特許第6650761号(P6650761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6650761-給湯装置 図000002
  • 特許6650761-給湯装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650761
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20060101AFI20200210BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   F24H1/10 301C
   F23N5/00 R
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-3773(P2016-3773)
(22)【出願日】2016年1月12日
(65)【公開番号】特開2017-125632(P2017-125632A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】中西 渉
【審査官】 吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−249339(JP,A)
【文献】 特開平03−279708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/10
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに数が異なる複数のバーナからなる3つ以上のバーナ群と、
給水管と出湯管とが接続されて前記バーナ群により加熱される熱交換器と、
前記バーナ群の燃焼を制御する制御手段と、を含み、前記制御手段は、必要な燃焼量に応じて燃焼させる前記バーナ群を選択して複数の燃焼段階に切り替える切替制御を実行する給湯装置であって、
前記制御手段は、前記切替制御の際、所定の燃焼段階で燃焼中の前記バーナ群から、燃焼していない1つ以上の前記バーナ群を挟んで前記所定の燃焼段階よりも燃焼能力が小さい他の燃焼段階の前記バーナ群へ燃焼を切り替える場合、以下の(1)(2)の切替手順を繰り返すことで前記他の燃焼段階への切替を行うことを特徴とする給湯装置。
(1)燃焼中の前記バーナ群から、隣接する前記バーナ群へ火移りさせて同時に燃焼させる。
(2)先に燃焼していた前記バーナ群の燃焼を停止させて、火移りさせた前記バーナ群のみを単独燃焼させる。
【請求項2】
火移りさせて単独燃焼する前記バーナ群の燃焼能力が、その前後の切替手順で燃焼する前記バーナ群の燃焼能力よりも小さい場合、前記単独燃焼の燃焼時間を、前記前後の切替手順での燃焼時間よりも長くすることを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼能力が異なる3つ以上のバーナ群を備え、燃焼させるバーナ群を切り替えることで燃焼量を調整可能とした給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置は、特許文献1に開示されるように、上水道に接続される給水管と、給水管が接続される熱交換器と、熱交換器に接続される出湯管と、熱交換器を加熱して通水と熱交換する複数の燃焼エリアと、給湯装置の動作を制御する制御手段とを備えたものが知られている。各燃焼エリアは、互いに数が異なる複数のバーナ(バーナ群)からなり、燃焼エリアごとに燃焼能力が相違している。制御手段は、リモコンで設定される設定温度に制御するために必要となる燃焼量に応じて、各燃焼エリアへのガス供給管に設けられた電磁弁を開閉制御して、燃焼能力が最も小さいバーナ群のみが燃焼する1段燃焼から、全てのバーナ群が燃焼する全段制御までの切替制御を行うようになっている。
【0003】
このような切替制御を行う給湯装置においては、燃焼能力の大きいバーナ群から燃焼能力の小さいバーナ群へ切り換える際、火移りさせるために一旦全段燃焼を行ってから燃焼能力の小さいバーナ群のみを燃焼させる制御を行えばオーバーシュートが発生し、逆に一旦全段の燃焼を停止させればアンダーシュートが発生する。そこで、特許文献1の給湯装置では、燃焼能力の小さいバーナ群に変更される場合、要求される出湯量が一定の条件下で減少する場合にのみ一旦全バーナ群の燃焼を停止し、その後に再点火して所定のバーナ群を燃焼させてオーバーシュートを防止する一方、出湯量の減少がなく当該条件を満足しない場合は、全バーナ群の燃焼停止を行わずに何れかのバーナ群の燃焼を維持して通常の火移りを行わせることでアンダーシュートを防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−214760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の給湯装置においては、出湯量の減少の際には一旦全バーナ群の燃焼を停止させてから再点火を行うため、アンダーシュートが発生するおそれがある。また、イグナイタの作動回数が増加するため、耐久性が低下する上、バーナ群の切替の合間に作動音(放電音)が発生してユーザに違和感を生じさせてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、複数のバーナ群の切替制御を行っても、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制できると共に、イグナイタの耐久性や良好な使用感も維持できる給湯装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、互いに数が異なる複数のバーナからなる3つ以上のバーナ群と、給水管と出湯管とが接続されてバーナ群により加熱される熱交換器と、バーナ群の燃焼を制御する制御手段と、を含み、制御手段は、必要な燃焼量に応じて燃焼させるバーナ群を選択して複数の燃焼段階に切り替える切替制御を実行する給湯装置であって、
制御手段は、切替制御の際、所定の燃焼段階で燃焼中のバーナ群から、燃焼していない1つ以上のバーナ群を挟んで所定の燃焼段階よりも燃焼能力が小さい他の燃焼段階のバーナ群へ燃焼を切り替える場合、以下の(1)(2)の切替手順を繰り返すことで他の燃焼段階への切替を行うことを特徴とする。
(1)燃焼中のバーナ群から、隣接するバーナ群へ火移りさせて同時に燃焼させる。
(2)先に燃焼していたバーナ群の燃焼を停止させて、火移りさせたバーナ群のみを単独燃焼させる。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、火移りさせて単独燃焼するバーナ群の燃焼能力が、その前後の切替手順で燃焼するバーナ群の燃焼能力よりも小さい場合、単独燃焼の燃焼時間を、前後の切替手順での燃焼時間よりも長くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、複数のバーナ群の切替制御を行っても、切替制御の間に全てのバーナ群の燃焼や停止を行わないので、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制できる。また、切替制御の際にイグナイタを動作させないので、イグナイタの使用頻度が抑えられ、耐久性や良好な使用感も維持できる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、火移りさせて単独燃焼するバーナ群の燃焼能力が、その前後の切替手順の燃焼能力よりも小さい場合、当該単独燃焼の燃焼時間を、前後の切替手順の燃焼時間よりも長くすることで、オーバーシュートの発生の抑制に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】給湯装置の概略図である。
図2】燃焼段階の切替手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯装置の一例を示す概略図で、給湯装置1は、器具本体内に、給気ファン3を備えた燃焼室2を形成して、燃焼室2の内部に、燃料ガスと給気ファン3からの一次空気との混合ガスを燃焼させる複数(ここでは3ユニット)のバーナ群4A,4B,4Cを備えると共に、バーナ群4A〜4Cの燃焼によって加熱され、給水管6と出湯管7とを接続した熱交換器5を設けている。
バーナ群4A〜4Cは、互いに数が異なる複数のバーナからなり、ここではバーナ群4Aが12本、バーナ群4Bが3本、バーナ群4Cが5本のバーナをそれぞれ備えている。
【0011】
また、バーナ群4A〜4Cへ燃料ガスを供給するガス管8には、元電磁弁9及びガス比例弁10が設けられ、ガス管8から分岐する各バーナ群4A〜4Cへの分岐管8a,8a・・には、切替電磁弁11A〜11Cがそれぞれ設けられて、各弁が制御手段としてのコントローラ12によって制御可能となっている。13はイグナイタ、14は点火電極で、ここでは中央のバーナ群4Bにのみ配置されている。15,15はフレームロッドで、ここではバーナ群4A側に一つ、バーナ群4Bと4Cとの間に一つ配置されている。
【0012】
さらに、給水管6と出湯管7との間には、熱交換器5をバイパスするバイパス管16が接続されて、給水管6におけるバイパス管16との接続位置よりも上流側には、給水管6を流れる水量を検出する水量センサ17と、給水管6の水量を制御する水量サーボ18とが設けられ、バイパス管16との接続位置には、バイパス管16への水量を制御するバイパスサーボ19が設けられて、それぞれコントローラ12に電気的接続されている。一方、出湯管7には、給湯栓20と、出湯管7内の湯の温度を検出するサーミスタ21,22が設けられている。このうちサーミスタ21はバイパス管16よりも下流側に設けられ、サーミスタ22はバイパス管16よりも上流側で燃焼室2からの出口際に設けられるもので、それぞれコントローラ12に電気的接続されている。
【0013】
以上の如く構成された給湯装置1において、給湯栓20を開いて器具内に通水させ、水量センサ17から得られる信号によって器具内を流れる水量が点火水量を超えていることが確認されると、コントローラ12は、給気ファン3を回転させてプリパージを行う。
次に、元電磁弁9と切替電磁弁11A〜11C及びガス比例弁10をそれぞれ開いてバーナ4A〜4Cにガスを供給すると共に、イグナイタ13を作動させてバーナ4A〜4Cの点火制御を行う。バーナ4A〜4Cの点火をフレームロッド15で確認した後、コントローラ12は、サーミスタ21で検出された出湯温度と、リモコン23で設定された設定温度との差に応じて、ガス比例弁10の開度を制御してガス量を連続的に変化させ、出湯温度を設定温度に一致させる出湯温制御を行う。このときコントローラ12は、ガス比例弁10の制御によるガス量の変化に応じて給気ファン3の回転数を変化させて、ガス量と空気量との比率を制御する。
【0014】
この出湯温制御では、コントローラ12は、バーナの数が最小となるバーナ群4Bのみの単独燃焼を1段、次にバーナの数が多いバーナ群4Cのみの単独燃焼を2段、次にバーナの数が多くなるバーナ群4B,4Cの同時燃焼を3段、次にバーナの数が多くなるバーナ群4Aの単独燃焼を4段、バーナの数が最大となるバーナ群4A〜4Cの全燃焼を5段として、必要な燃焼量に応じて燃焼段階を5段階に切り替える切替制御を実行するようになっている。
【0015】
この切替制御において、燃焼能力が大きい燃焼段階から燃焼能力が小さい燃焼段階に移行する際、例えば左端のバーナ群4Aを単独燃焼させる4段から、燃焼していないバーナ群4Bを挟んで右端のバーナ群4Cを単独燃焼させる2段へ燃焼段階を切り替える場合は、図2に示すように以下の(A)〜(E)の切替手順を実行する。
(A)バーナ群4Aを単独燃焼(1段)させる。
(B)切替電磁弁11Bを開弁して隣接するバーナ群4Bへ火移りさせ、バーナ群4A,4Bを同時に燃焼させる。
(C)切替電磁弁11Aを閉弁してバーナ群4Aの燃焼を停止させ、バーナ群4Bのみを単独燃焼(1段)させる。
(D)切替電磁弁11Cを開弁して隣接するバーナ群4Cへ火移りさせ、バーナ群4B,4Cを同時に燃焼(3段)させる。
(E)切替電磁弁11Bを閉弁してバーナ群4Bの燃焼を停止させ、バーナ群4Cのみを単独燃焼(2段)させる。
このうち(B)〜(D)の切替手順では、火移り及び燃焼段階の移行を確実にするために、0.5秒は待機してから次の燃焼段階へ移行する。
【0016】
このように、上記形態の給湯装置1によれば、コントローラ12は、切替制御の際、所定の燃焼段階で燃焼中のバーナ群から、燃焼していない1つ以上のバーナ群を挟んで所定の燃焼段階よりも燃焼能力が小さい他の燃焼段階のバーナ群へ燃焼を切り替える場合、(1)燃焼中のバーナ群(4A,4B)から、隣接するバーナ群(4B,4C)へ火移りさせて同時に燃焼させる切替手順(図2(B)及び(D))と、(2)先に燃焼していたバーナ群(4A,4B)の燃焼を停止させて、火移りさせたバーナ群(4B,4C)のみを単独燃焼させる切替手順(図2(C)及び(E))を繰り返すことで燃焼段階の切替を行うことで、複数のバーナ群4A〜4Cの切替制御を行っても、切替制御の間に全てのバーナ群4A〜4Cの燃焼や停止を行わないので、オーバーシュートやアンダーシュートの発生を抑制できる。また、切替制御の際にイグナイタ13を動作させないので、イグナイタ13の使用頻度が抑えられ、耐久性や良好な使用感も維持できる。
【0017】
なお、上記形態の切替制御の際、切替手順(C)の1段燃焼は、その前後の切替手順(B)(D)よりも燃焼時間を長くして1秒程度は維持するのが望ましい。切替手順(B)(D)は、最後の2段よりも燃焼能力が大きく、オーバーシュートが起きるおそれがあるためで、このようにバーナ群4Bの単独燃焼の燃焼時間を、前後の切替手順の燃焼時間よりも長くすれば、オーバーシュートの発生の抑制に繋がる。
【0018】
また、各バーナ群のバーナの数は上記形態に限らず、適宜増減して差し支えない。さらに、バーナ群の数も3つに限らず、4つ以上であっても同様の切替制御は可能である。この場合、最初の燃焼段階のバーナ群と最後の燃焼段階のバーナ群との間に燃焼しないバーナ群が複数あれば、同様に隣接するバーナ群へ火移りさせて同時燃焼させる(1)の切替手順と、火移りさせた後のバーナ群のみを単独燃焼させる(2)の切替手順とを繰り返せばよい。この場合も切替途中で燃焼能力が最小となる燃焼段階では、他の段階よりも長い所定時間の待機を実行してオーバーシュートの発生を抑制するのが望ましい。
勿論両端のバーナ群間での火移りに限らず、間に燃焼していないバーナ群を挟んだ火移りであれば同様の手順で行えるし、バーナ群の配置によっては上記形態とは火移りの方向が異なる(左右逆や前後)場合でも差し支えない。
【0019】
その他、上記形態では、給水管と出湯管との間にバイパス管を接続したバイパスミキシング式の給湯装置で説明しているが、バイパス管のない給湯装置であっても本発明は適用可能である。同様に、出湯管が分岐して浴槽に接続されて風呂熱交換器と浴槽との間に湯水の循環回路が形成される風呂付きの給湯装置や、潜熱を回収する二次熱交換器を併設する給湯装置であっても本発明の適用は妨げない。
【符号の説明】
【0020】
1・・給湯装置、2・・燃焼室、3・・給気ファン、4A〜4C・・バーナ群、5・・熱交換器、6・・給水管、7・・出湯管、8・・ガス管、9・・元電磁弁、10・・ガス比例弁、11A〜11C・・切替電磁弁、12・・コントローラ、13・・イグナイタ、14・・点火電極、15・・フレームロッド、16・・バイパス管、20・・給湯栓、21、22・・サーミスタ、23・・リモコン。
図1
図2