特許第6650264号(P6650264)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650264
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20200210BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B41J2/335 101C
   B41J2/335 101F
   B41J2/335 101E
   B41J2/335 101D
   B41J2/335 101A
   B41J2/345 K
   B41J2/345 B
【請求項の数】30
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-254021(P2015-254021)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-114056(P2017-114056A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇
(72)【発明者】
【氏名】不破 保博
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−224950(JP,A)
【文献】 特開2012−158034(JP,A)
【文献】 特開2012−051319(JP,A)
【文献】 特開平03−205165(JP,A)
【文献】 特開2003−080754(JP,A)
【文献】 特開平07−081112(JP,A)
【文献】 特開昭61−154954(JP,A)
【文献】 特開2006−181822(JP,A)
【文献】 特開2014−231216(JP,A)
【文献】 特開平05−318790(JP,A)
【文献】 特開平05−177854(JP,A)
【文献】 特開平06−106758(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0268094(US,A1)
【文献】 特開平02−289362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siに金属元素がドープされた材質からなる半導体基板と、
前記半導体基板に支持され且つ通電によって発熱する主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記半導体基板に支持され且つ前記複数の発熱部に通電するための導通経路に含まれる配線層と、を備えるサーマルプリントヘッドであって、
前記半導体基板と前記配線層および抵抗体層との間に設けられた絶縁層をさらに備え、
前記導通経路は、前記半導体基板を含み、
前記半導体基板は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面から前記厚さ方向に突出し且つ主走査方向に長く延びる凸状部と、を有し、
前記複数の発熱部は、前記厚さ方向視において前記凸状部と重なり、
前記主面は、前記凸状部を挟んで副走査方向に互いに離間する第1領域および第2領域を有し、
前記凸状部は、前記主面と平行であり且つ前記主面から前記厚さ方向に離間した天面、前記天面と前記第1領域との間に介在し且つ前記主面に対して傾斜した平面である第1傾斜側面と、前記天面と前記第2領域との間に介在し且つ前記主面に対して傾斜した平面である第2傾斜側面と、を有し、
前記絶縁層は、前記天面上に形成された隆起部を有し、
前記複数の発熱部は、前記厚さ方向視において前記隆起部と重なり、
前記配線層は、前記複数の発熱部に各別に繋がる複数の個別電極と、前記複数の発熱部を挟んで前記複数の個別電極とは反対側に配置された部分を有しており且つ前記複数の発熱部と導通する共通電極とを有するとともに、Cuからなる層と、当該層と前記抵抗体層との間に介在するTiからなる層とを有しており、
前記共通電極と前記半導体基板とが導通しており、
前記配線層は、前記第1傾斜側面および前記第2傾斜側面を跨ぎ、
前記抵抗体層は前記第1傾斜側面および前記第2傾斜側面を跨ぎ、
前記配線層および抵抗体層を覆う絶縁性保護層と、
前記厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なり且つ前記絶縁性保護層上に積層された、前記共通電極に導通する導電性保護層と、
前記配線層に導通し且つ前記複数の発熱部に個別に通電させ、前記厚さ方向視において前記第2領域と重なる複数の制御素子と、を備え、
前記制御素子は、前記導電性保護層の前記厚さ方向において前記主面が向く側の面である導電性保護層表面よりも、前記厚さ方向において前記裏面が向く側に位置していることを特徴とする、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
記絶縁層は、前記半導体基板と前記共通電極とを導通させる共通電極用第1開口を有する、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記共通電極用第1開口は、主走査方向に長く延びる形状である、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記抵抗体層は、前記共通電極用第1開口を通じて前記半導体基板に接する抵抗側第1貫通導通部を有する、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記共通電極は、前記抵抗側第1貫通導通部に接する配線側第1貫通導通部を有する、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記複数の発熱部を挟んで副走査方向において共通電極用第1開口とは反対側に位置し且つ前記半導体基板と前記共通電極とを導通させる共通電極用第2開口を有する、請求項2ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記抵抗体層は、前記共通電極用第2開口を通じて前記半導体基板に接する抵抗側第2貫通導通部を有する、請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記共通電極は、前記抵抗側第2貫通導通部に接する配線側第2貫通導通部を有する、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記共通電極用第2開口は、前記厚さ方向視において前記制御素子と重なる、請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記絶縁性保護層は、前記複数の個別電極および共通電極の少なくとも一方の一部ずつを露出させる制御素子用開口を有する、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記制御素子用開口に形成された制御素子用パッドを備える、請求項10に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記制御素子は、前記制御素子用パッドに導通接合されている、請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記絶縁性保護層は、副走査方向において前記制御素子に対して前記複数の発熱部とは反対側に位置し且つ前記配線層を露出させる配線部材用開口を有する、請求項6ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記配線部材用開口に形成された配線部材用パッドを備える、請求項13に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記配線部材用パッドに接合された配線部材を有する、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記配線部材は、フレキシブル配線基板である、請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
前記共通電極用第1開口は、前記厚さ方向視において前記第1領域と重なる、請求項6ないし16のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項18】
前記共通電極用第2開口は、前記厚さ方向視において前記第2領域と重なる、請求項17に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項19】
前記導電性保護層は、TiNからなる、請求項2ないし18のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項20】
前記絶縁性保護層は、前記導電性保護層と前記共通電極とを導通させる導電性保護層用開口を有する、請求項19に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項21】
前記導電性保護層は、前記導電性保護層用開口を通じて前記共通電極に接する保護層貫通導電部を有する、請求項20に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項22】
前記導電性保護層用開口は、前記厚さ方向視において前記第1領域と重なる、請求項21に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項23】
前記半導体基板は、前記主面側から前記裏面側に凹む伝熱抑制第1凹部を有する、請求項2ないし22のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項24】
前記伝熱抑制第1凹部は、主走査方向に長く延びている、請求項23に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項25】
前記伝熱抑制第1凹部は、前記第2領域から凹んでいる、請求項23または24に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項26】
前記絶縁層は、前記第2領域を埋める第1凹部充填部を有する、請求項23ないし25のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項27】
前記半導体基板は、前記天面から凹む伝熱抑制第2凹部を有する、請求項23ないし26のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項28】
前記絶縁層は、前記伝熱抑制第2凹部を埋める第2凹部充填部を有する、請求項27に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項29】
前記主面として、(100)面が選択されている、請求項1ないし28のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項30】
前記抵抗体層は、TaNからなる、請求項1ないし29のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているサーマルプリントヘッドは、基板と、抵抗体層と、配線層と、を備える。このようなサーマルプリントヘッドは、たとえば特許文献1に開示されている。同文献に開示のサーマルプリントヘッドにおいて、抵抗体層および配線層は、基板に形成されている。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。
【0003】
より精細な印字を行うには、複数の発熱部のピッチを縮小することが必要である。これに伴い、配線層をより微細に形成することが求められる。このため、配線層の微細形成の程度によって、印字の精細化が阻害されることが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−51319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、印字の精細化を図ることが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供されるサーマルプリントヘッドは、半導体基板と、前記半導体基板に支持され且つ通電によって発熱する主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、前記半導体基板に支持され且つ前記複数の発熱部に通電するための導通経路に含まれる配線層と、を備えるサーマルプリントヘッドであって、前記導通経路は、前記半導体基板を含むことを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線層は、前記複数の発熱部に各別に繋がる複数の個別電極と、前記複数の発熱部を挟んで前記複数の個別電極とは反対側に配置された部分を有しており且つ前記複数の発熱部と導通する共通電極とを有しており、前記共通電極と前記半導体基板とが導通している。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線層および抵抗体層を覆う絶縁性保護層を備える。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体基板と前記配線層および抵抗体層との間に設けられた絶縁層を備えており、前記絶縁層は、前記半導体基板と前記共通電極とを導通させる共通電極用第1開口を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極用第1開口は、主走査方向に長く延びる形状である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、前記共通電極用第1開口を通じて前記半導体基板に接する抵抗側第1貫通導通部を有する。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極は、前記抵抗側第1貫通導通部に接する配線側第1貫通導通部を有する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁層は、前記複数の発熱部を挟んで副走査方向において共通電極用第1開口とは反対側に位置し且つ前記半導体基板と前記共通電極とを導通させる共通電極用第2開口を有する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、前記共通電極用第2開口を通じて前記半導体基板に接する抵抗側第2貫通導通部を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極は、前記抵抗側第2貫通導通部に接する配線側第2貫通導通部を有する。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線層に導通し且つ前記複数の発熱部に個別に通電させる複数の制御素子を備える。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極用第2開口は、前記厚さ方向視において前記制御素子と重なる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁性保護層は、前記複数の個別電極および共通電極の少なくとも一方の一部ずつを露出させる制御素子用開口を有する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御素子用開口に形成された制御素子用パッドを備える。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御素子は、前記制御素子用パッドに導通接合されている。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁性保護層は、副走査方向において前記制御素子に対して前記複数の発熱部とは反対側に位置し且つ前記配線層を露出させる配線部材用開口を有する。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線部材用開口に形成された配線部材用パッドを備える。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線部材用パッドに接合された配線部材を有する。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線部材は、フレキシブル配線基板である。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体基板は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面と、前記主面から前記厚さ方向に突出し且つ主走査方向に長く延びる凸状部と、を有し、前記複数の発熱部は、前記厚さ方向視において前記凸状部と重なる。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主面は、前記凸状部を挟んで副走査方向に互いに離間する第1領域および第2領域を有する。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記凸状部は、前記主面と平行であり且つ前記主面から厚さ方向に離間した天面、前記天面と前記第1領域との間に介在し且つ前記主面に対して傾斜した第1傾斜側面と、前記天面と前記第2領域との間に介在し且つ前記主面に対して傾斜した第2傾斜側面と、を有する。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の発熱部は、前記厚さ方向視において前記天面と重なる。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極用第1開口は、前記厚さ方向視において前記第1領域と重なる。
【0030】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極用第2開口は、前記厚さ方向視において前記第2領域と重なる。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記制御素子は、前記厚さ方向視において前記第2領域と重なる。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なり且つ前記絶縁性保護層上に積層された導電性保護層を備える。
【0033】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電性保護層は、TiNからなる。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁性保護層は、前記導電性保護層と前記共通電極とを導通させる導電性保護層用開口を有する。
【0035】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電性保護層は、前記導電性保護層用開口を通じて前記共通電極に接する保護層貫通導電部を有する。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記導電性保護層用開口は、前記厚さ方向視において前記第1領域と重なる。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体基板は、前記主面側から前記裏面側に凹む伝熱抑制第1凹部を有する。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記伝熱抑制第1凹部は、主走査方向に長く延びている。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記伝熱抑制第1凹部は、前記第2領域から凹んでいる。
【0040】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁層は、前記第2領域を埋める第1凹部充填部を有する。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体基板は、前記天面から凹む伝熱抑制第2凹部を有する。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記絶縁層は、前記伝熱抑制第2凹部を埋める第2凹部充填部を有する。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記半導体基板は、Siに金属元素がドープされた材質からなる。
【0044】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、TaNからなる。
【0045】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記配線層は、Cuからなる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、前記複数の発熱部に通電するための前記導通経路が、前記半導体基板を含んでいる。前記半導体基板によって導通が図られることにより、それに相当する部分を前記配線層の一部として形成する必要が無い。これにより、前記主面側に設けるべき前記配線層の面積を縮小することが可能である。この結果、前記配線層を形成するための領域を拡大することが可能であり、前記複数の発熱部を小型化および挟ピッチ化することに対応して、前記配線層をより容易に形成することができる。したがって、印字の精細化を図ることができる。
【0047】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図1のサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図4図1のサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図5図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図6図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図7図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図8図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図9図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図10図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図11図1のサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図12図1のサーマルプリントヘッドの変形例を示す要部拡大断面図である。
図13】本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図14図13のサーマルプリントヘッドの変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0050】
図1図4は、本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、半導体基板1、絶縁層2、配線層3、抵抗体層4、絶縁性保護層5、導電性保護層6、複数の制御素子7、保護樹脂8、支持部材91および配線部材92を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ991との間に挟まれて搬送される印刷媒体992に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体992としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0051】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。なお、理解の便宜上、図3においては、支持部材91を省略している。また、図4は、サーマルプリントヘッドA1の一部を示している。
【0052】
半導体基板1は、通電を許容する抵抗率を有する半導体材料からなる。このような半導体材料としては、たとえば、Siに金属元素がドープされた材質が挙げられる。半導体基板1は、主面11、裏面12および凸状部13を有する。なお、半導体基板1は、凸状部13を有さない構成であってもよい。
【0053】
主面11および裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。凸状部13は、主面11から厚さ方向zに突出した部位である。凸状部13は、主走査方向xに長く延びている。
【0054】
主面11は、凸状部13を挟んで副走査方向に互いに離間する第1領域111および第2領域112を有する。
【0055】
凸状部13は、天面130、第1傾斜側面131および第2傾斜側面132を有する。天面130は、主面11と平行であり且つ主面11から厚さ方向に離間している。第1傾斜側面131は、天面130と第1領域111との間に介在しており、主面11に対して傾斜している。第2傾斜側面132は、天面130と第2領域112との間に介在しており、主面11に対して傾斜している。
【0056】
本実施形態においては、主面11として、(100)面が選択されている。また、第1傾斜側面131および第2傾斜側面132が天面130および主面11となす角度は、同一であり、たとえば54.7度である。
【0057】
主面11は、第1領域111および第2領域112を有する。第1領域111と第2領域112とは、凸状部13によって互いに区画された領域である。本実施形態においては、第2領域112は、第1領域111よりも副走査方向y寸法および面積が大である。
【0058】
半導体基板1の大きさは特に限定されないが、一例を挙げると、半導体基板1の副走査方向y寸法が、2.0mm〜3.0mm程度、x方向寸法が、100mm〜150mm程度である。主面11と裏面12との厚さ方向z距離が、400μm〜500μm程度、凸状部13の厚さ方向z高さが、250μm〜400μm程度である。
【0059】
絶縁層2は、半導体基板1の主面11および凸状部13と配線層3および抵抗体層4との間に設けられている。絶縁層2は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO2やSiNからなる。絶縁層2の厚さは特に限定されず、その一例を挙げるとたとえば5μm〜10μm程度である。
【0060】
絶縁層2は、共通電極用第1開口21および共通電極用第2開口22を有する。共通電極用第1開口21は、絶縁層2を厚さ方向zに貫通している。本実施形態においては、共通電極用第1開口21は、厚さ方向z視において第1領域111と重なっている。また、共通電極用第1開口21は、主走査方向xに長く延びる形状であり、たとえばスリット状である。
【0061】
共通電極用第2開口22は、絶縁層2を厚さ方向zに貫通している。本実施形態においては、共通電極用第2開口22は、厚さ方向z視において第2領域112と重なっている。
【0062】
抵抗体層4は、半導体基板1に支持されており、本実施形態においては、絶縁層2上に形成されている。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有している。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体992を局所的に加熱するものである。複数の発熱部41は、主走査方向xに沿って配置されている。本実施形態においては、複数の発熱部41は、厚さ方向z視において凸状部13に重なっており、より具体的には天面130にその全てが重なっている。抵抗体層4は、たとえばTaNからなる。
【0063】
発熱部41の形状は特に限定されないが、図4に示す例においては、発熱部41は、屈曲形状とされている。
【0064】
本実施形態においては、抵抗体層4は、抵抗側第1貫通導通部421および抵抗側第2貫通導通部422を有する。抵抗側第1貫通導通部421は、共通電極用第1開口21を通じて半導体基板1の主面11の第1領域111に接している。抵抗側第2貫通導通部422は、共通電極用第2開口22を通じて半導体基板1の主面11の第2領域112に接している。
【0065】
配線層3は、複数の発熱部41に通電するための導通経路を構成するためのものである。配線層3は、半導体基板1に支持されており、本実施形態においては、抵抗体層4上に積層されている。なお、配線層3は、半導体基板1と抵抗体層4との間に介在してもよい。配線層3は、抵抗体層4よりも低抵抗な金属材料からなり、たとえばCuからなる。また、配線層3は、Cuからなる層と、当該層と抵抗体層4との間に介在するTiからなる層とを有する構成であってもよい。
【0066】
配線層3は、複数の個別電極31および共通電極32を有する。複数の個別電極31は、複数の発熱部41に各別に繋がっている。本実施形態においては、複数の個別電極31は、複数の発熱部41に対して、副走査方向yにおいて第2領域112側に位置している。
【0067】
共通電極32は、複数の発熱部41を挟んで複数の個別電極31とは副走査方向yにおいて反対側に配置された部分を有している。また、実施形態の共通電極32は、複数の個別電極31よりも副走査方向y方向において第2領域112側(図3における図中左方側)に位置する部分を有している。共通電極32は、複数の発熱部41のすべてと導通している。なお、図3は、理解の便宜上、第2領域112において共通電極32を横切る断面を示しているが、主走査方向xにおける他の位置における断面では、配線層3は、共通電極32とは電位が異なり絶縁された複数の部分を有している。
【0068】
図3および図4から理解されるように、本実施形態においては、抵抗体層4のうち複数の個別電極31と共通電極32との間において配線層3から露出した部分が、複数の発熱部41となっている。
【0069】
本実施形態においては、共通電極32は、配線側第1貫通導通部321および配線側第2貫通導通部322を有する。配線側第1貫通導通部321は、抵抗体層4の抵抗側第1貫通導通部421に接している。配線側第2貫通導通部322は、抵抗体層4の抵抗側第2貫通導通部422に接している。このような構成により、配線層3の共通電極32のうち厚さ方向z視において第1領域111と重なる部分は、絶縁層2の共通電極用第1開口21を通じて、抵抗側第1貫通導通部421を介することにより、半導体基板1と導通している。また、共通電極32のうち厚さ方向z視において第2領域112と重なる部分は、絶縁層2の共通電極用第2開口22を通じて、抵抗側第2貫通導通部422を介することにより、半導体基板1と導通している。この結果、本実施形態においては、複数の発熱部41に通電するための導通経路が、配線層3と半導体基板1とを含んでいる。より具体的には、共通電極32に流れる電流が半導体基板1を経由する構成となっている。
【0070】
絶縁性保護層5は、配線層3および抵抗体層4を覆っている。絶縁性保護層5は、絶縁性の材料からなり、配線層3および抵抗体層4を保護している。絶縁性保護層5の材質は、たとえばSiO2である。
【0071】
絶縁性保護層5は、導電性保護層用開口51、複数の制御素子用開口52および複数の配線部材用開口53を有する。導電性保護層用開口51は、厚さ方向z視において第1領域111と重なっており、共通電極32を露出させている。導電性保護層用開口51は、たとえば主走査方向xに長く延びる形状である。図示された例においては、導電性保護層用開口51は、厚さ方向z視において共通電極用第1開口21と重なっている。制御素子用開口52は、厚さ方向z視において第2領域112と重なっており、複数の個別電極31および共通電極32をそれぞれ露出させている。
【0072】
複数の配線部材用開口53は、複数の制御素子用開口52に対して複数の発熱部41とは副走査方向yにおいて反対側に設けられている。複数の配線部材用開口53は、配線層3の共通電極32や、x方向において共通電極32とは異なる位置に設けられ且つ共通電極32とは絶縁された配線層3の他の部分をそれぞれ露出させている。
【0073】
導電性保護層6は、厚さ方向z視において複数の発熱部41と重なり且つ絶縁性保護層5上に積層されている。導電性保護層6は、導電性材料からなり、たとえばAlNからなる。導電性保護層6は、厚さ方向z視において第1領域111と重なる部分を有しており、保護層貫通導電部61を有する。保護層貫通導電部61は、導電性保護層用開口51を通じて共通電極32に接している。
【0074】
複数の制御素子7は、配線層3に導通し且つ複数の発熱部41に個別に通電させるためのものである。複数の制御素子7は、主走査方向xに配列されている。複数の制御素子7は、厚さ方向z視において共通電極用第2開口22と重なっている。
【0075】
本実施形態においては、サーマルプリントヘッドA1は、制御素子用パッド381を有する。制御素子用パッド381は、Cu,Ni等の金属からなり、制御素子用開口52に形成されている。制御素子7は、複数の制御素子電極71を有している。制御素子電極71は、制御素子用パッド381に導電性接合材79を介して導通接合されている。導電性接合材79は、たとえばはんだである。
【0076】
本実施形態においては、制御素子7は、導電性保護層6の厚さ方向z上方の面である導電性保護層表面S6よりも、厚さ方向zにおいて半導体基板1側に位置している。また、制御素子7は、抵抗体層4の厚さ方向z上方の面である抵抗体層表面S4よりも、厚さ方向zにおいて半導体基板1側に位置している。
【0077】
配線部材92は、配線層3とたとえばプリンタの電源部(図示略)とを導通させるためのものである。配線部材92は、たとえばプリント配線基板である。このような配線部材92は、たとえば樹脂層921、配線層922および保護層923を有する。樹脂層921は、可撓性を有する樹脂からなる。配線層922は、樹脂層921に積層されており、たとえばCu等の金属からなる。保護層923は、樹脂層921に対して配線層922とは反対側に積層されており、樹脂層921および配線層922を保護する層である。
【0078】
サーマルプリントヘッドA1は、配線部材用パッド382を有している。配線部材用パッド382は、絶縁性保護層5の配線部材用開口53に形成されており、Cu,Ni等の金属からなる。配線部材92の配線層922は、配線部材用パッド382に対して導通接合されている。なお、サーマルプリントヘッドA1は、複数の配線部材用パッド382を有している。図3に示す配線部材用パッド382は、共通電極32と導通している。複数の配線部材用パッド382の幾つかは、配線層3のうち共通電極32とは絶縁された、図3とは異なる位置に設けられた他の部分に導通している。
【0079】
支持部材91は、半導体基板1を支持している。支持部材91は、たとえばAl等の金属からなる。支持部材91は、凹部911を有している。凹部911は、半導体基板1を収容する部位であり、半導体基板1を支持している。半導体基板1は、凹部911に対してたとえば接合層919によって接合されている。接合層919は、半導体基板1からの熱を支持部材91に伝えるとともに、半導体基板1と支持部材91とを絶縁しうるものが好ましい。このような接合層919として、たとえば樹脂系接着剤が挙げられる。
【0080】
支持部材91の寸法は、特に限定されず、その一例を挙げると、副走査方向y寸法が、5.0mm〜8.0mm程度、x方向寸法が、100mm〜150mm程度である。また、厚さ方向z寸法が、2.0〜4.0mm程度である。
【0081】
保護樹脂8は、制御素子7を保護しており、たとえば絶縁性の樹脂からなる。また、保護樹脂8は、厚さ方向z視において凸状部13の第2傾斜側面132と重なり、天面130を露出させている。本実施形態においては、保護樹脂8は、配線部材92の一部を覆っている。
【0082】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、図5〜11を参照しつつ以下に説明する。
【0083】
まず、半導体基板材料を用意する。半導体基板材料は、低抵抗な半導体材料からなりたとえばSiに金属元素がドープされた材質からなる。また、この半導体基板材料は、(100)面を有する。この(100)面を所定のマスク層で覆った後に、たとえばKOHを用いた異方性エッチングを行う。これにより、図5に示す半導体基板1が得られる。主面11および天面130は、(100)面である。第1傾斜側面131および第2傾斜側面132は、異方性エッチングによって形成された傾斜面であり、主面11となす角度が、それぞれ54.7度である。なお、本手法と異なり、切削加工等を用いて半導体基板1を形成してもよい。
【0084】
次いで、図6に示すように、絶縁層2を形成する。絶縁層2の形成は、たとえばCVDを用いてSiO2を堆積させることによって行う。また、エッチング等によって、共通電極用第1開口21および共通電極用第2開口22を形成する。
【0085】
次いで、図7に示すように、抵抗体層4を形成する。抵抗体層4の形成は、たとえば、スパッタリングによって絶縁層2上にTaNの薄膜を形成することによって行う。
【0086】
次いで、抵抗体層4を覆う配線層3を形成する。配線層3の形成は、たとえばめっきやスパッタリング等によってCuからなる層を形成することによって行う。また、Cu層を形成する前に、Ti層を形成してもよい。そして、配線層3の選択的なエッチングと抵抗体層4の選択的なエッチングとを施すことにより、図8に示す配線層3および抵抗体層4が得られる。配線層3は、複数の個別電極31と共通電極32とを有する。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。また、共通電極32は、配線側第1貫通導通部321および配線側第2貫通導通部322を有する。抵抗体層4は、抵抗側第1貫通導通部421および抵抗側第2貫通導通部422を有する。
【0087】
次いで、図9に示すように、絶縁性保護層5を形成する。絶縁性保護層5の形成は、たとえばCVDを用いて絶縁層2、配線層3および抵抗体層4上にSiO2を堆積させた後に、エッチング等を行うことにより実行される。
【0088】
次いで、図10に示すように、導電性保護層6を形成する。また、制御素子用パッド381および配線部材用パッド382を形成する。次いで、図11に示すように配線部材92を配線部材用パッド382に接合する。そして、半導体基板1を支持部材91に接合層919を用いて接合した後に保護樹脂8を形成する。以上の工程を経ることにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0089】
次に、サーマルプリントヘッドA1の作用について説明する。
【0090】
本実施形態によれば、複数の発熱部41に通電するための導通経路が、半導体基板1を含んでいる。半導体基板1によって導通が図られることにより、それに相当する部分を配線層3の一部として形成する必要が無い。これにより、主面11側に設けるべき配線層3の面積を縮小することが可能である。この結果、配線層3を形成するための領域を拡大することが可能であり、複数の発熱部41を小型化および挟ピッチ化することに対応して、配線層3をより容易に形成することができる。したがって、印字の精細化を図ることができる。
【0091】
また、半導体基板1は、共通電極32と導通している。共通電極32は、複数の発熱部41のすべてと導通する部位である。このため、半導体基板1を、互いに絶縁された複数の部位に分割するなどを強いられない。
【0092】
半導体基板1は、共通電極用第1開口21および共通電極用第2開口22を通じて配線側第1貫通導通部321および配線側第2貫通導通部322と接している。共通電極用第1開口21および共通電極用第2開口22と配線側第1貫通導通部321および配線側第2貫通導通部322は、複数の発熱部41を副走査方向yに挟んでいる。このような配置により、導通経路のうち半導体基板1によって構成される部分は、複数の発熱部41を厚さ方向zにおいてバイパスする格好となる。これは、複数の発熱部41の小型化および挟ピッチ化に好ましい。
【0093】
さらに、導通経路のうち半導体基板1によって構成される部分は、厚さ方向z視において複数の制御素子7に重なっている。これにより、配線層3と複数の制御素子7との干渉を抑制することが可能である。
【0094】
共通電極用第1開口21は、主走査方向xに長く延びている。これにより、配線層3と半導体基板1との接触抵抗を低減することができる。
【0095】
絶縁性保護層5は、保護層貫通導電部61を通じて配線層3の共通電極32と導通している。絶縁性保護層5は、印刷媒体992と擦れ合う部分であり、静電気が帯電しやすい。この帯電した電荷を配線層3の共通電極32へと適切に逃がすことが可能である。
【0096】
半導体基板1には、凸状部13が形成されている。複数の発熱部41は、厚さ方向z視において凸状部13と重なる。これにより、印刷媒体992に対して複数の発熱部41を含む部位をより高い圧力で押し付けることが可能である。これは、印字の精細化に好ましい。
【0097】
凸状部13は、天面130、第1傾斜側面131および第2傾斜側面132を有する。天面130は、主面11と平行な平面であり、複数の発熱部41を形成する部位として好ましい。第1傾斜側面131および第2傾斜側面132を有する構成は、これらを跨ぐように配線層3および抵抗体層4を形成するのに適している。
【0098】
また、制御素子7は、第2領域112に配置されており、厚さ方向zにおいて導電性保護層表面S6よりも主面11側に位置している。これにより、制御素子7と印刷媒体992との干渉を回避することができる。さらに、制御素子7が、厚さ方向zにおいて抵抗体層表面S4よりも主面11側に位置していることは、制御素子7と印刷媒体992との干渉を回避するのに好ましい。
【0099】
図12図14は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0100】
図12は、サーマルプリントヘッドA1の変形例を示している。本変形例においては、絶縁層2が、隆起部29を有している。隆起部29は、凸状部13の天面130上に形成されている。隆起部29は、絶縁層2の隆起部29以外の部分よりも厚い部分であり、主走査方向xに長く延びている。抵抗体層4の複数の発熱部41は、隆起部29上に設けられている。
【0101】
図13は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、半導体基板1および絶縁層2の構成が、上述したサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0102】
本実施形態においては、半導体基板1は、伝熱抑制第1凹部141を有している。伝熱抑制第1凹部141は、主面11側から裏面12側に凹んでいる。伝熱抑制第1凹部141の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、主走査方向xに長く延びる形状である。また、本実施形態の伝熱抑制第1凹部141は、主面11の第2領域112から凹んでいる。
【0103】
絶縁層2は、第1凹部充填部231を有する。第1凹部充填部231は、伝熱抑制第1凹部141を埋めている。
【0104】
このような実施形態によっても、印字の精細化を図ることができる。伝熱抑制第1凹部141が、副走査方向yにおいて複数の発熱部41と制御素子7の制御素子電極71との間に設けられている。これにより、複数の発熱部41において発生した熱が半導体基板1を経由して制御素子7や配線部材92へと伝えられることを、伝熱抑制第1凹部141によって抑制することが可能である。Si等の半導体材料からなる半導体基板1は、比較的熱伝導率が高い。このような半導体基板1によって意図しない熱が制御素子7や配線部材92等へと伝わることを抑制することができる。
【0105】
図14は、サーマルプリントヘッドA2の変形例を示している。本変形例においては、半導体基板1は、複数の伝熱抑制第2凹部142を有する。複数の伝熱抑制第2凹部142は、凸状部13の天面130から裏面12側へと凹んでいる。絶縁層2は、複数の第2凹部充填部232を有する。第2凹部充填部232は、伝熱抑制第2凹部142を埋めている。複数の発熱部41は、厚さ方向z視において複数の伝熱抑制第2凹部142および複数の第2凹部充填部232と重なる。
【0106】
このような実施形態によっても、印字の精細化を図ることができる。また、複数の伝熱抑制第2凹部142によって、複数の発熱部41からの熱が半導体基板1へと伝わることを抑制することができる。複数の伝熱抑制第2凹部142を複数の第2凹部充填部232によって埋めることは、上述した遮熱効果を高めるのに好ましい。
【0107】
本発明に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0108】
A1,A2 :サーマルプリントヘッド
1 :半導体基板
2 :絶縁層
3 :配線層
4 :抵抗体層
5 :絶縁性保護層
6 :導電性保護層
7 :制御素子
8 :保護樹脂
11 :主面
12 :裏面
13 :凸状部
21 :共通電極用第1開口
22 :共通電極用第2開口
29 :隆起部
31 :個別電極
32 :共通電極
41 :発熱部
51 :導電性保護層用開口
52 :制御素子用開口
53 :配線部材用開口
61 :保護層貫通導電部
71 :制御素子電極
79 :導電性接合材
91 :支持部材
92 :配線部材
111 :第1領域
112 :第2領域
130 :天面
131 :第1傾斜側面
132 :第2傾斜側面
141 :伝熱抑制第1凹部
142 :伝熱抑制第2凹部
231 :第1凹部充填部
232 :第2凹部充填部
321 :配線側第1貫通導通部
322 :配線側第2貫通導通部
381 :制御素子用パッド
382 :配線部材用パッド
421 :抵抗側第1貫通導通部
422 :抵抗側第2貫通導通部
911 :凹部
919 :接合層
921 :樹脂層
922 :配線層
923 :保護層
991 :プラテンローラ
992 :印刷媒体
S4 :抵抗体層表面
S6 :導電性保護層表面
x :主走査方向
y :副走査方向
z :方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14