【0028】
水耕栽培における本発明方法の好ましい態様を具体的な野菜を挙げて示す。
<ケール>
栽培の条件:
・播種時水耕栽培条件:水温20〜23℃、EC値0.8〜1.0mS/cm、pH非調整
・水耕栽培条件:水温20〜23℃、EC値1.8〜2.0mS/cm、pH6.0〜6.8
・気温:19〜22℃
・蛍光灯による照射17時間/日
・二酸化炭素濃度1,000ppm
キトサン施肥の条件:
・播種後、13日後〜34日目まで(収穫直前まで)、キトサン0.0085〜0.0417%の水耕用培養液で施肥
得られる野菜:
・葉酸、ビタミンCおよびβ−カロテンからなる群から選ばれるビタミンの1種以上、好ましくは葉酸とビタミンCが以下の含有量である。
葉酸が生鮮重量100gあたり120μg以上、好ましくは150〜210μg
ビタミンCが生鮮重量100gあたり81mg以上、好ましくは100〜125μg
β−カロテンが生鮮重量100gあたり7,500μg以上、好ましくは8,000〜9,400μg
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
実 施 例 1
キトサン施肥の期間・タイミングの違いによる影響の評価:
(1)試験目的
キトサンを施肥するタイミングの違いによるケール中の各種ビタミン濃度への影響について評価した。
(2)栽培条件
以下のケールの栽培条件で、ケール(カーボロネロ:トキタ種苗株式会社)を用いて栽培試験を実施した。水耕培養液に関してはファームエース1号S(カネコ種苗株式会社)、ファームエース2号(カネコ種苗株式会社)、ファームエース5号(カネコ種苗株式会社)を用いた。水耕培養液のpH調整は養液栽培用pH調整剤(ダウン:OATアグリオ株式会社)を用いた。本明細書実施例では各種肥料を水道水で溶解・希釈して使用した。
・水耕栽培条件:水温20℃、EC値1.8〜2.0mS/cm、pH6.0〜6.8
・気温:19〜22℃
・蛍光灯による照射17時間/日
・二酸化炭素濃度1,000ppm
(3)栽培方法
水耕用ウレタン培地に培養液を吸水させ、そこにケール種子を播種した。播種から7日後に発芽したケール苗を定植栽培用パネルに移し、
図1に示した水耕栽培装置へ定植した。
(4)水耕栽培装置
本実施例はすべて
図1に示した水耕栽培装置を使用した。本水耕栽培装置は段毎に培養液タンクおよび循環ポンプ、栽培ベッド(発泡スチロール+ベッドシート)が分かれており、それぞれの段で異なるキトサン処理条件を再現し評価を実施した。本実施例では培養液タンクと栽培ベッド中の培養液量は約120Lとして各種評価を実施した。なお、水耕培養液は、ケールの根に接するように循環される。
(5)キトサンの施肥条件
上記(4)の水耕栽培装置を用いてケールを栽培した。この栽培において、
図2に記載のスケジュールおよび濃度(C:100は0.004%、C:200は0.008%、C:300は0.013%、C:400は0.017%、C:800は0.033%)でキトサン(スーパーグリーン葉面散布用:関西キトサン)の施肥を行った。キトサンを施肥せずに栽培した条件区を慣行区とし、キトサンを施肥した条件区を試験区A〜Cとした。試験区Aでは栽培中期にのみキトサンを施肥した。試験区Bでは栽培終期から収穫までキトサンを施肥した。試験区Cでは栽培中期〜収穫までキトサンの施肥を実施した。
(6)成分分析
ケールを収穫後、水分量、β−カロテン、ビタミンC(総アスコルビン酸)、葉酸の含有量をそれぞれ公知の方法(水分量:減圧加熱乾燥法、β−カロテン:高速液体クロマトグラフ法、ビタミンC:高速液体クロマトグラフ法、葉酸:微生物定量法)により測定した。その結果の各測定値および測定値の平均値を
図3に示した。また、水分量、β−カロテン、ビタミンC、葉酸の含有量の各慣行区に対する試験区の増減を
図4に示した。
【0034】
以上の結果から、キトサンを含有させた水耕培養液で施肥し、ケールを栽培することでケール中の各種ビタミン濃度が増加することが分かった。特に試験区B−2では葉酸を生鮮重量100gあたり210μg、ビタミンCを生鮮重量100gあたり110mg、β−カロテンを生鮮重量100gあたり9,220μgで含有するケールが得られた。
【0035】
また、試験区A〜Cをそれぞれ比較することで各種ビタミン濃度の増加量はキトサンの施肥の期間やタイミングによって変化することが示唆された。
図5に示すとおり、ケール中の葉酸を増加させるためには、キトサンの施肥期間は少なくとも3日間必要であり、更に、施肥期間が3日間〜21日間であるとより葉酸を増加できることや、11〜21日間であると最も葉酸を増加できることが分かった。
【0036】
ビタミンCに関しては試験区Aと試験区BおよびCと比較すると試験区AはビタミンC濃度が低くなっており、試験区BおよびCではビタミンC濃度が高くなった。試験区Aと試験区BおよびCの違いとしては最後のキトサン施肥と収穫までの間隔の長さであると考えられ、試験区Aでは最後のキトサン施肥と収穫までの間隔が長くなっており、試験区BおよびCでは間隔が短くなっている。したがって、最後のキトサン施肥と収穫までの間隔を
短くすることでケール中のビタミンC濃度が増加することが示唆された。
【0037】
β−カロテンに関してはキトサン施肥の期間の長さや施肥タイミングによる増加量には一定の傾向は見られなかったが、キトサン施与によって含量が増加することが示唆された。
【0038】
以上の結果より、ケール中のビタミンの含有量を増強するには、キチン質を0.005〜0.050%含有させた水耕用培養液で少なくとも3日間施肥すればよいことが分かった。
【0039】
実 施 例 2
別品目への汎用性の評価:
(1)試験目的
キチン質の施肥がケール以外の野菜へ応用が可能か評価した。本実施例ではリーフレタスへの汎用性について評価した。
(2)栽培条件・方法
以下のリーフレタスの栽培条件で、リーフレタス(フリルアイス(登録商標):雪印種苗株式会社)を用いて栽培試験を実施した。その他に関しては実施例1と同様の栽培条件・方法で評価を実施した。
・水耕栽培条件:水温20℃、EC値1.5〜1.8mS/cm、pH6.0〜6.8
・気温:19〜22℃
・蛍光灯による照射12時間/日
・二酸化炭素濃度:1,000ppm
(3)キトサンの施肥条件
本実施例においては
図6に記載のスケジュールおよび濃度でキトサン(スーパーグリーン葉面散布用:関西キトサン)の施肥を行った。キトサンを施肥せずに栽培した条件区を慣行区とし、キトサンを施肥した条件区を試験区とした。
(4)成分分析
リーフレタスを収穫後、実施例1と同様の成分項目を同様の方法で測定を実施した。その結果の各測定値を
図7に示した。また、水分量、β−カロテン、ビタミンC、葉酸の含有量の各慣行区に対する試験区の増減を
図8に示した。
【0040】
以上の結果よりリーフレタスにおいてもケールと同様に、水耕培養液にキトサンを施肥することで各種ビタミン濃度が増加することは分かった。したがって、本実施例で示すとおり、本技術はケール以外の品目への応用も可能であることが示唆された。
【0041】
実 施 例 3
別品目への汎用性の評価:
(1)試験目的
キチン質の施肥がケール以外の野菜へ応用が可能か評価した。本実施例ではラディッシュへの汎用性について評価した。
(2)栽培条件・方法
以下のラディッシュの栽培条件で、ラディッシュ(さくらんぼ:株式会社サカタのタネ)を用いて栽培試験を実施した。その他に関しては実施例1と同様の栽培条件・方法で評価を実施した。
・水耕栽培条件:水温20℃、EC値1.0〜1.2mS/cm、pH非調整
・気温:19〜22℃
・蛍光灯による照射8時間/日
・二酸化炭素濃度:1,000ppm
(3)キトサンの施肥条件
・本実施例においても
図9に記載のスケジュールおよび濃度でキトサン(スーパーグリーン葉面散布用:関西キトサン)の施肥を行った。キトサンを施肥せずに栽培した条件区を慣行区とし、キトサンを施肥した条件区を試験区とした。
・収穫日の4日前から収穫日当日まで培養液中のキトサン濃度が0.013〜0.040%となるように水耕用培養液に施肥した。
(4)成分分析
ラディッシュを収穫後、水分量、ビタミンC、葉酸について実施例1と同様の方法で測定を実施した。その結果の測定値を
図10に示した。また、水分量、ビタミンC、葉酸の含有量の各慣行区に対する試験区の増減を
図11に示した。なお、日本食品標準成分表によるとラディッシュにはβ−カロテンは含まれていないため、測定を実施しなかった。
【0042】
以上の結果よりラディッシュにおいてもケール、リーフレタスと同様に、水耕培養液にキトサンを施肥することで各種ビタミン濃度が増加しうることが分かった。
【0043】
実 施 例 4
別品目への汎用性の評価:
(1)試験目的
キチン質の施肥がケール以外の野菜へ応用が可能か評価した。本実施例ではミニトマトへの汎用性について評価した。
(2)栽培条件・方法
以下のミニトマトの栽培条件で、ミニトマト(レジナ:株式会社サカタのタネ)を用いて栽培試験を実施した。その他に関しては実施例1と同様の栽培条件・方法で評価を実施した。
・水耕栽培条件:水温20〜23℃、EC値1.0〜1.4mS/cm、pH非調整
・気温:19〜22℃
・蛍光灯による照射20時間/日
・二酸化炭素濃度:1,000ppm
(3)キトサンの施肥条件
・本実施例においても
図12に記載のスケジュールおよび濃度でキトサン(スーパーグリーン葉面散布用:関西キトサン)の施肥を行った。キトサンを施肥せずに栽培した条件区を慣行区とし、キトサンを施肥した条件区を試験区とした。
・収穫日の7日前から収穫当日まで培養液中のキトサン濃度が0.015〜0.060%となるように3〜7日間の間隔で水耕用培養液に施肥。
(4)成分分析
ミニトマトを収穫後、実施例1と同様の成分項目を同様の方法で測定を実施した。その結果の各測定値を
図13に示した。また、水分量、β−カロテン、ビタミンC、葉酸の含有量の各慣行区に対する試験区の増減を
図14に示した。
図13に示した測定では未熟果実で成分分析の測定を実施したためβ−カロテン濃度は低くなっていたが、別途熟した果実を測定したところ、
図15のとおりβ−カロテン濃度は慣行区よりも試験区の方が高い状態で高濃度へと変化していた。したがって、上記キトサン施肥方法で果菜類へ施肥した場合、果実の熟れ具合に依らず、ビタミン濃度が増加すると考えられる。
【0044】
以上の結果よりミニトマトにおいてもケール、リーフレタス、ラディッシュと同様に、水耕培養液にキトサンを施肥することで各種ビタミン濃度が増加しうることが分かった。