械的要件を満たすために適切且つ十分な硬度を有することができる。例えば、第1および第2の咀嚼ユニット10と20は、短期から中期の持続時間の咬合力(functional loads)と摩損に耐えることができ、変形を生じることがない。
【0028】
図1Bは、患者の咀嚼中における歯列矯正装置の第1および第2の咀嚼ユニット10と20が互いに咬合している状態を示す概略図である。まず、患者が第1および第2の咀嚼ユニット10と20を装着して咀嚼したとき、上顎歯列弓100と下顎歯列弓200の咬合により生じた咬合力は、第1および第2の咀嚼ユニット10と20を介して各歯と、歯根膜(periodontal membrane)の静水圧効果(hydrostatic pressure effect)によって周囲の歯槽骨に伝達されることができるため、歯列矯正装置1の駆動力/矯正力となることが理解されよう(この作用原理については後に詳述する)。
【0029】
第1および第2の咀嚼ユニット10と20は硬質体であるため、歯を収容しているとき(咬合力を受けている状態においても)変形を生じることなく、または、歯に対して矯正弾性力を加えないことも留意されたい。これは、従来技術のクリアアライナーを用いた例とは対照的なものである。上述のように、従来のクリアアライナーの本体または殻体は可撓性があり、位置異常の歯に装着されると変形し、アライナー本体または殻体の弾性力を矯正力として利用する。
【0030】
図1Bに示すように、第1および第2の咀嚼ユニット10と20の内面(歯受面ともいう)には、複数の凹部構造R(点線で示されている)が形成され、患者の上顎歯列弓100および下顎歯列弓200の複数の歯を収容するようにそれぞれ用いられている。いくつかの実施形態では(
図1Bに示されるように)、例えば、下顎歯列弓200の第1小臼歯202は、矯正を必要とし、且つ未萌出(例えば、部分萌出)の歯(第1の歯)である。図示されていないが、第1の歯は、唇頬側または舌側の方向に向かって傾く可能性がある。また、上述の凹部構造Rは、複数の凹部R1と、1つの凹部R2(第2の咀嚼ユニット20の内側面に形成されている)とを含み、第1および第2の咀嚼ユニット10と20が装着されたとき、上述の凹部R1(第2の凹部)の位置は、矯正する必要のない患者の歯(第2の歯)の位置にそれぞれ対応し、且つ上述の第2の凹部R1の形状は、上顎歯列弓100と下顎歯列弓200の対応する第2の歯の形状と一致するように構成され、凹部R2(第1の凹部)の位置は、矯正する必要のある患者の歯(第1の歯、例えば第1小臼歯202)の位置に対応し、且つ第1の凹部R2と第1小臼歯202の間は、空間Gが形成される。
【0031】
異なる実施形態において、患者が矯正する必要のある歯(第1の歯)の数および位置が変わったとき、第1の凹部R2の数および位置もそれに対応して変わることが理解されよう。例えば、矯正する必要のある第1の歯も上顎歯列弓100に配置されることができ、第1の凹部R2は、第1の咀嚼ユニット10の内側面に配置され、第1の歯に対応する。
【0032】
患者が第1および第2の咀嚼ユニット10と20を装着して咀嚼したとき、上顎歯列弓100と下顎歯列弓200の咬合によって生じた咬合力は、第1および第2の咀嚼ユニット10と20を介して上顎歯列弓と下歯列弓の各歯に伝達され、負荷を分配することができる。次いで、各歯に加えられる咬合力は歯根および歯周靭帯に伝達され、歯根膜の静水圧効果によって周囲の歯槽骨に加えられる。より具体的に言えば、咬合力は、第1および第2の咀嚼ユニット10と20の矯正する必要のない第2の歯と直接接触した第2の凹部R1を介して、第2の歯および第2の歯に隣接した第1の歯に伝達されることができる。このとき、第2の凹部R1は、第2の歯の移動を維持し、制限することができる。一方では、咬合力が加えられることより、第1の歯は、第1の凹部R2の空間G内を移動することができる。従って、咬合力は、矯正する必要のある歯を移動させる矯正力として用いることができ、且つこの矯正力は、間欠的且つ生理的に歯に作用し、患者の不快感を低減することができる。また、咬合力は、後述する歯列矯正装置1の少なくとも1つの第1の弾性部材40を活性化(activate)する駆動力となることもできる。
【0033】
上述の歯列矯正装置1の矯正の作用原理は、従来技術(例えば、クリアアライナー)の矯正の作用原理とは明らかに異なることも留意されたい。歯を矯正するときの歯の移動は、機械的な力が歯に加えられて、骨のリモデリングを引き起こすプロセスであることが理解されよう。歯槽骨で生じる歯の移動は、実際には、歯周靱帯の引っ張り側の新生骨の形成と、圧迫側の骨吸収である。ここでは、軽い力は、骨吸収を直接生じ、細胞死を減少させることができ、歯槽骨の歯の移動をより容易にすることができるため、より適している。反対に、重く連続的な力は、歯周靭帯の細胞死が歯の移動を止め、且つ歯根の表面と歯槽骨の壁面の長期間の接触も歯根吸収のリスクを増加させるため、適していない。上述のように、従来のクリアアライナーは、アライナー本体の弾性復元力によって歯列を矯正し、長時間(1日20時間)持続的に歯に弾性力を加える必要がある。反対に、上述の歯列矯正装置1の第1および第2の咀嚼ユニット10と20(
図1Aおよび
図1Bを参照)は、可撓性のない硬質体であり、それを装着して咀嚼するとき(即ち、咬合力を受けている状態において)、変形を生じない。特に、本発明の実施形態の歯列矯正装置1は、咀嚼時に生じる間欠的で短時間(intermittent short-duration)の咬合力を駆動力/矯正力として用いることができるため、歯の矯正移動を加速させることができるだけでなく、患者が装置を装着する時間および不快感を低減することもできる。
【0034】
いくつかの実施形態では、上述の歯列矯正装置1は、弾性部材の弾性復元力を矯正力として用いて、矯正を必要とし、且つ萌出不全の第1の歯(例えば、下顎歯列弓200の第1小臼歯202)を、その矯正終了位置または所望の位置(例えば、完全萌出の、且つ他の歯と歯並びが整った位置)により効果的に且つ迅速に誘導することができる。いくつかの実施形態では、第1の凹部R2は、歯並びのずれた第1の歯を初期(位置異常)位置から所望の位置(または矯正終了位置)に移動させる形状を有するように構成されており、言い換えれば、第1の凹部R2の配置形状が第1の歯の所望の位置を決めるということである。
【0035】
次いで、
図1Bおよび
図2に示すように、
図2は、いくつかの実施形態による、歯列矯正装置1(
図1B)の第1の弾性部材40の立体構成の概略図を示している。図に示されるように、第1の弾性部材40は、咀嚼ユニット20の咬合面B2を跨いで伸長するように構成され、且つ、第1の弾性部材40の両端は、第1の歯(第1小臼歯202)の対向する唇頬側表面202Aと舌側表面202Bに固定された2つの第1の連結部30にそれぞれ連結される。いくつかの実施形態では、第1の連結部30は、フック構造(これに限定されるものではない)を有し、例えば接着の方式で第1小臼歯202に固定されることができる。第1の連結部30の材料は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金またはプラスチックセラミックを含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の弾性部材40は、ばね、ゴムバンド、またはパワーチェーン(power chain)でもよい。
【0036】
上述の構成により、患者が歯列矯正装置1を装着して咀嚼したとき、咬合力は、第1および第2の咀嚼ユニット10と20を介して各歯に伝達される以外に、伸長した第1の弾性部材40を活性化し、第1の歯(第1小臼歯202)をその所望の位置に移動させることもできる。いくつかの実施形態では、第1の弾性部材40は、弾性(復元)力を加えて第1の歯を歯槽骨から引っ張り出し(
図2の矢印に示されるように)、且つその完全萌出の位置に到達させることができる持ち上げ(lifting)部材である。
【0037】
図2に示すように、第1の誘導溝22が咀嚼ユニット20の咬合面B2に形成され、第1の弾性部材40をその中に保持し、弾性部材40が矯正過程中に咬合面B2で滑動することを防止する。いくつかの実施形態では、第1の誘導溝22の配置方向は、第1の歯の移動方向を決定する。例えば、第1の誘導溝22が直線状に咬合面B2に形成され(例えば、咬合面B2の唇頬側から咬合面B2の舌側に延伸して)、第1の凹部R2の表面の中心位置に対応して配置されたとき、第1の誘導溝22に保持された第1の弾性部材40は、弾性力を加えて第1の歯を第1の凹部R2の表面の中心位置に向けて引っ張ることができる。反対に、第1の誘導溝22の配置位置が第1の凹部R2の表面の中心位置に対してずれているとき、第1の誘導溝22に保持された第1の弾性部材40は、弾性力を加えて第1歯を第1の誘導溝22の方向に向けて引っ張ることができる。
【0038】
図3Aは、いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの上面図、および咀嚼ユニットの咬合面に形成された第1の誘導溝22を示す部分拡大図である。
図3Aでは、第1の誘導溝22の配置方式は、
図2に示された第1の誘導溝22の配置方式と同様であり、且つ部分萌出の第1の歯202は、歯列弓の舌側に位置している。
図3Bは、第1の弾性部材40(例えば、ゴムバンド)が如何にして咀嚼ユニットの咬合面を跨いで伸長し、第1の誘導溝22内に保持されて、矯正が必要な第1の歯202の対向する唇頬側表面と舌側表面に固定された2つの第1の連結部30と連結されるかを示す上面図である。
図3Aおよび
図3Bに示された構成によって、第1の弾性部材40は、弾性力を加えて位置異常の第1の歯202を所望の位置(または矯正終了位置)に移動させることができることが理解されよう。いくつかの実施形態では、位置異常の第1の歯202はまた、歯列弓の唇頬側に位置される可能性があり、上述の
図3Aおよび
図3Bに示された装置はまた、第1の歯202を所望の位置に誘導することができる。
【0039】
図3Cは、いくつかの実施形態による、咀嚼ユニットの上面図と、咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁に形成された誘導孔23(点線で示される)を示す部分拡大図である。
図3Cでは、咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁は、十分な厚さを有し、且つ誘導孔23は、咀嚼ユニットの唇頬側壁(図に示す右側壁)から、咀嚼ユニットの咬合面の下方の壁を貫通して、咀嚼ユニットの舌側壁(図に示す左側壁)に延伸するように構成される。図に示されていないが、第1の弾性部材40は、誘導孔23を貫入して、第1の歯202の対向する唇頬側と舌側に固定された2つの第1の連結部30と連結するように構成されることができるため、矯正弾性力を位置異常の第1の歯202に加えて、それを所望の位置に誘導することができる。上述の第1の誘導溝22の作用と同様に、誘導孔23の方向は、第1の歯の移動方向を決定する。
【0040】
図2に示すように、いくつかの実施形態では、複数(例えば2つ)の誘導開口24は、咀嚼ユニット20の対向する唇頬側壁S1(第1の歯202の唇頬側表面202Aに対応する)および舌側壁S2(第1の歯の舌側表面202Bに対応する)にそれぞれ形成される。第1の弾性部材40が第1の歯202を移動させるとき、誘導開口24は、第1の歯202の唇頬側表面202Aと舌側表面202Bに固定された第1の連結部30をその中で移動させるということが理解されよう。特に、上述の誘導開口24の配置方向と配置長さは、第1の歯202の移動方向と移動距離を決定する。例えば、第1の歯202に固定された第1の連結部30が第1の弾性部材によって移動させられ、誘導開口24に沿って移動するとき、第1の連結部30の(最大)移動距離は、誘導開口24の長さ(例えば、
図4Aおよび
図4Bに示される長さT1および長さT2)によって決定されることができ、且つ第1の連結部30の移動方向(例えば、
図4A、
図4Bの矢印の方向で示された)も、誘導開口24の配置方向によって決定されることができる。従って、異なる萌出不全の第1の歯に必要な矯正/移動の距離および方向に従って異なる長さおよび方向の誘導開口24を構成することができる。
【0041】
次いで、
図1Bおよび
図5に示すように、歯列弓の上にある咀嚼ユニットの保持力(retention)を向上させるために(以下、下顎歯列弓200の第2の咀嚼ユニット20を例に説明する)、更に、咀嚼ユニット20の対向する唇頬側壁S1および舌側壁S2に、少なくとも1つの追加開口26をそれぞれ形成することができ、且つ追加開口26は、下顎歯列弓200の矯正する必要のない歯(第2の歯)の少なくとも1つの歯に対応する。また、歯列矯正装置1は、複数(例えば、2つ)の第2の連結部32および第2の弾性部材42を更に含むことができる。上述の第2の連結部32は、追加開口26によって露出された第2の歯の対向する唇頬側および舌側にそれぞれ固定され、第2の弾性部材42は、咀嚼ユニット20の咬合面B2を跨いで伸長するように構成され、且つその両端は、第2の歯の対向側に固定された2つの第2の連結部32にそれぞれ連結される。いくつかの実施形態では、追加開口26は、第2の連結部32と密接に嵌合し、あまり移動の空間のないように構成されることができる。上述の構成により、第2の歯に結合された第2の弾性部材42の弾性力は、咀嚼ユニット20が下顎歯列弓200に強固に保持されるようにすることができる(
図5の矢印の方向に示されるように)。
【0042】
また、咀嚼ユニット20の咬合面Bには、第2の弾性部材42をその中に保持するための追加溝25を形成することもできる。追加開口26、第2の連結部32、第2の弾性部材42、および追加溝25の数および位置は、実際の必要に応じて構成することができることが理解されよう。いくつかの実施形態では、第2の連結部32および第2の弾性部材42の構造および材料は、第1の連結部30および第1の弾性部材40の構造および材料と同じまたは同様である。また、図示されていないが、上顎歯列弓100にある第1の咀嚼ユニット10の保持力を増加させるために、追加開口26、第2の連結部32、第2の弾性部材42、および追加溝25の設計を咀嚼ユニット10に用いることもできる。
【0043】
次いで、
図6に示すように、いくつかの実施形態では、必要に応じて第1の歯(例えば、下顎歯列弓200の第1小臼歯202)を垂直でない上方向に誘導するために(このとき、誘導開口24は、
図4Bに示されたように配置されてもよい)、歯列矯正装置1は、少なくとも1つの第3の連結部34および少なくとも1つの第3の弾性部材44を更に含むことができる。上述の少なくとも1つの第3の連結部34は、第1の歯202に必要な誘導角度(guided angle)に基づいて、咀嚼ユニット20の唇頬側壁S1および舌側壁S2の中の少なくとも一方に固定され、且つ少なくとも1つの第3の弾性部材44は、第3の連結部34と、第1小臼歯202に固定された第1の連結部30の中の少なくとも1つとに連結されることができるように構成され、これにより、補助的な弾性力(
図6の矢印の方向に示されるように)を生じて、第1の歯の移動を誘導することができる。従って、歯列矯正の効果を向上させることができる。いくつかの実施形態では、第3の連結部34および第3の弾性部材44の構造および材料も、第1の連結部30および第1の弾性部材40の構造および材料と同じであることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では(
図6に示されるように)、第3の連結部34が咀嚼ユニット20の一方の側壁に固定され(例えば、唇頬側壁S1)、第3の弾性部材44が矯正ユニット20の咬合面B2を跨いで伸長し、第1の歯202の対向側に配置された第1の連結部30に連結されているので、少なくとも1つの追加誘導溝27も、矯正ユニット20の咬合面B2、唇頬側壁S1、および舌側壁S2の中の少なくとも1つに対応して形成されることができ、第3の弾性部材44をその中に保持し、それが任意に滑動することを防止するように用いられる。第3の連結部34の配置位置と第3の弾性部材44の連結方式に応じて、追加誘導溝27の配置位置も対応して変更可能であることが理解されよう。
【0045】
患者が第1および第2の咀嚼ユニット10と20を装着して咀嚼したとき、咬合によって生じた咬合力は、第1の歯202を周辺の歯槽骨に対して移動させることができるため(上記のように)、弾性部材(例えば、第1の弾性部材40および第3の弾性部材44)の弾性(復元)力を更に利用して、第1の歯202を容易、且つ迅速にその所望の位置に誘導することができることも理解されよう。更に、第1の歯202は、咀嚼中に歯槽骨に対して僅かな移動をするため、弾性部材も、第1の歯202の移動に伴ってその弾性を保持することができる(即ち、強く引っ張った状態ではなく、間欠的な収縮も伴う)。その結果、弾性部材が第1の歯202に加わる力が患者に不快感を与えにくくなり、弾性部材が弾性疲労しにくくなる。
【0046】
更に、歯列矯正装置1は、咀嚼している状態で使用されるように設計されており、その歯列矯正の機能は、咬合力によって活性化する。歯列矯正装置1が機能するためには、歯列矯正装置1は、咀嚼中に機能的な咬合を確立する特徴が必要である。機能的な咬合とは、上顎歯列弓と下顎歯列弓の歯が咀嚼中に効果的な方式で接触し、且つ咀嚼中の顎の全ての動きにおいて損傷が起こらないようにしなければならないということである。上述の実施形態の場合、咬合は、装着した咀嚼ユニットの接触によって起こるため、咀嚼ユニットの咬合面には、機能的な咬合を確立することができる特徴を有する必要がある。
【0047】
図7は、いくつかの実施形態による、
図1Bの咀嚼ユニット10または20の咬合面の咬合の特徴を示す概略図である。
図7に示すように、咀嚼ユニット10の咬合面B1または咀嚼ユニット20の咬合面B2に咬頭特徴(cusps features)F1および窩特徴(fossae features)F2が形成されており、且つ好ましい実施形態では、全ての窩特徴F2は曲線(例えば、放物線)に分布している。また、第1および第2の咀嚼ユニット10と20が接触しているとき(即ち、咬合しているとき)、一方の咀嚼ユニットの咬頭特徴F1がもう一方の咀嚼ユニットの窩特徴F2に接触し、逆も同様である(
図8参照)。従って、患者が第1および第2の咀嚼ユニット10と20を装着して咀嚼するとき、第1および第2の咀嚼ユニット10と20の咬合点(即ち、咬頭および窩特徴F1とF2)は互いに同時に接触し、同時に互いに分離することが好ましい。また、第1および第2の咀嚼ユニット10と20は、滑動または他の損傷する動きなしで、最大有効接触面積で咬合し、第1および第2の咀嚼ユニット10と20に加わる圧力がより均一に分布するようにすることができる。これにより、第1および第2の咀嚼ユニット10と20の装着時の矯正効果および快適性を向上させることができる。これにより、第1及び第2の咀嚼部10と20の装着時の矯正効果及び快適性を向上させることができる。
【0048】
図1Bを再度参照すると、いくつかの実施形態では、第1の咀嚼ユニット10は、その左頬側壁および右頬側壁に形成された複数(例えば、2つ)の犬歯保護特徴(canine protection features)F3を更に有する。各犬歯保護特徴F3は、その舌側(図示せず)に、第2の咀嚼ユニット20を誘導するように用いられる誘導面(guiding surface)が形成されている。従って、犬歯保護特徴F3は、咀嚼過程において第1の咀嚼ユニット10に対する第2の咀嚼ユニット20の水平方向の移動の範囲を制限し、これにより、歯列矯正装置1を装着した患者の安定性および安全性を向上させることができる。
【0049】
上述の歯列矯正装置1は、2つの咀嚼ユニット10と20を含むが、歯列矯正装置1は、少なくとも1つの異常位置にある歯を有する上顎歯列弓または下顎歯列弓に配置された単一の咀嚼ユニットを含むこともできる。例えば、患者の異常位置にある歯が上顎歯である場合、患者は上顎歯列弓にのみ1つの咀嚼ユニットを装着することができ、反対の場合、患者は下顎歯列弓にのみ1つの咀嚼ユニットを装着することができる。患者が1つの歯列弓にのみ、咀嚼ユニットを装着したとき、咀嚼ユニットおよび対向する歯列弓も、その咬合面の咬頭および窩特徴を介して機能的な咬合を確立することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では(
図9を参照)、緩衝部材Mを、咀嚼ユニット20の第1の凹部R2と第1の歯202の間に配置して、第1の凹部R2と第1の歯202間の力を伝達および緩衝することができる。より具体的には、緩衝部材Mは、軟質、且つ非硬化性(non-hardening)のシリコン系材料からなる弾性部材であることができ、例えば接着の方式で第1の凹部R2の内面に固定される。第1の歯202が歯列矯正装置1の矯正力(咀嚼のときに生じる咬合力と弾性部材の弾性復元力を含む)により歯槽骨から引き出された後、緩衝部材Mは、第1の歯202の歯冠全体を覆うことができることが望ましい。より具体的には、第1の歯202が歯槽骨から引き出された後、第1の歯202は、咬合力の作用の下で第1の凹部R2内での移動をし続けることができ、第1の歯202が第1の凹部R2の表面に隣接したとき、緩衝部材Mは変形して第1の歯202の歯冠の表面を覆うことができるため、患者が感じる痛みや不快感を軽減することができる。いくつかの実施形態では、設計された第1の凹部R2の形状(図示せず)は、緩衝部材Mによって第1の歯202に誘導力を加え、依然として異常位置にあり、且つ移動している第1の歯がその所望の矯正終了位置に誘導されるようにする。
【0051】
上述の実施形態の歯列矯正装具1を装着した患者は、比較的短い矯正時間(例えば、1日数回の装着と1回15〜20分間の咀嚼)を要するだけで、高い歯列矯正(移動)の効果を得ることができる。反対に、従来技術で用いられる。クリアアライナーの装着(矯正)時間は、1日に20時間以上を要し、且つ未萌出の歯に対する矯正効果もかなり制限される。
【0052】
本発明の実施形態は、多くの他の変形または変更が可能であることが理解されよう。例えば、歯列矯正装置の硬質の咀嚼ユニット(例えば、
図1〜
図9の第1および第2の咀嚼ユニット10と20)は、非硬質の矯正ユニットと置き換えることができ、咀嚼ユニットの咬合面に形成された弾性部材(例えば、第1の弾性部材40)を保持するための誘導溝(例えば、第1の誘導溝22)は、矯正ユニットの表面に形成された複数の突出誘導部と置き換えることができる。
【0053】
図10A〜
図10Cは、本発明のいくつかの実施形態による歯列矯正装置の矯正ユニット300をそれぞれ示す概略図である(歯列矯正装置は、単一または複数の矯正ユニット300を含むことができることが理解されよう)。いくつかの実施形態では、矯正ユニット300は、患者の上顎歯列弓または下顎歯列弓に着脱可能に装着されるように構成され、且つ矯正ユニット300の本体または殻体は厚みが薄く、可撓性がある。矯正ユニット300は、歯列弓に装着するとき、歯並びのずれた歯を収容するように可撓であり、元の形状に戻ろうと(即ち、変形)するとき、矯正弾性力を生じることができる。図示されていないが、少なくとも1つの第1の凹部が矯正ユニット300内に形成され(例えば、内側面に)、歯列弓の歯列矯正を必要とし、且つ萌出不全の少なくとも1つの第1の歯を収容する。
【0054】
いくつかの実施形態では(
図10Aに示されるように)、一対の平行に設置された突出誘導部301が矯正ユニット300の咬合面に形成され、第1の凹部と第1の歯に対応する。好ましくは、一対の突出誘導部301は、矯正ユニット300の咬合面の唇頬側から咬合面の唇頬側に対向する舌側に延伸し、矯正ユニット300の咬合面を跨いで伸長し、第1の歯の対向側の複数の第1の連結部と連結した第1の弾性部材(図示せず)を一対の突出誘導部301の間に保持する。上述の実施形態と同様に、引っ張られた第1の弾性部材も、第1の歯に弾性復元力を加え、第1の歯をその所望の位置に誘導することができる。一対の突出誘導部301の配列方向は、第1の歯の移動方向を決定する(配置方法は、上記の第1の誘導溝22と同様の構成であるため、説明を省略する)。
【0055】
いくつかの代替の実施形態では(
図10Bに示されるように)、矯正ユニット300の咬合面、および咬合面の対向する唇頬側と舌側の間に、複数の対の平行に設置された突出誘導部301を形成することができ、これらの突出誘導部301の特徴および機能は、
図10Aに示す突出誘導部301と同様であるため、ここでは再度説明しない。いくつかのもう一つの代替の実施形態では(
図10Cに示されるように)、矯正ユニット300の唇頬側壁および唇頬側壁と対向する舌側壁に一対の平行に設置された突出誘導部301をそれぞれ形成するように変更することができる。これらの突出誘導部301も第1の弾性部材を保持するために用いられ、且つこれらの突出誘導部301の配置方向も第1の歯の移動方向を決定することができる。また、
図10A〜
図10Cに示されるように、複数の誘導開口310が、矯正ユニット300の唇頬側壁および舌側壁にそれぞれ形成され、第1の歯に対応する。これらの誘導開口310の特徴および機能は、
図2、
図3、
図4および
図6に示す誘導開口24の特徴および機能と同様であるため、説明を省略する。また、上述の実施形態の追加溝25、第2の連結部32、および第2の弾性部材42などの部材も非硬質の矯正ユニット300の応用に組み込むことができる。
【0056】
要約すると、本発明の実施形態は、咬合面の下方に位置する萌出不全の、且つ矯正する必要のある歯を完全萌出の矯正終了位置に効果的に誘導し、伝統的な歯列矯正器具が萌出不全の歯を矯正することが難しいという問題を克服することができる、さまざまな非侵襲的且つ患者が着脱可能な歯列矯正装置を提供する。
【0057】
本開示の実施形態及びそれらの利点が詳細に説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって定義されるように、本開示の精神および範囲を逸脱せずに、本明細書において種々の変更、代替、および改変をすることができることを理解すべきである。例えば、本明細書で述べられる特徴、機能、プロセス、および材料の多くが本開示の範囲を逸脱することなく変更できることが当業者にとっては容易に理解されるだろう。また、本出願の範囲は、本明細書中に述べられたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者が本開示の開示から容易に理解するように、本明細書で述べられた対応する実施形態と、実質的に同様の機能を実行するか、または実質的に同様の結果を達成する、現存の、または後に開発される、開示、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップが本開示に従って利用され得る。よって、添付の特許請求の範囲は、上述のプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むように意図される。また、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変更および同様の配置を包含するように、最も広義な解釈が与えられるべきである。