特許第6650753号(P6650753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000002
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000003
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000004
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000005
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000006
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000007
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000008
  • 特許6650753-画像取得システム及び画像取得方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650753
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】画像取得システム及び画像取得方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20200210BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20200210BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20200210BHJP
   G03B 37/00 20060101ALI20200210BHJP
   G03B 15/02 20060101ALI20200210BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   H04N5/232 290
   G06T3/00 780
   G03B15/00 H
   G03B15/00 W
   G03B37/00 C
   G03B15/00 T
   G03B15/02 C
   G03B15/02 F
   H04N5/225 600
   H04N5/232 380
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-253262(P2015-253262)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-118386(P2017-118386A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】梶 雄登
【審査官】 庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−005353(JP,A)
【文献】 特開2003−264733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G03B 15/00
G03B 15/02
G03B 37/00
G06T 3/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に光を照射することで、当該対象物の表面に所定のパターンの模様を付する照射部と、
前記所定のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する撮像部と、
前記撮像部により撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる結合処理部と、
を具備し、
前記照射部は、
前記対象物の表面に、一のパターン及び前記一のパターンとは異なる他のパターンの模様を付することが可能であり、
前記撮像部は、
前記一のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影した第一の複数の画像と、
前記他のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影した第二の複数の画像と、
を得ることが可能であり、
前記結合処理部は、
前記第一の複数の画像中の前記模様に基づいて、当該第一の複数の画像を繋ぎ合わせた第一の結合画像と、
前記第二の複数の画像中の前記模様に基づいて、当該第二の複数の画像を繋ぎ合わせた第二の結合画像と、
を得ることが可能であり、
前記第一の結合画像及び前記第二の結合画像に基づいて、前記一のパターンの模様及び前記他のパターンの模様を削減した一の補完画像を得るノイズ削減処理部をさらに具備する、
画像取得システム。
【請求項2】
前記撮像部が設けられ、移動可能な移動体と、
前記移動体の移動を制御する制御部と、
をさらに具備する請求項1に記載の画像取得システム。
【請求項3】
前記移動体は、
無人航空機である、
請求項2に記載の画像取得システム。
【請求項4】
対象物に光を照射することで、当該対象物の表面に所定のパターンの模様を付する照射工程と、
前記照射工程において前記所定のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する撮影工程と、
前記撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる結合処理工程と、
を具備し、
前記照射工程は、
前記対象物の表面に一のパターンの模様を付する第一の照射工程と、
前記対象物の表面に前記一のパターンとは異なる他のパターンの模様を付する第二の照射工程と、
を含み、
前記撮影工程は、
前記第一の照射工程において前記一のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する第一の撮影工程と、
前記第二の照射工程において前記他のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する第二の撮影工程と、
を含み、
前記結合処理工程は、
前記第一の撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて第一の結合画像を得る第一の結合処理工程と、
前記第二の撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて第二の結合画像を得る第二の結合処理工程と、
を含み、
前記第一の結合画像及び前記第二の結合画像に基づいて、前記一のパターンの模様及び前記他のパターンの模様を削減した一の補完画像を得るノイズ削減処理工程をさらに具備する、
画像取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を撮影して画像を取得する画像取得システム及び画像取得方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を撮影して画像を取得する画像取得システム及び画像取得方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、サージタンクの壁面を、気球に取り付けた観測部(モニター用ビデオカメラ)によって撮影する技術が開示されている。当該技術では、観測部によって撮影した画像をモニタに表示し、この表示を見ることでサージタンクの壁面を点検することができる。
【0004】
このような技術においては、観測部で壁面を撮影しながら点検を行うため、点検作業が長時間に亘る場合には気球を長時間飛行させ続けることになり、気球の操作ミスや点検ミス(見落とし)等、種々の不都合が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、気球の飛行時間の短縮のために、まず気球を用いて壁面全体の画像を撮影し、その後、当該画像を確認することで壁面の点検を行う方法が考えられる。この場合、気球の飛行中は点検を行わないため、当該気球の飛行時間を短縮することができる。
【0006】
またこのように壁面の画像を撮影する際に、壁面がある程度大きい場合には、壁面を一部分ずつ撮影し、撮影された複数の画像を繋ぎ合わせることによって壁面全体の画像を得る方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、壁面の模様が一様であり、目立った特徴がない場合には、各画像の位置関係が不明確であり、複数の画像を正確に繋ぎ合わせることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−123910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、繋ぎ合わせ易い複数の画像を取得することが可能な画像取得システム及び画像取得方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、対象物に光を照射することで、当該対象物の表面に所定のパターンの模様を付する照射部と、前記所定のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する撮像部と、前記撮像部により撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる結合処理部と、を具備し、前記照射部は、前記対象物の表面に、一のパターン及び前記一のパターンとは異なる他のパターンの模様を付することが可能であり、前記撮像部は、前記一のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影した第一の複数の画像と、前記他のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影した第二の複数の画像と、を得ることが可能であり、前記結合処理部は、前記第一の複数の画像中の前記模様に基づいて、当該第一の複数の画像を繋ぎ合わせた第一の結合画像と、前記第二の複数の画像中の前記模様に基づいて、当該第二の複数の画像を繋ぎ合わせた第二の結合画像と、を得ることが可能であり、前記第一の結合画像及び前記第二の結合画像に基づいて、前記一のパターンの模様及び前記他のパターンの模様を削減した一の補完画像を得るノイズ削減処理部をさらに具備するものである。
【0012】
請求項2においては、前記撮像部が設けられ、移動可能な移動体と、前記移動体の移動を制御する制御部と、をさらに具備するものである。
【0013】
請求項3においては、前記移動体は、無人航空機であるものである。
【0014】
請求項4においては、対象物に光を照射することで、当該対象物の表面に所定のパターンの模様を付する照射工程と、前記照射工程において前記所定のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する撮影工程と、前記撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる結合処理工程と、を具備し、前記照射工程は、前記対象物の表面に一のパターンの模様を付する第一の照射工程と、前記対象物の表面に前記一のパターンとは異なる他のパターンの模様を付する第二の照射工程と、を含み、前記撮影工程は、前記第一の照射工程において前記一のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する第一の撮影工程と、前記第二の照射工程において前記他のパターンの模様が付された前記対象物の表面を複数箇所に分けて撮影する第二の撮影工程と、を含み、前記結合処理工程は、前記第一の撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて第一の結合画像を得る第一の結合処理工程と、前記第二の撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて第二の結合画像を得る第二の結合処理工程と、を含み、前記第一の結合画像及び前記第二の結合画像に基づいて、前記一のパターンの模様及び前記他のパターンの模様を削減した一の補完画像を得るノイズ削減処理工程をさらに具備するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、繋ぎ合わせ易い複数の画像を取得することができる。また、模様を削減した画像を取得し易くすることができる。また、画像を繋ぎ合わせるための作業負担を軽減することができる。また、対象物の表面を確認し易い画像を得ることができる。
【0021】
請求項2においては、対象物の撮影を容易に行うことができる。
【0022】
請求項3においては、対象物の撮影をより容易に行うことができる。
【0023】
請求項4においては、繋ぎ合わせ易い複数の画像を取得することができる。また、精度良く繋ぎ合わされた画像を得ることができる。また、対象物の表面を確認し易い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】点検システムの全体的な構成を示した概略図。
図2】点検方法を示したフローチャート。
図3】照射装置により第一パターンの模様が付された建物を示した斜視図。
図4】ドローンによる撮影の様子を示した斜視図。
図5】撮影する領域の一例を示した正面図。
図6】照射装置により第二パターンの模様が付された建物を示した斜視図。
図7】2つの画像を繋ぎ合わせる様子を示した模式図。
図8】2つの画像を重ね合わせてノイズを削減する様子を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0030】
まず、図1を用いて、本発明に係る画像取得システムの実施の一形態に係る点検システム1の構成について説明する。点検システム1は、対象物を撮影して当該対象物の画像を取得し、当該画像に基づいて対象物の表面を点検するためのものである。本実施形態においては、対象物として比較的大きな直方体状の建物Bを想定している(図3等参照)。点検システム1は、主として照射装置10、ドローン20、カメラ30、コントローラ40及び画像処理装置50を具備する。
【0031】
照射装置10は、レーザー光を照射するものである。照射装置10は、複数のレーザー光を同時に照射することができる。照射装置10は、当該複数のレーザー光の組み合わせ(数や照射方向等)を適宜変更することができる。
【0032】
ドローン20は、人が搭乗しない小型の航空機(小型無人航空機)である。ドローン20は、複数のローター(回転翼)を具備し、安定した飛行を行うことができる。
【0033】
カメラ30は、画像を撮影するものである。カメラ30は、ドローン20に取り付けられる。
【0034】
コントローラ40は、ドローン20及びカメラ30の動作を制御するものである。コントローラ40は、ドローン20及びカメラ30と無線で通信することができる。コントローラ40は、作業者によって操作される操作部と、当該操作部の操作に基づいて制御信号を生成し、ドローン20及びカメラ30に送信する制御部と、を具備する。
【0035】
作業者は、コントローラ40を操作することにより、ドローン20を任意に飛行させることができる。また作業者は、コントローラ40を操作することにより、カメラ30による画像の撮影を行うことができる。
【0036】
画像処理装置50は、カメラ30により撮影された画像に適宜の処理を施すものである。本実施形態においては、画像処理装置50としてパソコンを用いている。画像処理装置50は、カメラ30と無線で通信することができる。画像処理装置50は、カメラ30が撮影した画像を無線で取得することができる。
【0037】
次に、上述の如く構成された点検システム1を用いて、建物Bの表面を点検する点検方法について説明する。なお、本実施形態に係る点検方法は、本発明に係る画像取得方法を含んでいる。本実施形態においては、建物Bの前側の壁面を点検する場合を例に挙げて説明する。よって、以下の説明において単に「壁面」と称した場合は、建物Bの前側の壁面を意味するものとする。
【0038】
まず、図2に示す第一照射工程S1において、照射装置10から建物Bに対して複数のレーザー光が照射される。
【0039】
具体的には、図3に示すように、照射装置10は建物Bの前方に配置され、当該照射装置10から建物Bの表面(壁面)に対して複数のレーザー光が照射される。このとき、照射装置10から照射される複数のレーザー光は、建物Bの壁面全域に亘るように、その数や方向が設定される。これによって、建物Bの壁面には、レーザー光による所定のパターンの模様が付されることになる。
【0040】
なお、本実施形態においては、建物Bの壁面に付される「模様」とは、複数のレーザー光による複数の光の点Pを意味している。また「所定のパターン」とは、建物Bの壁面に付された光の点Pの数や位置関係を意味している。第一照射工程S1において建物Bの壁面に付される模様のパターンを、以下では「第一パターン」と称する。
【0041】
第一照射工程S1において照射装置10から建物Bに対して複数のレーザー光が照射されると、図2に示すように、第一照射工程S1から第一撮影工程S2に移行する。第一撮影工程S2において、建物Bの壁面が撮影される。
【0042】
具体的には、図4に示すように、作業者はコントローラ40(図1参照)を操作することによってドローン20及びカメラ30の動作を制御し、建物Bの壁面を撮影する。この際、壁面を点検する(クラック等の有無を確認する)ことができる画像を撮影するためには、ある程度建物Bの壁面に近づいて画像を撮影する必要がある。このため、通常、建物Bの壁面全体を1枚の画像で撮影することはできない。そこで作業者は、壁面の一部分を撮影し、ドローン20を少し移動させ、先ほど撮影した部分とは異なる部分を撮影する、という作業を繰り返す。このようにして作業者は、建物Bの壁面全体を複数箇所に分けて撮影する。
【0043】
本実施形態においては、図4に示すように、ドローン20を建物Bの左右両端で折り返させながら、下から上に向かって壁面を撮影する。この際、隣接する画像同士が一部重複するように、ドローン20の位置(カメラ30で撮影する位置)が調節される。具体的には、図5に示すように、ある位置で撮影した壁面の領域X1と、次に撮影した壁面の領域X2とが一部重複するように、ドローン20の位置が調節される。この際、当該重複した領域に、複数の光の点Pが存在することが望ましい。
【0044】
カメラ30は、壁面を撮影する度にその画像のデータを画像処理装置50へと送信する。画像処理装置50は、当該画像のデータを記憶する。
【0045】
第一撮影工程S2において建物Bの壁面全体が撮影されると、図2に示すように、第一撮影工程S2から第二照射工程S3に移行する。第一撮影工程S2において、照射装置10から建物Bに対して複数のレーザー光が照射される。
【0046】
具体的には、第一照射工程S1と同様に、照射装置10から建物Bの壁面に対して複数のレーザー光が照射される。ここで、第二照射工程S3において建物Bの壁面に付される模様のパターン(図6参照)は、第一照射工程S1におけるパターン(第一パターン)(図3参照)とは異なるように設定される。第二照射工程S3において建物Bの壁面に付される模様のパターンを、以下では「第二パターン」と称する。照射装置10から照射されるレーザー光の数や向きを第一照射工程S1と異なるように設定することで、第一パターンとは異なる第二パターンの模様を壁面に付することができる。
【0047】
第二照射工程S3において照射装置10から建物Bに対して複数のレーザー光が照射されると、図2に示すように、第二照射工程S3から第二撮影工程S4に移行する。第二撮影工程S4において、建物Bの壁面が撮影される。
【0048】
なお、第二撮影工程S4の内容は、第一撮影工程S2と概ね同じである。すなわち、作業者はコントローラ40(図1参照)を操作し、建物Bの壁面全体を撮影する。
【0049】
第二撮影工程S4において建物Bの壁面全体が撮影されると、図2に示すように、第二撮影工程S4から第一結合処理工程S5に移行する。第一結合処理工程S5において、第一撮影工程S2で撮影された複数の画像が繋ぎ合わされ、1枚の画像が形成される。
【0050】
具体的には、画像処理装置50によって、第一撮影工程S2で撮影された複数の画像が結合される。ここで、図7には、一例として図5で示した領域X1及び領域X2を撮影した2つの画像(画像G1及び画像G2)を結合する様子を示している。この場合、画像処理装置50は、画像G1及び画像G2のいずれにも撮影されている共通の光の点P(光の点群PG)を基準として、当該画像G1及び画像G2を結合することができる。
【0051】
例えば、画像処理装置50は、当該光の点群PGが完全に一致(重複)するように2つの画像(画像G1及び画像G2)を結合することで、当該2つの画像の位置関係や縮尺等が統一された1枚の画像(結合画像G12)を得ることができる。もし2つの画像の縮尺が異なっている場合には、光の点群PGを参照しながら適宜縮尺の調整を行うことができる。また、2つの画像のいずれかが傾いている場合には、光の点群PGを参照しながら適宜画像の向きの調整を行うことができる。このようにして、画像処理装置50は、ズレ等のない精度の良い結合画像G12を得ることができる。
【0052】
画像処理装置50は、このように複数の画像を順に結合させることで、建物Bの壁面全体を示す1つの画像GM1(図8参照)を得ることができる。当該画像GM1に示された壁面には、第一パターンの光の点Pが付されている。
【0053】
なお、第一結合処理工程S5において、画像処理装置50は専用の制御プログラム等に従って自動的に処理(画像の結合)を行う。
【0054】
第一結合処理工程S5において建物Bの壁面全体を示す1つの画像GM1が得られると、図2に示すように、第一結合処理工程S5から第二結合処理工程S6に移行する。第二結合処理工程S6において、第二撮影工程S4で撮影された複数の画像が繋ぎ合わされ、1枚の画像が形成される。
【0055】
なお、第二結合処理工程S6の内容は、第一結合処理工程S5と概ね同じである。すなわち、画像処理装置50は、第二撮影工程S4で撮影された複数の画像を結合し、1つの画像GM2(図8参照)を得ることができる。この際、画像処理装置50は、光の点Pを基準として、複数の画像の縮尺や向き等を調整する。当該画像GM2に示された壁面には、第二パターンの光の点Pが付されている。
【0056】
第二結合処理工程S6において建物Bの壁面全体を示す1つの画像GM2が得られると、図2に示すように、第二結合処理工程S6からノイズ削減処理工程S7に移行する。ノイズ削減処理工程S7において、画像GM1及び画像GM2に基づいて、ノイズが削減された1枚の画像が形成される。
【0057】
第一結合処理工程S5及び第二結合処理工程S6で得られた画像GM1及び画像GM2は、所定のパターンの光の点Pが付された建物の壁面の画像である。このため、当該画像GM1又は画像GM2を用いて点検(クラック等の有無の確認)を行うと、光の点Pが邪魔(ノイズ)になって正確で迅速な点検が困難になるおそれがある。
【0058】
そこで、ノイズ削減処理工程S7では、2つの画像GM1及び画像GM2を用いて、当該光の点P(ノイズ)を削減する。具体的には、図8に示すように、画像処理装置50によって2つの画像GM1及び画像GM2が重ね合わされ、1枚の画像GM12が形成される。この際、画像処理装置50は、一方の画像(例えば画像GM1)の光の点Pが付された部分の画像(壁面の様子)を、他方の画像(画像GM2)によって補完する。これによって、光の点Pのない(若しくは、画像GM1や画像GM2に比べて光の点Pの数が少ない)壁面の画像GM12を得ることができる。
【0059】
なお、このように一方の画像の光の点Pが付された部分を、他方の画像によって補完するため、第一パターンの模様の光の点Pと第二パターンの模様の光の点Pとは、極力重複しないように設定することが望ましく、また、全く重複しないように設定することがより好ましい。
【0060】
なお、ノイズ削減処理工程S7において、画像処理装置50は専用の制御プログラム等に従って自動的に処理(ノイズの削減)を行う。
【0061】
ノイズ削減処理工程S7において画像GM12が得られると、図2に示すように、ノイズ削減処理工程S7から点検工程S8に移行する。点検工程S8において、画像GM12を用いて建物Bの壁面の点検が行われる。
【0062】
具体的には、作業者は、画像GM12で示された壁面を見て、当該壁面にクラック等の不具合が発生していないかどうかを確認する。この際、光の点Pは画像GM1や画像GM2に比べて削減されているので、点検作業をより正確かつ迅速に行うことができる。また、画像GM12を転送することで、遠隔地にいる作業者が点検作業を行うことも可能である。
【0063】
以上の如く、本実施形態に係る点検システム1(画像取得システム)は、
建物B(対象物)に光を照射することで、当該建物Bの表面に所定のパターンの模様を付する照射装置10(照射部)と、
前記所定のパターンの模様が付された建物Bの表面を複数箇所に分けて撮影するカメラ30(撮像部)と、
を具備するものである。
【0064】
このように構成することにより、繋ぎ合わせ易い複数の画像を取得することができる。
すなわち、所定のパターンの模様が付された建物Bを撮影することで、当該模様を基準として画像を繋ぎ合わせることができるようになる。これによって、精度の高い建物Bの画像を得ることができる。
【0065】
また、点検システム1は、
カメラ30が設けられ、移動可能なドローン20(移動体)と、
ドローン20の移動を制御するコントローラ40(制御部)と、
をさらに具備するものである。
【0066】
このように構成することにより、建物Bの撮影を容易に行うことができる。
すなわち、ドローン20を任意に移動させることで所望の位置から撮影を行うことができるため、作業者が自ら撮影する場合に比べて撮影負担を軽減することができる。また、ドローン20に一般的に設けられているカメラ30を用いて撮影を行うことができるため、当該ドローン20に設備を追加する必要がなく、安価で飛行効率のよいシステムを構築することができる。
【0067】
また、前記移動体は、
ドローン20(無人航空機)である。
【0068】
このように構成することにより、建物Bの撮影をより容易に行うことができる。
すなわち、上下方向へも任意に移動することができるため、建物Bの上部であっても容易に撮影することができる。また、地面の上を走行することもないため、地面の状態に関係なく撮影を行うことができる。
【0069】
また、照射装置10は、
建物Bの表面に、第一パターン(一のパターン)及び前記第一パターンとは異なる第二パターン(他のパターン)の模様を付することが可能なものである。
【0070】
このように構成することにより、模様を削減した画像を取得し易くすることができる。
すなわち、第一パターンの模様が付された画像と第二パターンの模様が付された画像とで、模様が付された部分の壁面の画像を互いに補完し合うことができ、より正確な壁面の画像を得ることができる。
【0071】
また、点検システム1は、
カメラ30により撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる画像処理装置50(結合処理部)をさらに具備するものである。
【0072】
このように構成することにより、画像を繋ぎ合わせるための作業負担を軽減することができる。
すなわち、作業者が画像を繋ぎ合わせる場合に比べて作業負担を軽減することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る点検方法(画像取得方法)は、
建物B(対象物)に光を照射することで、当該建物Bの表面に所定のパターンの模様を付する照射工程(第一照射工程S1及び第二照射工程S3)と、
前記照射工程において前記所定のパターンの模様が付された建物Bの表面を複数箇所に分けて撮影する撮影工程(第一撮影工程S2及び第二撮影工程S4)と、
を具備するものである。
【0074】
このように構成することにより、繋ぎ合わせ易い複数の画像を取得することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る点検方法は、
前記撮影工程において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせる結合処理工程(第一結合処理工程S5及び第二結合処理工程S6)をさらに具備するものである。
【0076】
このように構成することにより、精度良く繋ぎ合わされた画像を得ることができる。
【0077】
また、前記照射工程は、
建物Bの表面に第一パターン(一のパターン)の模様を付する第一照射工程S1(第一の照射工程)と、
建物Bの表面に第一パターンとは異なる第二パターン(他のパターン)の模様を付する第二照射工程S3(第二の照射工程)と、
を含み、
前記撮影工程は、
第一照射工程S1において第一パターンの模様が付された建物Bの表面を複数箇所に分けて撮影する第一撮影工程S2(第一の撮影工程)と、
第二照射工程S3において第二パターンの模様が付された建物Bの表面を複数箇所に分けて撮影する第二撮影工程S4(第二の撮影工程)と、
を含み、
前記結合処理工程は、
第一撮影工程S2において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて画像GM1(第一の結合画像)を得る第一結合処理工程S5(第一の結合処理工程)と、
第二撮影工程S4において撮影された複数の画像中の前記模様に基づいて、当該複数の画像を繋ぎ合わせて画像GM2(第二の結合画像)を得る第二結合処理工程S6(第二の結合処理工程)と、
を含み、
画像GM1及び画像GM2に基づいて、第一パターンの模様及び第二パターンの模様を削減した画像GM12(一の補完画像)を得るノイズ削減処理工程S7をさらに具備するものである。
【0078】
このように構成することにより、建物Bの表面を確認し易い画像を得ることができる。
すなわち、建物Bに付した模様を、複数の画像を繋ぎ合わせた後で削減することができ、建物Bの壁面が確認し易くなる。
【0079】
なお、本実施形態に係る点検システム1は、本発明に係る画像取得システムの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る建物Bは、本発明に係る対象物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る照射装置10は、本発明に係る照射部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るカメラ30は、本発明に係る撮像部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るドローン20は、本発明に係る移動体の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るコントローラ40は、本発明に係る制御部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る画像処理装置50は、本発明に係る結合処理部の実施の一形態である。
【0080】
以上、本発明の第一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、本実施形態においては、点検システム1による点検の対象物として建物Bを例示したが、本発明はこれに限るものではなく、対象物は任意に選択することができる。例えば、人工物(建築物等)だけでなく、自然物を対象物とすることも可能である。
【0082】
また、本実施形態においては建物Bの壁面(垂直な面)を点検する場合を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば屋根や天井等、垂直ではない面を点検することも可能である。
【0083】
また、本実施形態においては、対象物を点検するための点検システム1に本発明を適用した例を示したが、本発明に係る画像取得システムは点検を目的とするものに限らず、画像を取得する種々のシステムに適用することが可能である。
【0084】
また、本実施形態に係る照射装置10はレーザー光を建物Bに照射するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、建物Bに特徴となる模様を付すことができるものであれば、どのような光を照射してもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、建物Bに付される模様として、レーザー光による複数の光の点Pを例示したが、本発明はこれに限るものではなく、どのような模様を建物Bに付してもよい。
【0086】
また、本実施形態においては照射装置10照射されるレーザー光の色については言及していないが、当該レーザー光の色は任意に選択することが可能である。なお、撮影精度を向上させるため、周囲の明るさや建物Bの色に応じて、適宜視認し易い色を選択することが望ましい。
【0087】
また、本実施形態においてはレーザー光を建物Bに照射して模様を付す例を示したが、例えば所定の形状のスリットを通して建物Bに光を照射することにより、光と影の模様を付す構成とすることも可能である。
【0088】
また、本実施形態においては、移動体としてドローン20を例示したが、本発明はこれに限るものではなく、カメラ30を移動させることができるものであればよい。例えば、その他の無人航空機(無線操縦できるヘリコプター等)や、地上を走行する車両等であってもよい。
【0089】
また、本実施形態においては、カメラ30は壁面を撮影する度にその画像のデータを画像処理装置50へと送信するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、カメラ30は壁面全体を撮影した後に、画像処理装置50と有線で接続され、撮影した全ての画像データをまとめて画像処理装置50に送信することも可能である。
【0090】
また、本実施形態においては、作業者が操作可能なコントローラ40(操作部及び制御部)によってドローン20の移動を制御するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、操作によらず、自動(制御プログラム等)でドローン20の移動を制御する構成とすることも可能である。この場合、操作部を有するコントローラ40は不要であり、ドローン20に制御信号を送信する制御部のみでドローン20を制御することができる。
【0091】
また、本実施形態においては、第一結合処理工程S5、第二結合処理工程S6及びノイズ削減処理工程S7を画像処理装置50(専用の制御プログラム)によって自動的に行うものとしたが、当該処理を作業者が行うことも可能である。
【0092】
また、本実施形態においては、第一照射工程S1、第一撮影工程S2、第二照射工程S3及び第二撮影工程S4を行った後で、第一結合処理工程S5及び第二結合処理工程S6を行うものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、可能な範囲で工程の順番を変更することも可能である。例えば、第一照射工程S1及び第一撮影工程S2を行った後(第二照射工程S3及び第二撮影工程S4を行う前)に第一結合処理工程S5を行うことや、第二照射工程S3及び第二撮影工程S4と第一結合処理工程S5を同時に行うことも可能である。但し、ドローン20を短期間に集中して飛行させるためには、本実施形態の如く第一照射工程S1、第一撮影工程S2、第二照射工程S3及び第二撮影工程S4を連続して行うことが望ましい。
【符号の説明】
【0093】
1 点検システム
10 照射装置
20 ドローン
30 カメラ
40 コントローラ
50 画像処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8