【実施例】
【0021】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施例は、河川(水域)に架けられた橋の橋脚に対して施工する橋脚の補修・補強工事に用いる仮締切り構造体の設置工法に適用したものである。尚、本発明は、河川以外の水域に架けられた橋の橋脚に対しても適用(施工)可能である。
【0023】
図2中の矢印Yは、河川の水流の方向を表している。図面は、河川の上流側と下流側に二本の橋脚1・2が隣接状態に設けられていて、二本の橋脚1・2のうちの一方(下流側)の橋脚1が補修・補強工事を行う工事対象橋脚1であって、他方(上流側)の橋脚2は補修・補強工事を行わない工事対象外橋脚2である現場を示している。
【0024】
また、図面は、水流に沿った長さを有する断面楕円形の橋脚1・2を図示しているが、この形の橋脚への設置工法に限定されるものではなく、現場の橋脚の形状に応じて仮締切り構造体3の形状等は適宜設計変更可能である。
【0025】
以下、設置手順を説明する。
【0026】
先ず、前記工事対象橋脚1の水面より上方位置(非水没箇所)に図示省略の作業用足場を設置する。尚、工事対象橋脚1の周囲の水面に浮体(浮桟橋)を設置して(浮かべて)この浮体を作業用足場としても良い。
【0027】
次いで、この作業用足場を利用して、工事対象橋脚1の外周を囲むように設置され中心部に橋脚1を貫通配設可能な貫通部9が設けられている筒状の仮締切り構造体3を構築する。
【0028】
具体的には、この仮締切り構造体3は、複数の分割壁材10が前記工事対象橋脚1の周方向及び高さ方向に組み合せ連結されて円筒状に構成されている。
【0029】
次いで、例えば工事対象橋脚1の上方に平衡保持用天秤11を設置し、この平衡保持用天秤11の数箇所に設けられた降下索12を前記仮締切り構造体3に連結する。
【0030】
具体的には、平衡保持用天秤11は、枠体で構成されていて、その数箇所が前記工事対象橋脚1の幅広上部の数箇所に固定された吊り索13に連結されることによって、中央の空間部に前記工事対象橋脚1を貫通配設しつつ工事対象橋脚1の上方に水平吊り下げ状態で設置されており、さらに、この平衡保持用天秤11の数箇所とこれに対応する前記橋脚1の数箇所の外周面との間に図示省略のパイプサポートを架設して突っ張ることにより、平衡保持用天秤11が工事対象橋脚1に対して揺動不能状態に設置されている。
【0031】
また、各降下索12は、チェーンブロックなどの昇降装置(図示省略)によって昇降駆動可能に構成されており、昇降装置の制御により平衡保持用天秤11に対し仮締切り構造体3を降下移動し得るように設けられていると共に、この際、降下索12を介して連結されている平衡保持用天秤11が揺動不能な水平状態に固定されていることにより、仮締切り構造体3が傾きにくい略平衡状態に保たれて降下可能となるように構成されている。
【0032】
次いで、この工事対象橋脚1と仮締切り構造体3とに水中降下用ガイド4を設置する。
【0033】
具体的には、水中降下用ガイド4は、前記工事対象橋脚1対向側面に設置される上下方向に長さを有する降下用レール14と、前記仮締切り構造体3内の対向部に前記工事対象橋脚1に向けて内向きに突設され突出先端に前記降下用レール14に嵌合して滑走可能な滑走部材16を有する滑走支持アーム15とから構成されている。
【0034】
更に詳しくは、降下用レール14は、断面溝形(コ字形)の金属製長尺材(溝型鋼材)で構成されており、その溝底部を前記工事対象橋脚1の外周面に沿わせて工事対象橋脚1に縦設状態に固定されている。
【0035】
また、この降下用レール14は、工事対象橋脚1の水流方向と平行な平坦状対向側面に片側二箇所ずつ固定されていると共に、工事対象橋脚1の水流方向に対し直交配設する湾曲状対向側面にも片側一箇所ずつ固定されている。即ち、降下用レール14は、工事対象橋脚1外周面の合計六箇所に固定されている(
図2参照)。
【0036】
一方、滑走支持アーム15は、詳しく図示していないが断面H字形の金属製長尺材で構成され、この滑走支持アーム15の先端に滑走部材16として採用されたローラー16が付設されている。尚、滑走部材16は、本実施例のローラー16に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。
【0037】
また、この滑走支持アーム15は、前記仮締切り構造体3の内周面の、前記降下用レール14に対応する六箇所の対向二方向から内向きに水平突設するように構築されて、この六箇所の滑走支持アーム15の先端の前記滑走部材16を、工事対象橋脚1に固定されている六箇所の前記降下用レール14に滑走可能に嵌合(連結)させている(
図2参照)。
【0038】
また、この六箇所の滑走支持アーム15は、詳しく図示していないが、仮締切り構造体3内で上下二段設けられている。
【0039】
従って、六本(六箇所)の降下用レール14を合計十二個の滑走部材16が滑走することにより、工事対象橋脚1に対し仮締切り構造体3が姿勢を保持したままスムーズに降下移動可能となるように構成されている。
【0040】
図中符号17は滑走支持アーム15の水平突設状態を補強すると共に、仮締切り構造体3の保形強度向上にも寄与する補強フレームである。
【0041】
次いで、前記工事対象橋脚1に隣接する他方の工事対象外橋脚2と前記仮締切り構造体3とに補助ガイド5を設置する。
【0042】
具体的には、補助ガイド5は、工事対象外橋脚2対向側面に設置される上下方向に長さを有する一対の降下用補助レール6と、前記仮締切り構造体3の二箇所から工事対象外橋脚2に向けて突出され突出先端が一対の前記降下用補助レール6に降下移動可能に連結される一対の連結アーム7とから構成されている。
【0043】
更に詳しくは、一対の降下用補助レール6は、工事対象外橋脚2の水流方向と平行な平坦状対向側面に夫々縦設状態に固定されている。
【0044】
また、この一対の降下用補助レール6は、
図2,
図3に示すように、夫々が、工事対象外橋脚2の上流側に固定される第一レール6Aと、工事対象外橋脚2の下流側に固定される第二レール6Bとから構成され、この第一レール6Aと第二レール6Bとが互いに平行関係となるように縦設固定されている。
【0045】
第一レール6Aは、金属製長尺平板材で構成されており、第一固定部材19を介して工事対象外橋脚2の平坦状対向側面の上流側に、この平坦状対向側面から外方へ離間状態で固定されていると共に、この第一レール6Aの板面が工事対象外橋脚2の平坦状対向側面と平行となるようにして配設固定されている(
図3参照)。
【0046】
第二レール6Bは、断面溝形(コ字形)の金属製長尺材(溝型鋼材)で構成されており、第二固定部材20を介して工事対象外橋脚2の平坦状対向側面の下流側に、この平坦状対向側面から外方へ離間状態で固定されていると共に、この第二レール6Bの開放部が上流側(第一レール6A側)を向くようにして配設固定されている(
図3参照)。
【0047】
一方、連結アーム7は、詳しく図示していないが断面H字形の金属製長尺材で構成されていると共に、一対のこの連結アーム7が仮締切り構造体3の工事対象外橋脚2側の側面部の二箇所から工事対象外橋脚2に向けて平行に突設されて、夫々の連結アーム7の先端が、工事対象外橋脚2の平坦状対向側面の夫々に対し間隔を置いた臨設状態に配設されている。図中符号21は一対の連結アーム7間に架設された補強桟である。
【0048】
また、夫々の連結アーム7の先端に、前記降下用補助レール6を滑走する滑走部材8として採用されたローラー8が付設されている。尚、滑走部材8は、本実施例のローラー8に限定されるものではなく、適宜設計変更可能である。
【0049】
更に詳しくは、夫々の連結アーム7の先端の対向内側にベース部18が設けられ、このベース部18の先端部(上流側端部)と基端部(下流側端部)とに前記ローラー8(8A・8B)が付設されている。
【0050】
また、先端部のローラー8Aは、その回動軸の軸方向が水流方向と平行となるようにして設けられ、基端部のローラー8Bは、その回動軸の軸方向が水流方向と直交する方向となるようにして設けられている。
【0051】
そして、先端部のローラー8Aが、工事対象外橋脚2の平坦状対向側面の上流側に固定されている前記第一レール6Aの内側板面に滑走可能に当接するように配設されていると共に、基端部のローラー8Bが、工事対象外橋脚2の平坦状対向側面の下流側に固定されている前記第二レール6Bの溝底部に滑走可能に当接するように配設されることにより、連結アーム7が前記降下用補助レール6に滑走降下移動可能に連結されている。
【0052】
即ち、ローラー8Aと第一レール6Aとによって水流と直交する方向への仮締切り構造体3の揺動が防止されるように支持されると共に、ローラー8Bと第二レール6Bとによって水流を受ける仮締切り構造体3の荷重が支持されて、仮締切り構造体3の水流方向の揺動が防止されつつ仮締切り構造体3を安定的に降下移動可能となる前記補助ガイド5が採用されている。
【0053】
また、この一対の連結アーム7は、
図1に示すように、仮締切り構造体3から上下二段突設されている。
【0054】
従って、降下用補助レール6を合計八個の滑走部材8が滑走することにより、工事対象外橋脚2に対し連結アーム7を介して仮締切り構造体3が姿勢を保持したままスムーズに降下移動可能となり、よって、工事対象橋脚1と仮締切り構造体3とに設置した通常の前記水中降下用ガイド4と、これとは別に工事対象外橋脚2と仮締切り構造体3とに設置した補助ガイド5との二つのガイドが仮締切り構造体3を支えながら降下させるので、この二つの降下ガイド機能によりたとえ水流が強い現場であっても仮締切り構造体3を安定的に水中へと降下させることができるように構成されている。
【0055】
図中符号22は、第一レール6Aと第二レール6Bの固定間隔に応じてローラー8A・8B間の位置を調整するための位置調整機構部である。
【0056】
尚、補助ガイド5を設置してから、前記水中降下用ガイド4を設置するようにしても良い。
【0057】
次いで、この仮締切り構造体3底部と前記工事対象橋脚1との間の隙間を図示省略の適宜な止水手段で止水し、止水完了後に仮締切り構造体3内に入り込んでいる水を排水して、仮締切り構造体3内を作業用ドライエリアとし、施工完了となる。
【0058】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。