(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受光面側から、光吸収層としてペロブスカイト型結晶構造の感光性材料を含有する第一光電変換ユニット;中間層;および光吸収層として結晶シリコン基板を含む第二光電変換ユニット、を順に有する多接合型光電変換装置であって、
前記第一光電変換ユニットは、前記光吸収層の受光面側に正孔輸送層を有し、前記光吸収層の裏面側に電子輸送層を有し、前記電子輸送層は酸化チタン層であり、前記中間層に接しており、
第二光電変換ユニットは、前記中間層に接するp型シリコン薄膜を有し、
前記電子輸送層の屈折率n1、前記p型シリコン薄膜の屈折率n2、および前記中間層の屈折率nが、n1<n<n2、n2−n1≧0.7、および√(n1×n2)−0.5≦n≦√(n1×n2)+0.5を満たし、
前記中間層は単層であり、屈折率nが2.5〜3.3、膜厚dが40〜80nm、屈折率nと膜厚dの積ndが125〜264nmである、多接合型光電変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る多接合型光電変換装置の模式的断面図である。
図1に示す多接合型光電変換装置110は、受光面側から、受光面金属電極5、受光面透明導電層14、第一光電変換ユニット1、中間層3、第二光電変換ユニット2、裏面透明導電層24および裏面金属電極6を、順に備える。第一光電変換ユニット1は、光吸収層11としてペロブスカイト型結晶構造の感光性材料を有する。第二光電変換ユニット2は、光吸収層21として結晶シリコン基板を含む。
【0016】
第二光電変換ユニット2の光吸収層21に用いられる結晶シリコンは、第一光電変換ユニット1の光吸収層11に用いられるであるペロブスカイト型結晶材料よりも狭バンドギャップである。第一光電変換ユニットの裏面側に狭バンドギャップの第二光電変換ユニットが配置されることにより、受光面(第一光電変換ユニット側)から入射した光のうち、第一光電変換ユニットで吸収されなかった長波長光を、第二光電変換ユニットで利用できるため、光利用効率の高い多接合型光電変換装置が得られる。
【0017】
第一光電変換ユニット1は、好ましくはウェットプロセスにより作製される。そのため、
図1に示す多接合型光電変換装置110は、第二光電変換ユニット2上に、中間層3および第一光電変換ユニット1を形成することにより作製されることが好ましい。
【0018】
(第二光電変換ユニット)
第二光電変換ユニット2は、光吸収層21として結晶シリコン基板を有する。結晶シリコンは、単結晶および多結晶のいずれでもよい。特に、長波長光の利用効率が高く、かつキャリア回収効率に優れることから、光吸収層21として単結晶シリコン基板が好ましく用いられる。
【0019】
単結晶シリコン基板を用いた光電変換ユニットとしては、p型単結晶シリコン基板の受光面側にn型層を設け、裏面側に高ドープ領域(p+領域)を設けたもの(拡散型結晶シリコン光電変換ユニット)や、p型またはn型の単結晶シリコン基板上に、非晶質シリコン系薄膜を設けたもの(ヘテロ接光電変換ユニット)等が挙げられる。中でも、変換効率の高さから、第二光電変換ユニットは、ヘテロ接合シリコン光電変換ユニットであることが好ましい。
【0020】
第二光電変換ユニット2は、中間層3に接する受光面側の最表面層2Fとして第一導電型半導体層を有する。導電型半導体層は、CVD法等により形成された薄膜でもよく、熱拡散等を利用してシリコン基板の表面にドーパントを拡散させたドープ層でもよい。
【0021】
図1に示す多接合型光電変換装置では、第二光電変換ユニット2はヘテロ接合光電変換ユニットであり、導電型単結晶シリコン基板21の受光面側に第一導電型シリコン系薄膜23aを備え、裏面側に第二導電型シリコン系薄膜23bを備える。導電型シリコン系薄膜23a,23bは、いずれか一方がp型であり、他方がn型である。第一導電型シリコン系薄膜23aは、第二光電変換ユニット2の受光面側の最表面層2Fである。
【0022】
単結晶シリコン基板21の導電型は、n型でもp型でもよい。正孔と電子とを比較した場合、電子の方が移動度が大きいため、シリコン基板21がn型単結晶シリコン基板である場合は、特に変換特性が高い。
【0023】
シリコン基板21は、受光面側の表面または裏面側の表面の少なくとも一方に凹凸を有することが好ましい。シリコン基板表面の凹凸は、例えば、異方性エッチングにより形成される。異方性エッチングにより、四角錘状の凹凸構造が形成される。
【0024】
光入射の観点では、シリコン基板の受光面側の表面に凹凸が設けられていることが好ましく、両表面に凹凸が設けられていることが特に好ましい。シリコン基板の受光面側の表面にテクスチャ等の凹凸を形成することにより、第一光電変換ユニット1への光の反射を低減できる。第一光電変換ユニット1をウェットプロセスにより形成する場合は、シリコン基板の受光面側は凹凸を有さず平坦であり、裏面側のみ凹凸を有していてもよい。第二光電変換ユニットの受光面側が平坦である場合は、第一光電変換ユニット1を均一に形成でき、ピンホールの発生を低減できる。シリコン基板の裏面側に凹凸を有する場合、長波長光の光閉じ込め効果が期待できる。
【0025】
シリコン基板21の表面に形成される凹凸の高さは、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。凹凸の高さは、3μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。凹凸の高さを上記の範囲とすることにより、基板表面の反射率が低減し、短絡電流を増加させることができる。シリコン基板21の表面に形成される凹凸の高さは、凸部の頂点と凹部の谷の高低差により求められる。
【0026】
導電型シリコン系薄膜23a,23bとしては、非晶質シリコン、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンを含む材料)や、非晶質シリコン合金、微結晶シリコン合金等が用いられる。シリコン合金としては、シリコンオキサイド、シリコンカーバイド、シリコンナイトライド、シリコンゲルマニウム等が挙げられる。これらの中でも、導電型シリコン系薄膜は、非晶質シリコン薄膜であることが好ましい。
【0027】
第二光電変換ユニット2がヘテロ接合光電変換ユニットである場合、単結晶シリコン基板21と導電型シリコン系薄膜23a,23bとの間に、真性シリコン系薄膜22a,22bを有することが好ましい。単結晶シリコン基板の表面に真性シリコン系薄膜が設けられることにより、単結晶シリコン基板への不純物の拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。単結晶シリコン基板21の表面パッシベーションを有効に行うために、真性シリコン系薄膜22a,22bは、真性非晶質シリコン薄膜が好ましい。
【0028】
真性シリコン系薄膜22a,22bおよび導電型シリコン系薄膜23a,23bは、プラズマCVD法により製膜されることが好ましい。
【0029】
(第一光電変換ユニット)
第二光電変換ユニット2上には、中間層3が設けられ、その上に第一光電変換ユニット1が設けられる。第一光電変換ユニット1は、受光面側から、第一電荷輸送層12、光吸収層11および第二電荷輸送層13をこの順に有する。第一電荷輸送層12および第二電荷輸送層13は、いずれか一方が正孔輸送層であり、他方が電子輸送層である。第二電荷輸送層13は、第一光電変換ユニットにおける裏面側の最表面層1Rであり、中間層3に接している。
【0030】
第一光電変換ユニット1と第二光電変換ユニット2は、直列接続される。そのため、第二光電変換ユニット2の中間層3側に配置される最表面層2F(第一導電型シリコン層53a)がp型の場合、第一光電変換ユニット1の第一電荷輸送層12は正孔輸送層、第二電荷輸送層13は電子輸送層である。
【0031】
以下では、中間層3上(受光面側)に、電子輸送層13、光吸収層11および正孔輸送層12をこの順に有する第一光電変換ユニット1の構成について説明する。
【0032】
電子輸送層13の材料としては、従来公知の材料を適宜選択すればよく、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。電子輸送層には、ドナーが添加されていてもよい。例えば、電子輸送層として酸化チタンが用いられる場合、ドナーとしては、イットリウム、ユウロピウム、テルビウム等が挙げられる。
【0033】
電子輸送層13は、平滑構造を有する緻密質層でもよく、多孔質構造を有する多孔質層でもよい。電子輸送層が多孔質構造を有する場合、細孔サイズはナノスケールであることが好ましい。光吸収層11の活性表面積を増大し、電子収集に優れる電子輸送層とする観点から、電子輸送層は多孔質構造を有することが好ましい。
【0034】
電子輸送層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。例えば、電子輸送層は、中間層3側に緻密質層(コンパクト層)を有し、光吸収層11側に多孔質層を有する2層構造であってもよい。電子輸送層の膜厚は、1〜200nmが好ましい。
【0035】
電子輸送層13は、例えば、上述した酸化チタン等の電子輸送材料を含有する溶液を用いて、スプレー法等により製膜される。
【0036】
光吸収層11は、ペロブスカイト型結晶構造の感光性材料(ペロブスカイト結晶材料)を含有する。ペロブスカイト結晶材料を構成する化合物は、例えば一般式RNH
3MX
3、またはHCH(NH
2)
2MX
3で表される。式中、Rはアルキル基であり、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。Mは2価の金属イオンであり、PbやSnが好ましい。Xはハロゲンであり、F,Cl,Br,Iが挙げられる。なお、3個のXは、全て同一のハロゲン元素であってもよく、複数のハロゲンが混在していてもよい。ハロゲンの種類や比率を変更することにより、分光感度特性を変化させることができる。
【0037】
第一光電変換ユニット1と第二光電変換ユニット2との電流マッチングを取る観点から、第一光電変換ユニット1の光吸収層11のバンドギャップは、1.55〜1.75eVが好ましく、1.6〜1.65eVがより好ましい。例えば、上記ペロブスカイト結晶材料が式CH
3NH
3PbI
3−xBr
xで表される場合、バンドギャップを1.55〜1.75eVにするためにはxが0〜0.85程度であることが好ましく、バンドギャップを1.60〜1.65eVにするためにはxが0.15〜0.55程度であることが好ましい。
【0038】
光吸収層11は、例えば、上述のペロブスカイト結晶材料を含有する溶液を用いて、スピンコート法等により製膜される。
【0039】
正孔輸送層12の材料としては、従来公知の材料を適宜選択すればよく、例えば、ポリ−3−ヘキシルチオフェン(P3HT)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)等のフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ジフェニルアミン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアニリン誘導体等が挙げられる。また、正孔輸送層の材料としては、MoO
3、WO
3、NiO等の金属酸化物等も挙げられる。
【0040】
正孔輸送層12は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。正孔輸送層の膜厚は、1〜100nmが好ましい。正孔輸送層12は、例えば、上述の正孔輸送材料を含有する溶液を用いて、スプレー法等により製膜される。
【0041】
第一光電変換ユニット1の構成および形成方法は上記のものに制限されない。例えば、第一光電変換ユニットを形成する各層を、蒸着法等により形成してもよい。
【0042】
(中間層)
本発明の多接合型光電変換装置は、第一光電変換ユニット1と第二光電変換ユニット2の間に中間層3を備える。中間層3は単層でも多層でもよい。
【0043】
第一光電変換ユニットの裏面側の最表面に設けられる第二電荷輸送層13の屈折率は、例えば2.3程度である(酸化チタンの場合)。第二光電変換ユニットの受光面側の最表面に設けられる導電型半導体層23aの屈折率は4.3程度である(非晶質シリコンの場合)。第一光電変換ユニットの第二電荷輸送層と第二光電変換ユニットの第一導電型半導体層とが直接接している場合、光電変換ユニットの境界面における屈折率差が大きい。特に、第一光電変換ユニット1の第二電荷輸送層の屈折率n1と、第二光電変換ユニット2の第一導電型半導体層23aの屈折率をn2との差n2−n1が0.7以上の場合に、屈折率差による反射ロスが顕著に大きくなる。
【0044】
本発明においては、第一光電変換ユニット1と第二光電変換ユニット2の間に、所定の屈折率および膜厚を有する中間層3を設けることにより、第二光電変換ユニットに到達する光を増大させ、多接合型光電変換装置の変換効率を向上できる。
【0045】
第一光電変換ユニット1の第二電荷輸送層13の屈折率をn1、第二光電変換ユニット2の第一導電型半導体層23aの屈折率をn2とした場合、中間層3の平均屈折率nは、n1<n<n2を満たす。nは、(√(n1×n2)−0.5)〜(√(n1×n2)+0.5)が好ましく、(√(n1×n2)−0.4)〜(√(n1×n2)+0.4)がより好ましく、(√(n1×n2)−0.3)〜(√(n1×n2)+0.3)がさらに好ましい。nは、2.0〜3.5が好ましく、2.3〜3.4がより好ましく、2.5〜3.3が特に好ましい。
【0046】
各層の屈折率は、分光エリプソメトリーにより測定される波長600nmの光に対する屈折率である。中間層が多層である場合、平均屈折率nは、中間層3を構成する各層の屈折率と膜厚の積(光路長)を、全ての層において足し合わせ、中間層の総膜厚で割った値である。ペロブスカイト型光電変換ユニットの電荷輸送層13がメソポーラスTiO
2等の多孔質層の場合は、光吸収層11側に、ペロブスカイト結晶材料とTiO
2が混合している領域が存在する。この場合でも、中間層3による反射防止効果は、界面での屈折率差による光反射量の制御が主要因であるため、中間層との界面に存在するTiO
2の屈折率を電荷輸送層13の屈折率n1とすればよい。
【0047】
従来より、光入射側の非晶質シリコン薄膜光電変換ユニット(トップセル)と裏面側の微結晶シリコン薄膜光電変換ユニット(ボトムセル)とを積層した薄膜シリコン系多接合型光電変換装置において、中間層の屈折率を制御して、トップセルおよびボトムセルに取り込まれる光量を増大する試みがなされていた。薄膜シリコン系多接合型光電変換装置では、トップセルおよびボトムセルの材料がいずれもシリコンであるため、トップセルとボトムセルとの間に低屈折率の光反射層を設けることにより、トップセルに取り込まれる光の量を増大させている。
【0048】
一方、ペロブスカイト型光電変換ユニットと結晶シリコン系光電変換ユニットとを積層する場合は、両者の屈折率差が大きいため、接合界面での光反射が生じやすく、裏面側に配置される結晶シリコン系光電変換ユニットに取り込まれる光量が小さく、光利用効率の低下や、トップセルとボトムセルとの電流の不均衡が生じやすいことが判明した。本発明においては、従来の薄膜シリコンを用いた多接合型太陽電池における中間層とは逆の光学設計思想に基づいて、中間層3に、第一光電変換ユニット1の裏面側最表面層1Rの屈折率n1と第二光電変換ユニット2の受光面側最表面層2Fの屈折率n2との中間的な屈折率を持たせることにより、ボトムセルに到達する光量を増大させ、多接合型光電変換装置の変換効率を向上できる。
【0049】
中間層3による反射防止効果を得るためには、中間層の屈折率nが、n1とn2の積の平方根(√(n1×n2))に近いことが好ましい。さらに、中間層の光学膜厚(屈折率nと膜厚dの積)ndが、1/4波長の奇数倍((2m−1)λ/4、mは自然数)であれば、中間層3の第一光電変換ユニット1側の界面での反射光と、中間層3の第二光電変換ユニット2側の界面での反射光の位相のずれが(2m−1)πとなり、両者が打ち消しあうように干渉する。そのため、第一光電変換ユニット1への光の反射をさらに低減し、第二光電変換ユニット2に取り込まれる光の量を増大できる。
【0050】
第一光電変換ユニットの光電流量と第二光電変換ユニットの光電流量をマッチングさせるためには、中間層3が、400〜1200nmの範囲に、反射防止の中心波長を有することが好ましい。そのため、中間層3の光学膜厚ndは、100〜300nmが好ましく、125〜275nmがより好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。中間層3の膜厚は、40〜80nmが好ましく、45〜75nmがより好ましい。
【0051】
中間層の膜厚は、断面の透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求められる。その他の層の屈折率および膜厚の測定方法も同様である。なお、凹凸を有するシリコン基板上に薄膜が形成されている場合は、凹凸の斜面と垂直な方向を膜厚方向とする。
【0052】
上記の屈折率を有するものであれば、中間層3の材料は特に限定されない。中間層3は、第一光電変換ユニット1を透過して、第二光電変換ユニット2に到達する光の波長範囲(主に500〜1200nm)に渡って光吸収が小さいことが望ましい。中間層の材料としては、シリコン系材料が好ましい。
【0053】
上記範囲の屈折率を有するシリコン系材料としては、例えばSiOx、SiCx、SiNx等が挙げられる。これらの材料は、構成原子比を調整することにより、屈折率を適宜変化させることができる。中でも、高透過性や高導電性の観点から、特に酸化シリコン(SiOx)を用いることが好ましい。
【0054】
中間層3は、2つの光電変換ユニット1,2で発生したキャリア(正孔および電子の両方)を取り込み、再結合させる機能も有している。したがって、中間層3は、ある程度の導電性を有することが好ましい。中間層3では、キャリアは主に膜厚方向に移動するため、微結晶酸化シリコンのように、膜厚方向に結晶が成長している材料であれば、シート抵抗が高い場合でも中間層として作用し得る。酸化シリコンとしては、中間層の導電性を向上するために、n型またはp型の微結晶SiOxを用いることが好ましい。
【0055】
微結晶SiOx層は、例えば反応ガスとしてSiH
4、CO
2、H
2を用い、H
2/SiH
4比が大きい(例えば10以上)いわゆる微結晶作製条件で、かつCO
2/SiH
4比が1以上の範囲で、プラズマCVD法により製膜できる。n型微結晶SiOx層を製膜する場合は、上記の反応ガスに加えて、ドーピングガスとしてPH
3を用いることが好ましい。ドーピングガスとしてPH
3の代わりにB
2H
6を用いることにより、p型微結晶SiOx層を製膜できる。ドーピングガスとして、PH
3とB
2H
6の両方を用いてもよい。プラズマCVDによる製膜は、例えば、容量結合型の平行平板電極を用いて、電源周波数10〜100MHz、パワー密度50〜500mW/cm
2、圧力50〜1500Pa、基板温度150〜250℃の条件で行えばよい。CO
2/SiH
4比を減少させると膜中酸素濃度が減少するため、屈折率を制御できる。このような製膜方法により、所望の屈折率と光透過性および導電性を有するSiOx中間層を形成できる。
【0056】
中間層3は、多層膜でもよい。例えば、上記のSiOx層とn微結晶シリコン層とを積層した複合シリコン系薄膜を中間層としてもよい。中間層が複数層からなる場合、平均屈折率nが上記範囲であれば、各層を構成する材料は特に限定されない。中間層を構成するシリコン系以外の材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫等を主成分とする透明導電性酸化物が挙げられる。透明導電性酸化物は、一般的に屈折率が1.9前後であるため、中間層の材料として透明導電性酸化物を用いる場合は、シリコン系材料等の相対的に高屈折率の材料と積層して用いることが好ましい。例えば、SiOx層の表面に薄い透明導電層を設けた複合層を中間層とすることにより、光電変換ユニットとの接触抵抗の低減等の電気的なメリットが期待できる。SiOx等のシリコン系材料層の表面に透明導電層を設ける場合、第一光電変換ユニット1側、および第二光電変換ユニット2側のいずれの面に透明導電層を設けてもよい。シリコン系材料層の両面に透明導電層を設けてもよい。中間層が多層膜の場合、厳密には各界面における反射および反射光の干渉の影響を考慮する必要があるが、平均屈折率nおよび合名膜厚を、上記の単層の場合と同様に設定することにより、高い反射防止効果が得られる。
【0057】
(透明導電層および金属電極)
第二光電変換ユニットの裏面側には、裏面透明導電層24が設けられることが好ましい。第一光電変換ユニットの受光面側には、受光面透明導電層14が設けられることが好ましい。透明導電層の材料としては、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫等の導電性酸化物を単独で、あるいは複合酸化物として用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、インジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものが好ましい。透明導電層には、各種のドーピング剤が添加されていてもよい。
【0058】
透明導電層上には、光生成キャリアを有効に取り出すために、金属電極を設けることが好ましい。受光面側の金属電極5は、所定のパターン状に形成される。裏面側の金属電極6は、パターン状でもよく、透明導電層24上の全面に形成されていてもよい。
図1に示す形態では、受光面側の透明導電層14上にパターン状の受光面金属電極5が設けられ、裏面側の透明導電層24上の全面に裏面金属電極6が設けられている。金属電極の材料としては、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。
【0059】
透明導電層および金属電極は、スパッタ法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、印刷法、メッキ法等により形成できる。インジウム系酸化物を主成分とする透明導電層の製膜には、スパッタ法やイオンプレーティング法等のPVD法が好ましい。パターン状の金属電極は、導電性ペーストの印刷や、めっき法等により形成される。
【0060】
本実施形態では、第二光電変換ユニット2がヘテロ接合光電変換ユニットであって、受光面側の導電型シリコン系薄膜23aがp型、裏面側の導電型シリコン系薄膜23bがn型である例について説明したが、本発明は
図1に示す実施形態に限定されない。例えば、第二光電変換ユニット2は、受光面側の導電型シリコン系薄膜23aがn型、裏面側の導電型シリコン系薄膜23bがp型であってもよい。この場合、第一光電変換ユニット1は、受光面側の第一電荷輸送層12が電子輸送層、裏面側の第二電荷輸送層13が正孔輸送層である。
【0061】
本発明の光電変換装置は、実用に際して、封止材により封止して、モジュール化されることが好ましい。モジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、受光面の金属電極と、隣接する光電変換装置の裏面金属電極とが配線材を介して電気的に接続されることにより、隣接する光電変換装置が直列に接続される。光電変換装置は並列接続されてもよい。複数の光電変換装置が配線材を介して接続されたストリングを、封止材およびガラス板により封止することにより、光電変換モジュールが得られる。
【0062】
[シミュレーション]
図1に示す多接合型光電変換装置の光学シミュレーションにより、中間層の光学的な作用を調べた。本例では、表面凹凸を有していないn型単結晶シリコン基板を用い、各層が平坦であると仮定した。光学シミュレーションでは、各層の屈折率および消衰係数を用いて、一次元の光学計算を行い、第一光電変換ユニット(ペロブスカイト型光電変換ユニット)および第二光電変換ユニット(ヘテロ接合光電変換ユニット)のそれぞれの光吸収層における光吸収率を求め、これをもとに分光感度電流(Jsc)を算出した。
【0063】
光学シミュレーションソフトとしては、Ljubljana大学の「SunShine」を用いた。各材料の屈折率および消衰係数は、ガラス板上に形成された膜の分光エリプソメータ(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)による実測値を用いた。以下では、屈折率nとして波長600nmの値を記載しているが、計算においては300〜1200nmのそれぞれの波長における屈折率および消衰係数を使用した。
【0064】
光学シミュレーションにおける多接合型光電変換装置の層構成は、受光面側から下記の通りであった。
空気
反射防止膜:MgF
2(屈折率=1.4、膜厚=100nm)
<受光面透明導電層>
ITO(屈折率=2.0、膜厚=60nm)
<ペロブスカイト型光電変換ユニット>
正孔輸送層:Spiro−OMeTAD(屈折率=1.8、膜厚=50nm)
光吸収層:CH
3NH
3PbI
3(屈折率=2.3、膜厚=200nm)
電荷輸送層:メソポーラスTiO
2(屈折率=1.5、膜厚=10nm)、TiO
2コンパクト層(屈折率n1=2.3、膜厚=50nm)
<中間層>
n型微結晶SiOx層(屈折率n=2.0〜4.0、膜厚d=10〜100nm)
<ヘテロ接合光電変換ユニット>
p型非晶質シリコン薄膜(屈折率n2=4.3、膜厚=5nm)
真性非晶質シリコン薄膜(屈折率=4.2、膜厚=5nm)
n型単結晶シリコン基板(屈折率=3.9、厚み=180μm)
真性非晶質シリコン薄膜(屈折率=4.2、膜厚=5nm)
n型非晶質シリコン薄膜(屈折率=4.3、膜厚=10nm)
<裏面透明導電層>
ITO(屈折率=2.0、膜厚=50nm)
<裏面金属電極>
Ag
【0065】
上記の構造において、中間層3の屈折率nおよび膜厚dを変化させた場合のヘテロ接合光電変換ユニットの電流密度およびペロブスカイト型光電変換ユニットの電流密度を計算し、中間層が存在しない場合(中間層の膜厚dが0の場合)からの変化率(%)を求めた。ヘテロ接合光電変換ユニットの電流密度の変化率を表1、ペロブスカイト型光電変換ユニットの電流密度の変化率を表2に示す。
【0068】
表1では、太枠で囲った部分を中心に、中間層3を設けない場合に比してヘテロ接合光電変換ユニットの電流密度が上昇していた。一方、表2では、太枠で囲った部分を中心に、中間層3を設けない場合に比してペロブスカイト型光電変換ユニットの電流密度が減少していた。これらの結果から、中間層の屈折率nおよび膜厚dを調整することにより、ペロブスカイト型光電変換ユニット側への光の反射が低減し、ヘテロ接合光電変換ユニットに取り込まれる光の量が増加することが分かる。
【0069】
それぞれの中間反射層の屈折率および膜厚におけるペロブスカイト型光電変換装置の電流密度とヘテロ接合光電変換装置の電流密度との差を表3に示す。
【0071】
表3に示す結果から、中間層の膜厚および屈折率を調整することにより、ペロブスカイト型光電変換ユニットとヘテロ接合光電変換ユニットの電流密度の差が小さくなり、電流マッチングが取れているために、効率的にエネルギーを取り出せることが示唆された。