(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650861
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】傷口の癒合、コラーゲン増殖、血管新生、免疫細胞の活性化を促進し、また傷口の感染を減少させることができるペプチド及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/01 20060101AFI20200210BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20200210BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20200210BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20200210BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20200210BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20200210BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20200210BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20200210BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20200210BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20200210BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
A61K38/01ZNA
A61K35/60
A61K38/08
A61K38/10
A61K38/17
A61P17/02
A61P31/00
A61P37/04
C07K7/06
C07K7/08
C07K14/46
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-209132(P2016-209132)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2017-81912(P2017-81912A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2016年10月26日
【審判番号】不服2018-9814(P2018-9814/J1)
【審判請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】104135487
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512256812
【氏名又は名称】大江生醫股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TCI Co.Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蘇 香綾
(72)【発明者】
【氏名】余 錦秀
(72)【発明者】
【氏名】蔡 雲卿
(72)【発明者】
【氏名】陳 巧▲てい▼
(72)【発明者】
【氏名】林 詠翔
【合議体】
【審判長】
岡崎 美穂
【審判官】
吉田 知美
【審判官】
關 政立
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−124222(JP,A)
【文献】
特開2013−227228(JP,A)
【文献】
Aquaculture Nutrition(2006)12,53−59
【文献】
Cosmetology、2005、第13号、p.23−28
【文献】
Biochem.Biophys.Res.Commun.2001、281、200−205
【文献】
日本食品科学工学会誌、2015、62(3)、130−134
【文献】
日本臨床微生物学雑誌、2016.06.25、26(3)、209−222
【文献】
上原記念生命科学財団研究報告集、2011、25、1−4
【文献】
動脈硬化、1996、24(1−2)、15−22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-38/58
C07K7/00-7/66
C07K14/46
CAplus/RESISTRY/BIOSIS/EMBASE/MEDLINE(STN)
GeneBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq/UniProt
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱸由来ペプチド抽出物であって、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号10のアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチドを含む鱸由来ペプチド抽出物である傷口の癒合促進剤。
【請求項2】
鱸由来ペプチド抽出物であって、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号10のアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチドを含む鱸由来ペプチド抽出物であるコラーゲン増殖促進剤。
【請求項3】
鱸由来ペプチド抽出物であって、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号10のアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチドを含む鱸由来ペプチド抽出物である血管増殖促進剤。
【請求項4】
鱸由来ペプチド抽出物であって、配列番号1のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号8のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号9のアミノ酸配列からなるペプチド、配列番号10のアミノ酸配列からなるペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列からなるペプチドを含む鱸由来ペプチド抽出物である免疫細胞活性化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドに関し、特に傷口の癒合、コラーゲン増殖、血管新生、免疫細胞の活性化を促進し、また傷口の感染を減少させることに応用できるペプチドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、けがをしたり手術を受けたりした後は、傷口の快復、気力の快復を問わず、いずれも長期の静養が必要となり、また適切な飲食を組み合わせることで最良の快復効果を得ることができる。早期の快復を望む場合によく見られるのは、例えば鱸(スズキ)のスープ等の鱸抽出物といった、傷口を早く癒合させることができる食品や栄養食品、薬を摂取することである。
【0003】
2013年の台湾の鱸の漁獲量は約26,094トン、生産総額は21.8億元にのぼり、一般家庭やレストランにおいて直接食用にされるものを除いて、多くの鱸は加工製品にされるが、加工後に産出する副産物のうち、魚の皮と骨の割合は30%にもなる。もしこれらをうまく活用できれば、台湾漁業の付加価値を高められるだけでなく、鱸の加工で出る副産物の処理という問題も効果的に解決することができる。
【発明の概要】
【0004】
鱸抽出物における有効な成分を知るため、本発明はその中の有効なペプチド成分を確認し、傷口の癒合、コラーゲン増殖、血管新生、免疫細胞の活性化を促進し、また傷口の感染を減少させることができるペプチドを提供する。当該ペプチドはSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:11、及びその組み合わせのペプチドで構成されるグループから選択されたものを含む。
【0005】
本発明の一実施例では、当該鱸抽出物は鱸の皮、鱗、骨、或いは肉から抽出される。
【0006】
本発明の一実施例では、当該鱸抽出物は、ケラチナーゼ(Keratinase)、トリプシン(Trypsin)、ブロメライン(Bromelain)、パパイン(Papain)、ペプシン(Pepsin)、アルカラーゼ(Alcalase)、ニュートラーゼ(Neutrase)、プロタメックス(Protamex)及びフレーバーザイム(Flavourzyme)で構成されるグループから選択される酵素により抽出し、得たものである。
【0007】
本発明の一態様では、傷口癒合促進の用途に用いるペプチドを提供し、当該ペプチドは上記のペプチドを含む。
【0008】
本発明の別の態様では、上記のペプチドを含む傷口癒合促進剤を提供する。
【0009】
本発明の一態様では、コラーゲン増殖促進の用途に用いるペプチドを提供し、当該ペプチドは上記のペプチドを含む。
【0010】
本発明の別の態様では、上記のペプチドを含むコラーゲン増殖促進剤を提供する。
【0011】
本発明の一態様では、血管増殖促進の用途に用いるペプチドを提供し、当該ペプチドは上記のペプチドを含む。
【0012】
本発明の別の態様では、上記のペプチドを含む血管増殖促進剤を提供する。
【0013】
本発明の一態様では、免疫細胞活性化の用途に用いるペプチドを提供し、当該ペプチドは上記のペプチドを含む。
【0014】
本発明の別の態様では、上記のペプチドを含む免疫細胞活性化剤を提供する。
【0015】
本発明の実施例のペプチドにより、TNF−α及びIL−1 βの発現量を誘発することができるため、ウィルスや細菌に対抗し、傷口の感染を減少させ、また壊死組織を取り除き、傷口のデブリードメントを助け、傷口の修復を促進することができる。また、本発明の実施例のペプチドにより、IL−8及びCXCL12の発現を誘発することができるため、傷口により多くの免疫細胞が集まるよう促し、またより多くの免疫細胞を活性化することができる。さらに一方で、本発明の実施例のペプチドは、IL−10の発現を抑えることができるため、繊維組織によるコラーゲン分泌を効果的に促進し、傷口の修復及び癒合を助けることができる。それとともに、本発明の実施例のペプチドにより、TNF−α及びIL−1 βの発現を活性化させ、線維芽細胞と角質細胞をさらに活性化することができるため、血管新生を促進するという働きを有する。
【0016】
本発明が提供するペプチドは上記の効果を有するため、本発明の一実施例では、本発明のペプチドを、例えば傷口の癒合促進剤、コラーゲン増殖促進剤、血管増殖促進剤又は免疫細胞活性化剤といった、関連効果の組成物又は試薬の調製にさらに応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞IL−1 βのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図2】
図2は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞TNF−αのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図3】
図3は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞IL−8のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図4】
図4は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞CXCL12のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図5】
図5は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞IL−10のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図6】
図6は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞IL−1 βのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【
図7】
図7は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例のペプチドが細胞TNF−αのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例のペプチドは、まず鱸のサンプルを処理し、それを酸で処理した後に抽出を行い、抽出した混合物をさらに複合型酵素で加水分解し、加水分解で生成されたものをろ過し、純化すれば得られる。続いて、これらペプチドに対する配列決定及び関連の効果の試験について、以下でさらに詳細に説明する。
【0019】
(実施例1 鱸抽出物の調製方法)
まず、鱸をスライスマシンで約2〜6cmの大きさに切って原料とする。当該鱸の部位は皮、鱗、骨及び肉を含む。そして、2〜5倍の体積のRO逆浸透水で原料を洗浄し、2〜3回繰り返し洗浄して血や不純物を取り除く。
【0020】
その後、鱸と酸性液の比率1:5(w/v)で酸による処理を行う。酸の濃度と種類は1〜5%の塩酸、硫酸又は燐酸とする。鱸を15〜20℃で10〜48時間浸漬した後、2〜5倍の体積のRO逆浸透水で、酸による処理を行った原料を洗浄し、2〜3回繰り返し洗浄して酸を除き、最後に炭酸カルシウムでpH値を4〜8の間に調整する。
【0021】
鱸のサンプルを準備した後、55〜100℃の熱水で1〜6時間抽出を行う。その後3000rpmで10分間遠心分離し、ろ過して滓を取り除く。さらに0.2〜1%の炭酸カルシウム又は石灰で不純物を取り除いて清澄化する。そして1〜10μmのろ過膜でろ過した後、イオン交換樹脂のカラム吸着によってろ過し、不純物と石灰を取り除いて、有効なペプチドをさらに分離、純化する。純化後の有効なペプチドを活性炭脱臭及び脱色処理して,50〜60℃で10〜20倍に減圧濃縮する。
【0022】
続いて、複合型酵素を加えて40〜60℃で1〜5時間加水分解する。当該複合型酵素は、0.01%〜0.1%のケラチナーゼ(Keratinase)及びブロメライン(Bromelain)と、0.1〜5%のパパイン(Papain)、トリプシン(Trypsin)及びペプシン(Pepsin)と、0.1〜5%のアルカラーゼ(Alcalase)、ニュートラーゼ(Neutrase)、プロタメックス(Protamex)及びフレーバーザイム(Flavourzyme)とを含む。加水分解完了後、85〜95℃で10〜30分間反応させて酵素を不活性化させた後、冷却する。冷却後、珪藻土及び活性炭でろ過し、ペプチド抽出液を清澄化及び脱臭し、その後もう一度ろ過して、ろ過後の生成物に超高温殺菌(Ultra−high temperature,UHT)を行い、135〜140℃で3〜5秒殺菌する。最後に、0.2μmのろ過膜でろ過して細かい不純物を取り除くと、本発明が必要とする複数種のペプチドを含む鱸の抽出物が得られる。
【0023】
(実施例2 鱸の抽出物におけるペプチドの配列決定)
鱸の抽出物を適切に希釈した後、遠心分離(13000rpm、2min)によって200μlの上澄み液を吸い取り、C18−ZipTip(Millpore)で脱塩濃縮し、サンプル溶解後1/2の体積を取り、以下の条件でLC−MS/MS分析を行う。MS/MSスペクトルは、Mascot解析プログラムを使ってデータベースを検索し、解析を行い、解析結果を得る。
【0024】
反応条件 :
質量分析計 : LTQ XL (Thermo Scientific)
LCシステム : Agilent 1200 Series
緩衝液A : ddH
2O / 0.1% formic acid
緩衝液B : 100% ACN / 0.1% formic acid
分析カラム : C18 reverse phase column
【0026】
アミノ酸の配列を決定した後、そのうちの11種のペプチドを確認する。そのアミノ酸の配列は表2に示すSEQ ID NO: 1〜11である。
【0028】
(実施例3 免疫細胞の遺伝子発現量の解析)
ヒトのTHP−1細胞(ヒト単球系細胞株)を6ウェルの細胞培養プレート(5*10
5cell/well)でそれぞれ培養し、且つそれをグループ分けして個別にリポ多糖(Lipopolysaccharide,以下LPSという)処理を行う。処理方法は表3に示す通りである。
【0030】
異なる反応物と時間とで処理した各グループの細胞を集めた後、RNA単離キット(GeneMark RNA isolation kit)で細胞中のRNAを分離し、さらにcDNA合成キット(Roche Transcriptor First Strand cDNA Synthhesis Kit)によってcDNAを合成する。その後、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応キット(SYBR Green Master Mix, KAPA社)を使って目的の遺伝子を測定し、さらにABI Step one ソフトウエアにより遺伝子発現の解析を行って,遺伝子発現のレベルから鱸抽出物の免疫細胞に対する影響と効果を検討した。その結果を
図1〜
図7に示す。
【0031】
まず
図1を見ていただきたい。
図1は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞IL−1 βのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
図1は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のIL−1 β発現量が上昇し、LPS誘導が6時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで3時間処理を行った場合のIL−1 β発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_6hr)の4.8倍及び7.9倍であり、LPS誘導が9時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで6時間処理を行った場合のIL−1 β発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_9hr)の4.3倍及び8.7倍であった。
【0032】
図2を見ていただきたい。
図2は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞TNF−αのmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
図2の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のTNF−α発現量が上昇し、LPS誘導が6時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで3時間処理を行った場合のTNF−α発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_6hr)の3倍及び3.5倍であり、LPS誘導が9時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで6時間処理を行った場合のTNF−α発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_9hr)の2.3倍及び4倍であった。そしてTNF−α及びIL−1 βの誘発は傷口の修復に重要な役目を果たしており、その発現量の増加はウィルスや細菌に対抗し、傷口の感染を減少させ、さらに壊死組織を取り除き傷口のデブリードメントを助けることができる。
【0033】
図3を見ていただきたい。
図3は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞IL−8のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
図3の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のIL−8発現量が上昇し、LPS誘導が6時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで3時間処理を行った場合のIL−8発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_6hr)の7.6倍及び6.3倍であり、LPS誘導が9時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで6時間処理を行った場合のIL−8発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_9hr)の4.7倍及び7.9倍であった。
【0034】
図4を見ていただきたい。
図4は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞CXCL12のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
図4の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のCXCL12発現量が上昇し、LPS誘導が6時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで3時間処理を行った場合のCXCL12発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_6hr)の1.9倍及び3倍であり、LPS誘導が9時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで6時間処理を行った場合のCXCL12発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_9hr)の1.7倍及び3.2倍であった。IL−8及びCXCL12の発現量誘発は、免疫システムが傷口においてより多くの免疫細胞が集まるよう促し、また同時により多くの免疫細胞を活性化することができる。
【0035】
図5を見ていただきたい。
図5は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞IL−10のmRNA発現に与えた影響の結果を示す図である。
図5の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のIL−10発現量が低下し、LPS誘導が27時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで24時間処理を行った場合のIL−10の発現量は、対照グループ(LPS_27hr)に対してそれぞれ54%及び30%低下した。IL−10発現を抑制することの効果は、繊維組織によるコラーゲン分泌を効果的に促進できる点であり、従って傷口の修復と癒合を助けることができる。
【0036】
図6と
図7を同時に見ていただきたい。この2つの図は、細胞の模擬傷口で炎症が起きた際に、本発明の実施例の鱸抽出物におけるペプチドが細胞IL−1 βのmRNAとTNF−αのmRNA発現に与えた影響の結果をそれぞれ示す図である。
図6の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のIL−1 β発現量が上昇し、LPS誘導が27時間という前提で、さらに1%及び2%の鱸ペプチドで24時間処理を行った場合のIL−1 β発現量は、それぞれ対照グループ(LPS_27hr)の3.3倍及び5.1倍である。
図7の結果は以下のことを示している。すなわち、LPS処理によってTHP−1細胞株のTNF−α発現量が上昇し、LPS誘導が27時間という前提で、さらに2%の鱸ペプチドで24時間処理を行った場合のTNF−α発現量は対照グループ(LPS_27hr)の2.3倍である。TNF−αとIL−1 βの発現量を活性化させ、また線維芽細胞と角質細胞を同時に活性化することができるため、血管新生を促進する効果を有する。
【0037】
従って、前記の細胞の模擬傷口が炎症を起こした状態における、IL−1 β、TNF−α、IL−8、IL−10及びCXCL12発現量の変化による影響から、以下のことがはっきりとわかる。すなわち、本発明が提供するペプチドは、傷口により多くの免疫細胞を集め、またより多くの免疫細胞を活性化することができ、ウィルスや細菌に対抗し、傷口の感染を減少させ、また壊死組織を取り除き、傷口のデブリードメントを助け、傷口の修復を促進する効果を有する。それとともに、繊維組織によるコラーゲン分泌を効果的に促進し、傷口の修復及び癒合を更に助けることができる。また、当該ペプチドにより、TNF−α及びIL−1 βの発現を活性化することで、線維芽細胞と角質細胞をより活性化することができるため、血管新生を促進するという働きを有する。
【0038】
本発明が提供するペプチドは上記の効果を有するため、本発明のペプチドをさらに利用して、例えば傷口癒合促進剤、コラーゲン増殖促進剤、血管増殖促進剤、免疫細胞活性化剤といった、関連効果の組成物又は試薬の調製に応用することができる。これら組成物又は試薬は、有効量の本発明のペプチド及び賦形剤又は担体等を含んでよく、従って当該組成物又は試薬の形式は、錠剤、カプセル、液体、ゲル、スラリー、懸濁液、散剤、貼り薬、ローション剤、スプレー剤、膜状物であってよく,特に限定されない。さらに、前記組成物又は試薬はその利用方法によって、飲食品に調製して保健関連の食品に応用したり、外部用品の補助として使用したりすることができる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]