特許第6650679号(P6650679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650679
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】気化式加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/04 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   F24F6/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-69837(P2015-69837)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188748(P2016-188748A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2017年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】594017695
【氏名又は名称】ウエットマスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503354631
【氏名又は名称】新日本フエザーコア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】青木 敏和
(72)【発明者】
【氏名】青木 好行
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓
【審査官】 浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−037076(JP,A)
【文献】 特開2005−083590(JP,A)
【文献】 特開2009−236370(JP,A)
【文献】 特開2011−163705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流の流入方向に対して斜めに形成された稜線を有する波板と、この波板を少なくとも片面に固定した平板を備えた複数枚の加湿素材と、
前記複数枚の加湿素材を隣接する前記波板の稜線の方向が互い違いになるようにブロック状に積層し、そのブロックの4周の端面のうち、1つの端面を気流の流入部とし、他の1つの端面を気流の流出部とした加湿モジュールと、
前記波板と前記平板に形成された多数の小孔と、
を備え
前記加湿モジュールが、複数枚の加湿素材において、各加湿素材の波板と他の加湿素材の平板が接触するように積層した湿式加湿器。
【請求項2】
気流の流入方向に対して斜めに形成された稜線を有する波板と、この波板を少なくとも片面に固定した平板を備えた複数枚の加湿素材と、
前記複数枚の加湿素材を隣接する前記波板の稜線の方向が互い違いになるようにブロック状に積層し、そのブロックの4周の端面のうち、1つの端面を気流の流入部とし、他の1つの端面を気流の流出部とした加湿モジュールと、
前記波板と前記平板に形成された多数の小孔と、
を備え、
前記加湿モジュールが、複数枚の加湿素材の少なくとも一部において、一の加湿素材の平板を他の加湿素材の平板接触させ、当該一の加湿素材の波板と前記他の加湿素材とは異なる加湿素材の波板が接触するように積層した湿式加湿器。
【請求項3】
前記加湿素材が、熱溶着性を有する合成樹脂を含んだ不織布から構成されている請求項1または請求項2に記載の湿式加湿器。
【請求項4】
前記加湿素材が、その表面に保水処理が施された板状あるいはシート状の合成樹脂から構成されている請求項1または請求項2に記載の湿式加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿素材を積層して構成された加湿モジュールに改良を施した気化式加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
気化式加湿器は、保水性を有する不織布などの加湿素材を積層して加湿モジュールを構成し、この加湿モジュールに給水して加湿素材と空調空気を接触させることでその加湿を行う。従来の加湿モジュールとしては、例えば特許文献1の図8に示すように、加湿素材として斜めの波板を使用し、この波板を互い違いに積層してブロック状とすることで、加湿素材間の空間を確保していた。この構造の加湿モジュールは、気流の方向と波板によって形成された流路の方向とが交差していることから、モジュールの内部に気流を乱流状態で流通させることができ、加湿効率に優れている。
【0003】
しかし、不織布などの加湿素材は柔軟性を有することから、その積層時に個々の波板が伸びてしまうおそれがあり、特に、波板を互い違いに積層することから各波板の伸びる方向も異なり、正確なブロック状に積層することが難しかった。また、波板の伸びを防止するため、積層した波板の頂点部分を接着剤で固定することも行われていたが、点状に接触する2枚の波板に接着剤を的確に塗布する作業も面倒で有り、また波板を押し潰さずに波板同士を確実に固定することも難しかった。
【0004】
斜めの波板を互い違いに積層した加湿素材をブロック状に積層した場合、加湿素材の上下は加湿器の筐体などで覆われることから、図6に示すように、気流の入口側ではブロックの上部、気流の出口側ではブロックの下部において、波板の開口部が塞がれて気流が流れ難くなり、空気と加湿素材との接触効率が低下する現象もあった。
【0005】
特許文献1には、平板の上に接着した波板を複数枚ブロック状に積層することで、積層時における波板の伸びを防止する技術も記載されている。しかし、特許文献1の技術は、各波板を気流の方向と平行に配置したものであることからブロック内で気流が層流状態となり、斜めの波板を互い違いに積層した加湿素材のように気流が乱流状態となるものに比較すると、空気と加湿素材との接触効率が悪かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−071503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加湿モジュール内に空気を万遍なく通過させることが可能であり、モジュール内の加湿素材と流入した空気を効率良く接触させることで、加湿性能を向上させた湿式加湿器を提供することである。本発明の他の目的は、斜めの波板に平板を貼り付けて一体構造の加湿素材とすることで、波板の伸びがなくなり、加湿モジュール及びそれを有する加湿器の生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湿式加湿器は、次のような構成を有する。
(1)気流の流入方向に対して斜めに形成された稜線を有する波板と、この波板を少なくとも片面に固定した平板を備えた複数枚の加湿素材。
(2)前記複数枚の加湿素材を隣接する前記波板の稜線の方向が互い違いになるようにブロック状に積層し、そのブロックの4周の端面のうち、1つの端面を気流の流入部とし、他の1つの端面を気流の流出部とした加湿モジュール。
(3)前記波板と前記平板に形成された多数の小孔。
(4)前記加湿モジュールが、複数枚の加湿素材において、各加湿素材の波板と他の加湿素材の平板が接触するように積層する。
【0009】
本発明においては、波板と平板の少なくとも1つに多数の小孔が形成されていることから、気流が波板と平板との間の流路のみならず、波板や平板を通過して隣接する流路にも流れることができる。その結果、流入する気流に対して斜めに配置された波板を使用しても、加湿モジュールの上部や下部で気流の流れが損なわれることがなく、気流と加湿素材とを効率良く接触させることができる。
【0010】
本発明においては、波板が平板に固定されているため、複数枚の加湿素材をブロック状に重ね合わせて加湿モジュールを製造する場合に、波板が伸びることが無く、各加湿素材の寸法精度を保った状態で加湿モジュールの組立が可能である。よって、加湿モジュールの製造を簡単かつ正確に行うことができる。
【0011】
のように波板と平板とを積層すると、波板同士を重ねた場合のように波板の稜線が点接触で他の波板に接触することがなくなり、積層時に波板の稜線に加わる力が分散され、加湿モジュールの組立時に波板の損傷が防止される。
【0012】
本発明の湿式加湿器は、気流の流入方向に対して斜めに形成された稜線を有する波板と、この波板を少なくとも片面に固定した平板を備えた複数枚の加湿素材と、前記複数枚の加湿素材を隣接する前記波板の稜線の方向が互い違いになるようにブロック状に積層し、そのブロックの4周の端面のうち、1つの端面を気流の流入部とし、他の1つの端面を気流の流出部とした加湿モジュールと、前記波板と前記平板に形成された多数の小孔と、を備え、前記加湿モジュールが、複数枚の加湿素材の少なくとも一部において、一の加湿素材の平板他の加湿素材の平板接触させ、当該一の加湿素材の波板と前記他の加湿素材とは異なる加湿素材の波板が接触するように積層する。このようにすると、波板に比較して平板部分が肉厚になり、単位体積当たりの保水性能が向上する。
【0013】
前記加湿素材が、熱溶着性を有する合成樹脂を含んだ不織布から構成されていると良い。このようにすると、波板と平板の接着時において接着剤が不要になり、ヒートシーラーなどの装置で簡単に両者を接合することが可能になる。
【0014】
前記加湿素材が、その表面に保水処理が施された板状あるいはシート状の合成樹脂から構成されていると良い。このようにすると、不織布に比較して、より剛性の高い素材から加湿素材を形成することが可能になり、加湿モジュールの強度、組み立て時の取り扱いの容易性が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加湿素材を構成する波板及び平板の少なくとも1つに多数の小孔をあけることで気流をモジュール内に万遍なく通過させることが可能となり、湿った加湿素材と流入した空気をより多く接触させることで加湿性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の加湿モジュールを示す斜視図。
図2】第1実施形態の加湿モジュールにおける加湿素材の分解斜視図。
図3図2の加湿素材の拡大斜視図。
図4図2の加湿素材の拡大断面図と、波板の角度を示す正面図。
図5】第2実施形態の加湿素材の分解斜視図。
図6】従来の加湿モジュールにおける気流を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1は、本発明の第1実施形態を示す斜視図である。本実施形態の加湿モジュールは、板金製のサイドパネル1a,1bと、サイドパネル1a,1bの上部に設けられた前後の上フレーム2a,2bと、サイドパネル1a,1bの下部に設けられた前後の下フレーム3a,3bを有する箱型の部材である。これらサイドパネル1a,1bと上下のフレーム2a,2b,3a,3bの内側には、複数枚の加湿素材4がブロック状に積層された状態で収納されている。
【0018】
各加湿素材4は、図2(a)の分解斜視図に示すように、平板4aの表面に波板4bを接合して構成される。平板4aと波板4bは、熱溶着性を有するポリエステル繊維を素材とした不織布で構成され、平板4a上に波板4bを重ね合わせた状態で、平板4a表面と波板4bの稜線とを熱溶着することで、両者は接合されている。
【0019】
図3の拡大斜視図に示すように、平板4aと波板4bのそれぞれに多数の小孔5が設けられている。小孔5のサイズはφ1〜2mm程度、間隔は1インチ角に8孔程度が加湿性能には望ましいが、加湿モジュールの形状寸法、あるいは波板4bのピッチに合わせてそのサイズや間隔を適宜変更することができる。図4(a)に示すように、本実施形態において、波板4bのピッチは8.4mm程度、高さは5.4mmであるが、この寸法に限定されるものではない。また、波板4bの気流方向に対する角度は図4(b)に示すように、30°であるが、これも気流の速度、加湿素材の積層枚数などに応じて、気流と加湿素材の接触効率が最適になるように適宜変更可能である。
【0020】
図2(a)の分解斜視図に示すように、本実施形態において、複数の加湿素材4は、隣接する加湿素材4の平板4aと波板4bが交互に重なり合うように積層されている。そのため、各加湿素材4の波板4bの稜線の方向が互い違いになるように、図2(b)に示すように、波板4bの傾斜方向が異なる2つの加湿素材4を用意し、それらを交互に重ね合わせて加湿モジュールを構成する。
【0021】
この場合、加湿素材4がサイドパネル1a,1bに向き合うように、前記複数枚の加湿素材4がブロック状に積層され、そのブロックの4周の端面のうち、1つの端面を気流の流入部6aとし、他の1つの端面を気流の流出部6bとする。加湿素材4とサイドパネル1a,1bとの間には、発泡スチロールなどの緩衝材7が挿入され、重ね合わされた加湿素材4のがたつきを防止している。ブロック状に積層された加湿素材4の上部と下部は、上フレーム2a,2bまたは下フレーム3a,3bの間に露出しており、加湿モジュールの上方から上フレーム2a,2b間に露出した加湿素材4に加湿用の水が供給される。
【0022】
[1−2.作用・効果]
本実施形態の加湿モジュールによれば、複数枚の加湿素材4はその波板4bが異なる方向で交互に積層されているため、気流の方向と平行の波板を積層した従来技術のモジュールより加湿性能が向上する。すなわち、波板4bが気流に対して平行の場合、気流は直線的に通過して層流状態となるのに対し、波板4bが斜めの加湿素材4を交互に積層することで、気流はモジュール内を四方に通過して、乱流状態となり加湿素材4の全面が空気に接するため加湿性能は向上する。その結果、同じ加湿性能を得る場合、波板形状が斜めの加湿素材を交互に重ね合せたモジュールは、波板形状が平行の加湿素材を重ね合せたモジュールよりも奥行き寸法を短くできる。
【0023】
また、斜めの波板4bに平板4aを貼り付けた一体構造の加湿素材4とすることで、加湿素材4の波板4bの伸びもなくなり、モジュールの組立て難さも解消され、気化式加湿器の生産性が向上する。平板4aと波板4bを接合することで、加湿素材4としての強度も増し、耐久性が向上する。斜めの波板4bに平板4aを接着する方法として熱溶着を用いることで、塗布工程や接着剤が不要となる利点もある。
【0024】
特に、本実施形態では、斜めの波板4bによる乱流効果に加え、図3に示すように加湿素材に多数の小孔5が開いていることで、隣り合う加湿素材4間にも気流が通過する。その結果、モジュールの内部に万遍なく気流が通過するため、加湿素材4の面積を有効に使うことができ、乱流効果もより促進され、従来のモジュールよりも加湿性能が向上する。加湿性能は飽和効率で示されるが、従来技術より奥行き寸法を短くしても同等の飽和効率を得られ、同じ奥行き寸法とした場合には従来よりも高い飽和効率を得ることができる。
【0025】
本実施形態の加湿モジュールと、同じ形状で小孔の無い加湿素材を使用した加湿モジュールとで、加湿性能の比較実験を行ったところ、小孔のある加湿素材は小孔の無い加湿素材に比べて、下記の表1に示す通り、飽和効率は約10%程度向上することが確認できた。
【表1】
【0026】
[2.第2実施形態]
第2実施形態を図5に従って説明する。本実施形態は、図5(a)に示すように、平板4aと波板4bを接合して成る複数枚の加湿素材4を、平板4a同士または波板4b同士を向き合うように重ね合わせて加湿モジュールを構成したものである。
【0027】
本実施形態においては、波板4b同士を向き合わせて重ね合わせることにより、図5(b)に示すような同一形状の加湿素材4を使用することで、波板4bの方向が互い違いになった加湿モジュールを作製することができる。そのため、前記した第1実施形態の作用効果に加えて、第1実施形態のように2種類の加湿素材4を用意する必要がなくなり、1種類の加湿素材4でモジュールを製作することが可能となるため、生産性も向上する。
[3.他の実施形態]
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような他の実施形態も包含する。
(1)加湿素材は、1枚の平板4aの両面にそれぞれ波板4bを接合しても良いし、逆に1枚の波板4bの両面にそれぞれ平板4aを接合しても良い。また、平板と波板は別材料でもよく、例えば、波板を不織布とし、平板を薄い樹脂板やアルミなどの金属シートとしても良い。
【0028】
(2)図示の実施形態では、平板や波板の両方に小穴を形成したが、いずれか一方にのみ小孔を形成しても良い。小孔の形状は円形に限らず、楕円、四角、三角、星形など適宜選択することができる。平板4aと波板4bとで、小孔の大きさや形状を異なるものとしても良い。小孔の周囲に、加湿素材の一部を立ち上げておいても良い。例えば、ピン状の部材で小孔を開口する場合に、バリの部分が小孔の周囲に残されていても良く、その部分が保水性能をより向上させることもある。
【0029】
(3)平板と波板の接合は、熱溶着に限定されるものではなく、他の接着剤や粘着剤、両面接着テープなどを使用することも可能である。ステープルなどの接合部材を使用することもできる。
【0030】
(4)図示の実施形態は、板金製のサイドパネルや上下のフレームを使用したが、樹脂製のパネルやフレームを使用したり、気流の流入部6aや流出部6bに保護用の網などを設けても良い。重ね合わせた加湿素材4同士、すなわちすべての波板4bと平板4aを接合することで、フレームやサイドパネルを使用することなく、加湿モジュールを構成することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1a,1b…サイドパネル
2a,2b…上フレーム
3a,3b…下フレーム
4…加湿素材
4a…平板
4b…波板
5…小孔
6a…流入部
6b…流出部
7…緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5
図6