(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数本の強化繊維糸が一方向に引き揃えられた強化繊維シートと、前記強化繊維シートの一方の表面に前記強化繊維糸の引き揃え方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸を含み、前記強化繊維シート及び前記補助繊維糸がステッチ糸で一体化されており、
前記補助繊維糸の長さが、該補助繊維糸の長さ方向の両端点を結んだ直線の長さの105〜120%の範囲であることを特徴とする繊維強化プラスチック用基材。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(繊維強化プラスチック用基材)
本発明の繊維強化プラスチック用基材は、複数本の強化繊維糸が一方向に引き揃えられた強化繊維シートと、前記強化繊維シートの一方の表面に前記強化繊維糸の引き揃え方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸を含み、前記強化繊維シート及び前記補助繊維糸はステッチ糸で一体化されている。
【0018】
前記繊維強化プラスチック用基材において、前記補助繊維糸の長さが、該補助繊維糸の長さ方向の両端点を結んだ直線の長さより長い。すなわち、前記補助繊維糸は、前記強化繊維シートの一方の表面に直線状に配置されているのではなく、蛇行するように配置されている。これにより、前記繊維強化プラスチック用基材を2層以上積層して立体形状にプレス成形した場合でも、皺の発生が抑制される。前記繊維強化プラスチック用基材において、補助繊維糸の長さが補助繊維糸の長さ方向の両端点を結んだ直線の長さの101〜150%の範囲であることが好ましく、105〜120%の範囲であることがより好ましい。前記補助繊維糸の長さが上記の範囲であると、前記繊維強化プラスチック用基材を2層以上積層して立体形状にプレス成形する場合に、金型の形状に追従する賦形性が良好になり皺の発生が抑制されるとともに、目開きが生じることも効果的に防止することができる。本発明において、補助繊維糸の長さは、補助繊維糸を弛まない程度に直線状に引っ張ったときに常温下で測定するものである。
【0019】
前記繊維強化プラスチック用基材において、隣接する補助繊維糸の間隔が5mm〜55mmであることが好ましく、10〜35mmであることがより好ましい。隣接する補助繊維糸の間隔は、
図1に示されているように、強化繊維シート上に配置されている第1の補助繊維糸の長さ方向の端点を結んだ直線と、強化繊維シート上に第1の補助繊維糸と隣接するように配置されている第2の補助繊維糸の長さ方向の端点を結んだ直線間の距離をいう。隣接する補助繊維糸の間隔が上述した範囲内であると、前記繊維強化プラスチック用基材を2層以上積層して立体形状にプレス成形する場合に、金型の形状に追随する賦形性が良好になり皺の発生が抑制されるとともに、目開きが生じることも効果的に防止することができる。
【0020】
前記強化繊維糸は、特に限定されず、無機系繊維糸であってもよく、有機系繊維糸であってもよい。
【0021】
無機系繊維糸としては、例えば、炭素繊維糸、ガラス繊維糸、ボロン繊維糸、鋼繊維糸等が挙げられる。無機系繊維糸は、マルチフィラメント糸が用いられる。マルチフィラメント糸であれば、プレス成形により補助繊維糸が伸びた状態になった場合でも、補助繊維糸が伸びた方向にマルチフィラメントが開繊される状態となるため、結果として目開きを効果的に防止することができる。無機系繊維糸の太さは用途及び求められる強度により適宜設定すればよく、特に限定されない。例えば、炭素繊維糸の場合であれば、200〜4,000texの範囲がよく、800〜4,000texの範囲がより好ましい。
【0022】
有機系繊維糸としては、特に限定されないが、例えば、高強度ポリエチレン繊維糸、アラミド繊維糸、ポリビニルアルコール繊維糸、ナイロン繊維糸、ポリエステル繊維糸、ポリアリレート繊維糸、PBO(ポリフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維糸等の合成繊維糸や、麻等の天然繊維糸等が使用可能である。有機系繊維糸は、無機系繊維糸の場合と同様にマルチフィラメント糸の合成繊維糸又は紡績糸の天然繊維糸が用いられる。有機系繊維糸の太さも、FRPの用途及び求められる強度により適宜設定されるものである。
【0023】
上述した無機系繊維糸及び有機系繊維糸は、一種で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。強化繊維糸は、機械的な物性に優れる観点から、炭素繊維糸やガラス繊維糸であることが好ましく、炭素繊維糸であることがより好ましい。炭素繊維糸としてマルチフィラメント糸を用いる場合、フィラメントの数は特に限定されないが、例えば、1〜60Kであることが好ましく、より好ましくは12〜60Kである。1Kは、1000本を意味する。また、炭素繊維糸としては、市販のトウの状態の炭素繊維糸をそのまま用いても良く、市販のトウの状態の炭素繊維糸を薄く広げて扁平にした開繊糸を用いても良い。
【0024】
前記強化繊維糸は一方向に引き揃えられて強化繊維シートを形成する。強化繊維糸の本数及び引き揃え方は、FRPの用途及び求められる強度により適宜設定すればよく、特に限定されない。一定の間隔を開けて引き揃えてもよく、密に引き揃えてもよい。FRPの強度を高める観点から、密に引き揃えることが好ましい。
【0025】
前記強化繊維シートの単位面積あたりの重量は、特に限定されない。例えば、前記強化繊維シートが炭素繊維糸で構成されている場合、強化繊維シートの単位面積あたりの重量は20〜500g/m
2であることが好ましく、50〜400g/m
2であることがより好ましい。
【0026】
多目的用途のために前記強化繊維シートの厚みを薄くする場合、炭素繊維フィラメント群の厚みは0.03〜0.22mmであることが好ましい。
【0027】
本発明において、補助繊維糸は、主に繊維強化プラスチック用基材の保形性に寄与するものであり、強化繊維糸より繊度が小さいものが用いられる。前記補助繊維糸は、マルチフィラメント糸であってもよく、モノフィラメント糸であってもよいが、使いやすさのため、マルチフィラメント糸であることが好ましい。前記補助繊維糸としては、後述する繊維強化プラスチック用多層基材の繊維強化プラスチック基材の間に配置されている接着樹脂を加熱して融解させる温度よりも高い融点を有する糸であることが望ましいことから、ガラス繊維糸、ナイロン繊維糸、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維糸を用いることが好ましく、ガラス繊維糸であることがより好ましい。補助繊維糸は、低融点成分と高融点成分を含む複合繊維糸であってもよい。低融点成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂等が挙げられ、高融点成分としては、例えば、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。補助繊維糸が低融点成分と高融点成分を含む複合繊維糸である場合、繊維強化プラスチック用多層基材の繊維強化プラスチック基材の間に接着樹脂を配置しなくても、低融点成分にて複数の繊維強化プラスチック基材を融着させることができる。保形性能及び立体成形時の賦形性に優れる観点から、前記補助繊維糸は、繊度が5〜70texであることが好ましく、より好ましくは15〜40texである。
【0028】
前記補助繊維糸は、前記強化繊維シートの一方の表面に前記強化繊維糸の引き揃え方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている。本発明において、補助繊維糸の配置方向とは、強化繊維シート上に配置されている補助繊維糸において、長さ方向の両端点を結んだ直線の配置方向をいう。強化繊維糸と補助繊維糸間の狭角が、0度より大きく、90度以下になるように積層する。強化繊維シート上に補助繊維糸を配置しやすく、繊維強化プラスチック用基材の保形性を高める観点から、強化繊維糸と補助繊維糸間の狭角は15〜85度であることが好ましく、より好ましくは20〜60度である。
【0029】
前記強化繊維シートと前記補助繊維糸はステッチ糸で縫い合わされて一体化されている。すなわち、前記強化繊維シート、前記補助繊維糸及びステッチ糸は連結されている。前記ステッチ糸としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維糸、ナイロン繊維糸、ガラス繊維糸、アラミド繊維糸、ポリプロピレン繊維糸、ポリフェニレンスルフィド繊維糸等を用いることができる。生産性、コスト等の観点から、ポリエステル繊維糸及び/又はナイロン繊維糸が好ましい。ステッチ糸の太さは、10〜150dtex程度が好ましく、作業性の観点から、20〜100dtexであることがより好ましい。縫い合わせ方は、公知の種々の方法を用いればよく、特に限定されない。ステッチ糸にて強化繊維シートと補助繊維糸を一体化(連結)することで、本発明の繊維強化プラスチック用基材が、持ち運び、運搬等により大きく型くずれ、変形、破壊されない。
【0030】
(繊維強化プラスチック用多層基材)
本発明の繊維強化プラスチック用多層基材は、前記繊維強化プラスチック用基材を2層以上含み、前記繊維強化プラスチック用基材が2層以上重ねて配置されている。
【0031】
前記繊維強化プラスチック用多層基材において、繊維強化プラスチック用多層基材の長手方向の角度を0度としたとき、各々の繊維強化プラスチック用基材における強化繊維糸の引き揃え方向間の角度は、0度、20〜90度、又は−20〜−90度の範囲であることが好ましい。強化繊維糸が多方向に配置されていることにより、FRPに疑似等方性を持たせることができ、多方向に補強することができる。隣接する繊維強化プラスチック用基材における強化繊維糸の引き揃え方向は、互いに異なければよく、特に限定されない。例えば、5層の繊維強化プラスチック用基材を含む繊維強化プラスチック用多層基材の場合は、繊維強化プラスチック用多層基材の長手方向と繊維強化プラスチック用基材における強化繊維糸の引き揃え方向間の角度は、各表面から裏面にかけて、+45度/−45度/0度/−45度/+45度であってもよい。
【0032】
前記繊維強化プラスチック用多層基材において、少なくとも1層の繊維強化プラスチック用基材のいずれかの面には接着性樹脂が配置されている。接着性樹脂の量は、繊維強化プラスチック用基材の表面積に対して5〜60g/m
2であることが好ましく、10〜50g/m
2であることがより好ましい。接着性樹脂は、加熱により溶解し、その後硬化することで2層以上の繊維強化プラスチック用基材を少なくとも部分的に接着させることで、成形後の取扱い時に生じやすい繊維強化プラスチック用基材間の大きなズレを抑制することができる。繊維強化プラスチック用基材は、互いに全面的に接着していてもよく、部分的に接着していてもよい。なお、補助繊維糸が低融点成分と高融点成分を含む複合繊維糸である場合は、接着性樹脂を用いなくてもよい。加熱により低融点成分を溶融させて2層以上の繊維強化プラスチック用基材を少なくとも部分的に接着させることができる。
【0033】
前記接着性樹脂としては、熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を適宜選択して用いることができる。熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、ビスマレイミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、フェノキシなどが挙げられる。中でも、成形で使用するマトリックス樹脂としてエポキシ樹脂が多く使用されることから、親和性の観点よりエポキシ樹脂が好ましく、さらに使いやすさの観点から、常温では固体で、加熱により溶解する粉体及び/又はフィルム状の接着剤が好ましい。
【0034】
(繊維強化プラスチック用プリフォーム)
繊維強化プラスチック用プリフォームは、前記繊維強化プラスチック用多層基材で構成され、立体形状を有する。前記繊維強化プラスチック用多層基材は、強化繊維シートと補助繊維糸を含み、強化繊維シート及び補助繊維糸がステッチ糸で一体化されており、前記補助繊維糸の長さが、該補助繊維糸の長さ方向の両端点を結んだ直線の長さより長い繊維強化プラスチック用基材で構成されていることにより、曲面を有する立体形状の場合も、表面に皺が発生しない。また、2層以上の繊維強化プラスチック用基材が接着性樹脂で接着されていることで、賦形性が良好であり、曲面を有する立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォームでも、表面に皺が発生しない。
【0035】
前記繊維強化プラスチック用基材、繊維強化プラスチック用多層基材及び繊維強化プラスチック用プリフォームはマトリックス樹脂を含浸させてFRPとして用いることができる。また、立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォームは、マトリックス樹脂を含浸させて、自動車の一次構造材、航空機の構造部材などに用いることができる。
【0036】
前記繊維強化プラスチック用プリフォームは、例えば、前記繊維強化プラスチック用多層基材を加熱して前記接着性樹脂を溶解させた後、所定の立体形状にプレス成形することで製造することができる。或いは、前記の繊維強化プラスチック用基材を2層以上積層するとともに、少なくとも1層の繊維強化プラスチック用基材のいずれかの面に接着性樹脂を配置して繊維強化プラスチック用多層基材とし、前記繊維強化プラスチック用多層基材を加熱して前記接着樹脂を溶解させた後、所定の立体形状にプレス成形することで製造することができる。例えば、加熱条件として温度100〜180℃下で、20〜120秒間行うことができる。加熱装置としては、繊維基材を加熱することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、ヒーターなどを用いることができる。プレス成形の条件として、例えば、温度5〜40℃、圧力0.1〜10MPa、時間5〜60秒とすることができる。プレス成形装置は、特に限定されず、繊維基材をプレス成形することができる装置を適宜に用いることができる。所定の立体形状を有する金型を用いることで、目的の立体形状を有する繊維強化プラスチック用プリフォームを得ることができる。プレス成形は、真空成形及び/又は減圧成形で行うことができる。
【0037】
以下、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の繊維強化プラスチック用基材の模式的平面図である。該実施形態の繊維強化プラスチック用基材1は、複数本の強化繊維糸2aが一方向に引き揃えられた強化繊維シート2と、強化繊維シート2の一方の表面に強化繊維糸の引き揃え方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸3を含み、強化繊維シート2及び補助繊維糸3がステッチ糸4で一体化(連結)されている。補助繊維糸3は、強化繊維シート2の一方の表面に蛇行するように配置されており、補助繊維糸3の長さLfが、補助繊維糸3の長さ方向の両端点を結んだ直線Sの長さLsより長い。補助繊維糸3の長さLfが補助繊維糸3の長さ方向の両端点を結んだ直線Sの長さLsの101〜150%の範囲であることが好ましく、105〜120%の範囲であることがより好ましい。隣接する補助繊維糸3の間隔αは、5mm〜55mmであることが好ましく、10〜35mmであることがより好ましい。該実施形態の繊維強化プラスチック用基材1において、複数本の強化繊維糸2aは密に引き揃えられているが、
図1において、説明の便宜上、太い線で各強化繊維糸2aを区分けしている。以下の図面においても、説明の便宜上、各強化繊維糸を太い線で区分けしているが、複数本の強化繊維糸は密に引き揃えられている。
図1において、矢印aは繊維強化プラスチック用基材の長手方向を意味し、矢印bは繊維強化プラスチック用基材の幅方向を意味する。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態の繊維強化プラスチック用多層基材における各繊維強化プラスチック用基材の積層順番及び構成を示す模式的平面図である。該実施形態の繊維強化プラスチック用多層基材10は、繊維強化プラスチック用基材11、繊維強化プラスチック用基材21、繊維強化プラスチック用基材31、及び繊維強化プラスチック用基材41の4層の繊維強化プラスチック用プラスチック基材を重ねて配置した積層体である。
【0039】
繊維強化プラスチック用基材11は、複数本の強化繊維糸12aが一方向に引き揃えられた強化繊維シート12と、強化繊維シート12の一方の表面に強化繊維糸12aの引き揃え方向とほぼ直交する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸13を含み、強化繊維シート12及び補助繊維糸13がステッチ糸14で一体化されている。
【0040】
繊維強化プラスチック用基材21は、複数本の強化繊維糸22aが一方向に引き揃えられた強化繊維シート22と、強化繊維シート22の一方の表面に強化繊維糸22aの引き揃え方向とほぼ直交する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸23を含み、強化繊維シート22及び補助繊維糸23がステッチ糸24で一体化されている。
【0041】
繊維強化プラスチック用基材31は、複数本の強化繊維糸32aが一方向に引き揃えられた強化繊維シート32と、強化繊維シート32の一方の表面に強化繊維糸32aの引き揃え方向とほぼ直交する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸33を含み、強化繊維シート32及び補助繊維糸33がステッチ糸34で一体化されている。
【0042】
繊維強化プラスチック用基材41は、複数本の強化繊維糸42aが一方向に引き揃えられた強化繊維シート42と、強化繊維シート42の一方の表面に強化繊維糸42aの引き揃え方向と交差する方向に所定の間隔で配置されている複数本の補助繊維糸43を含み、強化繊維シート42及び補助繊維糸43がステッチ糸44で一体化されている。
【0043】
繊維強化プラスチック用多層基材10の長手方向(矢印aで示されている)の角度を0度としたとき、繊維強化プラスチック用基材11の強化繊維糸12aの引き揃え方向の角度は−30度であり、繊維強化プラスチック用基材21の強化繊維糸22aの引き揃え方向の角度は30度であり、繊維強化プラスチック用基材31の強化繊維糸32aの引き揃え方向の角度は−30度であり、繊維強化プラスチック用基材41の強化繊維糸42aの引き揃え方向の角度は30度である。
図3において、矢印bは繊維強化プラスチック用多層基材10の幅方向を意味する。図示は無いが、繊維強化プラスチック用基材41、繊維強化プラスチック用基材31、及び繊維強化プラスチック用基材21の補助繊維糸が配置されている表面に接着性樹脂が配置されている。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態の繊維強化プラスチック用プリフォームの模式的平面図であり、
図5は同斜視図である。該実施形態の繊維強化プラスチック用プリフォーム100は、
図3に示されている繊維強化プラスチック用多層基材に立体形状を付与したものである。
図3に示されている繊維強化プラスチック用多層基材10をプレス成形することで、
図4及び
図5に示されている繊維強化プラスチック用プリフォーム100が得られる。
【0045】
図6は、立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォームを製造する製造工程を示す模式的説明図である。図示はないが、繊維強化プラスチック用基材41、繊維強化プラスチック用基材31、及び繊維強化プラスチック用基材21の補助繊維糸が配置されている表面に接着性樹脂が配置した後、
図6Aに示しているように、繊維強化プラスチック用基材41、繊維強化プラスチック用基材31、繊維強化プラスチック用基材21及び繊維強化プラスチック用基材11をこの順番に積層し、
図6Bに示しているように繊維強化プラスチック用多層基材10を得る。各繊維強化プラスチック用基材は、補助繊維糸が配置された面と補助繊維糸が配置されていない面が近接するように、積層されている。次に、
図6Cに示しているように、繊維強化プラスチック用多層基材10をプレス成形装置50に供給され、プレス成形装置50の下金型51上に配置する。次に、
図6Dに示しているように、ヒーター60をプレス成形装置50の中に配置し、ヒーター60にて繊維強化プラスチック用多層基材10を例えば、温度100〜180℃下で、20〜120秒間加熱し、接着性樹脂を溶解させた後、ヒーター60を引き抜く。次いで、
図6Eに示されているように、下金型51と上金型52にて挟んで、温度5〜40℃、圧力0.1〜10MPaの条件下、5〜60秒間プレス成形することで、所定の立体形状に賦形成形され、立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム100が得られる。
【実施例】
【0046】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
<繊維プラスチック用基材の作製>
強化繊維糸として、炭素繊維糸(三菱レイヨン社製、マルチフィラメント、12K)を用いた。補助繊維糸として、ガラス繊維糸(日東紡社製、マルチフィラメント、フィラメント本数200本、繊度33.7tex)を用いた。
図2に示されているように、まず、強化繊維糸12aを一方向に密に引き揃えて強化繊維シート12(目付444g/m
2)を得た。次に、補助繊維糸13を強化繊維シート12の一方の表面に強化繊維糸12aの引き揃え方向とほぼ直交するように配置した。補助繊維糸13の長さLfは、補助繊維糸13の長さ方向の端点を結んだ直線Sの長さLsの110%であった。隣接する補助繊維糸13の間隔αは、2.5cmであった。次に、ステッチ糸14(PET繊維糸、マルチフィラメント、84dtex)によって、強化繊維シート12と補助繊維糸13を縫い合わせて(トリコット縫い)一体化して繊維強化プラスチック用基材11を得た。
【0048】
<繊維強化プラスチック用プリフォーム>
まず、一部の繊維強化プラスチック用基材11の補助繊維糸13が配置されている表面に、20g/m
2になる量の接着性樹脂(エポキシ系樹脂、モメンティブ社製、品名「Epikote 05390」)を配置した。次に、接着性樹脂が配置されている繊維強化プラスチック用基材11を繊維強化プラスチック用基材41、31、21として用い、
図6A及び
図6Bに示されているように、繊維強化プラスチック用基材41、31、21及び11をこの順番で繊維強化プラスチック用基材の間に接着性樹脂(図示無し)が配置されるように積層し、繊維強化プラスチック用多層基材10を得た。
図3に示されているように、繊維強化プラスチック用多層基材10の長手方向(矢印aで示されている)の角度を0度としたとき、繊維強化プラスチック用基材11の強化繊維糸12aの引き揃え方向の角度は−30度、繊維強化プラスチック用基材21の強化繊維糸22aの引き揃え方向の角度は30度、繊維強化プラスチック用基材31の強化繊維糸32aの引き揃え方向の角度は−30度、繊維強化プラスチック用基材41の強化繊維糸42aの引き揃え方向の角度は30度になるように配置した。次に、
図6Cに示しているように、繊維強化プラスチック用多層基材10をプレス成形装置50に供給され、プレス成形装置50の下金型51上に配置した。次に、
図6Dに示しているように、ヒーター60をプレス成形装置50の中に配置し、ヒーター60にて繊維強化プラスチック用多層基材10を150℃で40秒間加熱し、接着性樹脂を溶解させた。次いで、
図6Eに示されているように、加熱された繊維強化プラスチック多層基材10を下金型51と上金型52にて挟んで、温度25℃、圧力1MPaの条件下、10秒間プレス成形した。
図7は下金型51の模式的斜視図であり、
図8は上金型52の模式的斜視図である。プレス形成により、繊維強化プラスチック用多層基材10における繊維強化プラスチック用基材11、21、31及び41が接合するとともに、立体形状に賦形され、立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム100が得られた。
【0049】
図4及び
図5に、それぞれ、実施例1で得られた立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム100の模式的平面図及び斜視図を示した。また、
図11及び
図12に、それぞれ、実施例1で得られた立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム100のデジタルカメラによる平面図及び斜視図を示した。
【0050】
(比較例1)
強化繊維糸として炭素繊維糸(三菱レイヨン社製、マルチフィラメント、12K)を用いた。強化繊維糸を一方向に密に引き揃えて第1の繊維シート(目付444g/m
2)とし、第1の繊維シートの一方の表面に、第1の繊維シートの強化繊維糸の引き揃え方向とほぼ直交するように、強化繊維糸を一方向に密に引き揃えて配置して第2の繊維シートを構成した。第1の繊維シートと第2の繊維シートをステッチ糸(PET繊維糸、マルチフィラメント、84dtex)にて縫い合わせて(トリコット縫い)一体化して繊維強化プラスチック用基材を得た。得られた繊維強化プラスチック用基材の第2の繊維シートの表面に20g/m
2の量の接着性樹脂(エポキシ系樹脂、モメンティブ社製、品名「Epikote 05390」)を配置した。接着性樹脂を含む繊維強化プラスチック用基材と、接着性樹脂を含まない繊維強化プラスチック用基材を、繊維強化プラスチック用基材の間に接着性樹脂が配置されるように積層して積層体を得た。繊維強化プラスチック用多層基材10に代えて該積層体を用いた以外は、実施例1と同様にして立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム200を作製した。繊維強化プラスチック用プリフォーム200において、積層順番は、表面から裏面にかけて第2の繊維シート、第1の繊維シート、第2の繊維シート、第1の繊維シートであった。積層体の長手方向の角度を0度としたとき、表面から裏面にかけて、第2の繊維シート、第1の繊維シート、第2の繊維シート及び第1の繊維シートにおける強化繊維糸の角度は、それぞれ、−30度、30度、−30度、30度であった。
【0051】
図9及び
図10に、それぞれ、比較例1で得られた立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム200の模式的平面図及び斜視図を示した。また、
図13及び
図14に、それぞれ、比較例1で得られた立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォーム200のデジタルカメラによる平面図及び斜視図を示した。
【0052】
図4、
図5、
図11及び
図12から分かるように、実施例1の立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォームは、いずれの曲面においても皺が発生せず、優れた表面性を有していた。一方、
図9、
図10、
図13及び
図14から分かるように、比較例1の立体形状の繊維強化プラスチック用プリフォームは、図面からみて一番手前の角に皺が発生しており、製品として適切ではなかった。