特許第6650409号(P6650409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650409
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】電流検出用抵抗器
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   G01R15/00 500
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-555268(P2016-555268)
(86)(22)【出願日】2015年10月22日
(86)【国際出願番号】JP2015079760
(87)【国際公開番号】WO2016063928
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-215255(P2014-215255)
(32)【優先日】2014年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】知久 里志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 孝典
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0174522(US,A1)
【文献】 特開2008−082957(JP,A)
【文献】 特開2009−135286(JP,A)
【文献】 特開2011−018759(JP,A)
【文献】 特開2014−078538(JP,A)
【文献】 特開2008−039571(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/015219(WO,A1)
【文献】 特開2007−27383(JP,A)
【文献】 特開2006−5327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
H01C 1/00−17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板状の抵抗体と、前記抵抗体に固定した一対の金属板状の電極と、を備えた電流検出用抵抗器であって、
前記抵抗体と前記電極との上面全面を覆う金属皮膜を備え、
前記抵抗体の一側面が前記金属皮膜から露出している、電流検出用抵抗器。
【請求項2】
前記抵抗体は、
前記電流検出用抵抗器の側部から前記抵抗体を突出させた突出部を備えた請求項に記載の電流検出用抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電流の検出用にミリオーム程度の極めて抵抗値が小さいチップ抵抗器を用いることは良く知られている。チップ抵抗器は、例えば、貴金属合金あるいは金属合金から作製される抵抗体および高伝導性の電極および溶融はんだ材から構成されている。
【0003】
下記特許文献1には、電流検出用抵抗器の実装構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−233706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、特許文献1に記載の電流検出装置(電流検出用抵抗器)の一例であるシャント抵抗器の実装構造の一例を示す側面図である。
【0006】
シャント抵抗器100を搭載するためのアルミ等の金属基板102には、金属基板102に形成され抵抗器100に電流を流すための配線パターン103a、103bと、配線パターン103a、103b間に設けられた抵抗体101と、抵抗体101と配線パターン103a、103bとを接続するはんだ層105a、105bとを有している。また、基板102に形成されシャント抵抗器100の両端に生じる電圧を検出する一対の電圧検出配線107a、107bを備える。シャント抵抗器100は、Cu−Mn系、Ni−Cr系などの金属材料を抵抗体とするものが一例としてあげられる。
【0007】
電圧検出配線107a、107bと、シャント抵抗器100の両端の電圧検出位置とが、ボンディングワイヤー109a、109bにより接続される。
【0008】
シャント抵抗器100には検出電流Iが流れ、検出電流Iにシャント抵抗器100の抵抗値Rを乗じた電圧Vが電圧検出配線107a、107bから図示しない電圧検出回路に取り出される。
【0009】
ところで、近年、部品の小型化の進展と、大電流化により、製品部における電流密度が増加している。電流密度の増加により、はんだによる接合部分にエレクトロマイグレーションが発生するという問題が注目されている。特に高温であり電流密度の高い個所ではエレクトロマイグレーションの発生の可能性が高い。
【0010】
図13の構造では、特に、○印部分111に電流が集中することになる。この状態で長期間使用を継続すると、○印部分111のはんだ層105a、105bがエレクトロマイグレーションにより消失する可能性がある。その結果として、抵抗体のL寸法が長くなるため、電圧検出端子であるボンディングワイヤー109a、109b間の電位差が大きくなる。つまり、抵抗値が高い方へドリフトすることになる。
【0011】
このため、例えば10年などの長期間の使用においては、電流検出装置(電流検出用抵抗器)の電流検出精度を良好に保つことが難しくなるという問題があった。
【0012】
図14は、抵抗体201と電極205a、205bとが垂直方向に接続するいわゆる突合せ構造の抵抗器の一構成例を示す側面図である。符号203a,203bは配線パターンである。符号206a,206bは、はんだ層である。符号209a,209bはボンディングワイヤーである。このような突合せ構造の抵抗器においても、図9のようにボンディングした場合、Cu電極のTCR(符号221で示す範囲)の影響によって、検出精度が下がる可能性がある。
【0013】
本発明の第1の課題は電流検出装置における電流検出精度を長期間にわたって良好に保つことを目的とする。また、本発明の第2の課題は、このような電流検出装置に用いられる高精度な抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一観点によれば、一対の電極と抵抗体とから構成される電流検出用抵抗器と、前記電流検出用抵抗器が実装される一対のランドと、前記電極と前記ランドとの接続部と、前記電極に接続され、電圧を検出するための一対のワイヤと、を有し、前記ワイヤと前記電極との接続位置を、前記接続部の内側端部よりもさらに内側の領域とした電流検出装置が提供される。
【0015】
前記一対の電極と前記抵抗体とは、端部同士を突き合わされていても良い。
【0016】
前記電極は、前記抵抗体との接続側と、前記ランドとの接続側とで、段差を有するようにしても良い。
【0017】
前記電極の少なくとも一方は、その厚みが抵抗体よりも厚く、抵抗体表面と段差を有する突出面を備え、前記ワイヤは突出面に接続されるようにしても良い。
【0018】
また、本発明は、抵抗体と、前記抵抗体に固定した一対の電極と、を備えた電流検出用抵抗器であって、前記抵抗器の側部から前記抵抗体を突出させた突出部を備えた電流検出用抵抗器である。
【0019】
また、本発明は、抵抗体と、前記抵抗体に固定した一対の電極と、を備えた電流検出用抵抗器であって、前記抵抗体と前記電極とに亘って形成された金属皮膜を備え、
前記抵抗体の一部が前記金属皮膜から露出している、電流検出用抵抗器である。
【0020】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2014−215255号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電流検出装置における電流検出精度を長期間にわたって良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の第1の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す斜視図である。
図1B図1Aに対応する電流検出装置の平面図及び断面図である。
図2図1Aに示す構造により4端子測定を行う等価回路図である。
図3A】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図3B】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図3C】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図3D】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図3E】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図3F】第2の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図4】第3の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の一例を示す斜視図である。
図5】第4の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の一例を示す斜視図である。
図6A】第5の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の第1例を示す斜視図である。
図6B】第5の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の第2例を示す斜視図である。
図7】第6の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の一例を示す斜視図である。
図8A】第7の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の例を示す斜視図である。
図8B図8Aにおいて、金属皮膜を形成しない例又は金属皮膜を図示省略した例を示す斜視図である。
図9A】第7の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図9B】第7の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。
図10】第7の実施の形態による電流検出装置の実装状態を示す斜視図である。
図11】第7の実施の形態による電流検出装置の第1変形例を示す斜視図である。
図12】第7の実施の形態による電流検出装置の第2変形例を示す斜視図である。
図13】特許文献1に記載の電流検出装置(電流検出用抵抗器)の一例であるシャント抵抗器の実装構造の一例を示す側面図である。
図14】抵抗体と電極とが垂直方向に接続するいわゆる突合せ構造の抵抗器の一構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1Aは、本発明の第1の実施の形態による電流検出装置の一構成例を示す斜視図であり、図1Bは、図1Aに対応する電流検出装置の平面図及び断面図である。
【0024】
電流検出装置21は、例えば金属基板(図示せず)に形成され、抵抗体1を有する電流検出用の抵抗器の両端間に電流を流すための配線パターン3a、3bを備える。電流検出用の抵抗器は、Cu−Ni系等の抵抗体1と、Cu等からなる電極5a、5bとを接合することにより構成される。電極5a、5bの端子部5a−1、5b−1と配線パターン3a、3bとのそれぞれの接続部6a、6bを構成する接続材は、例えばSn−Ag−Cuはんだなどにより形成されるはんだ層である。接続材としては、はんだ以外に、導電性接着剤、ろう材、等を用いてもよい。エレクトロマイグレーションによる影響に関しては、例えばSn系の接続材に対して本発明は特に有効である。なお、接続部とは、端子部5a−1、5b−1と配線パターン3a、3bとが抵抗溶接法等により直接的に、または、はんだ等を介して間接的に接続される部位を示し、はんだ等が介在するかどうかを問わない。
【0025】
また、電流検出装置21においては、基板に形成され抵抗器の両端に生じる電圧を検出する図示しない一対の電圧検出配線11a、11bが、電極5a、5bにおける電圧検出位置P1、P2において、ボンディングワイヤー(ワイヤ)9a、9bにより接続されている。ボンディングワイヤー9a、9bは電圧検出端子として機能する。抵抗器の抵抗体1の両端1a、1b(なお、符号1a、1bは抵抗体と電極との接合部を示すこともある)は、電極5a、5bの側壁とそれぞれ接続されている。抵抗体1は、例えば、Cu-Ni系、Cu-Mn−Ni系、Ni−Cr系などの金属からなる。
【0026】
図1Aの構造では、電極5a、5bは、端部側の領域である端子部(下段部)5a−1、5b−1と、それに続く抵抗体1側の領域(上段部)5a−2、5b−2とを有しており、両者には、段差Δh1が形成されている。すなわち、電極5a、5bは、抵抗体1との接続側と、ランド3a、3bとの接続側とで、段差を有する。抵抗体1側の領域5a−2、5b−2の表面に対して、抵抗体1の表面は段差Δh2だけ低くなっている。
【0027】
端子部5a−1、5b−1と、配線パターン3a、3bとは、はんだ6a、6bにより接続されている。電極5a、5bの少なくとも一方は、その厚みが抵抗体1よりも厚く、抵抗体表面と段差を有する突出面(5a−2,5b−2)を備え、ワイヤ9a、9bは突出面(5a−2,5b−2)に接続されている。
【0028】
図1Bにおいて、符号M2、M1に示す線は、端子部5a−1、5b−1と配線パターン3a、3bとの接続部6a、6bにおけるそれぞれの内側端部を示している。ボンディングワイヤー9aの領域5a−2における接続部位は、符号M2よりも内側、言い換えると抵抗体1側に位置している。また、ボンディングワイヤー9bの領域5b−2における接続部位は、符号M1よりも内側、言い換えると抵抗体1側に位置している。すなわち、ボンディングワイヤー9b、9aの接続は、符号M1、M2の外側、即ち、はんだ層(接続部)6a、6bが形成された領域(領域5a−1、5b−1)に位置していない。
【0029】
図2は、図1A図1Bに示す構造により4端子測定を行う等価回路図である。電流検出装置21の抵抗器においては、はんだ6a、6bが抵抗体1とは反対側の方向(はんだ層間の距離を広げる方向)に削れていったとしても、図1A図1Bに示すように、はんだ付着領域の内側端部よりもさらに内側において電圧検出端子として機能するボンディングワイヤー9a、9bにより直接又は間接に電圧検出位置P1、P2で接続されており、電圧検出位置P1、P2間の距離は変わらない。従って、R5の抵抗値は変わらない。また、電圧検出位置P1、P2間において電流をまっすぐに流した場合には、電圧検出位置P1、P2に変化がなく、また、はんだ付着領域の対向する内側端部間の距離が長くなるが内側端部が平行に保たれた状態ではんだが削れていく傾向にあるため、抵抗体1内の電位分布にも経時変化の影響は殆どない。
【0030】
従って、本実施の形態による電流検出装置によれば、エレクトロマイグレーションの影響によりはんだが削れていって抵抗器の実装状態における抵抗値は変化しても、4端子測定における電流検出においてはその影響を受けにくいため、長期間に亘って電流検出精度を良好に保つことができるという利点がある。
【0031】
さらに、図1Aに示すように、端部側の領域である端子部(下段部)5a−1、5b−1と、それに続く抵抗体1側の領域(上段部)5a−2、5b−2との両者の間には、段差Δh1が形成されているため、抵抗体1側の領域(上段部)5a−2、5b−2にワイヤーボンディングを行う際に、間違って端部側の領域である端子部(下段部)5a−1、5b−1のワイヤーボンディングしてしまう可能性を低くすることができる。また、抵抗体1側の領域5a−2、5b−2の表面に対して、抵抗体1の表面は段差Δh2だけ低くなっているため、抵抗体1の表面にワイヤーボンディングしてしまう可能性を低くすることができる。すなわち、高さの違いによりワイヤーボンディン位置の選択性を向上させている。
【0032】
(第2の実施の形態)
以下に、第1の実施の形態による電流検出装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図3Aに示すように、例えば、長尺の平板状等の抵抗材11と、抵抗材11と同様の長尺の平板状の第1の電極材15a、第2の電極材15bを準備し、図3Bに示すように、抵抗材11の両側に第1の電極材15a、第2の電極材15bを配置し、図3Cにも示すように、例えば電子ビームやレーザービームなどで溶接して1枚の平板とする(L11、L12で接続する)。このとき、電子ビーム等の照射部位は、図3C(a)もしくは図3C(b)とする。図3C(a)は、電極材15a、15bと抵抗体11とによる平坦面側に電子ビーム等を照射した例である。図3C(b)は、電極材15a、15bと抵抗体11とによる凹みの内側に電子ビーム等を照射した例である。電極材15a、15bにおける抵抗体11より突出した面には、電子ビーム等が照射されないようにして影響を少なくする。図3Bに近い構造を形成するために、電極材に長い貫通孔を形成して、長い抵抗材を嵌合させるようにしても良い。抵抗材11と電極材15a、15bとの厚さの差により、抵抗値を調整することもできる。また、後述する段差(Δh2)を形成することができる。接合位置により、抵抗値や形状に関する種々の調整を行うことも可能である。
【0034】
次いで、図3D(a)に示すように、図3Bの状態から、符号17で示すように、抵抗体11の領域を含むように、くし歯状に、平板を打ち抜くなどにより取り除く。次いで、第1の電極材15a、第2の電極材15bの一部をプレスなどで曲げ加工することで、図3D(b)に断面図で示すように、図1Bの下図に示す断面形状を有する構造を形成する。次いで、図3Eに示すように、電極の切り離されていない他端側(5b)を、L31に沿って、残りの領域(基部)15b’から切り離す。第1の実施の形態による電流検出装置に用いる突合せ構造の抵抗器を形成することができる。本実施の形態による製造方法を用いると、抵抗器の量産化が可能となるという利点がある。
【0035】
なお、図3Fに示すように、抵抗器には溶接痕23a、23bが形成される。一般に電子ビーム等による溶接痕の表面は荒れた状態になる。精密な電流検出のためには、ボンディングワイヤーをなるべく抵抗体に近い位置に固定するのが好ましいが、このとき溶接痕が邪魔になることがある。本実施例によれば、図3Cの説明で詳述した方法により、ボンディング面となる領域5a−2、5b−2に溶接痕が形成されることを避けることができる。したがって、抵抗体に近い位置にワイヤを固定することができるという利点がある。
【0036】
(第3の実施の形態)
以下に、第3の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の一例を示す斜視図である。図1Aに示す抵抗器との相違点は、電極5a、5bの抵抗体1側の領域5a−2、5a−2の表面と、抵抗体1の表面とに段差がない構造であることである。突合せ構造であるために抵抗体と電極との境界がわかりにくくなっているが、その代わりに、ワイヤーボンディングの目標位置P1、P2をマーカ(例として+印で示す。)で示したり、その付近をパンチや研磨で表面を平滑にしボンディングしやすくすることで、ボンディング位置を把握しやすいようにしている。
【0037】
(第4の実施の形態)
以下に、第4の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図5は、本実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の一例を示す斜視図である。図1Aに示す抵抗器との相違点は、抵抗体1が、その露出する一側面に凹部31を形成した点である。このような凹部31を設けることにより、抵抗値を調整することができる。突合せ構造であるために抵抗体1と電極5a、5bとの境界1a、1bがわかりにくくなっているが、凹部31を基準目印として、P1、P2をねらうワイヤーボンディングを行うことも可能である。凹部31は、抵抗器の個片が一部で連結した状態(図3D)において形成したり、個片に切断した後に形成することができる。
【0038】
(第5の実施の形態)
以下に、第5の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら説明する。図6Aは、本実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の第1例を示す斜視図である。
【0039】
図1Aに示す抵抗器との相違点は、抵抗器全体を、Ni−Pなどの金属メッキにより金属の被覆41を形成した点である。
【0040】
この構造では、突合せ構造である上に、被覆41で全体が覆われているため、抵抗体1と電極5a、5bとの境界がわかりにくくなっているが、本実施の形態では、抵抗体1の表面と電極5a、5bの抵抗体1側の領域(上段部)5a−2、5b−2との間に図3Fと同様に抵抗体1と電極5a、5bとの境界の目印となるように段差Δh3を設けているため、ワイヤーボンディングの位置合わせがしやすいという利点がある。なお、被覆41は、部分的に形成してもよい。例えば、電極5a、5bの配線パターンとの接続部に形成してもよく、また、符号5a−2、5b−2に示す、ボンディングワイヤーの接続位置に形成してもよい。
【0041】
図6Bは、第5の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の第2例を示す斜視図である。この抵抗器は、抵抗体1と、抵抗体1に固定した一対の電極5a、5bとを有する抵抗器である。
【0042】
図6Bに示す抵抗器は、抵抗器の一部を除いてほぼ全面に導電性の金属皮膜41を形成した構造である。換言すると、電極5a、5bから抵抗体1に亘って導電性の金属被膜41を形成した構造である。P、Pは、ワイヤーを接続する際基準位置、もしくは基準位置を示すマークである。全面に導電性の金属皮膜を形成すると、抵抗値の変動が生じる。そのため、抵抗値の変動を調整することが好ましい。
【0043】
尚、金属皮膜41を形成しても、抵抗体1と電極5a、5bとの接合部(溶接部分)1c、1dは、点線で示すように外観から識別可能である。その理由は、溶接部分1c、1dは凹凸を有する表面形状になっているためである。以下の図においても同様である。
【0044】
金属被膜41の形成によって抵抗値が変化することがあるため、導電性の被膜を形成した後に、抵抗値を調整する必要がある。
【0045】
図6Bにおいては、抵抗値調整のために、抵抗器の抵抗体部分の一部を切り欠いた例を示している。具体的には、抵抗体の切欠き工程の前に抵抗器の抵抗値を測定し、抵抗値調整量を定め、これに対応する切欠き量を算出して、切欠き51を抵抗体1の一側面に形成することによって、図6Bの構造を実現することができる。
【0046】
或いは、製造する対象製品に応じて抵抗体幅を定めておき、これに合う幅になるように切欠きを形成してもよい。
【0047】
切欠きの形成方法としては、パンチで打ち抜く方法、グラインダーなどで削る方法等の方法を用いることができる。この際、目視可能な接合部(溶接部分)1c、1dを目印にして切欠き51を形成することもできる。
【0048】
このような工程によって、抵抗器の側部において、抵抗体1の一部が側面で露出した構造になる。また、電極部分の一部も含めて切り欠いているため、電極5a、5bの側面の一部も露出している。
【0049】
本実施の形態によれば、抵抗器の全面にメッキで被覆した構造において、切欠きにより抵抗値を調整することができる。抵抗器の側部において切欠きを形成する構成の他に、例えば、抵抗器の上面や下面部分を削ることも可能である。この場合は、抵抗器の上面や下面において、抵抗体1の一部や電極5a、5bの一部が露出する。
【0050】
(第6の実施の形態)
以下に、第6の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら説明する。図7は、本実施の形態による電流検出装置に用いられる抵抗器の一例を示す斜視図である。図1Aに示す抵抗器との相違点は、抵抗器が突合せ構造でなく、図7の符号1a、1bに示す部位において電極と抵抗体とを層状に重ね合せて接合した構造により形成されている点である。
【0051】
この場合でも、抵抗体1と電極5a、5bの抵抗体1側の領域(上段部)5a−2、5b−2との境界に段差が形成されているため、ワイヤーボンディングの際にP1、P2に位置合わせがしやすい。
【0052】
(第7の実施の形態)
以下に、第7の実施の形態による電流検出装置について図面を参照しながら説明する。
【0053】
図6Bに示す例では、抵抗値調整によって、抵抗器の側部に凹みができる構造を示したが、その構造の場合には、特に抵抗器が小型である場合等において、ワーヤーボンディングが可能なエリアが狭くなったり、加工時にメッキ被膜の割れが生じてボンディングエリアの表面状態に支障が出たりする可能性がある。
【0054】
図8Aは、本発明の第7の実施の形態による電流検出装置に用いることができる抵抗器の例を示す斜視図である。
【0055】
本実施の形態では、抵抗器のほぼ全面が導電性の金属皮膜41に覆われている。抵抗体1を含む抵抗器の側部を突出させている。一側面に形成されている第1の突出部61aには、抵抗体1と電極5a、5bの一部が露出した露出面63を形成している。この第1の突出部61a(凸部)の一部をカットすることで抵抗値調整を行うことができる。
【0056】
この方法によれば、電極幅に対して側面側に突出した部分に加工を行うため、電流経路を遮らない。このため抵抗値の高精度な微調整が可能であり、電位分布に対する過度な影響もなく、抵抗器の特性を良好に保つことができる。
【0057】
尚、P、Pは、ボンディングを行う目印の位置を示し、例えば、パンチにより凹部とすることで形成することができる。
【0058】
尚、第1の突出部61aと反対側の側面に形成された第2の突出部61bにおいても、抵抗体1と電極5a,5bが側面において露出している。
【0059】
図8Bは、図8Aにおける金属皮膜41を省略した例を示す斜視図である。抵抗体1と電極5a、5bが突合せて接合されている。電極部分には、P、Pが、例えば、パンチにより凹部とすることで形成されている。
【0060】
なお、金属皮膜41を形成しない抵抗器の場合は図8Bの構造になり、そのような抵抗器でも第1の突出部(凸部)61aを形成して、この部分をカットすることによる抵抗値調整を行うことができる。
【0061】
次に、このような抵抗器の製造工程について簡単に説明する。図9Aは、第7の実施の形態による電流検出装置の製造方法を示す工程図である。図9Bは、図9Aに続く図である。
【0062】
図9A(a)に示すように、長尺の抵抗材11と電極材15a、15bとを、フープ材として準備し、両者の側面を突き合わせた後に、レーザー、電子ビーム等で突き合わせた側面を溶接して接合部L21、L22を形成する。
【0063】
次いで、図9A(b)に示すように、フープ材の電極材部分の側部を両方の外側から所定の幅だけ内側に向けてカット溝71を形成する。カット溝71の終端は、抵抗材11に到達せず、電極材がわずかに残るようにしている。連結の強度を確保する等の理由である。また、ボンディング時の目印用のマークP、Pを形成する(パンチで凹みを形成する)。これにより、将来、抵抗器となる構造が、カット溝71間の連結部75により繋がった構造が複数接続している形状とすることができる。必要に応じて、電極部分の形状の曲げ加工を行う。
【0064】
次いで、図9A(c)に示すように、金属皮膜(41)を形成する。例えば、無電解めっきによりNi−Pを形成する。被覆方法は、電解めっき、蒸着、スパッタリング等でもよい。無電解めっきは、均一で強固な被膜が形成されるので好ましい。これにより、フープ材の表裏、側面を含めて全面を被覆することができる。マークP、Pは、金属膜41を形成しても視認可能な程度の深さで形成されている。
【0065】
図9B(d)に示すように、個片化(チップ化)工程において、連結部75において、カットして個片化する。図9B(d)において、破線で示すカット位置において個片化された部材には、図における左側に、第2の凸部61bが、その反対側に第1の凸部61aが残されている。全面に金属皮膜41を形成した後にカットするため、第1の凸部61a、第2の凸部61bにおいては、抵抗体や電極が側面側において露出する。
【0066】
図9B(e)に示すように、例えば位置P21において第1の凸部61aをカットして抵抗値を調整する。
【0067】
図9B(e)に示す例では、抵抗体1のカット工程の前に抵抗値を測定し、抵抗値調整量を定め、これに対応するカット量を算出して、第1の突出部61aの全幅をカットしている。また、製造する対象製品に応じて抵抗体幅を定めておき、これに合うように切欠きを形成してもよい。切欠きの形成方法としては、パンチで打ち抜く、グラインダーなどで削る等の方法がある。
【0068】
このような工程によって、抵抗器の側部において、抵抗体1が露出した構造になる。また、電極部分の一部も含めて切り欠いているため、電極5a、5bの一部も露出している。
【0069】
図9B(f)に示すように、全面に金属皮膜41が形成されている。従って、ボンディングワイヤーを溶接する場合に好適である。また、電極端部においても、上下面および端面に亘って金属皮膜41が形成されている。従って、はんだ実装において、好適な接合状態が得られる。図9A(b)〜(c)の工程のとおり、抵抗体1部分で連結保持されているため、電極端部にも金属皮膜を形成することができる。
【0070】
図10は、第7の実施の形態による電流検出装置の実装状態を示す斜視図である。マークP、Pは、ボンディング位置を定めるため、画像認識装置で位置検出され、このマークP、Pの側部にそれぞれワイヤ9c、9dがボンディングされる。マークの形成位置は、ボンディング位置によって適宜修正することができる。
【0071】
図11は、第7の実施の形態による電流検出装置の凸部の第1変形例を示す斜視図である。金属皮膜41は図示省略、または、金属皮膜41が形成されない構成例である。抵抗体1のみが突出するように、第1の凸部71aを形成している。図9A(b)において、カット溝71の終端を抵抗材11に到達させることでこのような構造を実現できる。
【0072】
図12は、第7の実施の形態による電流検出装置の凸部の第2変形例を示す斜視図である。金属皮膜41は図示省略、または、金属皮膜41が形成されない構成例である。抵抗器の一方側の両端部に凹部を形成することで、抵抗体1の一側面には、凸部の変形例が形成される。すなわち、抵抗値調整のために抵抗体1のみを切り欠いた切欠き81と、その両側に形成されている電極5a、5bに形成した凹部83、83と、を有することで、実効的な凸部を形成する。
【0073】
尚、電極5a、5bに形成した凹部83、83は、例えば、個片状に切断する前の、フープ材の送り穴を利用することができる。
【0074】
以上のように、様々な変形例を示したが、当業者が、さらなる変形例を思い付くことは自由であり、それらも、本発明の範疇に入る。
【0075】
以上に説明したように、本発明の各実施の形態によれば、本体部の両端に配線とはんだにより接続される端子部を有する抵抗器において、はんだ付着領域の内側端部よりもさらに内側において電圧検出端子として機能するボンディングワイヤーが抵抗体に直接又は間接に電圧検出位置で接続される。
【0076】
このように、はんだ付着領域を避けた内側の領域にワイヤーボンディングを行うことができるため、抵抗体と配線パターンとの接合部分において、エレクトロマイグレーションによりはんだが削れたり、また、熱収縮や衝撃等のなんらかの原因でクラックが入る等、はんだ付着領域である接合領域の対向する内側端部間の距離が長くなる方向に接合状態が変化したとしても、電圧検出端子である電圧検出位置間の抵抗は変わらないため、電流検出精度を長期間にわたって保つことができる。
【0077】
変形例として、例えば、はんだ付着領域にボンディングしないためのその他構造、例えばボンディングワイヤーとの接続位置を規制する構造として、接続位置を含むある程度限定された範囲に円孔などを設けても良い。その他、接続目標位置に目印を付与するようにしても良い。
【0078】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0079】
本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、電流検出装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0081】
P1、P2…電圧検出位置
1…抵抗体
3…配線パターン(ランド)
5a、5b…電極
5a−1、5b−1…端部側の領域である端子部(下段部)
5a−2、5b−2…抵抗体側の領域(上段部)
6a、6b…はんだ(接続材)層(接続部)
9a、9b…ボンディングワイヤー(ワイヤ)
11a、11b…電圧検出配線
21…電流検出装置
41…金属被膜
51…切欠き
61a…第1の凸部
61b…第2の凸部
71a…第1の凸部
81…切欠き
83…凹部
【0082】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14