特許第6650698号(P6650698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650698
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/08 20060101AFI20200210BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20200210BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   F16K31/08
   F16K31/06 305E
   H01F7/16 R
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-162615(P2015-162615)
(22)【出願日】2015年8月20日
(65)【公開番号】特開2017-40309(P2017-40309A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146995
【氏名又は名称】テクノエクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】中道 昭男
(72)【発明者】
【氏名】篠原 務
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−020004(JP,A)
【文献】 特開昭58−088278(JP,A)
【文献】 特開2010−138960(JP,A)
【文献】 特開2015−083873(JP,A)
【文献】 特開平11−287346(JP,A)
【文献】 実開平05−034374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11
H01F 7/06− 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部の周囲に導線が巻回されて励磁コイルが形成されたボビンと、前記筒部の一端部側に挿入されて前記ボビンに対するスライドが規制される固定コアと、前記ボビンに対するスライドが可能に前記筒部の他端部側に挿入された可動コアと、前記筒部における前記他端部側の部位を挿通可能な挿通孔が設けられて当該挿通孔に当該筒部を挿通させた状態で前記ボビンと一体化されて磁路を形成するヨークとを備えると共に、前記可動コアにおける前記固定コア側とは逆側の端部に弁体を取り付け可能に構成された電磁弁用アクチュエータであって、
前記可動コアが前記固定コアから離反した位置にスライドさせられた状態で前記励磁コイルに対する電流の供給が停止されたとき、および当該可動コアが当該固定コアに接する位置にスライドさせられた状態で当該励磁コイルに対する電流の供給が停止されたときに前記筒部内における当該可動コアのスライドを規制するための永久磁石が前記ヨークの外面における前記挿通孔の周囲に取り外し可能に取り付けられている電磁弁用アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動コアは、前記ヨークに前記永久磁石が取り付けられている状態において前記励磁コイルによる励磁によって前記固定コアから離反した位置に前記筒部内をスライドさせられたときに前記固定コア側とは逆側の端部が当該永久磁石において前記ヨークに接している面の裏面よりも当該ヨーク側とは逆側の位置に位置するように当該固定コア側の端部および当該固定コア側とは逆側の端部の間の長さが規定されている請求項1記載の電磁弁用アクチュエータ。
【請求項3】
前記永久磁石は、前記ヨークに取り付けられたときに当該ヨークに接する面およびその裏面のいずれか一方の面がS極で他方の面がN極となるように着磁されたリングマグネットで構成されている請求項1または2記載の電磁弁用アクチュエータ。
【請求項4】
前記固定コアに対して前記可動コアを離反させる向きに付勢する付勢部材を備えている請求項1からのいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータと、前記可動コアに取り付けられた弁体とを備えて構成されている電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石によって可動コアをラッチ可能な(可動コアのスライドを規制可能な)電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えて構成された電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁用アクチュエータを備えて構成された電磁弁として、ラッチ式電磁弁(以下、単に「電磁弁」ともいう)が下記の特許文献1に開示されている。この電磁弁では、励磁コイルが巻回されたボビンの中心孔にガイドパイプが挿通させられると共に、固定コア(コア部材)がガイドパイプの一端部側に挿入され、弁体が取り付けられた可動コア(プランジャ)がガイドパイプの他端部側に挿入されている。また、この電磁弁では、固定コアと接するようにしてラッチ用の永久磁石がガイドパイプの一端部側に配設されると共に、ボビンおよび永久磁石を一体化させるようにしてヨーク部材およびシート部材が配設されている。なお、以下の説明では、ヨーク部材およびシート部材からなる磁路形成用の要素を「ヨーク」ともいう。また、ボビン、励磁コイル、ガイドパイプ、固定コア、可動コア、永久磁石およびヨークを備えて構成された直動機構を「アクチュエータ」ともいう。
【0003】
一方、下記の特許文献2には、電磁弁用の直動機構として使用可能な自己保持型直動アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」ともいう)が開示されている。このアクチュエータでは、コイルボビン(以下、単に「ボビン」ともいう)に巻回された励磁コイル(電磁コイル)と、ボビンの中心孔における一端部側に挿入された固定コア(固定鉄心)と、ボビンの中心孔における他端部側に挿入された可動コア(可動鉄心:プランジャ)と、ボビンの他端部側に配設されたラッチ用の永久磁石と、ボビンおよび永久磁石を囲うように配設された容器形状のヨークとを備え、可動コアの下端部に弁体が取り付けられている。
【0004】
上記の両アクチュエータのように、ラッチ用の永久磁石を備えたアクチュエータでは、固定コアに対して可動コアを移動させるときにのみ励磁コイルに電流を供給し、固定コアに対して可動コアを離反させた状態、または、固定コアに可動コアが接した状態を維持するときには、永久磁石による磁力によって可動コアの移動を規制することが可能となっている。これにより、この種のアクチュエータを備えた電磁弁では、励磁コイルに対して電流を供給し続けることなく、閉弁状態および開弁状態を維持させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−40389号公報(第4−5頁、第1−3図)
【特許文献2】特開2003−21256号公報(第4−6頁、第1−6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の両特許文献に開示されているアクチュエータには、以下の問題点が存在する。すなわち、特許文献1に開示の電磁弁におけるアクチュエータでは、励磁コイルが巻回されたボビンと、ボビンにおける固定コア側の端部に配設されたラッチ用の永久磁石とを一体化させるようにしてヨークが配設されている。また、特許文献2に開示のアクチュエータでは、励磁コイルが巻回されたボビンと、ボビンにおける可動コア側の端部に配設されたラッチ用の永久磁石とを一体化させるようにして(ボビンおよび永久磁石を収容するようにして)ヨークが配設されている。
【0007】
この場合、ラッチ式のアクチュエータを備えた電磁弁では、前述したように、開弁状態および閉弁状態において永久磁石による磁力によって可動コアの移動が規制される(ラッチされる)。このため、例えば、電力消失時に必ず閉弁状態に切り替える必要がある環境下においては、ラッチ用の永久磁石を備えていないアクチュエータ(以下、「ラッチ式のアクチュエータ(電磁弁)」と区別するために「非ラッチ式のアクチュエータ(電磁弁)」ともいう)を備えて構成した電磁弁を使用する必要が生じる。
【0008】
しかしながら、上記両特許文献に開示のアクチュエータを備えた電磁弁では、ボビンおよびラッチ用の永久磁石を一体化させるようにしてヨークが配設されている。このため、非ラッチ式の電磁弁を製造するために、上記の両アクチュエータの構成を改変してラッチ用の永久磁石が存在しない非ラッチ式のアクチュエータを製造するには、永久磁石の排除によって生じるスペースを考慮してボビンやヨークの大きさおよび形状を変更する必要が生じる。したがって、上記の両特許文献に開示されているアクチュエータでは、非ラッチ式のアクチュエータを製造する際に設計作業を新たに行い、かつラッチ式のアクチュエータにおけるボビンやヨークとは形状や大きさが相違するボビンおよびヨークを別個に用意する必要があることから、その製造コストの低減が困難になっているという問題点がある。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ラッチ式の電磁弁および非ラッチ式の電磁弁の製造コストを低減し得る電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータは、筒部の周囲に導線が巻回されて励磁コイルが形成されたボビンと、前記筒部の一端部側に挿入されて前記ボビンに対するスライドが規制される固定コアと、前記ボビンに対するスライドが可能に前記筒部の他端部側に挿入された可動コアと、前記筒部における前記他端部側の部位を挿通可能な挿通孔が設けられて当該挿通孔に当該筒部を挿通させた状態で前記ボビンと一体化されて磁路を形成するヨークとを備えると共に、前記可動コアにおける前記固定コア側とは逆側の端部に弁体を取り付け可能に構成された電磁弁用アクチュエータであって、前記可動コアが前記固定コアから離反した位置にスライドさせられた状態で前記励磁コイルに対する電流の供給が停止されたとき、および当該可動コアが当該固定コアに接する位置にスライドさせられた状態で当該励磁コイルに対する電流の供給が停止されたときに前記筒部内における当該可動コアのスライドを規制するための永久磁石が前記ヨークの外面における前記挿通孔の周囲に取り外し可能に取り付けられている。
【0011】
また、請求項2記載の電磁弁用アクチュエータは、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータにおいて、前記可動コアは、前記ヨークに前記永久磁石が取り付けられている状態において前記励磁コイルによる励磁によって前記固定コアから離反した位置に前記筒部内をスライドさせられたときに前記固定コア側とは逆側の端部が当該永久磁石において前記ヨークに接している面の裏面よりも当該ヨーク側とは逆側の位置に位置するように当該固定コア側の端部および当該固定コア側とは逆側の端部の間の長さが規定されている。
【0012】
さらに、請求項3記載の電磁弁用アクチュエータは、請求項1または2記載の電磁弁用アクチュエータにおいて、前記永久磁石は、前記ヨークに取り付けられたときに当該ヨークに接する面およびその裏面のいずれか一方の面がS極で他方の面がN極となるように着磁されたリングマグネットで構成されている
【0013】
さらに、請求項記載の電磁弁用アクチュエータは、請求項1からのいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータにおいて、前記固定コアに対して前記可動コアを離反させる向きに付勢する付勢部材を備えている。
【0014】
また、請求項記載の電磁弁は、請求項1からのいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータと、前記可動コアに取り付けられた弁体とを備えて構成されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の電磁弁用アクチュエータでは、ヨークの外面における挿通孔の周囲に筒部内の可動コアをラッチするための(励磁コイルに対する電流の供給が停止された状態で可動コアのスライドを規制するための)永久磁石が取り外し可能に取り付けられている。また、請求項記載の電磁弁では、上記の電磁弁用アクチュエータと、可動コアに取り付けられた弁体とを備えている。したがって、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータ、および請求項記載の電磁弁によれば、ラッチ用の永久磁石がヨークの内側に配設されている電磁弁用アクチュエータとは異なり、永久磁石を除く各構成要素を共用し、ヨークに永久磁石を取り付けた状態とすることでラッチ式の電磁弁用アクチュエータとして使用することができ、ヨークに永久磁石を取り付けない状態とすることで非ラッチ式の電磁弁用アクチュエータとして使用することができる。このため、この電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁では、非ラッチ式のアクチュエータを製造する際に設計作業を新たに行う必要がなく、しかもラッチ式のアクチュエータにおけるボビンやヨークと形状や大きさが共通するボビンおよびヨークを用いることができる結果、ラッチ式の電磁弁および非ラッチ式の電磁弁の製造コストを十分に低減することができる。
【0016】
また、請求項2記載の電磁弁用アクチュエータ、およびその電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、固定コアから離反した位置にスライドさせられたときに固定コア側とは逆側の端部が永久磁石においてヨークに接している面の裏面よりもヨーク側とは逆側の位置に位置するように可動コアにおける固定コア側の端部および固定コア側とは逆側の端部の間の長さを規定したことにより、固定コアから離間した位置にスライドさせられた可動コアを永久磁石の磁力によって確実にラッチすることができる。
【0017】
さらに、請求項3記載の電磁弁用アクチュエータ、およびその電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、ヨークに接する面およびその裏面のいずれか一方の面がS極で他方の面がN極となるように着磁されたリングマグネットで永久磁石を構成したことにより、永久磁石の磁力が可動コアの各部に対してほぼ均等に及ぶため、可動コアを好適にラッチすることができる。
【0018】
また、請求項記載の電磁弁用アクチュエータ、およびその電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、固定コアに対して可動コアを離反させる向きに付勢する付勢部材を備えたことにより、可動コアに取り付けられた弁体を弁口に対して確実に押し付けた状態とすることができるため、電磁弁を確実に閉弁状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】電磁弁1の外観斜視図である。
図2】アクチュエータ3の外観斜視図である。
図3】電磁弁1の断面図である。
図4】閉弁状態における電磁弁1の部分断面図である。
図5】開弁状態における電磁弁1の部分断面図である。
図6】マグネット28を外した状態のアクチュエータ3の外観斜視図である。
図7】アクチュエータ3Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示す電磁弁1は、「電磁弁」の一例である「パイロット式電磁弁」の一例であって、図2に示すアクチュエータ3が弁本体2に一体的に取り付けられて、液体(一例として、水道水)の通過を規制/許容することができるように構成されている。弁本体2は、図3に示すように、第1ブロック11、第2ブロック12、メイン弁13およびパイロット弁14を備えている。
【0022】
第1ブロック11は、通過を規制/許容する対象の液体が流入する上流側空間Si、および通過を許容された液体が流入する下流側空間Soを形成する部材であって、一例として、液体の供給源に接続された配管(以下、「供給源側配管」ともいう:図示せず)を導入口Hi(上流側空間Siに連通している配管接続口)に接続し、かつ液体の供給先に接続された配管(以下、「供給先側配管」ともいう:図示せず)を排出口Ho(下流側空間Soに連通している配管接続口)に接続することができるように構成されている。第2ブロック12は、第1ブロック11およびメイン弁13と相俟ってメイン弁13を開閉制御するための圧力室Spを形成する部材であって、メイン弁13を挟み込むようにして第1ブロック11に取り付け可能に構成されると共に、パイロット弁14が取り付けられた状態のアクチュエータ3を取り付け可能に構成されている。
【0023】
メイン弁13は、第1ブロック11における上流側空間Siに流入した液体の通過を規制/許容する「弁体(ダイヤフラム)」であって、本体部13a、弁膜部13bおよびスプリング13cを備えている。この場合、本例の電磁弁1では、本体部13aと一体化された弁膜部13bに、上流側空間Siから圧力室Spに液体を流入させるための小孔13h(パイロットラインの起点となるオリフィス)が形成されている。また、本例の電磁弁1では、本体部13aおよび弁膜部13bを第1ブロック11の弁口11h(下流側空間Soの入口)に向けて付勢するようにしてスプリング13cが取り付けられると共に、スプリング13cの一端部が弁膜部13bの小孔13hに挿通させられて本体部13aおよび弁膜部13bの開閉動作時に小孔13h内をクリーニングする構成が採用されている。パイロット弁14は、「弁体」の一例であって、アクチュエータ3に取り付けられると共に、第2ブロック12の小孔12hを開口/閉塞する。
【0024】
アクチュエータ3は、「電磁弁用アクチュエータ」の一例であって、図3〜5に示すように、ボビン21、励磁コイル22、モールドケース23、固定コア24、可動コア25、スプリング26、ヨーク27およびマグネット28を備えて構成されている。ボビン21は、励磁コイル22を形成するための「巻枠」であって、「筒部」の一例である筒部21aと、鍔部21b,21bとが一体的に形成されている。励磁コイル22は、ボビン21における筒部21aの周囲に導線が巻回されて構成されている。この場合、励磁コイル22を構成する上記の導線の両端部は信号線22a(図1〜3参照)に接続されており、信号線22aを介して図示しない制御装置に接続される。モールドケース23は、励磁コイル22(導線)が巻回された状態のボビン21を型入れしたインサート成形によってボビン21と相俟って励磁コイル22を封止する(絶縁性を確保し、かつ励磁コイル22の水濡れや破損を阻止する)。
【0025】
固定コア(固定鉄心:プラグナット)24は、略円柱状に形成されてボビン21の筒部21aにおける一端部側(図3〜5における上端部側)に挿入され、後述するように、ボビン21に対するスライドが規制されるようにヨーク27によってボビン21と一体化されている。可動コア(可動鉄心:プランジャ)25は、固定コア24とほぼ同径の略円柱状に形成されると共に、ボビン21に対するスライドが可能に筒部21aにおける他端部側(図3〜5における下端部側)に挿入されている。この場合、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)では、可動コア25における固定コア24側とは逆側の端部(図3〜5における下端部)に「弁体」としてのパイロット弁14が取り付けられる構成が採用されている。スプリング26は、「付勢部材」の一例であって、固定コア24および可動コア25の間に配設されて固定コア24に対して可動コア25を離反させる向きに付勢する。
【0026】
ヨーク27は、筒部21aに挿入された固定コア24および可動コア25を結ぶ磁路(筒部21aの一端部側から他の一端部に亘る磁路)をモールドケース23の周囲に形成する磁路形成部材であって、正面視コ字状の部材および平板状の部材を、モールドケース23によってモールドされているボビン21および励磁コイル22を挟み込むようにカシメ加工によって相互に固着させることにより、ボビン21、励磁コイル22、モールドケース23および固定コア24と一体化されている。この場合、本例のヨーク27では、ボビン21における筒部21aの他端部側(可動コア25が挿入される側)の部位を挿通可能な挿通孔27aが一端面(本例では、平板状の部材)に設けられると共に、筒部21aの一端部側に挿入された固定コア24の位置決め用凸部を挿通可能な挿通孔27bが他の一端面(本例では、正面視コ字状の部材)に設けられている。
【0027】
マグネット28は、可動コア25をラッチする(可動コア25のスライドを規制する)ための「永久磁石」の一例である「リングマグネット」であって、ヨーク27の挿通孔27aから突出している筒部21aを囲むようにしてヨーク27の外面(各図における下面)における挿通孔27aの周囲に取り外し可能に取り付けられている。この場合、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)では、ヨーク27に接する面およびその裏面のいずれか一方の面がS極で他方の面がN極となるように着磁されたリングマグネット(厚み方向に着磁されたマグネット)でマグネット28が構成されると共に、一例として、S極となっている面を接触させるようにしてマグネット28がヨーク27に取り付けられる構成が採用されている。
【0028】
また、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)では、図3,4に示すように、ヨーク27にマグネット28が取り付けられている状態において励磁コイル22による励磁によって固定コア24から離反した位置に可動コア25が筒部21a内をスライドさせられたときに、可動コア25における固定コア24側とは逆側の端部(下端部)が、マグネット28においてヨーク27に接している面の裏面(両図における下面)よりもヨーク27側とは逆側(マグネット28の下面よりも下側)の位置に位置するように、可動コア25における固定コア24側の端部(上端部)と固定コア24側とは逆側の端部(下端部)との間の長さが規定されている。
【0029】
なお、本例のアクチュエータ3では、可動コア25の下端部にパイロット弁14を取り付けるための凸部が形成されているが、上記の「マグネット28の下面よりも下側」に位置すべき「可動コア25における固定コア24側とは逆側の端部(下端部)」は、パイロット弁14を取り付けるための凸部の突端部(下端部)を意味するものではなく、「磁路」の一部を形成するための「可動コアの本体部」における端部(下端部)、すなわち、筒部21aの内径と同径の部位における端部(下端部)を意味する。
【0030】
このアクチュエータ3は、その用途に応じて、図2に示すようにヨーク27にマグネット28を取り付けた状態としたり、図6に示すようにヨーク27からマグネット28を取り外した状態としたりすることにより、マグネット28以外の各構成要素については何ら変更することなく、「ラッチ式のアクチュエータ」および「非ラッチ式のアクチュエータ」のいずれかとして使用することが可能となっている。したがって、「ラッチ式の電磁弁」としての電磁弁1を製造する際には、図2に示すように、筒部21a内の可動コア25を囲むようにしてヨーク27にマグネット28を取り付けると共に、可動コア25の先端部(下端部)にパイロット弁14を取り付ける。この際には、自身の磁力によってマグネット28がヨーク27に吸着した状態となる。
【0031】
続いて、弁本体2を組み立てる。具体的には、まず、本体部13aと一体化され、かつスプリング13cの一端部が小孔13hに挿通させられた弁膜部13bの外周部位を挟み込むようにして、第1ブロック11に第2ブロック12を嵌合させる。次いで、ヨーク27における平板状の部材を貫通させた固定用ねじ(図4,5参照)を第1ブロック11にねじ込むことにより、弁本体2(第2ブロック12)にアクチュエータ3を固定する。これにより、図1,3に示すように、ラッチ式の電磁弁1が完成する。
【0032】
この電磁弁1の使用に際しては、まず、供給源側配管を弁本体2の導入口Hiに接続すると共に、供給先側配管を排出口Hoに接続する。この場合、この電磁弁1では、スプリング13cによって本体部13aおよび弁膜部13bが第1ブロック11における弁口11h(下流側空間Soの入口)に向けて押し付けられて弁膜部13bによって弁口11hが閉塞された状態となっている。したがって、供給源側配管を介して導入口Hiから上流側空間Siに流入した液体は、上流側空間Siから下流側空間Soへの液体の通過がメイン弁13によって規制された状態となる。
【0033】
なお、実際には、両配管の接続後に、動作テストを兼ねてパイロット弁14を複数回に亘って開閉させたときに、弁膜部13bの小孔13hを介して上流側空間Siから流入した液体によって圧力室Sp内の空気が第2ブロック12の小孔12hから第1ブロック11の下流側空間Soに排出されて圧力室Spが液体で満たされた状態となるが、電磁弁1の動作に関する理解を容易とするために、配管の接続時(電磁弁1の使用開始時)における圧力室Sp内のエア抜き動作についての詳細な説明を省略する。
【0034】
この場合、この電磁弁1を配設した設備では、図示しない制御装置からアクチュエータ3の励磁コイル22に電流が供給され、図4に示すように、励磁コイル22による励磁によって固定コア24から離反した位置に可動コア25がスライドさせられることにより、可動コア25に取り付けられているパイロット弁14によって弁本体2(第2ブロック12)の小孔12hが閉塞された状態となる。この状態では、スプリング26の付勢力、およびヨーク27に取り付けられているマグネット28の磁力によって筒部21a内における可動コア25のスライドが規制された状態(可動コア25がラッチされた状態)となるため、制御装置からの電流の供給を停止しても、パイロット弁14によって小孔12hが閉塞された状態が維持される。
【0035】
このため、図3に示すように、導入口Hiから上流側空間Siに流入した液体がメイン弁13における小孔13hから矢印Lp1で示すように圧力室Sp内に流入することにより、上流側空間Si内の液圧と圧力室Sp内の液圧とがほぼ等しくなる。したがって、メイン弁13におけるスプリング13cの付勢力によって弁膜部13bが弁口11hに押し付けられて弁口11hが閉塞された状態が維持される。これにより、上記のように可動コア25がラッチされてパイロット弁14によって小孔12hが閉塞されている状態では、弁本体2(第1ブロック11の導入口Hi)に供給されている液体の通過が規制された状態が維持される。
【0036】
一方、供給先に液体を供給する際には、上記のように固定コア24に対して可動コア25を離反させたときとは逆極性の電流を励磁コイル22に供給する。この際には、図5に示すように、励磁コイル22による励磁によって可動コア25が固定コア24に接する位置にスライドさせられることにより、可動コア25に取り付けられているパイロット弁14が弁本体2(第2ブロック12)の小孔12hから離反して小孔12hが開口された状態となる。この状態では、マグネット28の磁力によって筒部21a内における可動コア25のスライドが規制された状態(可動コア25がラッチされた状態)となるため、制御装置からの電流の供給を停止しても、小孔12hが開口された状態が維持される。
【0037】
また、小孔12hが開口された状態では、圧力室Sp内の液体が小孔12hから図3に矢印Lp2で示すように下流側空間Soに流出するため、圧力室Sp内の液圧が上流側空間Si内の液圧よりも低くなる。このため、上流側空間Si内の液圧によってメイン弁13(本体部13aおよび弁膜部13b)がスプリング13cの付勢力に抗して圧力室Sp側に押し上げられる結果、弁膜部13bが弁口11hから離反して弁口11hが開口された状態となる。この結果、上流側空間Si内の液体が第1ブロック11(弁口11hの口縁部)とメイン弁13(弁膜部13b)との間を図3に矢印Lm1で示すように流動し、弁口11hを通過して矢印Lm2で示すように下流側空間So内に流出する。これにより、下流側空間So内の液体が排出口Hoから供給先配管を介して供給先に供給される。
【0038】
また、弁本体2(第2ブロック12)の小孔12hが開口されている状態では、上流側空間Siから矢印Lm1,Lm2で示すように下流側空間Soに流入する液体の流れと並行して、上流側空間Si内の液体が矢印Lp1で示すようにメイン弁13の小孔13hから圧力室Sp内に流入し、圧力室Sp内の液体が矢印Lp2で示すように小孔12hから下流側空間Soに流出する。したがって、上記のように可動コア25がラッチされて小孔12hが開口されている状態では、上流側空間Si内の液圧よりも圧力室Sp内の液圧の方が低い状態が維持される結果、弁本体2(第1ブロック11の導入口Hi)に供給されている液体の通過が許容された状態が維持される。
【0039】
また、供給先に対する液体の供給を停止させるには、制御装置からアクチュエータ3の励磁コイル22に電流を供給することで固定コア24から離反した位置に可動コア25をスライドさせ、パイロット弁14によって弁本体2(第2ブロック12)の小孔12hを閉塞させる。この際には、前述したように、上流側空間Si内の液圧と圧力室Sp内の液圧とがほぼ等しくなり、スプリング13cの付勢力によって弁膜部13bが弁口11hに押し付けられて弁口11hが閉塞された状態となる。これにより、弁本体2(第1ブロック11の導入口Hi)に供給されている液体の通過が規制された状態となる。
【0040】
一方、「非ラッチ式の電磁弁」として電磁弁1製造するときには、図6に示すように、ヨーク27からマグネット28を取り外す(マグネット28を非装着状態とする)と共に、可動コア25の先端部(下端部)にパイロット弁14を取り付ける。この場合、マグネット28を取り付けていない状態のアクチュエータ3(以下、マグネット28を取り付けた状態のアクチュエータ3と区別するために、マグネット28を非装着状態のアクチュエータ3を「アクチュエータ3x」ともいう)を使用して非ラッチ式の電磁弁」を製造する際には、ラッチ式の電磁弁1用の弁本体2とは異なる「弁本体」を用意して製造することもできるが、下記のような製造方法を採用することで、ラッチ式の電磁弁1用の弁本体2にアクチュエータ3xを取り付けて非ラッチ式の電磁弁1(以下、ラッチ式の電磁弁1と区別するために非ラッチ式の電磁弁1を「電磁弁1x」ともいう)を製造することができる。
【0041】
具体的には、電磁弁1の製造時と同様の手順で弁本体2を組み立てた後に、ヨーク27の挿通孔27aから突出している筒部21aに、マグネット28に代えてスペーサ29(一例として、マグネット28と同じ大きさ、同じ形状の非磁性材料製のワッシャ:例えば、ポリアセタール樹脂等の樹脂製のワッシャ)を取り付けたアクチュエータ3xを弁本体2に取り付ける。これにより、電磁弁1xが完成する。なお、「非ラッチ式の電磁弁」の動作については公知のため、詳細な説明を省略する。
【0042】
このように、このアクチュエータ3では、ヨーク27の外面における挿通孔27aの周囲に筒部21a内の可動コア25をラッチするためのマグネット28が取り外し可能に取り付けられている。また、この電磁弁1では、上記のアクチュエータ3と、可動コア25に取り付けられたパイロット弁14とを備えている。したがって、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、ラッチ用の「永久磁石」が「ヨーク」の内側に配設されている「電磁弁用アクチュエータ」とは異なり、マグネット28を除く各構成要素を共用し、ヨーク27にマグネット28を取り付けた状態とすることでアクチュエータ3を「ラッチ式の電磁弁用アクチュエータ」として使用することができ、ヨーク27にマグネット28を取り付けない状態とすることでアクチュエータ3を「非ラッチ式の電磁弁用アクチュエータ」として使用することができる。このため、このアクチュエータ3および電磁弁1では、非ラッチ式のアクチュエータ1xを製造する際に設計作業を新たに行う必要がなく、しかもラッチ式のアクチュエータ1におけるボビン21やヨーク27と形状や大きさが共通するボビン21およびヨーク27を用いることができる結果、ラッチ式の電磁弁1および非ラッチ式の電磁弁1xの製造コストを十分に低減することができる。
【0043】
また、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、固定コア24から離反した位置にスライドさせられたときに固定コア24側とは逆側の端部がマグネット28においてヨーク27に接している面の裏面よりもヨーク27側とは逆側の位置に位置するように可動コア25における固定コア24側の端部および固定コア24側とは逆側の端部の間の長さを規定したことにより、固定コア24から離間した位置にスライドさせられた可動コア25をマグネット28の磁力によって確実にラッチすることができる。
【0044】
さらに、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、ヨーク27に接する面およびその裏面のいずれか一方の面がS極で他方の面がN極となるように着磁された「リングマグネット」で「永久磁石」としてのマグネット28を構成したことにより、マグネット28の磁力が可動コア25の各部に対してほぼ均等に及ぶため、可動コア25を好適にラッチすることができる。
【0045】
また、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、固定コア24に対して可動コア25を離反させる向きに付勢するスプリング26を備えたことにより、可動コア25に取り付けられたパイロット弁14を弁本体2の小孔12hに対して確実に押し付けた状態とすることができるため、電磁弁1を確実に閉弁状態に維持することができる。
【0046】
なお、「電磁弁用アクチュエータ」および「電磁弁」の構成は、上記のアクチュエータ3および電磁弁1の構成の例に限定されない。例えば、「リングマグネット」で構成したマグネット28を「永久磁石」として取り付けたアクチュエータ3の例について説明したが、「永久磁石」の形状はこれに限定されず、一例として、図7に示すアクチュエータ3A(「電磁弁用アクチュエータ」の他の一例)のように、方形状(平板状)の複数のマグネット28A(一例として、2つのマグネット28A)を、ヨーク27における挿通孔27aの近傍に取り外し可能に取り付けて「電磁弁用アクチュエータ」を構成することもできる。
【0047】
また、「パイロット式電磁弁」の一例である電磁弁1(1x)の構成を例に挙げて説明したが、「電磁弁」の構成はこれに限定されず、「直動式電磁弁」(図示せず)において上記のアクチュエータ3(3x)やアクチュエータ3Aを「電磁弁用アクチュエータ」として組み付けることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 電磁弁
2 弁本体
3,3A アクチュエータ
11 第1ブロック
11h 弁口
12 第2ブロック
12h,13h 小孔
13 メイン弁
13a 本体部
13b 弁膜部
13c スプリング
14 パイロット弁
21 ボビン
21a 筒部
21b 鍔部
22 励磁コイル
22a 信号線
23 モールドケース
24 固定コア
25 可動コア
26 スプリング
27 ヨーク
27a,27b 挿通孔
28,28A マグネット
29 スペーサ
Hi 導入口
Ho 排出口
Si 上流側空間
So 下流側空間
Sp 圧力室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7