(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
磁気共鳴イメージングにおいて、複数の線形磁場傾斜が空間符号化のために使用される。複数の傾斜コイルが、これらの複数の線形磁場傾斜を発生させるために使用される。水平円筒型のMRIシステムは、装置の長さにわたる複数の水平円筒型の傾斜コイルアッセンブリを有する。複数の「オープン」水平MRIシステムは、中心にギャップを有する分割の主磁石を有し、複数の分割傾斜コイルもまた有してもよい。より最近は、例えば複数の放射線治療装置、複数の生体検査、複数のアブレーション装置、複数の外科用装置、超音波、PET、SPECT、CT、LINACなどの複数のMRI及び複数のオープンMRIシステムと組み合わせた種々の治療及び複数のイメージングモダリティ(撮像手段)を含むことが望まれるようになった。例えば、オープンMRIシステムのギャップ領域内にそのような複数の器具を載置することが望まれるであろう。
【0011】
MRI画像の品質は、イメージング容積の内側の主磁石場の磁場の不均一性により悪影響が及ぼされる。例えば連続的な円筒型もしくは垂直にギャップされたシステムなどのいくつかのMRIシステムでは、超伝導シムコイルが主磁石の内側に位置決めされて磁石の欠陥による磁場の不均一性を低減させるように使用される。連続的な円筒型磁石(ギャップされない磁石)に対して、超伝導シムは、MRIシステムの中心軸平面を通して連続的に及ぶ超伝導シムが例えばXシム、Yシム及びZシムコイル並びに高次のシムコイルなどの1次のシムコイルを含んでもよい。これらのシムコイルは、アクティブ超伝導シミング手順の間あるタイミングで1回電力が印加される。
【0012】
パッシブシミング技術はまた、超伝導シムが印加された後に、残余の不均一性をある程度シムアウトするように使用されてもよい。通常は複数片の強磁性金属を備えるパッシブシムは、傾斜コイルの内側もしくは主磁石の内側ボア表面上のいずれかに配置される。アクティブ超伝導シミング及びパッシブシミングを組み合わせることのいくつかの反復は、所望されるレベルの不均一性を得るために必要とされてもよい。
【0013】
しかしながら、一旦超伝導シムコイルが電流により電力が印加されると、主磁石の内側の超伝導シムコイルの位置はシムコイルへのさらなる接近を回避するので、電力チャネルは閉じられるであろう。このように、各シムコイルの連続する変化は可能性がない。もし電流を超伝導シムコイルに適合させることが所望されれば、主磁石におけるシムスイッチへのアクセスは、超伝導シムコイルへのアクセスを得るように開かれる必要があるであろう。
【0014】
アクティブ抵抗性シムコイルは、患者に導入された不均一性をシムアウトするために使用されてもよい。これらのシムコイルは、例えばZO、Z2、XZ、YZ、XY、及びX2−Y2タイプなどの0次、1次、及び2次のシムコイル、又はさらに高次のシムコイルを含んでもよい。これらのシムコイルは、特許文献1で説明されたゴーレイタイプのコイルであってもよいし、もしくは分散型のコイルであってもよい。上述したシステムにおけるアクティブシムコイルの構成に関する1つの不利益は、各シムコイルのすべての部分は直列接続され、同一の電力チャネルにより制御される。シムコイルの部分の直列接続は、不均一性をシムアウトするために自由度を制限する。
【0015】
本開示のアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリは、任意のタイプのMRIシステムを用いて使用されてもよい。従来のアクティブシムコイルとは異なってもよい本開示のアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリの一態様は、本アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリの各シムコイルが複数の電力チャネルに接続されてかつ当該複数の電力チャネルにより制御されてもよいということである。そのような構成は、アクティブ抵抗性シムコイルに電力を印加するときにおいて種々の付加的な自由度を可能とさせ、不均一性をより効果的にシムアウトすることができる調和関数を生成することが可能となる。
【0016】
従来のアクティブシムコイルとは異なって、本開示のアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリのもう1つの態様は、2つの水平MRI磁石の間の半分のギャップを含む分割ソレノイドの水平「オープン」MRIシステムを適合させるための構成を含んでもよい。従来の水平システムでは、典型的には5つのタイプのシムコイルが存在する。すなわち、ZO、Z2、XZ、YZ、XY、及びX2−Y2のタイプである。この場合において、XZ及びYZシムコイルは、中心平面に対して対称的に配置されて当該中心平面にわたって広がっており、それは分割システムに対しては不可能である。例示的な実施形態では、オープンMRIシステムにおいてギャップを適合させるために、本開示のアクティブシムコイルアッセンブリは、2次もしくはより高次のシムコイルの代わりに分割Xタイプ、Yタイプ、及びZタイプのアクティブシムコイルだけを有してもよい。対応する電流を複数の電力チャネルを介してXタイプ、Yタイプ、及びXタイプのアクティブシムコイルに提供すれば、すべてのZO、Z2、XZ、YZ、XY、及びX2−Y2のシムコイルのみならずより高次のシムの調和関数を生成することができる。
【0017】
ここで開示されるシムコイルは、そのギャップ内で動作される付加的な医療器具を用いて使用される水平オープンMRIシステムとともに使用するのにさらにうまく適合される。
図1は、ギャップ領域102を有する水平オープンMRIシステムを有するそのような配置を図示する。器具104は、構台110上のギャップ領域102に装着される。また、患者106及び患者ベッド108が図示される。いくつかの複数の実施形態において、構台110は、患者106の周りに(すなわち、
図1に図示されたZ軸の周りに)器具104を再配置するために使用される。
【0018】
図1の実施形態は、特許文献2の一部において説明された、本願譲受人であるビューレイ・インコーポレイテッド(ViewRay, Inc.)のシステムの複数の構成要素を含めることができ、当該特許文献2が参照によりここに組み込まれる。例えば、器具104は、放射線治療装置及び関連するマルチリーフコリメータ(MLC)が備えられ、高速のイメージング水平オープンMRIシステムと組み合わせて、特許文献2に説明されるように、治療中に目標となる場所を明らかにする改良された放射線治療を可能とする。1つのアッセンブリだけが
図1の器具104として図示される一方で、いくつかの複数の実施形態は、器具104と関連する複数のアッセンブリを含むことができる。例えば、いくつかの複数の実施形態は、Z軸の周りに分布されたギャップ102に装着され、構台110上のZ軸の周りに回転可能な(
図1に図示されない)3つの放射線ヘッドアッセンブリを含んでもよい。ここで開示された複数の実施形態のいくつかの複数の態様が特許文献2により開示されたビューレイシステムに関して説明される一方で、そのような複数の態様は開示されたシムコイルアッセンブリを用いた使用のためには必要とされない。ここで開示されたシムコイルアッセンブリは、関連する器具104の使用を用いて、もしくは用いないで、任意のタイプのMRIシステムにおいて使用されてもよい。さらに、器具104を利用する複数のシステムのために、そのような複数の器具は、例えば複数の放射線源、もしくはLINACなどの複数の放射線治療装置に限定されないが、MRIシステムを用いて使用される任意のタイプの器具を含むことができる。
【0019】
図2aは、
図1に図示されたシステムの断面図である。
図2aの実施形態は、ギャップ102により分離された、一対の主磁石200を含む水平オープンMRIシステム100を図示する。MRIシステム100は、ギャップされないMRIシステムに関連する実施形態に対する本開示の原理に従って、1つの主磁石200だけを含むように設計されてもよいことが認識されるべきである。MRIシステムは、患者ベッド108上方の対象となる領域を画像化するように使用される。MRIシステム100は、例えばRFコイルを含む無線周波数(RF)システムなどの、図示されない付加的な従来の構成要素を含む。図面及びこの開示を通して使用される座標系では、MRIボアを通り抜ける長手方向の軸をZ軸と呼ぶ。X軸はZ軸に対して垂直にかつMRIシステム100の左右に延在し、Y軸はZ軸に対して垂直にかつMRIシステム100のボトムからトップに延在する。
【0020】
また、MRIボア(Z軸)を介して磁石200と長手方向軸206との間に配置される第1の傾斜コイル204が
図2aに図示される。MRIシステム100は、磁石200の外側に配置されかつ第1の傾斜コイル204に近接するアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208を含む。アクティブシムコイルアッセンブリ208は、少なくとも1つの増幅器220において(図示されない)複数の電力チャネルにそれぞれが接続される複数のシムコイルを含んでもよい。複数のシムコイルはそれぞれ、少なくとも1つの増幅器220における複数の電力チャネルを介して提供される分離した複数の電流により電力が印加されるように動作可能となってもよい。
【0021】
実施形態では、第1の傾斜コイル204は、特許文献3で説明される他の傾斜コイル及び/又はシールドコイルを備える傾斜コイルアッセンブリ207において配置されてもよく、それは共有されてかつ参照によりここで組み込まれる。
【0022】
磁石200の外側のアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208の場所は変更させてもよいことが認識されるべきである。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、半径方向において第1の傾斜コイル204のいずれかの側に配置されてもよい。実施形態では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、磁石200と第1の傾斜コイル204との間に配置されてもよい。もう1つの実施形態では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、第1の傾斜コイル204と長手方向軸206との間に配置されてもよい。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、傾斜コイルアッセンブリ207の内側もしくは外側に配置されてもよい。
図2aで図示される例示的な実施形態では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、傾斜コイルアッセンブリ207内に配置される。MRIシステム100の冷却装置209は、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208と傾斜コイル204との両方に対する冷却を提供してもよい。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208の場所を除き、MRIシステム100と実質的に同様であるMRIシステム150が
図2bに図示される。MRIシステム150では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、傾斜コイルアッセンブリ207の外側に配置される。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、磁石200と傾斜コイルアッセンブリ207との間に配置される。この実施形態では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208を冷却するための専用の冷却装置210がMRIシステム150内に含まれてもよい。
【0023】
電流を複数の電力チャネルを介してアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208の各シムコイルに供給することの有益な効果が磁石200の外側にアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208を配置することにより最適化されることが認識されるべきである。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリのそのような場所は、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208のシムコイルに電力が印加された後に、電力チャネルが閉じられることを必要としない。そのため、各アクティブシムコイルへの電流の簡単でかつ連続する変化が実現されるかもしれない。
【0024】
実施形態では、本開示のアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208は、例えばアクティブXシムタイプコイル(以下、「Xシムコイル」という。)、アクティブYシムタイプコイル(以下、「Yシムコイル」という。)、及びアクティブZシムタイプコイル(以下、「Zシムコイル」という。)などのアクティブ抵抗シムの種々の組み合わせを含んでもよい。例示的な実施形態では、Xシム、Yシム、及びZシムコイルは、ゴーレイタイプのコイルであってもよい。もう1つの実施形態では、これらのコイルは分散型コイルであってもよい。実施形態では、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208はさらに、0次のシムコイルを含んでもよい。アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208におけるアクティブシムコイルの選択及び配置は、イメージング容積内の磁場において期待される不均一性及び所望される自由度に基づいて変化させてもよいことが認識されるべきである。
【0025】
実施形態では、アクティブシムコイルアッセンブリ208は、Xタイプ、Yタイプ、及びXタイプのアクティブシムコイルを含んでもよく、2次シムコイルもしくはより高次のシムコイルを含まなくてもよい。電流を複数の電力チャネルを介してXタイプ、Yタイプ、及びZタイプのアクティブシムコイルに供給することにより、ZO、Z2、XZ、YZ、XY、及びX2−Y2シムコイルの調和関数のみならずより高次のシムに電力が印加される。
【0026】
アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリ208において含まれるように適合化されるアクティブ抵抗性シムコイルは、種々の自由度を可能にする異なる電力チャネルに対する種々の電流パターン及び多数の接続を含んでもよい。
図3Aを参照すれば、例示的な実施形態では、Xシムコイルの電流パターンは、少なくとも4つの象限を含むように構成されてもよい。実施形態では、Xシムコイルは、
図4に図示される中心平面400に対して対称的に配置される第1の象限302a及び第2の象限302bのペアを含んでもよい。
図4は、MRIシステム100の簡単化された概略図であり、図示されるように、長手方向軸206に対して垂直である中心平面400は、X軸及びY軸により定義されてもよい。水平オープンMRIシステムでは、中心平面400は、複数の磁石200間のギャップ内の中心にある。
図3Bに戻ると、実施形態では、Yシムコイルはまた、
図4に図示されるように、中心平面400に対して対称的に配置される第1の象限304a及び第2の象限304bのペアを有する、少なくとも4つの象限を含んでもよい。Zシムタイプコイルの電流パターンは、
図3Cに図示されるように、中心平面400に対して対称的に配置される少なくとも2つのハーフ(半部)306a、306bを含んでもよい。Xシム、Yシム、及びZシムコイルの半径方向の次数は、典型的にはX次元がY次元よりも大きくてかつZシムコイルがX及びYコイルよりも効率的であるという事実により決定されてもよい。
【0027】
例示的な実施形態では、イメージング容積内の種々の磁場の不均一性をシムアウトするときにおいてより大きい自由度を可能とするために、アクティブXシム、アクティブYシム、及びアクティブZシムコイルはそれぞれ、分離した電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能となる複数の象限を含んでもよい。例えば、Zシムコイルの2つのハーフは、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であってもよく、2つの自由度を可能とする。アクティブXシムコイル及びアクティブYシムタイプのコイルの象限を接続するための多くの方法が存在し、結果として異なる自由度を生じる。
図5Aにより図示される例示的な実施形態では、Xシム及びYシムコイルの各象限502は、分離した電力チャネル503に接続されてもよく、結果としてX及びYシムコイルのそれぞれに対して4つの自由度を生じる。
図5Bで図示される実施形態では、Xシムコイルの第1の象限504a及び第2の象限504bは、第1の電力チャネル505に直列接続され、Xシムコイルの第3の象限506a及び第4の象限506bは、第2の電力チャネル506に直列接続される。同様に、Yシムコイルは、第1の電力チャネル505に直列接続される第1の象限504a及び第2の象限504bと、第2の電力チャネル506に直列接続される第3の象限506a及び第4の象限506bとを含むように構成されてもよい。第1の象限504a及び第2の象限504bを直列接続し、第3の象限506a及び第4の象限506bを直列接続するための他の例示的な方法が
図5C及び
図5Dで図示される。
図5A〜
図5Dで図示される例示的な電力チャネル配置に加えて、電流をXシムもしくはYシムコイルの3つもしくは4つの象限に供給するための1つの電力チャネルを可能とする種々の接続を含む他の配置がまた使用されてもよい。
【0028】
Xシム、Yシム、及びZシムコイルの上述した構成は、種々の自由度を可能とする。例示的な実施形態では、アクティブZシムコイルの2つのハーフは、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、Xシム及びYシムコイルのそれぞれの4つの象限は、4つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、アクティブシミングのために10個の自由度が存在する。もう1つの例示的な実施形態では、シムコイルは以下のように構成されてもよい。
1)Zシムコイルの2つの象限は、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、
2)Yシムコイルの第1の象限及び第2の象限は直列接続され、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、Yシムコイルの第3の象限及び第4の象限は直列接続され、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、
3)Xシムコイルの第1の象限及び第2の象限は直列接続され、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能であり、Xシムコイルの第3の象限及び第4の象限は直列接続され、2つの各電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能である。そのような構成は、アクティブシミングのために6つの自由度を可能とする。
【0029】
もう1つの例示的な実施形態では、MRIシステムは、2次もしくはより高次の抵抗性シムコイルを有するアクティブシムコイルアッセンブリ208を含んでもよい。例示的なアクティブシムコイルアッセンブリ208は、Z2、ZX、ZY、XZ、及びX2−Y2のシムコイルを含んでもよい。ZX及びZY抵抗性シムコイルは、中心平面400に対して対称的に配置されてもよい。ZX抵抗性シムコイルは、方位角の方向において180度で分離される2つのハーフを含んでもよく、ZY抵抗性シムコイルはまた、90度でZXシムコイルから回転される2つのハーフを含んでもよい。XY抵抗性シムコイルは、8つの象限を含んでもよい。すなわち、中心平面400に対して対称的に位置決めされる4つの象限と、方位角の方向において90度で分離される4つの象限との2つのセットである。X2−Y2抵抗性シムコイルはまた、中心平面400に対して対称的に位置決めされる4つの象限と、90度でYZシムコイルから回転される4つの象限との2つのセットを含んでもよい。
【0030】
上述した例示的なオープンMRIシステムのシムコイルと同様に、MRIシステムのZ2、ZX、ZY、XZ、及びX2−Y2シムコイルはそれぞれ、分離した電力チャネルからの電流により電力が印加されるように動作可能である複数の象限及び/又は複数のハーフの種々の組み合わせを含んでもよい。ZX及びZYシムコイルのハーフはそれぞれ、分離した電力チャネルからの電流により電力が印加されてもよく、各シムコイルのために2つの自由度を可能とする。XY及びX2−Y2シムコイルの複数の象限はそれぞれ、分離した電力チャネルからの電流により電力が印加されてもよく、各シムコイルのために8個の自由度を可能とする。このように、Z2、ZX、ZY、XZ、及びX2−Y2のシムコイルを備えるアクティブシムコイルアッセンブリは、Xシム、Yシム、及びZシムコイルだけを備えるアクティブシムコイルアッセンブリよりも大きい自由度を有してもよい。さらに、Z2、ZX、ZY、XZ、及びX2−Y2のシムコイルの電力チャネルは、少なくとも4個から20個までの範囲の種々の自由度を可能とするように組み合わされてもよい。
【0031】
MRIシステムでは、Xシムコイル及びYシムコイルのそれぞれにシムコイルの各象限、並びにZシムコイルの各ハーフは、イメージング容積内の種々の球面調和関数を生成してもよい。YシムコイルのY1象限が45cmのDSV内で生成してもよい球面調和関数の例が以下の表1で挙げられる。
【0033】
YシムコイルのY_2、Y_3、及びY_4象限の感度は、アクティブYシムコイルのY1象限に対する対称性の独立変数から求めることができる。同様に、XシムコイルのX1、X_2、X_3、及びX_4象限の感度は、YシムコイルのY_1、Y_2、Y_3、及びY_4象限に対する対称性から求めることができる。
【0034】
複数のYシムコイルの感度の線形結合により次式が得られる。
【0036】
式(1)では、SY_1(1≦I≦4)は、Y_I象限の感度であり、σは重み付け係数である。もしすべてのσ
1が等しければ、その場合はYシムはY傾斜として振る舞う。例えば、もしσ
1=σ
3=1でありσ
2=σ
4=−1であれば、その場合はYシムは従来のYZシムとして振る舞う。例えば、もしσ
1=σ
2=1でありσ
3=σ
4=−1であれば、その場合はYシムは従来のZ2シムとXYシムコイルとの組み合わせとして振る舞う。例えば、もしσ
1=σ
4=1でありσ
3=σ
2=−1であれば、その場合はYシムはほとんど従来のZ傾斜として振る舞う。
【0037】
ZシムコイルのZ_1のハーフを45cmのDSV内で生成してもよい球面調和関数の例が以下の表2で挙げられる。
【0039】
ZシムコイルのZ_2のハーフの感度は、ZシムコイルのZ_1のハーフに対する対称性の独立変数から求めることができる。以下の式(2)は、球面調和関数係数の項での磁場のZ成分の式である。
【0041】
式(2)では、
【数3】
は磁場のZ成分であり、
【数4】
は観察点の球面座標であり、
【数5】
はルジャンドル多項式であり、C
nはゾーン球面調和関数係数であり、C
n,m、S
n,mは方球(方域)調和関数の係数である。
【0042】
演算では、電流をシムコイルに印加して磁場の不均一性を最小化するように分離した電力供給を使用してもよい。これが以下の関数を最小化することにより実行される。
【0044】
式(3)では、表記は以下の定義を有する。
・Nはフィールドカメラを使用する測定点の数である。
・N
Dはベースのシムコイルの数である。
・δBは中心フィールド値B
0に対する磁場の測定されたフィールド値の変化である。
・B
i,nは、一連の測定点にわたって単位電流を用いて駆動される(文字nにより索引された)ベースのシムコイルにより生成される磁場の値である。これらの値はベースのシムコイルの感度を表す。
・I
nはベースのシムコイルに印加されるべき未知の電流値である。
・λは印加されるべきシム電流値を最小化するように正則化係数である。
【0045】
未知の電流値I
nに関する関数Wの変化は解を決定する。
【0046】
図6は、本開示のMRI装置をシミングするのに適した例示的な処理を示すフローチャートである。フローチャートで図示されたそれぞれの動作は図示された順番で実行されてもよい一方で、特段の定めがない限り、図示された順番以外の順番で実行されてもよいことが認識されるべきである。本開示のMRIシステム内もしくは当該MRIシステム近くの種々の物体(オブジェクト)は、画像容積において磁場の不均一性を導入するかもしれない。例えば、MRI装置の構台上に載置するいくつかの部品は、磁場の不均一性を導入することができる。イメージングの間に使用されるロボット装置は、磁場の不均一性の可能性がある源(ソース)の例である。
図6で図示された例示的な方法600は、磁石、傾斜コイル、及び磁石の外側に配置されてかつ傾斜コイルに近接して配置されるアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリを備える磁気共鳴イメージング(MRI)システムでの磁場の不均一性をシムアウトするのに適してもよい。MRIシステムは、ここで開示されるMRIシステムの任意の実施形態であってもよく、MRIシステムのアクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリは、複数の電力チャネルを通して供給される電流により電力が印加されるように動作可能であるシムコイルを含んでもよい。
【0047】
例示的な方法600の動作602は、磁場を保持するようにMRIシステムを動作させるステップを含む。例示的な方法600の動作604は、MRIシステムのイメージング容積内の磁場の不均一性を決定するステップを含む。磁場の不均一性に基づき、方法600の動作606及び動作608は、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリのシムコイルに供給されるべき複数の電流値を決定するステップと、電流をシムコイルに印加するステップをそれぞれ含んでもよい。電流により電力が印加されるシムコイルが少なくともいくつかの磁場の不均一性をシムアウトするように動作可能であるように電流値が決定される。動作610は、動作602での磁場を保持することを繰り返すステップと、シムコイルに供給される電流が所望されるレベルの磁場の不均一性を可能とするか否かを決定するように動作604での磁場の不均一性を決定するステップとを含んでもよい。もし付加的なシミングが所望されれば、動作606及び動作608での複数の電流値を決定することと当該電流をシムコイルに印加することとの動作は、シムコイルに供給される電流を調整するように反復されてもよく、動作602及び動作604は、合成磁場の不均一性を決定するようにもう一度繰り返されてもよい。動作602、604、606、及び608の反復の後、シムコイルはほとんどの磁場の不均一性をシムアウトするように調整された電流により電力が印加されてもよい。残余の不均一性がパッシブシムの調整と一緒にシムアウトされてもよい。
【0048】
方法600は、もしシムコイルが磁石の内側に配置されれば、実行することが負担でありかつ困難であるであろう反復方法であってもよいことが認識されるべきである。そのような場合において、超伝導シムへの接続は反復ごとに実行される必要があるであろう。しかしながら、アクティブ抵抗性シムコイルアッセンブリは磁石の外側に配置されるので、方法600は、MRIシステムの磁石が閉じられたままである間に実行されてもよい。この利点は、シムコイルに電力を印加させるための電流の簡単な調整を可能とするだけでなく、磁場の不均一性のソースがリアルタイムで移動するのでイメージングの間にシムコイルに対する電流のリアルタイムの調整を相乗的に可能としてもよい。そのようなリアルタイムの調整は、著しく改善されたイメージングの品質及びイメージングの精度を可能とするであろう。
【0049】
動作602における磁場を保持するステップと、動作604における磁場の不均一性を決定するステップとは、従来から知られた種々の方法で取得されてもよい。実施形態では、動作602での磁場を保持するステップは、イメージング容積内に配置される物体を用いて磁場を保持することを含んでもよい。当該物体は、事前に決定されてもよい密度プロファイル及び参照磁場応答を有してもよい。そのような実施形態では、動作604での磁場の不均一性を決定するステップは、イメージング容積内の磁場を測定するステップと、測定された磁場と物体に対して事前に決定された参照磁場とを比較するステップとを含んでもよい。例示的な実施形態では、プロセッサは、磁場測定値を受信し、測定された磁場と参照磁場とを比較して磁場の不均一性を識別するためのソフトウェアを使用してもよい。
【0050】
実施形態では、動作604での磁場の不均一性を決定するステップは、表面にわたって磁場を測定することと、当該表面にわたって測定された磁場に基づいてイメージング容積内の磁場を数学的に決定することとを含んでもよい。例えば、「磁気カメラ」は、MRIシステム内に着脱可能で配置されてもよい。その磁気カメラは、当該磁気カメラの表面にわたって磁場を測定するための複数のセンサを含んでもよい。磁気カメラの複数のセンサから収集されたデータは、イメージング容積内の磁場を数学的に決定するように使用されてもよい。実施形態では、プロセッサは、磁気カメラからデータを受信し、磁気カメラの表面にわたる磁場に基づき、イメージング容積内の磁場を決定するためのソフトウェアを使用してもよい。
【0051】
本開示で説明される原理を考慮すれば、種々の磁場の不均一性をシムアウトするためのシステム及び方法の例示的な実施形態が以下に提供される。
【0052】
例1:第1の構台により導入された不均一性のシムアウト
ある実施形態では、本開示のMRIシステム内の構台上に18個の「輪」が存在してもよい。これらの「輪」は、回転の間、構台を支持して導く。その「輪」は、強磁性物質から製造されてもよい。構台が回転するにつれてイメージング容積内の磁場の不均一性がどのように変化するかを測定するように測定が実行された。(例えば、45cmのDSVを有する24平面、24アングル(角度)の)フィールドカメラが360度にわたって29個の回転構台位置に対して磁場マップを取得するように使用された。その結果が
図7に実線で図示される。この図は、ピーク・ツー・ピークの測定された不均一性が43.95ppmの平均値で構台が回転している間では20.5ppmで変化することを示す。
【0053】
式(3)に関して上述説明されたシミング手順が自由度10を有するシムコイルを用いるこれらの測定の間に取得されるデータに適用された。その結果が
図7で示される。
図7でシミュレーションされたデータの変動は、20.90ppmの平均値を用いて3.92ppmに等しい。例として、表3には、不均一性が55ppmであった測定番号15と測定番号16とに対して必要とされる電流値がリストアップされる。
【0055】
またさらに、式(3)に関して上述説明されたシミング手順が自由度6を有するシムコイルを用いるこれらの測定の間に取得されるデータに適用された。自由度6は、
図5B〜
図5Dで図示されるいずれかの実施形態に従ってXシムコイル、Yシムコイル、及びZシムコイルを構成することにより提供されてもよい。その結果が
図8で示される。いま、
図8でシミュレーションされたデータの変動は、23.45ppmの平均値を用いて3.26ppmに等しい。例として、表4には、不均一性が55ppmであった測定番号15と測定番号16とに対して必要とされる電流値がリストアップされる。
【0057】
例2:第2の構台により導入された不均一性のシムアウト
この例での「輪」は、ステンレス鋼、タングステン、アンプコロイ(登録商標)から製造された。構台が回転するにつれてイメージング容積内の磁場の不均一性がどのように変化するかを測定するように測定が実行された。(例えば、45cmのDSVを有する24平面、24アングル(角度)の)フィールドカメラが360度にわたって29個の回転構台位置に対して磁場マップを取得するように使用された。その結果が
図9に実線で図示される。この図は、ピーク・ツー・ピークの測定された不均一性が45.49ppmの平均値で構台が回転している間では2.67ppmで変化することを示す。
【0058】
式(3)に関して上述説明されたシミング手順が自由度10を有するシムコイルを用いるこれらの測定の間に取得されるデータに適用された。シミュレーションされたデータの結果が
図9において破線で示される。
図9における変動は、18.50ppmの平均値を用いて0.82ppmに等しい。例として、表5には、不均一性が45ppmであった測定番号15と測定番号16とに対して必要とされる電流値がリストアップされる。
【0060】
式(3)に関して上述説明されたシミング手順が自由度6を有するシムコイルを用いるこれらの測定の間に取得されるデータに適用された。自由度6は、
図5B〜
図5Dで図示されるいずれかの実施形態に従ってXシムコイル、Yシムコイル、及びZシムコイルを構成することにより提供されてもよい。シミュレーションされたデータの結果が
図10において破線で示される。
図10でシミュレーションされたデータの変動は、24.50ppmの平均値を用いて2.35ppmに等しい。例として、表6には、不均一性が45ppmであった測定番号15と測定番号16とに対して必要とされる電流値がリストアップされる。
【0062】
例3:患者テーブルの動きにより導入された不均一性のシムアウト
図1における患者テーブル108の位置は、例えばモータなどのいくつかの磁性物質を含んでもよく、例えば、それ故に磁場の不均一性に影響を及ぼす可能性がある。アクティブシムは患者テーブル位置を補正することができる。ビューレイシステムにおける患者テーブルは、磁性成分を有する部品を含む。この患者テーブルは、左から右にもしくは上から下に軸方向に移動することができる。軸方向の動きの間、磁性部品は、患者テーブルに沿って移動しない。第1の2つのケース(左から右への移動、上から下への移動)では、磁性部品は、患者テーブルに沿って移動する。これらのケースでは、患者テーブルの動きは、磁場の不均一性に影響を及ぼすであろう。患者テーブルの動きが磁場の不均一性にどのように影響を及ぼすのかを調査するために5回の測定が行われた。それらは以下の通りであった。
図11は、測定の結果を実線で図示する。
1.患者テーブルが初期(デフォルト)位置にある。
2.患者テーブルが(初期位置より100ミリだけ)下の位置にある。
3.患者テーブルが(初期位置より100ミリだけ)上の位置にある。
4.患者テーブルが(初期位置より70ミリだけ)左の位置にある。
5.患者テーブルが(初期位置より70ミリだけ)右の位置にある。
【0063】
例4:統合化されたシステムの不均一性のシムアウト
完全に統合化されたビューレイシステムの磁場プロットが取られた。構台はスチールから形成されたショックアブソーバ(衝撃吸収材)を含む。ピーク・ツー・ピークの磁場の不均一性が45cmのDSVにわたって98.49ppmと測定された。主な寄与はZ2の調和関数から来る。この種の挙動は、ロードされた構台の対称性に起因するかもしれない。2、3の調和関数が表7にリストアップされる。
【0065】
そのデータは、強いZ2の調和関数が存在していることを示し、それは表7と一致する。式(3)に関して上述説明されたシミング手順が自由度10を有するシムコイルを用いるこれらのデータに適用された。シミングの後、磁場の不均一性は22.4ppmまで低減された。以下にリストアップされた表8及び表9には、帯域(帯球)調和関数のアクティブシミングの前後の比較と、方域(方球)調和関数のアクティブシミングの前後の比較とがそれぞれ示されている。表8及び表9は、アクティブシムコイルが実行した仕事が線形調和関数及び二次調和関数をほとんどゼロへと無効化していることを示している。調和関数Z4は、符号を変化させた。残りの調和関数は、著しく変化しなかった。
【0068】
表10には、シムコイルにおいて必要とされる電流値がリストアップされる。
【0070】
LINAC−MMシステムのアクティブシミング
LINAC−MRIシステムは特許文献4で説明され、それが参照によりここで組み込まれる。そのようなLINAC−MRIシステムは、本開示で説明されたシムコイルアッセンブリ208を含むように変更されてもよい。例示的なLINAC−MRIシステムでは、45cmのDSVにわたってLINACにより導入された磁場の不均一性は、914.67ppmに等しい。球面調和関数は主に、表11でリストアップされたZ2、Z4、X、及びYである。
【0072】
アクティブシムが本開示のシムコイルアッセンブリを用いて適用された後、磁場の不均一性は、45cmのDSVにわたって29.88ppmまで低減され、対応する複数の球面調和関数が表12でリストアップされる。
【0074】
対応する複数のシム電流が表13にリストアップされる。
【0076】
この例では、アクティブシムコイルを用いて不均一性がシムアウトされた。もう1つのアプローチが線形の項X及びYを無効化するための傾斜オフセットを適用することである。傾斜オフセットの適用がまた傾斜コイルの内部特性であるより高次の不純物を導入させる。このケースでは、45cmのDSVにわたって磁場の不均一性は366.50ppmに等しい。アクティブシミング後では、磁場の不均一性は24.9ppmまで低減される。
【0077】
対応するシム電流が表14にリストアップされる。このケースでは、Zシムにおける電流は表13におけるのとほぼ同じだけ残り、Xシム及びYシムに対する電流は表13におけるXシム及びYシムに対する電流と比較すると約3倍低減される。
【0079】
開示された複数の原理に従った種々の複数の実施形態が上述説明された一方で、それらは例示だけの方法により提示されたのであって、限定されないということが理解されるべきである。従って、1つもしくは複数の発明の広さ及び範囲は、上述説明された例示的な複数の実施形態のいずれかにより限定されるべきでないが、この開示から公表する特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってだけに定義されるべきである。さらに、上述説明された複数の利点は、任意の発行された特許請求の範囲の、複数の利点のいずれかもしくはすべてを伴う複数のプロセス及び複数の構造に対する応用を制限することは意図されない。
【0080】
さらに、セクションの冒頭説明は、この開示から公表されるかもしれないいくつかの複数の請求項において設定される1つもしくは複数の発明を制限しないであろうし、特徴付けもしないであろう。特に、実施例の方法により、冒頭説明は「技術分野」と呼ぶのだけれど、かかる特許請求の範囲は、いわゆる技術分野を説明するためのこの冒頭説明のもとで選択された言語により制限されるべきでない。さらに、「背景技術」における技術説明は、技術がこの開示における任意の1つもしくは複数の発明に対する従来技術であることの自白として解釈されるべきでない。「課題を解決するための手段」もまた、公表された特許請求の範囲において説明された1つもしくは複数の発明の特徴として解釈されるべきでない。さらに、一般的にこの開示に対する任意の参照、もしくは単数における言語「発明」の使用は以下に説明された複数の請求項の範囲に関して任意の制限を意味することは意図されない。複数の発明は、この開示から公表する複数の請求項の複数の限定に従って説明されてもよく、従ってそれらにより保護される複数の請求項は、1つもしくは複数の発明及びそれらの複数の均等物を定義する。