【実施例】
【0028】
以下、実施例のクリーニングブレードについて、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0029】
(実施例1)
実施例1のクリーニングブレードについて、
図1〜
図3を用いて説明する。
図1〜
図3に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、電子写真機器内の相手部材9の表面に残留する残留トナー(不図示、トナーのみならず、トナー外添剤も含む)を除去するために用いられるものである。本例では、相手部材9は、具体的には、感光ドラムである。なお、感光ドラムは、
図1に示される矢印Yの方向に回転する。
【0030】
クリーニングブレード1は、相手部材9と摺接させるためのエッジ部3を有するブレード部2を備えている。本例では、ブレード部2の基材は、具体的には、ポリウレタンゴムである。ポリウレタンゴムは、非発泡体である。また、各図では、ブレード部2は、板状の形状を呈する例が示されている。本例では、クリーニングブレード1は、具体的には、板状部41と板状部41と一体的に繋がる取付部42とを有する支持体4をさらに備えている。ブレード部2は、支持体4における板状部41の一方の板面に接着されている。なお、図示はしないが、クリーニングブレード1は、支持体4における板状部41の先端部が、ブレード部2の内部に埋設されていてもよい。
【0031】
図3に示されるように、エッジ部3は、ブレード部2の基材20と、基材20表面から基材20内側にわたって存在する内層31と、基材20表面から基材20外側にわたって存在する外層32とを有している。
【0032】
内層31は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが1μm未満である。また、外層32は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂の少なくとも1つを含み、かつ、厚みが
0.02μm
以下である。
【0033】
本例では、エッジ部3は、第1ブレード面21と第2ブレード面22との交わりより構成される稜線23を含んでいる。なお、第1ブレード面21および第2ブレード面22は、いずれも、使用時に相手部材9側に向くように配置される。そして、上述した内層31および外層32は、具体的には、稜線23から少なくとも50μmの範囲内に存在している。
【0034】
(実施例2)
実施例2のクリーニングブレードについて、
図4を用いて説明する。
図4に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、外層32が、外層32の厚みよりも大きい粒子320を多数有している。したがって、外層32の表面には、外層32によって保持された粒子320による突起が複数形成されている。本例では、粒子320の粒子径は、具体的には、10nm以上300nm以下とされている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0035】
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0036】
(実験例1)
<ウレタンゴム組成物の調製>
80℃にて1時間、真空脱泡したポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):44質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」):56質量部とを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを含む主剤液を調製した。なお、主剤液中のNCO%(質量%)は、17.0%である。
【0037】
また、ポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):87質量部と、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)とトリメチロールプロパン(広栄パーストープ社製)とが重量比6:4にて混合されてなる低分子量ポリオール:13質量部と、触媒としてのトリエチレンジアミン(東ソー社製):0.01質量部とを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、水酸基価(OHV)が210(KOHmg/g)の硬化剤液を調製した。
【0038】
次いで、上記調製した主剤液と硬化剤液とを、主剤液100質量部に対して硬化剤液94質量部の配合割合にて、真空雰囲気下、60℃で3分間混合し、十分に脱泡した。これによりウレタンゴム組成物を調製した。
【0039】
<表面処理液の調製>
アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM305」)100質量部と、ラジカル系光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア1173」)5質量部と、メチルエチルケトン420質量部とを混合することにより、表面処理液I−1を調製した。
また、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを945質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−2を調製した
。
また、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを157.5質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−4を調製した。
また、表面処理液I−1の調製において、メチルエチルケトンを5145質量部とした以外は同様にして、表面処理液I−5を調製した。
【0040】
また、アクリルモノマーとしてのペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM305」)100質量部と、ラジカル系光重合開始剤としての2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、「イルガキュア1173」5質量部と、粒子(信越化学工業社製、「QSG−30」、材質:シリカ、粒子径:30nm)5質量部と、メチルエチルケトン420質量部とを混合することにより、表面処理液IIを調製した。
また、表面処理液IIの調製において、粒子(信越化学工業社製、「QCB−100」、材質:シリカ、粒子径:200nm)を用いた以外は同様にして、表面処理液IIIを調製した。
【0041】
<試料1〜試料
3、試料1C、試料2Cのクリーニングブレードの作製>
上型と下型とから構成される金型を準備した。金型は、上型と下型とを接近させて型締めすることにより、略長尺板状のブレード部二つ分の大きさを有するキャビティが内部に形成される。このキャビティには、対向する二つの収容部が設けられている。これら各収容部には、断面L字状に折り曲げ形成された金属製の長尺板材(板厚2mm)からなる金属製の支持体の板状部がそれぞれ配置できるように構成されている。
【0042】
次いで、支持体における板状部の一方の板面に、エポキシ系の接着剤(東亞合成社製、「アロンマイティAS−60」)を塗布した。
【0043】
次いで、上記金型の各収容部に接着剤が塗布された支持体をそれぞれセットし、型締めした後、キャビティ内に所定のウレタンゴム組成物を注入し、130℃で10分間加熱することによりウレタンゴム組成物を硬化させた。その後、成形体を金型から取り出し、所定の大きさとなるように二つに切断した。これにより、
図2に示されるように、支持体における板状部の一方の板面に、ポリウレタンゴムを基材とする板状のブレード部(厚み2mm)を形成した。なお、ブレード部と支持体との接着幅は、2mmとした。
【0044】
次いで、ブレード部の稜線を、後述の表1に示す所定の表面処理液I−1〜I−4の液面に対面させ、ブレード部を稜線部分から表面処理液に浸漬させた。なお、表面処理液の浸漬時間は、後述の表1に示す通りとした。その後、表面処理液からブレード部を分離し、表面処理液を拭き取ることなく、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、「UB031−2A/BM」)を用いて、紫外線照射装置の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とブレード部の稜線との距離200mm、紫外線強度100mW/cm
2、照射時間30秒という照射条件にて紫外線を照射することにより、表面処理液を硬化させた。これにより、ブレード部のエッジ部に、アクリル樹脂と基材のポリウレタンゴムとで構成された内層を形成するとともに、アクリル樹脂より構成された外層を形成した。以上により、試料1〜試料
3、試料1C、試料2Cのクリーニングブレードを得た。なお、内層の厚み、外層の厚みは、後述の表1に示されるように、表面処理液の種類、表面処理液の固形分、表面処理液への浸漬時間を変化させることによって調節した。また、表1の内層の厚み、外層の厚みを、上述した測定方法により測定した。なお、当該測定では、上述した10%リンタングステン酸水溶液によりブレード部断面を染色した。
【0045】
<試料5のクリーニングブレードの作製>
試料1のクリーニングブレードの作製において、表面処理液I−1への浸漬後、エッジ部の基材表面に付着した表面処理液I−1を拭き取った後、さらに、表面処理液1−5に浸漬させた。その後は、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料5のクリーニングブレードを作製した。
【0046】
<試料6、試料7のクリーニングブレードの作製>
表面処理液Iに代えて表面処理液IIを用い、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料6のクリーニングブレードを作製した。また、表面処理液Iに代えて表面処理液IIIを用い、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料7のクリーニングブレードを作製した。なお、試料6、試料7のクリーニングブレードでは、外層に、当該外層の厚みよりも大きい所定の粒子が多数保持されており、外層表面に粒子による突起が多数形成されていた。また、粒子の粒子径を、上述した測定方法により測定した。
【0047】
<試料3Cのクリーニングブレードの作製>
試料1のクリーニングブレードの作製において、表面処理液への浸漬後、エッジ部の基材表面に付着した表面処理液を拭き取った。その後は、試料1のクリーニングブレードの作製と同様にして試料3Cのクリーニングブレードを作製した。
【0048】
<試料4Cのクリーニングブレードの作製>
ブレード部を表面処理液に全く浸漬せず、かつ、紫外線照射も行わなかったものを試料4Cのクリーニングブレードとした。
【0049】
<エッジ部の動摩擦係数>
静・動摩擦係数測定器(協和界面科学社製、「Triboster500」)を用い、ステージ上に固定したブレード部のエッジ部に、垂直荷重W=100gを接触子により加え、ステージを7.5mm/秒の速度で水平方向に1cm移動させた。この時のブレードと接触子との間に生じた摩擦力Fから、エッジ部表面の動摩擦係数(F/W)を測定した。なお、エッジ部表面の動摩擦係数の値が小さいほど、長期にわたってブレード部のめくれを抑制しやすいといえる。
【0050】
<耐めくれ性>
各試料のクリーニングブレードにおけるブレード部に潤滑剤を塗布することなく、ブレード部のエッジ部を、デジタル複写機(リコー社製、「imagio MPC4000」の感光ドラムと摺接するように組み付けた。そして、32.5%×85%RHの環境下、A4サイズの用紙を用いて20,000枚印刷した。この際に、ブレード部のめくれが発生しなかった場合を、耐めくれ性を有するとして「A」とした。また、ブレード部のめくれが発生した場合を、耐めくれ性を有さないとして「C」とした。
【0051】
<クリーニング性>
各試料のクリーニングブレードのエッジ部を、デジタル複写機(リコー社製、「imagio MPC4000」)の感光ドラムと摺接するように組み付けた。そして、23℃×55%RHの環境下、A4サイズの用紙を用いて100,000枚印刷した。当該耐久後、各試料のクリーニングブレードを取り出し、エッジ部の欠けの有無を調査した。また、併せて、上記耐久後、上記デジタル複写機の帯電ロールの表面に、市販のテープ(オカモト社製、「No.300」)を貼り付けた後、テープを剥離した。そして、当該テープの貼り付け面積に対するトナー汚れ部分の面積率を求めた。
【0052】
エッジ部の欠けがなく、トナー汚れが20%以下であった場合を、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下と、感光ドラムに対する追従性の低下によるクリーニング性の低下とが両方とも抑制されているとして「A」とした。エッジ部の欠けがあり、トナー汚れが20%超であった場合を、エッジ部の欠けによりクリーニング性が低下したとして「C」とした。また、エッジ部の欠けはなかったが、トナー汚れが20%超であった場合を、感光ドラムに対する追従性の低下によりクリーニング性が低下したとして「C」とした。なお、感光ドラムではなく帯電ロールのトナー汚れを評価したのは、クリーニングブレードのブレード部でトナーのすり抜けが発生すると、感光ドラムにおけるその部位が、次に帯電ロールに接触し、帯電ロール表面が汚れるためである。
【0053】
表1に、各試料のクリーニングブレードの構成、耐めくれ性、クリーニング性の評価結果をまとめて示す。
【0054】
【表1】
【0055】
表1によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料1Cのクリーニングブレードは、エッジ部が、アクリル樹脂と基材とで構成される内層を有している。しかしながら、内層の厚みが1μmを超えている。そのため、試料1Cのクリーニングブレードは、厚い内層によってエッジ部が硬くなり過ぎ、耐久時にエッジ部の欠けが生じた。その結果、試料1Cのクリーニングブレードは、エッジ部の欠けによってクリーニング性が低下した。
【0056】
試料2Cのクリーニングブレードは、エッジ部が、アクリル樹脂で構成される外層を有している。しかしながら、外層の厚みが
0.02μmを超えている。そのため、試料2Cのクリーニングブレードは、厚い外層によってブレード部のゴム弾性が阻害され、感光ドラムに対する追従性が低下した。その結果、試料2Cのクリーニングブレードは、感光ドラムに対する追従性の低下によってクリーニング性が低下した。
【0057】
試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、エッジ部が外層を有していない。そのため、試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、外層によってエッジ部表面が低摩擦化されず、ブレード部のめくれを抑制することができなかった。なお、試料3Cおよび試料4Cのクリーニングブレードは、ブレード部のめくれが発生したため、上記耐久によるクリーニング性の評価は実施しなかった。
【0058】
これらに対し、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の内層が、アクリル樹脂を含み、かつ、厚みが1μm未満である。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、内層によってエッジ部が硬くなり過ぎず、耐久時にエッジ部の欠けが生じ難かった。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の欠けによるクリーニング性の低下を抑制することができた。
【0059】
また、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の外層が、アクリル樹脂を含み、かつ、厚みが
0.02μm
以下である。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、外層によってブレード部のゴム弾性が阻害されず、相手部材である感光ドラムに対する追従性を維持することができた。そのため、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、相手部材に対する追従性の低下によるクリーニング性の低下を抑制することができた。また、試料1〜試料7のクリーニングブレードは、エッジ部の外層によってエッジ部表面が低摩擦化されたため、ブレード部のめくれも抑制することができた。
【0060】
また、試料1〜試料7のクリーニングブレード同士を比較すると、次のことがわかる。すなわち、試料6および試料7のクリーニングブレードは、外層が、当該外層の厚みよりも大きい粒子を多数有している。そのため、試料6および試料7のクリーニングブレードは、外層表面に形成された粒子による突起が相手部材と点接触する。そのため、試料6および試料7のクリーニングブレードは、試料1〜試料5のクリーニングブレードに比べ、エッジ部の動摩擦係数が小さくなった。この結果によれば、試料6および試料7のクリーニングブレードは、試料1〜試料5のクリーニングブレードに比べ、長期にわたってブレード部のめくれを抑制しやすいといえる。
【0061】
なお、本例では、内層および外層がアクリル樹脂を含む場合について実験を行ったが、内層および外層がメタクリル樹脂を含む場合であっても、同様の作用効果を奏することができることは、上記の結果から容易に類推することができる。
【0062】
(実験例2)
<試料8〜試料12、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードの作製>
実験例1と同様にして、表2に示す構成の各エッジ部を有する試料8〜試料12、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードを作製した。なお、本例では、表面処理液として、表面処理液I−1を用いた。
【0063】
<JIS−A硬度の測定>
各クリーニングブレードのエッジ部について、JIS−A硬度を測定した。
【0064】
表2に、各試料のクリーニングブレードの構成、JIS−A硬度をまとめて示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2によれば、次のことがわかる。すなわち、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、エッジ部における内層の厚みが数百μm程度と厚い。また、エッジ部における外層の厚みも
0.02μmを超えている。そのため、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、内層および外層が形成されていないエッジ部を有するブレード部を備えた試料4Cのクリーニングブレードに比べ、JIS−A硬度が大きくなっている。この結果から、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードは、エッジ部の硬度変化よりエッジ部の表面硬さバラツキが大きく、硬さ安定性がないといえる。したがって、試料5C〜試料9Cのクリーニングブレードのような構成では、エッジ部の表面硬さバラツキによってクリーニング性に差が生じ、同等のクリーニング性を有するクリーニングブレードを安定して生産することが難しいといえる。
【0067】
これに対し、試料8〜試料12のクリーニングブレードは、内層および外層が極薄いため、エッジ部の硬度変化が生じ難く、エッジ部の表面硬さバラツキを小さくすることができ、硬さ安定性に優れていることが確認された。この結果から、上記構成のエッジ部によれば、表面硬さバラツキによるクリーニング性の差が小さく、同等のクリーニング性を有するクリーニングブレードを安定して生産しやすいことがわかる。
【0068】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。