(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態の遊技機100の斜視図であり、扉が開放された状態を示している。なお、以下の説明において、遊技機100に正対した遊技者から見て左側を左方向とし、遊技機100に正対した遊技者から見て右側を右方向とし、遊技機100に正対した遊技者から見て上側を上方向とし、遊技機100に正対した遊技者から見て下側を下方向とし、遊技機100に対して遊技者側を前方向とし、遊技機100に対して遊技者とは反対側を後方向として説明する。
【0014】
図1に示すように、遊技機100は、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成される外枠102と、この外枠102にヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた中枠104と、この中枠104に、ヒンジ機構によって開閉自在に取り付けられた前枠106と、を備えている。
【0015】
中枠104は、外枠102と同様に、略矩形状に組まれた四辺によって囲繞空間が形成されており、この囲繞空間に遊技盤108が保持されている。また、前枠106には、ガラス製または樹脂製の透過板110が保持されている。そして、これら中枠104および前枠106を外枠102に対して閉じると、遊技盤108と透過板110とが所定の間隔を維持して略平行に対面するとともに、遊技機100の正面側から、透過板110を介して遊技盤108が視認可能となる。
【0016】
前枠106の下部には、遊技機100の前面側に突出する不図示の操作ハンドルが設けられている。この操作ハンドルは、遊技者が回転操作可能に設けられており、遊技者が操作ハンドルを回転させて発射操作を行うと、当該操作ハンドルの回転角度に応じた強度で、不図示の発射機構によって遊技球が発射される。
【0017】
図2は、遊技盤108の正面図である。
図2に示すように、遊技盤108には、左側にレール114a、114bが設けられており、発射機構によって発射された遊技球は、レール114a、114b間を上昇して遊技領域116に導かれることとなる。
【0018】
遊技領域116は、遊技盤108と透過板110(
図1参照)との間隔に形成される空間であって、遊技球が流下または転動可能な領域である。遊技盤108には、多数の釘や風車が設けられており、遊技領域116に導かれた遊技球が釘や風車に衝突して、不規則な方向に流下、転動するようにしている。
【0019】
遊技領域116は、発射機構の発射強度に応じて遊技球の進入度合いを互いに異にする第1遊技領域116aおよび第2遊技領域116bを備えている。第1遊技領域116aは、遊技領域116の左側に位置し、第2遊技領域116bは、遊技領域116の右側に位置している。レール114a、114bが遊技領域116の左側にあることから、発射機構によって所定の強度未満の発射強度で発射された遊技球は第1遊技領域116aに進入し、所定の強度以上の発射強度で発射された遊技球は第2遊技領域116bに進入することとなる。
【0020】
また、遊技領域116には、遊技球が入球可能な一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122が設けられており、これら一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122に遊技球が入球すると、それぞれ所定の賞球が遊技者に払い出される。なお、賞球数は1個以上であれば何個でもよく、また、一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122のそれぞれで払い出す賞球数を異ならせてもよいし、同じ賞球数に設定してもよい。このとき、第1始動口120に遊技球が入球して払い出す賞球数を、第2始動口122に遊技球が入球して払い出す賞球数よりも少なく設定することも可能である。
【0021】
なお、第1始動口120内には第1始動領域が設けられ、また、第2始動口122内には第2始動領域が設けられている。そして、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球して第1始動領域または第2始動領域に遊技球が進入すると、予め設けられた複数の特別図柄の中からいずれか1の特別図柄を決定するための抽選が行われる。各特別図柄には、遊技者にとって有利な大役遊技の実行可否や、以後の遊技状態をどのような遊技状態にするかといった種々の遊技利益が対応付けられている。したがって、遊技者は、第1始動口120または第2始動口122に遊技球が入球すると、所定の賞球を獲得するのと同時に、種々の遊技利益を受ける権利獲得の機会を獲得することとなる。
【0022】
第1始動口120は、遊技領域116の下部であって、第1遊技領域116aを流下する遊技球のみが入球可能であるか、もしくは、第1遊技領域116aに進入した遊技球の方が、第2遊技領域116bに進入した遊技球よりも進入しやすい位置に配置されている。
【0023】
また、第2始動口122は、第2遊技領域116bに位置しており、第2遊技領域116bを流下する遊技球のみが入球可能であるか、もしくは、第2遊技領域116bに進入した遊技球の方が、第1遊技領域116aに進入した遊技球よりも進入しやすい位置に配置されている。この第2始動口122は、可動片122bを有する始動可変入賞装置によって構成されており、第2始動口122への遊技球の進入容易性が可変するようになっている。具体的には、第2始動口122は、可動片122bが開閉可能に設けられており、この可動片122bが閉状態にあるときには、第2始動口122への遊技球の進入が不可能もしくは困難となっている。これに対して、第2遊技領域116bに設けられたゲート124を遊技球が通過すると、普通図柄の抽選が行われ、この抽選によって当たりに当選すると、可動片122bが所定時間、開状態に制御される。このように、可動片122bが開状態になると、当該可動片122bが遊技球を第2始動口122に導く受け皿として機能し、第2始動口122への遊技球の入球が容易となる。
【0024】
さらに、第2遊技領域116bには、第2遊技領域116bを流下する遊技球のみが入球可能であるか、もしくは、第2遊技領域116bに進入した遊技球の方が、第1遊技領域116aに進入した遊技球よりも進入しやすい位置に大入賞口126が設けられている。大入賞口126には、開閉扉126bが開閉可能に設けられており、通常、開閉扉126bが大入賞口126を閉鎖して、大入賞口126への遊技球の入球が不可能となっている。これに対して、前述の大役遊技が実行されると、開閉扉126bが開放されて、大入賞口126への遊技球の入球が可能となる。そして、大入賞口126に遊技球が入球すると、所定の賞球が遊技者に払い出される。
【0025】
なお、遊技領域116の最下部には、一般入賞口118、第1始動口120、第2始動口122、大入賞口126のいずれにも入球しなかった遊技球を、遊技領域116から遊技盤108の背面側に排出する排出口128が設けられている。
【0026】
また、遊技盤108の略中央部分には、開口108aが設けられており、遊技機100では、その開口108aから視認可能に演出表示装置が配置されるとともに、演出表示装置よりも前面に、通常、遊技盤108の背面側に退避しているが、遊技の進行中などに、演出表示装置の前面まで可動して、遊技者に大当たりの期待感を付与する演出役物装置が配置される。
【0027】
ここで、上記したように、第2遊技領域116bに進入する遊技球は、発射機構によって所定の強度以上の発射強度で発射されているため、その速度が第1遊技領域116aに進入する遊技球の速度よりも速い。
【0028】
そして、第2遊技領域116bに進入した遊技球が、発射された速度を維持したまま第2遊技領域116bを流下してしまうと、第2遊技領域116bに設けられた釘や風車に衝突した際に、設定時に意図していなかった方向に流下、転動してしまうことになるおそれがある。
【0029】
そこで、遊技盤108には、第2遊技領域116bに進入した遊技球が始めのうちに通過する右上側に減速装置130が設けられており、第2遊技領域116bに進入した遊技球を減速させ、第2遊技領域116bに設けられた釘や風車に衝突した際に、設定時に意図していなかった方向に流下、転動してしまうことを防止している。
【0030】
図3は、減速装置130の分解斜視図である。
図4は、減速装置130の正面図である。
図5は、
図4におけるV−V断面図である。なお、
図4において、第2減速部材136を2点鎖線で示す。
【0031】
図3〜
図5に示すように、減速装置130は、右上部材132、第1減速部材134、第2減速部材136および衝撃吸収部材138を含んで構成され、遊技盤108の前面108b上に配置されている。
【0032】
右上部材132は、樹脂でなり、右下側に向かって湾曲したレールガイド面132a、および、レールガイド面132aの右端において略上下方向に延在する遊技球衝突面132bが形成されている。レールガイド面132aには、レール114bが当接される。
【0033】
第1減速部材134は、樹脂でなり、レール114bと一定間隔を維持するように延在するレール面134a、および、衝撃吸収部材138が嵌めこまれる衝撃吸収部材溝134bが形成されている。
【0034】
発射機構によって所定の強度以上の発射強度で発射された遊技球は、レール114bおよびレール面134a間を通って第2遊技領域116bに導かれた後、右上部材132の遊技球衝突面132bに衝突し、その後、衝撃吸収部材138によって下方に導かれる。
【0035】
また、第1減速部材134は、衝撃吸収部材138によって下方に導かれた遊技球が流下するとともに、詳しくは後述する第2減速部材136の突起部136bが挿入される案内通路部140、および、案内通路部140よりも後方側であって、遊技盤108に設けられた貫通孔108cに収容されるように突出した窪部150が形成されている。
【0036】
図6は、第1減速部材134の構成を説明する図である。
図6に示すように、第1減速部材134は、当接面134cが遊技盤108の前面108bに当接するように配置される。
【0037】
案内通路部140は、詳しくは後述する第2減速部材136の突起部136bが挿入可能であり、上方から導かれた遊技球を左側に導くように左下方向に向かって湾曲した左方湾曲面142、左方湾曲面142によって導かれた遊技球を下方に導く左面部144が形成されている。また、案内通路部140は、第2減速部材136の突起部136bが当接するとともに、遊技球を右下方向に導くように左側から右側に向かって段違いに下方に傾斜した下面部146、および、下面部146に対して所定間隔だけ離隔する上面部148が形成されている。
【0038】
窪部150は、案内通路部140に形成された空間と連通し、当接面134cよりも後方側に窪むように形成されている。
【0039】
窪部150は、全体的に左側から右側に向かうに連れて下方に傾いており、また、後方側の面が、左側から右側にかけて、後方に湾曲した後、前方に湾曲するアーチ状に形成されている。
【0040】
ここで、窪部150は、上記したように、遊技盤108の貫通孔108cに収容されることになるが、
図5に示すように、窪部150の高さ(厚さ)が遊技盤108の厚さよりも低く(薄く)形成されているため、遊技盤108の背面より窪部150が突出することはない。
【0041】
図7は、第2減速部材136の構成を説明する図である。第2減速部材136は、遊技球が視認可能なように透明または半透明な透過性の樹脂でなり、第1減速部材134に当接する平面状の平面部136aに対して、後方側に突出した突起部136bが形成されている。
【0042】
そして、第2減速部材136が第1減速部材134に固定された際に、第2減速部材136の突起部136bは、第1減速部材134の案内通路部140内に挿入され、窪部150に対向するように配置される。
【0043】
突起部136bは、左側に、前方から後方に向かうに連れて下方に傾斜した下方傾斜部136cを有するとともに、右側に、左方から右方に向かうに連れて前方に傾斜した右方傾斜部136dが形成されている。
【0044】
図8および
図9は、減速装置130を流下する遊技球を説明する図である。
図8において、第2減速部材136を2点鎖線で示す。また、
図9において、
図9(b)は
図9(a)のA−A断面図であり、
図9(c)は
図9(a)のB−B断面図であり、
図9(d)は
図9(a)のC−C断面図である。なお、
図8および
図9において、右上部材132は、説明の便宜上、省略している。
【0045】
上記したように、第2遊技領域116bに導かれる遊技球は、レール114bおよびレール面134a間を通った後、右上部材132の遊技球衝突面132bに衝突し、その後、衝撃吸収部材138によって下方に導かれる。
【0046】
その後、遊技球は、案内通路部140に形成された空間内において、左方湾曲面142によって左側に導かれた後、左面部144に沿って下方に導かれる。そして、第2減速部材136の下方傾斜部136cに沿って、遊技盤108の前面108bよりも後方に導かれた後、窪部150内に導かれる。
【0047】
そして、窪部150に導かれた遊技球は、第1減速部材134の窪部150と、第2減速部材136の突起部136bの間で、右下方に流下する。その後、遊技球は、窪部150の右側の形状に沿って前方に導かれた後、第2減速部材136の右方傾斜部136dに沿って右方に導かれ、その後、自重により下方に流下する。
【0048】
このように、減速装置130に形成された通路に沿って流下する遊技球は、遊技盤108の前面108bよりも後方側に一旦移動した後、再び前面108bに戻されることで、勢いが弱くなり減速することになる。
【0049】
以上のように、減速装置130では、遊技球を、遊技盤108の前面108bよりも後方側に移動させた後、再び、遊技盤108の前面108bに移動させるために、第1減速部材134の窪部150が遊技盤108の貫通孔108c内に収容される。そして、窪部150の高さ(厚さ)が遊技盤108の厚さよりも低い(薄い)ため、遊技盤108の背面よりも後方側に突出することがない。
【0050】
これにより、遊技機100では、遊技球が流下する通路を形成するための部材(遊技盤108、減速装置130)全体を薄型化することができる。特に、近年の遊技機100では、役物可動装置が多様化、大型化してきており、役物可動装置の配置に工夫を凝らしているが、窪部150が遊技盤108の背面よりも後方側に突出しない遊技機100では、窪部150が役物可動装置に干渉することがないため、窪部150の後方側に役物可動装置を配置することが可能であるとともに、設計の自由度を上げることができる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0052】
例えば、上述した実施形態において、減速装置130では、第1減速部材134および第2減速部材136が別体として構成されていたが、これに限らず、第1減速部材134および第2減速部材136が一体形成されていてもよい。ただし、第1減速部材134および第2減速部材136を一体形成する場合には、3Dプリンタ等を用いる必要があり、製造コストが高くなるとともに、製造時間が長くなってしまうため、プレス加工等によって第1減速部材134および第2減速部材136を別体で製造する方が、製造コストを低くすることができるとともに、製造時間を短くすることができる。
【0053】
また、上記実施形態では、減速装置130が第2遊技領域116bに設けられるようにしたが、第1遊技領域116aに設けられていてもよい。
【0054】
また、第1減速部材134および第2減速部材136の形状は一例であり、他の形状であってもよい。この場合、第2減速部材136の窪部150は、遊技盤108の背面よりも後方側に突出しないようにすればよい。