特許第6650939号(P6650939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6650939
(24)【登録日】2020年1月23日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ポリエーテル共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/08 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   C08G65/08
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-526253(P2017-526253)
(86)(22)【出願日】2016年6月8日
(86)【国際出願番号】JP2016067064
(87)【国際公開番号】WO2017002560
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2017年10月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-130018(P2015-130018)
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-43450(P2016-43450)
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅司
(72)【発明者】
【氏名】荒川 元博
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−154223(JP,A)
【文献】 特開2010−257771(JP,A)
【文献】 特開2012−209263(JP,A)
【文献】 特開2008−231408(JP,A)
【文献】 特開平07−206936(JP,A)
【文献】 特開2012−140505(JP,A)
【文献】 特開2013−170203(JP,A)
【文献】 特開2002−100405(JP,A)
【文献】 特開平05−202281(JP,A)
【文献】 特開平04−202229(JP,A)
【文献】 特開平04−068064(JP,A)
【文献】 特開平05−078506(JP,A)
【文献】 特開平04−100825(JP,A)
【文献】 特開2005−154569(JP,A)
【文献】 特開2016−056342(JP,A)
【文献】 特開2009−277413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体であって、
該ポリエーテル共重合体は、下記一般式(1);
【化1】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表される構造単位及び下記一般式(2);
【化2】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜の脂肪族アルキル基を表す。nは、1〜12の整数を表す。)で表される構造単位を有し、
該ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、該一般式(2)で表される構造単位を50モル%以下の割合で有し、重量平均分子量が15000〜200000であり、ポリエーテル共重合体に含まれるSn、P、Alの合計含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.01質量%以下であり、
且つ、
ハロゲン元素の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であることを特徴とするポリエーテル共重合体。
【請求項2】
前記ハロゲン元素は、塩素であることを特徴とする請求項1に記載のポリエーテル共重合体。
【請求項3】
前記ポリエーテル共重合体は、アルカリ金属の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.001〜0.1質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエーテル共重合体。
【請求項4】
前記ポリエーテル共重合体は、ガラス転移温度が−50℃以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項5】
前記ポリエーテル共重合体は、融点が20℃以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項6】
前記ポリエーテル共重合体は、共重合体を構成する元素の総原子数を100%としたときの酸素原子数の割合が10.0〜14.5%であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項7】
エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体であって、
該ポリエーテル共重合体は、下記一般式(1);
【化3】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表される構造単位及び下記一般式(2);
【化4】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜の脂肪族アルキル基を表す。nは、1〜12の整数を表す。)で表される構造単位を有し、
該ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、該一般式(2)で表される構造単位を50モル%以下の割合で有し、重量平均分子量が15000〜100000であり、且つ、
ハロゲン元素の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であることを特徴とするポリエーテル共重合体。
【請求項8】
前記ハロゲン元素は、塩素であることを特徴とする請求項に記載のポリエーテル共重合体。
【請求項9】
前記ポリエーテル共重合体は、アルカリ金属の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.001〜0.1質量%であることを特徴とする請求項又はに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項10】
前記ポリエーテル共重合体は、ガラス転移温度が−50℃以下であることを特徴とする請求項のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項11】
前記ポリエーテル共重合体は、融点が20℃以上であることを特徴とする請求項10のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項12】
前記ポリエーテル共重合体は、共重合体を構成する元素の総原子数を100%としたときの酸素原子数の割合が10.0〜14.5%であることを特徴とする請求項11のいずれかに記載のポリエーテル共重合体。
【請求項13】
エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、下記一般式(3);
【化5】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表されるアルキレンオキシドと、下記一般式(4);
【化6】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜18の脂肪族若しくは脂環式アルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は、炭素数6〜18のアリール基で置換されたアルキル基を表す。nは、1〜12の整数を表す。)で表されるグリシジル化合物とを含む単量体成分を反応開始剤としてアルカリ金属のアルコラートを用いて反応させる工程を含み、
該単量体成分は、ハロゲン元素の含有量が、単量体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であり、
ポリエーテル共重合体に含まれるSn、P、Alの合計含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.01質量%以下であることを特徴とするポリエーテル共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテル共重合体、及び、その製造方法に関する。より詳しくは、リチウムイオン電池等の電池用材料として好適に用いることができるポリエーテル共重合体、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりを背景に、石油や石炭等の化石燃料からのエネルギー資源の転換が進んでおり、これらに代わるエネルギー源として電池が注目されている。中でも、繰り返し充放電を行うことができる二次電池は、携帯電話やノートパソコン等の電子機器だけでなく、自動車や航空機等、様々な分野においても使用されており、各種電池や電池に用いられる材料について、研究、開発が行われている。特に、容量が大きく、軽量のリチウムイオン電池については、今後の利用の拡大が最も期待され、最も研究、開発が活発に行われている。
【0003】
このような電池に用いられる材料として、近年では、液体の電解質に比べて電極界面での異常反応が起こりにくく安全性の高い固体電解質が種々検討されている。従来の固体電解質として、特定のポリエーテル共重合体と電解質塩とを含む電解質材料が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−182778号公報
【特許文献2】特開平2−24975号公報
【特許文献3】特許第3215436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、電池の固体電解質等に用いられるポリエーテル共重合体について種々の研究がなされているが、従来の技術では、イオン伝導性を高いレベルで満足するものは得られておらず、高いイオン伝導性を発揮でき、電池性能を向上させることができるポリエーテル共重合体を開発する工夫の余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性が高く、電池性能を向上させることができるポリエーテル共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリエーテル共重合体について種々検討したところ、ポリエーテル共重合体に含まれるハロゲン元素の量を特定の範囲とすることにより、電解質として良好なイオン伝導性を発揮し、電池性能を向上させることができることを見出した。更に本発明者は、このようなポリエーテル共重合体の製造に用いる原料の単量体成分中のハロゲン元素の含有量を低減させることにより、ポリエーテル共重合体に含まれるハロゲン元素の量を特定の範囲とすることができることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体であって、上記ポリエーテル共重合体は、下記一般式(1);
【0009】
【化1】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表される構造単位及び下記一般式(2);
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜18の有機基を表す。nは、0〜12の整数を表す。)で表される構造単位を有し、上記ポリエーテル共重合体は、ハロゲン元素の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であるポリエーテル共重合体である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
(ポリエーテル共重合体)
本発明のポリエーテル共重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位と上記一般式(2)で表される構造単位とを有する、エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体である。ポリエーテル共重合体に、エーテル結合を有する側鎖官能基を導入することで、ポリマーの運動性が向上し、イオン伝導性、特にLiイオンの伝導性を向上させることができる。
【0013】
上記ポリエーテル共重合体は、ハロゲン元素の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であることを特徴とする。ポリエーテル共重合体中のハロゲン元素の含有量が上記範囲であれば、ポリエーテル共重合体を電解質として電池に用いた場合に、ハロゲン元素が電解質に混入することによる電池性能の低下を充分に抑制することができる。
上記ポリエーテル共重合体中のハロゲン元素の含有量として好ましくは、0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以下である。
【0014】
上記ハロゲン元素の含有量は、ポリエーテル共重合体に含まれるハロゲン元素の総量を意味する。ハロゲン元素としては、特に制限されず、周期表の第17族に属する元素の1種又は2種以上であり、具体的には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンが挙げられる。
【0015】
上記一般式(1)におけるRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基である。炭素数1〜2の炭化水素基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、Rとして好ましくは水素原子、エチル基である。
ここで、「同一又は異なって」とは、上記ポリエーテル共重合体が一般式(1)で表される構造単位を複数有する場合に、それぞれのRが、同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0016】
上記ポリエーテル共重合体に、上記一般式(1)で表される構造単位を導入するための原料単量体としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でも、エチレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましい。
【0017】
上記ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、上記一般式(1)で表される構造単位を50〜99モル%の割合で有することが好ましい。
ポリエーテル共重合体における一般式(1)で表される構造単位の割合として、より好ましくは60〜99モル%、更に好ましくは70〜99モル%であり、特に好ましくは80〜99モル%である。
【0018】
上記一般式(2)におけるRは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基である。炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、トリメチレン(−CHCHCH−)、テトラメチレン(−CHCHCHCH−)等の、直鎖のアルキレン基;エチリデン[−CH(CH)−]、プロピレン[−CH(CH)CH−]、プロピリデン[−CH(CHCH)−]、イソプロピリデン[−C(CH−]、ブチレン[−CH(CHCH)CH−]、イソブチレン[−C(CHCH−]、ブチリデン[−CH(CHCHCH)−]、イソブチリデン[−CH(CH(CH)−]等の分岐鎖のアルキレン基等が挙げられる。
これらの中でも、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等の直鎖アルキレン基、プロピレン、プロピリデン、ブチレン、ブチリデン等の分岐鎖アルキレン基が高いイオン伝導度を示すという点で好ましい。より好ましくは、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、プロピリデン、ブチレンであり、更に好ましくは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンである。
上記一般式(2)において、Rは1種であっても2種以上であってもよい。Rが2種以上である場合、−(R−O)−で表されるオキシアルキレン基の付加形態は、ブロック状、ランダム状等のいずれの形態であってもよい。
【0019】
上記一般式(2)におけるROで表される基の平均付加モル数を表すnは、0〜12であり、ROで表されるオキシアルキレン基の種類によっても異なるが、1〜10の範囲であることが好ましい。本発明の共重合体は、側鎖にオキシアルキレン基を有することにより、イオン伝導性が優れたものとなる。nがこのような範囲にあると、重合体の低温領域でのイオン伝導性が良好に発揮されるが、nが12より大きくなると、重合体の物性へのオキシアルキレン構造の寄与が大きくなり、低温では凍結してしまう等により性能が低下する。
nは、より好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜6であり、更により好ましくは1〜4である。
【0020】
上記一般式(2)におけるRは、同一又は異なって、炭素数1〜18の有機基である。炭素数1〜18の有機基としては、直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する炭化水素基が挙げられる。炭素数1〜18の直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル等の、炭素数1〜18の脂肪族又は脂環式アルキル基;フェニル、メチルフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等の、炭素数6〜18のアリール基;o−,m−若しくはp−トリル、2,3−若しくは2,4−キシリル、メシチル等の、アルキル基で置換されたアリール基;ビフェニリル等の、(アルキル)フェニル基で置換されたアリール基;ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチル等の、アリール基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
の炭素数が大き過ぎると、得られる共重合体のガラス転移温度が低くなるものの、疎水性が向上するため好ましくない。これらの中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜8の脂肪族アルキル基及びフェニル、メチルフェニル等の炭素数6〜18のアリール基が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル等の炭素数1〜4の脂肪族アルキル基、及び、フェニルであり、更に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルであり、特に好ましくはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルである。
がこのような有機基であると、Rの適度な疎水性とポリエーテルの親水性により、低温領域でのイオン伝導性が優れたものとなる。
【0021】
上記ポリエーテル共重合体に、上記一般式(2)で表される構造単位を導入するための原料単量体としては、メトキシエチルグリシジルエーテル、エトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテル、メトキシエトキシエチルグリシジルエーテル(ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル)、プロポキシエトキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールプロピルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、メトキシエチルグリシジルエーエル、エトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテル、メトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエトキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールメチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルがより好ましく、メトキシエチルグリシジルエーエル、エトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテル、メトキシエトキシエチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが更に好ましく、特に好ましくは、メトキシエチルグリシジルエーエル、エトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテルであり、最も好ましくは、エトキシエチルグリシジルエーテル、プロポキシエチルグリシジルエーテル、ブトキシエチルグリシジルエーテルである。
このような単量体であれば、単量体を精製するにあたり蒸留精製が可能となり、原料由来のハロゲン含有化合物の除去が容易となるため、単量体中のハロゲン元素の量をより充分に低減させることができる。
【0022】
上記ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、上記一般式(2)で表される構造単位を50モル%以下の割合で有することが好ましい。より好ましくは1〜40モル%、更に好ましくは1〜30モル%であり、特に好ましくは1〜20モル%である。
【0023】
上記ポリエーテル共重合体は、上記一般式(1)、一般式(2)で表される構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位としては、特に制限されないが、例えば、側鎖に架橋性官能基を有する構造単位が挙げられる。
上記ポリエーテル共重合体が側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を有する場合には、電解質膜を形成することが可能となる。
上記ポリエーテル共重合体に、側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を導入するための原料単量体としては、エポキシブテン(3,4−エポキシ−1−ブテン)、3,4−エポキシ−1−ペンテン、2−フェニル−3,4−エポキシ−1−ペンテン、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロへキセン、1,2−エポキシ−5−シクロオクテン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ソルビン酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、α−テルペニルグリシジルエーテル、シクロヘキセニルメチルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、4−アリルベンジルグリシジルエーテル、エチレングリコールアリルグリシジルエーテル、エチレングリコールビニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、トリエチレングリコールビニルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールアリルグリシジルエーテル、オリゴエチレングリコールビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エポキシブテン(3,4−エポキシ−1−ブテン)、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルが好ましく、アリルグリシジルエーテルがより好ましい。
【0024】
上記ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体を形成する全構造単位の総量100モル%に対して、上記その他の構造単位の割合が0〜10モル%であることが好ましい。
ポリエーテル共重合体における上記その他の構造単位の割合として、より好ましくは0〜7モル%、更に好ましくは0〜5モル%である。
【0025】
上記ポリエーテル共重合体は、重量平均分子量が15000〜200000であることが好ましい。重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、ポリエーテル共重合体の粘度がより好適な範囲となり、取扱いにより優れたものとなる。ポリエーテル共重合体の重量平均分子量は、より好ましくは20000〜150000であり、更に好ましくは25000〜120000であり、一層好ましくは30000〜100000であり、より一層好ましくは30000〜70000であり、特に好ましくは30000〜60000であり、最も好ましくは30000〜50000である。上記重量平均分子量は、後述する実施例と同様の方法により測定することができる。
【0026】
上記ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して、溶媒の含有量が5質量%以下であることが好ましい。上記溶媒は、通常ポリエーテル共重合体の重合時に使用されるものであり、共重合体に残存する溶媒の含有量が5質量%以下であれば、共重合体に含まれる揮発分を充分に少なくできるため、ポリエーテル共重合体が、より安全性に優れることとなる。上記溶媒の含有量として、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。
上記溶媒の含有量は、以下の測定条件下で、ガスクロマトグラフィー測定により求めることができる。
測定機器:GC−17A(島津製作所社製)
カラム:CBP−1(島津製作所社製)
測定方法:アセトンに測定対象物の固形分が1質量%となるように溶解し、フィルターにて濾過したものを測定する。
【0027】
上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、飽和炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
上記飽和炭化水素溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、3−メチルヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2−エチルヘキサン、n−デカン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、さらに好ましくはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンである。
上記エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;ジメトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
上記芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられ、好ましくはトルエン、キシレンである。
【0028】
上記ポリエーテル共重合体は、融点が20℃以上であることが好ましい。融点が20℃以上であると、ポリエーテル共重合体が室温で固体となるため、ポリエーテル共重合体をシート化、ペレット化する際の取り扱い性が向上する。融点はより好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは40℃以上である。また、融点は好ましくは70℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、更に好ましくは55℃以下である。
上記ポリエーテル共重合体の融点は、以下の測定条件下で、DSC(示差走査熱量計)により求めることができる。
測定機器:DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)
測定方法:減圧乾燥機で80℃、2h乾燥を行い、反応混合物中の揮発分を除いたサンプルを、分析装置内で100℃まで急熱(急加熱)することにより一旦ポリマーを融解後、−150℃まで急冷することにより結晶化したポリマーを5℃/minで100℃まで昇温する際の結晶の融解挙動から融点を求める。さらに、100℃から5℃/minで−20℃まで冷却する際に現れる結晶化に伴う発熱ピークから結晶化温度を求める。
【0029】
上記ポリエーテル共重合体は、アルカリ金属の含有量が、ポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.001〜0.1質量%であることが好ましい。上記アルカリ金属は、主に共重合体の重合反応に用いられる触媒に由来する成分であり、より好ましくは0.001〜0.08質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.05質量%である。上記アルカリ金属としては、特に制限されず、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。触媒としては主にアルカリ金属塩を用いるが、アルカリ金属塩としては、特に制限されないが、例えばアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルコラート等が挙げられる。これらの具体例及び好ましい例は、後述する本発明の共重合体の製造に用いられる反応開始剤における化合物と同様である。
上記アルカリ金属の含有量は、後述する実施例と同様の方法により測定することができる。
【0030】
上記ポリエーテル共重合体は、ポリエーテル共重合体に含まれるSn、P、Alの合計含有量がポリエーテル共重合体の総量100質量%に対して0.01質量%以下であることが好ましい。上記Sn、P、Alは、主に共重合体の重合反応に用いられる触媒に由来する成分であり、Sn、P、Alは、Liイオン伝導性や電池性能を低下させる要因となるが、Sn、P、Alの合計含有量が0.01質量%以下であれば、ポリエーテル共重合体のLiイオン伝導性やポリエーテル共重合体を電池として用いた場合の電池性能をより向上させることができる。
Sn、P、Alの合計含有量として、より好ましくは0.007質量%以下であり、更に好ましくは0.005質量%以下である。なお、上記のSnなどの元素は、重合体の触媒に用いられる場合があり、完全に除去することが困難な場合がある。Sn、P、Alの合計含有量が0.00001質量%以上であれば、その除去のための過度の精製作業を省略することができ、生成物の収率及び生産効率をより向上させることができる。生成物の収率及び生産効率の観点から、より好ましくは0.0001質量%以上である。
上記Sn、P、Alの含有量は、後述する実施例と同様の方法により測定することができる。
【0031】
上記ポリエーテル共重合体は、ガラス転移温度が−50℃以下であることが好ましい。より好ましくは−90〜−55℃であり、更に好ましくは−80〜−60℃である。なお、ポリエーテル共重合体のガラス転移温度(Tg)は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、後述する単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式より算出することができる。
【0032】
【数1】
【0033】
式中、Tg’は、ポリエーテル共重合体のTg(絶対温度)である。W’、W’、・・・W’は、全単量体成分に対する各単量体の質量分率である。Tg、Tg、・・・Tgは、各単量体成分からなる単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。
【0034】
上記ポリエーテル共重合体は、共重合体を構成する元素の総原子数を100%としたときの酸素原子数の割合が10.0〜14.5%であることが好ましい。酸素原子数の割合の下限は、11.0%がより好ましく、12.0%が更に好ましく、12.5%が特に好ましい。上限は、14.1%がより好ましく、14.0%が更に好ましく、13.9%が特に好ましい。酸素原子数の割合が12〜14%の範囲にあると、ポリエーテル共重合体中の酸素原子とLiイオンとの親和性が適度に制御され、Liイオンの移動性が向上するため、低温領域でのイオン伝導性がより優れたものとなる。
上記ポリエーテル共重合体における酸素原子数の割合は、モル%で表すこともでき、上記ポリエーテル共重合体は、共重合体を構成する元素の総原子100モル%に対する酸素原子の割合が10.0〜14.5モル%であることが好ましい。酸素原子数の割合の下限は、11.0モル%がより好ましく、12.0モル%が更に好ましく、12.5モル%が特に好ましい。上限は、14.1モル%がより好ましく、14.0モル%が更に好ましく、13.9モル%が特に好ましい。
ポリエーテル共重合体における酸素原子数の割合は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0035】
本発明はまた、エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体であって、上記ポリエーテル共重合体は、下記一般式(3);
【0036】
【化3】
【0037】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表されるアルキレンオキシドと、下記一般式(4);
【0038】
【化4】
【0039】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜18の有機基を表す。nは、0〜12の整数を表す。)で表されるグリシジル化合物とを含む単量体成分を反応させて得られ、上記単量体成分は、ハロゲン元素の含有量が、単量体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であるポリエーテル共重合体でもある。上記R、Rの具体例及び好ましい例並びにnの好ましい範囲は、上記一般式(2)におけるR、R及びnと同様である。
【0040】
上記ポリエーテル共重合体の製造に使用する単量体成分中のハロゲン元素の含有量が上記範囲であることにより、得られるポリエーテル共重合体に含まれるハロゲン元素の量を低減させることができる。
【0041】
このようなポリエーテル共重合体を製造する方法、すなわち、エーテル結合を側鎖に有するポリエーテル共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、下記一般式(3);
【0042】
【化5】
【0043】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)で表されるアルキレンオキシドと、下記一般式(4);
【0044】
【化6】
【0045】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜18の有機基を表す。nは、0〜12の整数を表す。)で表されるグリシジル化合物とを含む単量体成分を反応させる工程(以下、反応工程ともいう)を含み、上記単量体成分は、ハロゲン元素の含有量が、単量体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であるポリエーテル共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0046】
上記一般式(3)におけるR、一般式(4)におけるR及びRの具体例及び好ましい例、並びに、一般式(4)におけるnの好ましい範囲は、一般式(1)及び一般式(2)において述べたとおりである。
上記一般式(4)で表されるグリシジル化合物としては、特に制限されないが、具体例及び好ましい例としては、一般式(2)で表される構造単位を導入するための原料単量体と同様のものが挙げられる。
【0047】
上記ポリエーテル共重合体の製造に用いられる単量体成分は、一般式(3)で表されるアルキレンオキシドと一般式(4)で表されるグリシジル化合物とを含む限り特に制限されないが、一般式(3)で表されるアルキレンオキシドの量は、全単量体成分100モル%に対して50〜99モル%であることが好ましい。より好ましくは60〜99モル%であり、更に好ましくは70〜99モル%であり、特に好ましくは80〜99モル%である。
【0048】
上記単量体成分に含まれる一般式(4)で表されるグリシジル化合物の量は、全単量体成分100モル%に対して50モル%以下であることが好ましい。上記一般式(4)で表されるグリシジル化合物を50モル%以下の割合で上記ポリエーテル共重合体の製造を行うと、連鎖移動反応の影響を低減させることができ、分子量をより充分に増加させることができる。一般式(4)で表されるグリシジル化合物の割合として、より好ましくは1〜40モル%であり、更に好ましくは1〜30モル%であり、特に好ましくは1〜20モル%である。
【0049】
上記単量体成分は、一般式(3)で表されるアルキレンオキシド、一般式(4)で表されるグリシジル化合物以外のその他の単量体を含んでいてもよい。
その他の単量体としては、特に制限されないが、例えば上述の側鎖に架橋性官能基を有する構造単位を導入するための原料単量体等が挙げられる。
上記その他の単量体の含有割合は、特に制限されないが、全単量体成分100モル%に対して0〜10モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜7モル%であり、更に好ましくは0〜5モル%である。
【0050】
上記単量体成分中のハロゲン元素の含有量は、単量体の総量100質量%に対して0.3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。単量体成分中のハロゲン元素の含有量が上記好ましい範囲であれば、得られるポリエーテル共重合体に含まれるハロゲン元素の量をより充分に低減させることができる。
【0051】
上記ポリエーテル共重合体の製造に用いられる一般式(4)で表されるグリシジル化合物の製造方法は、特に制限されないが、水酸基含有化合物とグリシジル基を有する化合物(以下、グリシジル基含有化合物ともいう)とを反応させて製造する方法が好ましい。
上記水酸基含有化合物は、下記一般記式(5);
【0052】
【化7】
【0053】
(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数1〜18の有機基を表す。nは、0〜12の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましい。上記R、Rの具体例及び好ましい例並びにnの好ましい範囲は、上記一般式(2)におけるR、R及びnと同様である。
水酸基含有化合物としてより好ましくは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコール化合物、フェノール、フェノキシエタノール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールであり、更に好ましくはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノールである。
【0054】
上記グリシジル基含有化合物としては、グリシジル基を有し、水酸基含有化合物と反応して上記一般式(4)で表されるグリシジル化合物を生成する限り特に制限されないが、例えば、エピハロヒドリン、グリシドール等が挙げられる。好ましくは、エピハロヒドリンである。グリシジル基含有化合物としてエピハロヒドリンを用いることにより、得られた一般式(4)で表されるグリシジル化合物を蒸留することにより未反応のエピハロヒドリンをより充分に除去することができるため、一般式(4)で表されるグリシジル化合物中のハロゲン元素の量をより充分に低減することができる。エピハロヒドリンの中でもエピクロルヒドリンが特に好ましい。
【0055】
上記水酸基含有化合物とグリシジル基含有化合物との反応において、水酸基含有化合物の使用量は、特に制限されないが、グリシジル基含有化合物100モル%に対して100〜400モル%であることが好ましい。
【0056】
上記一般式(4)で表されるグリシジル化合物の製造において用いる触媒としては特に制限されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ナトリウム、カリウム等のアルコラート等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましい。
【0057】
上記水酸基含有化合物とグリシジル基含有化合物との反応により得られたグリシジル化合物は、ハロゲン元素の除去を行ったうえで、ポリエーテル共重合体の製造に用いることが好ましい。これによりポリエーテル共重合体の製造に用いる単量体成分中のハロゲン元素の含有量をより充分に低減させることができる。
ポリエーテル共重合体の製造に用いるグリシジル化合物中のハロゲン元素の含有量は、特に制限されないが、グリシジル化合物100質量%に対して0.0001〜0.5質量%であることが好ましい。より好ましくは0.0001〜0.1質量%である。
【0058】
上記ハロゲン元素の除去の方法は特に制限されないが、例えば、蒸留精製、吸着剤処理、水洗等が挙げられる。ハロゲン元素の除去の方法として好ましくは、蒸留精製である。
蒸留精製の方法は、特に制限されないが、精留塔を用いて行うことが好ましい。
【0059】
上記ハロゲン元素の除去を蒸留により行う場合に、蒸留における温度は特に制限されないが、40〜250℃が好ましい。より好ましくは50〜220℃であり、更に好ましくは60〜200℃である。
このような温度範囲で蒸留を行うと、グリシジル化合物の熱分解を抑制できる。
【0060】
上記反応工程において単量体成分(単量体混合物)を重合する方法としては、特に制限されないが、溶液重合法、沈殿重合法、懸濁重合等が挙げられる。これらの中でも、ポリエーテル共重合体の生産性の観点から溶液重合法により行うことが好ましい。また、溶液重合法により重合を行うことにより、ポリエーテル共重合体の分子量の制御がしやすくなり、上述の好ましい重量平均分子量を有するポリエーテル共重合体が得やすくなる。
【0061】
また、上記単量体混合物の反応系への添加方法としては、特に制限されないが、溶媒を仕込んだ反応系に単量体混合物を一括して供給してもよいし、連続的に又は断続的に供給する方法としてもよい。更に単量体混合物を連続的に又は断続的に供給する場合には、単量体混合物をあらかじめ調整しておいて供給してもよいし、単量体混合物に含まれる原料単量体等を各々独立して供給し、反応系中に添加された後に混合物となる形態であってもよい。
上述した製造方法の中でも、あらかじめ仕込んだ溶媒中に単量体混合物を連続的に供給しながら溶液重合を行う方法が、生産性、安全性の観点から、好ましい形態である。
【0062】
上記ポリエーテル共重合体の製造方法において、溶媒の存在下に重合反応を行う場合に用いられる溶媒としては、通常重合反応に用いられる溶媒を用いることができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、3−メチルヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、2−エチルヘキサン、n−デカン、2,2,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン、メチルシクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメトキシエタン等のエチレングリコールジアルキルエーテル類の溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒;等の有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、トルエン、キシレンが好ましい。トルエン、キシレンを溶媒として用いた場合には、共重合体が溶媒に溶けた状態で均一に重合反応を行うことができ、共重合体の分子量の制御をより充分にすることができる。
【0063】
上記溶媒の使用量としては、特に制限されず、反応に用いる単量体混合物の種類や、反応形態等に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量部に対して、溶媒を0〜300質量部使用することが好ましい。より好ましくは、10〜250質量部であり、更に好ましくは、50〜200質量部である。
【0064】
上記ポリエーテル共重合体の製造は、重合反応の際に通常用いられる反応開始剤、酸化防止剤、可溶化剤等を用いて行うことができる。
上記反応開始剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;カリウムアルコラート、ナトリウムアルコラート等のアルコラート;炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩;金属カリウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物触媒又はそれらを表面改質した触媒;バリウム酸化物、バリウム水酸化物、層状化合物、ストロンチウム酸化物、ストロンチウム水酸化物、カルシウム化合物、セシウム化合物、複合金属シアン化錯体、ルイス酸やフリーデルクラフツ触媒等の酸触媒;等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルコラート、Al−Mg系複合酸化物触媒、バリウム水酸化物、ストロンチウム水酸化物、カルシウム化合物、セシウム化合物、複合金属シアン化錯体等のアニオン重合の開始剤(求核種)である。ポリエーテル共重合体の製造において使用する単量体成分に含まれるハロゲン元素は、アニオン重合の開始剤と反応しやすいが、本発明の製造方法では、反応工程において使用する単量体成分中のハロゲン元素の含有量が上述の範囲であることから、ハロゲン元素によって上記反応開始剤や生長末端が失活し、重合反応の進行を阻害することを充分に抑制することができ、上述の好ましい重量平均分子量を有するポリエーテル共重合体が得やすくなる。したがって、反応開始剤としてアニオン重合の開始剤を使用する場合に、特に、本発明の技術的意義が発揮される。
上記反応開始剤としてより好ましくは、アルコラートである。アルコラートとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシド等が挙げられる。アルコラートの中でも好ましくは、カリウムt−ブトキシドである。上記反応開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、上記反応開始剤としてカリウムt−ブトキシド等のアルカリ金属のアルコラートを使用することにより、有機溶媒中で均一系の重合が可能となるため、反応時間や反応温度による分子量制御が容易となる。そのため、共重合体の分子量が大きくなりすぎることを防止することができ、さらに共重合体中のSn、P、Alの含有量を充分に抑制することができる。
【0065】
上記反応開始剤の使用量は、合成されるポリエーテル共重合体の分子量に影響するため、上記反応開始剤の使用量としては、合成するポリエーテル共重合体の分子量に応じて適宜設定することができるが、例えば、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、反応開始剤を0.01〜1.0質量%使用することが好ましい。このような使用量とすることによって、上述した好ましい分子量を持ったポリエーテル共重合体を製造することができる。反応開始剤の使用量としてより好ましくは、単量体混合物の仕込み量100質量%に対して、0.01〜0.5質量%であり、更に好ましくは、0.02〜0.1質量%である。
上述したとおり、重合反応においてハロゲン元素により反応開始剤が失活し、重合反応の進行を阻害するおそれがあるが、上記反応開始剤の物質量が、単量体成分に含まれるハロゲン元素の物質量よりも多い場合には、上記重合反応の進行の阻害をより充分に抑制することができる。
【0066】
反応開始剤の添加方法としては、特に制限されず、単量体混合物を反応系中に供給する前に、溶媒と共に仕込んでいてもよいし、単量体混合物の供給を開始した後に一括して投入する、又は、連続的にあるいは断続的に供給することとしてもよい。
【0067】
上記ポリエーテル共重合体を製造する重合反応時の反応温度としては、50〜150℃であることが好ましい。より好ましくは、60〜130℃であり、更に好ましくは、70〜120℃である。また、反応時間は、1〜24時間であることが好ましい。より好ましくは、2〜20時間であり、更に好ましくは、3〜15時間である。
また、上記重合反応時の反応系中の雰囲気は、不活性ガス雰囲気であることが好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスが好ましい。
なお、上記ポリエーテル共重合体の製造方法は、上述した重合反応を行う工程に引き続いて熟成工程を行ってもよいし、更には共重合体の重合時の溶媒を留去する脱揮工程、ポリエーテル共重合体を精製回収する工程を行ってもよい。
【0068】
上記ポリエーテル共重合体の製造方法において、脱揮工程を行うことが好ましい。これにより、ポリエーテル共重合体に含まれる溶媒をより充分に除くことできる。
上記脱揮工程は、重合体の重合反応に用いた溶媒を留去する限り特に制限されないが、減圧下で行うことが好ましく、圧力が13〜100000Paであることが好ましい。より好ましくは133〜70000Paであり、更に好ましくは1333〜40000Paである。
【0069】
上記脱揮工程の温度は、重合反応に用いた溶媒の沸点よりも高い限り、特に制限されないが、圧力が1333〜40000Paの場合、好ましくは40℃〜300℃であり、より好ましくは60℃〜250℃であり、更に好ましくは90℃〜200℃である。
【0070】
共重合体(プレポリマー)が有する架橋性官能基を反応させて架橋した共重合体(架橋体)とする場合は、共重合体(プレポリマー)、重合開始剤、イオン性化合物、及び、溶媒(必要であれば)を含む混合物溶液を調製した後に、溶媒を用いた場合には乾燥させて溶媒を除去し、その後、UV光照射や加熱することで、架橋性官能基を連鎖的に付加反応させる方法等を用いることができる。
共重合体の分子内にある架橋性官能基を反応させて架橋体を形成する方法としては、このように共重合体が有する架橋性官能基を連鎖的に付加反応させる方法の他、共重合体が有する架橋性官能基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物(架橋剤)を加えて架橋構造を形成する方法を用いることも可能である。
【0071】
上記UV光照射や加熱することで、架橋性官能基を連鎖的に付加反応させる方法に用いる重合開始剤としては光ラジカル重合開始剤や、熱ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生し、熱ラジカル重合開始剤は加熱により重合開始ラジカルを発生し、光アニオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により重合開始アニオン種を発生する重合反応を開始するのに必要な成分である。
また、重合体と有機酸リチウム塩とを混練押出により薄膜に成形した後に、重合体の反応性を活かして架橋反応させることで架橋構造を形成しても良い。
なお、ここでいうアニオン重合開始剤とは、重合開始アニオン種を発生する重合反応を開始する成分であって、光アニオン重合開始剤に該当しないものを意味する。
【0072】
(活物質含有組成物)
本発明のポリエーテル共重合体はまた、本発明のポリエーテル共重合体と電極活物質とを含む活物質含有組成物として好適に用いることができる。
上記活物質含有組成物は、本発明のポリエーテル共重合体を含む限りその他の重合体を含んでもよい。
上記活物質含有組成物は、上記ポリエーテル共重合体を活物質含有組成物の総量100質量%に対して、1〜50質量%含むことが好ましい。より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。
【0073】
上記電極が正極の場合、正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であれば良く、リチウム二次電池で使用される従来公知の正極活物質が用いられる。
具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、LiMn系でNiに一部置換したLiNi0.5Mn1.5、LiNi1−x−yCoMnやLiNi1−x−yCoAl(0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系酸化物等の遷移金属酸化物、LixAyDzPO(式中、AはCr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される1種又は2種以上であり、Dは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y及び希土類元素の群から選ばれる1種又は2種以上である。x、y及びzは、0<x<2、0<y<1.5、0≦z≦1.5を満たす数である。)等のオリビン構造を有する化合物、遷移金属を複数取り入れた固溶材料(電気化学的に不活性な層状のLiMnOと、電気化学的に活性な層状のLiM’’O[M’’=Co、Ni等の遷移金属]との固溶体)等が正極活物質として例示できる。これらの正極活物質は、1種を単独で使用してもよく、又は、複数を組み合わせて使用してもよい。
上記オリビン構造を有する化合物中のA成分として好ましくはFe、Mn、Niであり、特に好ましくはFeである。上記D成分として好ましくは、Mg、Ca、Ti、Alである。これらオリビン構造を有する化合物の具体例としては、リン酸鉄リチウムやリン酸マンガンリチウム等であり、正極活物質がこれら化合物を含むことが好ましい。更に好ましくはカーボン被覆したリン酸鉄リチウムである。リン酸鉄リチウムは、安全性や過充電に対する安定性が高く、また、鉄、リン等の豊富な資源を用いるものであることから安価であり、製造コストの面でも好ましい。
正極活物質がオリビン構造を有する化合物を含む割合としては、正極活物質全体100質量%に対して、オリビン構造を有する化合物が70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは正極活物質がオリビン構造を有する化合物のみから成ることである。
このように上記二次電池は、正極活物質としてオリビン型リン酸鉄のリチウム塩を用いて構成されることが好ましい。
【0074】
上記電極が負極の場合、負極活物質としては、負極活物質として一般に用いられるものを用いることができ、リチウムイオン電池の場合には、重合体、有機物、ピッチ等を焼成して得られたカーボンや天然黒鉛、Li金属、或いは、Al、Si、Ge、Sn、Pb、In、Zn及びTiから選ばれる少なくとも1種、或いは各元素を含む合金、或いは各元素を含む酸化物、チタン酸リチウム等のリチウムを可逆的に吸蔵、放出可能な材料等を用いることができる。
【0075】
上記活物質含有組成物は、上記電極活物質を活物質含有組成物の総量100質量%に対して、50〜90質量%含むことが好ましい。より好ましくは60〜90質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。
【0076】
(電解質塩組成物)
本発明のポリエーテル共重合体はまた、本発明のポリエーテル共重合体と電解質塩とを含む電解質塩組成物として好適に用いることができる。
上記電解質塩組成物は、上記ポリエーテル共重合体を電解質塩組成物の総量100質量%に対して、1〜50質量%含むことが好ましい。より好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。
【0077】
上記電解質塩は、ハロゲンイオン、ClO、SCN、NO、RSOSO(式中、R及びRは、同一又は異なって、F、CF、又は、Cを表す。)、PF、BF、AsF、CFSO、及び、[B(CN)4−p(R(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は、原子数1〜30の有機置換基を表し、pは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンと、アルカリ金属カチオンとからなるイオン性化合物とを含むことが好ましい。
上記電解質塩組成物は、イオン性化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、上記電解質塩組成物が上記イオン性化合物以外の、その他の電解質塩を含んでいてもよい。
上記アニオンは、RSOSO(R及びRは、同一又は異なって、F、CF、又は、Cを表す。)、PF、及び、[B(CN)4−p(R(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は、原子数1〜30の有機置換基を表し、pは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、R´SOSO´(R´及びR´は、同一又は異なって、F又はCFを表す。)及び[B(CN)4−p(R(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、又は、原子数1〜30の有機置換基を表し、pは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0078】
上記アルカリ金属カチオンは、リチウムカチオンであることが好ましい。
イオン性化合物としてこのようなものを用いると、上記電解質塩組成物が電池中の電解質やバインダー等として更に好適に用いることができるものとなる。上記イオン性化合物の好適な具体例としては、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、リチウムジフルオロスルホニルイミド(LiFSI)、リチウムテトラシアノボレート(LiTCB)を挙げることができる。
【0079】
上記電解質塩組成物は、本発明の共重合体100質量%に対して、電解質塩を1〜80質量%含有することが好ましい。電解質塩の含有割合がこのような範囲内であると、更に良好なイオン伝導性を発揮することができる。より好ましくは、60質量%以下含有することであり、更に好ましくは、50質量%以下含有することであり、特に好ましくは、40質量%以下含有することである。
【0080】
上記電解質塩組成物により膜を形成する場合、膜厚が5〜300μmとなるように形成することが好ましい。より好ましくは10〜200μmであり、更に好ましくは20〜100μmである。
【0081】
上記電解質塩組成物は、電解質成分(電解質材料が支持体を含む場合は電解質材料から支持体を除いた成分)中に上記共重合体及び上記イオン性化合物以外のその他の成分(不純物)を含んでいてもよいが、その含有量は電解質塩組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。不純物の含有量が5質量%より多いと、イオン伝導性が低下したり、電気化学的反応により性能が経時的に劣化したりする場合がある。より好ましくは、1質量%以下である。
ここでいう不純物には、本発明におけるエーテル結合を側鎖に有する共重合体の製造時に用いられる重合禁止剤、連鎖移動剤、溶媒や未反応の反応原料、反応原料が分解してできる副生成物等が含まれる。
【0082】
上記電解質塩組成物は、可塑性や塗膜性、難燃性向上のため特許第5529717号公報18頁記載の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0083】
上記電解質塩組成物は、25℃における粘度が100〜100000cps(0.1〜100Pa・s)であることが好ましい。粘度がこのような範囲にあると、バインダー能力や、塗膜作製の作業性が向上する。より好ましくは、300〜50000cps(0.3〜50Pa・s)である。
電解質塩組成物の粘度は、例えば、市販のB型粘度計、E型粘度計により測定することができる。
【0084】
上記電解質塩組成物はまた、上記共重合体を支持するための支持体を含んで構成されるものであってもよいが、支持体を含まないで構成されるものが好ましい。本発明の共重合体により得られる電池用材料は機械的強度が充分なものであり、支持体が無くても自立膜を形成することができ、リチウムイオン電池をはじめとする二次電池に搭載することが可能となる。
なお、上記支持体としては、例えば、一般的に用いられる織布、不織布、多孔質膜及びガラス成形体からなる群より選択される少なくとも1種からなるものや、更に親水性を向上させるための親水化処理をおこなったもの等が挙げられる。
【0085】
(バインダー、導電助剤)
本発明のポリエーテル共重合体は、イオン伝導性に優れ、二次電池の充放電特性を優れたものとすることができる。このような本発明のポリエーテル共重合体は、正極用バインダー、負極用バインダー、無機固体電解質用バインダー等のバインダーや、導電助剤としても好適に用いることができる。また、本発明のポリエーテル共重合体と電解質塩とを含む電解質塩組成物も上記バインダーや導電助剤として好適に用いることができる。なお、バインダーとして用いる場合は電気化学特性を損なうことなく、成形性向上を図ることができる。
【0086】
(電解質)
上記電解質塩組成物は、電解質を構成することができる。
上記電解質は、上記電解質塩組成物を用いて構成される限り特に制限されず、その他の成分を含んでいてもよい。
上記電解質は、上記その他の成分を、電解質の総量100質量%に対して、0.1〜50質量%含むことが好ましい。より好ましくは0.5〜40質量%、更に好ましくは1〜30質量%である。
【0087】
(電極)
上記活物質含有組成物は、電極を構成することができる。
上記電極は、上記活物質含有組成物を用いて構成される限り特に制限されないが、活物質含有組成物、導電助剤、必要に応じてその他のバインダー等を含むスラリーを基板上に塗布、乾燥させて得ることができる。導電助剤、その他のバインダー、電極を製造するためのスラリーに用いる溶媒、分散剤に関しては、特開2011―142073号公報に記載のものが好適に使用できる。
【0088】
(電池)
上記電極及び/又は上記電解質は、電池を構成することができる。
電池は、主に、正極、電解質、負極より構成され、上記電池は、上記電極、電解質のうち少なくとも1つを用いて構成されていればよく、好ましくは、上記電極、電解質の両方を用いて構成されることである。
上記電池の形態としては、一次充電池;放電が可能な二次電池(蓄電池);メカニカルチャージ(負極の機械的な交換)を利用した電池;正極や負極とは別の第3極(例えば、充放電中に発生する酸素や水素を除去する極)を利用した電池等、いずれの形態であってもよい。例えば、二次電池(蓄電池)であることが好ましい。
【発明の効果】
【0089】
本発明のポリエーテル共重合体は、上述の構成よりなり、高いイオン伝導性を有し、電池性能を向上させることができるものであり、電池の電解質等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0090】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0091】
実施例における各種測定の際は次の条件で行った。
(重量平均分子量)
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めた。
測定機器:HLC−8320(東ソー社製)
分子量カラム:TSKgel G5000PW、TSKgel G4000PW、TSKgel G3000PW、TSKgel G2500PW(いずれも東ソー社製)
溶離液:アセトニトリル/0.08M酢酸ナトリウム水溶液(体積比:50/50)の混合液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール
測定方法:溶離液に測定対象物の固形分が0.1質量%となるように溶解し、フィルターにて濾過したものを測定。
【0092】
(イオン伝導度)
1.溶液の調整
ポリエーテル共重合体10部、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)2.5部を、溶媒としてアセトニトリル(キシダ化学株式会社製、LBGグレード)23部に溶解させ、電解質塩組成物の混合溶液(1)を得た。
2.イオン伝導度測定用セルの作製
厚み0.3mmのPETフィルムをφ12mmのポンチで打ち抜き、セル面積(S)の枠を作製した。得られた枠を厚さ0.015mmのアルミ箔に載せ、上記にて得られた混合溶液(1)を枠内に塗布した。60℃で24時間の真空乾燥を行い、溶媒を除去した後、架橋体とする場合はここで架橋させた。次いで上面にアルミ箔を載せ、平板プレス機を用いて50℃2分2MPaの条件下でプレスを行い平坦化させることで、イオン伝導度測定用のセルを作製した。得られたセルの厚みからアルミ箔の厚みを除算することで、セル膜厚(D)を算出した。
3.イオン伝導度の測定
インピーダンスアナライザ(1260型、ソーラトロン株式会社製)を用いて、10mV、1MHz〜1kHzの条件にてセルの測定を行った。得られたプロファイルから実数軸との交点をセル抵抗(R)とし、以下の計算によりイオン伝導度を算出した。
イオン伝導度= セル膜厚(D)/(セル抵抗(R)* セル面積(S))
【0093】
(Sn、P、Al、アルカリ金属及びハロゲン元素の含有量)
以下の測定条件下で、ICP発光分析測定により求めた。
測定機器:CIROS−120(株式会社リガク製)
測定方法:ポリエーテル共重合体を超純水(18.2Ω・cm超)で50〜1000倍に希釈して測定溶液とし、試料に含まれるSn、P、Al、アルカリ金属及びハロゲン元素量を測定した。なお、定量限界(下限値)は1ppmである。
【0094】
(共重合体中の酸素原子数の割合)
以下の測定機器を用いて、炭素、水素、酸素原子の組成(重量%)を求めた後、各原子の原子量をもとに共重合体中の酸素原子数の割合を求めた。
測定機器:元素分析装置マイクロコーダーJM10(ジェイ・サイエンス・ラボ社製)
【0095】
[製造例1]
ジエチレングリコールメチルグリシジルエーテルの製造
攪拌機、滴下ロート、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた1リットルのフラスコ内に、ジエチレングリコールモノメチルエーテル500部と水酸化カリウム333部とを仕込んだ。窒素雰囲気下、攪拌しながら40℃に昇温した後、エピクロルヒドリン770部を内温40℃以下に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、5時間熟成を行い、生成した塩化カリウムをろ過により取り除いた。
次いで、反応ろ液を攪拌機、温度計、減圧制御装置及び精留塔を備えた1L蒸留装置に仕込み、120℃のオイルバスにつけ昇温を開始した。内圧を100kPaから10kPaまで徐々に減圧することにより、原料であるエピクロルヒドリンを回収した。さらに、オイルバスを150℃に昇温後、0.3kPaまで徐々に減圧することにより、所望のジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(以下、DEGMGともいう)425gを分離した。
このようにして得られたジエチレングリコールメチルグリシジルエーテルのGC純度は99.9%以上、ICP発光分析による塩素含有量は0.0047質量%で、原料として使用したジエチレングリコールモノメチルエーテルに対する収率は約49%であった。
【0096】
[実施例1]
マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)および添加口を備えた1Lの反応器を窒素により3回置換操作(0.5MPa)を行った後、この反応器にモレキュラーシーブにより脱水処理を施したトルエン(含有水分量:20ppm以下)283部と、反応開始剤(触媒)としてのt−ブトキシカリウム(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)1.0部とを順次投入し、反応器内の圧力が0.3MPaになるまで窒素で加圧した。
マックスブレンド翼を130rpmで回転させて撹拌しながら、オイルバスで反応器の内温を90℃まで昇温した後、エチレンオキシド191部及び、モレキュラーシーブにより脱水処理を施した製造例1記載のジエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(含有水分量:200ppm以下)40部を重合熱による内温上昇および内圧上昇を監視・制御しながら、100℃±5℃で供給を行い、反応を行った。供給終了後、さらに100℃±5℃で2時間保持して熟成させ、重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、減圧乾燥機にて未反応原料及びトルエンを取り除き、共重合体を得た。
共重合体の製造に用いたグリシジル化合物の種類、グリシジル化合物中の塩素の含有量、各単量体の使用量(部)、反応開始剤の使用量(部)及び各単量体の割合(モル%)を表1に示し、転化率(%)(グリシジル化合物の消費率)、共重合体の重量平均分子量、共重合体中のCl、Sn、P、Al、Kの含有量、酸素原子数の割合(O密度)、及び、70℃におけるイオン伝導度を測定した結果を表2に示した。なお、表2中の共重合体中のCl、Sn、P、Alの含有量項目における「n.d.」はICP測定の結果、定量限界以下であったことを示す。
【0097】
[実施例2〜6及び比較例1〜3]
単量体及び反応開始剤を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、共重合体を調製し、実施例1と同様に共重合体の特性について測定し、結果を表2に示した。なお、比較例3では、重合せず、共重合体を得ることができなかった。また、比較例1及び2の共重合体は、重量平均分子量が小さいため、測定セルを作成できずイオン伝導度の測定を行うことができなかった。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
[実施例7〜10]
単量体及び反応開始剤触媒を表3のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、共重合体を調製し、実施例1と同様に共重合体の特性について測定し、結果を表4に示した。なお、イオン伝導度については、70℃に加えて、40℃、50℃、60℃においても測定を行った。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】