特許第6650113号(P6650113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650113
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】円形状ガラス板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 29/04 20060101AFI20200210BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20200210BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20200210BHJP
   C03B 29/02 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   C03B29/04
   C03C23/00 D
   B23K26/354
   C03B29/02
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-90618(P2016-90618)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-197414(P2017-197414A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】小谷 修
(72)【発明者】
【氏名】池本 政幸
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−207606(JP,A)
【文献】 特開2008−041985(JP,A)
【文献】 特開2005−194137(JP,A)
【文献】 特開2003−160348(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/015976(WO,A1)
【文献】 特開2000−344551(JP,A)
【文献】 特開平02−241684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B29/04
C03C23/00
B23K26/354
C03B29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り欠き部と、前記切り欠き部が形成されていない非切り欠き部とを外周縁に備えた円形状の元ガラス板から円形状ガラス板を製造する方法であって、
前記外周縁に沿って熱線を走査することにより、前記切り欠き部及び前記非切り欠き部を軟化点以上に加熱する加工工程を有し、
前記切り欠き部に対する前記熱線の走査速度が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査速度より遅いことを特徴とする円形状ガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記切り欠き部に対する前記熱線の走査回数が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査回数より多いことを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記熱線の走査が、前記切り欠き部の一端から他端に向かう方向に、前記一端から開始し、前記非切り欠き部を経て、前記他端で終了することを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記元ガラス板が、前記切り欠き部と前記非切り欠き部を連結する連結部を、前記外周縁に更に備え、
前記連結部に対する前記熱線の走査速度が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査速度より速いことを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記切り欠き部に対する前記熱線の出力が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の出力より大きいことを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記元ガラス板が、前記切り欠き部と前記非切り欠き部を連結する連結部を、前記外周縁に更に備え、
前記連結部に対する前記熱線の出力が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の出力より小さいことを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記熱線がレーザであることを特徴とする請求項の何れか1項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記元ガラス板を歪点以上且つ軟化点未満に加熱した状態で、前記レーザを照射することを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項9】
横姿勢の前記元ガラス板の下に、前記元ガラス板より軟化点が高いガラスクロスを配設した状態で、前記レーザを照射することを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項10】
前記元ガラス板の前記外周縁が、前記ガラスクロスより外側に食み出ていることを特徴とする請求項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項11】
前記レーザが非集光レーザであることを特徴とする請求項10の何れか1項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項12】
前記外周縁に向かって、斜め上方から前記非集光レーザを照射することを特徴とする請求項11に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項13】
前記レーザが集光レーザであることを特徴とする請求項10の何れか1項に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【請求項14】
前記外周縁に対して、前記元ガラス板の厚さ方向の両側から前記集光レーザを照射することを特徴とする請求項13に記載の円形状ガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切り欠き部を外周縁に備えた円形状ガラス板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガラス板の端部には、切断や機械加工した際に微小な傷やマイクロクラックが形成されている場合がある。ガラス板に外力が加わった場合に、この微小な傷やマイクロクラックを起点としてクラックが進展してガラス板が割れる可能性がある。そのため、ガラス板の強度を向上させるために、切断や研削加工されたガラス板の端部は、研磨、エッチング等の処理によってこの微小な傷やマイクロクラックを減少させるのが通例である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−91610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば半導体の製造工程では、半導体ウエハを支持するためのガラス板として、半導体ウエハの形状に合わせて、その外周縁にノッチ等の切り欠き部を有する円形状のガラス板が使用される。
【0005】
このような円形状のガラス板の外周縁の切り欠き部は、外力が作用した際に応力集中が生じやすいため、割れの起点になる可能性が高く、強度を向上させる必要があった。そのため、切断により形成された切り欠き部に対する処理として、上述した研削、研磨、エッチング等の処理よりも、更に、微小な傷やマイクロクラックを減少させる処理の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、円形状のガラス板の外周縁の切り欠き部において、微小な傷やマイクロクラックを減少させることにより、強度を向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために創案された本発明の円形状ガラス板の製造方法は、切り欠き部と、前記切り欠き部が形成されていない非切り欠き部とを外周縁に備えた円形状の元ガラス板から円形状ガラス板を製造する方法であって、前記切り欠き部を軟化点以上に加熱する加工工程を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、元ガラス板の軟化点以上に、元ガラス板の切り欠き部を加熱するため、切り欠き部が軟化(溶融)し、火造り面を有するようになる。従って、切り欠き部に存在する微小な傷やマイクロクラックが減少し、切り欠き部の表面が滑らかになる。すなわち、本発明の円形状ガラス板の製造方法によれば、円形状のガラス板の外周縁の切り欠き部において、微小な傷やマイクロクラックを減少させることにより、強度を向上させることが可能である。
【0009】
上記の構成において、前記切り欠き部に熱線を照射することにより、前記切り欠き部を軟化点以上に加熱してもよい。
【0010】
この構成において、前記外周縁に沿って前記熱線を走査することにより、前記切り欠き部及び前記非切り欠き部を軟化点以上に加熱してもよい。
【0011】
この構成によれば、切り欠き部と共に非切り欠き部を、効率良く処理することができ、これにより、切り欠き部と共に非切り欠き部の微小な傷やマイクロクラックを減少させることが可能である。
【0012】
上記の構成において、前記切り欠き部に対する前記熱線の走査回数が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査回数より多くてもよい。また、前記熱線の走査が、前記切り欠き部の一端から他端に向かう方向に、前記一端から開始し、前記非切り欠き部を経て、前記他端で終了してもよい。また、前記切り欠き部に対する前記熱線の走査速度が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査速度より遅くてもよい。また、前記切り欠き部に対する前記熱線の出力が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の出力より大きくてもよい。
【0013】
切り欠き部は、非切り欠き部より、熱線によって加熱され難いが、これらの構成によれば、切り欠き部を非切り欠き部と同等に加熱することが可能である。
【0014】
また、上記の構成において、前記元ガラス板が、前記切り欠き部と前記非切り欠き部を連結する連結部を、前記外周縁に更に備え、前記連結部に対する前記熱線の走査速度が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の走査速度より速くてもよい。また、前記元ガラス板が、前記切り欠き部と前記非切り欠き部を連結する連結部を、前記外周縁に更に備え、前記連結部に対する前記熱線の出力が、前記非切り欠き部に対する前記熱線の出力より小さくてもよい。
【0015】
連結部は、非切り欠き部より、熱線によって加熱され易いが、これらの構成によれば、連結部の加熱を、非切り欠き部の加熱と同等に抑えることが可能である。
【0016】
上記の構成において、前記熱線がレーザであってもよい。
【0017】
この構成において、前記元ガラス板を歪点以上且つ軟化点未満に加熱した状態で、前記レーザを照射してもよい。
【0018】
この構成によれば、元ガラス板において、非集光レーザが照射された外周縁と、それ以外の部分との温度差を抑制でき、これにより、元ガラス板が割れることを抑制できる。
【0019】
この構成において、横姿勢の前記元ガラス板の下に、前記元ガラス板より軟化点が高いガラスクロスを配設した状態で、前記レーザを照射してもよい。
【0020】
歪点以上に加熱されている場合には、元ガラス板が少し軟化するため、元ガラス板が載置されている部材の表面の凹凸や傷が元ガラス板に転写される可能性があるが、この構成によれば、ガラスクロスがクッションの役割を果たすので、この転写を抑制できる。
【0021】
この構成において、前記元ガラス板の前記外周縁が、前記ガラスクロスより外側に食み出ていてもよい。
【0022】
元ガラス板の外周縁がガラスクロスより外側に食み出ていない場合、レーザがガラスクロスに照射される可能性がある。この場合、ガラスクロスが加熱されて、この加熱されたガラスクロスの部位に接触している元ガラス板の部位が変形する可能性がある。これに対し、この構成によれば、ガラスクロスにレーザが照射されることを抑制できるので、ガラスクロスの加熱に起因した元ガラス板の変形を抑制できる。
【0023】
前記熱線がレーザの場合、前記レーザが非集光レーザであってもよい。
【0024】
この構成において、前記外周縁に向かって、斜め上方から前記非集光レーザを照射してもよい。
【0025】
横姿勢の元ガラス板の外周縁に向かって、真横から非集光レーザを照射した場合、非集光レーザの一部が元ガラス板の下に配設されたガラスクロスに照射される可能性がある。この場合、ガラスクロスが加熱されて、この加熱されたガラスクロスの部位に接触している元ガラス板の部位が変形する可能性がある。これに対し、この構成によれば、ガラスクロスに非集光レーザが照射されることを抑制できるので、ガラスクロスの加熱に起因した元ガラス板の変形を抑制できる。
【0026】
前記熱線がレーザの場合、前記レーザが集光レーザであってもよい。
【0027】
この構成において、前記外周縁に対して、前記元ガラス板の厚さ方向の両側から前記集光レーザを照射してもよい。
【0028】
微小な傷やマイクロクラックは、元ガラス板の板面と端面との境界周辺に多く存在する。これに対し、この構成によれば、元ガラス板の板面と端面との境界周辺に集光レーザを照射することができるので、より確実に、微小な傷やマイクロクラックを減少させることができる。
【0029】
上記の構成の円形状ガラス板の製造方法により製造された円形状ガラス板は、切り欠き部を外周縁に備えた円形状ガラス板であって、前記切り欠き部が火造り面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明によれば、円形状のガラス板の外周縁の切り欠き部において、微小な傷やマイクロクラックを減少させることにより、強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る円形状ガラス板の製造方法の元ガラス板を示す図であり、(A)が平面図、(B)が拡大断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る円形状ガラス板の製造方法の加工工程で使用されるレーザ加工装置の概略断面図である。
図3図2の拡大断面図である。
図4】レーザの走査速度及び出力を説明するための拡大平面図である。
図5】円形状ガラス板の製造方法の変形例の加工工程を説明するための拡大断面図である。
図6】本発明の実施例に係る円形状ガラス板の製造方法の加工工程で加工する前と後の元ガラス板の写真である。
図7】本発明の実施例に係る円形状ガラス板の製造方法の加工工程で加工した元ガラス板とその他の円形状ガラス板の製造方法で加工した元ガラス板の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0033】
本実施形態の円形状ガラス板の製造方法は、図1に示す元ガラス板1から円形状ガラス板を製造する。円形状ガラス板は、例えば、半導体の製造工程で、半導体ウエハを支持するために使用されるものである。元ガラス板1は、後述するレーザ加工の対象である。図1(A)に示すように、元ガラス板1は、切り欠き部2と、切り欠き部2が形成されていない非切り欠き部3とを外周縁4に備えた円形状のものである。また、図1(B)に示すように、外周縁4は、面取り部4aを有している。元ガラス板1の外周縁4は、切断加工により形成された後に、研削加工が行われたものである。
【0034】
切り欠き部2は、半導体ウエハのノッチの形状に合わせて形成されたV字状のノッチである。
【0035】
元ガラス板1は、その直径が、例えば100mm〜500mmである。元ガラス板1は、その板厚が、例えば0.5mm〜1.5mmである。
【0036】
元ガラス板1の30℃〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を0×10-7/℃以上、且つ50×10-7/℃未満に規制したい場合、元ガラス板1は、ガラス組成として、質量%で、SiO2:55〜75%、Al23:15〜30%、Li2O:0.1〜6%、Na2O+K2O(Na2OとK2Oの合量):0〜8%、MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量):0〜10%を含有することが好ましく、或いは、SiO2:55〜75%、Al23:10〜30%、Li2O+Na2O+K2O(Li2O、Na2O及びK2Oの合量):0〜0.3%、MgO+CaO+SrO+BaO:5〜20%を含有することも好ましい。
【0037】
また、元ガラス板1の30℃〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を50×10-7/℃以上、且つ70×10-7/℃未満に規制したい場合、元ガラス板1は、ガラス組成として、質量%で、SiO2:55〜75%、Al23:3〜15%、B23:5〜20%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜5%、BaO:0〜5%、ZnO:0〜5%、Na2O:5〜15%、K2O:0〜10%を含有することが好ましく、SiO2:64〜71%、Al23:5〜10%、B23:8〜15%、MgO:0〜5%、CaO:0〜6%、SrO:0〜3%、BaO:0〜3%、ZnO:0〜3%、Na2O:5〜15%、K2O:0〜5%を含有することがより好ましい。
【0038】
さらに、元ガラス板1の30℃〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を70×10-7/℃以上、且つ85×10-7/℃以下に規制したい場合、元ガラス板1は、ガラス組成として、質量%で、SiO2:60〜75%、Al23:5〜15%、B23:5〜20%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜5%、BaO:0〜5%、ZnO:0〜5%、Na2O:7〜16%、K2O:0〜8%を含有することが好ましく、SiO2:60〜68%、Al23:5〜15%、B23:5〜20%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜3%、BaO:0〜3%、ZnO:0〜3%、Na2O:8〜16%、K2O:0〜3%を含有することがより好ましい。
【0039】
加えて、元ガラス板1の30℃〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を85×10-7/℃超、且つ120×10-7/℃以下に規制したい場合、元ガラス板1は、ガラス組成として、質量%で、SiO2:55〜70%、Al23:3〜13%、B23:2〜8%、MgO:0〜5%、CaO:0〜10%、SrO:0〜5%、BaO:0〜5%、ZnO:0〜5%、Na2O:10〜21%、K2O:0〜5%を含有することが好ましい。
【0040】
また、元ガラス板1の30℃〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を120×10-7/℃超、且つ165×10-7/℃以下に規制したい場合、元ガラス板1は、ガラス組成として、質量%で、SiO2:53〜65%、Al23:3〜13%、B23:0〜5%、MgO:0.1〜6%、CaO:0〜10%、SrO:0〜5%、BaO:0〜5%、ZnO:0〜5%、Na2O+K2O:20〜40%、Na2O:12〜21%、K2O:7〜21%を含有することが好ましい。
【0041】
次に、本発明の実施形態に係る円形状ガラス板の製造方法の特徴である加工工程としてのレーザ加工工程で行われるレーザ加工について説明する。
【0042】
図2に示すように、元ガラス板1にレーザ加工を行うためのレーザ加工装置5は、加熱炉6と、加熱炉6内に配設された回転テーブル7と、回転テーブル7上に載置される横姿勢の元ガラス板1にレーザLを照射するレーザ照射装置8とを具備する。
【0043】
加熱炉6は、電気炉であり、内部に配置される元ガラス板1の全体を、歪点以上且つ軟化点未満に加熱するものである。回転テーブル7は、回転テーブル7を支持する回転軸7aを介して不図示の駆動源により回転駆動される。回転テーブル7と元ガラス板1の間には、元ガラス板1より軟化点が高いガラスクロス9が配設される。元ガラス板1は、その外周縁4が、ガラスクロス9より外側に食み出るように配設される。
【0044】
レーザ照射装置8から発射されるレーザLは、レンズで集光(フォーカス)されていない非集光レーザである。レーザLは、CO2レーザである。レーザLの出力は、例えば10〜400Wである。レーザLの直径は、例えば、1〜5mmである。
【0045】
図3に拡大して示すように、レーザ照射装置8により、元ガラス板1の外周縁4に向かって、元ガラス板1の側方における斜め上方からレーザLが照射される。板面に沿った方向に対するレーザの照射角度αは、例えば、0〜30°である。平面視では、レーザLの照射方向は、元ガラス板1の照射される位置での接線に垂直な方向である。
【0046】
レーザ加工装置5は、回転テーブル7と共に回転する元ガラス板1に対してレーザLを照射することによって、元ガラス板1の外周縁4に沿って、レーザLを走査する。これにより、レーザ加工装置5は、元ガラス板1の軟化点以上に、元ガラス板1の切り欠き部2及び非切り欠き部3を加熱する。
【0047】
元ガラス板1に対するレーザ加工は、レーザ加工装置5を使用して次のように行われる。
【0048】
最初に、加熱炉6内の回転テーブル7の上にガラスクロス9を載置し、その上に、元ガラス板1を、その外周縁4がガラスクロス9より外側に食み出るように載置する。
【0049】
次に、加熱炉6の内部を加熱し、元ガラス板1の全体を加熱する。
【0050】
その後、加熱炉6の内部が、元ガラス板1の歪点以上且つ軟化点未満の温度になったら、回転テーブル7を回転させると共に、レーザ照射装置8から、元ガラス板1の外周縁4に向かってレーザLを照射する。
【0051】
元ガラス板1の外周縁4に対するレーザLの走査が完了したら、回転テーブル7の回転を停止し、加熱炉6の加熱を停止する。これで、レーザ加工は終了である。
【0052】
元ガラス板1の外周縁4は、レーザ加工の後に、火造り面を有する。火造り面は、外周縁4を、軟化点以上に加熱して溶融させることにより形成されるものであり、微小の傷やマイクロクラックが少なく、滑らかな面である。このレーザ加工工程の後、元ガラス板1は、板面を研磨する工程等を経て、製品として完成する。
【0053】
ところで、元ガラス板1の切り欠き部2は、非切り欠き部3より、レーザLによって加熱され難い。そこで、本実施形態のレーザ加工では、レーザLの出力を一定、且つ、走査速度(回転速度)を一定にした状態で、切り欠き部2に対するレーザLの走査回数を、非切り欠き部3に対するレーザLの走査回数より多くしている。より具体的には、レーザLの走査が、元ガラス板1の周方向であって切り欠き部2の一端から他端に向かう方向に、切り欠き部2の一端から開始し、非切り欠き部3を少なくとも1回経て、切り欠き部2の他端で終了するようにしている。これにより、レーザLで切り欠き部2を複数回走査することができる。
【0054】
しかし、本発明は、本実施形態に限定されず、レーザ加工で、例えば、次のように設定してもよい。
【0055】
図4に示すように、非切り欠き部3、非切り欠き部3と切り欠き部2を連結する連結部10、切り欠き部2を、それぞれ、領域A,B,Cとして考える。なお、ここでは、連結部10が、非切り欠き部3より、レーザLによって加熱され易いことも考慮する。
【0056】
レーザLの出力を一定、且つ、レーザLの走査回数を、非切り欠き部3と連結部10と切り欠き部2とで同じにし、レーザLの走査速度を、B>A>Cとする。
【0057】
又は、レーザLの走査回数且つ走査速度を、非切り欠き部3と連結部10と切り欠き部2とで同じにし、レーザLの出力を、B<A<Cとする。
【0058】
なお、本実施形態では、元ガラス板1の外周縁4には面取り部4aが形成されていたが、図5に示すように、面取り部4aは形成されていなくてもよい。また、本実施形態では、元ガラス板1の外周縁4に照射されるレーザLは非集光レーザであったが、図5に示すように、元ガラス板1の外周縁4に照射されるレーザLが、レンズ8aによって、集光(フォーカス)された集光レーザであってもよい。
【0059】
この場合、切り欠き部2と非切り欠き部3とでフォーカス位置を変更することが好ましい。また、元ガラス板1の外周縁4に対して、元ガラス板1の厚さ方向の両側から集光レーザを照射してもよい。これは、微小な傷やマイクロクラックは、元ガラス板1における板面11と端面12との境界周辺に多く存在するからである。
【0060】
以上のように構成された本実施形態の円形状ガラス板の製造方法では以下の効果を享受できる。
【0061】
元ガラス板1の軟化点以上に、元ガラス板1の切り欠き部2を加熱するため、切り欠き部2が軟化(溶融)し、火造り面を有するようになる。従って、切り欠き部2に存在する微小な傷やマイクロクラックが減少し、切り欠き部2の表面が滑らかになる。すなわち、本実施形態の円形状ガラス板の製造方法によれば、円形状の元ガラス板1の外周縁4の切り欠き部2において、微小な傷やマイクロクラックを減少させることにより、強度を向上させることが可能である。
【実施例1】
【0062】
本願の発明者らは、本発明の実施例に係る円形状ガラス板の製造方法の加工工程のレーザ加工により加工された元ガラス板の外周縁を撮影した。
【0063】
元ガラス板としては、直径300mm、厚さ1mmの円形状(ノッチ付き、面取り部有り)で、材質がホウケイ酸ガラス(軟化点:731℃、歪点:532℃)のものを使用した。元ガラス板は、切断して形成された外周縁が予め研削されたもの(以下、通常品と記す)を使用した。レーザを、元ガラス板の端面(面取り部を除く)に垂直に照射した(α=0°)以外は、上記実施形態と同様の構成のレーザ加工装置を使用した。
【0064】
レーザとしてはCO2レーザを非集光(直径3mm)で使用した。回転テーブルの回転速度は、0.25rpm、レーザの出力は80〜85Wであった。レーザの走査は、元ガラス板の周方向であってノッチの一端から他端に向かう方向に、ノッチの一端から開始し、非切り欠き部を1回経て、ノッチの他端で終了した。これにより、レーザでノッチを2回走査した。
【0065】
また、比較のために、通常品の外周縁を鏡面研磨したもの(鏡面品)、通常品の外周縁をフッ酸処理したもの(エッチング品)を作製し、その外周縁も撮影した。
【0066】
レーザ加工前(通常品)の外周縁の拡大写真を図6の左側、レーザ加工後(レーザ品)の外周縁の拡大写真を図6の右側に示す。上側が非切り欠き部の写真であり、下側がノッチの写真である。
【0067】
通常品、鏡面品、エッチング品、レーザ品の外周縁の写真を、図7に示す。上から順に、エッジ(非切り欠き部)の写真、エッジの電子顕微鏡写真である。
【0068】
図6及び図7に示した写真から、レーザ品の外周縁の表面は、通常品、鏡面品、エッチング品の外周縁の表面とは明らかに異なっており、より滑らかに見えることが確認できる。
【0069】
本発明は、上記の説明に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記の説明では、研削された外周縁4をレーザ加工していたが、切断して形成された外周縁4をレーザ加工してもよい。また、研磨された外周縁4をレーザ加工してもよいし、エッチングされた外周縁4をレーザ加工してもよい。
【0070】
また、上記の説明では、元ガラス板1を回転させることによって、元ガラス板1の外周縁4にレーザLを走査していたが、例えば、元ガラス板1を停止させた状態で、レーザ照射装置8を移動することにより、元ガラス板1の外周縁4にレーザLを走査してもよい。また、元ガラス板1の外周縁4の全体にレーザLを走査せずに、元ガラス板1の切り欠き部2のみにレーザLを走査するようにしてもよい。
【0071】
また、上記の説明では、元ガラス板1の外周縁4のレーザ加工の際に、元ガラス板1は、横姿勢であったが、縦姿勢でもよいし、傾斜姿勢でもよい。
【0072】
また、上記の説明では、元ガラス板1の外周縁4のレーザ加工の際に、元ガラス板1の全体を加熱炉6で加熱していたが、レーザ照射装置等の加熱機構で、元ガラス板1の一部を加熱するようにしてもよい。
【0073】
また、上記の説明では、元ガラス板1の外周縁4の加工(元ガラス板1の軟化点以上の加熱)には、CO2レーザを使用していたが、熱線(赤外線)であれば、他のレーザでもよいし、レーザでない光でもよい。更には、ヒータ加熱やマイクロバーナ加熱等により、元ガラス板1の外周縁4を、元ガラス板1の軟化点以上に加熱してもよい。
【0074】
また、上記の説明では、切り欠き部2は、V字状のノッチであったが、例えば、円形状の元ガラス板の一部を直線状に切り取って形成されたオリエンテーションフラットであってもよいし、その他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 元ガラス板
2 切り欠き部
3 非切り欠き部
4 外周縁
5 レーザ加工装置
6 加熱炉
7 回転テーブル
8 レーザ照射装置
9 ガラスクロス
10 連結部
L レーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7