(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ピッキング作業の対象となる物品を事前に棚に格納する作業が、入庫作業である。入庫作業の一例を
図1に示す。
【0008】
図1の例では、仮置きエリア101に複数の対象物品が仮置きされている。各物品に記載された「A」等は、各物品の品目の識別情報(例えば商品名)である。以下の説明において、例えば品目が「A」である物品を「物品A」とも記載する。他の品目の物品についても同様である。
図1の例では、空の格納棚104及び105が搬送車106及び107によって入庫作業場所に搬送される。入庫作業者102及び103は、仮置きエリア101の物品を格納棚104及び105に順次格納する。入庫作業が終了すると、格納棚104及び105は、搬送車106及び107によってピッキング作業場所に搬送される。
【0009】
棚の搬送回数削減はピッキング作業の効率化のアプローチの一つである。一日のピッキング作業は物品取り出しそのものの時間と棚待ち時間の和であり、一日に出荷する物品数が決まれば物品取り出し時間はほぼ固定される一方、棚待ち時間は物品数が固定でも削減の余地があるからである。例えば、格納棚の識別情報が同じオーダーが同じ組に属するようにオーダー組を作成する場合、格納棚の搬送1回で連続したピッキング作業が実現するように格納棚への物品入庫も制御することによって、格納棚の搬送回数をより削減することができる。
【0010】
図2と
図3を用いて、ピッキング作業者が2人の場合における、入庫順による格納棚の搬送回数の変化を説明する。具体的には、
図2及び
図3は、同じオーダーに基づいて各出荷箱に物品が格納される場合であっても、格納箱への物品の入庫順が異なることによって搬送回数が異なる(すなわちピッキング作業に要する時間の長さが異なる)例を示す。
【0011】
図2には、オーダーに従って、出荷箱201に物品A及びBを1個ずつ、出荷箱202に物品A及びCを1個ずつ、出荷箱203に物品Bを2個、出荷箱204に物品D及びEを1個ずつ、出荷箱205に物品D及びFを1個ずつ、出荷箱206に物品E及びFを1個ずつ、それぞれ梱包するためのピッキング作業が行われる例を示す。この例において、搬送車213によってピッキング作業場所に搬送された格納棚207には、2個の物品A、3個の物品B及び1個の物品Cが、搬送車214によって格納棚208には、物品D〜Fがそれぞれ2個ずつ、入庫作業によって事前に格納されている。
【0012】
この場合、ピッキング作業者209及び210のもとにそれぞれ格納棚207及び208が搬送され、各ピッキング作業者が格納棚207の物品、格納棚208の物品をそれぞれ仕分棚211及び212に仕分けることで出荷箱201〜206の梱包作業を開始することができる。
【0013】
この例では、仕分棚211に含まれる棚211−1〜211−3がそれぞれ出荷箱201〜203に対応し、仕分棚212に含まれる棚212−1〜212−3がそれぞれ出荷箱204〜206に対応するため、格納棚207に格納された物品は全て過不足なく仕分棚211に仕分けられ、格納棚208に格納された物品は全て過不足なく仕分棚212に仕分けられる。
【0014】
なお、
図2の格納箱207の物品Aに重畳されたX印は、物品Aが入庫作業によって格納箱207に格納されたが、その後のピッキング作業によってピッキングされ、仕分棚211に移された(すなわち格納箱207にはもはや格納されていない)ことを示す。これは、他の物品についても同様であり、
図3においても同様である。
【0015】
図3の例では、出荷箱201〜206に梱包される物品は
図2と同様であるが、格納棚307〜308への物品の入庫は
図2と異なる。具体的には、格納棚307には3個の物品B、1個の物品C及び2個の物品Fが、格納棚308には、物品D、E及びAがそれぞれ2個ずつ、入庫作業によって事前に格納されている。
【0016】
この場合、ピッキング作業者209及び210のもとにそれぞれ格納棚307及び308が搬送され、各ピッキング作業者が格納棚307の物品、格納棚308の物品をそれぞれ仕分棚211、212に仕分けるだけでは出荷箱201〜206の梱包作業を開始することができない。格納棚307には仕分棚211に仕分けられるべき物品Aが格納されていない一方で物品Fが残っており、格納棚308には仕分棚212に仕分けられるべき物品Fが格納されていない一方で物品Aが残っているためである。
【0017】
このため、出荷箱201〜206の梱包作業を開始するには、続けてピッキング作業者209及び210のもとにそれぞれ格納棚308及び307が搬送され、各ピッキング作業者が格納棚308の物品、格納棚307の物品をそれぞれ仕分棚211、212に仕分ける必要がある。すなわち、
図2の例と比較すると、
図3の例では格納棚307及び308の搬送回数が増加する。
【0018】
特許文献2で開示されている、物品搬出入部において近接配置されるもの同士を同じグループ分けする方法では、物品搬出入部への搬入作業の効率化、そして格納棚への物品格納作業の効率化を図ることは可能だが、出庫に何らかのポリシを反映した入庫をすることは出来ず、格納棚の搬送回数削減には直接寄与しない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための、本発明の代表的なものの一例を示すと、次の通りである。すなわち、倉庫管理システムであって、物品の品目、個数及び配送先を対応付けるオーダー情報を保持する記憶部と、前記オーダー情報から特定される、各配送先に配送される前記物品の品目及び量に基づいて、複数の品目の物品の入庫優先順を決定する入庫優先順計算部と、前記入庫優先順に基づいて前記物品を格納する指示を出力する入庫指示部と、を含むコントローラを有
し、前記入庫優先順計算部は、前記オーダー情報に基づいて、前記各品目の物品を前記各配送先に仕分けることが前記各配送先への仕分けの終了に寄与する度合を示す寄与率を計算し、前記寄与率に基づいて前記入庫優先順を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、出荷箱に格納されるべき物品を示す情報に基づいた優先順によって物品が棚に入庫されるため、出荷箱の情報を反映した入庫をすることが可能となり、出荷(出庫、検品等)までの作業効率の向上が可能となる。上記した以外の課題、構成、および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
図4は、本発明の実施例1のコントローラ400のハードウェア構成を説明するブロック図である。
【0024】
本実施例の倉庫管理システムを構成するコントローラ400は、一般的な計算機であり、CPU(Central Processing Unit)401、メモリ402、入出力デバイス403、ネットワークインターフェース404、及び補助記憶デバイス405を有する。CPU401、メモリ402、入出力デバイス403、ネットワークインターフェース404、及び補助記憶デバイス405は、バス406を介して相互に接続される。
【0025】
CPU401は、各種演算処理を実行する。補助記憶デバイス405は非揮発性の非一時的な記憶媒体であり、メモリ402には、補助記憶デバイス405に記憶された各種プログラム及び各種データがロードされ、CPU401がメモリ402にロードされた各種プログラムを実行し、メモリ402にロードされた各種データを読み書きする。
【0026】
CPU401は、入庫優先順計算部407、及び入庫指示部408を有する。メモリ402には、入庫優先順計算部407、及び入庫指示部408それぞれに対応するプログラム、並びにオーダーデータ409が記憶される。CPU401がメモリ402に記憶されたこれらのプログラムを実行することによって、入庫優先順計算部407、及び入庫指示部408の機能が実現される。
【0027】
メモリ402に記憶されるオーダーデータ409には、配送される物品の識別情報、配送された物品の個数、及び配送先が登録される。オーダーデータ409の詳細は
図6Aで説明する。
【0028】
ネットワークインターフェース404は、ネットワーク410を介して顧客システム等とデータを通信するインターフェース、作業ステーションに設置された作業指示デバイスとデータを通信するインターフェース、及び搬送車411とデータを通信するインターフェースである。なお、コントローラ400と作業指示デバイスとは、有線で接続されていても無線で接続されていてもよく、コントローラ400と搬送車411とは無線で接続されるものとする。
図4には一つの搬送車411を示すが、実際にはネットワーク410に複数の搬送車411が接続されてもよく、それらの搬送車411が
図1〜
図3に示した搬送車106、107、213及び214に相当する。
【0029】
図5は、本発明の実施例1の入庫手順を説明するフローチャートである。
【0030】
まず、コントローラ400は、オーダーデータを受信し、メモリ402に記憶する(ステップ501)。
【0031】
次に、コントローラ400は、受信してメモリ402に記憶されたオーダーデータ409から、入庫優先順計算部407の機能によって、各出荷箱に格納される(すなわち各配送先に配送される)物品の品目及び数量に基づいて、各物品の入庫優先順を計算する(ステップ502)。
【0032】
次に、コントローラ400は、計算した入庫優先順に従った入庫を、入庫指示部408の機能を持つ作業指示デバイスを通してシステムに指示する(ステップ503)。具体的には、コントローラ400は、計算した入庫優先順が高い物品を優先して格納棚に格納する指示を、入出力デバイス403を介して、又は、ネットワークインターフェース404からネットワーク410に接続された入庫作業者の端末装置(図示省略)を介して、出力してもよい。
【0033】
さらに、コントローラ400は、ステップ503において、格納棚を入庫作業場所まで搬送する指示を搬送車411に送信してもよい。この指示に従って、例えば
図1に示すように搬送車106等が格納棚104等を搬送し、その格納棚104等を用いて入庫作業者102等が入庫作業を開始することができる。
【0034】
次に、実施例1のオーダーデータ409を説明する。
【0035】
図6Aは、本発明の実施例1のコントローラ400が受信してメモリ402に記憶するオーダーデータ409の具体例の説明図である。
【0036】
オーダーデータ409は、ID601、物品名602、個数603、及び配送先604を含む。ID601には、オーダーデータ409の各行(オーダー行)の識別情報が登録される。物品名602には、配送される物品の識別情報が登録される。物品の識別情報は、当該物品の種類(品目)を識別するための情報である。個数603には、配送される物品の個数(数量)が登録される。配送先604には物品の配送先(例えば、扱われる物品が店舗に出荷される商品である場合、出荷先)が登録される。
【0037】
ここで、一つのオーダーは、一つの配送先に対して、当該配送先に配送する少なくとも一つの物品の識別情報、及び当該物品の個数と対応付けられているが、オーダーデータ409の各行では一つの物品に対して一つの行が設定されているので、一つのオーダーが複数の行に登録される場合がある。例えば、配送先「C1」に対する一つのオーダーは、
図6Aに示すID601が「1」及び「2」の二つの行に登録される。
【0038】
図6Bは、本発明の実施例1のコントローラ400の入庫優先順計算部407によって決定された各物品の入庫優先度が付加されたオーダーデータ409の具体例の説明図である。
【0039】
図6Bの例では、物品A、B、C、Dの入庫優先度がそれぞれ1、3、2、2と決定され、それぞれの値が各行の入庫優先度605として追加されたオーダーデータ409を示している。入庫指示部108は、入庫優先度が高い順(すなわち入庫優先度605の値が小さい順)に入庫を指示する。このとき、入庫指示部108が格納棚の搬送指示を搬送車411に送信すると、例えば
図1に示すように搬送車106及び107が格納棚104及び105を入庫作業者102及び103が入庫作業を行う場所に搬送する。
【0040】
入庫作業者102等は、値の小さい入庫優先順の物品を、値の大きな入庫優先順の物品より優先して格納棚104等に入庫していく。ただし、同じ値の入庫優先順の物品の入庫順は任意でよい。例えば、物品の優先度に対応した複数の仮置き場を設け、優先度の高い仮置き場に優先度の高い物品を仮置きし、作業者102等は優先度の高い仮置き場に仮置きされた物品から順に手当たり次第に入庫してもよい。
【0041】
このようにして格納棚に格納された物品は、その後、各出荷先への仕分けのためのピッキングの対象となる。例えば
図2に示す格納棚207及び208に対して上記の入庫作業が行われた場合、格納棚207及び208は、その後、搬送車213及び214によってピッキング作業場所に搬送され、ピッキング作業者209及び210がそれらの格納棚の物品を各出荷先に仕分けるためのピッキングを行う。
【0042】
特許文献2に記載された発明によれば、物品搬出入部への搬入作業の効率化、そして格納棚への物品格納作業の効率化を図ることは可能だが、出庫に何らかのポリシを反映した入庫をすることは出来ない。一方、本実施例では、オーダーデータ、つまり配送先と物品の対応付けに関する情報を入庫時に反映することが可能となることによって、出荷(出庫、検品等)までの作業効率の向上が可能となる。
【0043】
なお、本発明は、各店舗に出荷される商品の保管及び仕分けを行う物流倉庫のほか、例えば工場に搬入される物品を保管して工場内に配送する倉庫、又は、工場から出荷される物品を保管する倉庫等、物品を入庫して仕分けを行い出荷する倉庫である限りいかなる種類の倉庫にも適用できる。
【実施例2】
【0044】
本実施例では、入庫優先順の具体例として出荷箱の完成を早期化するための入庫優先順を説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例2のシステムの各部は、
図1〜
図6Bに示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
【0045】
図7は、本発明の実施例2のコントローラ400の入庫優先順計算部407が実行する処理を示すフローチャートである。
【0046】
具体的には、
図7は、出荷箱の完成を早期化するための入庫優先順を2段階の順序決定によって与える処理の流れを示す。この処理は、
図5のステップ502において実行される。
【0047】
最初に、入庫優先順計算部407は、出荷箱ごとの物品構成情報の入力を得る(ステップ701)。次に、入庫優先順計算部407は、以下に記載する出荷箱完成寄与率を用いた第1段階目の順序が未決定である物品が存在する間に実行される繰り返し処理(ステップ702)を行う。繰り返し処理は具体的に、未完成な出荷箱、つまり、入れるべき物品が計算処理上残っている出荷箱全てに対して繰り返し処理(ステップ703)によって、出荷箱ごとに第1段階目の順序が未決定の物品の出荷箱完成寄与率を計算する(ステップ704)。出荷箱Box
bにおける物品Item
nの出荷箱完成寄与率contrib(Item
n,Box
b)は、数式(1)で計算される。
【数1】
【0048】
このようにして計算される出荷箱完成寄与率contrib(Item
n,Box
b)は、物品Item
nを出荷箱Box
bに格納することがその出荷箱Box
bの完成に寄与する度合を示す指標である。ここで、出荷箱Box
bの完成とは、オーダーデータ409に基づいて、出荷箱Box
bの出荷先(配送先)に出荷されるべき全ての物品の仕分けが終了すること、具体的には、例えば、出荷箱Box
bに格納されるべき全ての物品が出荷箱Box
bに格納されることを意味する。すなわち、出荷箱完成寄与率contrib(Item
n,Box
b)は、物品Item
nを出荷箱Box
bの配送先に仕分けることが当該配送先への仕分けの終了に寄与する度合を示す指標であると言い換えることができる。出荷箱Box
bにおける物品Item
nの不足数とは、出荷箱Box
bに格納されるべき物品Item
nの総数から、既に出荷箱Box
bに格納された物品Item
nの数を差し引いた残りの物品の数を示す値である。ただし、後述するように、
図7の処理中の計算は、実際にはまだ出荷箱に格納されていない物品が既に格納されたとの仮定に基づいて行われる場合がある。このような計算の具体例は後述する(
図8参照)。
【0049】
未完成の全ての出荷箱について出荷箱完成寄与率の計算が終了すると、入庫優先順計算部407は、物品ごとの平均出荷箱完成寄与率を計算する(ステップ705)。物品Item
nの平均出荷箱完成寄与率は数式(2)で計算される。つまり、その時点で未完成な出荷箱における物品Item
nの出荷箱完成寄与率の平均が計算される。
【数2】
【0050】
次に、入庫優先順計算部407は、その時点の平均出荷箱完成寄与率の一番高い物品を1つ選択し、当該物品の第1段階目の順序を、仮順序決定済みの物品の第1段階目の順序のすぐ後ろの順序に決定(ステップ706)した後、出荷箱物品構成情報から当該物品を除くように更新する(ステップ707)。出荷箱物品構成情報から当該物品を除くように更新するのは、計算上あたかも第1段階目の順序が決定した当該物品を出荷箱に入れたものとして扱い、当該物品を出荷箱に入れるべき(すなわちまだ入れられていない)物品から除外するためである。
【0051】
最後に、入庫優先順計算部407は、各物品に対して第2段階目の順序を決定する(ステップ708)。第1段階目の順序j(ただし、1≦j≦N)の物品に対応する第2段階目の順序1〜Lは、数式(3)で決定される。
【数3】
【0052】
出荷箱物品構成情報は、上記の処理で決定された第2段階目の順序を入庫優先順として決定する。ただし、入庫優先順の数値は、小さいほど上位であることを示す。
【0053】
このように、本実施例における倉庫管理システムは、物品の入庫優先順を物品の出荷箱完成寄与率に基づいて計算する。
【0054】
図8は、本発明の実施例2のコントローラ400の入庫優先順計算部407が実行する処理の具体例の説明図である。
【0055】
図8は、ステップ702から707までの繰り返し計算を、3種類の物品A、B及びCが出荷箱801から806によって各店舗に出荷される場合で実施した例である。各出荷箱にどの物品がいくつ梱包されるか(すなわちどの出荷先にどの物品がいくつ出荷されるか)は、オーダーデータ409から特定される。
【0056】
図8の上半分における各出荷箱801〜806の下に記載された数値は、ステップ704で計算された3種類の物品A、B及びCそれぞれの出荷箱完成寄与率である。物品A、B及びCそれぞれに対応する計算式は、ステップ705で実施される各物品の出荷箱完成寄与率の平均を算出する式である。
【0057】
例えば、出荷箱805は、2個の物品A、2個の物品B及び1個の物品Cが格納されることで完成するが、ステップ703のループが最初に実行される時点ではいずれの物品も格納されていないため、その時点の物品A、B及びCの不足数はそれぞれ2個、2個及び1個であり、それらの合計は5個である。この場合、物品A、B及びCの出荷箱完成寄与率はそれぞれ2/5、2/5及び1/5となる。同様に他の出荷箱についても出荷箱完成寄与率を計算して物品A、B及びCについて平均を計算すると、それぞれ0.4、0.29及び0.31が得られる。
【0058】
ステップ705で算出された各物品の出荷箱完成寄与率の平均を用い、ステップ706で出荷箱完成寄与率の平均が一番大きい物品として物品Aが選択される。ここで、最初に選択された物品Aに対して、第1段階目の順序として1位が与えられる。
【0059】
図8の下半分における各出荷箱の下に記載された数値は、ステップ701で第1段階目の順序が決定した物品Aを出荷箱物品構成情報から除くように更新した後、ステップ704で計算された残り2種類の物品B及びCそれぞれの出荷箱完成寄与率である。物品B及びCそれぞれに対応する計算式は、ステップ705で実施される各物品の出荷箱完成寄与率の平均を算出する式である。
【0060】
例えば、ステップ703のループが2回目に実行される時点で、実際にはいずれの物品も格納箱に格納されていないが、上記の第1段階目の順序が1位となった物品Aが格納されたと仮定すると、出荷箱805における物品A、B及びCの不足数は、それぞれ、0個、2個及び1個であり、それらの合計は3個である。この場合、物品B及びCの出荷箱完成寄与率はそれぞれ2/3及び1/3となる。同様に他の出荷箱についても出荷箱完成寄与率を計算して物品B及びCについて平均を計算すると、それぞれ0.57及び0.43が得られる。
【0061】
ステップ705で算出された各物品の出荷箱完成寄与率の平均を用い、ステップ706で出荷箱完成寄与率の平均が一番大きい物品として物品Bが選択される。ここで、2番目に選択された物品Bに対して、第1段階目の順序として2位が与えられる。この時点で残った物品Cに対して、第1段階目の順序として3位が与えられる。
【0062】
図8の例のように扱われる物品の種類(品目)の数が少ない場合には、上記の数式(3)のLの値を品目の数と同じ値(
図8の例では3)にすることによって、上記の第1段階目の順序をそのまま第2段階目の順序として用いてもよい。しかし、実際の倉庫等において、扱われる品目の数が多くなると、入庫作業者が仮置き場に置かれた多くの物品の中から作業対象の1品目の物品を発見することが困難になる。この場合には、数式(3)を用いて第1段階目の順序より粗い第2段階目の順序を設定することで、それぞれの順序に該当する物品の数が多くなるため、入庫作業者が作業対象の物品を発見しやすくなり、作業の効率が向上する。
【0063】
上記のように、出荷箱完成寄与率の平均の大きさに基づく順位に従って入庫作業を行うことによって、その後のピッキング作業において同じ格納棚から連続して物品をピックできる確率を大きくすることができ、作業効率が向上する。また、ある物品の出荷箱完成寄与率が大きいことは、その物品を出荷箱に格納することによって出荷箱が完成に近づく度合いが大きいことを示していることから、上記のように出荷箱完成寄与率の平均が大きい物品を優先的に入庫すると、概ねその順にピッキング作業が行われ、完成しやすい出荷箱が優先的に完成することによって、複数の出荷箱が完成するタイミングが分散し、出荷作業の負荷が平準化され、その結果作業効率が向上する。
【実施例3】
【0064】
本実施例では、入庫優先順の具体例として物品同士の同梱関係に基づく入庫優先順を説明する。以下に説明する相違点を除き、実施例3のシステムの各部は、
図1〜
図6Bに示された実施例1の同一の符号を付された各部と同一の機能を有するため、それらの説明は省略する。
【0065】
図9は、本発明の実施例3のコントローラ400の入庫優先順計算部407が実行する処理を示すフローチャートである。
【0066】
具体的には、
図9は、連続ピック確率を向上するための入庫優先順を決定する処理の流れを示すフローチャートである。当該フローチャートでは、同梱され得る物品を線で結んだ無向グラフを連結成分で分離し、各連結成分に属す物品をまとめたものを物品群とした後、物品群を入庫優先度に対応するグループに分類する。
【0067】
最初に、入庫優先順計算部407は、出荷箱ごとの物品構成情報の入力を得る(ステップ901)。つぎに、入庫優先順計算部407は、属する物品群が未決定であるような物品が一つ以上ある場合(ステップ902)、その一つを任意に選んで新たに作成した物品群に当該物品を追加し(ステップ903)、以下、当該物品と同じ出荷箱に入る物品が新たに見つからなくなるまで(ステップ904)、追加された当該物品と同じ出荷箱に入る物品を当該物品群に追加する処理を繰り返す(ステップ904、905)。もし属する物品群が未決定であるような物品が残っていたら、ステップ902に戻る。
【0068】
つぎに、入庫優先順計算部407は、各物品に対して入庫優先順1〜Lを決定する(ステップ907)。ここで、入庫優先順計算部407は、同じ物品群に含まれる全ての物品に同じ入庫優先順が与えられるように入庫優先順1〜Lを決定する。物品群数MがLより大きい場合は、複数の物品群をまとめることでM個の物品群をL個の入庫優先順グループに再構成し、各入庫優先順グループの入庫優先順1〜Mを任意に決める。物品群数MがLより小さいときはM個の物品群をそのままM個の入庫優先順グループと見なし、各入庫優先順グループの入庫優先順1〜Mを任意に決める。
【0069】
再構成された入庫優先順グループの定義によって、ある入庫優先順グループに入る物品と当該入庫優先順グループと異なる入庫優先順グループに入る物品が同じ出荷箱に入ることはあり得ない。この場合、同じ入庫優先順グループに入る(同じ入庫優先順を持つ)物品の入庫タイミングを近接させることで、同じ棚に入庫される物品から異なる入庫優先順グループに入る物品を除外され易くし、それによってピッキングにおいて同じ棚から連続して物品をピックできる確率を大きくすることができる。
【0070】
図10は、本発明の実施例3のコントローラ400の入庫優先順計算部407が実行する処理の具体例の説明図である。
【0071】
図10は、ステップ903から906までの繰り返し計算を、6種類の物品A〜Fが出荷箱1001から1006によって各店舗に出荷される場合で実施した例である。各出荷箱にどの物品がいくつ梱包されるか(すなわちどの出荷先にどの物品がいくつ出荷されるか)は、オーダーデータ409から特定される。
【0072】
図10の上半分は、任意に選んだ物品Aと同じ出荷箱に入る同梱物品を再帰的に探索する過程を示す。
【0073】
入庫優先順計算部407は、ステップ903で任意に選んだ物品Aを選択してそれを新たに作成した空の物品群に追加した後、ステップ904から906において、物品Aと同じ出荷箱に入る物品を探索する。
図10の例では、出荷箱1002、1005及び1006に物品Aと共に物品Bが入り、出荷箱1005及び1006には物品Aと共に物品Dが入る。このため、ステップ905において物品B及びDが得られ、ステップ906においてそれらが物品Aと同じ物品群(以下、第1の物品群と記載する)に追加される。さらに、入庫優先順計算部407は、物品B及びDに対してステップ904から906を適用することでこれらと同じ出荷箱に入る物品を探索する。このように、入庫優先順計算部407は、再帰的に同じ出荷箱に入る物品の探索と物品群への追加を、新たな同梱物品が見つからなくなるまで繰り返す。
【0074】
図10の例では、出荷箱1002、1005及び1006に物品Bと共に物品Aが入り、出荷箱1003、1004、1005及び1006に物品Bと共に物品Dが入り、さらに、出荷箱1003及び1004に物品Bと共に物品Cが入る。これらのうち物品A及びDは既に第1の物品群に含まれているため、物品Cが新たに第1の物品群に追加される。さらに、物品Cについてステップ904から906が実行されると、出荷箱1003及び1004に物品Cと共に物品B及びDが入るが、これらはいずれも既に第1の物品群に含まれている。これで、物品Aに関しては、新たな同梱物品が見つからなくなったため、ステップ904から906のループが一旦終了する。
【0075】
その結果、物品Aを含む連結成分が物品A〜Dから構成されることが示される。ここで、入庫優先順計算部407は、当該連結成分を構成する物品A〜Dを同じ物品群(第1の物品群)としてまとめて、物品A〜Dを物品群決定済み物品とする。例えば、メモリ402が、各物品が属する物品群を示す情報を保持し、各物品が属する物品群が決定すると入庫優先順計算部407がその情報を更新してもよい。
【0076】
上記のようにステップ904から906のループが一旦終了した時点で、
図10の例では、物品E及びFの属する物品群が未定であるため(ステップ902)、それらの物品のうち任意の一つ、例えば物品Eが選択される(ステップ903)。
図10の下半分は、上記のように任意に選んだ物品Eを起点として、同様にステップ904から906を再帰的に同じ出荷箱に入る物品の探索を、新たな同梱物品が見つからなくなるまで繰り返す例を示す。この例では、出荷箱1007に物品Eと共に物品Fが入り、他の出荷箱には物品E及びFのいずれも入らない。その結果、物品Eを含む連結成分が物品E及びFから構成されることが示される。ここで、入庫優先順計算部407は、当該連結成分を構成する物品E及びFを同じ物品群(例えば第2の物品群)としてまとめて、物品E及びFを物品群決定済み物品とする。
図10の例ではここで全ての物品に対してそれぞれが属する物品群が決定できる。
【0077】
なお、入庫優先度グループの再構成の際の物品群のまとめ方及び再構成した入庫優先度グループに対する入庫優先度の割り当て手法として、任意の手法を適用可能である。
【0078】
上記の本発明の実施例3によれば、同じ出荷箱に入る(すなわち同じ出荷先に出荷される)複数の物品に同じ入庫優先順が与えられ、同じ出荷箱に入らない(すなわち同じ出荷先に出荷されない)複数の物品にそれぞれ異なる入庫優先順が与えられる。このようにして決定された入庫優先順に従って入庫作業が行われると、同じ出荷箱に入る複数の物品が同じ格納棚に入りやすく、同じ出荷箱に入らない複数の物品が同じ格納棚に入りにくくなるため、その後のピッキング作業において同じ格納棚から連続して物品をピックできる確率を大きくすることができ、作業効率が向上する。
【0079】
上記の処理では、同じ出荷箱に入らない複数の物品に異なる入庫優先順が与えられるが、どの物品により高い入庫優先順が与えられるかまでは決定されない。そこで、入庫優先順計算部407は、さらに実施例2と同様の処理を実行することによって、それぞれの物品群の入庫優先順を決定してもよい。例えば、入庫優先順計算部407は、各物品群に含まれる各物品の出荷箱完成寄与率を計算して、より出荷箱完成寄与率が高い物品を含む物品群の入庫優先順を高く設定してもよい。これによって、物品を連続してピックできる確率が上がることに加えて、出荷箱が完成する時期が平準化されるため、さらに作業効率が向上する。
【0080】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0081】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0082】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。