(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650207
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】端子接続不良検出装置
(51)【国際特許分類】
H01H 73/20 20060101AFI20200210BHJP
H01H 73/02 20060101ALI20200210BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20200210BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
H01H73/20 B
H01H73/02 B
H02B1/40 D
H02B3/00 M
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-73968(P2015-73968)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-195016(P2016-195016A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−078737(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/20
H01H 73/02
H02B 1/40
H02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器の電源端子に対し、熱伝導および電気伝導可能に接続される接続部と、
前記電源端子からの熱伝導を受けて該電源端子の発熱状態に応じて変位するバイメタルと、
前記バイメタルの変位を受けて該バイメタルに当接されて駆動することにより発熱の状態を表示する表示部と、
これら接続部、バイメタル、表示部を収納する筐体と、を備えて、
回路遮断器を所定の取付位置に取付けたままで、該回路遮断器の外方から電源端子への着脱を自在としたことを特徴とする端子の接続不良検出装置。
【請求項2】
前記接続不良検出装置の取付け位置は、
回路遮断器の取付け面と電源端子に接続される電線との間に位置することを特徴とする請求項1記載の接続不良検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断器と電線が接続される端子の異常過熱を検出して、回路遮断器の焼損並びに該回路遮断器の周囲の造営材や周辺機器などへの延焼を防止する端子の接続不良を検出する端子接続不良検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、周知の如く、電路に介在して設けられ、電路における過電流や短絡電流、若しくは漏電電流などの事故電流を検出して所定の動作条件に合致したときには、電路を電気的に遮断し、負荷側への電源の供給を絶つように動作する。
【0003】
回路遮断器には、外部回路と電気的接続を繰り返し行えるようにした接続端子が設けられている。住宅用分電盤や制御盤などの配電盤に設置されて、盤内に引き込まれる外部回路の電源線と接続される回路遮断器においては、配電盤を設置する施工現場にて、前記電源線と回路遮断器の電源側の端子とが接続される。このとき、電源線と回路遮断器の電源側の接続端子との接続が万が一不十分な状態であると、端子部分において異常過熱が発生するおそれがある。
【0004】
また、長年に亘る使用を行う中で、周囲の振動や温度変化が繰り返し起こることに基づく端子の緩みが生ずる可能性もある。定期的な保守点検の機会が適切に得られない場合や、端子の締付確認が充分でなかった場合など、端子部分において異常過熱が発生するおそれがある。
【0005】
回路遮断器において電線が接続される端子の異常過熱の原因としては、端子ねじの締め付けが不十分である場合や、長期に亘る使用に伴い端子ねじに緩みが生ずるなど電線と端子の接触抵抗の増大が挙げられる。接続部分の電気抵抗が増加することにより大きなジュール熱が発生し端子部分の発熱が想定される。
【0006】
その他,前記電源線と回路遮断器の接続端子との接触面の酸化,電線のクリープや異物などの介在などに起因して接触抵抗が増加することによっても発熱が想定され得る。
【0007】
また、電源線と接続端子部分との接続部分以外が異常過熱する原因としては、経年使用に伴って回路遮断器における接触子の消耗や脱落、酸化や異物の介在などに起因して内部抵抗が増加することによる発熱が想定され得る。
【0008】
このような異常過熱の状態が継続すると、回路遮断器を構成する部品の焼損、回路遮断器自体の焼損により、本来の電源投入・遮断機能を果たさなくなることに加え、回路遮断器周辺の造営材や周辺機器への延焼が発生するおそれが懸念される。
【0009】
しかしながら、通常の回路遮断器においては、これらの異常過熱を検出する機能が設けられておらず、異常過熱の予防のために、施工時の接続確認や定期的な保守点検を行う方策がとられていた。これらの予防策は異常過熱を予防する点では効果的であるものの、一旦発生してしまった異常過熱を抑制するという点では次回の保守点検までは異常過熱に気づきにくいというおそれがあり、経年的な使用に伴う焼損事故や延焼事故が発生する懸念は完全には払拭できていなかった。
【0010】
そこで、これらの異常過熱を検出し、該異常過熱が発生した場合には、負荷側への電源供給を遮断して、異常過熱に伴う焼損事故を防止する機能を備えた過熱防止装置付の回路遮断器が開示されている。(特許文献1、特許文献2)
特許文献1においては、異常過熱の検出を行うものとして以下のものが開示されている。過熱検出用のバイメタル板25及び26を回路遮断器の電源側端子及び負荷側端子の夫々に固着し、この2枚のバイメタル板間にバイメタル板の変位に追随して変位する伝達板を懸架し、且つ常時は前記伝達板に係止されているが、過熱時、伝達板の変位により、前記伝達板との係止関係が解除されることにより移動して回路遮断器をトリップさせる作動棒を備えるものである。また、伝達板と作動棒との係止関係が解除されて、作動棒が動作したときには、回路遮断器の外部に作動棒が突出することにより動作表示を行い、且つ作動棒を押圧操作することにより回路遮断器のリセットを可能とする過熱防止装置を一般の回路遮断器に付加して備えたものである。
【0011】
特許文献2においては、前述の特許文献1における機械的な構造を鑑みてなされたもので、電気的に異常過熱を検出し、該異常過熱が検出されたことにより出力される電気信号により、遮断器の接触子を開放する引外し装置を駆動させるものが開示されている。
【0012】
具体的には、特許文献1に開示された機械的動作によるものでは、遮断器の内部機構を変えなければ適用できないことが多いことに鑑みてなされたもので、特に、遮断器単体の過熱防止に加えて給電系統内にある回路遮断器を集中管理したり、同一回路に併設された電磁開閉器等の他の機器の過熱保護に利用することができることを課題としてなされたものである。
【0013】
異常過熱検出のための構成として、電線接続用端子の温度に対応して電気的出力が変化する感温素子と、該感温素子の電気的出力を正常レベルと比較して異常過熱を検知する判定回路とを備えている。
【0014】
感温素子としては、サーミスタ、熱起電力を利用した熱電対、放射熱を検出する赤外線センサなどが挙げられており、感温素子の配置形態として、該感温素子をモールドケースの端子近傍に埋め込んで配置する形態、モールドケースとは独立して樹脂成形された絶縁支持体に保持させて一体化した温度センサユニットを構成し、該温度センサユニットを極間バリアの取付用溝を利用してモールドケースに取り付けた形態、温度センサユニットを板状に形成してモールドケースの裏面と盤面との間に挟んで装着できるようにした形態、感温素子を遮断器端子部の絶縁に用いられる端子カバーに取り付けた形態、熱伝導率の高いセラミック等の絶縁体に感温素子を埋め込み、温度センサユニットの絶縁支持体に設けた穴に挿入して、ばねにより長さ方向に移動可能なように弾性的に保持し、遮断器端子部に絶縁体の先端を接触させる形態などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実公昭56−25156号公報
【特許文献2】特開昭62−8419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これら特許文献1及び特許文献2に開示されたように、通常の回路遮断器に異常過熱を検出する機能を追加することは可能である。しかしながら、特許文献1においては、異常過熱を検出する機能を追加するにあたり、回路遮断器の裏面側全体に異常過熱を検出するための機械的機構を配置するためのスペースを別途設ける必要があり、また、回路遮断器の外形が大きく変わるなど、回路遮断器の大幅な改造が伴う。
【0017】
また、特許文献2においては、電気的装置を配置するにあたり、感温素子などの温度センサ及び判定回路を備えたユニットを別途設けて、該ユニットを回路遮断器に取付ける必要があり、追加のための部品が多く、また、温度計測システムとしての導入が必要となることから機能追加のために複雑さを伴う。また、感温素子を主回路との電気的絶縁を図ったうえで取付けるために、温度の感知が間接的になり正確な温度上昇が捉えにくいという課題を有する。
【0018】
また、いずれの場合においても、異常過熱を検出するための単一の機能として作用するものである。最近の回路遮断器の動向を鑑みると、回路遮断器の省スペース化を図りつつも電気安全性能は維持若しくは向上させること、即ち回路遮断器の外形サイズは縮小化しつつも電流遮断性能は維持若しくは向上させることが要求されるが、これらに加えて更に電気安全に係る異常過熱を検出する機能を追加して回路遮断器を構成することは現実的ではないという課題がある。
【0019】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、通常の回路遮断器に対して後付可能で,取付位置が回路遮断器本体や、回路遮断器に接続する電線などの位置の影響を受けず,なおかつ、取付にあたり回路遮断器を取付板から取り外すことなく取付けることができる接続不良検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る接続不良検出装置は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、回路遮断器の電源端子に対し、熱伝導および電気伝導可能に接続される接続部と、前記電源端子からの熱伝導を受けて該電源端子の発熱状態に応じて変位するバイメタルと、前記バイメタルの変位を受けて
該バイメタルに当接
されて駆動することにより発熱の状態を表示する表示部と、これら接続部、バイメタル、表示部を収納する筐体と、を備えて、回路遮断器を所定の取付位置に取付けたままで、該回路遮断器の外方から電源端子への着脱を自在としたことを特徴として端子の接続不良検出装置を提供したものである。
【0021】
かかる構成によれば、接続部を回路遮断器の電源端子に対して回路遮断器の外方から接続する構成とし、回路遮断器を所定の取付位置に取付けたままで、該回路遮断器の外方から電源端子への着脱を自在としたため、回路遮断器を取付板から取り外すことなく接続不良検出装置を取付けることができる。
【0022】
また、前記接続不良検出装置の取付け位置は、回路遮断器の取付け面と電源端子に接続される電線との間に位置する構成としてもよい。
【0023】
かかる構成によれば、通常の回路遮断器における空きスペースを利用でき、回路遮断器に接続する電線などの位置の影響を受けにくい。
【発明の効果】
【0024】
以上の如く、本発明によれば、通常の回路遮断器に対して後付可能で,取付位置が回路遮断器本体や、回路遮断器に接続する電線などの位置の影響を受けず,なおかつ、取付にあたり回路遮断器を取付板から取り外すことなく取付けることができる接続不良検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第一の実施形態を示す接続不良検出装置を回路遮断器に取付けた状態の概略構成図を示す。
【
図2】上記の接続不良検出装置を回路遮断器に取付けた状態の要部概略図を示す。
【
図3】上記の接続不良検出装置の概略構成図を示す。
【
図4】従来例における端子の接続不良を検出する構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
(第一の実施形態)
図1には、本実施形態に係る接続不良検出装置2を回路遮断器1に取付けた状態の概略構成図を示している。
図2には、接続不良検出装置を回路遮断器に取付けた状態の要部概略図を示している。
図3には、接続不良検出装置の概略構成図を示す。
【0028】
まず、回路遮断器1の基本構造について説明を行う。回路遮断器1は、外郭がモールドケースからなる器体により覆われて構成されている。器体は回路遮断器における構成物が取付固定されるベースと、該ベースに被せられて主要構成物を覆うカバーとからなる。外部の導体と接続される電源端子111は各極の電源に対応して複数設けられており、夫々外部に露出している。
【0029】
電源端子111間には、夫々の電源端子を絶縁するための絶縁壁11が設けられる。
【0030】
前記器体の内部には、電源側の電路と負荷側の電路とを入切する固定接触子110と可動接触子112とが配設される。
【0031】
また、これら固定接触子110と可動接触子112を開閉駆動させる開閉機構部と、電路に流れる異常電流を検出することにより前記開閉機構部に作用して該開閉機構部の引外し動作を行わせ、前記固定接触子110と可動接触子120とを開駆動させる引外し装置部とが設けられている。
【0032】
固定接触子110の一端には、電源側の導体と接続される電源端子111が設けられるとともに、他端には、固定接点が設けられる。
【0033】
固定接触子110の向かいには固定接点と対向して可動接点が設けられた可動接触子112が対向配置され、開閉機構部により保持されて固定接触子110に対して開閉自在に駆動させられる。
【0034】
電源端子111には、外方から電線3が接続される。電線3の先端部には、圧着端子31がカシメにより取り付けられており、電源端子111には、該圧着端子31が端子ねじ1103によってねじ締め固定される。
【0035】
(接続不良検出装置2)
次に、電源端子111における前記電線3の接続不良を検出する機能を実現する接続不良検出装置2の構成について説明を行う。
【0036】
接続不良検出装置2は、電源端子111に対し、熱伝導および電気伝導可能に接続される接続部21と、前記電源端子111からの熱伝導を受けて該電源端子の発熱状態に応じて変位する熱動素子22と、前記熱動素子22の変位を受けて発熱の状態を表示する表示部23と、これら接続部21、熱動素子22、表示部23を収納する筐体24とを備えて構成される。
【0037】
接続部21は、回路遮断器1の端子ねじ1103を貫通させる貫通孔を有しており、電源端子111への取付時において、電線3の圧着端子31と電源端子111との間に挟まれるようにして、端子ねじ1103により締付固定される。このように固定されることにより、熱が直接接続部に対して伝導する。また、電気伝導性を保って固定されるため、接触抵抗の増大を防止することができる。
【0038】
熱動素子22は、電源端子111と接続された接続部21からの熱伝導を受けて変位するバイメタルを用いて構成している。具体的には、熱動素子22は、接続部21に対して溶接により固着されている。
【0039】
表示部23は、熱動素子22の近傍に配置され、該熱動素子22の変位を受けて当接駆動する。具体的には、熱動素子22の変位の方向と直交する方向に回転軸を有して回転自在に保持されている。表示部23には、熱動素子22との当接部と外部から視認される視認部とが設けられている。
【0040】
これら、接続部21と熱動素子22と表示部23とは、筐体24に収納されて一体構成される。筐体24は、その幅が回路遮断器1の各極1極分の大きさに形成されており、所定の極に対して取付を行うことができる。具体的には、3極ともに取付けた場合に、夫々の筐体24が接触しない程度に形成している。また、高さ方向は、回路遮断器1の取付面と電源端子111に接続される電線3との間に収まる大きさに形成されている。
【0041】
筐体24には、表示部23における視認部を筐体24の外方から視認できるように視認部に対応した場所に確認窓が設けられている。
【0042】
なお、電源端子111の温度は、使用される電流の大小によって変動するが、電源端子111の温度が最高値のときの状態を保持することができる構成となっている。表示部23を回転させるために必要な力を所定の大きさだけ設けており、回転して進んだ変位が保持できるようになっている。具体的には、前記所定の大きさを、熱動素子22の変位力(バイメタルの駆動力)よりも小さい力に設定し、熱動素子22の変位が戻った場合においても、表示部23の回転は最大値を保持できるようになっている。
【0043】
(接続不良検出装置2の取付け位置)
接続不良検出装置2は、その取付け時において、回路遮断器1の取付面と、電源端子111に接続される電線3との間に位置する。
【0044】
具体的には、接続不良検出装置2の取付は、接続部21が、電線3の圧着端子31と電源端子111との間に挟まれるようにして、端子ねじ1103により締付固定される。
【0045】
このように固定されることにより、筐体24は、回路遮断器1の取付面と電線3との間に位置し、デッドスペース内に収まり、回路遮断器本体や、回路遮断器に接続する電線などの位置の影響を受けにくい。
【0046】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、接続不良検出装置2の筐体24を、各極1極ごとの大きさに設けて形成しているが、主開閉器として用いられる回路遮断器では一般的な3極分の大きさに形成し、接続部21、熱動素子22、表示部23についても3極分を合わせて筐体内に収納して構成してもよい。
【0048】
このように構成することで、一極ごとに接続不良検出装置2を取付ける手間が省ける。
【0049】
また、表示部23の駆動は回転軸を設けた回転式としたが、熱動素子22の変位に伴って、表示部を一定方向に押していく直線移動式として構成してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 回路遮断器
11 絶縁壁
110 固定接触子
1103 端子ねじ
111 電源端子
112 可動接触子
2 接続不良検出装置
21 接続部
22 熱動素子
23 表示部
24 筐体
3 電線
31 圧着端子