(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650675
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気ガス後処理システムの管路内の未燃焼炭化水素の蓄積を防ぐシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
F01N3/24 R
F01N3/24 L
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-32888(P2015-32888)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2015-163788(P2015-163788A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2018年2月16日
(31)【優先権主張番号】MI2014A000291
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512007454
【氏名又は名称】エフピーティー インダストリアル エス ピー エー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ アイマール
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ チェルチエーロ
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−108320(JP,A)
【文献】
特表2007−505265(JP,A)
【文献】
特開平11−022449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質放出を減少させるための少なくとも1つの装置を含む内燃機関の排気ガス後処理システム(ATS)の管路内の未燃焼炭化水素の蓄積を防ぐ方法であって、
プレ触媒のない排気ガス後処理管路を構成する予備段階と、
少なくとも汚染物質放出を減少させるための前記装置に蓄積された未燃焼炭化水素の質量(I)を連続推定する手順(S)とを含み、
前記推定手順(S)が、前記未燃焼炭化水素の前記質量(I)が所定のしきい値(T1)を超えたときに前記内燃機関の正常寄与よりも前記排気ガス後処理システム(ATS)の排気管路の加熱を加速するシステム/方策を駆動し(S ON)、
さらに、
前記推定手順(S)は、
前記排気管路の前記加熱を加速する前記システム/方策の更に他の制御プロセス(S1,S2,S3,...)が存在するとき、前記更に他のプロセス(S1,S2,S3,...)より高い優先権を得ており、
前記未燃焼炭化水素の前記質量(I)が、前記所定のしきい値(T1)より大きい所定のしきい値(T4)を超えたときに、前記内燃機関を保護する保護手順を駆動する、
方法。
【請求項2】
前記推定手順が、
前記内燃機関によって生成された未燃焼炭化水素(HC)の第1の質量(P)を計算する段階と、
少なくとも前記汚染物質放出を減少させるための前記装置によって変換された未燃焼炭化水素(HC)の第2の質量(C)を計算する段階と含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記推定手順(S)の最初の実行において、蓄積された未燃焼炭化水素の前記質量(I)の値が、未燃焼炭化水素(HC)の前記第1の質量(P)と前記第2の質量(C)との差から提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蓄積された未燃焼炭化水素の前記質量(I)の前記値が、不揮発性メモリに記憶され、前記推定手順(S)の更なる実行のたびに、蓄積された未燃焼炭化水素の前記質量(I)の値が、前記記憶された値に前記第1の質量(P)を加算し、それから未燃焼炭化水素(HC)の前記第2の質量(C)を減算することによって与えられる(I=R+P−C)、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コンピュータ上で実行されたときに、請求項1〜4のいずれか一項による前記推定手順(S)を実行するように適応されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム。
【請求項6】
記録されたプログラムを含み、コンピュータ上で実行されたときに、請求項1〜5のいずれか一項による前記推定手順(S)を実行するように適応されたプログラムコード手段を含むコンピュータ可読手段。
【請求項7】
内燃機関の排気ガス後処理システム(ATS)であって、プレ触媒がなく、
汚染物質放出を減少させるための少なくとも1つの装置と、
汚染物質放出を減少させるための少なくとも前記装置に蓄積された未燃焼炭化水素の質量(I)を連続的に推定し、未燃焼炭化水素の前記質量(I)が所定のしきい値(T1)を超えたときに排気ガスの加熱を加速するシステム/方策を駆動する(S ON)ための推定手段とを含み、
前記推定手段は、
前記排気ガス後処理システム(ATS)の排気管路の前記加熱を加速する前記システム/方策の更に他の制御プロセス(S1,S2,S3,...)が存在するとき、前記更に他のプロセス(S1,S2,S3,...)より高い優先権を得ており、さらに、
前記未燃焼炭化水素の前記質量(I)が前記所定のしきい値(T1)より大きい所定のしきい値(T4)を超えたときに、前記内燃機関を保護する保護手順を駆動する、
排気ガス後処理システム(ATS)。
【請求項8】
内燃機関と、請求項7に記載の内燃機関の排気ガス後処理システム(ATS)を含む車両又は機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスの浄化システムの分野に関し、より正確には排気ガス後処理システムの管路内の未燃焼炭化水素の蓄積を防ぐシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの後処理システムは、一般に頭字語ATSで呼ばれ、一般に、未燃焼炭化水素(C
nH
m)、窒素酸化物(NO)及び一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO
2)、水(H
2O)及び窒素(N
2)に変換するために提供する少なくとも1つの触媒を含む。
【0003】
触媒は、少なくとも250℃に達すると完全に活性化され、即ち使用可能になることが知られている。しかし、200℃でも、少なくとも未燃焼炭化水素を変換できる。
【0004】
内燃機関の排気管路の加熱段階を加速するシステム/方策が知られている。
【0005】
一般に、そのようなシステム/方策は、例えばフラップによって、又は排気管路に配置された可変静翼タービンの流出断面を小さくすることによって、排気管路をチョーキングすることを利用する。排気管路の加熱段階を加速する他のシステム/方策は、燃料の後注入にある。更に他のシステム/方策は、適切な電気加熱器の駆動を含む。
【0006】
排気管路ATSの加熱段階を加速する前記システム/方策は、当業者に周知であり、したがって、更なる詳細の提供は必要とされない。
【0007】
したがって、前記システム/方策は、ATSの加熱において、内燃機関の通常の寄与よりも寄与し、加熱を支援する。
【0008】
これらのシステムの制御プロセスは、様々な制御技術に従い、内燃機関が点火した所定の期間後に駆動し、例えば、ATSの動的加熱が遅過ぎることを確認した後で駆動するか、そのようなシステムが触媒を完全に活性化できないことが決定されたときに他のプロセスによって非活性化されうる。
【0009】
加熱段階で、未燃焼炭化水素(単純にするためにHCと呼ぶ)は触媒中に蓄積しやすい。
【0010】
触媒が活性化温度に達したとき、HCが過度に蓄積すると、装置自体の許容温度を超える温度に達することにより、触媒を損傷させる可能性がある。
【0011】
先行技術は、触媒の損傷を防ぐために、主触媒に比較してきわめて小さい体積を有するいわゆるプレ触媒(即ち、付加触媒)を実装しており、プレ触媒は、内燃機関によって生成された未燃焼炭化水素を燃焼させる活性化温度にできるだけ早く達するように内燃機関の排気マニホールドのきわめて近くに収容され、その後で、未燃焼炭化水素は、ATSを規定する汚染物質放出を減少させるための主触媒又は装置に達する。
【0012】
プレ触媒の実装は、車両及び機械装置のメーカに追加コストを要求し、更に、車両と機械装置は、主触媒や微粒子フィルタなどの他の装置に支障をきたさないように設計されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記の全ての欠点を克服し、プレ触媒のない排気ガス後処理システムの管路内の未燃焼炭化水素の蓄積を防ぐシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の基礎となる着想は、プレ触媒の実装をなくし、排気ガス後処理システムの管路の少なくとも1つの箇所/構成要素中の未燃焼炭化水素の蓄積を推定し、また推定された未燃焼炭化水素の蓄積に基づいて排気管路を加熱するシステム/方策を駆動することである。
【0015】
これは、排気管路の加熱を加速するプロセスが、先行技術と比較して異なって制御されることを示唆する。
【0016】
詳細には、排気ガス後処理システム(ATS)の管路内の未燃焼炭化水素の蓄積を推定するプロセスは、排気ガス後処理管路の加熱を加速するプロセスの制御において、その他の駆動又は非駆動プロセスより優先される。したがって、ATS加熱を加速するプロセスは、先行技術よりも早期に駆動されるか、他のプロセスがその非駆動を制御できるときでも駆動状態のままであることが起こり得る。
【0017】
本発明の目的は、内燃機関の排気ガス後処理システムの管路を規定する汚染物質放出を減少させるための装置内の未燃焼炭化水素の蓄積を防ぐシステムである。
【0018】
汚染物質放出を減少させるための装置は、既知の装置、DOC、NSC、DPF、SCRのうちの少なくとも1つを指すことがある。
【0019】
特許請求の範囲は、この記述の一体部分である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の更に他の特徴及び利点は、本発明(及びその変形物)の例示的実施形態の以下の詳細な説明、及び非限定的な例として提供された添付図面から明らかになるであろう。
【0021】
【
図2】本発明の例示的な実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】本発明が適用される排気ガス後処理システムに機能的に接続された内燃機関を概略的に示す図である。図中の同じ参照数字及び文字は、同じ要素又は構成要素を示す。この記述の文脈において、用語「第1」や「第2」などは、いかなる相互関係も示さずまた限定するものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、後処理システム(ATS)の加熱を加速するプロセス(WATSP)の駆動の論理制御図を示す。
【0023】
略語WATSPは、表現「WarmUP ATS Process(ATS加熱プロセス)」、即ちATSの加熱を加速するプロセス/システムの頭字語であり、前述のように、ATS配管の内側又は周囲に配置された排気管路のチョーキング及び/又は燃料後注入及び/又は適切な加熱器の駆動を含む様々な方法で達成できる。
【0024】
特定/所定の制御方策にしたがってWATSPを制御し、駆動又は非駆動させるための他のプロセスS1、S2、S3が介在してもよい。
【0025】
本発明によれば、プロセスSは、排気管路ATS内の少なくとも1つの箇所に蓄積されたHCの量を推定し、そのような推定が第1の所定のしきい値を超えたときに、他の進行中のプロセスに関係なく、WATSPの活動化S−ONが制御される。
【0026】
そのようなプロセスSは、他の全てのプロセスS1,S2,S3,...よりも優先され、したがって、このプロセスは、他の矢印より太い矢印で図形的で示される。
【0027】
その後で、推定されたHCが、第2の所定のしきい値より小さいとき、WATSPは、他のプロセスS1,S2,S3の制御下に戻る。したがって、これらのプロセスのうちの1つでWATSPが駆動状態でなければならないと見なされた場合、又はプロセスが非駆動を強制しない場合は、WATSPは駆動状態のままである。
【0028】
したがって、HC推定プロセスには、WATSPを非駆動する能力(ATS加熱を加速するプロセス)がなく、駆動する能力しかない。
【0029】
したがって、WATSPの駆動又は非駆動を決定できる既知のプロセスの階層に関係なく、この推定プロセスSは、そのような階層と実質的に並列である。
【0030】
図2は、本発明による制御フローチャートの例を示す。
【0031】
段階1:内燃機関Eを点火する。
段階2:ATSに蓄積されたHCの残存値Rを取得する。
段階3:生成されたHCの質量Pと変換されたHCの質量Cを推定する。
段階4:排気管路(排気管路の少なくとも1箇所)内に蓄積されたHCの質量Iを計算する。I=R+P−C;
段階5:Iが第1のしきい値T1より大きいかどうかを確認する。
段階6:大きい場合は、WATSPを駆動する。
段階9:そうでない場合は、Iが第2のしきい値T
2より小さいかどうかを確認する。
段階10:小さい場合はWATSPを非駆動し、段階13に進む。そうでない場合は、段階13に進む。WATSPを駆動した後で(段階6)
段階7:Iが第
4のしきい値T
4より大きいかどうかを確認する。
段階8:大きい場合、内燃機関の保護手順を駆動する。そうでない場合、
段階11に進む。
段階11:Iが、T
4より低くかつT2より高い第
3のT
3より小さいかどうかを確認する。
段階12:
段階11でIがT3より小さい場合、内燃機関の保護手順を非駆動し、次に段階13に進む。
段階13:内燃機関が停止されたかどうかを確認する。
段階14:停止された場合、IをR(I=R)に割り当て、段階15で制御を終える。そうでない場合は、段階3から即ち、生成されたHCの質量Pと変換されたHCの質量Cの推定から続く。
【0032】
図2のフローチャートの例から明らかであるが、内燃機関によって大量生産されたHCを処理できないとき、排気管路内に蓄積されたHC質量が第
4のしきい値T
4を超える状態に達し、その場合、触媒自体及び/又は車両全体を破損させる可能性があるので、後で触媒CATの活性化温度に達することを防止する処置がとられる。
【0033】
例えば、そのような処置は、エンジンによって提供されるトルクとその結果生じる熱の生成を制限することにあり、この熱は、ATSを加熱させ発火させる可能性がある。
【0034】
HC質量Iがそのような第
4のしきい値T
4を超えた場合、本発明によれば、エンジン制御ユニット(ECU)内にエラーが永久に蓄積されることになり
、例えば、車両が修理工場に運ばれることを必要とする故障
状態であることを示す
ための表示灯
が点灯
する。
【0035】
内燃機関によって生成されたHCの推定に関しては、発見を助けるマップに依存し、即ち、実験台で、RPM、注入燃料の質量、吸込空気質量、及び好ましくは周囲温度にも基づいて得ることができる。これらのパラメータは全て、一般に、適切なセンサを使用して内燃機関の制御ユニットECUが利用でき、したがって、そのようなマップを制御ユニットECU内に実装することは、当業者の技術の範囲内である。
【0036】
排気管路によって変換されたHCの推定に関しては、構成要素(即ち、触媒DOC、NSC(NOx貯蔵触媒)、DPF、SCR)によって異なり、ATSを規定する単一構成要素の構成及びその温度に依存する。
【0037】
また、ATSの様々な箇所の温度は、適切なセンサによってECUが入手可能であり、したがって、変換されたHCの推定の実施は、当業者の技術の範囲内である。
【0038】
ATSを規定する各構成要素の変換プロセスをその温度の関数として推定するように数学的モデル又はベンチテストが適応されてもよい。
【0039】
ATSを規定する様々な構成要素が、HCの蓄積又は変換に関して様々な挙動を有することあるという事実を考慮して、この方法は、2つの異なる方法、即ち最も問題の大きい構成要素、即ちHCをより蓄積しやすい構成要素(これは、典型的には触媒(DOC又はSCR)及び/又は微粒子フィルタである)に蓄積されたHCを推定することによって、あるいはATSを規定する単一構成要素/装置内のHCの個別の蓄積を推定することによって実施されうる。
【0040】
したがって、このシステムは、少なくともATSを規定する汚染物質放出を減少させるための装置内のHCの蓄積を推定することによって実現されてもよい。
【0041】
この方法は、内燃機関の処理ユニットECUを変更/適応させることによって有利に実現されうる。
【0042】
図3は、前述の様々なエンジンパラメータの中でも少なくとも触媒温度と関連した信号を受け取る処理ユニットECUによって制御された内燃機関Eを概略的に示す。
【0043】
本発明の好ましい実施態様によれば、内燃機関は、ディーゼルサイクルであり、上記の触媒自体はDOCとして知られる。
【0044】
このプログラムが、コンピュータ上で実行されるとき、本発明は、方法の1つ又は複数の段階を実施するための符号化手段を含むコンピュータプログラムによって有利に実現されうる。
【0045】
したがって、保護の範囲は、前記コンピュータプログラム、及び更に記録メッセージを含むコンピュータ可読手段に拡張され、前記コンピュータ可読手段が、前記プログラムがコンピュータ上で実行されるときに方法の1つ又は複数の段階を実施するためのプログラム符号化手段を含むことを理解されたい。
【0046】
前述の非限定的な例の実施形態の変形物は、当業者のための全ての同等な実施形態を含む、本発明の保護の範囲から逸脱することなく可能である。
【0047】
以上の説明から、当業者は、更なる構成詳細を紹介することなく本発明の目的を実現することができる。様々な好ましい実施形態に示された要素と特徴は、本出願の保護の範囲から逸脱せずに組み合わされうる。先行技術の説明で述べた内容は、詳細な説明で特に除外されない限り、本発明の特徴との組み合わせで考慮されるべきであり、本発明の一体部分を構成する。