特許第6650809号(P6650809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650809
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】クリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   G03G21/00 318
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-68622(P2016-68622)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-181774(P2017-181774A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 安紀
(72)【発明者】
【氏名】竹山 可大
(72)【発明者】
【氏名】荒田 利彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 新平
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 里志
【審査官】 三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−076970(JP,A)
【文献】 特開2015−084078(JP,A)
【文献】 特開2011−186308(JP,A)
【文献】 特開2014−203019(JP,A)
【文献】 特開平06−161325(JP,A)
【文献】 特開2008−170655(JP,A)
【文献】 特開2013−190642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真機器内の相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるクリーニングブレードであって、
上記相手部材と摺接させるためのエッジ部を有するブレード部を備え、
上記エッジ部は、上記ブレード部の基材と、基材表面から基材内側にわたって存在する内層と、基材表面から基材外側にわたって存在する外層とを有しており、
上記内層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つと、ポリウレタンゴムとを含み、かつ、厚みが1μm未満であり、
上記外層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが0.02μm以下であり、
上記内層は、上記基材内に含浸した表面処理液の硬化物よりなり、
上記外層は、上記基材表面に付着した表面処理液の硬化物よりなる、クリーニングブレード。
【請求項2】
上記内層の厚みは、0.5μm以下である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
上記外層は、上記外層の厚みよりも大きい粒子を多数有している、請求項1または2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
上記粒子の粒子径は、10nm以上300nm以下である、請求項に記載のクリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真機器では、感光体等の像担持体や中間転写ベルトなどの相手部材の表面をクリーニングするため、クリーニングブレードが用いられている。クリーニングブレードは、相手部材と摺接させるためのエッジ部を有するブレード部を備えている。ブレード部のエッジ部が相手部材の表面に押し付けられることにより、表面移動する相手部材表面の残留トナーが掻き取られる。
【0003】
この種のクリーニングブレードとしては、例えば、ブレード部にイソシアネートなどの硬化成分を数十μm〜数百μm程度含浸させた後、硬化させることによって形成した含浸層を有するクリーニングブレードが知られている。また、ブレード部の表面に表面層が形成されたクリーニングブレードも知られている。
【0004】
なお、先行する特許文献1には、弾性体ブレードの基材、基材とアクリル又は/及びメタクリル樹脂との膜厚1.0μm以上の混合層、アクリル又は/及びメタクリル樹脂を含む膜厚0.1μm以上の表面層からなる積層構成を有する先端稜線部を備えたクリーニングブレードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−190642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子写真機器では、高画質化のため、小径で球形度の高い重合トナーが使用されている。そのため、相手部材表面とブレード部のエッジ部との間に生じた僅かな隙間を通じてトナーがすり抜けやすくなっている。トナーのすり抜けを防止するため、クリーニングブレードの相手部材に対する当接圧を高めると、ブレード部のめくれが発生する。
【0007】
また、ブレード部における含浸層の厚みが厚くなると、エッジ部が硬くなり過ぎ、耐久時にエッジ部の欠けが発生する。エッジ部に欠けが発生すると、当該欠け部分でトナーのすり抜けが生じるため、クリーニング性が低下する。
【0008】
また、ブレード部における表面層は、クリーニングブレードのめくれ対策として有効である。しかしながら、表面層の厚みが厚くなると、ブレード部のゴム弾性が阻害され、相手部材に対する追従性が低下する。相手部材に対する追従性が低下すると、相手部材表面とブレード部のエッジ部との間に隙間が生じ、当該隙間でトナーのすり抜けが生じるため、クリーニング性が低下する。
【0009】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、ブレード部のめくれと、エッジ部の欠けおよび相手部材に対する追従性の低下によるクリーニング性の低下とを抑制可能なクリーニングブレードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、電子写真機器内の相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるクリーニングブレードであって、
上記相手部材と摺接させるためのエッジ部を有するブレード部を備え、
上記エッジ部は、上記ブレード部の基材と、基材表面から基材内側にわたって存在する内層と、基材表面から基材外側にわたって存在する外層とを有しており、
上記内層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つと、ポリウレタンゴムとを含み、かつ、厚みが1μm未満であり、
上記外層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが0.02μm以下であり、
上記内層は、上記基材内に含浸した表面処理液の硬化物よりなり、
上記外層は、上記基材表面に付着した表面処理液の硬化物よりなる、クリーニングブレード。
にある。
【発明の効果】
【0011】
上記クリーニングブレードは、エッジ部の内層が、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが1μm未満である。そのため、上記クリーニングブレードは、内層によってエッジ部が硬くなり過ぎず、耐久時にエッジ部の欠けが生じ難い。そのため、上記クリーニングブレードは、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下を抑制することができる。
【0012】
また、上記クリーニングブレードは、エッジ部の外層が、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが0.02μm以下である。そのため、上記クリーニングブレードは、外層によってブレード部のゴム弾性が阻害されず、相手部材に対する追従性を維持することができる。そのため、上記クリーニングブレードは、相手部材に対する追従性の低下によるクリーニング性の低下を抑制することができる。また、上記クリーニングブレードは、エッジ部の外層によってエッジ部表面が低摩擦化されるので、ブレード部のめくれも抑制することができる。
【0013】
さらに、上記クリーニングブレードは、上記構成のエッジ部を有している。そのため、上記クリーニングブレードは、エッジ部の硬度変化が生じ難く、エッジ部の表面硬さバラツキを小さくすることが可能となり、硬さ安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1のクリーニングブレードの使用状態を模式的に示した説明図である。
図2】実施例1のクリーニングブレードの斜視図である。
図3図2におけるIII−III線断面の一部を拡大して模式的に示した図である。
図4】実施例2のクリーニングブレードにおけるエッジ部の断面の一部を拡大して模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記クリーニングブレードは、電子写真機器内の相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるものである。電子写真機器としては、具体的には、帯電像を用いる電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、オンデマンド印刷機等の画像形成装置などを例示することができる。また、相手部材としては、感光ドラム等の像担持体や中間転写ベルト、帯電ロールなどを例示することができる。なお、中間転写ベルトは、像担持体に担持されたトナー像を当該ベルトに一次転写した後、このトナー像を当該ベルトから用紙等の転写材へ二次転写するためのものである。
【0016】
上記クリーニングブレードは、相手部材と摺接させるためのエッジ部を有するブレード部を備えている。ブレード部は、例えば、板状の形状を呈することができる。エッジ部は、具体的には、第1ブレード面と第1ブレード面に隣接する第2ブレード面との交わりより構成される稜線を含むことができる。上記クリーニングブレードは、より具体的には、エッジ部の稜線を相手部材と当接させて使用することができる。
【0017】
エッジ部は、ブレード部の基材と、内層と、外層とを有している。ブレード部の基材は、ゴム弾性材料より構成することができる。ゴム弾性材料としては、例えば、ポリウレタンゴムなどを例示することができる。
【0018】
内層は、基材表面から基材内側にわたって存在している。内層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが1μm未満である。内層は、具体的には、ブレード部の基材と、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つとを含む構成とすることができる。なお、アクリル樹脂、メタクリル樹脂は、ブレード部の基材と混合されていてもよいし、ブレード部の基材と架橋していてもよい。
【0019】
内層の厚みが1μm以上になると、厚い内層によってエッジ部が硬くなり過ぎ、耐久時にエッジ部の欠けが生じやすくなる。そのため、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下を招く。内層の厚みは、耐久時におけるエッジ部の欠けが抑制しやすくなる観点から、好ましくは、0.8μm以下、より好ましくは、0.7μm以下、さらに好ましくは、0.6μm以下、さらにより好ましくは、0.5μm以下とすることができる。なお、内層の厚みは、内層の形成性、耐久性などの観点から、好ましくは、0.05μm以上とすることができる。
【0020】
外層は、基材表面から基材外側にわたって存在している。外層は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが0.02μm以下である。外層は、具体的には、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つより構成することができる。
【0021】
外層の厚みが0.02μmより大きくなると、厚い外層によってブレード部のゴム弾性が阻害され、相手部材に対する追従性を維持することが困難になる。そのため、相手部材に対する追従性の低下によるクリーニング性の低下を招く。なお、外層の厚みは、特に限定されないが、外層の形成性などの観点から、好ましくは、0.005μm以上とすることができる。
【0022】
なお、内層の厚みおよび外層の厚みは、次のように測定される値である。ブレード部の断面を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用い、暗視野像(DF像:Dark Field image)にて観察する。エッジ部の稜線より10μm、20μm、30μm、40μm、50μmの各位置にて、内層の断面厚みを測定する。得られた各測定位置における内層の断面厚みの平均値が、内層の厚みとされる。同様に、エッジ部の稜線より10μm、20μm、30μm、40μm、50μmの各位置にて、外層の断面厚みを測定する。得られた各測定位置における外層の断面厚みの平均値が、外層の厚みとされる。なお、ブレード部の基材がポリウレタンゴムである場合には、10%リンタングステン酸水溶液にてブレード部の断面を10分間染色し、基材表面より内側のほとんど染色されていない部分を内層とすることができる。この場合、内層にも基材のポリウレタンゴムが含まれるが、内層にはアクリル樹脂またはメタクリル樹脂が含まれている。そのため、内層よりも内側の部分と内層との染色に差が生じるためである。
【0023】
外層は、外層の厚みよりも大きい粒子を多数有する構成とすることができる。この場合には、外層表面に粒子による突起が多数形成され、多数の突起で相手部材と点接触させることができる。そのため、この場合には、エッジ部の動摩擦係数が小さくなり、長期にわたってブレード部のめくれを抑制しやすいクリーニングブレードが得られる。また、この場合には、相手部材との当接圧を高めても、粒子による突起によりエッジ部と相手部材との接地面積を小さくしやすい。そのため、この場合には、トナーのすり抜け抑制にも有利である。
【0024】
粒子の材質としては、相手部材の損傷抑制、外層への分散性などの観点から、例えば、シリカ、各種樹脂などを例示することができる。上記樹脂としては、具体的には、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などを例示することができる。外層が粒子を有する場合、異なる材質の粒子を1種または2種以上併用することができる。
【0025】
粒子の粒子径は、具体的には、10nm以上300nm以下とすることができる。この場合には、上述した効果を確実なものとすることができる。粒子の粒子径は、粗さ形成性などの観点から、好ましくは、12nm以上、より好ましくは、15nm以上、さらに好ましくは、20nm以上、さらにより好ましくは、25nm以上とすることができる。また、粒子の粒子径は、クリーニング性などの観点から、好ましくは、280nm以下、より好ましくは、250nm以下、さらに好ましくは、230nm以下、さらにより好ましくは、200nm以下とすることができる。
【0026】
なお、粒子の粒子径は、次のように測定される値である。ブレード部の断面を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用い、暗視野像(DF像)にて観察する。この際、加速電圧は、200kVとすることができる。エッジ部の稜線より10μmの位置〜50μmの位置までの間に配置されている任意の粒子を5つ選択し、それら各粒子の直径を測定する。得られた各直径の平均値が、粒子の粒子径とされる。
【0027】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例のクリーニングブレードについて、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1のクリーニングブレードについて、図1図3を用いて説明する。図1図3に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、電子写真機器内の相手部材9の表面に残留する残留トナー(不図示、トナーのみならず、トナー外添剤も含む)を除去するために用いられるものである。本例では、相手部材9は、具体的には、感光ドラムである。なお、感光ドラムは、図1に示される矢印Yの方向に回転する。
【0030】
クリーニングブレード1は、相手部材9と摺接させるためのエッジ部3を有するブレード部2を備えている。本例では、ブレード部2の基材は、具体的には、ポリウレタンゴムである。ポリウレタンゴムは、非発泡体である。また、各図では、ブレード部2は、板状の形状を呈する例が示されている。本例では、クリーニングブレード1は、具体的には、板状部41と板状部41と一体的に繋がる取付部42とを有する支持体4をさらに備えている。ブレード部2は、支持体4における板状部41の一方の板面に接着されている。なお、図示はしないが、クリーニングブレード1は、支持体4における板状部41の先端部が、ブレード部2の内部に埋設されていてもよい。
【0031】
図3に示されるように、エッジ部3は、ブレード部2の基材20と、基材20表面から基材20内側にわたって存在する内層31と、基材20表面から基材20外側にわたって存在する外層32とを有している。
【0032】
内層31は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが1μm未満である。また、外層32は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが0.02μm以下である。
【0033】
本例では、エッジ部3は、第1ブレード面21と第2ブレード面22との交わりより構成される稜線23を含んでいる。なお、第1ブレード面21および第2ブレード面22は、いずれも、使用時に相手部材9側に向くように配置される。そして、上述した内層31および外層32は、具体的には、稜線23から少なくとも50μmの範囲内に存在している。
【0034】
(実施例2)
実施例2のクリーニングブレードについて、図4を用いて説明する。図4に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、外層32が、外層32の厚みよりも大きい粒子320を多数有している。したがって、外層32の表面には、外層32によって保持された粒子320による突起が複数形成されている。本例では、粒子320の粒子径は、具体的には、10nm以上300nm以下とされている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0035】
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0036】
(実験例1)
<ウレタンゴム組成物の調製>
80℃にて1時間、真空脱泡したポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):44質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」):56質量部とを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを含む主剤液を調製した。なお、主剤液中のNCO%(質量%)は、17.0%である。
【0037】
また、ポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):87質量部と、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)とトリメチロールプロパン(広栄パーストープ社製)とが重量比6:4にて混合されてなる低分子量ポリオール:13質量部と、触媒としてのトリエチレンジアミン(東ソー社製):0.01質量部とを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、水酸基価(OHV)が210(KOHmg/g)の硬化剤液を調製した。
【0038】
次いで、上記調製した主剤液と硬化剤液とを、主剤液100質量部に対して硬化剤液94質量部の配合割合にて、真空雰囲気下、60℃で3分間混合し、十分に脱泡した。これによりウレタンゴム組成物を調製した。
【0039】
<表面処理液の調製>
アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM305」)100質量部と、ラジカル系光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア1173」)5質量部と、メチルエチルケトン420質量部とを混合することにより、表面処理液I−1を調製した。
また、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを945質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−2を調製した
た、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを157.5質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−4を調製した。
また、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを5145質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−5を調製した。
【0040】
また、アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM305」)100質量部と、ラジカル系光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア1173」5質量部と、粒子(信越化学工業社製、「QSG−30」、材質:シリカ、粒子径:30nm)5質量部と、メチルエチルケトン420質量部とを混合することにより、表面処理液IIを調製した。
また、表面処理液IIの調製において、粒子(信越化学工業社製、「QCB−100」、材質:シリカ、粒子径:200nm)を用いた以外は同様にして、表面処理液IIIを調製した。
【0041】
<試料1〜試料、試料1C、試料2Cのクリーニングブレードの作製>
上型と下型とから構成される金型を準備した。金型は、上型と下型とを接近させて型締めすることにより、略長尺板状のブレード部二つ分の大きさを有するキャビティが内部に形成される。このキャビティには、対向する二つの収容部が設けられている。これら各収容部には、断面L字状に折り曲げ形成された金属製の長尺板材(板厚2mm)からなる金属製の支持体の板状部がそれぞれ配置できるように構成されている。
【0042】
次いで、支持体における板状部の一方の板面に、エポキシ系の接着剤(東亞合成社製、「アロンマイティAS−60」)を塗布した。
【0043】
次いで、上記金型の各収容部に接着剤が塗布された支持体をそれぞれセットし、型締めした後、キャビティ内に所定のウレタンゴム組成物を注入し、130℃で10分間加熱することによりウレタンゴム組成物を硬化させた。その後、成形体を金型から取り出し、所定の大きさとなるように二つに切断した。これにより、図2に示されるように、支持体における板状部の一方の板面に、ポリウレタンゴムを基材とする板状のブレード部(厚み2mm)を形成した。なお、ブレード部と支持体との接着幅は、2mmとした。
【0044】
次いで、ブレード部の稜線を、後述の表1に示す所定の表面処理液I−1〜I−4の液面に対面させ、ブレード部を稜線部分から表面処理液に浸漬させた。なお、表面処理液の浸漬時間は、後述の表1に示す通りとした。その後、表面処理液からブレード部を分離し、表面処理液を拭き取ることなく、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、「UB031−2A/BM」)を用いて、紫外線照射装置の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とブレード部の稜線との距離200mm、紫外線強度100mW/cm、照射時間30秒という照射条件にて紫外線を照射することにより、表面処理液を硬化させた。これにより、ブレード部のエッジ部に、アクリル樹脂と基材のポリウレタンゴムとで構成された内層を形成するとともに、アクリル樹脂より構成された外層を形成した。以上により、試料1〜試料、試料1C、試料2Cのクリーニングブレードを得た。なお、内層の厚み、外層の厚みは、後述の表1に示されるように、表面処理液の種類、表面処理液の固形分、表面処理液への浸漬時間を変化させることによって調節した。また、表1の内層の厚み、外層の厚みを、上述した測定方法により測定した。なお、当該測定では、上述した10%リンタングステン酸水溶液によりブレード部断面を染色した。
【0045】
<試料5のクリーニングブレードの作製>
試料1のクリーニングブレードの作製において、表面処理液I−1への浸漬後、エッジ部の基材表面に付着した表面処理液I−1を拭き取った後、さらに、表面処理液1−5に浸漬させた。その後は、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料5のクリーニングブレードを作製した。
【0046】
<試料6、試料7のクリーニングブレードの作製>
表面処理液Iに代えて表面処理液IIを用い、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料6のクリーニングブレードを作製した。また、表面処理液Iに代えて表面処理液IIIを用い、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料7のクリーニングブレードを作製した。なお、試料6、試料7のクリーニングブレードでは、外層に、当該外層の厚みよりも大きい所定の粒子が多数保持されており、外層表面に粒子による突起が多数形成されていた。また、粒子の粒子径を、上述した測定方法により測定した。
【0047】
<試料3Cのクリーニングブレードの作製>
試料1のクリーニングブレードの作製において、表面処理液への浸漬後、エッジ部の基材表面に付着した表面処理液を拭き取った。その後は、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料3Cのクリーニングブレードを作製した。
【0048】
<試料4Cのクリーニングブレードの作製>
ブレード部を表面処理液に全く浸漬せず、かつ、紫外線照射も行わなかったものを試料4Cのクリーニングブレードとした。
【0049】
<エッジ部の動摩擦係数>
静・動摩擦係数測定器(協和界面科学社製、「Triboster500」)を用い、ステージ上に固定したブレード部のエッジ部に、垂直荷重W=100gを接触子により加え、ステージを7.5mm/秒の速度で水平方向に1cm移動させた。この時のブレードと接触子との間に生じた摩擦力Fから、エッジ部表面の動摩擦係数(F/W)を測定した。なお、エッジ部表面の動摩擦係数の値が小さいほど、長期にわたってブレード部のめくれを抑制しやすいといえる。
【0050】
<耐めくれ性>
各試料のクリーニングブレードにおけるブレード部に潤滑剤を塗布することなく、ブレード部のエッジ部を、デジタル複写機(リコー社製、「imagio MPC4000」の感光ドラムと摺接するように組み付けた。そして、32.5%×85%RHの環境下、A4サイズの用紙を用いて20,000枚印刷した。この際に、ブレード部のめくれが発生しなかった場合を、耐めくれ性を有するとして「A」とした。また、ブレード部のめくれが発生した場合を、耐めくれ性を有さないとして「C」とした。
【0051】
<クリーニング性>
各試料のクリーニングブレードのエッジ部を、デジタル複写機(リコー社製、「imagio MPC4000」)の感光ドラムと摺接するように組み付けた。そして、23℃×55%RHの環境下、A4サイズの用紙を用いて100,000枚印刷した。当該耐久後、各試料のクリーニングブレードを取り出し、エッジ部の欠けの有無を調査した。また、併せて、上記耐久後、上記デジタル複写機の帯電ロールの表面に、市販のテープ(オカモト社製、「No.300」)を貼り付けた後、テープを剥離した。そして、当該テープの貼り付け面積に対するトナー汚れ部分の面積率を求めた。
【0052】
エッジ部の欠けがなく、トナー汚れが20%以下であった場合を、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下と、感光ドラムに対する追従性の低下によるクリーニング性の低下とが両方とも抑制されているとして「A」とした。エッジ部の欠けがあり、トナー汚れが20%超であった場合を、エッジ部の欠けによりクリーニング性が低下したとして「C」とした。また、エッジ部の欠けはなかったが、トナー汚れが20%超であった場合を、感光ドラムに対する追従性の低下によりクリーニング性が低下したとして「C」とした。なお、感光ドラムではなく帯電ロールのトナー汚れを評価したのは、クリーニングブレードのブレード部でトナーのすり抜けが発生すると、感光ドラムにおけるその部位が、次に帯電ロールに接触し、帯電ロール表面が汚れるためである。
【0053】
表1に、各試料のクリーニングブレードの構成、耐めくれ性、クリーニング性の評価結果をまとめて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1Cのクリーニングブレードは、エッジ部が、アクリル樹脂と基材とで構成される内層を有している。しかしながら、内層の厚みが1μmを超えている。そのため、試料1Cのクリーニングブレードは、厚い内層によってエッジ部が硬くなり過ぎ、耐久時にエッジ部の欠けが生じた。その結果、試料1Cのクリーニングブレードは、エッジ部の欠けによってクリーニング性が低下した。
【0056】
試料2Cのクリーニングブレードは、エッジ部が、アクリル樹脂で構成される外層を有している。しかしながら、外層の厚みが0.02μmを超えている。そのため、試料2Cのクリーニングブレードは、厚い外層によってブレード部のゴム弾性が阻害され、感光ドラムに対する追従性が低下した。その結果、試料2Cのクリーニングブレードは、感光ドラムに対する追従性の低下によってクリーニング性が低下した。
【0057】
試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、エッジ部が外層を有していない。そのため、試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、外層によってエッジ部表面が低摩擦化されず、ブレード部のめくれを抑制することができなかった。なお、試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、ブレード部のめくれが発生したため、上記耐久によるクリーニング性の評価は実施しなかった。
【0058】
これらに対し、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の内層が、アクリル樹脂を含み、かつ、厚みが1μm未満である。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、内層によってエッジ部が硬くなり過ぎず、耐久時にエッジ部の欠けが生じ難かった。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下を抑制することができた。
【0059】
また、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の外層が、アクリル樹脂を含み、かつ、厚みが0.02μm以下である。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、外層によってブレード部のゴム弾性が阻害されず、相手部材である感光ドラムに対する追従性を維持することができた。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、相手部材に対する追従性の低下によるクリーニング性の低下を抑制することができた。また、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の外層によってエッジ部表面が低摩擦化されたため、ブレード部のめくれも抑制することができた。
【0060】
また、試料1〜試料7のクリーニングブレード同士を比較すると、次のことがわかる。すなわち、試料6および試料7のクリーニングブレードは、外層が、当該外層の厚みよりも大きい粒子を多数有している。そのため、試料6および試料7のクリーニングブレードは、外層表面に形成された粒子による突起が相手部材と点接触する。そのため、試料6および試料7のクリーニングブレードは、試料1〜試料5のクリーニングブレードに比べ、エッジ部の動摩擦係数が小さくなった。この結果によれば、試料6および試料7のクリーニングブレードは、試料1〜試料5のクリーニングブレードに比べ、長期にわたってブレード部のめくれを抑制しやすいといえる。
【0061】
なお、本例では、内層および外層がアクリル樹脂を含む場合について実験を行ったが、内層および外層がメタクリル樹脂を含む場合であっても、同様の作用効果を奏することができることは、上記の結果から容易に類推することができる。
【0062】
(実験例2)
<試料8〜試料12、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードの作製>
実験例1と同様にして、表2に示す構成の各エッジ部を有する試料8〜試料12、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードを作製した。なお、本例では、表面処理液として、表面処理液I−1を用いた。
【0063】
<JIS−A硬度の測定>
各クリーニングブレードのエッジ部について、JIS−A硬度を測定した。
【0064】
表2に、各試料のクリーニングブレードの構成、JIS−A硬度をまとめて示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2によれば、次のことがわかる。すなわち、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、エッジ部における内層の厚みが数百μm程度と厚い。また、エッジ部における外層の厚みも0.02μmを超えている。そのため、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、内層および外層が形成されていないエッジ部を有するブレード部を備えた試料4Cのクリーニングブレードに比べ、JIS−A硬度が大きくなっている。この結果から、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、エッジ部の硬度変化よりエッジ部の表面硬さバラツキが大きく、硬さ安定性がないといえる。したがって、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードのような構成では、エッジ部の表面硬さバラツキによってクリーニング性に差が生じ、同等のクリーニング性を有するクリーニングブレードを安定して生産することが難しいといえる。
【0067】
これに対し、試料8〜試料12のクリーニングブレードは、内層および外層が極薄いため、エッジ部の硬度変化が生じ難く、エッジ部の表面硬さバラツキを小さくすることができ、硬さ安定性に優れていることが確認された。この結果から、上記構成のエッジ部によれば、表面硬さバラツキによるクリーニング性の差が小さく、同等のクリーニング性を有するクリーニングブレードを安定して生産しやすいことがわかる。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 クリーニングブレード
2 ブレード部
20 基材
3 エッジ部
31 内層
32 外層
9 相手部材
図1
図2
図3
図4