特許第6650119号(P6650119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6650119ロボット、ロボットシステム、ロボットの位置調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6650119
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ロボット、ロボットシステム、ロボットの位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   B25J13/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-181888(P2018-181888)
(22)【出願日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年10月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100104503
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100191112
【弁理士】
【氏名又は名称】益田 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小池 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】桐原 浩一
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−162482(JP,A)
【文献】 特開平08−272425(JP,A)
【文献】 特開平09−178418(JP,A)
【文献】 特開平11−201753(JP,A)
【文献】 特開2000−009738(JP,A)
【文献】 特開2004−238182(JP,A)
【文献】 特開2005−249435(JP,A)
【文献】 特開2009−220190(JP,A)
【文献】 特開2011−093067(JP,A)
【文献】 特開2012−135781(JP,A)
【文献】 特開2015−199034(JP,A)
【文献】 特開2016−190296(JP,A)
【文献】 特開2017−186160(JP,A)
【文献】 特開2017−189862(JP,A)
【文献】 特開2018−058142(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0032252(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/108860(WO,A1)
【文献】 中国実用新案第206913136(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00−19/04
B25H 7/04
B65G 47/90
G01C 15/00
G01N 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向をX方向とし幅方向をY方向とし、かつ鉛直方向であるZ方向の位置決め用のZ方向用マークと前記Y方向の位置決め用のY方向用マークとを表記したコンベアにより搬送されるワークに、所定の作業を行うロボットであって、
前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがないときには前記Y方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがあるときには前記Y方向用マークからずれて投影される、前記Z方向への可視光を照射するZ方向照射装置と、
前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがないときには前記Z方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがあるときには前記Z方向用マークからずれて投影される、前記Y方向への可視光を照射するY方向照射装置と、
前記Z方向照射装置からの前記Z方向への可視光が前記Y方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Y方向の位置を調整し当該Y方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすための、Y方向位置調整部と、
前記Y方向照射装置からの前記Y方向への可視光が前記Z方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Z方向の位置を調整し当該Z方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすための、Z方向位置調整部と、
を有することを特徴とするロボット。
【請求項2】
回動可能に連結された複数のアーム部材を備えたロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御するコントローラを収容する制御ボックスと、
をさらに有し、
前記コンベアは、
前記制御ボックスと前記ロボットアームとの間の間隙に挿入配置されており、
前記Z方向照射装置は、
前記ロボットアームよりも反コンベア側に位置する第1フレームに設けられており、
前記Y方向位置調整部及び前記Z方向位置調整部は、
前記制御ボックスよりも反コンベア側に位置する第2フレームに設けられており、
前記Y方向照射装置は、
前記第1フレームと前記第2フレームとを接続する接続部に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のロボット。
【請求項3】
前記Y方向位置調整部は、
前記ロボットを移動可能とするキャスタを備えており、
前記Z方向位置調整部は、
前記ロボットの前記Z方向における位置を調整可能なアジャスタを備えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記Z方向照射装置及び前記Y方向照射装置は、それぞれ、
投影形状がライン状である前記可視光を照射する
ことを特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
搬送方向をX方向とし幅方向をY方向とし、かつ鉛直方向であるZ方向の位置決め用のZ方向用マークと前記Y方向の位置決め用のY方向用マークとを表記し、ワークを搬送するコンベアと、
前記コンベアにより搬送される前記ワークに対し所定の作業を行うロボットと、
を有し、
前記ロボットは、
前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがないときには前記Y方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがあるときには前記Y方向用マークからずれて投影される、前記Z方向への可視光を照射するZ方向照射装置と、
前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがないときには前記Z方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがあるときには前記Z方向用マークからずれて投影される、前記Y方向への可視光を照射するY方向照射装置と、
前記Z方向照射装置からの前記Z方向への可視光が前記Y方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Y方向の位置を調整し当該Y方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすための、Y方向位置調整部と、
前記Y方向照射装置からの前記Y方向への可視光が前記Z方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Z方向の位置を調整し当該Z方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすための、Z方向位置調整部と、
を有することを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
搬送方向をX方向とし幅方向をY方向とし、かつ鉛直方向であるZ方向の位置決め用のZ方向用マークと前記Y方向の位置決め用のY方向用マークとを表記したコンベアにより搬送されるワークに所定の作業を行うロボットの前記コンベアに対する位置調整方法であって、
前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがないのときには前記Y方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Y方向の位置と前記コンベアの前記Y方向の位置とのずれがあるときには前記Y方向用マークからずれて投影される、前記Z方向への可視光を照射すること、
前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがないときには前記Z方向用マークと一致し、前記ロボットの前記Z方向の位置と前記コンベアの前記Z方向の位置とのずれがあるときには前記Z方向用マークからずれて投影される、前記Y方向への可視光を照射すること、
前記Z方向への可視光が前記Y方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Y方向の位置を調整し当該Y方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすこと、
前記Y方向への可視光が前記Z方向用マークからずれて投影されたとき、作業者が前記ロボットの前記Z方向の位置を調整し当該Z方向における前記コンベアとの位置ずれをなくすこと、
を有することを特徴とするロボットの位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、ロボット、ロボットシステム、ロボットの位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンベヤにより運搬される物体の位置を検出し、ロボットが、検出された位置に基づき物体に対し作業を行うロボットシステムが記載されている。このロボットシステムは、コンベヤ上での物体の位置を適宜するためのコンベヤ座標系を設定する座標系設定装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−47511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、工場では人手不足の解消等を目的として、生産ラインにロボットシステムを導入して自動化が推進されている。生産ラインでは、例えば生産品目や生産工程の変更が短期で行われる場合があり、その場合には生産ラインの変更や装置の入れ替え等が頻繁に行われる。上記従来技術のロボットシステムでは、このような装置側の変更が生じた場合に、動作変更するためのソフトウェアのソフト開発・デバッグ・再ティーチング等の専門的な作業が必要となるが、一般的には生産ラインの現場作業者は技術者ではなく専門的な作業はできない場合が多い。このため、生産ラインの自動化を妨げる要因となっていた。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、生産ラインの自動化を促進可能なロボット、ロボットシステム、ロボットの位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、コンベアにより搬送されるワークに所定の作業を行うロボットであって、鉛直方向である第1方向と、前記コンベアの搬送方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向と、の少なくとも一方における、前記ロボットの前記コンベアに対する基準となる相対位置からの位置ずれを可視化する手段と、を有するロボットが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、ワークを搬送するコンベアと、前記コンベアにより搬送される前記ワークに対し所定の作業を行うロボットと、鉛直方向である第1方向と、前記コンベアの搬送方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向と、の少なくとも一方における、前記ロボットの前記コンベアに対する基準となる相対位置からの位置ずれを可視化する手段と、を有するロボットシステムが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、コンベアにより搬送されるワークに所定の作業を行うロボットの前記コンベアに対する位置調整方法であって、鉛直方向である第1方向と、前記コンベアの搬送方向及び前記第1方向の両方向に垂直な第2方向と、の少なくとも一方における、前記ロボットの前記コンベアに対する基準となる相対位置からの位置ずれを可視化すること、を有するロボットの位置調整方法が適用される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロボット等によれば、生産ラインの自動化を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す平面図である。
図2】本実施形態に係るロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す前面図である。
図3】本実施形態に係るロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す右側面図である。
図4】ロボットのコンベアに対するY方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図5】ロボットのコンベアに対するY方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図6】ロボットのコンベアに対するY方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図7】ロボットのコンベアに対するY方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図8】ロボットのコンベアに対するZ方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図9】ロボットのコンベアに対するZ方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図10】ロボットのコンベアに対するZ方向の位置調整方法の一例を説明するための説明図である。
図11】可視化する手段の他の例を表すロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す平面図である。
図12】可視化する手段の他の例を表すロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す前面図である。
図13】可視化する手段のさらに他の例を表すロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す平面図である。
図14】可視化する手段のさらに他の例を表すロボットシステム及びロボットの構成の一例を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、ロボット等の構成の説明の便宜上、上下左右前後等の方向を適宜使用する場合があるが、ロボット等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0012】
<1.ロボットシステム、ロボットの構成>
まず、図1図3を参照しつつ、本実施形態のロボットシステム1及びロボット2の構成の一例について説明する。
【0013】
ロボットシステム1は、ロボット2と、コンベア3とを有しており、本実施形態では食品の生産ラインを構成している。ロボット2は、コンベア3の近傍に配置され、コンベア3により搬送される食品容器4(ワークの一例)に食品5を盛り付ける作業(所定の作業の一例)を行う。図1に示すように、食品5は、食品供給容器6に収容されており、複数の食品供給容器6を収容したコンテナ20(例えば番重等)がロボット2に隣接して配置されている。
【0014】
図1図3に示すように、ロボット2は、2本のロボットアーム7を有する双腕ロボットである。2本のロボットアーム7は、搬送方向の上流側と下流側となるようにコンベア3上に突出しており、それぞれ独立して動作しつつ食品5の盛り付け作業を行う。
【0015】
ロボット2は、上記ロボットアーム7と、ロボットアーム7の動作を制御するコントローラ(図示省略)を収容する制御ボックス8と、支持フレーム9とを有する。支持フレーム9は、制御ボックス8を下部に、ロボットアーム7を制御ボックス8の上部に支持する。制御ボックス8とロボットアーム7の間には間隙Sが設けられ、当該間隙Sにコンベア3の少なくとも一部が収容されるように、ロボット2が配置される。支持フレーム9は、例えばアルミ・鉄・SUS等の金属材料やFRP(繊維強化プラスチック)等で構成された角パイプ等で構成される。
【0016】
支持フレーム9は、略四角形状の底板フレーム10と、底板フレーム10の左右の後側隅部に立設された支柱フレーム11と、支柱フレーム11の上端間を連結した連結フレーム12とを有する。制御ボックス8は、底板フレーム10上に設置されている。底板フレーム10の下面には、ロボット2の重心を低くするための重量部材として、例えばステンレス製のベース板13が取り付けられている。
【0017】
左右の支柱フレーム11の間には、上下一対の左右方向に沿った梁フレーム14が設けられ、これら一対の梁フレーム14の間には背面板15(図2参照)が固定されている。背面板15には、各ロボットアーム7の基端側に配置され、各ロボットアーム7を個別に上下方向に移動させる一対の上下移動機構16が設置されている。上下移動機構16は、例えばボールねじ機構等を有している。
【0018】
ベース板13の下面の四隅には、ロボット2を設置場所に移動するための車輪を備えたキャスタ17と、移動したロボット2を設置場所に据え付けると共に、ロボット2の上下方向の位置や姿勢を調整するためのレベルアジャスタ18(アジャスタの一例)が設けられている。また、各支柱フレーム11の後部には、ロボット2を移動させる際に作業者が把持することが可能な取手部19が設けられている。これにより、作業者は取手部19を用いて押すことによりロボット2を所望の設置場所に移動させ、据え付けることが可能である。
【0019】
ロボットアーム7は、回動可能に連結された複数のアーム部材、この例では第1アーム部材21と第2アーム部材22を有しており、これら第1アーム部材21及び第2アーム部材22を水平面内で旋回させる水平多関節型のロボットアームである。第1アーム部材21は、略水平姿勢で上下移動機構16に旋回可能に連結されている。第2アーム部材22は、第1アーム部材21の上側において略水平姿勢で第1アーム部材21の先端に旋回可能に連結されている。
【0020】
第2アーム部材22の先端部の下面には、食品5の把持等の所定の作業を行うためのツール23が設けられている。ツール23の種類は特に限定されるものではないが、例えばエアハンド、電動ハンド、吸着パッド等である。なお、アームカバー24内には、ロボットアーム7を駆動するための図示しないモータやアクチュエータ等が収容されている。
【0021】
コンベア3は、食品容器4を搬送する搬送部材25と、幅方向における両側に配置された一対のコンベアフレーム26と、例えば四隅に設けられた脚フレーム27とを有する。搬送部材25は、例えばベルトやローラ等で構成される。なお、本実施形態では、説明の便宜上、コンベア3による食品容器4の搬送方向をX方向、鉛直方向をZ方向(第1方向の一例)、X方向及びZ方向に垂直なコンベア3の幅方向をY方向(第2方向の一例)、Z軸周りの回転方向をθ方向ともいう。
【0022】
コンベアフレーム26の一方、この例ではロボット2が配置される後側のコンベアフレーム26には、基準板30(基準部位の一例)が取り付けられている。図3に示すように、基準板30は、コンベアフレーム26の上面に配置された水平板部31と、コンベアフレーム26の側面(後側の面)に配置された垂直板部32とを有している。図1に示すように、水平板部31の表面(上側の面)には、直線状の基準マーク33がX方向に平行に形成されている。同様に、図2に示すように、垂直板部32の表面(後側の面)には直線状の基準マーク34がX方向に平行に形成されている。
【0023】
なお、ロボット2をコンベア3の幅方向のどちら側にも配置できるように、基準板30を一対のコンベアフレーム26の両方にそれぞれ取り付けてもよい。また、基準板30は、固定的に設置されてもよいし、着脱可能としてもよい。また、基準マークは並列に複数本形成されてもよいし、直線以外の態様、例えばX方向に間隔を空けた複数の点やマーク等として形成されてもよい。さらに、基準マークはコンベアフレーム26や脚フレーム27等に直接形成されてもよいし、コンベア3の構造物自体(例えばコンベアフレーム26や脚フレーム27における端面や角部等)を基準マークとしてもよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、ロボット2の背面板15の前面における基準板30に対応する位置には、照射装置35(可視化する手段、第2照射装置の一例)が設置されている。照射装置35は、前方に向けてY方向に平行に可視光36を照射し、基準板30の垂直板部32に照射する。可視光36は、投影形状がライン状となるように照射される。以下では、可視光36が物体に投影されて生じたライン状の投影光を「ライン光36」ともいう。照射装置35としては、例えばライン状のレーザ光を照射するラインマーカー等が使用される。なお、投影形状が直線以外の態様、例えばX方向に間隔を空けた複数の点やマーク等となるように照射してもよい。Z方向においてロボット2がコンベア3に対して基準となる相対位置(高さ及び水平に対する傾きを含む)に位置する場合、垂直板部32の基準マーク34とライン光36とが一致する。すなわち、基準マーク34とライン光36とのずれにより、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのZ方向の位置ずれが可視化される。
【0025】
ロボット2の上部には、連結フレーム12の略中央部から上方及び前方に突出した略L字状のフレーム37が設けられている。図1及び図3に示すように、ロボット2の上記フレーム37の下面における基準板30に対応する位置には、照射装置38(可視化する手段、第1照射装置の一例)が設置されている。照射装置38は、下方に向けてZ方向に平行に可視光39を照射し、基準板30の水平板部31に照射する。可視光39は、投影形状がライン状となるように照射される。以下では、可視光39が物体に投影されて生じたライン状の投影光を「ライン光39」ともいう。照射装置38としては、例えばライン状のレーザ光を照射するラインマーカー等が使用される。なお、投影形状が直線以外の態様、例えばX方向に間隔を空けた複数の点やマーク等となるように照射してもよい。Y方向においてロボット2がコンベア3に対して基準となる相対位置(ロボット2とコンベア3との距離及びθ方向の傾きを含む)に位置する場合、水平板部31の基準マーク33とライン光39とが一致する。すなわち、基準マーク33とライン光39とのずれにより、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのY方向の位置ずれが可視化される。
【0026】
ロボット2の右側の支柱フレーム11には、支持部材40を介してワーク検出センサ41が設置されている。ワーク検出センサ41は、コンベア3により搬送される食品容器4の位置を、ロボットアーム7による盛り付け作業エリアよりも搬送方向上流側で検出する。また、ロボット2の左側の支柱フレーム11には、支持部材42を介してコンベア速度測定装置43が設置されている。コンベア速度測定装置43は、搬送部材25に接触する回転部材の回転速度からコンベア3の搬送速度を測定し、搬送方向における食品容器4の位置座標を検出する。また、ロボット2の上部のフレーム37の下面には、コンベア3の搬送部材25に対応する位置にワーク検出カメラ44が設置されている。ワーク検出カメラ44は、ロボットアーム7による盛り付け作業エリアを撮像し、食品容器4や食品5の位置座標を個別に検出する。
【0027】
上記ワーク検出センサ41、コンベア速度測定装置43、ワーク検出カメラ44により、食品容器4のX方向の位置情報を取得できるため、ロボット2のコンベア3に対する位置調整は、Y方向及びZ方向のみ行われればよい。
【0028】
なお、上述したロボット2の構成は一例であり、移動可能なロボットであれば、ロボットの形式は特に限定されるものではない。例えば、ロボット2は双腕型でなく単腕型のロボットとしてもよい。また、ロボット2は水平多関節型(スカラー式)に限定されるものではなく、パラレルリンク式、直動式、垂直多関節型等の他の形式でもよい。あるいは、例えばXYZθ方向のうち少なくとも1方向に移動可能なアクチュエータを備えた特定の作業専用に設計された専用作業機等でもよい。
【0029】
<2.ロボットの位置調整方法>
次に、図4図10を参照しつつ、ロボット2のコンベア3に対する位置調整方法の一例について説明する。なお、図6及び図9においては、説明を容易とするためにロボット2等の図示を省略している。
【0030】
まず、予め照射装置35,38による照射を開始しておく。次に、図4に示すように、作業者はロボット2の取手部19を把持し、キャスタ17を利用してロボット2をコンベア3の近傍に移動させる。なお、「近傍」とは、例えば制御ボックス8とロボットアーム7の間の間隙Sにコンベア3の少なくとも一部が収容される程度の位置である。そして、図5に示すように、ロボット2をコンベア3に対して大まかに位置決めし、当該設置場所に仮位置決めを行う。例えば図5に示す例では、照射装置38によるライン光39は、基準板30の水平板部31の基準マーク33に対して後側にずれると共に、θ方向に傾いている。なお、この場合のライン光39は、例えば制御ボックス8の上面や床面等に投影される。このようにして、Y方向におけるロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれが可視化される。
【0031】
次に、図6に示すように、作業者は、ライン光39が基準マーク33に一致するようにロボット2を移動させ、ロボット2とコンベア3との距離(間隔)及びロボット2のθ方向の傾きを微調整する。調整完了後、作業者はロボット2の下部の4つのレベルアジャスタ18を操作して床に据え付け、ロボット2が移動しないように固定する。これにより、図7に示すように、ロボット2のコンベア3に対するY方向の位置調整が完了する。
【0032】
次に、ロボット2のコンベア3に対するZ方向の位置調整を行う。例えば図8に示す例では、照射装置35によるライン光36は、基準板30の垂直板部32の基準マーク34に対して上側にずれると共に、水平方向に対して傾いている。なお、この場合のライン光36は、例えばコンベア3の前方側にある図示しない壁面や機器等に投影される。このようにして、Z方向におけるロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれが可視化される。
【0033】
そして、図9に示すように、作業者は4つのレベルアジャスタ18を操作して、ライン光36が基準マーク34に一致するように、ロボット2のコンベア3に対する高さ及び水平方向に対する傾きを微調整する。なお、図9は後側から見たライン光36と基準板30とを示している。これにより、図10に示すように、ロボット2のコンベア3に対するZ方向の位置調整が完了する。
【0034】
以上のようにして、照射装置35,38を用いてロボット2の位置調整を行うことにより、ロボット2ではロボットアーム7や各種センサ41,43,44等も照射装置35,38と一体構造であることから、それらの装置もコンベア3に対して位置決めされる。したがって、コンベア3に対する初回のティーチング作業のみを行っておけば、コンベア3に対して再設置する際に再度のティーチング作業は不要となり、上述の位置調整が完了した後はそのまま生産ラインの稼動が可能となる。
【0035】
なお、以上のように作業者が目視により位置調整を行うため、例えばミリメートル(mm)単位の位置決め精度となるが、食品の生産ライン等はこの程度の位置決め精度で充分であり、且つ、生産品目や生産工程の変更が短期で行われる場合が多いため、本発明の適用が特に有効である。
【0036】
なお、上記ではY方向の位置調整を行った後にZ方向の位置調整を行ったが、反対にZ方向の位置調整を行った後にY方向の位置調整を行ってもよい。
【0037】
<3.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のロボット2では、照射装置35,38により、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれが可視化されるので、Y方向とZ方向において、作業者は位置ずれを確認しながら目視によりロボット2をコンベア3に対して容易に位置調整することができる。これにより、生産ラインの変更等が行われる場合でも、専門的で難しい調整作業や設定作業を行うことなく、ロボット2を容易に再設置して稼動させることができる。したがって、生産ラインのフレキシビリティを向上できると共に、生産ラインへのロボットシステムの導入を容易化できるので生産ラインの自動化を促進できる。
【0038】
また、本実施形態では特に、ロボット2は、ロボット2を移動可能とするキャスタ17と、作業者が把持可能な取手部19と、をさらに有し、照射装置35,38は、ロボット2がコンベア3の近傍に移動された際に位置ずれを可視化する。これにより、作業者は取手部19を用いてロボット2を生産ラインにおける任意の設置場所に移動させ、据え付けることができる。したがって、生産ラインにおいて作業者が行っている作業を容易にロボット2による作業に置き換えることができるので、生産ラインの自動化を促進できる。
【0039】
また、本実施形態では特に、可視化する手段として、コンベア3の基準部位に対し、可視光を照射する照射装置35,38を設ける。これにより、コンベア3の基準部位と照射された可視光36,39との位置関係により、作業者はロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれを容易に視認することができる。したがって、ロボット2のコンベア3に対する位置調整を容易に実行できる。また、一般に可視光の照射装置35,38は安価で手軽であるため、設計を容易化できると共にコストを低減できる。
【0040】
また、本実施形態では特に、照射装置35,38は、コンベア3の基準部位に対し、投影形状がライン状であるライン光36,39を照射する。ライン光36,39を照射することにより、コンベア3の基準部位との比較が直線同士の比較となるので容易となり、距離や傾き等の位置ずれを容易に視認できる。したがって、ロボット2のコンベア3に対する位置調整を容易に実行できる。
【0041】
また、本実施形態では特に、照射装置35,38は、コンベア3に取り付けられた基準板30の基準マーク34,33に対し、ライン光36,39を照射する。コンベア3の基準部位を別部材である基準板30とすることで、例えば着脱可能な構成として、ロボット2の設置場所に応じて基準板30の取り付け位置を変更したり、複数のコンベア3間で基準板30を流用すること等が可能となる。
【0042】
また、本実施形態では特に、ロボット2は、Z方向に可視光を照射する照射装置38と、Y方向に可視光を照射する照射装置35とを有する。コンベア3の基準板30と照射装置38から照射されたライン光39との位置関係により、作業者はロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのY方向の位置ずれを視認することができる。また、コンベア3の基準板30と照射装置35から照射されたライン光36との位置関係により、作業者はロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのZ方向の位置ずれを視認することができる。したがって、Y方向及びZ方向の両方について精度の良い位置調整を実行することができる。
【0043】
また、本実施形態では特に、ロボット2は、Z方向における位置を調整可能なレベルアジャスタ18をさらに有する。これにより、作業者はレベルアジャスタ18を用いてロボット2のコンベア3に対するZ方向の位置調整(高さ及び傾き)を容易に実行できる。また、ロボット2のZ方向の位置調整に安価で手軽なレベルアジャスタ18を使用することで、設計を容易化できると共にコストを低減できる。
【0044】
<4.変形例>
なお、開示の実施形態は、上記に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0045】
(4−1.可視化する手段の他の例)
上記実施形態では、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれを可視化する手段として、可視光を照射する照射装置を使用する場合を一例として説明したが、その他の機器を使用してもよい。
【0046】
例えば図11に示すように、左右の支柱フレーム11の前面に、コンベア3のコンベアフレーム26との水平方向の距離(間隔)を検出する距離センサ45,46(可視化する手段の一例)をそれぞれ設けてもよい。距離センサの種類は特に限定されるものではないが、例えば赤外線センサや超音波センサ等を用いることができる。距離センサ45,46の検出結果は、例えばセンサ自身が有する表示部に表示されてもよいし、ロボット2が備える図示しないタッチパネル等に表示されてもよい。また検出結果は、距離が数値により表示されてもよいし、規定の距離になった場合に色が変わる等により表示されてもよい。これにより、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのY方向の位置ずれが可視化される。作業者は、距離センサ45,46による検出値が規定の距離となるようにロボット2を移動させ、ロボット2とコンベア3との距離(間隔)及びロボット2のθ方向の傾きを微調整する。これにより、ロボット2のコンベア3に対するY方向の位置調整を行うことができる。
【0047】
同様に、例えば図12に示すように、左右の支柱フレーム11の上側に、例えばフレーム37と同様の形状である前方に突出したフレーム47,48をそれぞれ設けておき、それらフレーム47,48の下面に、コンベア3のコンベアフレーム26との高さ方向の距離(間隔)を検出する距離センサ49,50(可視化する手段の一例)をそれぞれ設けてもよい。距離センサの種類は特に限定されるものではないが、例えば赤外線センサや超音波センサ等を用いることができる。距離センサ49,50の検出結果は、例えばセンサ自身が有する表示部に表示されてもよいし、ロボット2が備える図示しないタッチパネル等に表示されてもよい。また検出結果は、距離が数値により表示されてもよいし、規定の距離になった場合に色が変わる等により表示されてもよい。これにより、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのZ方向の位置ずれが可視化される。作業者は、距離センサ49,50による検出値が規定の距離となるようにレベルアジャスタ18を操作し、ロボット2の高さ及び水平方向に対する傾きを微調整する。これにより、ロボット2のコンベア3に対するZ方向の位置調整を行うことができる。
【0048】
また、Y方向の位置ずれを可視化する手段として、上記のような電子機器以外にも、例えば図13及び図14に示すように棒状部材51,52(可視化する手段の一例)を用いてもよい。棒状部材51,52は、例えば伸縮可能あるいは折り畳み可能な構成として、通常は収納しておき、位置調整を行う際のみ突出させてもよい。棒状部材51,52はそれぞれ規定の長さを有しており、棒状部材51,52の先端とコンベアフレーム26との間に隙間があるか否かで、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からのY方向の位置ずれが可視化される。図13及び図14に示すように、作業者は、棒状部材51,52の先端がコンベア3のコンベアフレーム26に当接するようにロボット2を移動させ、ロボット2とコンベア3との距離(間隔)及びロボット2のθ方向の傾きを調整する。これにより、ロボット2のコンベア3に対するY方向の位置調整を行うことができる。
【0049】
また、図示は省略するが、上記のような棒状部材を、フレーム47,48(図12参照)の下面に設置して、Z方向の位置ずれを可視化する手段として用いてもよい。この場合も上記と同様にして、作業者は、2本の棒状部材の先端がコンベアフレーム26の上面に当接するようにレベルアジャスタ18を操作し、ロボット2の高さ及び水平方向に対する傾きを調整する。これにより、ロボット2のコンベア3に対するZ方向の位置調整を行うことができる。
【0050】
(4−2.その他)
上記実施形態では、ロボット2に2つの照射装置35,38を設置して、Z方向及びY方向の両方について位置調整可能な構成としたが、例えばZ方向及びY方向のいずれか一方のみの位置調整しか必要ない場合には、対応する一方の照射装置と基準マークのみを設置してもよい。
【0051】
また以上では、ロボット2が食品の盛付け作業を行う場合を一例として説明したが、その他にも、例えば調理、盛り付け、ソースがけ、包装、箱詰め等、食品の生産ラインに関わる多種多様な作業を行わせることができる。また、食品分野以外にも、例えば電気・電子業界など、製品のライフサイクルが短く、例えば数ヶ月単位でモデルチェンジを繰り返すような分野にも好適である。この場合、ロボットには例えば部品の組み立て、加工、塗装、溶接等の製品の生産ラインに関わる多種多様な作業を行わせることができる。その他にも、例えば物流分野に適用してもよく、ロボットには例えば物品のピッキングやパレタイズ等の物流ラインに関わる多種多様な作業を行わせることができる。
【0052】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0053】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一(同じ)」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一(同じ)」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一(同じ)」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0054】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 ロボットシステム
2 ロボット
3 コンベア
4 食品容器(ワーク)
17 キャスタ
18 レベルアジャスタ(アジャスタ)
30 基準板(基準部位)
33 基準マーク
34 基準マーク
35 照射装置(可視化する手段、第2照射装置)
36 可視光、ライン光
38 照射装置(可視化する手段、第1照射装置)
39 可視光、ライン光
45 距離センサ(可視化する手段)
46 距離センサ(可視化する手段)
49 距離センサ(可視化する手段)
50 距離センサ(可視化する手段)
51 棒状部材(可視化する手段)
52 棒状部材(可視化する手段)
【要約】
【課題】生産ラインの自動化を促進できるロボット等を提供する。
【解決手段】コンベア3により搬送される食品容器4に食品5の盛り付け作業を行うロボット2であって、鉛直方向であるZ方向と、コンベア3の搬送方向であるX方向及びZ方向の両方向に垂直なY方向と、の少なくとも一方における、ロボット2のコンベア3に対する基準となる相対位置からの位置ずれを可視化するための可視光36,39を照射する照射装置35,38とを有する。
【選択図】図3
図1
図2
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