【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人科学技術振興機構 重要知財集約活用制度 スーパーハイウェイプログラム 産業技術力強化法 第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列枝の回路に容量性素子を、並列枝の回路に誘導性素子を、それぞれ周期的に挿入したマイクロストリップ線路を、上記マイクロストリップ線路の伝搬方向とは異なる方向で磁化されて自発磁化を有するか又は外部磁界により磁化された構造を有する非相反メタマテリアル伝送線路装置を備えたアンテナ装置であって、
上記マイクロストリップ線路が導波領域で動作するように上記各回路のパラメータが設定され、上記マイクロストリップ線路の両端にそれぞれ反射素子が接続され、共振状態で動作するアンテナ装置であって、
前記アンテナ装置を複数備え、上記複数のアンテナ装置の各片端を互いに接続し、上記複数のアンテナ装置を放射状に配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【背景技術】
【0002】
従来技術のビーム走査アンテナの一つに漏れ波アンテナがある。漏れ波アンテナは、アンテナを構成する伝送線路の実効屈折率の絶対値が1よりも小さくなる場合に、伝送線路に沿って伝搬する信号の一部が、漏れ波として外部に放射する現象を利用した指向性アンテナである(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
放射ビーム角は、伝送線路上に生じる電磁界分布の空間的な位相勾配により決まるので、線路上の位相勾配を変えることにより、漏れ波ビーム角を走査することが可能となる。このような従来の漏れ波アンテナでは、信号は線路の一端から入力される。入力信号のうち、漏れ波放射に寄与しない成分が存在して、もう一方の線路終端まで到達する場合、終端で反射して同じ線路を逆方向に伝搬し、2次的な漏れ波放射によって不要なサイドローブを発生させてしまう。この問題を解決する手段として、アンテナサイズ(線路長)を無駄に大きくするか、インピーダンス整合回路を線路終端に挿入し反射を抑制する必要がある。もし漏れ波アンテナのサイズがコンパクトな場合、終端で放射に寄与しない信号成分が消費されるので、放射効率が上がらなくなる。
【0004】
アンテナサイズをコンパクトに保ちながら、放射効率を高く維持する新しい技術の一つとして、非相反メタマテリアルの利用がある。非相反メタマテリアルとは、順方向と逆方向で透過係数の異なるメタマテリアルのことで、例えば、順方向伝搬の場合、正の屈折率を示すのに対して、逆方向伝搬の場合、負の屈折率を示すことが可能である。この非相反線路を漏れ波アンテナに適用すると、線路に沿って信号の伝搬方向を切り替えても漏れ波放射方向を同一方向に向けることが可能となる。この非相反線路からの漏れ波の放射効率を低下させないためには、線路の両端に一対の反射素子を挿入し、多重反射を積極的に利用することにより、入力信号の大部分を特定方向への漏れ波放射に寄与させることが考えられる。
【0005】
つまり従来技術では、終端で無駄に消費されていた電力が非相反線路を用いることにより有効活用することが可能となり、共振構造によって放射効率の改善が図られる。このような非相反メタマテリアルの共振構造は擬似進行波共振器と呼ばれ、いくつかの特徴を有する。
【0006】
一つ目の特徴としては、共振周波数が共振器サイズによらないことが挙げられ、これを用いると共振周波数を固定したまま、アンテナ形状、サイズを自由に変えることが可能となる。もう一つの特徴は、擬似進行波共振器内の電磁界分布が、自動的に振幅一様となり、一方、位相分布は一定の位相勾配を持つ。この位相勾配は線路の持つ非相反性により決まる量であり、共振条件には関係なく独立して制御可能なパラメータである。
【0007】
したがって、共振状態を維持したまま、線路の非相反性を変えることにより、高効率な漏れ波ビーム走査が可能となる。線路に非相反性がない場合、線路内の実効屈折率は0となり、線路上の至る所で同位相となるので、線路に対してブロードサイド(垂直)方向に漏れ波が放射する。線路の非相反性が大きくなるにつれて、漏れ波ビーム角の傾きが大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】本発明の実施形態1に係る非相反メタマテリアル伝送線路装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る擬似進行波共振器を用いたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTのときの分散曲線を示すグラフである。
【
図4】
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTのときの分散曲線を示すグラフである。
【
図5】単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.83GHzで順方向伝搬時のYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図6】単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.83GHzで逆方向伝搬時のYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図7】単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.05GHzで順方向伝搬時のYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図8】単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.05GHzで逆方向伝搬時のYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図9】単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.88GHzでのYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図10】単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が130mTの場合の反射特性を示すスペクトル図である。
【
図11】単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.06GHzでのYZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図12】単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が170mTの場合の反射特性を示すスペクトル図である。
【
図13】
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置における絶対利得及びビーム半値幅を示す表である。
【
図14】
図2の擬似進行波共振器を用いたアンテナ装置における絶対利得、ビーム半値幅及び比帯域を示す表である。
【
図15A】本発明の実施形態3に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【
図16】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの反射特性を示すスペクトル図である。
【
図17】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの反射特性を示すスペクトル図である。
【
図18】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの周波数5.83GHzにおけるXZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図19】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの周波数6.0GHzにおけるXZ面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図20】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの周波数5.83GHzにおけるXY面の放射パターンを示すパターン図である。
【
図21】
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの周波数6.0GHzにおけるXY面の放射パターンを示すパターン図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0019】
本実施形態では、非相反メタマテリアル伝送線路装置を導波領域で共振動作させ、水平方向に放射する高効率指向性アンテナを提案する。従来技術に係る漏れ波領域での動作では、ビーム角が水平方向を向かず、さらにビーム幅増大を招いていた。本実施形態では、非相反メタマテリアル線路装置を導波領域において共振動作させることで、擬似進行波共振器を構成し、水平面内で前方放射もしくは後方放射を実現することにより、従来よりも鋭いビーム幅をもつ高効率指向性アンテナを実現する。また、複数の非相反メタマテリアル伝送線路装置を放射状に並べた構造を採用することにより、低姿勢で水平方向に無指向で鋭いビームを出射するアンテナが構成可能となる。
【0020】
図1Aは本発明の実施形態1に係る非相反メタマテリアル伝送線路装置の構成を示す斜視図である。また、
図1Bは
図1Aの線路部分の拡大図である。ここで、非相反メタマテリアル伝送線路装置は、非相反移相右手/左手系複合伝送線路(以下、NCRLH線路という)を用いて構成される。
【0021】
図1A及び
図1Bにおいて、実施形態1に係るNCRLH線路30は、裏面に接地導体11を有する1対の誘電体基板13,14により挟設された垂直磁化フェライト角棒10上に、ストリップ導体12と接地導体11とにより構成されたマイクロストリップ線路に対して、直列枝の回路に直列キャパシタCs(ただし、線路両端では2Cs)を挿入し、並列枝の回路にインダクタをそれぞれ周期的に挿入することで複数の単位セル20を縦続接続してなる構造を有する。
図1のNCRLH線路30では、直列枝の直列キャパシタCsとして例えばチップコンデンサを挿入し、また並列枝のインダクタとして電磁波の伝搬方向に対して片側にのみ挿入された誘導性短絡スタブを採用している。ここで、各誘導性短絡スタブは、例えばストリップ導体16をビア導体17を介して接地してなる誘導性短絡スタブとして形成される。また、NCRLH線路30の一方の端部は誘電体基板13,14上のストリップ導体12P1を介してポートP1に接続され、NCRLH線路30の他方の端部は誘電体基板13,14上のストリップ導体12P2を介してポートP2に接続される。
【0022】
さらに、フェライト角棒10は線路直下の永久磁石40により垂直方向(誘電体基板13,14の面に対して垂直な方向であって、例えば下面から上面に向かう方向をいう。)に磁化される。
【0023】
なお、
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置をシミュレーションしたときの回路パラメータは以下の通りである。
―――――――――――――――――――――
直列キャパシタCs=0.6pF
ストリップ導体12の幅w=4.0mm
セル周期p=3.5mm
フェライト角棒10の誘電率ε
f=15
誘電体基板13,14の誘電率ε
d=2.6
スタブ長l
stub=0.2mm
スタブ幅w
stub=1.6mm
―――――――――――――――――――――
【0024】
以上の実施形態において、フェライト角棒10は線路直下に設けられた永久磁石40(
図1A)により垂直方向に磁化されているが、本発明はこれに限らず、フェライト角棒10を予め磁化してもよい。
【0025】
上記の非相反メタマテリアル伝送線路である梯子型NCRLH線路の構成は、例えば
図1Aに示すように、例えば単位セル20が少なくとも1つ以上から構成される梯子型伝送線路構成である。ここで、単位セル20の構成は、順方向と逆方向の伝搬定数が異なる非可逆位相推移現象を有する伝送線路部分を含み、直列枝の回路に容量性素子、並列枝の回路に誘導性素子が等価的に挿入された構成を有する(
図1A及び
図1B参照)。上記伝送線路構成として対象となる回路又は装置は、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、スロット線路、コプレーナ線路などマイクロ波、ミリ波、準ミリ波、テラヘルツ波において用いられるプリント基板回路、導波管、誘電体線路だけでなく、プラズモン、ポラリトン、マグノン等を含む導波モードあるいは減衰モードを支える構成全般、あるいはそれらの組み合わせ、さらに等価回路として記述可能な自由空間など全てが含まれる。
【0026】
上記非可逆位相推移現象を有する伝送線路は、上記に示す伝送線路構成のうち、特にジャイロ異方性を有する材料を部分的もしくは全体的に含み、かつ電磁波の伝搬方向に対して異なる磁化方向(より好ましくは、伝搬方向に対して直交する方向)で磁化されて、上記伝搬方向と上記磁化方向とにより形成される面に対して非対称性を有する構造の伝送線路より構成される。上記非可逆位相推移現象を有する伝送線路としては、上記伝送線路以外に、同等の非可逆位相推移機能を有する、波長に比べて充分小さな集中定数素子も対象とする。上記ジャイロ異方性を有する材料としては、自発磁化もしくは外部より印加した直流もしくは低周波の磁界により誘起された磁化あるいは自由電荷の周回運動により、材料の特性を表す誘電率テンソルもしくは透磁率テンソルあるいはその両方が、ジャイロ異方性を持つ状態として表される場合全てを含む。具体的に対象となる例としては、マイクロ波、ミリ波などで用いられるフェライトなどのフェリ磁性体、強磁性体材料、固体プラズマ(半導体材料など)及び液体、気体プラズマ媒質、さらに微細加工などにより構成された磁性人工媒質などが挙げられる。
【0027】
上記直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、電気回路でよく用いられるコンデンサ、マイクロ波、ミリ波回路などで用いられる分布定数型容量素子だけでなく、等価的には、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効透磁率が負の値を持つような回路又は回路素子であってもよい。負の実効透磁率を示す具体的な例としては、金属からなるスプリットリング共振器、スパイラル構成などの磁気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは磁気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはフェライト基板マイクロストリップ線路に沿って伝搬するエッジモードのように、負の実効透磁率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路全てを、等価回路として直列枝の回路が容量性素子として支配的に動作する線路として記述されることから用いることが可能である。さらに、上記直列枝の回路に挿入される容量性素子としては、上記以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分の素子又は回路が全体として容量性を示すものであってもよい。
【0028】
上記並列枝の回路に挿入される誘導性素子として、電気回路で用いられるコイルなどの集中定数型素子や、マイクロ波、ミリ波回路などで用いられる短絡スタブなどの分布定数型誘導性素子だけでなく、伝送線路中を伝搬する電磁波モードの実効誘電率が負の値を持つ回路又は素子を用いることができる。具体的には、金属細線、金属球などの電気的共振器を少なくとも1つ含む空間的配置、あるいは金属だけでなく電気的共振状態にある誘電体共振器の空間的配置、あるいはTEモードが遮断領域にある導波管、平行平板線路など、負の実効誘電率を持つ導波モードもしくは減衰モードで動作するマイクロ波回路全てを、等価回路として並列枝が誘導性素子として支配的に動作する伝送線路として記述されることから用いることができる。また、上記並列枝の回路に挿入される誘導性素子としては、上記以外に、容量性素子と誘導性素子の直列接続、並列接続あるいはそれらの組み合わせであってもよい。挿入されるべき部分が全体として誘導性を示す回路又は素子であってもよい。
【0029】
図2は本発明の実施形態2に係る擬似進行波共振器を用いたアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
図2及びそれ以降の図面において、マイクロストリップ線路の幅方向をX方向にとり、その長手方向をY方向にとり、マイクロストリップ線路の下面から上面に向かう垂直方向をZ方向にとる。
【0030】
図2の実施形態2において、擬似進行波共振器は共振条件を課すために、
図1A及び
図1Bに示したNCRLH線路30の両端を短絡している。なお、終端の短絡条件を満たすために、ポートP1の給電線側には動作周波数の1/4波長に相当する線路長のマイクロストリップ線路のストリップ導体21を反射素子として挿入し、ポートP2側のストリップ導体23をビア導体32を介して接地している。また、給電線路のストリップ導体22は、1/4波長の反射器に対して50Ωで整合の取れる、ストリップ導体21の位置に挿入されており、ストリップ導体22の端部はマイクロ波信号を入力又は出力するためのポートP3となる。
【0031】
図3は
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTのときの分散曲線を示すグラフである。また、
図4は
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTのときの分散曲線を示すグラフである。
図3のケースは、フェライト角棒10の実効磁化が130mTの場合の分散曲線であって、分散曲線の交点がエアライン上にある場合であり、実効屈折率の大きさが1の場合に相当し、漏れ波放射角がブロードサイドから90°傾いた場合の前方もしくは後方放射の場合に相当する。一方、
図4のケースは、実効磁化が170mTの場合の分散曲線を示している。実効磁化が130mTのときの分散曲線の交点はエアラインの内側の速波(漏れ波)領域で動作するのに対し、実効磁化が170mTのときの分散曲線の交点はエアラインの外側の導波(非放射)領域で動作する。
【0032】
図5は単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.83GHzで順方向伝搬時のYZ面の電波放射パターンを示すパターン図である。また、
図6は単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.83GHzで逆方向伝搬時のYZ面の電波放射パターンを示すパターン図である。
図5の順方向伝搬の場合、放射利得(以下、絶対利得で表す)の最大値はYZ面での放射のビーム角θ=90度で9.71dBiとなり、放射のビーム半値幅は37度となった。また、
図6の逆方向伝搬の場合、放射利得の最大値はYZ面でのビーム角θ=90度で8.70dBiとなり、ビーム半値幅は26度となった。
【0033】
図7は単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.05GHzで順方向伝搬時のYZ面の電波放射パターンを示すパターン図である。また、
図8は単位セル20の数が30である
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.05GHzで逆方向伝搬時のYZ面の電波放射パターンを示すパターン図である。
図7の順方向伝搬の場合、放射利得の最大値はYZ面でのビーム角θ=90度で7.23dBiとなり、ビーム半値幅は19.5度となった。また、
図8の逆方向伝搬の場合、放射利得の最大値はYZ面でのビーム角θ=90度で−0.75dBiとなり、ビーム半値幅は15度となった。
【0034】
図9は単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が130mTの場合に周波数5.88GHzでのYZ面の放射パターンを示すパターン図である。また、
図10は単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が130mTの場合の反射特性を示すスペクトル図であり、横軸は周波数で縦軸はSパラメータS11である。
図9の放射パターンでは、放射利得の最大値はYZ面でのビーム角θ=90度で12.66dBiとなり、ビーム半値幅は36度となった。
図10の擬似進行波共振器の反射特性では、0次共振周波数が5.88GHzに現れ、比帯域が0.78%となった。
【0035】
図11は単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が170mTの場合に周波数6.06GHzでのYZ面の放射パターンを示すパターン図である。また、
図12は単位セル20の数が30である非相反メタマテリアル伝送線路装置を用いた
図2のアンテナ装置において実効磁化が170mTの場合の反射特性を示すスペクトル図である。
図11の放射パターンでは。放射利得の最大値はYZ面でのビーム角θ=90度で9.42dBiとなり、ビーム半値幅は18度となった。
図12の反射特性では、0次共振周波数が6.06GHzに現れ、比帯域が0.69%となった。
【0036】
本発明者らによるシミュレーション結果のまとめを
図13及び
図14に示す。
図13は
図1A及び
図1Bの非相反メタマテリアル伝送線路装置における絶対利得及びビーム半値幅を示す表である。また、
図14は
図2の擬似進行波共振器を用いたアンテナ装置における絶対利得、ビーム半値幅及び比帯域を示す表である。
【0037】
以上説明したように本実施形態によれば、直列枝の回路に容量性素子を、並列枝の回路に誘導性素子を、それぞれ周期的に挿入したマイクロストリップ線路を、上記マイクロストリップ線路の伝搬方向とは異なる方向で磁化されて自発磁化を有するか又は外部磁界により磁化された構造を有する非相反メタマテリアル伝送線路装置を備えたアンテナ装置であって、上記マイクロストリップ線路が導波領域で動作するように上記各回路のパラメータが設定され、上記マイクロストリップ線路の両端にそれぞれ反射素子が接続され、共振状態で動作する。ここで、上記マイクロストリップ線路の片端に接続された給電線路をさらに備える。
【0038】
従って、本実施形態によれば、非相反メタマテリアル伝送線路装置からなる擬似進行波共振器アンテナ装置を導波領域で動作させることにより、漏れ波放射による線路上の伝搬信号の電磁界減衰効果を抑制し、従来技術に比較して高い放射効率で動作することができ、より一様な電磁界分布を得ることができ、鋭いビームを形成することが可能となる。
【0039】
図15Aは本発明の実施形態3に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。また、
図15Bは
図15AのNCRLH線路30の部分の拡大図である。実施形態3に係るアンテナ装置は、実施形態2に係る擬似進行波共振器を備えた水平方向無指向放射アンテナ装置を示す。
【0040】
図15A及び
図15Bにおいて、実施形態3に係るアンテナ装置は、装置中心の給電点にあるビア導体33(給電線路を介して給電回路に接続される)から放射状に、例えば10個のNCRLH線路30−1〜30−10を例えば36度毎の等角度で誘電体基板13上に配置してなる擬似進行波共振アンテナ装置である。ここで、各NCRLH線路30に対して共振条件を課すために各NCRLH線路30の両端に接地短絡のビア導体31,32を挿入している。また給電点は、50Ωの給電線路で接続されており、給電点から各NCRLH線路30のポートP2側の先端に挿入されたビア導体32までのマイクロストリップ線路の長さを調整することで50Ωの給電線路に対してインピーダンス整合が取られている。
【0041】
図16は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの反射特性を示すスペクトル図である。また、
図17は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの反射特性を示すスペクトル図である。
図16及び
図17の各共振点は
図3及び
図4で示した分散曲線の交点の周波数に一致している。
【0042】
図18は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの周波数5.83GHzにおけるXZ面の放射パターンを示すパターン図である。また、
図19は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの周波数6.0GHzにおけるXZ面の放射パターンを示すパターン図である。
図18から明らかなように、実効磁化が130mTの場合の放射利得は水平面に相当するXZ面でのビーム角θ=90度で4.29dBi、ビーム半値幅は40度となった。また、
図19から明らかなように、実効磁化が170mTの場合の放射利得はXZ面でのビーム角θ=90度で3.39dBi、ビーム半値幅は35度となった。
【0043】
図20は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が130mTであるときの周波数5.83GHzにおけるXY面の放射パターンを示すパターン図である。また、
図21は
図15A及び
図15Bのアンテナ装置において実効磁化が170mTであるときの周波数6.0GHzにおけるXY面の放射パターンを示すパターン図である。
図20から明らかなように、実効磁化が130mTの場合、水平方向に無指向に放射しており、平均水平方向放射利得は4.29dBiとなった。また、
図21から明らかなように、実効磁化が170mTの場合においても水平方向に無指向に放射しており、平均水平方向放射利得は3.39dBiとなった。
【0044】
以上説明したように、実施形態2に係るアンテナ装置を複数個放射状に配置することで、従来技術に比較して高い放射効率を有し、仰角方向に鋭いビーム幅をもたらし、水平方向に無指向性アンテナ装置を実現できる。
【0045】
以上の実施形態においては、10個のNCRLH線路30を備えているが、本発明はこれに限らず、例えば4個以上の複数のNCRLH線路30を放射状に配置することで無指向性アンテナ装置を構成してもよい。