【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的と他の目的は、独立請求項に定義される特徴を有する受信機及び方法を提供することによって達成される。好ましい実施形態は従属請求項に記載される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、その入力で受信された無線周波数(RF)信号を復調し、復調信号を出力するように適合された復調器を備える受信機が設けられる。前記受信機は、復調器の出力に接続され、復調信号を受信してハイパスフィルタ処理する複数のハイパスフィルタを備える。前記複数のハイパスフィルタは、前記復調信号の第1の時間期間中に第1の組のフィルタ応答で動作し、復調信号の第2の時間期間中に第2の組のフィルタ応答で動作するように適合される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、所定周波数の変調搬送波信号を含む受信信号を処理する方法であって、前記搬送波信号は搬送周波数オフセットを含む。当該この方法は、受信した搬送波信号を復調することと、復調信号を複数のハイパスフィルタで受信することと、前記復調信号の第1の期間中に前記複数のフィルタに対して第1の組のフィルタ応答を用いて復調信号をハイパスフィルタ処理することと、前記復調信号の第2の期間中に複数のフィルタに対して第2の組のフィルタ応答を用いて復調信号をハイパスフィルタ処理することを含む。
【0012】
従って、本発明は、受信信号の異なる部分をフィルタリングするために動的に最適化されてもよい複数のフィルタを用いる装置及び方法を提供する。複数のフィルタが適合されるにつれて、復調信号の第1の期間中に第1の組のフィルタ応答で動作し、復調信号の第2の時間期間中に第2の組のフィルタ応答で動作するように構成され、信号の受信中に異なる時間に、各フィルタの出力においてフィルタリングされた信号をモニタし、第1又は第2の組のフィルタ応答の1つのフィルタ応答に従って所望のレベルでフィルタリングされたフィルタ応答に従って、フィルタリングされた信号の1つを選択してさらなる処理のために用いることができる。
【0013】
ここで「受信機」という用語は、一般に、無線周波数信号を受信することが可能であり、特に、複数の無線周波数信号を受信し、2.4GHzの産業科学医学(ISM)バンドで動作するBluetooth規格に従って送信されるように適合された任意のタイプのデバイスを意味する。
【0014】
「復調器/復調」という用語は、ここでは一般に、変調搬送波から情報を含む信号が抽出されるユニット(装置)又は機能を意味する。復調器は、例えばデジタル信号プロセッサが復調器の機能、又はその混合を実行するときに、変調された搬送波から情報コンテンツを復元するために使用される、電子回路及びコンピュータプログラムコード部分によって実行される。好ましい実施形態においては、搬送波は、ガウス周波数シフトキーイング(GFSK)を使用して変調される。他のタイプの変調、例えば、周波数偏移キーイング(FSK)及びその変形(例えば、CPFSK、MSK及びGMSK)、位相シフトキーイング(PSK)及びその変形(例えば、BPSK、π/2DBPSK、π/4DQPSK、OQPSK、SOQPSK及びDPQPSK)を使用してもよい。ここで、復調器から出力される信号は、アナログ信号又はデジタル信号であってもよい。
【0015】
「ハイパスフィルタ手段」という用語は、ここでは、特定のカットオフ周波数よりも高い周波数の信号を通過させ、カットオフ周波数よりも低い周波数の信号を減衰させる複数のフィルタを含むユニット(装置)を意味する。ハイパスフィルタ手段は、電子回路、コンピュータプログラムコード部分、又はそれらの混合によって実装することができる。各周波数の減衰量はフィルタ設計に依存します。当該フィルタは、1次以上のものであってもよい。好ましい実施形態において、ハイパスフィルタ手段内の各フィルタは、以下でより詳細に開示されるように、微分器及び積分器を含むデジタルフィルタとして実装される。
【0016】
「第1の組のフィルタ応答で動作するように適合された複数のフィルタ」という用語は、ここでは、各フィルタは、フィルタのカットオフ周波数及び/又は阻止帯域の減衰を制御するための1つ又は複数のフィルタパラメータによって定義される複数のフィルタの各フィルタを意味する。このように、複数のフィルタの各フィルタは、その入力に加えられる信号に特定の応答を提供することができる。
【0017】
「復調信号の第1/第2の期間」という用語は、ここでは、それぞれは開始時間と停止時間によって定義され、その間に復調信号の第1及び第2の部分がハイパスフィルタ手段によって受信される第1及び第2の期間を意味する。以下により詳細に開示されるように、第1及び第2の期間は、予め定められた時間期間であってもよく、もしくは復調信号における特定のパターンの検出のようなイベントから生じる時間期間であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、第1の組のフィルタ応答における各フィルタ応答は、第2の組のフィルタ応答において対応するフィルタ応答を有し、前記第2の組のフィルタ応答における前記対応するフィルタ応答の各々は、対応する前記第1のフィルタ応答よりも遅い。
【0019】
第1の組のフィルタ応答における対応するフィルタ応答よりも遅い、第2の組のフィルタ応答においてフィルタ応答を提供することによって、復調信号の異なる部分に適用されるフィルタリングの量を制御することが可能である。一例として、もし第2の時間期間中の復調信号の内容がフィルタリングに対してより敏感である場合、あまりにも積極的にフィルタリングされた場合には、より破損しやすくなり、第1の期間中の第1のより積極的なレベルのフィルタリングと、第2の期間中の第2のより積極的なレベルのフィルタリングを提供することが可能である。
【0020】
「対応するフィルタ応答」という用語は、ここでは、第1の組のフィルタ応答は、フィルタパラメータα[1]、β[1]、γ[1]などによって定義される多数の応答であり、第2の組のフィルタ応答は、フィルタパラメータα[2]、β[2]、γ[2]などによって定義される多数のフィルタ応答であることを意味する。ここで、第1の組のフィルタ応答におけるフィルタパラメータα[1](β[1]、γ[1]など)によって定義されるフィルタ応答は、第2の組のフィルタ応答におけるフィルタパラメータα[2](β[2]、γ[2]など)によって定義される対応するフィルタ応答を有する。
【0021】
「より遅い(低速)」という用語は、より低いレベルのフィルタリングが達成されるようにフィルタ応答があまり攻撃的でないことを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、受信機は、所定の搬送周波数を有する変調された搬送波信号の形式のRF信号を受信するように適合され、復調器は、前記RF信号に存在する搬送周波数オフセット(CFO)をDCオフセットに復調するように適合される。
【0023】
この実施形態の利点は、CFO推定値を用いて受信データを修正するために受信データのその後の処理が容易になるということである。すなわち、CFOをDCオフセットに復調することによって、CFOが補償されるように、適切なハイパスフィルタを後のフィルタリングのために選択することができる。
【0024】
DCオフセットは、アナログ信号又はデジタル信号によって表すことができる。所定の搬送周波数は、使用される通信規格に依存する。好ましい実施形態によれば、所定の搬送周波数は、2400MHzから2483.5MHzに位置するISM周波数帯域内にある、Bluetooth Low Energy標準規格に従って定義された中心周波数に対応する。特に、Bluetooth Low Energyシステムは中心周波数(2402+n*2)MHzを使用し、ここで、n=0,1,2,…,39である。従って、中心周波数からのオフセットは、周波数オフセットに対応するDCオフセットとなる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、受信機は、CFOに基づいて複数のフィルタのうちの1つを選択するように適合されたセレクタを備える。
【0026】
この実施形態の利点は、受信信号に存在するCFO/DCオフセット量に基づいて、復調信号を処理するために適切なフィルタを容易に選択することができる。
【0027】
前記セレクタは、ハードウェア、ソフトウェア、又はその両方の組み合わせで実施されるユニットの形態であってもよく、その機能は、一般的には、フィルタの1つからの出力信号を後続の処理のために他のユニットに供給することである。好ましい実施形態によれば、セレクタは、復調信号に存在するCFO/DCオフセット量を決定するための測定ユニットと、複数のフィルタから受信した複数のアナログ入力信号又はデジタル入力信号の1つを選択してその出力に送る多重化ユニットとを備える。多重化ユニットは、例えばアナログスイッチ又はデジタルゲートである、1つ以上の制御可能なスイッチを備えることができ、これらは測定ユニットから受信した信号によって制御される。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、復調器は、差動位相領域復調器である。
【0029】
受信信号に存在するCFOは、復調器の出力でDCオフセットに直接復調される。従って、復調信号をハイパスフィルタ手段に供給する前に必要であるために、DCオフセット信号を導出するために復調信号をそれ以上処理しないので、受信機の複雑さが軽減される。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、復調信号は、データパケットの形態である。
【0031】
受信信号をデータパケットに復調するように構成された復調器を含む受信機を提供することにより、復調信号の異なる部分を処理するための、適切なフィルタの選択及びフィルタ応答が容易になる。すなわち、第1のフィルタ応答で動作する第1のフィルタは、パケットの第1の部分の想定内容に応じてパケットの第1の部分をフィルタリングする(プリアンブルなど)ために使用することができ、第2のフィルタ応答で動作する、対応する(又は異なる)フィルタは、パケットの第2の部分をフィルタリングする(例えば、パケットの同期ワード又はペイロード)ために使用することができる。
【0032】
データパケットは、使用される通信規格に応じて様々な形態を取ることができる。一例として、標準BLEパケットは、プリアンブル(1オクテット)、アドレスワード(4オクテット)、PDU(2〜39オクテット)及びCRC(3オクテット)を含む。テストの目的で、テスト仕様書に定義されたパケットフォーマットが使用され、前記基準パケットは、プリアンブル(1オクテット)、同期ワード(4オクテット)、PDUヘッダ(1オクテット)、PDU長データ(1オクテット)、PDUペイロード(37オクテット)及びCRC(3オクテット)を含む。IEEE802.15.4(ZigBee)又はIEEE802.15.6(Wireless Body Area Network)で採用されるような他のパケットフォーマットを使用してもよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、ハイパスフィルタは、データパケットの第1の部分上にある第1の組のフィルタ応答で動作し、前記データパケットの第2の部分上にある第2の組のフィルタ応答で動作してもよい。この実施形態の利点は、パケットの異なる部分が多かれ少なかれ積極的にフィルタリングされることである。従って、パケット内のペイロードデータは、おそらくフィルタリングに対してより敏感であり、すなわち、例えばプリアンブルに比較して、あまりにも積極的にフィルタリングされると、より壊れやすく、より緩やかなフィルタ応答の組で動作する、あまり積極的でないフィルタに曝される可能性がある。
【0034】
パケットの「第1の部分」及び「第2の部分」という用語はここでは、例えばパケットの受信の開始である、パケットの特定の期間に厳密に関連する部分のいずれかに対応し、第1の部分は、最初の8マイクロ秒の受信中に受信されたパケットの部分に対応し、第2の部分は次の32マイクロ秒に対応してもよい。一方、パケットの内容に関連するパケットの部分、例えば第1の部分は、パケットのプリアンブルに関連してもよく、第2の部分は、パケット内の同期ワードに関連してもよい。例えば第1の部分は、プリアンブルの開始の検出(「エネルギー検出」とも呼ばれる)から始まり、同期ワードの検出時に終了する、パケットの一部であってもよい。第2の部分は、同期ワードの検出時に開始しPDUヘッダの検出時に終了する、パケットの一部であってもよい。前の両方の例の組み合わせもまた本発明の範囲内であり、例えばパケットの開始の検出から開始し一定時間後に終了する第1の部分はパケットの一部であってもよく、第2の部分は、同期ワードの検出からPDUヘッダの検出で終了するパケットの一部であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、受信機は、復調信号の少なくとも一部を緩衝するために復調器の出力に接続されたバッファを備える。
【0036】
この実施形態の利点は、復調信号の一部が緩衝処理中に作用している可能性があることである。すなわち、復調信号の一部を緩衝処理することによって、処理ユニットは、バッファの内容を後の処理に出力する前にバッファの内容を変更することができる。
【0037】
「バッファ」という用語はここでは、データをアナログ又はデジタル形式で一時的に記憶するユニットを意味する。好ましい実施形態によれば、バッファは、テスト信号内の同期ワードの長さに対応するデジタル語を記憶するように適合されるシフトレジスタである。
【0038】
バッファは、例えばデジタル信号プロセッサは、バッファの機能(メモリにデータを格納する)、又はそれらの混合を実行する、電子回路(ハードウェアシフトレジスタ)、コンピュータプログラムコード部分によって実行される。
【0039】
前記受信機は、復調器の出力とハイパスフィルタの出力に接続され、かつ、復調信号とフィルタリングされた復調信号との間の差に基づいて、バッファの入力に訂正信号を提供するように適合される比較器を備える。
【0040】
この実施形態の利点は、バッファの内容が、復調信号に存在するCFO量に基づいて容易に修正することができることである。このことは、バッファに供給された復調信号の最初のサンプルを最新のCFO推定値で訂正することが可能になるから、特に有益である。
【0041】
「コンパレータ」は、ハードウェア、ソフトウェア、又はその両方の組み合わせで実施されるユニットの形態であってもよく、その機能は一般に、復調信号と復調信号のフィルタリングされたバージョンとの間の差を示す信号を提供することである。すなわち、バッファの内容は、最新のCFOの推定値で訂正することができる。
【0042】
本発明の方法は、所定の搬送周波数を有する変調された搬送波信号の形態のRF信号を受信するステップと、前記RF信号に存在する搬送周波数オフセット(CFO)をDCオフセットに復調するステップとを含む。
【0043】
この実施形態の利点は、CFO推定値を用いて受信データを修正するために受信データのその後の処理が容易になることである。すなわち、CFOをDCオフセットに復調することにより、CFOが補償されるように、適切なハイパスフィルタを後のフィルタリングのために選択することができる。
【0044】
本発明の方法は、CFOに基づいて複数のフィルタの1つを選択するステップを含むことができる。
【0045】
この実施形態の利点は、受信信号中に存在するCFO量に基づいて、適切なフィルタで復調信号を処理するために容易に選択することができることである。
【0046】
本発明の方法は、復調信号の少なくとも一部を緩衝し、前記復調信号と前記ハイパスフィルタ処理された復調信号との間の差に基づいて前記緩衝された少なくとも一部分を訂正するステップを含む。
【0047】
この実施形態の利点は、復調信号の一部がバッファ内にある間に動作することができる。すなわち、復調信号の一部を緩衝処理することによって、緩衝処理された信号は、復調信号に存在するCFO量に基づいて容易に訂正され得る。このことは、復調信号の第1のサンプルを訂正し、最新のCFO推定値でバッファに供給されることができ、特に有益である。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、その入力に受信された無線周波数(RF)信号を復調して復調信号を出力する復調器と、復調器の出力に接続され、復調信号を受信するハイパスフィルタ手段とを備え、前記ハイパスフィルタ手段は、前記復調信号の第1の所定の時間期間中に第1のフィルタ応答で動作し、復調信号の第2の所定の時間期間中に第2のフィルタ応答で動作するように適合される、受信機が提供される。
【0049】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な開示から明らかになり、添付の特許請求の範囲及び図面から明らかになるであろう。一般的に、特許請求の範囲において使用される全ての用語は、明示的に定義されていない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the[要素、デバイス、コンポーネント、手段、ステップなど]」に対するすべての言及は、特に明記しない限り、デバイス、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つのインスタンスを参照するものとして、明らかに解釈されるべきである。本明細書で開示される任意の方法のステップは、明示的に述べられていない限り、開示された正確な順序で実施される必要はない。本発明の上記ならびに追加の目的、特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明によってよりよく理解されるであろう。添付の図面を参照して、類似の要素には同じ参照符号が使用される。