(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  回転自在に支持された回転軸の軸端に設けられる超音波モータであって、該超音波モータの出力軸が前記回転軸に連結され、前記出力軸にステータが回転自在に設けられ、前記回転軸にロータが固着され、該ロータ、前記ステータのいずれか一方に超音波振動を発生させる振動発生部が設けられ、超音波振動により前記ロータと前記ステータが相対回転する様構成され、該ステータと前記回転軸を支持する固定側との間に回止めユニットが設けられ、該回止めユニットは、前記固定側に設けられたジョイントホルダと前記ステータに設けられた連結子とを有し、前記ジョイントホルダは金属球を圧縮スプリングによって前記連結子へ周方向に押圧させる球ホルダと、該球ホルダとの間に前記連結子を挾持し、前記ジョイントホルダ間に掛渡り傾動可能に設けられた連結ピンとを有し、前記連結子の回転方向の変位を拘束すると共に前記ジョイントホルダと前記連結子との半径方向の変位を前記連結ピンの傾動により吸収する様に構成され、
前記ロータが駆動円板を有し、該駆動円板の外周部にはリング状の前記振動発生部が設けられ、前記ステータが中間円板と固定円板とを有し、前記中間円板は前記振動発生部に摩擦トルクT1を介して密着し、前記固定円板は前記中間円板に前記摩擦トルクT1より小さい摩擦トルクT2を介して密着し、前記固定円板に前記回止めユニットが設けられた超音波モータ。
  回転自在に支持された回転軸の軸端に設けられる超音波モータであって、該超音波モータの出力軸が前記回転軸に連結され、前記出力軸にステータが回転自在に設けられ、前記回転軸にロータが固着され、該ロータ、前記ステータのいずれか一方に超音波振動を発生させる振動発生部が設けられ、超音波振動により前記ロータと前記ステータが相対回転する様構成され、該ステータと前記回転軸を支持する固定側との間に回止めユニットが設けられ、該回止めユニットは、前記固定側に設けられたジョイントホルダと前記ステータに設けられた連結子とを有し、前記ジョイントホルダは金属球を圧縮スプリングによって前記連結子へ周方向に押圧させる球ホルダと、該球ホルダとの間に前記連結子を挾持し、前記ジョイントホルダ間に掛渡り傾動可能に設けられた連結ピンとを有し、前記連結子の回転方向の変位を拘束すると共に前記ジョイントホルダと前記連結子との半径方向の変位を前記連結ピンの傾動により吸収する様に構成され、
前記ロータは中間円板を有し、該中間円板が前記出力軸に摩擦トルクT2を介して密着し、前記ステータは駆動円板と、該駆動円板に固定された固定円板とを有し、前記駆動円板は外周部にリング状の前記振動発生部を有し、該振動発生部が前記摩擦トルクT2より大きい摩擦トルクT1を介して前記中間円板に密着し、前記固定円板に前記回止めユニットが設けられた超音波モータ。
  整準部に水平軸を介して水平回転可能に設けられた托架部と、該托架部に鉛直軸を介して鉛直方向に回転可能に設けられた望遠鏡部とを具備する測量装置であって、前記水平軸、前記鉛直軸の少なくとも一方に請求項1又は請求項2に記載の超音波モータが設けられた測量装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
  以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
 
【0015】
  図1は、本実施例に係る測量装置1を示す全体図であり、
図1中、2は整準部、3は測量装置本体を示している。
 
【0016】
  該測量装置本体3は前記整準部2に設置され、前記測量装置本体3は、前記整準部2により水平状態に整準される様になっている。
 
【0017】
  前記測量装置本体3は、托架部4、水平回転駆動部5、望遠鏡部6を有し、前記水平回転駆動部5は、前記托架部4の下端部に位置し、前記整準部2に取付けられ、又前記托架部4を水平回転可能に支持する。
 
【0018】
  該托架部4には前記望遠鏡部6が水平軸心7を中心に回転可能に設けられている。前記望遠鏡部6は、測距部(図示せず)を内蔵し、該測距部からは変調されたレーザ光線、或はパルス光を測距光として測定対象物(図示せず)に向けて射出し、該測定対象物からの反射光を受光して測距を行う。
 
【0019】
  又、前記托架部4の水平回転角、前記望遠鏡部6の鉛直回転角は、それぞれ水平角エンコーダ(図示せず)、鉛直角エンコーダ(図示せず)によって検出される。
 
【0020】
  測距結果、検出された水平角、検出された鉛直角に基づき、測定点或は測定対象物の3次元データが測定される。
 
【0021】
  次に、
図2を参照して、前記水平回転駆動部5について詳述する。
 
【0022】
  モータケーシング11は、所要の剛性、強度を有し、上ケース12、下ケース13により液密に構成されている。前記モータケーシング11の内部には超音波駆動による水平モータ(超音波モータ)14が収納されている。前記下ケース13は、前記整準部2に取付けられる。ここで、前記モータケーシング11は、前記水平モータ14を収納するケースとして機能すると共に前記托架部4を支持する構造部材としても機能する。
 
【0023】
  前記上ケース12の上面には上方に延出する軸受ブロック15が設けられ、該軸受ブロック15を上下に貫通する水平軸17が回転自在に設けられている。該水平軸17の上端にはフランジ18が形成され、該フランジ18には前記托架部4が固着されている。
 
【0024】
  前記フランジ18と前記軸受ブロック15の上端間には、スラスト軸受16が設けられ、該スラスト軸受16により前記測量装置本体3の垂直荷重が支持されている。
 
【0025】
  前記水平軸17の下端には連結フランジ19が固着されている。更に、該連結フランジ19に前記水平モータ14がボルト21により、固着されている。更に、前記水平モータ14は、前記ボルト21を外すことで、前記連結フランジ19(即ち、前記水平軸17)から取外すことが可能である。
 
【0026】
  更に、前記水平モータ14について説明する。
 
【0027】
  前記水平モータ14の出力軸22の上端に出力フランジ23が形成される。該出力フランジ23の下面に駆動円板24が固着される。該駆動円板24の直径は、前記出力フランジ23より大きくなっており、前記出力フランジ23から張出した、前記駆動円板24の外周部にはリング状の振動発生部25が設けられる。
 
【0028】
  該振動発生部25の下面には全周に櫛歯が形成されている。前記振動発生部25の上面には、前記駆動円板24と同心に薄板リング状の圧電セラミック(圧電素子)26が密着固定されている。
 
【0029】
  前記駆動円板24の下側に中間円板27が設けられる。該中間円板27は、前記出力軸22に回転可能に設けられ、又前記中間円板27は軸心方向に変位可能となっている。該中間円板27の外周部にはリング状のリブ27aが形成され、該リブ27aは第1摩擦シート28を介して前記振動発生部25の下面に密着する。
 
【0030】
  前記出力軸22に軸受31を介して固定円板32が回転自在に嵌合され、更に該固定円板32は軸心方向に変位可能となっている。該固定円板32と前記中間円板27との間には第2摩擦シート33が介設される。
 
【0031】
  前記出力軸22の下端部には固定ナット34が螺着され、該固定ナット34と前記軸受31との間には、圧縮スプリング35が設けられている。該圧縮スプリング35は前記振動発生部25と前記リブ27aとの間、及び前記中間円板27と前記固定円板32との間に所要の押圧力を発生させる様、圧縮状態で設けられる。
 
【0032】
  又、前記圧縮スプリング35によって付与さる押圧力により、前記振動発生部25と前記中間円板27との間に発生する摩擦トルクT1と、前記中間円板27と前記固定円板32との間に発生する摩擦トルクT2との関係は、T1>T2となっており、更にT2は、正常運転時に前記水平モータ14に要求される駆動トルクよりは、大きくなっている。
 
【0033】
  前記托架部4内部に備えられた電源部(図示せず)から前記圧電セラミック26に給電されることで、前記櫛歯が超音波振動し、前記リブ27aと前記振動発生部25間で相対回転が発生する様になっている。
 
【0034】
  又、前記中間円板27と前記固定円板32間には摩擦力が作用し、前記中間円板27と前記固定円板32は前記出力軸22に対して回転可能であるので、前記中間円板27と前記固定円板32とは一体に回転する。更に、後述する様に、該固定円板32と前記下ケース13(即ち固定部)との間には回止めユニット45が設けられ、前記固定円板32の回転が拘束される。
 
【0035】
  従って、前記中間円板27と前記固定円板32はステータとして機能し、前記出力軸22(即ち、前記出力フランジ23)はロータとして機能し、前記圧電セラミック26に給電し、給電を制御することで、前記出力フランジ23が所要の方向、所要の回転速度で回転する。
 
【0036】
  該出力フランジ23は、前記水平モータ14の出力端として機能すると共に該水平モータ14を前記水平軸17に、連結する為の継手としての機能を有する。又、前記出力フランジ23と前記連結フランジ19とが連結されると、前記水平モータ14は前記水平軸17の下端に取付けられ、該水平軸17に支持された状態となる。
 
【0037】
  次に、
図3を参照して、前記回止めユニット45について説明する。
 
【0038】
  上記した様に、前記水平モータ14は前記水平軸17の下端に取付けられ、前記出力フランジ23と前記中間円板27、前記固定円板32との間で相対回転は可能であるが、前記出力軸22から回転力を得る為には、前記中間円板27、前記固定円板32を固定する必要がある。
 
【0039】
  前記回止めユニット45は、前記固定円板32と前記モータケーシング11(
図2中の図示では、前記上ケース12)とを連結し、前記固定円板32の回転を拘束する。
 
【0040】
  前記回止めユニット45はジョイントホルダ47を有し、該ジョイントホルダ47は前記モータケーシング11にボルト48によって取付けられる。前記ジョイントホルダ47は、機械加工、或はダイキャスト等で製作され、所要の剛性、強度を有する。
 
【0041】
  又、前記ジョイントホルダ47には、前記モータケーシング11の接線方向(前記出力軸22の軸心を中心とする円の接線方向)に延びる凹部49が形成され、該凹部49は外周側に位置するL字状の縁部50と、前記凹部49の基側(
図3中下側)に位置する厚肉の基部51によって3方が囲われ、中心側が開放されている。
 
【0042】
  前記凹部49には外形がL形状の球ホルダ52がボルト53により一箇所で固定されている。又、前記球ホルダ52は前記縁部50に当接している。又、前記球ホルダ52は押しネジ54によって位置の調整が可能となっている。
 
【0043】
  前記球ホルダ52には接線方向の軸心を有する円筒穴55が穿設され、該円筒穴55に圧縮スプリング56が圧縮状態で収納されている。又、該圧縮スプリング56の先端には金属球好ましくは、鋼球57が設けられている。
 
【0044】
  前記基部51には、前記円筒穴55と同心となる様にピン収納穴58が穿設され、該ピン収納穴58の穴底は、円錐となっている。該ピン収納穴58には連結ピン65が挿入される。該連結ピン65の両端は、球形状に形成されている。
 
【0045】
  前記ピン収納穴58の直径は、前記連結ピン65の直径に対して大きくなっており、該連結ピン65は基端が前記円錐に嵌合した状態で、基端を中心に傾動可能となっている。
 
【0046】
  前記固定円板32に、連結板61がボルト62により固定されている。該連結板61は、機械加工、或はダイキャスト等で製作され、所要の剛性、強度を有する。
 
【0047】
  前記連結板61には、先端に連結子61aが突設されており、該連結子61aは、前記球ホルダ52と前記基部51との間に挿入される。
 
【0048】
  又、前記連結子61aには、前記ピン収納穴58と同心となる様に、ピン受け穴63が穿設されている。該ピン受け穴63の穴底は、円錐となっている。
 
【0049】
  該ピン受け穴63には前記連結ピン65の先端部が挿入され、該連結ピン65は前記ピン収納穴58と前記ピン受け穴63間に掛渡って設けられる。
 
【0050】
  前記連結子61aの前記ピン受け穴63とは反対側の面に、前記鋼球57が当接する。
 
【0051】
  該鋼球57の当接面には、前記圧縮スプリング56による押圧力が接線方向(周方向)に作用し、前記ピン受け穴63の穴底には前記連結ピン65からの押圧反力が作用する。又、前記圧縮スプリング56の反作用で、前記球ホルダ52は反時計方向(
図3中)の回転力が与えられ、前記球ホルダ52は前記縁部50に密着し、姿勢が固定される。
 
【0052】
  従って、前記連結板61の周方向の位置は、前記連結ピン65を介し、前記基部51によって決定される。更に、前記連結板61が前記ジョイントホルダ47に対して半径方向に変位した場合、前記鋼球57が前記連結板61に対して滑り、又前記連結ピン65が傾斜し、前記連結板61の変位が吸収される。
 
【0053】
  而して、前記回止めユニット45は、前記固定円板32の回転を拘束すると共に前記水平軸17に対して前記出力軸22が偏心していた場合、偏心による回転ブレを吸収する。
 
【0054】
  以下、前記水平モータ14による水平回転駆動について説明する。
 
【0055】
  前記圧電セラミック26に電圧を印加すると、前記櫛歯が超音波振動して前記中間円板27と前記駆動円板24間で相対回転する。
 
【0056】
  前記中間円板27は、前記固定円板32、前記回止めユニット45を介して前記モータケーシング11に固定されているので、前記出力軸22即ち前記出力フランジ23が回転する。
 
【0057】
  前記出力軸22の回転力は、前記出力フランジ23を介して前記水平軸17に伝達され、前記托架部4が水平回転する。
 
【0058】
  前記連結フランジ19への前記出力フランジ23の取付けで、誤差が発生し、前記水平軸17に対して前記出力軸22が偏心した場合も、上記した様に偏心は前記回止めユニット45によって吸収され、偏心が前記水平軸17の回転に影響しない。又、前記水平モータ14自体が芯ブレを有していたとしても、前記回止めユニット45に吸収され、前記水平モータ14自体の誤差が、前記水平軸17の回転精度に影響を与えない。
 
【0059】
  即ち、本実施例によれば、前記水平軸17に対して前記水平モータ14の取付けを高精度に行う必要がない。
 
【0060】
  更に、該水平モータ14と前記水平軸17とを直接連結しているので、動力伝達経路にバックラッシ等が介在せず、高精度に動力伝達が可能であると共に、経時的な精度の劣化が生じない。
 
【0061】
  次に、前記水平モータ14の駆動中に、前記出力軸22に過大な負荷が発生した場合、例えば、前記測量装置本体3が異物と干渉し、該測量装置本体3の回転が拘束された場合、前記駆動円板24と前記中間円板27間の摩擦トルクT1より前記中間円板27と前記固定円板32間の摩擦トルクT2を小さく設定しているので、前記中間円板27と前記固定円板32間でスリップを生じ、前記中間円板27のみが回転する。即ち、前記水平モータ14自体が、過負荷に対する安全機能を具備している。
 
【0062】
  従って、該水平モータ14に過大な負荷が掛り、該水平モータ14が損傷することが防止される。尚、前記測量装置本体3が拘束されたことは、前記水平角エンコーダ(図示せず)によって検出され、前記水平モータ14の駆動が停止される。
 
【0063】
  又、前記測量装置1が休止状態でも、前記水平モータ14が持つ摩擦トルクにより前記測量装置本体3の停止状態が維持され、前記中間円板27と前記固定円板32間の摩擦トルクT2以上の回転力を与えることで、前記托架部4を所要の方向に回転させることができる。
 
【0064】
  図4を参照して他の実施例を説明する。
 
【0065】
  尚、
図4中、
図2中で示したものと同等のものには同符号を付し説明を省略する。
 
【0066】
  上記実施例の水平モータ14(超音波モータ)では、駆動円板24(振動発生部25)と出力軸22とが一体に回転する様構成されている。他の実施例では前記駆動円板24が
固定され、中間円板27が出力フランジ23(前記出力軸22)と一体に回転する様になっている。
 
【0067】
  前記出力フランジ23の下側に前記中間円板27が設けられ、該中間円板27と前記出力フランジ23との間に第2摩擦シート33が介設されている。
 
【0068】
  前記中間円板27の下側に前記駆動円板24が設けられ、更に該駆動円板24の下側に固定円板32が設けられる。前記振動発生部25と前記固定円板32との間には圧電セラミック26が介設されている。
 
【0069】
  該圧電セラミック26に給電されることで、前記振動発生部25が超音波振動し、該振動発生部25と前記中間円板27間で相対回転が発生する。
 
【0070】
  又、前記駆動円板24と前記中間円板27間に発生する摩擦トルクT1より前記中間円板27と前記出力フランジ23間に発生する摩擦トルクT2が小さく設定されている。
 
【0071】
  前記固定円板32と前記モータケーシング11間に回止めユニット45が設けられ、前記固定円板32の回転が拘束される。尚、前記回止めユニット45は、上記したと同様であるので説明を省略する。
 
【0072】
  本他の実施例では、前記駆動円板24と前記固定円板32がステータとして機能し、前記中間円板27、前記出力フランジ23がロータとして機能する。
 
【0073】
  次に、前記圧電セラミック26に電圧が印加されると、前記駆動円板24と前記中間円板27間で相対回転が発生する。前記振動発生部25は前記固定円板32を介し、前記回止めユニット45により前記モータケーシング11に固定されているので、前記出力軸22が回転する。
 
【0074】
  又、前記水平モータ14に過負荷が生じた場合、水平軸17の回転が拘束された場合、前記出力フランジ23と前記中間円板27間で滑りを生じ、前記水平モータ14が破損することが防止される。
 
【0075】
  尚、上記実施例では、前記水平モータ14を回転軸(前記水平軸17)の下端に設けたが、上端にも同様に設けることができることは言う迄もない。又、望遠鏡部6を水平軸心7を中心に回転するモータとして、前記超音波モータ(前記水平モータ14)を設けることも可能である。
 
【0076】
  更に、前記回止めユニット45は、上記実施例以外にも、偏心しつつ相対回転する種々の機器の回転止に実施可能であることは言う迄もない。