(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記色材が、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、及びキノフタロン系顔料よりなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
前記塩型ブロック共重合体(P2)において、前記一般式(I)で表される構成単位に含まれる末端の窒素部位1モルに対して、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物が0.1〜0.8モル含まれる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
前記分散剤における前記ブロック共重合体(P1)が、更に、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み、前記ブロック共重合体(P1)の酸価が1〜18mgKOH/gであり、前記塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が1〜55mgKOH/gである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用色材分散液。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る色材分散液、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物、カラーフィルタ、液晶表示装置並びに有機発光表示装置について、順に詳細に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
【0018】
[色材分散液]
本発明に係る色材分散液は、色材と、分散剤と、溶剤とを含有する色材分散液であって、
前記分散剤が、下記ブロック共重合体(P1)、及び、下記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、
P1:下記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体;
P2:前記ブロック共重合体(P1)の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体;
前記ブロック共重合体(P1)のアミン価が35〜110mgKOH/gで、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上であることを特徴とする。
【0019】
【化2】
(一般式(I)中、R
1及びR
1’はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−CH(R
6)−CH(R
7)−又は[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の基、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素原子、又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成してもよい。R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。
一般式(1)において、R
aは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−R
eを表し、R
eは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。一般式(2)において、R
b、R
b’、及びR
b”はそれぞれ独立に、水素原子、酸性基又はそのエステル基、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−R
fを表し、R
fは、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、置換基を有してもよいビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表し、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を表す。一般式(3)において、R
c及びR
dはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは−O−R
eを表し、R
eは、炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ビニル基、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基、或いは炭素数1〜4のアルキレン基を介した(メタ)アクリロイル基を表す。但し、R
c及びR
dの少なくとも一つは炭素原子を含む。)
【0020】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のブロック共重合体のアミン価が低いと色材分散安定性及び着色層のコントラストが実用レベルに達せず、アミン価が高すぎると溶剤再溶解性が悪化するが、アミン価が特定の値であると、色材分散安定性及び着色層のコントラストが良好になり、且つ溶剤再溶解性が良好になることを見出した。
本発明の色材分散液は、分散剤として、前記特定のアミン価と特定のガラス転移温度を有する、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体(P1)、及び当該ブロック共重合体と前記特定化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種を用いるため、色材分散性、及び色材分散安定性に優れる。色材に対する分散剤含有量を従来の分散剤よりも少量としても、優れた色材分散性及び色材分散安定性を有する。また、従来分散し難かった顔料を用いても、分散性及び分散安定性が高くなるだけでなく、輝度を向上する効果や耐熱性を向上する効果を有する場合があることも見出した。更に、微分散後に高温での加熱工程を経ると顔料凝集体が析出しやすい顔料に対して、前記特定の分散剤を有する場合には、当該顔料凝集体の析出が抑制される効果を有する場合があることも見出した。
前記一般式(I)で表される構成単位は、アミノ基に相当する末端の窒素部位(−NR
2R
3)を有し、更にアミド基を有することから、高い塩基性を有している。また、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体(P1)は、特定値より大きいアミン価を有することにより、当該高い塩基性部位が色材に吸着するのに十分なブロック部としてかたまって存在することから、特に色材に対する吸着性及び吸着後の維持能力が強まり、色材分散性、及び色材分散安定性に優れると推定される。一方、特定値よりも小さいアミン価を有することから、極性が強くなり過ぎず、溶剤再溶解性を阻害することなく、色材分散性、及び色材分散安定性を向上していると推定される。
色材は分散工程を経て微細化され露出した表面に分散剤が適切に吸着することで安定化する。
しかしながら、基板に塗布された色材においては、カラーフィルタ製造工程における230℃程度の高温がかけられると、色材に吸着していた分散剤の吸着性が熱運動により弱まり、部分的に脱離してしまうと推定される。その結果、分散剤が脱離し露出した色材表面は、色材の結晶性が変化(転移、成長など)しやすい環境になる。
一方、前記一般式(I)で表される構成単位は、強い塩基性を有している為、色材に対する吸着性及び吸着後の維持能力が強い。そのため、カラーフィルタ製造工程における230℃程度の高温がかけられても、色材からの脱離が著しく少なく、その結果、色材表面は安定性が維持され、結晶転移などによる色味の変化や輝度低下を抑制することができるものと推定される。また、顔料凝集体が析出しやすい色材では凝集体の析出を抑制することができると推定される。
【0021】
また、本発明の色材分散液は、現像残渣の発生が抑制されながら、現像密着性及び溶剤再溶解性に優れた感光性着色樹脂組成物を作製可能である。
従来、顔料分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体は知られていた(特許文献1)が、本発明者らが検討した結果、特許文献1に記載されている共重合体を顔料分散剤として用いると、特に現像密着性が実用レベルに達するものではなかった。特許文献1に記載されている顔料分散剤では、後述する比較例に示すように、共重合体に、ポリアルキレンオキシ鎖を含むアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート由来の構成単位を含むことからガラス転移温度が低くなることが原因と推定される。顔料分散剤としての共重合体のガラス転移温度が、現像液温度よりも低い温度であると、現像時に分散剤の分子運動が大きくなり、その結果、現像密着性が低下すると推定される。
【0022】
一方、特定のブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体が上記特定のアミン価であっても、ガラス転移温度が所定値よりも低いと現像密着性が実用レベルに達しないが、ガラス転移温度が現像液温度よりも高い30℃以上であるブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体を用いると、現像密着性に優れることを見出した。ガラス転移温度が現像液温度よりも高い30℃以上であるブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体を用いると、現像時の分散剤の分子運動が抑制されることから、現像密着性の低下が抑制されると推定される。
また、当該特定のブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体は、分散剤含有量を従来の分散剤よりも少量としても、優れた色材分散性及び色材分散安定性を有することから、樹脂組成物中の色材濃度を高めても、分散剤含有量を低く抑えることができ、感光性着色組成物に含まれるバインダー成分含有量を相対的に高くできるため、着色パターンの欠けや水染みの発生を抑制できる。なお、水染みとは、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生するこの現象をいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
更に、前述のように、アミン価を特定値以下としたことにより、極性が強くなり過ぎず、溶剤再溶解性が良好になる。
【0023】
本発明の色材分散液は、少なくとも色材と、分散剤と、溶剤とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明の色材分散液の各成分について、本発明に特徴的な分散剤から順に詳細に説明する。
【0024】
<分散剤>
本発明においては、分散剤として、前記ブロック共重合体(P1)、及び、前記塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、前記ブロック共重合体(P1)のアミン価が35〜110mgKOH/gで、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である分散剤が用いられる。
【0025】
前記一般式(I)で表される構成単位は、塩基性を有し、色材に対する吸着部位として機能する。また、当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した場合においては、当該塩形成部が色材に対してより強い吸着部位として機能する。前記一般式(I)で表される構成単位は、特にアミド結合を含むことから塩基性が高く、色材に対する吸着機能が更に高まっていると推定される。
本発明の分散剤として用いられるブロック共重合体においては、通常、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック(以後Aブロックということもある)と、更に親溶剤性を有するブロック(以後Bブロックということもある)が含まれる。このような構成のブロック共重合体は、色材と吸着するAブロックと親溶剤性を有するBブロックとで機能を分担して、色材分散剤として機能する。
【0026】
[ブロック共重合体]
{Aブロック}
(一般式(I)で表される構成単位)
一般式(I)において、R
1及びR
1’はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R
1は、他の成分との相溶性の観点からは、メチル基であることが好ましい。
Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−CH(R
6)−CH(R
7)−又は[(CH
2)
y−O]
z−(CH
2)
y−で示される2価の基である。
Aにおける炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種へキシレン基、各種オクチレン基などである。R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
上記Aとしては、分散性の点から、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、中でも、Aがメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましい。
【0027】
R
2及びR
3における、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基における炭化水素基は、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルキル基の炭素原子数は、1〜18が好ましく、中でも、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素原子数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
また、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素原子数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
ヘテロ原子を含む炭化水素基とは、上記炭化水素基中の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられた構造を有する。炭化水素基が含んでいてもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
また、炭化水素基中の水素原子は、炭素原子数1〜5のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。
【0028】
R
2及びR
3が互いに結合して環構造を形成しているとは、R
2及びR
3が窒素原子を介して環構造を形成していることをいう。R
2及びR
3が形成する環構造にヘテロ原子が含まれていても良い。環構造は特に限定されないが、例えばピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環等が挙げられる。なお、本発明において、これらの環状アミン構造を有する場合も、アミノ基(−NR
2R
3)という呼称に包含される。
【0029】
本発明においては、中でも、R
2及びR
3が各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、フェニル基であるか、又は、R
2及びR
3が結合してピロリジン環、ピペリジン環、モルフォリン環を形成していることが好ましい。さらに、R
2及びR
3が各々独立に、炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましい、分散安定性に優れるからである。
【0030】
上記一般式(I)で表される構成単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド等、アルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。他の成分との相溶性の観点からは、ジアルキルアミノアルキルメタクリルアミド等、アルキル基置換アミノ基含有メタクリルアミドが好ましい。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
【0031】
一般式(I)で表される構成単位を含むAブロック中、一般式(I)で表される構成単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3〜100個含むことが好ましく、3〜50個含むことがより好ましく、更に3〜30個含むことがより好ましい。
【0032】
Aブロックは本発明の目的を達成する範囲で、一般式(I)で表される構成単位以外の構成単位を有するものであってもよく、一般式(I)で表される構成単位と共重合可能な構成単位であれば含有することができる。例えば、Aブロック部が含有してもよい一般式(I)で表される構成単位以外の構成単位としては、例えば、アルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート、1−ビニルイミダゾール等の一般式(I)で表される構成単位以外の塩基性基を有する構成単位や、後述するBブロックにおいて挙げられた構成単位を用いることができ、具体的には例えば、後述する一般式(II)で表される構成単位等が挙げられる。
塩形成前のブロック共重合体におけるAブロック中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、Aブロックの全構成単位の合計質量に対して、50〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。一般式(I)で表される構成単位の割合が高いほど、色材への吸着力が向上し、ブロック共重合体の分散性、及び分散安定性が良好となるからである。なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するAブロックを合成する際の仕込み質量から算出される。
【0033】
また、塩形成前のブロック共重合体中、一般式(I)で表される構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体のアミン価が前記特定のアミン価の範囲内になるように適宜設定すればよく特に限定されないが、分散性、及び分散安定性が良好となる点から、塩形成前のブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。なお、上記ブロック共重合体における各構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
なお、一般式(I)で表される構成単位は、色材との親和性を有すればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0034】
{Bブロック}
Bブロックは、前記一般式(I)で表される構成単位を含まず、親溶剤性部位として機能するブロックである。Bブロックとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な、不飽和二重結合を有するモノマーの中から、親溶剤性を有するように溶剤に応じて適宜選択して用いられることが好ましい。目安として、組み合わせて用いられる溶剤に対して、共重合体の23℃における溶解度が20(g/100g溶剤)以上となるように、Bブロックを導入することが好ましい。
【0035】
Bブロックには、親溶剤性を良好にする点から、用いられる溶剤に合わせて適宜選択された親溶剤性を向上する構成単位が含まれる。
Bブロックを構成する構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合を有する単量体を挙げることができ、中でも下記一般式(II)で表される構成単位が好ましい。
【0036】
【化3】
(一般式(II)中、A’は、直接結合又は2価の連結基、R
4は、水素原子又はメチル基、R
5は、炭化水素基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−R
8又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
8で示される1価の基である。R
6及びR
7は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R
8は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CH
2CHO、又は−CH
2COOR
9で示される1価の基であり、R
9は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基である。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0037】
一般式(II)において、A’は直接結合又は2価の連結基である。直接結合とは、A’が原子を有しないこと、即ち、一般式(II)におけるC(炭素原子)と、R
5とが、他の原子を介さずに結合していることを意味する。
A’における2価の連結基としては、例えば、炭素原子数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素原子数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
中でも、分散性の点から、一般式(II)におけるA’は、直接結合、−CONH−基、又は、−COO−基を含む2価の連結基であることが好ましい。
【0038】
一般式(II)において、R
5は、炭化水素基、−[CH(R
6)−CH(R
7)−O]
x−R
8又は−[(CH
2)
y−O]
z−R
8を示す。
R
5における炭化水素基としては、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基であることが好ましい。
上記炭素原子数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−エトキシエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
上記炭素原子数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素の置換基としては、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0039】
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アリール基の炭素原子数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
また、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられ、更に置換基を有していてもよい。アラルキル基の炭素原子数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
なお、上記好ましい炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0040】
上記R
5において、xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0041】
上記R
8における炭化水素基は、前記R
5で示したものと同様のものとすることができる。
R
9は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよい。
また、上記一般式(II)で表される構成単位中のR
5は、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0042】
上記R
5としては、後述する溶剤との相溶性に優れたものとなるように選定することが好ましく、具体的には、例えば上記溶剤が、カラーフィルタ用着色樹脂組成物の溶剤として一般的に使用されているグリコールエーテルアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶剤を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
【0043】
さらに、上記R
5は、上記ブロック共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基等の置換基によって置換されたものとしてもよく、また、上記ブロック共重合体の合成後に、上記置換基を有する化合物と反応させて、上記置換基を付加させてもよい。
【0044】
Bブロックを構成する構成単位の数は特に限定されないが、親溶剤性部位と親色材部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、10〜300個であることが好ましく、10〜100個であることがより好ましく、更に10〜70個であることがより好ましい。
【0045】
ブロック共重合体におけるBブロック中、上記一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、親溶剤性や色材分散性を向上する点から、Bブロックの全構成単位の合計質量に対して、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、Bブロックを合成する際の仕込み質量から算出される。
【0046】
また、塩形成前のブロック共重合体中、上記一般式(II)で表される構成単位の含有割合は、色材分散性を向上する点から、塩形成前のブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、40〜95質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0047】
Bブロックは、親溶剤性部位として機能するように構成単位を適宜選択すれば良く、上記一般式(II)で表される構成単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。Bブロックに含まれる2種以上の構成単位は、当該ブロック内ではランダムに配列していてもよい。
【0048】
本発明においては、ブロック共重合体のBブロック中に、水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、現像密着性や現像速度を向上する点から好ましい。水酸基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、通常基板として用いられるガラスや金属等と相互作用し易いため、現像密着性が向上し、また、アルカリ現像液との親和性が向上するため、現像速度が向上すると考えられる。
なお、ここでの水酸基は、脂肪族炭化水素に結合したアルコール性水酸基をいう。
【0049】
水酸基含有モノマー由来の構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と水酸基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン1モル付加物、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
現像性が向上する点から、1級水酸基を有することが2級水酸基を有するよりも好ましい。なお、1級水酸基とは、水酸基が結合する炭素原子が第1級炭素原子である水酸基をいい、2級水酸基とは、水酸基が結合する炭素原子が第2級炭素原子である水酸基をいう。
後述するように、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、中でも、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が、0℃以上となる水酸基含有モノマーを用いることが好ましく、更に10℃以上となる水酸基含有モノマーを用いることが好ましい。
モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が、10℃以上となる水酸基含有モノマーとしては、現像密着性が向上する点から、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0050】
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)中、水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、現像密着性を向上する点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがより好ましく、3〜50質量%であることがより更に好ましく、4〜40質量%であることが特に好ましい。なお、上記構成単位の含有割合は、塩形成前のブロック共重合体を合成する際の仕込み質量から算出される。
【0051】
また、本発明においては、Bブロック中に、芳香族基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、溶剤再溶解性が向上する点から好ましい。芳香族基含有モノマー由来の構成単位が含まれる場合には、溶剤や他の成分との相溶性が向上し易いため、溶剤再溶解性が向上すると考えられる。
芳香族基含有モノマー由来の構成単位としては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合と芳香族基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリレート類、スチレン等のスチレン類、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類が挙げられる。
後述するように、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、中でも、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が、0℃以上となる芳香族基含有モノマーを用いることが好ましく、更に10℃以上となる芳香族基含有モノマーを用いることが好ましい。
再溶解性が向上し易い点から、中でも、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましく、更に、ベンジル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0052】
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)中、芳香族基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、溶剤再溶解性を向上する点から、ブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、1〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがより好ましく、3〜50質量%であることがより更に好ましく、4〜40質量%であることが特に好ましい。
【0053】
また、中でも親溶剤性を有するBブロックが、(i)水酸基含有モノマー由来の構成単位及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位、並びに、(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位の少なくとも1種を含むことが、現像密着性及び溶剤再溶解性を向上する点から好ましい。
【0054】
(i)水酸基含有モノマー由来の構成単位及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位をそれぞれ含む場合には、芳香族基含有モノマー由来の構成単位1質量部に対して、水酸基含有モノマー由来の構成単位を0.15質量部以上で含有することが好ましく、0.5質量部以上で含有することがさらに好ましい。上記下限値以上であると現像密着性に優れたものとすることができるからである。また、同様に芳香族基含有モノマーの構成単位1質量部に対して、水酸基含有モノマー由来の構成単位を15質量部以下で含有することが好ましく、7質量部以下で含有することがさらに好ましい。上記上限値以下であると溶剤再溶解性に優れたものとすることができるからである。中でも、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上となる芳香族基含有モノマー由来の構成単位1質量部に対して、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上となる水酸基含有モノマー由来の構成単位を上記範囲で含有することが特に好ましい。上記下限値以上で含有することで現像密着性をさらに優れたものとすることができ、上記上限値以下で含有することで溶剤再溶解性をさらに優れたものとすることができるからである。
【0055】
また、(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位における、水酸基及び芳香族基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸等が挙げられる。2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートは、単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であって、且つ、水酸基含有モノマー由来の構成単位から得られる効果と芳香族基含有モノマー由来の構成単位から得られる効果のいずれも得られる点から好ましく用いられる。すなわち、現像密着性、現像速度、溶剤再溶解性が向上する点で好ましい。
(ii)水酸基及び芳香族基含有モノマー由来の構成単位を含む場合には、1つの構成単位により現像密着性、現像速度、溶剤再溶解性を向上することができるため、他の機能性モノマーの導入比率を上げることができるというメリットもある。
【0056】
また、本発明においては、ブロック共重合体のBブロック中に、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位が含まれることが、現像性を向上し、現像残渣の抑制効果を向上する点から好ましい。
本発明に用いられるカルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能な不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。
このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0057】
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、ブロック共重合体の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく特に限定されないが、塩形成前のブロック共重合体の全構成単位の合計質量に対して、0.05〜4.5質量%であることが好ましく、0.07〜3.7質量%であることがより好ましい。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0058】
また、後述するように、本発明に用いられる分散剤のガラス転移温度を特定の値以上とし、現像密着性が向上する点から、モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)が10℃以上であるモノマーを、合計でBブロック中に75質量%以上とすることが好ましく、更に85質量%以上とすることが好ましい。
【0059】
前記ブロック共重合体(P1)において、前記Aブロックの構成単位のユニット数mと、前記Bブロックの構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.05〜1.5の範囲内であることが好ましく、0.1〜1.0の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0060】
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)のアミン価は、色材分散性及び分散安定性の点から、下限としては、35mgKOH/g以上である。中でも、分散安定性がより優れる点から、塩形成前のブロック共重合体のアミン価は、40mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることがさらにより好ましい。また、塩形成前のブロック共重合体のアミン価は、溶剤再溶解性の点から、上限としては、110mgKOH/g以下である。中でも、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる点から、塩形成前のブロック共重合体のアミン価は95mgKOH/g以下であることがより好ましく、80mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
なお、本発明において塩形成前のブロック共重合体(P1)のアミン価とは、塩形成前のブロック共重合体の固形分1gを中和するのに必要な塩酸量に対して当量となる水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 7237に記載の方法により測定される値である。
【0061】
塩形成前のブロック共重合体(P1)は、カルボキシ基を有し、且つ、当該ブロック共重合体の酸価が18mgKOH/g以下であることが好ましく、16mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。溶剤再溶解性及び現像密着性の悪化を防止できるからである。
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)は、カルボキシ基を有し、且つ、当該ブロック共重合体(P1)の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。
なお本発明において、塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価は、ブロック共重合体の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070に記載の方法により測定される値である。
【0062】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000〜20000であることが好ましく、2000〜15000であることがより好ましく、更に3000〜12000であることがより好ましい。
ここで、重量平均分子量は(Mw)、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
なお、本発明においてブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求める。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。なお、ブロック共重合体の原料となるマクロモノマーや塩型ブロック共重合体、グラフト共重合体についても、上記条件で行う。
【0063】
本発明においてブロック共重合体の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
【0064】
上記ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。連鎖移動や失活が起こりにくく、分子量の揃った共重合体を製造することができ、分散性等を向上できるからである。リビング重合法としては、リビングラジカル重合法、グループトランスファー重合法等のリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法等を挙げることができる。これらの方法によりモノマーを順次重合することによって共重合体を製造することができる。例えば、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックを構成する構成単位を重合することにより、ブロック共重合体を製造することができる。また上記の製造方法においてAブロックとBブロックの重合の順番を逆にすることもできる。また、AブロックとBブロックを別々に製造し、その後、AブロックとBブロックをカップリングすることもできる。
【0065】
[塩型ブロック共重合体]
本発明においては、前記ブロック共重合体の前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体を用いても良い。
前記塩型ブロック共重合体は、前記一般式(I)で表される構成単位における塩形成部位において、色材吸着性がより向上し、色材分散性が向上する点から好適に用いられる。
【0066】
(前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物)
前記一般式(1)〜(3)において、R
a、R
b、R
b’、R
b”、R
c、R
d、R
e、及びR
fにおける炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のいずれでも良く、また、環状構造を含んでいても良く、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、更に好ましくは炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。
また、R
a、R
c、R
d、及びR
eにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、炭素原子数が1〜5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0067】
R
b、R
b’、R
b”、及びR
fにおいて、置換基を有してもよいフェニル基又はベンジル基の置換基としては、例えば、酸性基又はそのエステル基、炭素原子数が1〜5のアルキル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
また、R
b、R
b’、R
b”、及びR
fにおいて、置換基を有してもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、或いはビニル基の置換基としては、酸性基又はそのエステル基、フェニル基、アシル基、アシルオキシ基等が挙げられる。
R
b、R
b’、R
b”、及びR
fにおいて酸性基とは、水中でプロトンを放出し酸性を示す基のことをいう。酸性基の具体例としては、カルボキシ基(−COOH)、スルホ基(−SO
3H)、ホスホノ基(−P(=O)(OH)
2)、ホスフィニコ基(>P(=O)(OH))、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ボリン酸基(>BOH)等が挙げられ、カルボキシラト基(−COO
−)等のように水素原子が解離したアニオンであってもよく、更に、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンと塩形成した酸性塩であってもよい。
また、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(−COOR)、スルホン酸エステル(−SO
3R)、リン酸エステル(−P(=O)(OR)
2)、(>P(=O)(OR))、ボロン酸エステル(−B(OR)
2)、ボリン酸エステル(>BOR)等が挙げられる。中でも、酸性基のエステル基としては、カルボン酸エステル(−COOR)であることが分散性及び分散安定性の点から好ましい。なお、Rは炭化水素基であり、特に限定されないが、分散性及び分散安定性の点から、中でも炭素原子数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0068】
前記一般式(2)の化合物は、分散性、分散安定性、アルカリ現像性、及び現像残渣抑制の点から、カルボキシ基、ボロン酸基、ボリン酸基、これらのアニオン、並びにこれらのアルカリ金属塩、及びこれらのエステル基より選択される1種以上の官能基を有することが好ましく、中でも、カルボキシ基、カルボキシラト基、カルボン酸塩基、及びカルボン酸エステルより選択される官能基を有することがより好ましく、カルボキシ基を含有することが特に好ましい。
前記一般式(2)の化合物が酸性基及びそのエステル基(以下、酸性基等という)を有する場合、当該化合物が有する酸性基等側、及び、ハロゲン原子側炭化水素のいずれもが末端の窒素部位と塩形成し得るが、末端の窒素部位と酸性基等とが塩形成した場合に比べて、末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素とが安定して塩形成するものと推定される。そして、安定して存在する塩形成部位に色材が吸着することにより分散性及び分散安定性が向上するものと推定される。また、一般式(2)の化合物が酸性基等を有すると当該分散剤はアルカリ現像性に優れる。特に、前記ブロック共重合体(P1)が酸価を有する場合、すなわち前記ブロック共重合体(P1)の親溶剤性部位(Bブロック)中にカルボキシ基等酸性基含有モノマー由来の構成単位が含まれて酸価を有する場合において、塩形成部位に酸価を増加させる前記酸性基等を有すると、現像残渣を抑制する効果が高くなる。なお、塩形成部位に酸価を増加させる前記酸性基等を有するとは、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と反応して塩を形成している酸性基ではなく、窒素部位と直接塩を形成していない酸性基等を有することをいう。例えば、上記一般式(2)の化合物が酸性基等を有すると、上記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該塩形成部位には塩を形成していない酸性基等を有し、酸価を増加させる。
【0069】
前記一般式(2)の化合物が前記酸性基等を有する場合、前記酸性基等を2個以上有していてもよい。前記酸性基等を2個以上有する場合、複数ある前記酸性基等は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記一般式(2)の化合物が有する前記酸性基等の数は1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0070】
前記一般式(1)においてR
a、前記一般式(2)においてR
b、R
b’、及びR
b”の少なくとも1つ、並びに、前記一般式(3)においてR
c及びR
dの少なくとも1つが芳香族環を有する場合には、後述する色材の骨格との間の親和性が向上し、色材の分散性及び分散安定性が優れたものとなり、コントラストに優れた着色組成物を得ることができる点から好ましい。
【0071】
前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の分子量は、色材分散性向上の点から、1000以下であることが好ましく、中でも50〜800であることが好ましく、更に50〜400であることが好ましく、より更に80〜350であることが好ましく、100〜330であることが最も好ましい。
【0072】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、モノメチル硫酸、モノエチル硫酸、モノn−プロピル硫酸等が挙げられる。なお、p−トルエンスルホン酸一水和物のような水和物を用いても良い。前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、メチルクロライド、メチルブロマイド、エチルクロライド、エチルブロマイド、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、n−ブチルクロライド、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ドデシルクロライド、テトラデシルクロライド、ヘキサデシルクロライド、フェネチルクロライド、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、ベンジルヨーダイド、クロロベンゼン、α−クロロフェニル酢酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ヨードフェニル酢酸、4−クロロメチル安息香酸、4−ブロモメチル安息香酸、4−ヨードフェニル安息香酸、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、α−ブロモフェニル酢酸メチル、3−(ブロモメチル)フェニルボロン酸、等が挙げられる。前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、メチルリン酸、ジベンジルリン酸、ジフェニルリン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。
分散安定性が特に優れる点から、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ジメタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジブチルリン酸、ベンジルクロライド、ベンジルブロミド、ビニルスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上が好ましく、中でも、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルブロミド、ビニルスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸一水和物よりなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
また、分散安定性に優れ、且つ、酸価を有するブロック共重合体(P1)との組み合わせにより現像残渣の抑制効果が向上する点から、α−クロロフェニル酢酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ヨードフェニル酢酸、4−クロロメチル安息香酸、4−ブロモメチル安息香酸、及び4−ヨードフェニル安息香酸よりなる群から選択される1種以上も好適に用いられる。
【0073】
塩型ブロック共重合体において、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の含有量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成しているものであることから、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位1モルに対して、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を0.01モル以上とすることが好ましく、0.1モル以上とすることがより好ましく、0.2モル以上とすることがさらに好ましく、0.3モル以上とすることが特に好ましい。上記下限値以上であると、塩形成による色材分散性向上の効果が得られやすい。同様に、1モル以下とすることが好ましく、0.8モル以下とすることがより好ましく、0.7モル以下とすることがさらに好ましく、0.6モル以下とすることが特に好ましい。上記上限値以下であると現像密着性や溶剤再溶解性に優れたものとすることができる。
なお、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。2種以上を組み合わせる場合は、その合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0074】
塩型ブロック共重合体の調製方法としては、前記ブロック共重合体を溶解乃至分散した溶剤中に、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物を添加し、攪拌、更に必要により加熱する方法などが挙げられる。
なお、ブロック共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成していること、及びその割合は、例えばNMR等、公知の手法により確認することができる。
【0075】
得られた塩型ブロック共重合体のアミン価は、塩形成前のブロック共重合体に比べて塩を形成した分だけ値が小さくなる。しかし、塩形成部位は、アミノ基に相当する末端の窒素部位と同様、又はむしろ強化された色材吸着部位となるため、塩形成によって色材分散性や色材分散安定性が向上する傾向がある。また、塩形成部位は、アミノ基と同様に、多すぎると溶剤再溶解性に悪影響を与える。そのため、本発明においては、塩形成前のブロック共重合体(P1)のアミン価を、色材分散安定性、及び溶剤再溶解性を良好にするための指標とすることができる。
得られた塩型ブロック共重合体のアミン価としては、0〜110mgKOH/gであることが好ましく、0〜100mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
上記上限値以下であれば、他の成分との相溶性に優れ、溶剤再溶解性が良好になる。
【0076】
なお、塩型ブロック共重合体(P2)のうち、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、JIS K 7237に記載の方法により測定される値とすることができる。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、アミン価を測定可能だからである。
一方で、塩型ブロック共重合体(P2)のうち、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、前述した塩形成前のブロック共重合体のアミン価から、下記のように算出することにより求められる。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と酸性基が塩を形成するため、このような塩型ブロック共重合体のアミン価を前記JIS K 7237に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
まず、前述の方法により、塩形成前のブロック共重合体(P1)のアミン価を求める。次に、13C−NMRを用いて、塩型ブロック共重合体の、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位に対する、前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の反応率(塩形成されている末端の窒素部位比率)を測定する。前記一般式(1)又は(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物が塩形成した一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位は、アミン価が0になったとして、(塩形成前ブロック共重合体(P1)のアミン価)×(13C−NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100)により算出される、塩形成により消費したアミン価を、塩形成前のブロック共重合体のアミン価から差し引くことにより求められる。
塩型ブロック共重合体(P2)のアミン価={JIS K 7237に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体(P1)のアミン価}−{JIS K 7237に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体(P1)のアミン価}×{13C−NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100}
【0077】
また、前記塩型ブロック共重合体(P2)においては、塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価が18mgKOH/g以下であり、且つ前記塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が55mgKOH/g以下であることが、溶剤再溶解性及び現像密着性の悪化を防止できる点から好ましい。
また、現像残渣の抑制効果が向上する点からは、前記塩型ブロック共重合体(P2)においては、塩形成前のブロック共重合体(P1)が、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むものであり、当該ブロック共重合体(P1)の酸価が1mgKOH/g以上であり、且つ、塩形成後の塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が当該ブロック共重合体(P1)の酸価より大きい値となることが好ましい。
現像残渣の抑制効果が向上し、且つ、溶剤再溶解性及び現像密着性が良好になる点から、中でも前記塩型ブロック共重合体(P2)において、前記ブロック共重合体(P1)の酸価が1〜18mgKOH/gであり、前記塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が1〜55mgKOH/gであることが好ましく、前記ブロック共重合体(P1)の酸価が1〜18mgKOH/gであり、前記塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が2〜55mgKOH/gであることがより好ましく、前記ブロック共重合体(P1)の酸価が2〜16mgKOH/gであり、前記塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が3〜50mgKOH/gであることがより更に好ましい。
【0078】
塩型ブロック共重合体(P2)において、塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価が0mgKOH/gの場合に、塩型ブロック共重合体(P2)が酸価を有するようになっても、現像残渣の抑制効果は殆ど向上しない。それに対して、塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価が1mgKOH/g以上の場合に、塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が当該ブロック共重合体(P1)の酸価より大きい値となる場合には、現像残渣の抑制効果が向上する。
ブロック共重合体(P1)の酸価は、親溶剤性部位であるBブロック中に存在するカルボキシ基等の酸性基含有モノマー由来の構成単位に起因するものであり、酸性基は親溶剤性部位に位置しており、色材以外の他の成分(アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマーなど)や現像液と非常に接近する位置のため、現像残渣や溶剤再溶解性への影響が大きいと考えられる。それに対して、塩型ブロック共重合体(P2)で増加した酸価は、色材の吸着部位に結合している酸性基に起因するものであることから、酸性基は前記他の成分から離れて位置するため、現像残渣や溶剤再溶解性への影響が小さいと考えられる。
また、塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価が1mgKOH/g以上の場合で、塩形成後の塩型ブロック共重合体(P2)の酸価が当該ブロック共重合体(P1)の酸価より大きい値となる場合には、親溶剤性部位と色材の吸着部位とに酸性基を有することになり、分散剤全体が広く酸価をもつことになる。親溶剤性部位が現像性を有している状況下では、溶解する分散剤に色材が吸着したまま流され易くなり、基材上に色材が取り残されることがなく、残渣の発生抑制効果が向上すると推定される。
【0079】
前述のように塩形成前のブロック共重合体(P1)の酸価は、ブロック共重合体の固形分1g中に含まれる酸性成分を中和するために要する水酸化カリウムの質量(mg)を表し、JIS K 0070に記載の方法により測定される値である。
また、塩型ブロック共重合体(P2)が、前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価も、JIS K 0070に記載の方法により測定される値である。前記一般式(2)の化合物は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位とハロゲン原子側炭化水素が塩を形成するため、当該測定方法によっても塩形成の状態に変化をきたさず、測定可能だからである。
一方で、塩型ブロック共重合体(P2)が、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の場合、塩形成に用いられている酸性基は除いて酸価を算出することとする。塩形成に用いられている酸性基は、分散剤の酸価を増加させる酸性基としての機能を果たさないからである。そのため、本願では前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価は、下記式により得られる値で算出する。前記一般式(1)又は(3)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価を、前記JIS K 0070に記載の方法により測定すると、塩形成の状態に変化をきたし、正確な値を測定することができないからである。
【0080】
塩型ブロック共重合体(P2)の酸価={塩形成に用いられた前記一般式(1)又は(3)で表される化合物の全酸価−塩形成により消費する酸価}+塩形成前ブロック共重合体(P1)の酸価
ここで、前記塩形成に用いられた前記一般式(1)又は(3)で表される化合物の全酸価は、前記JIS K 0070に記載の方法により測定することができる。一方、塩形成により消費する酸価については、NMRによって得られる塩形成比率より算出する。
塩形成により消費する酸価は、具体的には例えば、13C−NMRスペクトルを核磁気共鳴装置を用いて測定し、得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、末端の窒素部位総数に対する塩形成されている末端の窒素部位数の比率を算出する。(JIS K 7237に記載の方法により測定される塩形成前ブロック共重合体(P1)のアミン価)×(13C−NMRスペクトルより算出される塩形成されている末端の窒素部位比率(%)/100)により、消費したアミン価を算出し、この値が塩形成により消費した酸価と同値となる。
但し、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位1モルに対して、前記一般式(1)で表される化合物を1モル以下で塩形成する場合、酸性基を1つ有する前記一般式(3)で表される化合物を1モル以下で塩形成する場合、又は、酸性基を2つ有する前記一般式(3)で表される化合物を0.5モル以下で塩形成する場合に、酸性基の全量が一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位と塩形成していれば、塩形成後の塩型ブロック共重合体において、当該酸性基は酸価に影響を与えないことから、塩形成前のブロック共重合体と同じ酸価を有する。
一方、酸性基を2つ有する前記一般式(3)で表される化合物を上記よりも超えるモル数で添加する場合には、塩形成後にも分散剤中に塩形成していない酸性基が存在するため、前記式のように、塩形成していない酸性基の分の酸価を、塩形成前のブロック共重合体の酸価に加算して、分散剤の酸価を算出する。
【0081】
また、本発明において、分散剤のガラス転移温度は、30℃以上である。すなわち、分散剤が、ブロック共重合体(P1)であっても、塩型ブロック共重合体(P2)であっても、そのガラス転移温度は、30℃以上である。
分散剤のガラス転移温度が30℃未満である場合、特に現像液温度(通常23℃程度)と同等以下であると、現像密着性が低下する。これは、当該ガラス転移温度が現像液温度と同等以下であると、現像時に分散剤の運動が大きくなり、その結果、現像密着性が悪化するからと推定される。
分散剤のガラス転移温度は、現像密着性、及び凝集体の析出等の色材の変化を抑制する効果が高くなる点から中でも45℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。一方、精秤が容易など、使用時の操作性の観点から、200℃以下であることが好ましい。
本発明における分散剤のガラス転移温度は、JIS K7121に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することにより求める。
【0082】
但し、塩形成をしていないブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算し、指標とすることができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ブロック共重合体はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用することができる。
当該計算値によるガラス転移温度は、後述の実施例に示すように、上記DSCによる測定値とほぼ同様の値となり、塩形成をしていないブロック共重合体のガラス転移温度の指標とすることができる。
【0083】
本発明の色材分散液において、分散剤としては、前記ブロック共重合体及び塩型ブロック共重合体の少なくとも1種を用い、その含有量は、用いる色材の種類、更に後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の固形分濃度等に応じて適宜選定される。
分散剤の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3〜45質量部、より好ましくは5〜35質量部の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、3〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部の割合で配合することが好ましい。
尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0084】
<色材>
本発明において、色材は、カラーフィルタの着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機顔料、無機顔料、分散可能な染料を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0085】
C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、15、16、17、20、24、31、55、60、61、65、71、73、74、81、83、93、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、116、117、119、120、126、127、128、129、138、139、150、151、152、153、154、155、156、166、168、175;
C.I.ピグメントオレンジ1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73;
C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38;
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、53:1、57、57:1、57:2、58:2、58:4、60:1、63:1、63:2、64:1、81:1、83、88、90:1、97、101、102、104、105、106、108、112、113、114、122、123、144、146、149、150、151、166、168、170、171、172、174、175、176、177、178、179、180、185、187、188、190、193、194、202、206、207、208、209、215、216、220、224、226、242、243、245、254、255、264、265;
C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60;
C.I.ピグメントグリーン7、36、58;
C.I.ピグメントブラウン23、25;
C.I.ピグメントブラック1、7。
【0086】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0087】
例えば、カラーフィルタの基板上に、本発明の色材分散液を後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物として遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0088】
上記分散可能な染料としては、染料に各種置換基を付与したり、公知のレーキ化(造塩化)手法を用いて、溶剤に不溶化することにより分散可能となった染料や、溶解度の低い溶剤と組み合わせて用いることにより分散可能となった染料が挙げられる。このような分散可能な染料と、前記分散剤とを組み合わせて用いることにより当該染料の分散性や分散安定性を向上することができる。
分散可能な染料としては、従来公知の染料の中から適宜選択することができる。このような染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、シアニン染料、ナフトキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、フタロシアニン染料などを挙げることができる。
なお、目安として、10gの溶剤(又は混合溶剤)に対して染料の溶解量が10mg以下であれば、当該溶剤(又は混合溶剤)において、当該染料が分散可能であると判定することができる。
【0089】
本発明においては、色材が、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、及びキノフタロン系顔料よりなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
色材が、フタロシアニン系顔料を含む場合には、前記特定の分散剤と相互作用して、輝度が向上したり、また耐熱性が向上する点から好ましい。また、色材が、微分散後に高温加熱工程を経ることによって前記顔料凝集体が析出し易いジケトピロロピロール系顔料、及びキノフタロン系顔料よりなる群から選択される1種以上を含む場合には、前記特定の分散剤と相互作用して、微分散後に高温加熱工程を経ても、前記顔料凝集体の析出が抑制される点から好ましい。
通常の分散剤では加熱により脱離し、色材表面が露出されることでそこから色材が変化し易くなるが、本発明に用いられる前記特定の分散剤は、色材への吸着力が強いことから、加熱時に分散剤の脱離が少ない。そのため、フタロシアニン系顔料のように加熱により結晶性が変わり易かったり、色みが変化して輝度低下し易い顔料や、ジケトピロロピロール系顔料、及びキノフタロン系顔料のように顔料凝集体が析出しやすい顔料であっても、加熱時に分散剤の吸着が維持されることで、各々上記のような変化を抑制することができる。
【0090】
本発明に用いられる色材の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる色材の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、15〜60nmであることがより好ましい。色材の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明の色材分散液を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
なお、本発明における色材の平均一次粒径は、透過電子顕微鏡もしくは走査電子顕微鏡により拡大写真を撮影し、公知の方法で「体積分布メジアン径(D50)」を算出することにより求めることができる。具体的には(株)日立ハイテクノロジーズ社製、電界放射型走査電子顕微鏡(S−4800)に、専用の明視野STEM試料台とオプション検出器を取り付けることで、走査透過電子顕微鏡(以下、「STEM」と略記する)として使用できるようにし、20万倍のSTEM写真を撮り、下記のソフトウェアに取り込み、写真上で色材を任意に100個選び、それぞれの直径(差し渡し長さ)を測定し、体積基準の分布から体積で50%累積粒子径として求める。
STEMに供する測定試料は、色材とトルエンを混合し、コロジオン膜貼付メッシュに滴下して調製する。また、STEM写真から体積基準の粒径分布や体積分布メジアン径(D50)を求めるときには、(株)マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「Mac−View Ver.4」を用いる。
【0091】
また、色材分散液中の色材の平均分散粒径は、用いる色材の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、15〜60nmの範囲内であることがより好ましい。
色材分散液中の色材の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、色材分散液に用いられている溶剤で、色材分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0092】
本発明に用いられる、色材は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販の色材を微細化処理して用いても良い。
【0093】
本発明の色材分散液において、色材の含有量は、特に限定されない。色材の含有量は、分散性及び分散安定性の点から、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、5〜80質量部、より好ましくは8〜70質量部の割合で配合することが好ましい。
特に色材濃度が高い塗膜乃至着色層を形成する場合には、色材分散液中の全固形分100質量部に対して、30〜80質量部、より好ましくは40〜75質量部の割合で配合することが好ましい。
【0094】
[溶剤]
本発明に用いられる溶剤としては、色材分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されない。溶剤は単独もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
溶剤の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、酪酸イソブチル、酪酸n−ブチル、乳酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶剤;プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート等のジアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中ではグリコールエーテルアセテート系溶剤、カルビトールアセテート系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、エステル系溶剤が他の成分の溶解性の点で好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、及び、3−メトキシブチルアセテートよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0095】
本発明の色材分散液は、以上のような溶剤を、当該溶剤を含む色材分散液全量に対して、通常、55〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも65〜90質量%の範囲内であることが好ましく、70〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、色材濃度が低下し、目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0096】
(その他の成分)
本発明の色材分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に必要に応じて、分散補助樹脂、その他の成分を配合してもよい。
分散補助樹脂としては、例えば後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0097】
本発明の色材分散液は、後述するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いられる。すなわち、色材分散液とは、後述のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製する前段階において予備調製される、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比は通常1.0以上である。色材分散液と、後述する各成分とを混合することにより、分散性に優れたれカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を調製することができる。
【0098】
[色材分散液の製造方法]
本発明において、色材分散液の製造方法は、前記色材が、前記ブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体の分散剤により、溶剤中に分散された色材分散液が得られる方法であれば特に限定されない。中でも、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から、以下の2つの製造方法のうちのいずれかとすることが好ましい。
【0099】
即ち、本発明に係る色材分散液の第一の製造方法は、前記ブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体の分散剤を準備する工程と、溶剤中、前記分散剤の存在下で、色材を分散する工程とを有するものである
【0100】
また、塩型ブロック共重合体である分散剤を用いる場合の本発明に係る色材分散液の第二の製造方法は、溶剤と、前記ブロック共重合体と、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物と、色材とを混合して、前記一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と、前記化合物とを塩形成しながら、色材を分散する工程とを有するものである。
【0101】
塩型ブロック共重合体を用いる場合において、上記第一の製造方法によれば、塩型ブロック共重合体を調製した後に、当該塩型ブロック共重合体を分散剤として用いて色材を分散するため、塩形成前のブロック共重合体と、前記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物の反応終点や反応率を正確に確認することができる点から好ましい。
また、上記第二の製造方法によれば、塩型ブロック共重合体の分散剤を調製しながら、色材を分散するため、塩型ブロック共重合体が自己凝集することがなく、色材分散液を効率よく調製することができ、また、分散性を向上することができる。
【0102】
上記第一の製造方法及び上記第二の製造方法において色材は、従来公知の分散機を用いて分散することができる。
分散機の具体例としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜3.0mmが好ましく、より好ましくは0.05〜2.0mmである。
【0103】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2.0mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.5〜2μmのフィルターで濾過することが好ましい。
【0104】
[カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物]
本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを含有することを特徴とする。
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、前記本発明に係る色材分散液を用いることにより、色材分散安定性に優れ、現像残渣の発生が抑制されながら、現像密着性、溶剤再溶解性に優れ、また、コントラストに優れた着色層を形成可能である。
【0105】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材と、分散剤と、溶剤と、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤とを少なくとも含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。以下、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に含まれる各成分について説明するが、分散剤、色材、及び溶剤については、上記本発明の色材分散液において説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
<アルカリ可溶性樹脂>
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基としてカルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体、及びエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0107】
カルボキシ基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとこれ以外のエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られる。
【0108】
カルボキシ基を有するアクリル系共重合体の具体例としては、例えば、特開2013−029832号公報に記載のものを挙げることができ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基を有しないモノマーと、(メタ)アクリル酸及びその無水物から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示できる。また、上記のコポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、着色層の感度や膜強度がより安定なものとなる点で、特に好適である。
【0109】
カルボキシ基含有共重合体におけるカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。この場合、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合が5質量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になる。また、共重合割合が50質量%を超えると、アルカリ現像液による現像時のパターンの欠けやパターン表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0110】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜50,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜20,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、カルボキシ基含有共重合体の上記重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により測定することができる。
【0111】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0112】
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値よりも少ないと、充分なアルカリ現像性が得られない場合があり、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値よりも多いと、現像時に膜荒れやパターンの欠けが発生する場合がある。尚、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能モノマー等も含まれる。
【0113】
<多官能モノマー>
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、後述する光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013−029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0114】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して多官能モノマーは好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%の範囲内である。多官能モノマーの含有量が上記下限値より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が現像時に溶出する場合があり、また、多官能モノマーの含有量が上記上限値より多いとアルカリ現像性が低下するおそれがある。
【0115】
<光開始剤>
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種光開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体例としては、例えば、特開2013−029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
光開始剤としては、一種のみ用いてもよいが、二種以上の化合物を併用してもよい。光開始剤としては、中でも、パターンの欠け発生の抑制効果、及び水染み発生抑制効果が高い点から、オキシムエステルを含むことが好ましい。当該オキシムエステルとしては、分解物によるカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステルとしては、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−、2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(o−アセチルオキシム)、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、特表2010−527339、特表2010−527338、特開2013−041153等に記載のオキシムエステル系光重合開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、イルガキュアOXE−01、イルガキュアOXE−02(以上BASF社製)、ADEKA OPT−N−1919(旭電化製)などを用いても良い。
【0116】
また、オキシムエステルに、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることが、感度向上の点から、好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
【0117】
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して光開始剤は好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の範囲内である。この含有量が上記下限値より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が現像時に溶出する場合があり、一方上記上限値より多いと、得られる着色層の黄変性が強くなって輝度が低下する場合がある。
【0118】
<任意添加成分>
カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤の他、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
【0119】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが、耐熱性の点から好ましい。酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択すればよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0120】
酸化防止剤を用いる場合、その配合量は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に限定されない。酸化防止剤の配合量としては、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の固形分全量に対して、酸化防止剤が0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜4.0質量%であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を高感度のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物とすることができる。
【0121】
また、界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013−029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0122】
<カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物における各成分の配合割合>
色材の合計の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、3〜65質量%、より好ましくは4〜60質量%の割合で配合することが好ましい。上記下限値以上であれば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を所定の膜厚(通常は1.0〜5.0μm)に塗布した際の着色層が充分な色濃度を有する。また、上記上限値以下であれば、保存安定性に優れると共に、充分な硬度や、基板との密着性を有する着色層を得ることができる。特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、色材の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、15〜65質量%、より好ましくは25〜60質量%の割合で配合することが好ましい。
また、分散剤の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して1〜40質量%用いることができる。更に、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して2〜30質量%の割合で配合するのが好ましく、特に3〜25質量%の割合で配合するのが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、着色層の強度が優れたものとなる。
特に色材濃度が高い着色層を形成する場合には、分散剤の含有量は、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分全量に対して、2〜25質量%、より好ましくは3〜20質量%の割合で配合することが好ましい。なお、分散剤の質量は、塩型ブロック共重合体の場合、塩形成前の前記ブロック共重合体と、上記一般式(1)〜(3)よりなる群から選択される1種以上の化合物との合計の質量である。
また、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含むカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55〜95質量%の範囲内であることが好ましく、中でも、65〜88質量%の範囲内であることがより好ましい。上記溶剤の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0123】
<カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、前記本発明の色材分散液に、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤と、必要に応じてその他の成分を添加し、公知の混合手段を用いて混合することにより得ることができる。
【0124】
[カラーフィルタ]
本発明に係るカラーフィルタは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有する。
【0125】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。
図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0126】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層である。
着色層は、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0127】
当該着色層は、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0128】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0129】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0130】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜2μm程度で設定される。
【0131】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や配向突起、柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0132】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。
図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この
図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0133】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0134】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタ及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封止することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタ及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0135】
[有機発光表示装置]
本発明に係る有機発光表示装置は、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。
図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0136】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この
図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0137】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
塩形成前のブロック共重合体のアミン価、及び前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体のアミン価は、JIS K 7237に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前及び塩形成後のブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121に記載の方法に準ずる方法により、示差走査熱量測定(DSC)(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR DSC 7020)を用いて測定した。
なお、塩形成前のブロック共重合体の酸価、及び前記一般式(2)で表される化合物により塩形成されている塩型ブロック共重合体の酸価は、JIS K 0070に記載の方法に準ずる方法により求めた。
塩形成前のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、前述の本発明の測定方法に従って、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0138】
また、塩形成前のブロック共重合体のガラス転移温度(Tg)について、下記式で計算することにより求めた。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ブロック共重合体はi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの重量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley-Interscience、1989))の値を採用した。具体的に実施例及び比較例に用いられた各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、以下の通りである。
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA):55℃
メタクリル酸2−エチルヘキシル(EHMA):−10℃
メタクリル酸n−ブチル(BMA):20℃
メタクリル酸ベンジル(BzMA):54℃
メタクリル酸メチル(MMA):105℃
メタクリル酸(MAA):185℃
メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMMA):18℃
ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA):96℃
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA):134℃
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(HPhPA)(商品名:M−600A、共栄社化学株式会社):17℃
メトキシポリエチレングリコール(45)メタクリレート(M−450G)(商品名:NKエステルM−450G、新中村化学株式会社)
下記合成例のブロック共重合体A−2、A−3、比較例のブロック共重合体A−16に対して、ガラス転移温度を上記方法により計算値で求めたところ、ブロック共重合体A−2については、67℃(DSC測定値 69℃)、ブロック共重合体A−3については、65℃(DSC測定値 66℃)、ブロック共重合体A−16については、23℃(DSC測定値 23℃)と求められ、DSC測定値とほぼ同様となることが示された。
【0139】
(合成例1:ブロック共重合体A−1の製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン(THF)250質量部及び開始剤のジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール5.81質量部を、添加用ロートを介して加え、充分に窒素置換を行った。触媒のテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゾエートの1モル/Lアセトニトリル溶液0.5質量部を、シリンジを用いて注入し、Bブロック用モノマーのHEMA19.7質量部、EHMA7.5質量部、BMA12.9質量部、BzMA10.7質量部、MMA30.9質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。反応フラスコを氷浴で冷却することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、Aブロック用モノマーであるDMAPMA18.3質量部を20分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール1質量部を加えて反応を停止させた。得られたブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックと親溶剤性を有するBブロックとを含むブロック共重合体A−1(アミン価60mgKOH/g、Tg 64℃)を得た。重量平均分子量Mwは7600であった。
【0140】
(合成例2〜5:ブロック共重合体A−2〜A−5の合成)
合成例1において、表1に示す含有量に変更した以外は、合成例1と同様にして、ブロック共重合体A−2〜A−5を合成した。得られたブロック共重合体のアミン価、Tg、酸価を表1に示す。
【0141】
(合成例6:ブロック共重合体A−6の製造)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコにTHF250質量部、塩化リチウム0.6質量部を加え、充分に窒素置換を行った。反応フラスコを−60℃まで冷却した後、ブチルリチウム4.9質量部(15質量%ヘキサン溶液)、ジイソプロピルアミン1.1質量部、イソ酪酸メチル1.0質量部をシリンジを用いて注入した。Bブロック用モノマーのメタクリル酸1−エトキシエチル(EEMA)0.4質量部、HEMA19.7質量部、EHMA7.5質量部、BMA12.9質量部、BzMA10.7質量部、MMA30.7質量部を、添加用ロートを用いて60分かけて滴下した。30分後、Aブロック用モノマーであるAブロック用モノマーであるDMAPMA18.3質量部を20分かけて滴下した。30分間反応させた後、メタノール1.5質量部を加えて反応を停止させた。得られた前駆体ブロック共重合体THF溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、PGMEAで希釈し固形分30質量%溶液とした。水を32.5質量部加え、100℃に昇温し7時間反応させ、EEMA由来の構成単位を脱保護しメタクリル酸(MAA)由来の構成単位とした。得られたブロック共重合体PGMEA溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、一般式(I)で表される構成単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含み親溶剤性を有するBブロックとを含むブロック共重合体A−6(アミン価60mgKOH/g、Tg64℃、酸価1mgKOH/g)を得た。重量平均分子量Mwは7000であった。
【0142】
(合成例7:ブロック共重合体A−7の合成)
合成例6において、表1に示す含有量に変更した以外は、合成例6と同様にして、ブロック共重合体A−7を合成した。得られたブロック共重合体の酸価、Tg、アミン価を表1に示す。
合成例7においてはメタクリル酸1−エトキシエチル(EEMA)は5.0質量部使用した。ブロック共重合体のアミン価、Tg、酸価を表1に示す。
【0143】
(合成例8〜18:ブロック共重合体A−8〜A−18の合成)
合成例1において、表1に示す含有量に変更した以外は、合成例1と同様にして、ブロック共重合体A−8〜A−18を合成した。得られたブロック共重合体の酸価、Tg、アミン価を表1に示す。
【0144】
(合成例19:グラフト共重合体A−19の合成)
(1)マクロモノマーの調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)160.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。HEMA39.4質量部、EHMA15.0質量部、BMA25.8質量部、BzMA21.4質量部、MMA61.8質量部、2−メルカプトエタノール8.0質量部、PGMEA60質量部、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)2.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)17.48質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.25質量部、p−メトキシフェノール0.25質量部、及びPGMEA20質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマー溶液を得た。得られたマクロモノマー溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行いマクロモノマーAを得た。得られたマクロモノマーAの重量平均分子量Mwは4000であった。
(2)グラフト共重合体の調製
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。前記(1)で調製したマクロモノマーA 87.8質量部、DMAPMA18.3質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA10.0質量部 の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体A−19溶液を得た。マクロモノマーAは、DMAPMA18.3質量部に対して、ブロック共重合体A−1と同様のHEMA:EHMA:BMA:BzMA:MMAの質量比(19.7:7.5:12.9:10.7:30.9(質量部))となるように用いた。
得られたグラフト共重合体A−19溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行った。得られたグラフト共重合体A−19は、アミン価60mgKOH/g、Tg64℃、重量平均分子量Mw12000であった。
【0145】
(合成例20:グラフト共重合体A−20の合成)
(1)マクロモノマーの調製
合成例19において、マクロモノマーを調製する際のモノマー比率について、HEMA39.4質量部を36.8質量部、EHMA15.0質量部を14.0質量部、BMA25.8質量部を24.0質量部、BzMA21.4質量部を20.0質量部、MMA61.8質量部を38.4質量部となるように変更した以外は、マクロモノマーAと同様にして、マクロモノマーBを調製した。得られたマクロモノマーBの重量平均分子量Mwは4100であった。
(2)グラフト共重合体の調製
合成例19において、グラフト共重合体を調製する際のマクロモノマーとDMAPMAの比率を、マクロモノマーBを71.6質量部、DMAPMAを33.4質量部に変更した以外は、合成例19と同様にして、グラフト共重合体A−20を合成した。なお、マクロモノマーBは、DMAPMA33.4質量部に対して、ブロック共重合体A−3と同様のHEMA:EHMA:BMA:BzMA:MMAの質量比(18.4:7.0:12.0:10.0:19.2(質量部))となるように用いた。得られたグラフト共重合体のアミン価、Tg、重量平均分子量Mw、酸価を表1に示す。
【0146】
(合成例21:塩型ブロック共重合体A−21の合成)
まず、合成例1と同様にして、ブロック共重合体A−1(塩型ブロック共重合体A−21の塩形成前のブロック共重合体と、ブロック共重合体A−1は同一)を合成した。
100mL丸底フラスコ中でPGMEA40.6質量部に、ブロック共重合体A−1を10.0質量部溶解し、前記一般式(3)で表される化合物であるフェニルホスフィン酸(東京化成製)0.15質量部(前記一般式(3)で表される化合物がブロック共重合体A−1のDMAPMAユニット1モルに対し、0.10モル)加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体A−21溶液を得た。
フェニルホスフィン酸は1価の酸であり、当該酸性基は塩形成に使用されるため、塩形成後のブロック共重合体の酸価はブロック共重合体A−1と同じであるが、塩形成後のアミン価は具体的には、以下のように算出した。
NMR試料管に塩型ブロック共重合体A−21(再沈殿後の固形物)を9質量部、クロロホルム−D1NMR用を91質量部で混合した溶液を1g入れ、13C−NMRスペクトルを核磁気共鳴装置(日本電子製、FT NMR、JNM−AL400)を用い、室温、積算回数10000回の条件にて測定した。得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位(アミノ基)において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、アミノ基総数に対する塩形成されているアミノ基数の比率を算出し、理論的な塩形成比率と相違ない(全フェニルホスフィン酸がブロック共重合体A−1のDMAPMAの末端の窒素部位と塩形成している)ことを確認した。
塩形成前のアミン価60mgKOH/gから、DMAPMAユニットの0.10モル分のアミン価(6mgKOH/g)を差し引いて、塩形成後のアミン価を54mgKOH/gと算出した。なお、塩型ブロック共重合体のTgの測定結果は、65℃であった。
【0147】
(合成例22〜29:塩型ブロック共重合体A−22〜A−29の合成)
合成例21において、塩形成化合物を、表2に示す化合物及び量に変更した以外は、合成例21と同様にして、塩型ブロック共重合体A−22〜A−29溶液を得た(塩型ブロック共重合体A−22〜29の塩形成前のブロック共重合体と、ブロック共重合体A−1は同一)。
塩型ブロック共重合体A−22〜A−29において、塩形成前のブロック共重合体のアミン価、酸価、及び、塩形成後のアミン価、酸価及びTgを表2に示す。
なお、表2において、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物の量は、一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位(DMAPMA)1モルに対する、前記化合物のモル数で表されている。
【0148】
また、フェニルホスホン酸は2価の酸であることから、塩型ブロック共重合体A−26のアミン価及び酸価は具体的には、以下のように算出した。
まず、合成例1と同様にして、ブロック共重合体A−1(塩型ブロック共重合体A−26の塩形成前のブロック共重合体と、ブロック共重合体A−1は同一)を合成した。
100mL丸底フラスコ中でPGMEA45.4質量部に、ブロック共重合体A−1を10.0質量部溶解し、前記一般式(3)で表される化合物であるフェニルホスホン酸(東京化成製)1.35質量部(前記一般式(3)で表される化合物がブロック共重合体A−1のDMAPMAユニット1モルに対し、0.80モル)加え、反応温度30℃で20時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型ブロック共重合体A−26溶液を得た。
フェニルホスホン酸は2価の酸であり、当該酸性基は塩形成に使用される以上に存在するため、塩形成後のブロック共重合体の酸価はブロック共重合体A−1より増加する。塩形成後のアミン価は具体的には、以下のように算出した。
NMR試料管に塩型ブロック共重合体A−26(再沈殿後の固形物)を9質量部、クロロホルム−D1NMR用を91質量部で混合した溶液を1g入れ、13C−NMRスペクトルを核磁気共鳴装置(日本電子製、FT NMR、JNM−AL400)を用い、室温、積算回数10000回の条件にて測定した。得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位(アミノ基)において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、アミノ基総数に対する塩形成されているアミノ基数の比率を算出し、全てのアミノ基が塩形成していることを確認した。
塩形成していないDMAPMAのアミノ基は存在しないため、塩形成後のアミン価は0mgKOH/gと算出した。
ブロック共重合体A−1のDMAPMAのアミノ基の全てがフェニルホスホン酸と塩形成していることから、全フェニルホスホン酸のうち、62.5%のフェニルホスホン酸は1分子でDMAPMAのアミノ基2つと塩形成しており、残りの37.5%のフェニルホスホン酸は1分子でDMAPMAのアミノ基1つと塩形成し、2つの酸性基のうち1つの酸性基がフリーの状態(酸価として計算される状態)である。塩形成前のブロック共重合体の酸価は0mgKOH/gであり、フェニルホスホン酸のJIS K 0070に記載の方法により測定される酸価が96mgKOH/gであり、塩形成により消費したアミン価が60mgKOH/gであったため、塩形成後の酸価は、0+96−60=36mgKOH/gと算出した。なお、塩型ブロック共重合体のTgの測定結果は、76℃であった。
【0149】
(合成例30〜31:塩型ブロック共重合体A−30〜A−31の合成)
まず、合成例7と同様にして、ブロック共重合体A−7を合成した(塩型ブロック共重合体A−30〜31の塩形成前のブロック共重合体と、ブロック共重合体A−7は同一)。
合成例21において、ブロック共重合体A−1をブロック共重合体A−7に変更し、塩形成化合物を、表2に示す化合物及び量に変更した以外は、合成例21と同様にして、塩型ブロック共重合体A−30〜A−31溶液を得た。
なお、α−ブロモフェニル酢酸を用いた、塩型ブロック共重合体A−31のアミン価及び酸価は、ハロゲン原子で塩形成をするため、塩形成前のブロック共重合体のアミン価及び酸価と同様に測定して求めた。
塩型ブロック共重合体A−30〜A−31において、塩形成前のブロック共重合体のアミン価、酸価、及び、塩形成後のアミン価、酸価及びTgを表2に示す。
【0150】
(合成例32:塩型ランダム共重合体A−32の合成)
特許文献1(国際公開第2014/10687号)の製造例1に記載の(3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミド/メトキシポリエチレングリコール(45)メタクリレート共重合体を、特許文献1(国際公開第2014/10687号)の製造例1の記載を参照して合成し、塩型ランダム共重合体A−32溶液を得た。具体的には、以下のように調製した。
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた500mL丸底4口セパラブルフラスコに、PGMEAを45質量部、DMAPAAを7.0質量部、M−450Gを23.0質量部及び2−メルカプトエタノールを0.09質量部を、添加用ロートを介して加え、充分に窒素置換を行った。窒素雰囲気下で78℃に昇温した後、DMAPAAを16.3質量部、M−450Gを55.0質量部、2−メルカプトエタノールを0.21質量部、PGMEA105.0質量部、開始剤2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を2.0質量部を3時間かけて連続的に滴下した。滴下後、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25質量部をPGMEA2.5質量部に溶解した液を加え、78℃を保持して1時間反応を続け、その後、更に2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.25質量部をPGMEA2.5質量部に溶解した液を加え、78℃を保持して1時間反応を続け共重合体溶液(アミン価83mgKOH/g)を得た。重量平均分子量Mwは17900であった。得られた共重合体溶液150.0質量部を別の500mL丸底4口セパラブルフラスコに入れた後、窒素置換を行った。更にジメチル硫酸2.95質量部をPGMEA30.0質量部に溶解した溶液(DMAPAAの末端の窒素部位に1モルに対するジメチル硫酸のモル数は0.27)を滴下し、窒素雰囲気下で85℃で3時間反応させた。得られた塩型共重合体溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行い、塩型ランダム共重合体A−32(Tg −23℃)を得た。
【0151】
(合成例33〜36:塩型ブロック共重合体A−33〜A−36の合成)
まず、合成例17と同様にして、ブロック共重合体A−17を合成した。
合成例21におけるブロック共重合体A−1の代わりに、ブロック共重合体A−17(塩型ブロック共重合体A−33〜36の塩形成前のブロック共重合体と、ブロック共重合体A−17は同一)を用いた以外は、合成例21と同様にして塩型ブロック共重合体A−33〜A−36溶液を得た。
塩型ブロック共重合体A−33〜A−36において、塩形成前のブロック共重合体のアミン価、酸価、及び、塩形成後のアミン価、酸価及びTgを表2に示す。
【0152】
(合成例37〜40:塩型グラフト共重合体A−37〜A−40の合成)
まず、合成例19と同様にして、グラフト共重合体A−19を合成した。
合成例21におけるブロック共重合体A−1の代わりに、グラフト共重合体A−19(塩型グラフト共重合体A−37〜A−40の塩形成前のグラフト共重合体と、グラフト共重合体A−19は同一)を用いた以外は、合成例23と同様にして塩型グラフト共重合体A−37〜A−40溶液を得た。
塩型グラフト共重合体A−37〜A−40において、塩形成前のグラフト共重合体のアミン価、酸価、及び、塩形成後のグラフト共重合体のアミン価、酸価及びTgを表2に示す。
【0153】
(合成例41:塩型グラフト共重合体A−41の合成)
特許文献2(特開2013−250446号公報)の製造例11に記載の塩型グラフト共重合体を、特許文献2の合成例9と製造例11を参照して合成し、塩型グラフト共重合体A−41溶液を得た。具体的には、以下のように調製した。
(1)マクロモノマーの合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA160.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。MMA100.0質量部、BMA60.0質量部、BzMA40.0質量部、2−メルカプトエタノール8.0質量部、PGMEA60質量部、AIBN2.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)17.48質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.25質量部、p−メトキシフェノール0.25質量部、及びPGMEA20質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーを得た。得られたマクロモノマー溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行いマクロモノマーCを得た。得られたマクロモノマーCの重量平均分子量Mwは4000であった。
(2)グラフト重合体の合成
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA129.8質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。上記マクロモノマーC33.4質量部、DMAPAA(興人(株)製)16.7質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体溶液を得た。得られたグラフト共重合体溶液はヘキサン中で再沈殿させ、濾過、真空乾燥により精製を行った。得られたグラフト共重合体は、アミン価122mgKOH/g、重量平均分子量Mw11200であった。
(3)塩型グラフト共重合体A−41の合成
100mL丸底フラスコ中でPGMEA63.15質量部に、上記グラフト共重合体を10.0質量部溶解し、前記一般式(3)で表される化合物である2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名:ライトエステルP−2M、共栄社化学(株)製)5.78質量部(前記一般式(3)で表される化合物がグラフト共重合体のDMAPAAユニット1モルに対し、1.0モル)加え、反応温度40℃で20時間攪拌することにより、固形分20質量%の塩型グラフト共重合体A−41(Tg 80℃)溶液を得た。
ライトエステルP−2Mは1価の酸であり、当該酸性基は塩形成に使用されるため、塩形成後のグラフト共重合体の酸価は塩形成前のグラフト共重合体と同じであるが、塩形成後のアミン価は、以下のように算出した。
NMR試料管に塩型グラフト共重合体A−41(再沈殿後の固形物)を9質量部、クロロホルム−D1NMR用を91質量部で混合した溶液を1g入れ、13C−NMRスペクトルを核磁気共鳴装置(日本電子製、FT NMR、JNM−AL400)を用い、室温、積算回数10000回の条件にて測定した。得られたスペクトルデータのうち、末端の窒素部位(アミノ基)において、塩形成されていない窒素原子に隣接する炭素原子ピークと、塩形成されている窒素原子に隣接する炭素原子ピークの積分値の比率より、アミノ基総数に対する塩形成されているアミノ基数の比率を算出し、全てのアミノ基が塩形成していることを確認した。塩形成していないDMAPAAのアミノ基は存在しないため、塩形成後のアミン価は0mgKOH/gと算出した。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
(合成例42:アルカリ可溶性樹脂A溶液の合成)
重合槽に、PGMEAを300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸2−フェノキシエチル(PhEMA)90質量部、MMA54質量部、メタクリル酸(MAA)36質量部及びパーブチルO(日油株式会社製)6質量部、連鎖移動剤(n−ドデシルメルカプタン)2質量部を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。
次に、空気を吹き込みながら、エポキシ基含有化合物としてメタクリル酸グリシジル(GMA)20質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、アルカリ可溶性樹脂A溶液(重量平均分子量(Mw)8500、酸価75mgKOH/g、固形分40質量%)を得た。
なお、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量の測定は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により行った。また酸価の測定方法は、JIS K 0070に基づいて測定した。
【0157】
(実施例1)
(1)色材分散液G−1の製造
分散剤として合成例1のブロック共重合体A−1を1.95質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を13.0質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を16.25質量部、PGMEAを68.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G−1を得た。
【0158】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−1の製造
上記(1)で得られた色材分散液G−1を11.86質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.67質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.63質量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.095質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.063質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR−08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを6.61質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−1を得た。
【0159】
(実施例2〜24)
(1)色材分散液G−2〜G−24の製造
実施例1の(1)において、ブロック共重合体A−1の代わりに、それぞれ表3〜表4に示すように、合成例2〜3のブロック共重合体A−2〜A−3、合成例6〜15のブロック共重合体A−6〜A−15、合成例21〜31の塩型ブロック共重合体A−21〜A−31溶液を、固形分がブロック共重合体A−1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、実施例1の(1)と同様にして、色材分散液G−2〜G−24を得た。
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−2〜G−24の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G−1の代わりに、それぞれ上記色材分散液G−2〜G−24を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−2〜G−24を得た。
【0160】
(比較例1〜17)
(1)比較色材分散液CG−1〜CG−17の製造
実施例1の(1)において、ブロック共重合体A−1の代わりに、それぞれ表3〜表4に示すように、合成例4、5のブロック共重合体A−4及びA−5、合成例16〜18のブロック共重合体A−16〜A−18、合成例19〜20のグラフト共重合体A−19〜A−20、合成例32の塩型ランダム共重合体A−32、合成例33〜36の塩型ブロック共重合体A−33〜A−36溶液、合成例37〜41の塩型グラフト共重合体A−37〜A−41溶液を、固形分がブロック共重合体A−1と同じ質量部となるようにそれぞれ用い、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、実施例1の(1)と同様にして、比較色材分散液CG−1〜CG−17を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−1〜CG−17の製造
実施例1の(2)において、色材分散液G−1の代わりに、それぞれ上記比較色材分散液CG−1〜CG−17を用いた以外は、実施例1の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−1〜CG−17を得た。
【0161】
[評価方法]
<色材分散液の分散安定性評価>
実施例及び比較例で得られた色材分散液についてそれぞれ、調製直後と、25℃で30日間保存後の粘度を測定し、保存前後の粘度から粘度変化率を算出し、粘度安定性を評価した。粘度測定には振動式粘度計(機種名:FVM80A−STC、(株)セコニック製))を用いて、25.0±0.5℃における粘度を測定した。結果を表3〜4に示す。
(分散安定性評価基準)
A:保存前後の粘度の変化率が15%未満
B:保存前後の粘度の変化率が15%以上40%未満
C:保存前後の粘度の変化率が40%以上80%未満
D:保存前後の粘度の変化率が80%以上
ただし、色材分散液の溶剤を含めた合計質量に対して、色材を13質量%としたときの値である。
評価結果がBでも色材分散液は実用上使用できるが、評価結果がAであれば色材分散液は、分散安定性に優れている。
【0162】
<光学性能評価、コントラスト評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板のコントラストと色度(x、y)、輝度(Y)を壺坂電気製コントラスト測定装置CT−1Bとオリンパス製顕微分光測定装置OSP−SP200を用いて測定した。
【0163】
(コントラスト評価基準)
A:Greenは7300超過、Redは4000超過、Blueは6800超過
B:Greenは6600超過7300以下、Redは3300超過4000以下、Blueは6100超過6800以下
C:Greenは5700超過6600以下、Redは2600超過3300以下、Blueは5400超過6100以下
D:Greenは5700以下、Redは2600以下、Blueは5400以下
ただし、それぞれC光源でGreenはy=0.500、Redはx=0.650、Blueはy=0.135としたときの値である。
評価結果がBでもカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は実用上使用できるが、評価結果がAであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はさらに高コントラスト化に適している。
【0164】
<現像密着性評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ1.6μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に2〜80μmのマスク開口幅をもつフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像した。現像後の基板を光学顕微鏡により観察し、マスク開口線幅に対する着色層の有無を観察した。結果を表3〜4に併せて示す。
(現像密着性評価基準)
A:マスク開口線幅20μm未満の部分で着色層が観察された
B:マスク開口線幅20μm以上、50μm未満の部分で着色層が観察された
C:マスク開口線幅50μm以上、80μm未満の部分で着色層が観察された
D:マスク開口線幅80μm以下の部分で着色層が観察されなかった
評価結果がBでもカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は実用上使用できるが、評価結果がAであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はより高精細化に適している。
【0165】
<現像残渣評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、厚さ2.5μmの着色層を形成した。上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像した。上記着色層の形成後のガラス基板の未露光部(50mm×50mm)を、目視により観察した後、エタノールを含ませたレンズクリーナー(東レ社製、商品名トレシーMKクリーンクロス)で十分に拭き取り、そのレンズクリーナーの着色度合いを目視で観察した。結果を表3〜4に併せて示す。
(現像残渣評価基準)
A:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーが全く着色しなかった
B:目視により現像残渣が確認されず、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
C:目視により現像残渣がわずかに確認され、レンズクリーナーの着色がわずかに確認された
D:目視により現像残渣が確認され、レンズクリーナーの着色が確認された
評価結果がCでもカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は実用上使用できるが、評価結果がBであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はより高精細化に適しており、評価結果がAであればカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物はさらに高精細化に適している。
【0166】
<溶剤再溶解性評価>
幅0.5cm長さ10cmのガラス基板の先端を、実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に浸漬させ、ガラス基板の長さ1cm部分に塗布した。引き上げたガラス基板を、ガラス面が水平になるように恒温恒湿機に入れ、温度23℃、湿度80%RHで30分間の条件で乾燥させた。次に、乾燥させた塗膜が付着したガラス基板をPGMEA中に15秒間浸漬させた。このとき乾燥塗膜の再溶解状態を目視で判別し、評価した。結果を表3〜4に併せて示す。
(溶剤再溶解性評価基準)
A:乾燥塗膜が完全に溶解した
B:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、溶液が着色した
C:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、溶液が着色しなかった
D:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じず、溶液が着色しなかった
現像残渣評価基準がA、Bであれば、溶剤再溶解性良好と評価され、実用上問題なく使用できる。
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
[結果のまとめ]
表1〜表4の結果から、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含むブロック共重合体(P1)、及び、当該ブロック共重合体の当該一般式(I)で表される構成単位が有する末端の窒素部位の少なくとも一部と下記一般式(1)〜(3)で表される化合物よりなる群から選択される1種以上の化合物とが塩を形成した塩型ブロック共重合体(P2)の少なくとも1種であって、前記ブロック共重合体(P1)のアミン価が35〜110mgKOH/gで、当該分散剤のガラス転移温度が30℃以上である分散剤を用いた実施例1〜24の色材分散液は、分散剤量を少なくした場合であっても、色材分散安定性に優れていることが明らかとなった。本願の前記一般式(I)で表される構成単位を含む分散剤は、末端の窒素部位の塩基性が高く、色材への吸着性が強いためと考えられる。
また当該実施例1〜24の色材分散液を用いて調製された実施例1〜24のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材分散性に優れるため着色層のコントラストに優れ、更に、現像残渣の発生が抑制されながら、現像密着性、及び溶剤再溶解性に優れていた。
実施例11と実施例1〜10、12及び13との比較により、中でも水酸基含有モノマー由来の構成単位を含む共重合体の場合には、現像密着性が向上することが明らかにされた。
中でも親溶剤性を付与するBブロックに酸性官能基を有する構成単位を含むブロック共重合体を用いた実施例4〜5のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の抑制効果が向上することが明らかにされた。
また、中でも、前記塩型ブロック共重合体を用いた実施例14〜24のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、特に色材分散性に優れ、得られる着色層のコントラストが特に優れていた。
特に、親溶剤性を付与するBブロックに酸性官能基を有する構成単位を含むブロック共重合体を用い、更に、塩型ブロック共重合体とした際に酸価が上昇した実施例23〜24のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、現像残渣の抑制効果が実施例5と比べても更に現像残渣の抑制効果が向上することが明らかにされた。
【0170】
一方、分散剤のガラス転移温度が30℃以上であるが、アミン価が本願の特定値よりも低い比較例1は、色材分散安定性が悪く、また、着色層のコントラストが劣っており、更に、現像残渣が実用レベル範囲外であった。また、分散剤のガラス転移温度が30℃以上であるが、アミン価が本願の特定値よりも高い比較例2は、溶剤再溶解性が実用レベル範囲外となってしまった。
また、分散剤のガラス転移温度が30℃未満である比較例3は、現像密着性が劣ることが明らかにされた。特許文献1の製造例1に相当する共重合体を用いた比較例8もガラス転移温度が30℃未満であり、現像密着性が悪かった。特許文献1の製造例1に相当する共重合体は、ランダム共重合体であるため、色材分散安定性にも劣り、着色層のコントラストに劣っていた。
分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含む代わりに、メタクリル酸ジメチルアミノエチル由来の構成単位を含むブロック共重合体又は塩型ブロック共重合体を用いた比較例4、5、9〜12は、いずれも色材分散安定性に劣り、着色層のコントラストに劣っていた。
また、分散剤として、前記一般式(I)で表される構成単位を含むがグラフト共重合体又は塩型グラフト共重合体を用いた比較例6、7、13〜17も、いずれも本願発明に比べて色材分散安定性に劣っていた。比較例17は、現像密着性にも劣っており、また、アミン価が本願の特定値よりも高いため、溶剤再溶解性が実用レベル範囲外であった。
【0171】
次に分散剤含有量が着色層の形状や物性に与える影響について調べた実験を示す。
表5には、前記分散安定性と現像残渣の評価、及び下記に示す着色パターンの欠けの評価と、水染みの評価について、前記実施例1のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物と、比較例4、比較例6、及び比較例7のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物に対して行った結果を示した。実施例1と比較例4、比較例6、及び比較例7は、各々、分散剤含有量をD、色材の含有量をPとした時のD/P(質量比)が0.15の例である。実施例1は色材分散安定性評価がAと高いのに対し、比較例4、比較例6、及び比較例7は、各々、色材分散安定性評価がD、Cと劣っている。実施例1と比較例4、比較例6、及び比較例7は、D/P比が同じでその他の組成も同じであるから、着色パターンの欠けの評価と、水染みの評価では、同等である。一方、比較例4、比較例6、及び比較例7の分散剤を実施例1と同レベルに色材分散安定性を高くするには、下記比較例18、比較例19、及び比較例20に示すように前記D/P比を上げないと達成できないことが明らかにされた。しかし前記D/P比を上げると分散安定性は高くなるものの、着色パターンの欠け、水染み、及び現像残渣がいずれも悪化することが明らかにされた。
【0172】
(比較例18)
(1)比較色材分散液CG−18の製造
比較例4の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.35となるように、ブロック共重合体A−17の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例4の(1)と同様にして、比較色材分散液CG−18を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−18の製造
比較例4の(2)において、色材分散液CG−4の代わりに、上記比較色材分散液G−18に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.44質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.41質量部、PGMEAを7.05質量部とした以外は、比較例4の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−18を得た。
【0173】
(比較例19)
(1)比較色材分散液CG−19の製造
比較例6の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.25となるように、グラフト共重合体A−19の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例6の(1)と同様にして、比較色材分散液CG−19を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−19の製造
比較例6の(2)において、色材分散液CG−6の代わりに、上記比較色材分散液G−19に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.56質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.52質量部、PGMEAを6.84質量部とした以外は、比較例6の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−19を得た。
【0174】
(比較例20)
(1)比較色材分散液CG−20の製造
比較例7の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.25となるように、グラフト共重合体A−20の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例7の(1)と同様にして、比較色材分散液CG−20を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−20の製造
比較例7の(2)において、色材分散液CG−7の代わりに、上記比較色材分散液G−20に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.56質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.52質量部、PGMEAを6.84質量部とした以外は、比較例7の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−20を得た。
【0175】
(実施例25)
実施例1の(1)と同様にして、色材分散液G−1を得た。
実施例1の(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−1の製造において、光開始剤について、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)の内0.016質量部を、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、(株)BASFジャパン製)に変更した以外、実施例1と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−25を得た。
【0176】
(実施例26)
実施例1の(1)と同様にして、色材分散液G−1を得た。
実施例1の(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−1の製造において、光開始剤について、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)の内0.016質量部を、オキシムエステル系光開始剤である(株)ADEKA製アデカオプトマーN−1919に変更した以外、実施例1と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−26を得た。
【0177】
(比較例21)
比較例18の(1)と同様にして、色材分散液CG−21を得た。
比較例18の(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−18の製造において、光開始剤について、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)の内0.016質量部を、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、(株)BASFジャパン製)に変更した以外、比較例18と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−21を得た。
【0178】
(比較例22)
比較例19の(1)と同様にして、色材分散液CG−22を得た。
比較例19の(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−19の製造において、光開始剤について、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)の内0.016質量部を、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(商品名イルガキュアOXE02、(株)BASFジャパン製)に変更した以外、比較例19と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−22を得た。
【0179】
<着色パターン欠け評価>
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ1.6μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、この着色層にストライプ形状の90μmのマスク開口幅をもつフォトマスクを介して、超高圧水銀灯を用いて30mJ/cm
2の紫外線で露光することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05wt%カリウム(KOH)を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、下記に示すような線幅でパターンを形成した。
光学顕微鏡を用いて、ガラス基板上に形成された露光現像後の着色パターンの端部を観察し、着色パターンの欠けを評価した。
(評価基準)
A:着色パターンの欠けが観察されなかった
B:着色パターンの欠けが僅かに観察された
C:着色パターンの欠けが多く観察された
D:着色パターンの欠けが著しく多く観察された
着色パターンの欠け評価基準がA又はBであれば、着色パターンの欠けが十分に抑制されていると評価され、実用上問題なく使用できる。
【0180】
<水染み評価>
各実施例及び各比較例で得られた感光性着色樹脂組成物を、ガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ1.6μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥し、フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を全面照射することにより、ガラス基板上に着色層を形成した。次いで、0.05wt%カリウム(KOH)を現像液としてスピン現像し、現像液に60秒間接液させた後に純水で洗浄することで現像処理し、洗浄後の基板を10秒間回転させ水を遠心除去した直後に、下記のように純水の接触角を測定して水染みを評価した。なお、純水の接触角が65度以上であれば、外観検査でムラ異常として問題になるような水染みは発生しないと評価される。
純水の接触角の測定は、前記水を遠心除去した直後の着色層表面に、純水1.0μLの液滴を滴下し、着滴10秒後の静的接触角をθ/2法に従って計測した。測定装置は、協和界面科学社製 接触角計DM 500を用いて、測定した。
(評価基準)
A:接触角80度以上
B:接触角65度以上80度未満
C:接触角50度以上65度未満
D:接触角50度未満
水染み評価基準がA又はBであれば、水染みが十分に抑制されていると評価され、実用上問題なく使用できる。
【0181】
【表5】
【0182】
[結果のまとめ]
比較例4、比較例6、及び比較例7の分散剤を実施例1と同レベルに色材分散安定性を高くするには、下記比較例18、比較例19、及び比較例20に示すように前記D/P比を上げないと達成できないことが明らかにされた。このように、従来の分散剤は、色材分散安定性が良好になる程度まで分散剤含有量を高くすると、色材分散安定性は本願発明と同等に優れたものになるが、感光性着色樹脂組成物に含まれるバインダー成分含有量を相対的に低くせざるを得ず、着色パターンの欠けが発生したり、水染みが発生するようになるという問題が生じることが明らかにされた。
また、実施例1で用いられた光開始剤の代わりに、オキシムエステル系光開始剤を用いた実施例25及び実施例26は、着色パターンの欠けや水染みの発生を抑制する効果が高いことが明らかにされた。同様にオキシムエステル系光開始剤を用いた比較例21及び比較例22は、オキシムエステル系光開始剤を用いなかった比較例18、比較例19、及び比較例20に比べると着色パターンの欠けや水染みの発生が低減されたものの、本願発明の効果に比べて劣っていることが明らかにされた。
【0183】
(実施例27)
(1)色材分散液G−27の製造
分散剤として合成例22の塩型ブロック共重合体A−22(フェニルホスフィン酸0.5モル当量)を1.95質量部、色材としてC.I.ピグメントグリーン58(PG58)を13.0質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を16.25質量部、PGMEAを68.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液G−27を得た。
【0184】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−27の製造
上記(1)で得られた色材分散液G−27を11.40質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.67質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.63質量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.095質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.063質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR−08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを6.61質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物G−27を得た。
【0185】
(比較例23)
(1)色材分散液CG−23の製造
実施例27において、分散剤として合成例22の塩型ブロック共重合体A−22(DMAPMA由来構成単位、フェニルホスフィン酸0.5モル当量)の代わりに、合成例33の塩型ブロック共重合体A−33(DMMA由来構成単位、フェニルホスフィン酸0.5モル当量)を用いた以外は、実施例27と同様にして、色材分散液CG−23を得た。
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−23の製造
実施例27において、色材分散液G−27の代わりに、上記(1)で得られた色材分散液CG−23を用いた以外は実施例27と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−23を得た。
【0186】
(比較例24)
(1)色材分散液CG−24の製造
比較例23の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.35となるように、塩型ブロック共重合体A−33の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例23の(1)と同様にして、比較色材分散液CG−24を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−24の製造
比較例23の(2)において、色材分散液CG−23の代わりに、上記比較色材分散液CG−24に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.44質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.41質量部、PGMEAを7.05質量部とした以外は、比較例23の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CG−24を得た。
【0187】
(実施例28)
(1)色材分散液B−1の製造
分散剤として合成例27の塩型ブロック共重合体A−27(ベンジルブロミド 0.2モル当量)を1.95質量部、色材としてC.I.ピグメントブルー15:6(PB15:6)を13.0質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を16.25質量部、PGMEAを68.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液B−1を得た。
【0188】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物B−1の製造
上記(1)で得られた色材分散液B−1を8.59質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を1.12質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を1.04質量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.158質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.105質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR−08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを8.91質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物B−1を得た。
【0189】
(比較例25)
(1)色材分散液CB−1の製造
実施例28において、分散剤として合成例27の塩型ブロック共重合体A−27(DMAPMA由来構成単位、ベンジルブロミド 0.2モル当量)の代わりに、合成例35の塩型ブロック共重合体A−35(DMMA由来構成単位、ベンジルブロミド 0.2モル当量)を用いた以外は、実施例28と同様にして、色材分散液CB−1を得た。
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CB−1の製造
実施例28において、色材分散液B−1の代わりに、上記(1)で得られた色材分散液CB−1を用いた以外は実施例28と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CB−1を得た。
【0190】
(比較例26)
(1)色材分散液CB−2の製造
比較例25の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.35となるように、塩型ブロック共重合体A−35の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例25の(1)と同様にして、比較色材分散液CB−2を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CB−2の製造
比較例25の(2)において、色材分散液CB−1の代わりに、上記比較色材分散液CB−2に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.95質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.89質量部、PGMEAを9.23質量部とした以外は、比較例25の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CB−2を得た。
【0191】
実施例27〜28、及び比較例23〜26についても、実施例1と同様にして、色材分散安定性、コントラスト、光学性能の評価を行い、更に、下記のように耐熱性の評価も行った。評価結果を表6に示す。
<耐熱性(色差ΔEab)の評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後にそれぞれC光源でGreenはy=0.500、Blueはy=0.135となる着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。得られた着色基板の色度(x、y)、輝度(Y)、L、a、b(L
0、a
0、b
0)をオリンパス製顕微分光測定装置OSP−SP200を用いて測定した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板の色度(x、y)、輝度(Y)、L、a、b(L
1、a
1、b
1)を再び測定した。
耐熱性評価として、ポストベーク前後の色差(ΔEab)を下記式より算出した。
ΔEab={(L
1−L
0)
2+(a
1−a
0)
2+(b
1−b
0)
2}
1/2
【0192】
【表6】
【0193】
(実施例29)
(1)色材分散液R−1の製造
分散剤として合成例27の塩型ブロック共重合体A−27(ベンジルブロミド 0.2モル当量)を1.95質量部、色材としてC.I.ピグメントレッド254(PR254)を13.0質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を16.25質量部、PGMEAを68.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液R−1を得た。
【0194】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物R−1の製造
上記(1)で得られた色材分散液R−1を11.86質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.67質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.63質量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.095質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.063質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR−08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを6.61質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物R−1を得た。
【0195】
(比較例27)
(1)色材分散液CR−1の製造
実施例29において、分散剤として合成例27の塩型ブロック共重合体A−27(DMAPMA由来構成単位、ベンジルブロミド 0.2モル当量)の代わりに、合成例35の塩型ブロック共重合体A−35(DMMA由来構成単位、ベンジルブロミド 0.2モル当量)を用いた以外は、実施例29と同様にして、色材分散液CR−1を得た。
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CR−1の製造
実施例29において、色材分散液R−1の代わりに、上記(1)で得られた色材分散液R−2を用いた以外は実施例29と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CR−1を得た。
【0196】
(比較例28)
(1)色材分散液CR−2の製造
比較例27の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.35となるように、塩型ブロック共重合体A−35の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例27の(1)と同様にして、比較色材分散液CR−2を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CR−2の製造
比較例27の(2)において、色材分散液CR−1の代わりに、上記比較色材分散液CR−2に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.44質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.41質量部、PGMEAを7.05質量部とした以外は、比較例27の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CR−2を得た。
【0197】
(実施例30)
(1)色材分散液Y−1の製造
分散剤として合成例21の塩型ブロック共重合体A−21(フェニルホスフィン酸0.5モル当量)を1.95質量部、色材としてC.I.ピグメントイエロー138(PY138)を13.0質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を16.25質量部、PGMEAを68.8質量部、粒径2.0mmジルコニアビーズ100質量部をマヨネーズビンに入れ、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)にて1時間振とうし、次いで粒径2.0mmジルコニアビーズを取り出し、粒径0.1mmのジルコニアビーズ200質量部を加えて、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて4時間分散を行い、色材分散液Y−1を得た。
【0198】
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物Y−1の製造
上記(1)で得られた色材分散液Y−1を11.86質量部、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.67質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.63質量部、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(光開始剤:商品名イルガキュア907、(株)BASFジャパン製)を0.095質量部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光開始剤:商品名イルガキュア369、BASFジャパン製)を0.063質量部、フッ素系界面活性剤(商品名メガファックR−08MH、DIC(株)製)を0.07質量部、PGMEAを6.61質量部加え、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物Y−1を得た。
【0199】
(比較例29)
(1)色材分散液CY−1の製造
実施例30において、分散剤として合成例22の塩型ブロック共重合体A−22(DMAPMA由来構成単位、フェニルホスフィン酸0.5モル当量)の代わりに、合成例33の塩型ブロック共重合体A−33(DMMA由来構成単位、フェニルホスフィン酸0.5モル当量)を用いた以外は、実施例30と同様にして、色材分散液CY−1を得た。
(2)カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物Y−2の製造
実施例30において、色材分散液Y−1の代わりに、上記(1)で得られた色材分散液CY−1を用いた以外は実施例30と同様にして、カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CY−1を得た。
【0200】
(比較例30)
(1)色材分散液CY−2の製造
比較例29の(1)において、色材量は同じのまま、前記D/P比が0.35となるように、塩型ブロック共重合体A−33の含有量を増加し、合計が100質量部になるようPGMEA量を調整した以外は、比較例29の(1)と同様にして、比較色材分散液CY−2を得た。
(2)比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CY−2の製造
比較例29の(2)において、色材分散液CY−1の代わりに、上記比較色材分散液CY−2に変更し、合成例42で得られたアルカリ可溶性樹脂A溶液を0.44質量部、多官能モノマー(商品名アロニックスM−403、東亞合成(株)社製)を0.41質量部、PGMEAを7.05質量部とした以外は、比較例29の(2)と同様にして、比較カラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物CY−2を得た。
【0201】
実施例29〜30、及び比較例27〜30についても、実施例1と同様にして、色材分散安定性、コントラストの評価を行い、更に、下記のように高温加熱後の顔料凝集体の析出評価も行った。評価結果を表7に示す。
<高温加熱後の顔料凝集体の析出評価>
実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用感光性着色組成物を、それぞれ厚み0.7mmで100mm×100mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いてポストベーク後に厚さ1.6μmの着色層を形成する膜厚で塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で3分間乾燥することにより、着色層を形成した。この着色層に超高圧水銀灯を用いて60mJ/cm
2の紫外線を照射した。得られた着色基板の着色層を光学顕微鏡により観察した。
次に、当該着色基板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板の着色層を再び光学顕微鏡により観察し、ポストベークによる顔料凝集体の析出の有無を確認した。
【0202】
【表7】
【0203】
[結果のまとめ]
表7の結果から、分散剤として、本発明で特定された前記一般式(I)で表される構成単位を含む塩型ブロック共重合体を用いた実施例29〜30の色材分散液は、色材分散安定性に優れていることが明らかとなった。また当該実施例29〜30の色材分散液を用いて調製された実施例29〜30のカラーフィルタ用感光性着色樹脂組成物は、色材分散安定性に優れ、コントラストに優れるだけでなく、微分散後の加熱工程後に、顔料凝集体の析出が抑制される効果が高いことが明らかにされた。