(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る回転電機及びその冷却システムについて好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0018】
[1.電動車両14の概略構成]
図1は、本実施形態に係る回転電機10及び冷却システム12が適用される電動車両14の左側面図である。以下の説明では、電動車両14のシート16に着座した運転者から見て前後、左右及び上下の方向を説明する。
【0019】
電動車両14は、鞍乗型の電動二輪車であって、車体フレーム18を備える。車体フレーム18の前端部には、ヘッドパイプ20が設けられている。ヘッドパイプ20は、ハンドル22を操向可能に支持する。運転者は、ハンドル22を操作することにより、フロントフォーク24を介して前輪26を操舵する。
【0020】
バッテリ28は、車体フレーム18に支持される不図示のバッテリケースに収納されている。車体フレーム18の後方には、シート16が支持されている。車体フレーム18の後部、且つ、シート16の下方には、回転電機10が支持されている。また、車体フレーム18の下方には、インバータ32が支持されている。さらに、車体フレーム18の後部には、スイングアーム34がピボット軸36を中心に上下に揺動可能に支持されている。スイングアーム34の後端には後輪38(負荷)が支持されている。
【0021】
回転電機10は、ブラシレスモータであって、バッテリ28から供給される直流電力をインバータ32が交流電力に変換した際に、変換後の交流電力によって駆動する駆動用電動機である。回転電機10の出力軸40は、電動車両14の車幅方向(左右方向)の左側に突出している。出力軸40と後輪38との間には、チェーン42が架け渡されている。電動車両14は、出力軸40からチェーン42を介して後輪38に回転電機10の出力を伝達させることで走行する。一方、回転電機10の回生時には、回転電機10で発電された交流電力がインバータ32で直流電力に変換され、バッテリ28に充電される。
【0022】
回転電機10の左側には、ポンプ44が配設されている。また、電動車両14には、回転電機10を冷却するための冷却システム12が搭載されている。冷却システム12は、冷却対象の回転電機10と、車体フレーム18の前側部分と前輪26との間の空間で支持される冷媒クーラ46と、冷媒クーラ46と回転電機10の上端部とを接続する不図示の供給配管と、ポンプ44と冷媒クーラ46とを接続する排出配管50とから構成される。
【0023】
冷媒クーラ46は、電動車両14の走行中、前方からの風(走行風)によって冷媒を冷却する空冷式のクーラである。回転電機10の駆動に起因してポンプ44が駆動すると、冷媒クーラ46で冷却された冷媒が供給配管を介して回転電機10に供給され、回転電機10の内部が冷却される。ポンプ44は、回転電機10の内部を冷却することで熱を帯びた冷媒を、排出配管50を介して冷媒クーラ46に排出する。
【0024】
なお、電動車両14は、ウィンドスクリーン52や、カウル等のカバー部材54によって覆われている。
【0025】
[2.回転電機10の構成]
次に、本実施形態に係る回転電機10の構成について、
図2〜
図10を参照しながら説明する。
【0026】
<2.1 回転電機10の概略構成>
回転電機10は、ハウジング60を有する。
図2及び
図8に示すように、ハウジング60は、左右方向に延びて右側が大きく開口し、左側に壁部60aが形成された有底筒状のハウジング本体60bと、ハウジング本体60bの開口部を塞ぐ右カバー部材60cと、ハウジング本体60bの壁部60aを覆う左カバー部材60dとを有する。ハウジング本体60bと右カバー部材60cとによって、比較的大きな容積の第1内部空間62が形成される。また、壁部60aと左カバー部材60dとによって、比較的小さな容積の第2内部空間63が形成される。
【0027】
第1内部空間62には、ロータ64、ロータシャフト66及びステータ68が収納される。ロータ64は、第1内部空間62の中央部分において、左右方向(ロータ64の軸方向)に延びる筒状のロータである。なお、ロータ64は、複数の鋼板を軸方向に積層することにより構成される。
【0028】
ロータ64の左右方向の両端には、円盤状の2つのエンドプレート70L、70Rが設けられている。ロータ64及び2つのエンドプレート70L、70Rは、
図2及び
図4に示すように、左右方向に挿通するボルト72とナット74とが螺合することで、左右方向に締結される。
【0029】
ロータシャフト66は、2つのエンドプレート70L、70Rを貫通するようにロータ64と同軸に連結され、左右方向に延びている。ロータシャフト66の左端側は、壁部60aを貫通して第2内部空間63に臨入している。この場合、ロータシャフト66の左端側は、壁部60aに配設されたベアリング76Lに軸支されている。また、ロータシャフト66の右端側は、右カバー部材60cに配設されたベアリング76Rに軸支されている。
【0030】
図2及び
図3に示すように、ステータ68は、ハウジング本体60bとロータ64との間で、ハウジング本体60bの内周面に固定されている。従って、ロータ64はインナロータであり、ステータ68はアウタステータである。なお、ステータ68は、複数の鋼板を軸方向に積層することにより構成される。また、ステータ68の内周面側には、巻線68aを収納する巻線スロット68bが設けられている。さらに、ハウジング60は、ステータ68の外周を覆うように、ロータ64、ロータシャフト66及びステータ68を収納する。
【0031】
図3及び
図4に示すように、ロータ64には、磁石78を収納する複数の磁極スロット80が該ロータ64の外周面側に所定角度間隔で設けられている。磁極スロット80のうち、磁石78が収納されていない部分は、磁気飽和を抑制するフラックスバリア82として機能する。また、ロータ64の内周面側には、複数の磁極スロット80に対応して、後述する複数の冷媒通路128(第4冷媒通路)が設けられている。複数の磁極スロット80及び複数の冷媒通路128は、
図2及び
図4に示すように、左右方向に延びている。
【0032】
なお、
図3及び
図4に示す巻線スロット68bの形状及び個数、磁極スロット80の形状及び個数、並びに、回転電機10の極数は、回転電機10の仕様に応じて適宜設定すればよい。
図3及び
図4では、一例として、12極の回転電機10を図示しているが、6極又は8極の回転電機10でもよいことは勿論である。
【0033】
図3、
図4及び
図6A〜
図7Bに示すように、ロータ64及び2つのエンドプレート70L、70Rの各内周面には、それぞれ、内側に突出する2つの凸部84、86L、86Rが軸方向に形成されている。また、
図3〜
図7Bに示すように、ロータシャフト66の外周面には、これらの凸部84、86L、86Rに嵌合可能な複数の溝88が形成されている。
【0034】
図2に示すように、第2内部空間63において、ロータシャフト66の左端部には、ロータ側ギヤ90が同軸に取り付けられている。第2内部空間63の上側部分には、出力軸40が2つのベアリング92に軸支されている。出力軸40の左端部は、左カバー部材60dを貫通して左方向に突出している。出力軸40の右端部には、ロータ側ギヤ90に噛合するリダクションギヤ94(外部負荷用ギヤ)が取り付けられている。
【0035】
一方、第2内部空間63の下側部分には、ポンプ44の入力軸96が2つのベアリング98に軸支されている。ポンプ44は、左カバー部材60dに取り付けられ、入力軸96が第2内部空間63に臨入している。入力軸96の先端部(右端部)には、ロータ側ギヤ90に噛合するポンプ用ギヤ100が取り付けられている。従って、リダクションギヤ94及びポンプ用ギヤ100は、ロータシャフト66のロータ側ギヤ90から径方向に位置をずらして配置されている。
【0036】
ロータシャフト66の右端部の近傍には、ロータ64(ロータシャフト66)の回転角度を検出するレゾルバ102が配設されている。レゾルバ102は、ロータシャフト66の右端部に固定されたレゾルバロータ102aと、レゾルバロータ102aの外周面に対向するように右カバー部材60cに固定されたレゾルバステータ102bとから構成される。なお、レゾルバ102の構成及び動作は周知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0037】
<2.2 回転電機10の特徴的な構成>
次に、本実施形態に係る回転電機10の特徴的な構成について説明する。該回転電機10の特徴的な構成とは、冷却システム12(
図1参照)から供給される冷媒の回転電機10内での経路に関するものである。
【0038】
具体的に、
図2、
図8及び
図9に示すように、ハウジング本体60bの上端部には、供給配管に接続される冷媒供給口110が設けられている。
【0039】
ハウジング60には、供給配管及び冷媒供給口110を介して供給される冷媒によって、ハウジング60を冷却するためのジャケット112が設けられている。ジャケット112は、ハウジング60とステータ68との間、具体的には、ハウジング本体60bの内周面側、及び、右カバー部材60cの内側に設けられる。一方、ハウジング60の底部、すなわち、ハウジング本体60bの下方には、第1内部空間62から落下した冷媒を貯留する冷媒貯留部114が設けられている。なお、冷媒がオイルである場合、冷媒貯留部114は、オイルパンである。
【0040】
ジャケット112は、ハウジング本体60bの内周面側に設けられ、冷媒供給口110から供給される冷媒を流す冷媒通路112a(第1冷媒通路)と、冷媒通路112aと第1内部空間62とを連通させ、冷媒通路112aを流れる冷媒をステータ68に吐出させる吐出口112b(第1吐出口)と、右カバー部材60cの内側に設けられ、冷媒通路112aを流れる冷媒を分岐させてロータシャフト66に供給する分岐通路112cとを備える。
【0041】
冷媒通路112aは、冷媒供給口110に連通し、ハウジング本体60bの内側で、ステータ68の外周面に沿って、冷媒供給口110から冷媒貯留部114に向かって設けられている。すなわち、冷媒通路112aは、ハウジング本体60bの内側に所定角度間隔で設けられ、左右方向に延びる複数本を1組とする冷媒流路116aと、ハウジング本体60bの左端部又は右端部で、周方向に隣接する一方の1組の冷媒流路116aと他方の1組の冷媒流路116aとを連結する連結流路116bとから構成される。従って、1組の冷媒流路116aは、左右方向の一端部が一方の連結流路116bに連結され、他端部が他方の連結流路116bに連結されている。
【0042】
この結果、
図9に示すように、冷媒通路112aは、全体的に、ステータ68の外周面と対向するように、S字状又は螺旋状に設けられる。また、
図2、
図8及び
図9に示すように、吐出口112bは、冷媒通路112aのうち、上側の前後の2組の冷媒流路116aと、第1内部空間62とを連通するように形成されていることが望ましい。
【0043】
なお、冷媒通路112aは、
図8及び
図9の形状に限定されることはなく、S字状又は螺旋状に形成されていればよい。例えば、ハウジング本体60bの内側にS字状又は螺旋状に形成した空洞を冷媒通路112aとしてもよい。
【0044】
図2及び
図9に示すように、ジャケット112には、2本の分岐通路112cが設けられている。すなわち、一方の分岐通路112cは、前方の右上側の連結流路116bから斜め下後方に延び、後述するロータシャフト66の内部流路120aに連結している。他方の分岐通路112cは、後方の右上側の連結流路116bから斜め下前方に延び、ロータシャフト66の内部流路120aに連結している。
【0045】
図2〜
図5B、
図9及び
図10に示すように、ロータシャフト66は、2本の分岐通路112cから供給される冷媒を流す冷媒通路120(第2冷媒通路)を備える。冷媒通路120は、ロータシャフト66の中心に左右方向に設けられ、分岐通路112cに連通する内部流路120aと、内部流路120aから径方向に開口する吐出口120b(第3吐出口、ロータシャフト側吐出口)と、ロータシャフト66の外周面で左右方向に設けられた複数の外部流路120cとから構成される。なお、外部流路120cの本数は、前述のフラックスバリア82の本数と同数である。
【0046】
内部流路120aは、
図2に示すように、第1内部空間62に対応する部分、具体的には、ロータシャフト66を支持する2つのベアリング76L、76Rの間で左右方向に設けられる。また、
図2〜
図7Bに示すように、ロータシャフト66の外周面に周方向に所定角度間隔で溝88が設けられることで、ロータ64の内周面と各溝88とによって、2つのエンドプレート70L、70Rの間で左右方向に延びる複数の外部流路120cが形成される。従って、ロータシャフト66の外周面には、断面視で、複数の外部流路120cが放射状に形成される。
【0047】
複数の外部流路120cは、それぞれ、複数の吐出口120bのうち、いずれか1つの吐出口120bと連通している。
図2、
図4、
図5A及び
図5Bに示すように、複数の吐出口120bは、ロータシャフト66の左側又は右側に設けられている。この場合、ロータシャフト66の周方向に隣接する2つの外部流路120cのうち、一方の外部流路120cは左側の吐出口120bと連通し、他方の外部流路120cは右側の吐出口120bと連通している。従って、ロータシャフト66には、左側の吐出口120bに連通する外部流路120cと、右側の吐出口120bに連通する外部流路120cとが、周方向に交互に設けられている。なお、ロータシャフト66の2つのベアリング76L、76Rの近傍には、内部流路120aと第1内部空間62とを連通させる他の吐出口122も形成されている。
【0048】
図2、
図4、
図6A〜
図7B、
図9及び
図10に示すように、2つのエンドプレート70L、70Rの左右方向に沿った内側部分(ロータ64の端部に対向する平面部分)には、ロータシャフト66の複数の外部流路120cから供給される冷媒を流す複数の冷媒通路124L、124R(第3冷媒通路、エンドプレート側冷媒通路)と、複数の吐出口126L、126R(第2吐出口)とが設けられている。また、ロータ64は、エンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124Rから供給される冷媒を流す冷媒通路128を備える。
【0049】
この場合、2つのエンドプレート70L、70Rの内側部分には、それぞれ、複数の冷媒通路124L、124Rが所定角度間隔で設けられている。複数の冷媒通路124L、124Rは、左右方向から視て、エンドプレート70L、70Rの内周面(ロータシャフト66)から放射状に延びるように形成されている。また、複数の吐出口126L、126Rは、それぞれ、所定角度間隔で、エンドプレート70L、70Rの周方向に隣接する2つの冷媒通路124L、124Rの中間に位置するように形成されている。なお、2つのエンドプレート70L、70Rには、それぞれ、前述のボルト72が挿通する挿通孔130が4箇所形成されている。
【0050】
但し、左右方向から視て、2つのエンドプレート70L、70Rの間では、複数の冷媒通路124L、124Rが角度又は位置をずらして設けられると共に、複数の吐出口126L、126Rが角度又は位置をずらして設けられている。すなわち、エンドプレート70L、70Rでは、冷媒通路124L、124R及び吐出口126L、126Rが非対称に配設されている。要は、左右方向から見たときに、複数の冷媒通路124Lと複数の冷媒通路124Rとが重なり合わず、且つ、複数の吐出口126Lと複数の吐出口126Rとが重なり合わなければよい。
【0051】
図6Bには、左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124L及び吐出口126Lに対する右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124R及び吐出口126Rの位置を一点鎖線で図示している。
【0052】
すなわち、ロータ64に形成されている複数の冷媒通路128のうち、隣接する2つの冷媒通路128について、一方の冷媒通路128は、左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lと、右側のエンドプレート70Rの吐出口126Rとに連通している。また、他方の冷媒通路128は、左側のエンドプレート70Lの吐出口126Lと、右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rとに連通している。つまり、ロータ64の複数の冷媒通路128は、ロータ64の周方向に沿って、互い違いに、異なるエンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124Rと吐出口126L、126Rとに連通している。
【0053】
具体的に、
図2、
図6B、
図7B、
図9及び
図10に示すように、左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lは、それぞれ、ロータシャフト66の右側の吐出口120bに連通する複数の外部流路120cのうち、いずれか1つの外部流路120cと連通する。また、左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lは、ロータ64の複数の冷媒通路128のうち、いずれか1つの冷媒通路128を介して、右側のエンドプレート70Rの吐出口126Rのいずれかに連通している。
【0054】
一方、右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rは、それぞれ、ロータシャフト66の左側の吐出口120bに連通する複数の外部流路120cのうち、いずれか1つの外部流路120cと連通する。また、右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rは、ロータ64の複数の冷媒通路128のうち、いずれか1つの冷媒通路128を介して、左側のエンドプレート70Lの吐出口126Lのいずれかに連通している。
【0055】
そのため、ロータ64の複数の冷媒通路128について、ロータ64の周方向に隣接する2つの冷媒通路128のうち、一方の冷媒通路128は、その左端部が左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lのいずれかに連通し、右端部が右側のエンドプレート70Lの吐出口126Rのいずれかに連通する。また、当該隣接する2つの冷媒通路128のうち、他方の冷媒通路128は、その右端部が右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rのいずれかに連通し、左端部が左側のエンドプレート70Lの吐出口126Lのいずれかに連通している。
【0056】
なお、複数の冷媒通路124L、124R及び複数の吐出口126L、126Rは、
図4、
図6A〜
図7B、
図9及び
図10に示す形状に限定されることはない。冷媒通路128に連通できるのであれば、どのような形状であってもよい。また、複数の冷媒通路128についても、
図3、
図4、
図9及び
図10に示す形状に限定されることはなく、ロータ64内で左右方向に冷媒を流すことができるものであれば、どのような形状であってもよい。
【0057】
[3.回転電機10及び冷却システム12の動作]
次に、本実施形態に係る回転電機10及び冷却システム12の動作について、
図11のフローチャートを参照しながら説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、
図1〜
図10を参照しながら説明する。
【0058】
バッテリ28からインバータ32に直流電力が供給されると、インバータ32は直流電力を三相の交流電力に変換し、変換後の交流電力を回転電機10のステータ68の巻線68aに供給する。巻線68aへの交流電力の供給によってロータ64が励磁され、ロータ64及びロータシャフト66が回転することで、回転電機10が駆動される。ロータシャフト66の回転は、ロータ側ギヤ90からリダクションギヤ94を介して出力軸40に伝達される。出力軸40は、チェーン42を介して後輪38を駆動させる。この結果、電動車両14が走行を開始する。
【0059】
また、ロータシャフト66の回転は、ロータ側ギヤ90からポンプ用ギヤ100を介して入力軸96に伝達される。これにより、ポンプ44は、入力軸96の回転に基づき駆動し、冷媒貯留部114に貯留されている冷媒(オイル)を汲み出し、外部への排出を開始する。排出された冷媒は、排出配管50を介して冷媒クーラ46に送出される。冷媒クーラ46は、電動車両14の前方からの走行風により、供給された冷媒を冷却し、冷却した冷媒を供給配管を介して回転電機10の冷媒供給口110に供給する。これにより、冷却システム12による回転電機10の冷却が開始される。
【0060】
回転電機10の内部において、冷媒供給口110に供給された冷媒は、ジャケット112の冷媒通路112aを流れる。前述のように、冷媒通路112aは、1組の冷媒流路116aと連結流路116bとによって、ステータ68の外周面を囲むように、ハウジング本体60bの内周面側でS字状又は螺旋状に形成されている。従って、冷媒は、ステータ68の外周面に沿って、ハウジング本体60bの上端部側からハウジング本体60bの底部の冷媒貯留部114に向かって、S字状又は螺旋状の冷媒通路112aを流れる。これにより、外方から回転電機10の内部への熱の伝達を抑えつつ、ハウジング本体60bの冷却を行うことができる。
【0061】
また、冷媒通路112aの上端部側には、複数の吐出口112bが設けられているので、冷媒は、各吐出口112bからステータ68に向けて、第1内部空間62内に吐出される。吐出された冷媒がステータ68の巻線68aに付着することで、巻線68aを冷却することができる。巻線68aから熱を奪った冷媒は、ステータ68から第1内部空間62の下方に落下し、冷媒貯留部114に貯留される。
【0062】
一方、冷媒の一部は、冷媒通路112aに連結された分岐通路112cを介してロータシャフト66の内部流路120aに供給される。冷媒が内部流路120aに流れることで、ロータシャフト66が冷却される。また、ロータシャフト66には複数の吐出口120b、122が形成されている。このうち、内部流路120aを流れる冷媒の一部は、ロータシャフト66の左端側又は右端側に形成されている複数の吐出口122から第1内部空間62に吐出される。
【0063】
この場合、ロータシャフト66が回転しているので、冷媒は、当該各吐出口122から遠心力によって径方向に飛散される。この結果、飛散した冷媒は、ベアリング76L、76R、ステータ68、ロータ64(エンドプレート70L、70R)の車幅方向外側の面、右カバー部材60c、及び、ハウジング本体60bの壁部60a等に付着し、これらの部分を冷却する。これらの部分から熱を奪った冷媒は、下方に落下して冷媒貯留部114に貯留される。なお、ベアリング76L、76Rに付着した冷媒は、ベアリング76L、76Rの潤滑も行う。
【0064】
また、内部流路120aを流れる冷媒の一部は、複数の外部流路120cに連通する複数の吐出口120bを介して、いずれか1つの外部流路120cに流れる。前述のように、複数の外部流路120cは、ロータシャフト66の周方向に沿って、互い違いに、左右両側の吐出口120bに連通している。そのため、隣接する2つの外部流路120cの間では、冷媒の流れる方向は、互いに逆向きになる。
図2には、一例として、右側の吐出口120bから上側の外部流路120cを介して左側のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lに向かって冷媒が左方向に流れ、一方で、左側の吐出口120bから下側の外部流路120cを介して右側のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rに向かって冷媒が右方向に流れる場合を図示している。
【0065】
前述のように、2つのエンドプレート70L、70Rの間では、角度又は位置をずらして冷媒通路124L、124R及び吐出口126L、126Rが設けられている。これにより、
図2、
図9及び
図10に示すように、ロータ64において、隣接する2つの冷媒通路128では、互いに異なる方向に冷媒が流れる。具体的に、ロータ64の周方向に隣接する2つの冷媒通路128について、一方の冷媒通路128では、一方のエンドプレート70Lの冷媒通路124L→ロータ64の一方の冷媒通路128→他方のエンドプレート70Rの吐出口126Rの順に冷媒が流れ、他方の冷媒通路128では、他方のエンドプレート70Rの冷媒通路124R→ロータ64の他方の冷媒通路128→一方のエンドプレート70Lの吐出口126Lの順に冷媒が流れる。
【0066】
そして、冷媒は、2つのエンドプレート70L、70Rの吐出口126L、126Rから第1内部空間62に左右方向に吐出される。この場合、ロータ64が回転しているため、複数の吐出口126L、126Rから吐出された冷媒は、遠心力によって、径方向外側、すなわち、ステータ68に向かって飛散する。これにより、飛散した冷媒は、ステータ68(巻線68a)に付着し、ステータ68を冷却する。ステータ68から熱を奪った冷媒は、下方に落下して冷媒貯留部114に貯留される。
【0067】
このように、2つのエンドプレート70L、70Rは、冷媒通路124L、124R及び吐出口126L、126Rの角度又は位置をずらすことで、ロータ64の周方向に互い違いとなるように、冷媒の流れる方向を調整している。この結果、ロータ64、ロータシャフト66及びステータ68の全体として、左右方向の熱勾配を均一化しつつ、ロータ64、ロータシャフト66及びステータ68を冷却することができる。
【0068】
そして、ポンプ44は、ロータシャフト66の回転に応じて駆動するので、冷媒貯留部114に貯留されている冷媒を汲み出し、排出配管50を介して冷媒クーラ46に送出する。電動車両14の走行中、冷却システム12が駆動するので、回転電機10の内部を効率よく冷却することができる。
【0069】
[4.本実施形態の効果]
以上のように、本実施形態に係る回転電機10は、ロータ64、ロータ64に同軸に連結されたロータシャフト66、及び、ステータ68を有する。この場合、回転電機10は、ハウジング60、ジャケット112、2つのエンドプレート70L、70R、冷媒貯留部114及びポンプ44をさらに有する。
【0070】
ハウジング60は、ステータ68の外周を覆うようにロータ64、ロータシャフト66及びステータ68を収納し、外部からの冷媒が供給される冷媒供給口110を備える。ジャケット112は、ハウジング60とステータ68との間に設けられ、冷媒供給口110から供給される冷媒を流す冷媒通路112a(第1冷媒通路)と、冷媒通路112aを流れる冷媒をステータ68に吐出する吐出口112b(第1吐出口)と、冷媒通路112aを流れる冷媒を分岐させてロータシャフト66に供給する分岐通路112cとを備える。ロータシャフト66は、分岐通路112cから供給された冷媒を流す冷媒通路120(第2冷媒通路)を備える。2つのエンドプレート70L、70Rは、ロータ64の軸方向の両端にそれぞれ設けられ、ロータシャフト66の冷媒通路120から供給される冷媒を流す冷媒通路124L、124R(第3冷媒通路)を備える。冷媒貯留部114は、ハウジング60の底部に設けられ、ハウジング60内の冷媒を貯留する。ポンプ44は、ロータ64の回転に応じて駆動することで、冷媒貯留部114に貯留した冷媒を外部に排出する。
【0071】
これにより、ハウジング60を含めた回転電機10の全体が冷却され、回転電機10の周囲から受ける熱の影響を抑えると共に、最適な冷媒経路が構築された回転電機10を実現することができる。また、回転電機10を構成する各部に冷媒の経路が形成されているため、回転電機10の内部を万遍なく冷却することが可能となる。さらに、ハウジング60とステータ68との間、具体的には、ハウジング60の内周面側にジャケット112が設けられることで、回転電機10の全体を積極的に冷却することが可能となる。さらにまた、ポンプ44は、ロータ64の回転に応じて、適切な流量の冷媒を冷媒クーラ46から回転電機10に供給することができるので、より高い冷却性能を実現することができる。
【0072】
また、ロータ64は、2つのエンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124Rから供給される冷媒を流す冷媒通路128(第4冷媒通路)を備える。一方、2つのエンドプレート70L、70Rは、ロータ64の冷媒通路128を流れる冷媒をステータ68に吐出する吐出口126L、126R(第2吐出口)をさらに備える。これにより、ロータ64を効率よく冷却することができると共に、吐出口126L、126Rから吐出された冷媒をロータ64の回転による遠心力でステータ68に飛散させ、ステータ68を効率よく冷却することができる。
【0073】
この場合、ロータシャフト66の冷媒通路120は、ロータシャフト66の内部で軸方向に設けられ、分岐通路112cから供給された冷媒を流す内部流路120aと、内部流路120aからロータシャフト66の径方向に開口する吐出口120b(第3吐出口)と、ロータシャフト66の外周面で軸方向に設けられ、内部流路120aから吐出口120bを介して供給された冷媒をエンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124R又はロータ64に流す外部流路120cとから構成される。これにより、ロータシャフト66、ロータ64及びエンドプレート70L、70Rの冷却を効率よく行うことができる。
【0074】
また、ロータシャフト66の外周面には、断面視で、複数の外部流路120cが放射状に形成され、複数の外部流路120cは、それぞれ、ロータシャフト66に形成された複数の吐出口120bのうち、いずれか1つの吐出口120bに連通している。これにより、複数の外部流路120cに冷媒を効率よく流しつつ、ロータ64及びロータシャフト66の冷却を行うことができる。
【0075】
また、ロータ64には、軸方向に延びる複数の冷媒通路128が、軸方向から視て放射状に形成されている。一方、2つのエンドプレート70L、70Rには、それぞれ、複数の冷媒通路124L、124Rが軸方向から視てロータシャフト66から放射状に形成されると共に、複数の冷媒通路124L、124Rの間に吐出口126L、126Rが設けられている。この場合、軸方向から視て、一方のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lと、他方のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rとが角度又は位置をずらして設けられると共に、一方のエンドプレート70Lの吐出口126Lと、他方のエンドプレート70Rの吐出口126Rとが角度又は位置をずらして設けられている。そして、ロータ64の複数の冷媒通路128は、それぞれ、一方のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lと他方のエンドプレート70Rの吐出口126Rとに連通するか、又は、一方のエンドプレート70Lの吐出口126Lと他方のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rとに連通している。
【0076】
すなわち、2つのエンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124Rの角度又は位置をずらすことで、ロータ64の複数の冷媒通路128における冷媒の流れる方向を調整することができる。これにより、軸方向から視て、ロータ64の複数の冷媒通路128における冷媒の流れる方向は、互い違いに異なる方向となる。この結果、ハウジング60の内部における軸方向に沿った熱勾配を均一にすることができるので、回転電機10の内部を一層効率よく冷却することができる。
【0077】
この場合、ロータ64には、磁石78を収納する磁極スロット80が複数設けられ、ロータ64の複数の冷媒通路128は、複数の磁極スロット80に対応してロータ64に設けられる。これにより
、複数の磁石78を効率よく冷却することが可能となる。
【0078】
また、ジャケット112の冷媒通路112aは、ステータ68の外周面と対向するように、S字状又は螺旋状に設けられている。これにより、外部から回転電機10の内部への熱の伝達を遮断しつつ、ハウジング60を効率よく冷却することができる。
【0079】
この場合、冷媒供給口110は、ハウジング60の上端部に設けられ、冷媒通路112aは、ハウジング60の内側で、ステータ68の外周面に沿って、冷媒供給口110から冷媒貯留部114に向かって設けられ、分岐通路112cは、冷媒通路112aの上側部分からロータシャフト66に向かって設けられている。このように、ハウジング60の上方から下方に向かって冷媒の経路が設けられることで、回転電機10の内部を一層効率よく冷却することが可能となる。
【0080】
また、回転電機10は、ハウジング60内でロータシャフト66の一方側に連結され、ロータシャフト66の回転をポンプ44に伝達するポンプ用ギヤ100と、ハウジング60内でロータシャフト66の一方側に連結され、ロータシャフト66の回転を後輪38(負荷)に伝達するリダクションギヤ94(外部負荷用ギヤ)とをさらに備える。このように、ロータシャフト66の一方側に負荷を駆動させるための2つのギヤが配置されるので、回転電機10をコンパクトに構成することができる。
【0081】
この場合、回転電機10は、電動車両14の駆動用電動機であり、電動車両14の後輪38が回転電機10の負荷であり、リダクションギヤ94及びポンプ用ギヤ100は、ロータシャフト66から径方向に位置をずらして配置されている。これにより、出力軸40の位置設定の自由度が増し、回転電機10を最適なレイアウトに設計することが可能となる。特に、出力軸40からチェーン42を介して後輪38を駆動させる電動車両14の場合、最適なレイアウト設計を実現することができる。
【0082】
また、ロータシャフト66の軸方向の両側は、それぞれ、ベアリング76L、76Rを介してハウジング60内に支持されている。さらに、冷媒がオイルであるため、2つのベアリング76L、76Rの潤滑と、ハウジング60、ロータ64、ロータシャフト66及びステータ68の冷却とを効率よく行うことができる。
【0083】
また、ポンプ44によって回転電機10の外部に排出された冷媒は、外部の冷媒クーラ46によって冷却され、冷却後の冷媒が冷媒供給口110に供給される。これにより、回転電機10を効率よく冷却することが可能となる。
【0084】
この場合、回転電機10は、電動車両14の駆動用電動機であり、冷媒クーラ46は、電動車両14の車体フレーム18の前方に配置されている。これにより、電動車両14の走行中、前方から受ける風によって、冷媒を効率よく冷却することができる。また、電動車両14の運転状態に応じて、回転電機10に対する冷却性能を向上させることができる。
【0085】
また、電動車両14が電動二輪車であるため、上述の回転電機10や冷却系統を電動二輪車に適切に配置することができる。
【0086】
さらに、ロータ64は、磁石78を収納する磁極スロット80が設けられたインナロータであり、ステータ68は、巻線68aを収納する巻線スロット68bが設けられたアウタステータであり、回転電機10は、ブラシレスモータである。これにより、上述の冷却系統の構成を適切に配設することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る回転電機10は、ロータ64、ロータ64に同軸に連結されたロータシャフト66、ステータ68、及び、ロータ64の軸方向の両端にそれぞれ設けられた2つのエンドプレート70L、70Rを有する。
【0088】
この場合、ロータシャフト66は、ロータシャフト66の内部で軸方向に設けられ、外部から供給される冷媒を流す内部流路120aと、内部流路120aからロータシャフト66の径方向に開口する吐出口120b(ロータシャフト側吐出口)と、ロータシャフト66の外周面で軸方向に設けられ、内部流路120aから吐出口112bを介して供給された冷媒をエンドプレート70L、70R又はロータ64に流す外部流路120cとを備える。
【0089】
2つのエンドプレート70L、70Rは、それぞれ、軸方向から視てロータシャフト66から放射状に形成された複数の冷媒通路124L、124R(エンドプレート側冷媒通路)と、複数の冷媒通路124L、124Rの間に設けられた吐出口126L、126R(エンドプレート側吐出口)とを備える。また、ロータ64は、エンドプレート70L、70Rの冷媒通路124L、124Rから供給される冷媒を流す冷媒通路128(ロータ側冷媒通路)を備える。
【0090】
この場合、軸方向から視て、一方のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lと、他方のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rとが角度又は位置をずらして設けられると共に、一方のエンドプレート70Lの吐出口126Lと、他方のエンドプレート70Rの吐出口126Rとが角度又は位置をずらして設けられている。また、ロータ64の複数の冷媒通路128は、一方のエンドプレート70Lの冷媒通路124Lと他方のエンドプレート70Rの吐出口126Rとに連通するか、又は、一方のエンドプレート70Lの吐出口126Lと他方のエンドプレート70Rの冷媒通路124Rとに連通する。
【0091】
これにより、ロータ64において、隣接する冷媒通路128を流れる冷媒の方向が互いに異なる方向になるので、ロータ64の軸方向に沿った温度勾配が均一となるため、ロータ64の冷却性が向上する。さらに、回転電機10の周囲から受ける熱の影響も抑えることができるようになる。これにより、最適な冷媒経路が構築された回転電機10を実現することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る冷却システム12は、上述の回転電機10と、回転電機10の外部に排出された冷媒を冷却し、冷却後の冷媒を冷媒供給口110に供給する冷媒クーラ46とを有する。これにより、回転電機10の周囲から受ける熱の影響を効率よく抑えつつ、回転電機10を効率よく冷却することが可能となる。
【0093】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【解決手段】回転電機10のハウジング60には、冷媒供給口110から供給された冷媒を流すジャケット112が設けられている。ジャケット112は、吐出口112bを介してステータ68に冷媒を吐出させると共に、分岐通路112cを介してロータシャフト66の冷媒通路120に冷媒を供給する。ロータ64の2つのエンドプレート70L、70Rには、冷媒通路120から供給される冷媒を流す冷媒通路124L、124Rが形成されている。ハウジング60の第1内部空間62から落下する冷媒は、冷媒貯留部114に貯留される。ポンプ44は、冷媒貯留部114に貯留した冷媒を外部に排出する。