(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮部は、伸縮素子の端部に金属製の嵌め合わせ治具が、前記伸縮素子が伸縮方向以外の方向に移動しない状態で装着されて構成され、前記嵌め合わせ治具と前記装着部材とが嵌め合わされている請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のアクチュエータ。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、伸縮素子を装着部材に接着すると、想定外の力が作用する場合等に伸縮素子を取り外せないという不都合や、伸縮素子または装着部材が破損しても一方のみを交換することができないという不都合がある。
【0009】
これに対し、伸縮素子を接着せずに伸縮方向に圧力をかけて装着することも検討されているが、伸縮素子は伸縮動作が速いため、圧力をかけていても伸縮素子が伸縮を繰り返すことにより素子の位置ずれが生じてしまい、伸縮素子の破損を有効に防止することは困難である。
【0010】
したがって、本発明は、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことがないアクチュエータ
およびそれを用いたステージ装置を提供することを目的とする。
【0011】
すなわち、本発明によれば、以下の(1)〜(20)が提供される。
【0012】
(1)所定方向に伸縮変位する伸縮素子を有する伸縮部と、伸縮部が装着されて伸縮素子の伸縮変位が伝達される装着部材とを有するアクチュエータであって、
前記伸縮部の端部と前記装着部材とを着脱可能に嵌め合わせる嵌め合わせ部をさらに有し、
前記伸縮部と前記装着部材とは、前記嵌め合わせ部により嵌め合わされた状態で、前記伸縮部が伸縮方向以外の方向へ移動しないように固定されるアクチュエータ。
【0013】
(2)前記嵌め合わせ部で前記伸縮部の端部と前記装着部材とが嵌め合わされることにより、前記伸縮部が伸縮方向以外の方向へ移動しないように固定される(1)に記載のアクチュエータ。
【0014】
(3)前記伸縮部および前記装着部材の装着部分は、断面が矩形状をなし、前記伸縮部の端部と前記装着部分との嵌め合わせ部は、前記装着部分の対向する2辺から突出して設けられた一対の第1突出部を有する第1部分と、前記伸縮部の端部の、前記第1突出部に対応しない対向する2辺から突出して設けられた一対の第2突出部を有する第2部分とが嵌め合わされることにより構成される(2)に記載のアクチュエータ。
【0015】
(4)前記第1突出部は、前記装着部材の幅方向に対向して設けられており、前記装着部材は全体が同じ厚さで形成されている(3)に記載のアクチュエータ。
【0016】
(5)前記装着部材は筒状部または柱状部を有し、前記伸縮部は前記装着部材の前記筒状部または前記柱状部に対応する柱状部または筒状部を有し、前記伸縮部と前記装着部材とは、前記柱状部が前記筒状部に挿入されることにより嵌め合わされる(2)に記載のアクチュエータ。
【0017】
(6)前記嵌め合わせ部は、前記伸縮部の両端部側に設けられている(1)から(5)のいずれかに記載のアクチュエータ。
【0018】
(7)前記伸縮部が両端部側で嵌め合わされた際に、少なくとも一方側がねじ止めされる(6)に記載のアクチュエータ。
【0019】
(8)前記嵌め合わせ部は、前記伸縮部の一方の端部側に設けられており、他方の端部側は、前記伸縮部と前記装着部材とがねじ止めされている(1)から(5)のいずれかに記載のアクチュエータ。
【0020】
(9)前記伸縮部の両端面は、それぞれ該端面の対向する辺から突出する一対の突出部が形成され、前記装着部材の装着部分は、前記一対の突出部に挟み込まれるように装着される前記嵌め合わせ部が構成され、前記伸縮部が装着された際に、前記伸縮部の少なくとも一方の端部が前記装着部材の装着部分とねじ止めされる(1)に記載のアクチュエータ。
【0021】
(10)前記伸縮部の一方の端面は、該端面の対向する辺から突出する一対の突出部が形成され、前記装着部材における前記伸縮部の一方の端面に対応する第1の装着部分は、前記一対の突出部に挟み込まれるように装着される前記嵌め合わせ部が構成され、前記伸縮部の他方の端面は、前記伸縮部が装着された際に前記装着部材の対応する第2の装着部分の端面につき合わされるように構成され、前記伸縮部が装着された際には、少なくとも、前記伸縮部の前記他方の端面を含む端部と前記第2の装着部分とがねじ止めされる(1)に記載のアクチュエータ。
【0022】
(11)前記装着部材における前記伸縮部の両端部がそれぞれ装着される装着部分は、その端面の対向する辺から突出する一対の突出部が形成され、前記伸縮部の両端部はそれぞれ前記一対の突出部に挟み込まれるように装着される前記嵌め合わせ部が構成され、前記伸縮部が装着された際に、前記伸縮部の少なくとも一方の端部が前記装着部材の装着部分とねじ止めされる(1)に記載のアクチュエータ。
【0023】
(12)前記装着部材における前記伸縮部の一方の端部が装着される第1の装着部分は、その端面の対向する辺から突出する一対の突出部が形成され、前記伸縮部の前記一方の端部は前記一対の突出部に挟み込まれる前記嵌め合わせ部が構成され、前記装着部材における前記伸縮部の他方の端部側の第2の装着部分は、前記伸縮部が装着された際に、その端面が前記伸縮部の他方の端部の端面につき合わされるように構成され、前記伸縮部が装着された際には、少なくとも、前記伸縮部の前記他方の端部と前記第2の装着部分とがねじ止めされる(1)に記載のアクチュエータ。
【0024】
(13)前記伸縮部は、伸縮素子の端部に金属製の嵌め合わせ治具が、前記伸縮素子が伸縮方向以外の方向に移動しない状態で装着されて構成され、前記嵌め合わせ治具と前記装着部材とが嵌め合わされている(1)から(12)のいずれかに記載のアクチュエータ。
【0025】
(14)前記伸縮素子と前記嵌め合わせ治具とは接着されている(13)に記載のアクチュエータ。
【0026】
(15)前記嵌め合わせ治具の端部に凹部が形成され、該凹部に前記伸縮素子が挿入されて嵌め込まれている(13)に記載のアクチュエータ。
【0027】
(16)前記装着部材は、前記伸縮素子の変位を拡大する変位拡大機構である(1)から(15)のいずれかに記載のアクチュエータ。
【0028】
(17)前記アクチュエータはステージの駆動機構として用いられ、前記装着部材は、前記伸縮素子の変位を前記ステージに伝達する(2)に記載のアクチュエータ。
【0029】
(18)前記ステージは、ベース部材と、前記ベース部材の上を移動するステージ部材とを有し、前記装着部材は、前記ベース部材に取り付けられるとともに前記伸縮部の一端部が装着される第1部材と、前記ステージ部材に取り付けられるとともに前記伸縮部の他端部が装着される第2部材とを有し、
前記伸縮部と前記第2部材とが嵌め合わされて嵌め合わせ部を構成する(17)に記載のアクチュエータ。
【0030】
(19)前記第2部材は、前記ステージ部材に取り付けられた固定治具と、スピンドルを回転させることにより前記ステージ部材を前記伸縮部の変位方向に移動させて大まかな位置調整を行う移動部と、前記スピンドルの先端に設けられた円筒部とを有し、前記伸縮部は前記円筒部に対応する円柱部を有し、前記伸縮部と前記第2部材とは、前記円柱部が前記円筒部に挿入されることにより、回転可能に嵌め合わされる(18)に記載のアクチュエータ。
【0031】
(20)前記伸縮素子は、圧電素子、磁歪素子、形状記憶合金素子のいずれかである(1)から(19)のいずれかに記載のアクチュエータ。
【0032】
本発明によれば、伸縮部の端部と装着部材とを着脱可能に嵌め合わせる嵌め合わせ部を設け、伸縮部と装着部材とは、嵌め合わせ部により嵌め合わされた状態で、伸縮部が伸縮方向以外の方向へ移動しないように固定されるので、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことが防止される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0035】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態では伸縮素子を有する伸縮部を装着部材である変位拡大機構に装着し、伸縮部の変位を変位拡大機構で拡大するアクチュエータについて説明する。
【0036】
(アクチュエータの第1の例)
図1は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータの第1の例を示す概略正面図である。なお、第1の例の説明においては、便宜上、
図1の上下を基準に説明するが、アクチュエータの配置はこれに限るものではない。
【0037】
アクチュエータ100は、電圧等のトリガーを与えることにより所定方向に伸縮する伸縮素子を有する伸縮部1と、この伸縮部1が装着される装着部材として機能するとともに、伸縮素子の伸縮変位を拡大して対象物に伝達させる変位拡大機構2とを具備している。
【0038】
伸縮部1の伸縮素子としては、所定方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができる。いずれの素子の場合にも電源からの電圧を直接印加するか、または電圧を適宜の手段で磁界や温度に変換して用いることにより電圧に応じた変位を実現することができる。なお、
図1では、電気端子等は省略している。
【0039】
伸縮素子が圧電素子である場合には、伸縮素子は、例えば、10mm×10mmの板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて例えば40mmの長さにされた直方体として構成される。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3;PZT)を挙げることができる。伸縮素子1の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0040】
装着部材である変位拡大機構2は、伸縮部1が装着され伸縮部1の変位が伝達される変位伝達部20と、伸縮部1の変位を拡大する動作を行う変位拡大動作部30とを有する。伸縮部1の変位は、変位伝達部20に伝達され、さらに変位拡大動作部30に伝達されるとともに拡大される。
【0041】
変位伝達部20は、伸縮部1の下端部が接続される第1部材3と、伸縮部1の上端部が接続される第2部材4とを有している。第1部材3は、伸縮部1が挿入される切り欠き5を有するU字状に形成されおり、伸縮部1は、その長手方向が上下方向に一致するように切り欠き5内に挿入される。伸縮部1の伸縮素子は長手方向に伸縮するようになっている。そして、第1部材3における切り欠き5の底部と伸縮部1の下端部とが接続されるようになっている。第2部材4は、切り欠き5の上部に入り込むように設けられており、第2部材4の下端部と伸縮部1の上端部とが接続されるようになっている。なお、第1部材3には、ボルト等によって基材に取り付けるための厚さ方向に貫通する取り付け穴9が複数形成されている。
【0042】
第2部材4の下端部と伸縮部1の上端部とは、嵌め合わせ部7により着脱可能に嵌め合わされている。また、第1部材3における切り欠き5の底部と伸縮部1の下端部とは、同様に嵌め合わせ部8により着脱可能に嵌め合わされている。
【0043】
伸縮部1は、伸縮素子の端部を第2部材4に直接嵌め合わせる構成であってもよいが、伸縮素子として圧電素子を用いる場合には、圧電素子が脆性材料であるセラミックスで構成されているため、強度が不十分になるおそれがある。そのような場合には、
図2に示すように、伸縮部1として、伸縮素子17の端部にステンレス鋼等の金属製の嵌め合わせ治具18を装着し、この嵌め合わせ治具18を第2部材4との嵌め合わせに用いるようにすることが好ましい。
【0044】
このとき、嵌め合わせ治具18と伸縮素子17は、装着面であるXY平面に対して移動しないように、つまり伸縮素子
17の伸縮方向以外の方向に移動しないようにすることが必要であり、そのための手法としては、嵌め合わせ治具
18と伸縮素子
17とを接着することが挙られる。また、嵌め合わせ治具
18の伸縮素子側の端部の四方を額縁状に残して凹部を形成し、その中に伸縮素子
17を挿入して嵌め込むようにしてもよい。この手法は、接着しなくてもよいメリットがある。また、変位拡大機構2における第2部材4の端部の四方を額縁状に残して凹部を形成した状態に加工し、その中に直接伸縮素子を挿入するようにしてもよい。しかし、その場合には、第2部材4の厚さを変位拡大機構2の他の部分の厚さと同じにすることができないため、簡単な手法であるワイヤーカットを用いることができず、複雑な加工を要する。
【0045】
伸縮素子を含む伸縮部1は、変位伝達部20に装着された状態で、適宜の方法により予め圧縮力が与えられるようになっている。特に、伸縮素子として圧電素子を用いた場合には、圧電素子が脆性材料であるセラミックス材料で構成されており、引張り力に対して弱いことから、予め圧縮力を与えることが重要である。伸縮素子に予め圧縮力を与える方法としては、特開2008−99399号公報、特開2012−139028号公報に記載された方法を挙げることができる。
【0046】
変位拡大動作部30は、一端部が第1部材3および第2部材4にそれぞれヒンジ結合され、他端部が変位対象物を変位させる一対のアーム12を有している。すなわち、各アーム12の基端部は、U字状をなす第1部材3の一方側の上端から延びるヒンジ10と、第2部材4の上端から延びるヒンジ11とにより、第1部材3および第2部材4に結合されている。そして、これらアーム12は、湾曲して第2部材4の一方の周縁および他方の周縁に沿うように延びている。アーム12の先端部には、板ばね14の一端部が接合され、各板ばね14の他端部同士は、対象物を取り付けるための取り付け孔16を有するセンターピース15を介して連結されている。変位対象物はこのセンターピース15に取り付けられる。
【0047】
ヒンジ10、11は可撓性材料によって形成され、ヒンジ10はアーム12および第1部材3と一体的に設けられ、ヒンジ11はアーム12および第2部材4と一体的に設けられている。そして、ヒンジ10、11は、伸縮素子の伸縮によって撓みまたは曲げ変形することにより、第2部材4の移動およびアーム12の回動が許容される。
【0048】
これにより、伸縮部1における伸縮素子の伸縮にともなう第2部材4の移動によってアーム12がヒンジ10および11を介して回動することにより、変位対象物に10〜30倍に拡大された変位が作用される。
【0049】
具体的には、伸縮部1の下端部は第1部材3に拘束されており、伸縮部1の上端部は第2部材4に拘束されていて、電圧が印加されていない状態で第1部材3と第2部材4の上端の高さ位置は一致しているから、伸縮素子が伸びる方向に変位した場合に、第2部材4が第1部材3に対して上昇し、その変位は、ヒンジ10、11を介して変位拡大動作部30のアーム12に伝達され、アーム12は、第1部材3に近接するように回動し、板バネ14を介してセンターピース15およびセンターピース15に取り付けられた対象物に下方に向かう拡大された変位が生じる。逆に、伸縮素子が縮む方向に変位した場合に、第2部材4が第1部材に対して下降し、その変位は、ヒンジ10、11を介して変位拡大動作部30のアーム12に伝達され、アーム12は、第1部材3に対して離間するように回動し、板バネ14を介してセンターピース15に上方に向かう拡大された変位が生じる。
【0050】
なお、各板ばね14は、一端側および他端側にそれぞれ薄肉部14a、14cを有し、中間部に薄肉部14a、14cよりも厚い厚肉部14bを有しており、この厚肉部14bによって撓みまたは曲げ変形した際の座屈の発生が防止される。
【0051】
このように構成されたアクチュエータ100においては、変位拡大機構2の変位伝達部20に伸縮素子を有する伸縮部1を装着し、伸縮素子に電圧を与えることにより、伸縮素子が伸長すると、これにともなって第2部材4が第1部材3に対して上昇し、この変位によってヒンジ11もヒンジ10に対して変位するため、ヒンジ10、11に結合された一対のアーム12がてこの原理によって互いに近づくように回動する。これに追従して、各板ばね14も互いに近接するように撓みまたは曲げ変形し、センターピース15およびセンターピース15に取り付けられた変位対象物が下方に変位する。このとき、アーム12により、伸縮素子の変位が数倍から数十倍に拡大され、その拡大された変位を変位対象物に作用させることができる。伸縮素子に逆極性の電圧を与えて、伸縮素子を縮退させた際には、同様にてこの原理により、一対のアーム12が高いに遠ざかるように回動し、センターピース15およびセンターピース15に取り付けられた変位対象物に対して上方に拡大された変位が作用する。
【0052】
(アクチュエータの第2の例)
図3は本発明の第1の実施形態に係るアクチュエータの第2の例を示す概略正面図である。
【0053】
アクチュエータ100′は、電圧等のトリガーを与えることにより所定方向に伸縮する伸縮素子を有する伸縮部1と、この伸縮部1が装着される装着部材として機能するとともに、伸縮素子の伸縮変位を拡大して対象物に伝達させる変位拡大機構2′とを具備している。
【0054】
伸縮部1の伸縮素子としては、第1の例と同様、所定方向に伸縮する素子であればよく、電圧に応じて変位する圧電素子、磁界に応じて変位する磁歪素子、温度に応じて変位する形状記憶合金素子等を挙げることができる。いずれの素子の場合にも電源からの電圧を直接印加するか、または電圧を適宜の手段で磁界や温度に変換して用いることにより電圧に応じた変位を実現することができる。なお、
図3でも、電気端子等は省略している。
【0055】
伸縮素子は、例えば、10mm×10mmの板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて例えば40mmの長さにされた直方体をなす圧電素子として構成されている。
【0056】
伸縮素子は、電圧が印加されることにより、
図3の矢印Cで示す長さ方向(
図1のY方向)に伸縮するように構成されている。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3;PZT)を挙げることができる。伸縮素子1の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0057】
伸縮素子を含む伸縮部1は、変位拡大機構2′に装着された状態で、適宜の方法により予め圧縮力が与えられるようになっている。特に、伸縮素子として圧電素子を用いた場合には、圧電素子が脆性材料であるセラミックス材料で構成されており、引張り力に対して弱いことから、予め圧縮力を与えることが重要である。伸縮素子に予め圧縮力を与える方法としては、上述したように、特開2008−99399号公報、特開2012−139028号公報に記載された方法を挙げることができる。
【0058】
変位拡大機構2′は、可撓性を有するヒンジを備えたヒンジ機構として構成され、伸縮部1のY方向の変位が伝達され、拡大されたX方向の変位として出力し、その拡大された変位を移動対象部材(図示せず)に伝達するものであり、伸縮部1の外側を覆うように設けられている。変位拡大機構2′は、伸縮部1の長さ方向(Y方向)の一端部および他端部にそれぞれ取り付けられる第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42を有し、これら第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42の間の伸縮部1の一方側および他方側に、それぞれ、第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42をつなぐ第1変位伝達部40aおよび第2変位伝達部40bを有している。
【0059】
第1ヘッドピース41の内側部分と伸縮部1の一端部とは、嵌め合わせ部7により着脱可能に嵌め合わされている。また、第2ヘッドピース42の内側部分と伸縮部1の他端部とは、嵌め合わせ部8により着脱可能に嵌め合わされている。
【0060】
第1変位伝達部40aは、第1ヒンジ43aと、第1中間部材44aと、第2ヒンジ45aと、第1出力部材46aと、第3ヒンジ47aと、第2中間部材48aと、第4ヒンジ49aとを有し、第1中間部材44aが第1ヒンジ43aを介して第1ヘッドピース41に連結され、第2中間部材48aが第4ヒンジ49aを介して第2ヘッドピース12に連結されており、第1出力部材46aは、それぞれ第2ヒンジ45aおよび第3ヒンジ47aを介して第1中間部材44aおよび第2中間部材48aに連結されている。
【0061】
一方、第2変位伝達部40bは、第5ヒンジ43bと、第3中間部材44bと、第6ヒンジ45bと、第2出力部材46bと、第7ヒンジ47bと、第4中間部材48bと、第8ヒンジ49bとを有し、第3中間部材44bが第5ヒンジ43bを介して第1ヘッドピース41に連結され、第4中間部材48bが第8ヒンジ19bを介して第2ヘッドピース42に連結されており、第2出力部材46bは、それぞれ第6ヒンジ45bおよび第7ヒンジ47bを介して第3中間部材44bおよび第4中間部材48bに連結されている。
【0062】
第1出力部材46aおよび第2出力部材46bは、伸縮部1の長さ方向(Y方向)中央部に伸縮部1を挟んで対向するように設けられている。第1出力部材46aには、移動対象部材(図示せず)が装着される。一方、第2出力部材46bは、固定治具31に固定されている。
【0063】
第1中間部材44aと第2中間部材48aは、第1出力部材46aを挟んで対称に配置され、第1中間部材44aおよび第2中間部材48aと、第3中間部材44bおよび第4中間部材48bとは、伸縮部1を挟んで対称に配置される。また、第1〜第8ヒンジ43a,45a,47a,49a,43b,45b,47b,49bは可撓性を有し、伸縮素子1の伸縮により撓んで伸縮素子1の変位を第1出力部材46aおよび第2出力部材46bに伝達可能となっており、伸縮部1がY方向に伸縮変位することにより、第1出力部材46aおよび第2出力部材46bから拡大されたX方向の変位が出力されるようになっている。
【0064】
そして、第1ヒンジ43a、第4ヒンジ49a、第5ヒンジ43b、および第8ヒンジ49bは、第2ヒンジ45a、第3ヒンジ47a、第6ヒンジ45b、第7ヒンジ47bよりも外側に設けられているため、伸縮部1の伸縮素子が伸長した際に、第1出力部材46aおよび第2出力部材46bが伸縮素子1に対し相対的に外側へ変位するようになっている。このとき、第2出力部材46bは固定治具31で固定されているため、第2出力部材46bは実際には不動部である。このため、伸縮素子1が矢印A方向に伸長した際には、第2出力部材46b以外の部分が伸縮素子とともに
図1の矢印Bの方向へ変位し、その変位が移動対象部材に伝達される。
【0065】
なお、移動対象部材を第1出力部材46aに装着して第2出力部材46bを固定する代わりに、移動対象部材を第2出力部材46bに装着して第1出力部材46aを固定してもよいし、第1出力部材46aおよび第2出力部材46bの両方に移動対象部材を装着して、両方を動作させてもよい。
【0066】
このように構成されたアクチュエータ100′においては、伸縮素子に所定の電圧を与えることにより、伸縮部1がY方向に伸長変位(矢印A方向)すると、それにともなって、装着部材である変位拡大機構2′にその変位が伝達される。変位拡大機構2′においては、伸縮部1の伸長変位が第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42に伝達され、第1変位伝達部40aの第1〜第4ヒンジ43a,45a,47a,49aおよび第2変位伝達部40bの第5〜第8ヒンジ43b,45b,47b,49bを介して第1出力部材46aおよび第2出力部材46bが、矢印Bに示すようにX方向に沿って外側に変位し、10〜30倍程度に拡大されたX方向の変位として出力される。そして、その拡大された変位が移動対象部材(図示せず)に伝達される。伸縮素子1が伸長した状態から縮退する場合には、逆の動作により第1出力部材46aおよび第2出力部材46bが内側に変位する。
【0067】
なお、この第2の例においては、いくつかの変形例が可能である。
例えば
図4のように、第1〜第8ヒンジ43a,45a,47a,49a,43b,45b,47b,49bを変更して、伸縮部1が伸長変位した際に、第1出力部材46aを
図3の矢印B方向とは逆の矢印C方向に変位させることができる。また、
図5に示すように、一方側の中間部にヒンジを設けずに第1出力部材46aのみ変位するようにしてもよい。さらに、
図6に示すように、第1出力部46aおよび第2出力部46bの変位が伸縮部1に妨げられないように、2つの伸縮部1の間に第1変位伝達部40aおよび第2変位伝達部40bを設けるようにしてもよい。
【0068】
(嵌め合わせ部の第1の例)
次に、嵌め合わせ部の第1の例について説明する。
ここでは、
図1に示すアクチュエータの第1の例に適用した嵌め合わせ部を示すが、
図3に示すアクチュエータの第2の例にも同様に適用することができる。
【0069】
図7は、嵌め合わせ部の第1の例を説明するための斜視図である。
図7に示すように、変位拡大機構2の第2部材4および伸縮部1は、いずれも断面矩形状の角柱状に形成されており、第2部材4の下端部と伸縮部1の上端部との嵌め合わせ部7は、第2部材4の下端の幅方向(矢印E方向)に対向する2辺から突出して設けられた一対の第1突出部21を有する第1部分7aと、伸縮部1の上端の、第1突出部21に対応しない厚さ方向(F方向)に対向する2辺から突出して設けられた一対の第2突出部22を有する第2部分7bとが嵌め合わされることにより構成される。第1部分7aと第2部分7bとが嵌め合わされた状態では、第1部分7aの突出部21と第2部分7bの第2突出部22は直交しており、第1部分7aの突出部21は、伸縮部1の上端部の第2突出部22が形成されていない2辺に対応する面を隙間なく挟むように構成され、第2部分7bの第2突出部22は、第2部材4の第1突出部が形成されていない2辺に対応する面を隙間なく挟むように構成される。また、第2部分7bは、第1突出部21が嵌め込まれる段差部23を有している。これにより、第1突出部21および第2突出部22によって、第2部材4と伸縮部1のX方向およびY方向の相対移動が阻止され、伸縮部1と第2部材4とは、これらの接続面内での移動が生じない状態とすることができる。切り欠き5の底部と伸縮部1の下端部との嵌め合わせ部8も嵌め合わせ部7と同様に構成される。
【0070】
このように、嵌め合わせ部7により伸縮部1の上端部と第2部材4とが嵌め合わされ、嵌め合わせ部8により伸縮部1の下端部と第1部材3とが嵌め合わされることにより、伸縮部1が変位方向以外の方向へ移動しないようにすることができる。また、変位拡大機構2は、全体が同じ厚さで構成すると、ワイヤカット等の簡易な方法を採用することができ、製造上有利であるが、上記のような構造の嵌め合わせ部7を採用することにより、変位拡大機構2の変位伝達部20は同じ厚さで形成することができ、製造性を低下させることはない。伸縮部1の第2部分7bは、第2突出部22の分だけ厚さ方向に張り出している。
【0071】
なお、伸縮部1の伸縮方向に与圧を与えているので、嵌め合わせ部7、8のいずれか一方のみを設け、嵌め合わせ部が存在しない側の伸縮部1の端面を第1部材3または第2部材4の対応する端面に接触するのみとしてもよい。
【0072】
従来は、伸縮素子を装着部材である変位拡大機構に接着して用いていたが、伸縮素子を接着すると、想定外の力が作用する場合等に伸縮素子を取り外せないという不都合や、伸縮素子または装着部材が破損しても一方のみを交換することができないという不都合があった。一方、このような不都合を解消するために、伸縮素子を接着せずに伸縮方向に圧力をかけて装着することも検討されていたが、伸縮素子は伸縮動作が速いため、圧力をかけていても伸縮素子が伸縮を繰り返すことにより素子の位置ずれが生じてしまい、伸縮素子の破損を有効に防止することは困難であった。
【0073】
そこで、本例では、伸縮素子を有する伸縮部1の上端部および下端部と、装着部材である変位拡大機構2の第2部材4および第1部材3とを、それぞれ、嵌め合わせ部7、8によりこれらの接合面内で移動しないように着脱可能に嵌め合わせるようにする。このように、伸縮素子を装着部材である変位拡大機構2に接着せずに着脱可能としたので、伸縮素子を接着すると、想定外の力が作用する場合等に伸縮素子を取り外せないという不都合や、伸縮素子または装着部材が破損しても一方のみを交換することができないという不都合を回避することができる。また、伸縮素子を有する伸縮部1が伸縮方向以外の方向に移動しないようにすることができ、伸縮素子が伸縮を繰り返しても伸縮素子に位置ずれが生じず、伸縮素子の破損を防止することができる。特に、伸縮素子として脆性材料であるセラミック材料を用いる圧電素子を用いる場合に、この破損防止効果が有効である。
【0074】
この場合に、上述したように伸縮部1の伸縮方向に予め圧縮力が与えられているので、嵌め合わせ部7、8のいずれか一方のみを設け、嵌め合わせ部が存在しない側の伸縮部1の端面を第1部材3または第2部材4の対応する端面に接触するのみとしても上記効果を得ることができる。ただし、上記効果を確実に得る観点からは、嵌め合わせ部7、8を両方設けることが好ましい。
【0075】
また、
図8Aおよび
図8Bに示すように、このような嵌め合わせ部の少なくとも一方側をねじ止めするとにより、伸縮部1の装着をより確実に行うことができる。
図8A、
図8Bはアクチュエータの第2の例を例にとって説明するものであるが、
図8Aは、嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41と伸縮部1とをねじ32によりねじ止めしている例であり、
図8Bは嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41および嵌め合わせ部8側の第2ヘッドピース42の両方を伸縮部1に対してねじ32および33によりねじ止めしている例である。
【0076】
なお、嵌め合わせ部7、8のいずれか一方のみを設け、伸縮部1の嵌め合わせ部が設けられていない端部側を装着部材とねじ止めするようにしてもよい。また、嵌め合わせ部7、8のいずれか一方のみを設け、伸縮部1の両方の端部を装着部材とねじ止めするようにしてもよい。
【0077】
(嵌め合わせ部の第2の例)
次に、嵌め合わせ部の第2の例について説明する。
ここでは、伸縮部と装着部材との接続面の面内移動が生じないような嵌め合わせ手法の他の例について、
図1に示すアクチュエータの第1の例に基づいて説明する。もちろん、
図3に示すアクチュエータの第2の例にも同様に適用することもできる。
【0078】
図9Aは、第2部材4の端部を角筒部4aとし、伸縮部1の一方の端部を角筒部4aに対応する角柱部1aとし、角柱部1aを角筒部4aに挿入することにより嵌め合わせ部7を構成した例を示すものである。また、
図9Bは、第2部材4の端部を円筒部4bとし、伸縮部1の一方の端部を円筒部4bに対応する円柱部1bとし、円柱部1bを円筒部に挿入することにより嵌め合わせ部7を構成した例を示すものである。また、角筒部や円筒部および角柱部や円柱部に限らず、他の多角筒や多角柱であってもよく、互いに適合する筒状部と柱状部であればよい。また、
図9Bのように円筒部4bと円柱部1bの組み合わせの場合は、伸縮部1が変位方向以外の方向へ移動しないようにしつつ、円筒部4bと円柱部1bとが相対的に回転することが許容される。なお、第2部材4の端部が多角筒で伸縮部1の対応する端部がそれに内接する円柱の場合にも同様に、相対的に回転することが許容される。
【0079】
また、
図9Cに示すように、第2部材4の端部を、角柱部4cの先端に円筒部4dを設けた構成にすることもできる。
【0080】
なお、本例において、上記
図9A〜
図9Cとは逆に、装着部材側に柱状部を設け、伸縮部側に筒状部を設けて、これらにより嵌め合わせ部を構成してもよい。また、伸縮部1の全体の断面形状は特に限定されない。また、本例においても、伸縮部1は伸縮素子のみで構成されていてもよいし、
図2に示すように、伸縮素子17と嵌め合わせ部材18で構成されていてもよい。
【0081】
(嵌め合わせ部の第3の例)
次に、嵌め合わせ部の第3の例について説明する。
ここでは、伸縮部と装着部材との嵌め合わせ部により位置決めを行い、ねじ止めにより伸縮部を拘束する例について、
図3に示すアクチュエータの第2の例に基づいて説明する。もちろん、
図1に示すアクチュエータの第1の例にも同様にに適用することができる。
【0082】
図10Aの例では、伸縮部1は断面が矩形状をなし、伸縮部1の両端面に、対向する2辺から突出した一対の突出部51を形成し、一対の突出部51が第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42の端部の装着部分52を挟むようにして嵌め合わせ部7および嵌め合わせ部8が構成される。これによって伸縮部1の位置決めがなされる。そして、嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41と伸縮部1とをねじ32によりねじ止めする。これにより、伸縮部1と変位拡大機構2′とが着脱可能であり、ねじにより固定された際には、伸縮部1の伸縮方向以外の方向へ移動することが防止され、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことがない。
【0083】
図10Bの例では、嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41および嵌め合わせ部8側の第2ヘッドピース42の両方を伸縮部1に対してねじ32および33によりねじ止めしている。一方のみのねじ止めで上記効果を奏することができるが、このように伸縮部1の両側をねじ止めすることにより、より確実に上記効果を得ることができる。
【0084】
図10Cの例では、
図10Aおよび
図10Bの例と同様に嵌め合わせ部8が構成されているが、伸縮部1の第1ヘッドピース41側の端面は、第1ヘッドピースの装着部分52の端面とつき合わされるように構成されている。これによって、より簡易に伸縮部1の位置決めを行うことが可能である。そして、伸縮部が装着された際に、伸縮部1の第1ヘッドピース41側の端部が第1ヘッドピース41とねじ32によりねじ止めされる。これにより、伸縮部1と変位拡大機構2′とが着脱可能であり、ねじにより固定された際には、伸縮部1の伸縮方向以外の方向へ移動することが防止され、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことがない。なお、
図10Cの例において、嵌め合わせ部7を設け、伸縮部1の第2ヘッドピース42側の端面が、第2ヘッドピースの装着部分52の端面と付き合わされるように構成され、伸縮部1の第2ヘッドピース42側の端部を第2ヘッドピース42とねじ止めするようにしてもよい。また、伸縮部1の両側をねじ止めしてもよい。
【0085】
なお、伸縮部1の断面形状、変位拡大機構2′の装着部分の断面形状を矩形状としたが、これに限るものではない。また、本例においても、伸縮部1は伸縮素子のみで構成されていてもよいし、
図2に示すように、伸縮素子17と嵌め合わせ部材18で構成されていてもよい。
【0086】
(嵌め合わせ部の第4の例)
次に、嵌め合わせ部の第4の例について説明する。
ここでは、第3の例と同様、伸縮部と装着部材との嵌め合わせ部により位置決めを行い、ねじ止めにより伸縮部を拘束する例について、
図3に示すアクチュエータの第2の例に基づいて説明する。もちろん、
図1に示すアクチュエータの第1の例にも同様に適用することができる。
【0087】
図11Aの例では、第1ヘッドピース41および第2ヘッドピース42の伸縮部1側の端部の装着部分は、その断面が矩形状をなし、端面の対向する2辺から突出した一対の突出部53を有すし、突出部53が伸縮部1の両方の端部54を挟むようにして嵌め合わせ部7および嵌め合わせ部8が構成される。これにより伸縮部1の位置決めがなされる。そして、嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41と伸縮部1とをねじ32によりねじ止めする。これにより、伸縮部1と変位拡大機構2′とが着脱可能であり、ねじにより固定された際には、伸縮部1の伸縮方向以外の方向へ移動することが防止され、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことがない。
【0088】
図11Bの例では、嵌め合わせ部7側の第1ヘッドピース41および嵌め合わせ部8側の第2ヘッドピース42の両方を伸縮部1に対してねじ32および33によりねじ止めしている。一方のみのねじ止めで上記効果を奏することができるが、このように伸縮部1の両側をねじ止めすることにより、より確実に上記効果を得ることができる。
【0089】
図11Cの例では、
図11Aおよび
図11Bの例と同様に嵌め合わせ部8が構成されているが、伸縮部1の第1ヘッドピース41側の端面は、第1ヘッドピースの装着部分52の端面とがつき合わされるように構成されている。これによって、より簡易に伸縮部1の位置決めを行うことが可能である。そして、伸縮部が装着された際に、伸縮部1の第1ヘッドピース41側の端部が第1ヘッドピース41とねじ32によりねじ止めされる。これにより、伸縮部1と変位拡大機構2′とが着脱可能であり、ねじにより固定された際には、伸縮部1の伸縮方向以外の方向へ移動することが防止され、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を回避することができ、かつ動作時に伸縮素子の破損をもたらすことがない。なお、
図11Cの例において、嵌め合わせ部7を設け、伸縮部1の第2ヘッドピース42側の端面が、第2ヘッドピースの装着部分52の端面と付き合わされるように構成され、伸縮部1の第2ヘッドピース42側の端部を第2ヘッドピース42とねじ止めするようにしてもよい。また、伸縮部1の両側をねじ止めしてもよい。
【0090】
なお、伸縮部1の断面形状、変位拡大機構2′の装着部分の断面形状を矩形状としたが、これに限るものではない。また、本例においても、伸縮部1は伸縮素子のみで構成されていてもよいし、
図2に示すように、伸縮素子17と嵌め合わせ部材18で構成されていてもよい。
【0091】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図12Aは、本発明の第2の実施形態に係るアクチュエータを用いたステージ装置を示す平面図、
図12Bはその側面図である。
【0092】
ステージ装置400は、ステージ200と、ステージ200を駆動する駆動機構としてのアクチュエータ300とを有している。
【0093】
ステージ200は、ベース部材61と、ベース部材61の上に設けられたレール63上を移動するステージ部材62とを有する。ステージ部材62は、ばね部材(図示せず)により、矢印A方向に付勢されている。
【0094】
アクチュエータ300は、ステージ200の駆動機構として用いられ、電圧等のトリガーを与えることにより所定方向に伸縮する伸縮素子を有する伸縮部71と、この伸縮部71が装着される装着部材72とを有する。伸縮部71は、第1の実施形態の伸縮部1と同様に構成され、図中X方向に変位するようになっている。
【0095】
装着部材72は、ステージ200のベース部材61に取り付けられるとともに伸縮部71の一端部が装着される第1部材73と、ステージ部材62に取り付けられるとともに伸縮部の他端部が装着される第2部材74とを有している。
【0096】
第1部材73は、ベース部材61から上方に延びる垂直部81と、伸縮部71の一端部に固定され垂直部81に嵌め込まれる取り付け部82とを有している。
【0097】
第2部材74は、ステージ部材62に取り付けられた固定治具91と、固定治具91に取り付けられ、固定治具91を介してステージ部材62を図中X方向に移動させ大まかな位置調整を行う移動部92を有している。移動部92は、マイクロメータと同様の原理を有するものであり、手動で回転させる回転部93と、回転部93の内側に設けられ、固定治具91に取り付けられたスリーブ94と、回転部93を回転させることにより回転しながらスリーブに対して相対的にX方向に直進するスピンドル95と、スピンドル95の先端に設けられた円筒部96とを有する。
【0098】
一方、伸縮部71は円柱状をなし、その他端部が円筒部96に対応する円柱部71aとなっており、円柱部71aと円筒部96とが着脱可能に嵌め合わされて嵌め合わせ部90を形成し、伸縮部71が変位方向以外の方向へ移動しないようになっている。円柱部71aは、伸縮素子の一部であってもよいし、伸縮素子に装着された嵌め合わせ治具であってもよい。また、移動部92によりステージ部材62を移動させる際には、回転部93を回転させることによりスピンドル95が回転し、それにともなって円筒部96も回転するが、嵌め合わせ部90は円筒と円柱の嵌め合わせであるため、伸縮部71が変位方向以外の方向へ移動しない状態を保ったまま回転を許容する。
【0099】
このように構成されたステージ装置400において、ステージ200の駆動機構として用いられるアクチュエータ300は、伸縮部71の一端部が装着部材72の第1部材73に装着され、他端部が装着部材72の第2部材74に装着された状態とされる。具体的には、伸縮部71の一端部に固定された取り付け部82が垂直部81に嵌め込まれ、伸縮部71の他端部を構成する円柱部71aが、第2部材74の円筒部96に嵌め込まれる。
【0100】
ステージ200のステージ部材62の位置を大まかに合わせる際には、移動部92の回転部93を回転させ、スピンドル95を回転させながら直動させる。これにより、固定治具91に取り付けられたスリーブ94が相対的にX方向に移動し、これにともなってステージ部材62がX方向に移動する。ステージ部材61の位置を微調整する際には、移動部92によりステージ部材62の位置を調整した後、伸縮部71の伸縮素子に電圧を与えることにより伸縮素子を伸縮させる。
【0101】
このように、アクチュエータ300は、伸縮部71の円柱部71aと装着部72を構成する第2部材74の円筒部96とが着脱可能に嵌め合わされて嵌め合わせ部90を形成し、伸縮部71が変位方向以外の方向へ移動しないようになっているので、伸縮素子を装着部材に対して接着することの不都合を解消することができる。
【0102】
また、移動部92を移動する際にスピンドル95の回転にともなって円筒部96が回転するが、嵌め合わせ部90は円筒と円柱の嵌め合わせであるため、伸縮部71が変位方向以外の方向へ移動しない状態を保ったまま回転を許容する。このような用い方は、従来の伸縮素子と装着部材とを接着する場合では困難であったが、本実施形態では容易に行うことができる。
【0103】
なお、上記例では、X方向のみに移動するステージ装置を示したが、X方向、Y方向にそれぞれ移動するステージ部材を設けたXYステージ装置であってもよい。その場合には、X方向のアクチュエータとY方向のアクチュエータを2つ設ければよい。また、上記例では、回転部を手動で回転する例を示したが、自動で回転するようにしてもよい。さらに、上記例では、アクチュエータとして伸縮部以外に移動部を設けてステージ部材の大まかな位置調整を可能にしたものを示したが、移動部を設けずに伸縮部による位置調整のみを行うようにしてもよい。移動部を設けない場合は、嵌め合わせ部が回転を許容するものでなくてもよいので、嵌め合わせ部として円筒部と円柱部の組み合わせ以外を用いることができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記2つの実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、伸縮部を装着する装着部材として変位拡大機構を用いたアクチュエータの例、およびステージ装置に適用したアクチュエータの例について説明したが、伸縮変位部が装着されて伸縮素子の伸縮変位が伝達されるものであれば、これに限るものではなく、例えば、伸縮素子に予め圧縮力を与える与圧機構や、伸縮素子を他の装置のインターフェイスに取り付けるための部材を装着部材として用いることができる。また、装着部材としての変位拡大機構は、上記例に限らず、あらゆるタイプの変位拡大機構に適用することが可能である。
【0105】
また、伸縮部の端部および装着部材の装着形態は上記実施形態に限らず、伸縮部を着脱可能に装着でき、かつ装着部に確実に固定できる形態であればよい。