特許第6650449号(P6650449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6650449織られたテキスタイル材料上にインク画像を捺染する方法、捺染された織物テキスタイル物品、及び織られたテキスタイル材料上に画像を印刷するための下地塗装用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650449
(24)【登録日】2020年1月22日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】織られたテキスタイル材料上にインク画像を捺染する方法、捺染された織物テキスタイル物品、及び織られたテキスタイル材料上に画像を印刷するための下地塗装用組成物
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/00 20060101AFI20200210BHJP
   D06P 1/52 20060101ALI20200210BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20200210BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20200210BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20200210BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20200210BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20200210BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20200210BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   D06P5/00 104
   D06P1/52
   D06P5/30
   B41M5/00 114
   B41M5/00 132
   B41M5/00 134
   C09D11/30
   C09D5/00 D
   C09D133/00
   C09D7/65
   B41J2/01 123
   B41J2/01 125
   B41J2/01 501
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-524141(P2017-524141)
(86)(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公表番号】特表2017-530269(P2017-530269A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】IL2015050758
(87)【国際公開番号】WO2016013016
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年5月18日
(31)【優先権主張番号】14/341,516
(32)【優先日】2014年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517026014
【氏名又は名称】コーニット・デジタル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 達己
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】スローン,ドナルド・ディー
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−220643(JP,A)
【文献】 特開2005−290362(JP,A)
【文献】 特開昭58−036277(JP,A)
【文献】 国際公開第97/040108(WO,A1)
【文献】 特表2014−501636(JP,A)
【文献】 特開2005−299008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P
C09D 11/30
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織られたテキスタイル材料上にインク画像を捺染する方法であって、
少なくとも前記織られたテキスタイル材料の前記画像を印捺しようとする区域に対応する部分へ、水性アクリル系ラテックス材料と、前記ラテックス材料とは別体の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂と、1つ又はそれ以上の融合助剤と、を備えている下地塗装用組成物を塗布するステップと、
少なくとも前記テキスタイル材料の前記下地塗装用組成物を含んでいる部分の上へ、1つ又はそれ以上のデジタルインクで、インクジェット捺染機を使用して、前記画像を捺染するステップと、
前記画像を前記テキスタイル材料の上に硬化させ、それにより印捺されたテキスタイル物品を形成するステップと、
を備え、
前記下地塗装用組成物は、
0重量%±3%ら70重量%±7%の間の水性アクリル系ラテックス材料と、
.5重量%±0.25%ら20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂分散体と、
重量%±0.5%ら20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上の融合助剤と、
重量%から40重量%±4%の間の顔料分散体と、を備えている方法。
【請求項2】
前記下地塗装用組成物はインクジェット捺染ヘッドを使用して塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記下地塗装用組成物は、当該下地塗装用組成物の微細液滴の噴霧を生成するように構成されている1つ又はそれ以上のノズルを使用して前記テキスタイル材料へ塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記下地塗装用組成物は、粘度制御剤、顔料、及び結着剤、のうちの少なくとも1つを更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記下地塗装用組成物を塗布する前記ステップと前記捺染するステップは、前記下地塗装用組成物の乾燥を生じさせるための50℃を超える温度に前記テキスタイル材料を曝すという介在ステップ無しに連続して起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記画像を前記テキスタイル材料の上に硬化させる前記ステップは、前記テキスタイル材料を65℃を超える温度で作動している乾燥装置に通して少なくとも30秒の期間に亘って導くステップを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記下地塗装用組成物が、前記1つ又はそれ以上のデジタルインクを受け入れる区域において前記織られたテキスタイル材料へ塗布される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記織られたテキスタイル材料は合成樹脂材料を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記合成樹脂材料は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びそれらの配合物、から成る群より選択されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記下地塗装用組成物は、インクジェット印刷に適しており、25℃で、8cp±0.8cpら60cp±6cpの間の粘度を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記融合助剤はポリエチレングリコールを備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記下地塗装用組成物は、その上に1つ又はそれ以上のデジタルインクを受けるステップに先立つ乾燥ステップを要しない、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
織られたテキスタイル材料と硬化した画像層との間に介在する硬化した下地塗布用組成物を呈することを特徴とする、捺染された織物テキスタイル物品であって、
前記下地塗装用組成物は、
30重量%±3%から70重量%±7%の間の水性アクリル系ラテックス材料と、
2.5重量%±0.25%から20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂分散体と、
5重量%±0.5%から20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上の融合助剤と、
0重量%から40重量%±4%の間の顔料分散体と、を備えている、
捺染された織物テキスタイル物品。
【請求項14】
織られたテキスタイル材料上に画像を印刷するための下地塗装用組成物であって、
0重量%±3%ら70重量%±7%の間の水性アクリル系ラテックス材料と、
.5重量%±0.25%ら20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂分散体と、
重量%±0.5%ら20重量%±2%の間の1つ又はそれ以上の融合助剤と、
重量%から40重量%±4%の間の顔料分散体と、
を備え、
前記1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂は、前記ラテックス材料とは別体である、下地塗装用組成物
【請求項15】
前記下地塗装用組成物は、インクジェット印刷に適しており、25℃で、8cp±0.8cpら60cp±6cpの間の粘度を有している、請求項14に記載の下地塗装用組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、織られたテキスタイル材料、特に合成樹脂繊維を備えるテキスタイル材料の上へインク画像をデジタル捺染するための組成物及びデジタル捺染する方法に向けられている。厳密には、アクリル系ラテックス材料を備える下地塗装であって、まだ湿っている間に即ち完全に硬化する前にその上をデジタルインクで印捺されるように調合された下地塗装を利用するデジタル捺染システムが開示されている。従って、下地塗装は、画像層の堆積に先立って下地塗装を完全に乾かす又は硬化させる中間の乾燥又は加熱乾燥サイクル無しにテキスタイル材料の上へのインク画像の高速捺染を可能にさせる。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂材料から作られている織られたテキスタイルが時に衣料品の製造で利用されるようになってきている。また一方で、合成繊維技術の進歩は、着用者の身体から湿気を逃すといったような強化された性能特性を有する衣類とりわけシャツ類を製造する能力をもたらした。向上した性能特性が、多くの分野、特に競技用ウェアの分野での合成樹脂テキスタイル人気を高めている。
【0003】
合成樹脂テキスタイル材料は所望の色を布地へ付与する染料を含有している場合が多い。染められたテキスタイルから形成された衣料品が、使用者の好みに基づいて衣料品を特注仕様化する絵作品、文章、ロゴ、など、の様な印捺画像を有しているということもざらにある。これらの様々な画像のスクリーン捺染が、衣料品とりわけTシャツ類のこの特注仕様化を提供するのに使用される人気の捺染方法である。しかしながら、画像のスクリーン捺染は或る種の欠点を有している。捺染プロセスのために要求されるスクリーンの調製が、捺染しようとする画像の複雑さに依ってはかなり高価になることもあり得る。而して、経済的に実現可能とするためには、大量の当該特定衣料品を調製せざるを得ない。従って、スクリーン捺染は単一又は小口の生産工程にとっては概して理想的でない。更に、スクリーン捺染作業で使用されているインクは概して粘性が高く、どうしても比較的厚い層でテキスタイル材料の上へ堆積されてしまうことになり、衣料品が着用された際のその感触に悪影響を与えかねない。
【0004】
これらの欠点に鑑み、織られたテキスタイル材料上に画像を作成するためのスクリーン捺染に代わるものとしてデジタル捺染が探究されてきた。しかしながら、テキスタイル材料とりわけ合成樹脂テキスタイル材料のための現在のデジタル捺染技術もまた或る種の短所を呈している。デジタル捺染で使用されているインクはスクリーン捺染インクより概して粘性が低く、テキスタイル繊維の中へより深く浸透する傾向があり、それにより画像品質が低下することもある。インクが繊維の中へあまりに深く吸収されるのを防ぐために、テキスタイル材料を高温に曝すことによって、インクを構成している樹脂系の硬化を加速させることもある。一般的には、テキスタイル材料は画像が印捺された直後に、285−300°F(140.556−148.889℃)の温度で作動している乾燥機を通される。但し、通常6−8分間のこれらの高温への暴露は、テキスタイル染料系を失活させ、染料が捺染画像に滲み込み画像を劣化させないとも限らない。特に合成樹脂テキスタイル材料の文脈では、テキスタイル繊維への硬化したインク画像の長期接着もまた問題を孕んでいる。テキスタイル繊維へのインクの接着性が弱ければ、衣料品は劣った耐水洗性を呈することになり、複数回の水洗/乾燥サイクルを経た時点でインク画像はひびが入ったり、色あせしたり、或いは剥がれたりするかもしれない。
【0005】
インク画像がまず仮の担持基板の上に印捺され、その後、続けて衣料品へ転写されるという画像転写システムも提案されている。しかし、これらのシステムは概してより労働集約的且つ材料集約的であり、それにより全体的な衣料品生産費用への出費が加算される。従って、当該技術では、テキスタイル材料の上へ画像を捺染するシステムにおいて現行のスクリーン捺染技術及びデジタル捺染技術に係る上記問題を回避するシステムに対する真の必要性が存在し、未だ満たされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,092,003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記短所を克服し、テキスタイル材料、厳密には織られたテキスタイル材料、よりいっそう厳密には織られた合成樹脂テキスタイル材料の上へ画像を効率的且つ経済的な方式で捺染するためのデジタル捺染システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、織られたテキスタイル材料上にインク画像をデジタル捺染するためのシステムで使用される下地塗装が提供されている。下地塗装は、約30重量%から約70重量%の間の水性アクリル系ラテックス材料と、約2.5重量%から約20重量%の間の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂分散体と、約5重量%から約20重量%の間の1つ又はそれ以上の融合助剤と、約0重量%から約40重量%の間の顔料分散体と、を備えている。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、織られたテキスタイル材料上に画像を捺染する方法が提供されている。少なくとも織られたテキスタイル材料の画像を印捺しようとする区域に対応している部分へ下地塗装が塗布される。下地塗装は、水性アクリル系ラテックス材料と、当該ラテックス材料とは別体の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂と、1つ又はそれ以上の融合助剤と、を備えている。少なくともテキスタイル材料の下地塗装を含んでいる部分の上へ、1つ又はそれ以上のデジタルインクで、インクジェット捺染機を使用して、インク画像が捺染される。インク画像はテキスタイル材料の上に硬化させられ、それにより印捺されたテキスタイル物品が形成される。
【0010】
本発明の更に他の実施形態によれば、ここに開示されている方法により形成された捺染物品、及びここに開示されている下地塗装を備える捺染物品、が提供されている。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態の或る態様によれば、織られたテキスタイル材料上にインク画像を捺染する方法が提供されており、当該方法は、
少なくとも織られたテキスタイル材料の画像を印捺しようとする区域に対応する部分へ、水性アクリル系ラテックス材料と、当該ラテックス材料とは別体の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂と、1つ又はそれ以上の融合助剤と、を含んでいる下地塗装を塗布するステップと、
少なくともテキスタイル材料の下地塗装を含んでいる部分の上へ、1つ又はそれ以上のデジタルインクで、インクジェット捺染機を使用して、インク画像を捺染するステップと、
インク画像をテキスタイル材料の上に硬化させ、それにより印捺されたテキスタイル物品を形成するステップと、
を含んでいる。
【0012】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装はインクジェット捺染ヘッドを使用して塗布される。
【0013】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、下地塗装の微細液滴の噴霧を生成するように構成されている1つ又はそれ以上のノズルを使用してテキスタイル材料へ塗布される。
【0014】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、粘度制御剤、顔料、及び結着剤、のうちの少なくとも1つを更に含んでいる。
【0015】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装を塗布するステップと捺染するステップは、下地塗工の乾燥を生じさせるための120°F(48.8889℃)を超える温度にテキスタイル材料を曝すという介在ステップ無しに連続して起こる。
【0016】
幾つかの実施形態によれば、インク画像をテキスタイル材料の上に硬化させるステップは、テキスタイル材料を150°F(65.5556℃)を超える温度で作動している乾燥装置に通して少なくとも30秒の期間に亘って導くステップを含んでいる。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、織られたテキスタイル材料は衣料品である。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、方法は、下地塗装が織られたテキスタイル材料へ塗布される下地塗装ステーション及びインク画像がテキスタイル材料上へ捺染される捺染ステーションを通過してゆくコンベヤを含んでいるインライン捺染装置を使用して遂行される。
【0019】
幾つかの実施形態によれば、織られたテキスタイル材料の1つ又はそれ以上のデジタルインクを受け入れない何れかの区域へは下地塗工も塗布されない。
【0020】
幾つかの実施形態では、織られたテキスタイル材料は合成樹脂材料を含んでいる。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、合成樹脂材料は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及びそれらの配合物、から成る群より選択されている。
【0022】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を更に含んでいる。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、水性アクリル系ラテックス材料を含む第1の部と、1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を含む第2の部と、を含んでいる。
【0024】
幾つかの実施形態では、下地塗装は酵素を含んでいる。
【0025】
本発明の幾つかの実施形態の或る態様によれば、織られたテキスタイル材料上にインク画像をデジタル捺染するためのシステムで使用される下地塗装が提供されており、当該下地塗装は、
約30重量%から約70重量%の間の水性アクリル系ラテックス材料と、
約2.5重量%から約20重量%の間の1つ又はそれ以上のアクリル系樹脂分散体と、
約5重量%から約20重量%の間の1つ又はそれ以上の融合助剤と、
約0重量%から約40重量%の間の顔料分散体と、
を含んでいる。
【0026】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は約15重量%から約75重量%の間の総水分を有している。
【0027】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は約0.01重量%から約5重量%の間の結着剤を更に含んでおり、当該結着剤はトリエタノールアミンを含んでいる。
【0028】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装はインクジェット可能であり、約8cpから約60cpの間の粘度を有している。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、融合助剤はポリエチレングリコールを含んでいる。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、インク画像を形成するステップのインクとして使用するために調合されていない。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、その上に1つ又はそれ以上のデジタルインクを受けるステップに先立つ乾燥ステップを要しない。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を更に含んでいる。
【0033】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は、水性アクリル系ラテックス材料を含む第1の部と、1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を含む第2の部と、を含んでいる。
【0034】
幾つかの実施形態によれば、下地塗装は酵素を含んでいる。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態の或る態様によれば、ここに提供されている方法により形成された捺染物品が提供されている。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態の或る態様によれば、ここに提供されている下地塗装を含んでいる捺染物品が提供されている。
【0037】
幾つかの実施形態によれば、物品は、下地塗装の上に堆積されたインク画像を更に含んでいる。
【0038】
幾つかの実施形態によれば、捺染物品は、織られたテキスタイル材料から形成された衣料品を含んでいる。
【0039】
他に定義されていない限り、ここに使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に普通に理解されている意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践又は試験では、ここに説明されているものと同様又は同等の方法及び材料を使用することもできるが、一例としての方法及び/又は材料が以下に記載されている。万一、対立した場合は、定義を含め本特許明細書が支配する。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定する意図はない。
【0040】
ここでの使用に差し、「約」という用語は±10%をいう。
【0041】
「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有している」という用語及びそれらの活用形は、「○○を含むが但し○○に限定されない」を意味する。
【0042】
「○○から成る」という用語は、「○○を含み且つ○○に限定される」を意味する。
【0043】
「本質的に〇〇から成る」という用語は、組成、方法、又は構造は、追加の成分、ステップ、及び/又は部分を含むこともできるが、但し追加の成分、ステップ、及び/又は部分が特許請求の範囲に記載の組成、方法、又は構造の基本的且つ新規性のある特性を実質的に改変しない場合に限って、という意味である。
【0044】
ここでの使用に際し、原文の単数形を表す冠詞の対訳である「或る」、「一」、及び「当該」は、文脈によって別途明確に指示されない限りは複数の言及対象物を含む。例えば、「或る化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含められる。
【0045】
本出願全体を通して、この発明の様々な実施形態は範囲形式で提示されていることもある。範囲形式での表記は簡便さ及び簡潔さを期したまでのことであり、本発明の範囲に対する柔軟性の無い限定と解釈されてはならない。従って、或る範囲の表記は、具体的に開示されている実施可能な部分範囲全てはもとより当該範囲内の個別数値も有しているものと考えるべきである。例えば、1から6の様な範囲の表記は、1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6、など、の様な具体的に開示されている部分範囲はもとより、当該範囲内の個別の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6も有しているものと考えるべきである。このことは範囲の広さに関係なく当て嵌まる。
【0046】
ここで数的範囲が指示されているときはいつでも、指示されている範囲内の何れの記載の数字(小数又は整数)も含むものとする。第1の指示数と第2の指示数の間「を範囲とする/の範囲にある」及び第1の指示数「から」第2の指示数「まで」「を範囲とする/の範囲にある」はここでは入れ換え可能に使用されており、第1及び第2の指示されている数並びにそれらの間の小数及び整数全てを含むものとする。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態が、単に一例として、添付図面を参照しながら説明されている。これより具体的に図面を詳細に参照してゆくが、示されている詳細事項は、一例であり、本発明の実施形態を例示的に論じることを目的としていることを強調しておきたい。これに関し、説明を図面と併せて考察することで当業者には本発明の実施形態がどの様に実践され得るかが明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の1つの実施形態により作られたインライン捺染システムの概略画図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
ここに説明されている捺染システムは、本質的に汎用性があり、実質的に何れの天然及び合成のテキスタイル材料に関連した使用にも適している。とはいえ、捺染システムは、特に、織られた合成樹脂テキスタイル材料の上へ捺染する現在の方法に付きまとう問題に対処するよう適合されている。一例としての織られた合成樹脂テキスタイル材料には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、及び天然繊維と合成繊維の配合物、例えば綿/ポリエステル配合物、の繊維から作られたものが挙げられる。合成樹脂繊維類、特にポリエステル又はポリエステル配合物から作られたもの、を備えるテキスタイルは、概して、綿の様な天然繊維から作られたテキスタイルに比較して優れた吸放湿性及び乾燥性を実証しており、それにより活動着を作る材料として人気を博している。先に指摘されている様に、これらのテキスタイル材料は任意の所望される色を帯びるように染められることもある。しかしながら、それらから作られる物品の上へ画像を直接捺染しようとすることを複雑化するのがこれらの染料の存在である。
【0050】
本発明の特定の実施形態は、テキスタイル材料上に画像をデジタル捺染するステップに先立って、当該材料へ塗布される水性下地塗装を利用するステップを備えている。特定の実施形態では、下地塗装は、染料がテキスタイル繊維から剥がれ捺染された画像の品質を低下させるのを防ぐ染料固定剤又はブロッカーとして機能することができる。下地塗装は、水性樹脂ラテックス材料、具体的には、約30重量%から約65重量%の間、又は約35重量%から約55重量%の間、又は約40重量%から約50重量%の間の固形分を有しているアクリル系樹脂ラテックス乳剤、を備えている。アクリル系樹脂ラテックス乳剤は、0.5ミクロン未満、0.2ミクロン未満、又は0.1ミクロン未満の粒径を有していてもよい。アクリル系樹脂ラテックス乳剤は、約−10℃から約50℃の間、約−5℃から約25℃の間、又は約0℃から約15℃の間の最小薄膜形成温度(ラテックスが薄膜を形成する最小温度)を有していてもよい。アクリル系樹脂ラテックス乳剤は、更に、塩基性pHを有するアルカリ性であってもよく、8より大きい、又は約8から約11の間、約8.5から約10.5の間、又は約9から約10の間のpHを有しているのが望ましい。一例としてのアクリル系樹脂ラテックス材料には、ENCOR627(固形分43.5%、粒径0.10ミクロン、最小薄膜化温度9℃、pH9.8、及びガラス転移温度15℃)、ENCOR2722(固形分42%、最小薄膜化温度<5℃、及びpH8.7を有しているAPEフリースチレンアクリル系ポリマー樹脂)、又はNEOCAR850(固形分45%、粒径0.07ミクロン、粘度150cp(BrookField社LVT#3、60rpm)、ガラス転移温度50℃(中心点)、及び最小薄膜化温度45℃の、雰囲気自己架橋性を有する疎水性ラテックス)が挙げられ、どれもArkema Coating、Resins社が提供している。
【0051】
下地塗装は、アクリル系樹脂ラテックス材料とは別に1つ又はそれ以上の追加の樹脂を含んでいてもよい。これらの追加の樹脂は、同様に、溶液又は乳剤中に分散されているアクリル系ポリマー又はコポリマー、ポリエステル、エポキシ、ビニルアクリレート、又はウレタンアクリレートであってもよい。特定の実施形態では、アクリル系樹脂は、約30重量%から約60重量%の間、約35重量%から約55重量%の間、約40重量%から約50重量%の間の固形分を備える水性分散体として提供されている。これらの樹脂は、アクリル系ラテックス材料中に含有されているものを含め、約1,000g/molから約100,000g/molの間、約5,000g/molから約50,000g/molの間、又は約10,000g/molから約25,000g/molの間の分子量を有していてもよい。これらの樹脂は、アクリル系ラテックス材料中に含有されているものを含め、約−45℃から約40℃の間、約−25℃から約30℃の間、又は約−10℃から約20℃の間のガラス転移温度を呈していてもよい。一例としてのアクリル系樹脂には、BASF社が提供しているJONCRYL HPD296(修飾されたアクリル系コポリマーのアンモニウム塩を備え、固形分35.5%、分子量11,500(重量平均)、Tg15℃、pH8.7)が挙げられる。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、下地塗装は、更に、225°F(107.222℃)を超える温度でテキスタイル材料繊維によって放出される染料の移染を防ぐのを支援する1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を備えていてもよい。アジリジンは、アジリジン官能基、即ち、1つのアミン基と2つのメチレン基を有する三員ヘテロ環、を含んでいる有機化合物である。本発明の特定の実施形態によれば、アジリジン化合物は、多官能性であってもよく、つまりは1つより多いアジリジン部分を備えていてもよい。特定の実施形態では、下地塗装は、二官能価アジリジン化合物、三官能価アジリジン化合物、又はそれらの組合せを備えていてもよい。一例としての多官能価アジリジン化合物は、ニュージャージー州メドフォードのPolyAziridine,LLC社から入手可能なPZ−33であり、次の一般式を有する。
【0053】
【化1】
【0054】
特定の実施形態では、1つ又はそれ以上のアジリジン化合物は、約0.1重量%から約6重量%の間、約0.5重量%から約4.5重量%の間、約1重量%から約3重量%の間のレベルで下地塗装中に存在していてもよい。
【0055】
アジリジン化合物は下地塗装の残部と直接混ぜられ、次いで一部型組成物として塗布されてもよい。但し、特定の実施形態では、アジリジン化合物の添加は、下地塗装中に含有されている樹脂の架橋の開始を生じさせることになる。下地塗装がインクジェット捺染システムを介して塗布されることになっている実施形態では、インクジェットヘッド内での下地塗装の架橋の開始はインクジェットヘッドの汚損を引き起こす原因になりかねない。従って、下地塗装の他の成分がインクジェットヘッドから吐出されてしまうまではこれらの成分と別けてアジリジン化合物を維持するが望ましいであろう。ここにその全体が参考文献として援用される米国特許第8,092,003号は、下地塗装成分とアジリジン化合物が受け手である表面に向かって又は表面上に吐出されるまでは別々に留め置かれる捺染システムを開示している。而して、その様な実施形態では、下地塗装は2つの別々に塗布される部、即ちアクリル系樹脂ラテックスを備える第1の部とアジリジン化合物を備える第2の部、を備えている。両部はインクジェット機器を使用して塗布される必要もなければ、両部が同時に塗布される必要もないことを指摘しておく。アジリジン化合物を、従来式スプレーノズルを使ってテキスタイル材料の上に吹き付けられる溶液の形態で塗布すること、及びその場合アクリル系ラテックス部分はインクジェット捺染機を使ってテキスタイル材料の表面へ選択的に塗布できること、は本発明の範囲内である。
【0056】
二部系として調合されている場合、下地塗装のアジリジン含有部分は、0.1重量%から約12重量%の間、約0.5重量%から約8重量%の間、又は約1重量%から約6重量%の間のアジリジン化合物を備える水性の分散体又は溶液として提供されていてもよい。アジリジン含有部分の調合を支援するために、エタノールの様な或る量のアルコールを使用することもできる。特定の実施形態では、アジリジン含有部分及び下地被覆のアクリル系樹脂ラテックス部分は同様の比率で目標表面へ塗布される。具体的には、特定の実施形態では、アジリジン含有部分はアクリル系樹脂ラテックス部分と同じ割合で別々のインクジェットヘッドから噴射させることができる。
【0057】
1つ又はそれ以上のアジリジン化合物を備える下地被覆の塗布後、下地被覆内に含有されているアジリジン化合物と樹脂の間の反応が24時間以内に完了まで進み、それによりアジリジン残分は実質的に不活性になる。硬化プロセスは、以下に更に論じられている様にテキスタイル材料への熱の印加を通じて加速され、ひいてはアジリジン化合物の酸化が引き起こされる。不活性になることで、下地調合物中に存在するアジリジン残分がテキスタイル材料の使用又は着用を通じて皮膚刺激を引き起こす可能性は下がる。特定の実施形態では、アジリジン残分を含有する硬化した下地塗装は非刺激性であり、使用者又は着用者に皮膚炎を発症させる誘因となることはない。
【0058】
下地塗装は、概して、過酸化物及びホルムアルデヒド化合物を含まない。而して、本発明の特定の実施形態は、2重量%未満、1重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満の過酸化物及びホルムアルデヒド化合物を備えている。
【0059】
本発明の特定の実施形態では、下地塗装は、テキスタイル材料によって放出される染料を吸着しそれにより染料蒸気が最終的に捺染されたインク画像へ透過してゆくのを防止することのできる、木炭、黒鉛、又は活性炭の様な吸着性炭素系材料を含んでいてもよい。吸着性炭素含有材料がテキスタイル材料と捺染されたインク画像の間にバリアを提供する。炭素含有材料は、更に、多部下地塗装系の更に別の部として塗布することもでき、その場合、それはアクリル系樹脂ラテックス部分及び/又はアジリジン含有部分とは異なるインックジェットヘッドを通して別途噴射させればよい。炭素含有部分は、水性分散体の形態であってもよく、約0.1重量%から約6重量%の間、約0.5重量%から約5重量%の間、約1重量%から約3重量%の間のレベルで炭素含有材料を備えていてもよい。炭素含有材料は、80pL又はそれより小さいインクジェットヘッドを通してインクジェット可能となるようにサイズが小さくなくてはならない。炭素含有材料は、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、又は0.1ミクロン未満の平均粒径を有していてもよい。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、下地塗装は、更に、テキスタイル材料から放出される染料蒸気の中和のための脱気剤として作用する1つ又はそれ以上の酵素を備えていてもよい。特定の実施形態では、1つ又はそれ以上の酵素は、プロテアーゼとアルファアミラーゼから成る群より選択されていてもよい。1つ又はそれ以上の酵素は下地塗装の他の成分と混合されてからテキスタイル材料へ塗布されてもよいし、或いは1つ又はそれ以上の酵素を先に説明されている様に二部系の一部として調合することもできる。1つ又はそれ以上の酵素は、下地塗装全体の重量に基づき、約0.01重量%から約10重量%の間、約0.1重量%から約5重量%の間、又は0.5重量%から約2重量%の間のレベルで下地塗装中に存在していてもよい。酵素は、下地塗装へ、又は多部下地塗装系の少なくともアクリル系樹脂ラテックス部分へ、直接組み入れられてもよい。代わりに、酵素は他の部分の何れかへ、又は下地塗装系の単独分離塗布部分へ、組み入れられてもよい。
【0061】
下地塗装は随意であるが顔料を含有していてもよい。顔料は、例えば、無機顔料及び/又は有機顔料を備えることができる。無機顔料には、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、又はそれらの組合せが挙げられる。有機顔料には、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、又はそれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、顔料は白い色をしているのが望ましい。白に着色された下地塗装はテキスタイル材料の上へ印捺されることになるインク画像層の色明度の損失を回避する助けとなることが発見されている。以下に更に解説されている様に、下地塗装が着色されている場合、テキスタイル材料へのその塗布は、それがテキスタイル材料のその後にインク画像層を受けることになる部分のみへ塗布されるように制御された方式で行われるのが望ましい。顔料は、1ミクロン未満、0.5ミクロン未満、又は0.1ミクロン未満の粒径を有する顔料分散体として、下地塗装へ組み入れられてもよい。
【0062】
ここで使用されている顔料は、顆粒形態又は液体形態で供給されてもよい。顔料は更に水性分散体として供給されてもよい。ここでの使用に際し、「顔料」という用語は、分散媒へ導入されたときに懸濁又は分散したままである不溶性着色剤粒子又は固体着色剤粒子をいう。更に理解しておくべきこととして、「顔料」という用語は、分散媒中に完全に溶解できる粒子を含有する染料又は水溶性着色剤を網羅するつもりはない。
【0063】
本発明に従って使用される顔料の量は、(1)接着剤組成物の硬化速度を最大化する、(2)接着剤組成物及び最終的な捺染されたインク画像へ所望の色を付与する、(3)所望の湿潤性能を獲得する、及び/又は(4)UV又はLEDエネルギーへの感受性を増強する、ことに有効な量とすることができる。
【0064】
下地塗装は、更に、下地塗装の均質性を維持するのを支援する1つ又はそれ以上の融合助剤を備えていてもよい。特定の実施形態では、融合助剤は、ポリエチレングリコール(PEG)の様なポリエーテル化合物を備えていてもよい。特定の実施形態では、ポリエチレングリコールは、約300g/molから約1000g/molの間又は約300g/molから約500g/molの間の分子量を有する低分子量PEGということになっている。別の一例としての融合助剤は、Dow Chemical Company社からDOWANOL DPnPとして入手可能なジプロピレングリコールn−プロピルエーテルである。
【0065】
本発明の特定の実施形態では、アクリル系樹脂ラテックス材料と関連して共溶媒を使用することは要求されていないが、粘度制御を提供するために溶媒又は低粘稠化剤を下地塗装へ組み入れることもできる。特定の実施形態では、粘度制御剤は、ジアセトンアルコールの様なアルコールを備えていてもよい。
【0066】
様々な実施形態では、下地塗装は、少なくとも1つの結着剤を備えることができる。例えば、接着剤組成物は、少なくとも約0.01、0.05、又は0.1重量パーセント及び/又は約5、3、又は1重量パーセント以下の1つ又はそれ以上の結着剤を備えていてもよい。より具体的には、下地塗装は、約0.01から5、0.05から3、又は0.1から1重量パーセントの範囲の1つ又はそれ以上の結着剤を備えていてもよい。トリエタノールアミンは本発明と共に使用することのできる一例としての結着剤である。
【0067】
下地塗装は、更に、先に説明されている構成要素に加えて、界面活性剤、滑り改質剤、チキソトロープ剤、発泡剤、消泡剤、流れ又は他のレオロジー制御剤、ワックス、オイル、可塑剤、結着剤、酸化防止剤、殺カビ剤、殺菌剤、有機及び/又は無機充填剤粒子、均染剤、乳白剤、静電防止剤、分散剤、などの様な、各種の随意的な組成物強化材料を含有することができる。
【0068】
下地塗装のための一例としての組成範囲が下表1にまとめられている。別段の表明のない限り、全ての組成物値はここでは近似であり、重量パーセントである。
【0069】
【表1】
【0070】
ここに説明されている下地塗装は、インクジェット捺染機で使用されるのに十分に低い粘度を有し得るものであり、従ってインクジェット可能であると見なしてもよいのではないだろうか。例えば、下地塗装は、多部系での下地塗装の各々の部を含め、BrookField社が提供しているDV−II+Pro粘度計を使って測定して、25℃で少なくとも約8、12、15、又は18センチポイズ及び/又は約60、40、30、又は23センチポイズ以下の粘度を有することができる。より厳密には、下地塗装は、25℃で、8から60、12から40、15から30、又は18から23センチポイズの範囲の粘度を有することができる。
【0071】
低粘度は、約15ミクロンから約60ミクロンの間のノズル直径を有する小直径圧電インクジェットヘッドを通して下地塗装を噴射させられるようにする。下地塗装は、粘度をなおいっそう下げる働きをする加熱インクジェットヘッドと併せて使用されてもよい。加熱インクジェットヘッドは、下地塗装を、25℃から90℃の間、30℃から80℃の間、又は35℃から50℃の間の温度へ加熱することができる。低粘度のもう一つの利点は、より小さい滴径が実施可能になることである。例えば、組成物の滴径は、少なくとも約10、20、又は30ピコリットル及び/又は約200、140、又は80ピコリットル以下にすることができる。より厳密には、組成物の滴径は、約10から200、20から140、又は30から80ピコリットルの範囲にすることができる。
【0072】
下地塗装は、幾通りものやり方で、目標のテキスタイル材料へ塗布することができる。下地塗装は、無差別に、表面の大部分に亘って又は実質的にテキスタイル材料の印捺されることになっている表面全体に亘って塗布されてもよい。これらの実施形態では、下地塗装は透明又は無着色であるのが望ましいであろう、というのも続いて画像を印捺しようとする区域が下地塗装の塗布された区域にぴったり一致しないこともあるからだ。とはいえ、先に指摘されている様に、テキスタイル材料が濃色に染められてしまっている特定の実施形態では、テキスタイルの彩色が画像を透けるのを防ぐようにするため下地塗装は、好適には白色顔料で、着色されていてもよい。1つの実施形態では、下地塗装は、下地塗装を微細液滴の霧としてテキスタイル材料へ送達することのできる霧吹きシステムによって塗布されてもよい。別の実施形態では、下地塗装はインクジェット捺染機を使用してより精密に塗布されるようになっている。画像もインクジェット捺染機で捺染されるということから、下地塗装の堆積は、画像層をその上に形成させようとする意図される区域と一致するようにより精密に制御されることになる。
【0073】
画像は、ほぼ任意の所望のデジタル捺染システム及び織られたテキスタイル材料の上に捺染するために調合されているインクを使用して、テキスタイル材料の上へ印捺される。特定の実施形態では、画像を捺染するために使用されるインク系は、UV硬化可能であり、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマー樹脂、及びインク画像の硬化を促進するための光開始剤系、を含有していてもよい。他の実施形態では、インク系は水性分散体中に様々なアクリル系樹脂を備えていてもよい。1つ又はそれ以上の触媒又は架橋剤が、直接にインク系中に利用されているか又は画像の硬化を促進するようにインク系と同時に塗布されるかのどちらかであってもよい。例示としてのインク及び捺染システムは、ここにその全体が参考文献として援用される米国特許第8,092,003号に開示されている。
【0074】
インク系の硬化は、印捺されたテキスタイル材料への熱の印加を通じて加速させることができる。印捺されたテキスタイル材料は、テキスタイル材料を加熱するように構成されている乾燥装置を通されてもよい。特定の実施形態では、乾燥装置は、テキスタイル材料を、250°F(121.111℃)を超える、又は250°F(121.111℃)から300°F(148.889℃)の間、又は265°F(129.444℃)から285°F(140.556℃)の間の温度へ、少なくとも1分、少なくとも3分、又は少なくとも5分の期間に亘って曝すように構成されている。特定の実施形態では、テキスタイル材料は乾燥装置内のその様な高温条件に6分から8分の期間に亘って曝されるようになっていてもよい。
【0075】
先に指摘されている様に、その様な高温条件への暴露は、既にテキスタイル材料へ塗布されている染料の剥がれを引き起こす可能性がある。しかしながら、画像品質を低下させることになりかねないインク画像への染料の透過を下地塗装が防ぐ。本発明の特定の実施形態では、印捺されたテキスタイル材料は、225°F(107.222℃)、250°F(121.111℃)、265°F(129.444℃)、又は280°F(140.556℃)を超える温度へ、5分、8分、又は10分にも及ぶ期間に亘って、何らの認知されるインク画像への染料の透過又は画像品質の変化も無しに、曝露させることができる。
【0076】
特定の実施形態では、下地塗装は、テキスタイル材料上の捺染画像の作成を連続的なインライン捺染プロセスで達成させられるようにする。特に、下地塗装の塗布とインク画像の塗布の間の中間の乾燥ステップの必要性は回避され、プロセスは、後のインク画像が作成される時点で下地塗装がまだ湿っている(即ち完全には硬化していない)というウエット・オン・ウエットプロセスであると考えることができるだろう。而して、特定の実施形態では、下地塗装及びインクを同じインクジェットプレス又は連続するインライン捺染ヘッドを使用して塗布させることが許容可能である。特定の実施形態では、米国特許第8,092,003号に開示されている様なデュアルヘッド捺染システムを下地塗装から間を空けず引き続いてインクを堆積させるのに使用することができる。
【0077】
特定の実施形態では、本発明の捺染システムは、捺染された画像の完全硬化を実現するのに更なるエネルギーの印加を必要としない自己架橋性又は自己硬化性である。しかしながら、硬化プロセスを加速するのが望ましければ、上述の乾燥装置の使用を介するなどして熱を印加してもよい。本発明の特定の実施形態では、印捺されたテキスタイル材料は、150°F(65.5556℃)を超える、200°F(93.3333℃)を超える、又は250°F(121.111℃)を超える温度で作動している乾燥装置を、30秒を超える、1分を超える、又は5分を超える時間の期間に亘って通過させられる。他の実施形態では、印捺されたテキスタイル材料は、約150°F(65.5556℃)から約350°F(176.667℃)の間、約200°F(93.3333℃)から約325°F(162.778℃)の間、又は約250°F(121.111℃)から約300°F(148.449℃)の間の温度で作動している乾燥装置を、約30秒から約10分の間、約1分から約9分の間、又は約5分から約8分の間の時間の期間に亘って通過させられる。
【0078】
本発明の特定の実施形態は、テキスタイル材料の上へ画像を捺染するために外部からの熱を印加する必要が殆ど又は一切無く、捺染機にとって有意なエネルギー節約をもたらすという利点を有している。その上、画像転写システムを使用するには必要であった中間の加熱乾燥サイクルが回避されるため、完成捺染物品を作成するための時間は著しく短縮される。
【0079】
物品表面上に作成された結果としてのインク画像は、高い堅牢度を呈し、複数回の水洗いセッション及び/又は複数回のドライクリーニングセッションに曝された後もなおその鮮やかさ及び明るさを維持する。一事例として、堆積されたインク画像及び下地塗装は、AATCC135に従った、25回の家庭洗濯を受けた後の寸法変化として、約10.0x10.0、5.0x5.0、又は2.0x2.0パーセント以下を呈し得る。この試験は、テキスタイル表面上の堆積されたインク画像及び下地塗装の、消費者によって用いられる家庭洗濯処置を複数回受けた後の堅牢度を判定することを意図している。試験された試料の寸法変化(パーセント変化)が、当該試料を家庭洗濯25サイクルに曝した後に測定されている。これらの試験は、通常、業界ではドライクリーニング・アンド・ランドリー研究所(メリーランド州、ローレル)によって施行されている。
【0080】
同様に、堆積されたインク画像及び下地塗装は、AATCC158に従った、ペルクロロエチレンでのドライクリーニング20サイクルに曝した後の寸法変化として、約10.0x10.0、5.0x5.0、又は2.0x2.0パーセント以下を呈し得る。この試験は、テキスタイル表面上の堆積されたインク画像及び下地塗装の、商業的ドライクリーニング機械を使用するドライクリーニングを複数回受けた後の堅牢度を判定することを意図している。試験された試料の寸法変化(パーセント変化)が、当該試料をペルクロロエチレンでのドライクリーニング20サイクルに曝した後に測定されている。これらの試験は、通常、業界ではドライクリーニング・アンド・ランドリー研究所(メリーランド州、ローレル)によって施行されている。
【0081】
加えて、以上に指摘されている様に、ここに説明されている方法により物品上に作成された画像は、複数回の水洗いに曝された後もなおその鮮やかさ及び明るさを維持することができる。例えば、堆積され硬化したインク画像は、AATCC61に従って測定された耐変色性評点として少なくとも3、少なくとも4、又は約5を呈し得る。AATCC61試験は、38±3℃(100+5°F)での20回の商業的洗濯に匹敵する変色を示す。等級格付けは、1から5までで採点される変色及び汚染についてのAATCCグレースケールの使用を通して判定されたものであり、5は無変化又は無視できるほどの変化を表し、4は軽微な変化を表し、3は認知され得る変化を表し、1はかなりの変化を表す。AATCCによれば、使用されているスケール段の耐変色性等級及び対応する総色差及び公差は、CIE L*a*b*(CIELAB)式によって確定されている。スケールの使用についての具体的な公差及び指示はAATCC評価手順1に与えられている。これらの試験は、通常、業界ではドライクリーニング・アンド・ランドリー研究所(メリーランド州、ローレル)によって施行されている。
【0082】
同じく、ここに説明されている様に物品上に作成されたインク画像は、複数回のドライクリーニングセッションに曝された後もなおその鮮やかさ及び明るさを維持することができる。例えば、堆積され硬化したインク画像は、AATCC132−2009に従って測定された耐変色性評点として少なくとも3、4、又は約5を呈し得る。耐変色性は、試験される試料がドライクリーニング20セッションに曝された後に測定される。等級格付けは、1から5までで採点する変色及び汚染に対するAATCCグレースケールの使用を通して判定されたものであり、5は無変化又は無視できるほどの変化を表し、4は軽微な変化を表し、3は認知され得る変化を表し、1はかなりの変化を表す。AATCCによれば、使用されているスケール段の耐変色性等級及び対応する総色差及び公差は、CIE L*a*b*(CIELAB)式によって確定さている。スケールの使用についての具体的な公差及び指示はAATCC評価手順1に与えられている。これらの試験は、通常、業界ではドライクリーニング・アンド・ランドリー研究所(メリーランド州、ローレル)によって施行されている。
【0083】
また、下地塗装は物品への画像層の接着を支援する。例えば、硬化した画像層は、ASTM D751−06に従って測定された接着強度として、少なくとも約1、3、又は6lbs./in.(約17.8579673、53.573902、又は107.147804kg/m)及び/又は100、50、又は25lbs./in.(1785.79673、892.898366、又は446.449183kg/m)以下を呈し得る。より厳密には、硬化した画像層は、ASTM D751−06に従って測定された接着強度として、約1から100、3から50、又は6から25lbs./in.(約17.8579673から1785.79673、53.573902から892.898366、又は107.147804から446.449183kg/m)の範囲の接着強度を呈し得る。
【0084】
明解さを期して別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴はまた単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいものと理解している。反対に、簡潔さを期して単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴はまた、別々に又は何れかの適した部分的組合せとして提供されてもよいし、又は適切であれば本発明の何れかの他の説明されている実施形態中に提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素無しには機能しない場合を除き、それら実施形態の必須の特徴と考えられてはならない。
【0085】
以上に描写され特許請求の範囲の項に記載されている本発明の様々な実施形態及び態様は、次の実施例に実験的確証を見い出している。
【実施例】
【0086】
次の実施例は本発明による一例としての下地塗装を示している。但し、理解しておくべきこととして、これらの実施例は例示として提供されており、その中の何ものも本発明の全体的範囲に対する限定と受け取られてはならない。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
図1は、本発明の1つの実施形態で使用することのできる一例としてのインライン捺染システム10を描いている。システム10は、1つ又はそれ以上のテキスタイル材料片を受け入れるように構成されているコンベヤ12を備えている。この特定の実施形態では、システム10は、衣料品つまりTシャツ14上に画像を捺染するように構成されている。コンベヤ12は、Tシャツ14を、その上へ下地塗装が上記の何れかの方式で塗布される下地塗装ステーション16を通して導く。先に指摘されている様に、下地塗装ステーション16は、下地塗装を微細噴霧又は霧として供給するように構成されているインクジェット捺染機又は装置を備えていてもよい。特定の実施形態では、下地塗装は一部型として塗布されてもよいし、又は二部型としてその各々が別々のインクジェットヘッドからTシャツ14に向かって吐出されるようにして塗布されてもよい。Tシャツ14の表面上への下地塗装の堆積に続いて、コンベヤ12はTシャツを、その上へインク画像が少なくともTシャツの表面の下地塗装が堆積された部分を覆ってデジタル捺染される捺染ステーション18に向かって導く。デジタル捺染ステーション18は、インクをTシャツ14の表面の上に塗布するための複数の捺染ヘッドを有するインクジェット捺染機を備えていてもよい。コンベヤ12は、次いで、Tシャツ14をインク画像の硬化加速のために乾燥装置20を通して導く。
【0091】
本発明をその特定の実施形態に関連付けて説明してきたが、多くの代替、修正、及び変型が当業者に自明となるのは明白である。従って、付随の特許請求の精神及び広範な範囲内に入る全てのその様な代替、修正、及び変型を網羅することを意図している。
【0092】
この明細書の中で言及されている全ての公開、特許、及び特許出願は、各個別の公開、特許、及び特許出願が特定的に且つ個別にここに参考文献として援用されると指し示されている場合と同程度に、ここにその全体を参考文献として本明細書に援用される。加えて、本出願での何れかの参考文献の引用又は識別は、その様な参考文献が先行技術として本発明に利用可能であることの是認と解釈されてはならない。項目の見出しは、それらが使用されている範囲について、必然的に限定的であると解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0093】
10 インライン捺染システム
12 コンベヤ
14 衣料品であるTシャツ
16 下地塗装ステーション
18 捺染ステーション
20 乾燥装置
図1