(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射性物質を吸着する無機粒子を含む分散液又は懸濁液が、さらに、前記無機粒子の表面が有する電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を含み、前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子が水溶性又はコロイド状水分散液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性物質の除染方法。
前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)を前記凝集剤として含有する前記緩衝地帯において、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記イオン性高分子(A)によって凝集させる工程を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法。
前記凝集剤が、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比が1から外れるように配合し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C1)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するように両者の単量体構造単位の1分子における電荷比が1から外れるように調製された両性高分子凝集剤(D1)を含み、
前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)と、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)が過剰に有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C2)、又は両性高分子凝集剤(D2)との組合せを用いて、
前記緩衝地帯において森林及び里山の少なくとも何れかの側に位置し、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を含有する領域で、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)によって凝集固化させる工程と、
前記凝集しないで流れ出る前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を、前記緩衝地帯において田畑又は居住地の側に位置し、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)を含有する領域で、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)によって凝集させる工程と、
を有する請求項1〜3の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法。
前記放射性物質を吸着する無機粒子が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上である請求項1〜8の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法。
前記緩衝地帯に、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器が、前記凝集剤を単独で又は他の材料との混合物の形態で封入した状態にして設置されていることを特徴とする請求項11に記載の放射性物質の除染システム。
前記放射性物質を吸着する無機粒子を含む分散液又は懸濁液が、さらに前記無機粒子の表面が有する電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を含み、前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子が水溶性又はコロイド状水分散液であることを特徴とする請求項11又は12に記載の放射性物質の除染システム。
前記放射性物質を吸着する無機粒子が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上である請求項11〜18の何れか一項に記載の放射性物質の除染システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
除染が未実施又は不十分である森林や里山(雑木林を含む)からセシウム等の放射性物質が居住地又は田畑等へ移行し、せっかく除染を行ったこれら住環境地域が再汚染されるのを防止する必要があり、従来にない放射性物質の除染方法の確立及びその除染システムの構築が求められている。すなわち、(1)汚染された森林や里山(雑木林を含む)に存在する落葉や腐葉土等の土壌に残存又は蓄積するセシウム等の放射性物質を、効率的に、かつ中長期にわたって安定的に吸着し保持できる吸着剤の使用、(2)除染のために使用する放射性物質の吸着剤及び土壌処理液が、森林や里山(雑木林)の土壌に対して植物生育等の点で悪影響を与えないこと、(3)放射性物質による汚染物の減容化を図るため、放射性物質を吸着した状態の吸着剤を、土壌が含まれない状態で森林や里山(雑木林)から分離し捕集できること、及び(4)森林や里山(雑木林を含む)からの放射性物質の移行抑制が継続的に行われ、居住地及び田畑等の再汚染を中長期的に防止できること、等を満たす放射性物質の除染方法及びその汚染システムである。さらに、(5)除染作業の省力化及び除染費用の低減も望まれている。
【0010】
しかしながら、前記特許文献1〜4及び非特許文献1に記載されている除染方法は、ポリイオンコンプレックス水溶液を散布又は注入した汚染土壌の表土や落ち葉及び腐葉土を剥離するものであるため、森林や里山(雑木林を含む)では除染が不十分になりやすい。さらに、汚染された土壌や落ち葉は、分離回収後そのまま保管するか、又は減容化処理が行われるため汚染物の管理及び処理が必要となる。また、除染が行われていない森林や里山(雑木林)から放射性物質が飛散し、除染済みの場所において結果的に放射性物質の蓄積が始まり、時間の経過とともに放射性物質の濃度が高くなる。それにより居住地及び田畑等へ放射性物質の移行がみられ、それらの地域の再汚染が起こりやすくなる。再汚染を防ぐために森林や里山(雑木林)の除染を再度行うことも可能であるが、その場合は除染を何度でも行う必要があるため、住人に対して中長期的に安全で、かつ、安定的に居住できる空間を提供することができない。それだけでなく、広範囲の除染作業を複数回行うことから除染コストの大幅な上昇が避けられない。
【0011】
また、前記特許文献1,2及び非特許文献1に記載されている除染方法は、ゲル化を防止するため塩化ナトリウム等の塩を加えたポリイオンコンプレックス溶液を数百m
2の面積の運動場に散布して土壌固化後に取り除く除染を行いその効果が確認されている。牧草地や水田での小規模な土壌固定並びに土壌剥離の除染実験も行われている。しかしながら、塩害が懸念されているために、大面積の森林や農地への散布は実現していない。チェルノブイリの方法を森林や農地の大面積の除染に適用する場合は、塩害を克服する必要がある。一方で、硫酸アンモニウムなどの植物の生育に影響を与えない塩類を添加することにより塩害を防止する案も考えられる。しかし、森林に硫酸アンモニウムなどの栄養塩を添加すると、森林が栄養過剰となり森林生態系のバランスが崩れるなどの弊害が起こりうる。さらに、ポリイオンコンプレックス水溶液に含まれる塩化ナトリウム等の塩が、降雨等によって居住地及び田畑等へ移行するという場合も考えられるため、その場合は田畑への悪影響を十分に考慮する必要がある。したがって、低い塩濃度で土壌固定剤として機能するポリイオンコンプレックスを用いる必要がある。
【0012】
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、汚染された森林や里山(雑木林を含む)に存在する落葉や腐葉土等の土壌に残存又は蓄積するセシウム等の放射性物質を効率的に、かつ中長期にわたって安定的に吸着し固定化することにより、除染作業が困難であった広範囲の森林や里山(雑木林)の除染を容易に行うだけでなく、森林や里山(雑木林)から居住地又は田畑等への放射線物質の移行を継続的に抑えることにより、居住地及び田畑等の再汚染を防止できる放射線物質の除染方法及びその除染システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、汚染された森林や野山(雑木林を含む)の除染とともに、放射線物質の居住地又は田畑等への移行を防止することにより継続的に生活できる安全な空間を造るため、前記森林や野山(雑木林を含む)の放射線物質を吸着する無機粒子を散布及び注入を行う工程と、森林や野山と居住地又は田畑との境界に設ける緩衝地帯で、前記森林や野山から流入する前記放射線物質を吸着した無機粒子だけを凝集させる工程と、前記凝集した無機粒子を分離回収する工程とを有する除染方法の確立とともに、それらの方法に最適な除染システムを構築することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0014】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、放射性物質に汚染された森林及び里山の少なくとも何れかの除染を行うための除染方法であって、前記の森林及び里山の少なくとも何れかに、放射性物質を吸着する無機粒子を直接散布する工程、又は前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液の塗布若しくは散布及び注入を行う工程と、前記の森林及び里山の少なくとも何れかと居住地又は田畑との境界に、前記無機粒子を凝集させるため
、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する凝集剤を含有する緩衝地帯を設け、前記の森林及び里山の少なくとも何れか一方から、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって前記緩衝地帯に流入した前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる工程と、前記凝集剤とともに凝集した前記無機粒子を分離回収する工程と、を有する放射性物質の除染方法を提供する。
[2]本発明は、前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる工程の前工程として、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器に、前記凝集剤を単独で又は他の材料と混合した形態で封入する工程と、前記凝集剤を含む前記濾過容器を前記緩衝地帯に設置する工程と、を有し、前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる工程の後工程として、前記凝集剤とともに凝集した無機粒子を含む前記濾過容器を分離回収する工程を有する前記[1]に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[3]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子を含む分散液又は懸濁液が、さらに、前記無機粒子の表面が有する電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を含み、前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子が水溶性又はコロイド状水分散液であることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[4]本発明は、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)を前記凝集剤として含有する前記緩衝地帯において、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記イオン性高分子(A)によって凝集させる工程を有する前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[
5]本発明は、前記凝集剤が、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を有
し、且つ、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合することによって前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する高分子凝集剤(C)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、
且つ、カチオン及びアニオンの電荷比が1から外れるように調整することによって前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する両性高分子凝集剤(D)を含み、前記高分子凝集剤(C)又は前記両性高分子凝集剤(D)を含有する前記緩衝地帯において、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記高分子凝集剤(C)又は前記両性高分子凝集剤(D)によって凝集させる工程を有する前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[
6]本発明は、前記凝集剤が、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)
を含み、前記イオン性高分子(A)及び前記イオン性高分子(A)とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(B)の組合せを
用いて、前記緩衝地帯において森林及び里山の少なくとも何れかの側に位置し、前記イオン性高分子(A)を含有する領域で、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記イオン性高分子(A)によって凝集させる工程、及び前記凝集しないで流れ出る前記イオン性高分子(A)を、前記緩衝地帯において田畑又は居住地の側に位置し、前記イオン性高分子(B)を含有する領域で、前記イオン性高分子(B)によって凝集させる工程を有する前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[7]本発明は、前記凝集剤が、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比が1から外れるように配合し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C1)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するように両者の単量体構造単位の1分子における電荷比が1から外れるように調製された両性高分子凝集剤(D1)
を含み、前記高分子凝集剤(C1)又は両性高分子凝集剤(D1)と、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)が過剰に有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C2)、又は両性高分子凝集剤(D2)との組合せを
用いて、前記緩衝地帯において森林及び里山の少なくとも何れかの側に位置し、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を含有する領域で、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)によって凝集固化させる工程と、前記凝集しないで流れ出る前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を、前記緩衝地帯において田畑又は居住地の側に位置し、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)を含有する領域で、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)によって凝集させる工程と、を有する前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[8]本発明は、前記[1]〜[
7]の何れか一項に記載の除染方法において、前記の森林及び里山の少なくとも何れかを除染した後、前記森林及び里山の少なくとも何れかにそのまま残存した状態にある落葉及び該落葉を含む腐葉土を、前記落葉が存在する場所の地面から剥離する工程と、前記剥離された落葉及び腐葉土を、地力回復のために農地又は原野に加える工程と、を有する放射線物質の除染方法を提供する。
[9]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリ
ロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上である前記[1]〜[8]の何れか一項に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[10]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子がベントナイトであることを特徴とする前記[9]に記載の放射性物質の除染方法を提供する。
[11]本発明は、放射性物質に汚染された森林及び里山の少なくとも何れかの除染を行うための除染システムであって、前記の森林及び里山の少なくとも何れかに、放射性物質を吸着する無機粒子を直接散布するための手段、又は前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液の塗布若しくは散布及び注入を行うための手段と、前記の森林、里山及び落葉の少なくとも何れかと居住地又は田畑との境界に、前記無機粒子を凝集させるため
、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する凝集剤を含有させる緩衝地帯を設け、前記の森林及び里山の少なくとも何れか一方から、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって前記緩衝地帯に流入した前記無機粒子を前記凝集剤に凝集させる手段と、前記凝集剤とともに凝集した前記無機粒子を分離回収する手段と、を有する放射性物質の除染システムを提供する。
[12]本発明は、前記緩衝地帯に、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器が、前記凝集剤を単独で又は他の材料との混合物の形態で封入した状態にして設置されていることを特徴とする前記[11]に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[13]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子を含む分散液又は懸濁液が、さらに前記無機粒子の表面が有する電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を含み、前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子が水溶性又はコロイド状水分散液であることを特徴とする前記[11]又は[12]に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[14]本発明は、
前記緩衝地帯が、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)を
、前記凝集剤として含有することを特徴とする前記[11]〜[13]の何れか一項に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[
15]本発明は、前記緩衝地帯が、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を有
し、且つ、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合することによって前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する高分子凝集剤(C)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、
且つ、カチオン及びアニオンの電荷比が1から外れるように調整することによって前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有する両性高分子凝集剤(D)を
、前記凝集剤として含有することを特徴とする前記[11]〜[13]の何れか一項に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[
16]本発明は、前記緩衝地帯において、森林及び里山の少なくとも何れか一方から田畑又は住居地に向けて、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)を
、前記凝集剤として含有する領域、及び前記イオン性高分子(A)とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(B)を含有する領域が、この順でそれぞれ分離されて直列的に設けられていることを特徴とする前記[11]〜[13]の何れか一項に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[17]本発明は、前記緩衝地帯において、森林及び里山の少なくとも何れか一方から田畑又は住居地に向けて、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比が1から外れるように配合し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C1)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するように両者の単量体構造単位の1分子における電荷比が調製された両性高分子凝集剤(D1)を
、前記凝集剤として含有する領域と、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合し、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)が過剰に有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C2)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)が過剰に有する電荷とは逆極性の電荷が過剰になるように両者の単量体構造単位の1分子における電荷比が調製された両性高分子凝集剤(D2)を含有する領域とが、この順でそれぞれ分離して直列的に設けられていることを特徴とする前記[11]〜[13]の何れか一項に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[18]本発明は、前記[11]〜[17]の何れか一項に記載の除染システムにおいて、前記の森林及び里山の少なくとも何れかを除染した後、前記の森林及び里山の少なくとも何れかにそのまま残存した状態にある落葉及び該落葉を含む腐葉土を、前記落葉が存在する場所の地面から剥離する手段と、前記剥離された落葉及び腐葉土を、地力回復のために農地や原野に加える手段と、を有する放射線物質の除染システムを提供する。
[19]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子が、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリ
ロナイト、イライト及びカオリナイトの群から選ばれる1以上である前記[11]〜[18]の何れか一項に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[20]本発明は、前記放射性物質を吸着する無機粒子がベントナイトであることを特徴とする前記[19]に記載の放射性物質の除染システムを提供する。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0015】
本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムによれば、森林や里山(雑木林を含む)の除染ともに、除染が未実施又は不十分である森林や里山(雑木林を含む)からセシウム等の放射性物質が居住地又は田畑等へ移行するのを抑え、すでに除染を行ったこれら住環境地域の再汚染を防止することができる。その際、放射性物質の移行が継続的に抑制されるため、居住地及び田畑等の再汚染を中長期的に防止できる。また、汚染された森林や里山(雑木林を含む)に存在する落葉や腐葉土等の土壌は除染作業時に剥離する必要がなく、その場所に残存又は蓄積するセシウム等の放射性物質を、無機粒子の吸着剤、より好ましくはベントナイト等の粘土粒子によって、効率的に、かつ中長期にわたって安定的に吸着し固定化できるため、除染作業が容易になる。
【0016】
さらに、本発明においては、前記無機粒子を凝集させるために凝集剤を含む処理液として、無機塩を加えなくてもゲル化や沈殿が生じない処理液を使用することができるため、将来的に森林や里山(雑木林を含む)の植物生育等には悪影響を与えることなく、除染処理を進めることができる。他方、本発明は前記凝集剤を含む処理液として無機塩を加えたポリイオンコンプレックス水溶液も使用できるが、その場合は、森林や里山(雑木林を含む)とは別の場所に設ける緩衝地帯において前記ポリイオンコンプレックス水溶液の塗布又は散布が行われるため、森林や里山(雑木林を含む)の植物生育等に与える影響を低減することができる。そして、放射性物質を吸着し保持した状態の無機粒子吸着剤は、凝集した状態で森林や里山から分離し捕集されるため、汚染物の減容化を図ることができる。
【0017】
このように、本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムは、除染の省力化及びコスト低減を図りながら、居住地及び田畑等への放射性物質の移行を継続的に防止することができるため、将来的に安全で、安心感の持てる生活空間を提供することに貢献する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムを模式的に示す図である。
図1には、本発明を適用する場所として森林1及び里山2の両者を示しているが、森林1と里山2との区別は明確でなく、少なくとも森林1及び里山2の少なくとも何れかが含まれればよい。森林1及び里山2の少なくとも何れかの場所は、日常的な人の生活空間である居住地3又は田畑4、並びにそれらの地域に含まれる平地、運動場及び道路等とは区別されるものであり、雑木林等は里山2の一部に含まれるものとして取り扱う。
【0020】
上記で述べたように、森林1や里山(雑木林を含む)2の除染については、面積が広大であること及び起伏に富むこと等から、居住地3又は田畑4等の平地の場合と比べて除染作業が困難であるため、いまだ除染が進んでいない地域が残っている。本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムは、そのような状況下にある森林1及び里山(雑木林を含む)2の少なくとも何れかの除染を行うとともに、汚染された森林1や里山(雑木林)2から居住地3又は田畑4等への放射線物質の移行を継続的に抑え、かつ、放射性物質による汚染物の減容化を図ることを目的としている。そのため、
図1に示すように森林1及び里山2の少なくとも何れかと居住地3又は田畑4との境界に緩衝地帯5を設けるとともに、基本的に次の3つの工程及びそれらの工程を実施するための手段を含むことが特徴である。この緩衝地帯5は、汚染された森林1及び里山2の除染、及び放射性物質による汚染物の凝集及び分離回収、をそれぞれ分離した工程で行うために設けるものであり、本発明は、放射線物質の移行を継続的に抑えることができるという効果を有する点で、従来にはない新しい除染方法及び除染システムを提供することができる。
【0021】
まず、第1の工程として、森林1及び里山2の少なくとも何れかに、放射性物質を吸着する無機粒子を直接散布するか、又は前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液の塗布若しくは散布及び注入を行う。森林1や里山2において放射性物質により汚染された落葉、腐葉土及び表土において、放射性物質は吸着作用により経過時間とともに前記無機粒子に移行し、落葉、腐葉土及び表土から放射性物質の除染が行われる。このとき、前記無機粒子を森林1や里山2の中に散布又は注入した状態で静置することにより、汚染された落葉、腐葉土及び表土から放射性物質が吸着される。本工程では、後で説明するように、多孔性で、かつ正又は負の電荷を有する無機粒子を使用することから、前記無機粒子が散布又は注入された森林1や里山2に留まっている間に吸着した放射性物質は脱着がほとんどみられず、長期にわたって安定的に吸着及び保持される。
【0022】
前記第1の工程において、前記無機粒子や前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液例の塗布若しくは散布及び注入は、汚染された森林1や里山2の場所や面積に応じて、吹き付け法、流し込み法又は刷毛塗り法等によって行われる。また、広範囲の除染を行う場合にはスプレー等による吹き付け法が一般的に使用される。より広範囲に散布する場合は、ヘリコプター等を使用して行ってもよい。前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液は、あらかじめ粘度調整した後、塗布若しくは散布及び注入を行う。また、塗布又は散布のときに、加温できる塗布装置又はスプレー装置を使用することもできる。
【0023】
他方、森林1及び里山2の少なくとも何れかと居住地3又は田畑4との境界に設けた緩衝地帯5には、前記無機粒子を凝集させるための凝集剤を含有させておく。そして、森林1及び里山2の少なくとも何れかに起きる自然的な雨水の流水、又は人工的な流水若しくは噴水を起こすことにより、前記放射性物質を吸着した無機粒子を緩衝地帯5に流入させた後、前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる。本発明においては、この操作を第2の工程として行う。
【0024】
図1に示す緩衝地帯5は、放射性物質を吸着する無機粒子を含有するために設ける地帯であり、森林1及び里山2の少なくとも何れかと居住地3又は田畑4とを区分けできる境界であれば、その広さ(長さと幅)は特に制限されない。その中で、長さは森林及び里山の少なくとも何れかに接する境界の長さに応じて決められるが、幅については極端に広く設定する必要はなく、数メートルもあれば本発明の目的を十分に達成することができる。境界に適当な緩衝地帯が無い場合には、森林1及び里山2の少なくとも何れかにおいて、居住地3又は田畑4に接する境界部分を簡単な造成により緩衝地帯5とすることもできる。また、居住地3又は田畑4において、森林1及び里山2の少なくとも何れかと接する境界部分に適当な空地を見つけ、造成が必要な場合はその造成地を緩衝地帯5として利用してもよい。
【0025】
前記第2の工程において、前記無機粒子を緩衝地帯5に流入させるときは、除染作業が容易に実現できることから自然発生する雨水を利用することが実用的である。雨水の発生は不定期であるが、前記無機粒子が長期間にわたって放置された状態であっても、吸着された放射性物質は安定的に吸着及び保持されるため、除染効果に対してほとんど影響を与えない。雨水発生後に流出した前記無機粒子は、再度、散布又は塗布を行って補充し、新たな放射性物質の除染に使用することができる。また、天候に左右される雨水の発生に頼らず、定期的に前記無機粒子を前記緩衝地帯に流入させたい場合は、例えば、スプリンクラー等の設置又はペリコプター等によって人工的な流水若しくは噴水を起こさせてもよい。
【0026】
前記無機粒子を凝集させる工程においては、前記凝集剤の組合せとして4つの場合を適用し、それぞれの組合せに適した凝集方法を適用する。凝集剤の組合せ及びそれらを適用した無機粒子の凝集方法については、後ほど詳細に説明する。
【0027】
引き続き、第3の工程として、前記凝集剤とともに凝集した前記無機粒子の分離回収を行う。前記無機粒子の分離回収は、無機粒子単独又は該無機粒子が含まれる土壌を、手動で又は剥離・捕集用のクレーン等を用いて行うことができる。分離回収された無機粒子単独又は該無機粒子が含まれる土壌は、一般的に保管用の袋やパックに詰め込みが行われる。その中で、前記無機粒子を土壌とともに分離回収する場合は、上下に捕集用の爪を有するクレーンを用いて土壌を剥離除去した後、そのまま保管用の袋やパックに詰め込むことによって、分離回収作業の迅速化及び簡素化を図ることができる。一方、無機粒子を単独で分離回収する場合は、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器を用いて行うことが好ましい(後述の
図2を参照)。
【0028】
本発明においては、前記の第1〜3の工程に加えて、分離回収された無機粒子又は該無機粒子が含まれる土壌を保管用の袋やパックに詰め込んだ後、放射性物質が外部へ飛散又は漏洩しないような処置が施された場所に搬送されて集めてから保管、保存する工程を採用してもよい。前記無機粒子の保管、保存期間は、あらかじめ放射性物質の半減期間に応じて決められる。すなわち、人体への影響が出ないレベルまでの保存時間が分かれば、少なくともその時間以上に保管・保存の状態で放置する。さらに安全性を高めるために、前記の期間よりも余裕を持ってより長めの保管・保存時間を設定する。最終的に、人体に全く影響が出ないレベルに放射線量の低減が確認される期間まで密閉状態で保管・保存された後、通常の産業廃棄物として廃棄される。また、放射性物質による放射線の影響が無くなった無機粒子は、脱着操作によって再生したものを再利用することができる。他方、前記無機粒子は、保管及び保存期間中であっても、放射線を厳重に管理した環境下で前記放射性物質の脱着操作を行うことにより再生が可能となる場合は、再生品を再利用してもよい。
【0029】
図1は、前記第3の工程において前記凝集剤とともに凝集された放射性物質を吸着する無機粒子が、単独で又は該無機粒子が含まれる土壌とともに分離回収する除染方法の一例であるが、本発明においては前記無機粒子の分離回収を容易にするため、
図2に示す変形例によって放射性物質の除染を行ってもよい。
【0030】
図2に示す除染方法は、前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる工程の前工程として、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器6に、前記凝集剤を単独で又は他の材料と混合した形態で封入する工程と、前記凝集剤を含む濾過容器6を緩衝地帯5に設置する工程と、を有し、前記無機粒子を前記凝集剤によって凝集させる工程の後工程として、前記凝集剤とともに凝集された前記無機粒子を含む濾過容器6を分離回収する工程を有する。
図2に示すように、緩衝地帯5に設置する濾過容器6は、取扱い性及び搬送性の点から小分けにして複数個の集合体で使用することが実用的である。また、本発明においては、前記凝集剤を凝集メカニズムに応じて区別して使用する場合があり、その場合には機能に応じて適切な凝集剤を含む濾過容器6を、機能に応じて区分けされた区域にそれぞれ一つ又は複数個の集合体の形態で設置することができる。
【0031】
前記網状又はメッシュ状の濾過容器6としては、前記無機粒子が通過するに十分な径又は大きさの穴又は孔を有するものを使用する。後述するように、本発明で使用する無機粒子は、平均粒径が数μm以下を有する粘土や無機吸着剤であるため、濾過容器6に形成する穴の径又は孔の大きさは数μm以上であることが必要であり、前記無機粒子が粒度分布を持つため最大粒径等を考慮すると、10μm以上が実用的である。さらに、濾過容器6の作製及び入手を容易に行うため、100μm以上がより好ましい。他方、濾過容器6は前記凝集剤を内包するため、そこに形成する径又は大きさの上限値は数cm以下が好ましい。上限値が5cmを超えると、前記凝集剤を濾過容器6に内包するために特別な工夫を施す必要があるだけでなく、濾過容器6の強度の点からも実用的でない。濾過容器6の材質としては、例えばフレコンパックの作製等で使用される繊維状の布製のものが柔軟性があり、取扱い性に優れるため実用的であるが、軟質又は硬質のプラスチック成型品や薄板の金属製であってもよい。
【0032】
前記凝集剤と混合する他の材料としては、前記無機粒子と混合できる微粉状又は微片状のものを使用することができ、例えば、モミガラ、木材チップ、プラスチック小片又は土砂等が挙げられる。前記無機粒子は、他の材料に均一に混合するだけでなく、他の材料の中心部や端部等に局所的に偏在させてもよい。また、前記凝集剤を濾過容器6の中に単独で内包させる場合は、前記凝集剤の粒子径が一般的に小さいことから、水溶性の接着剤、粘着剤、糊剤又は粘土等を用いて大きな粒子径を有する塊を作製し、その形態で1つ又は複数個を内包させることが実用的である。
【0033】
本発明において、前記放射性物質を吸着する無機粒子を分散液又は懸濁液の形態で塗布若しくは散布及び注入するときは、前記分散液又は懸濁液が、さらに、前記無機粒子が有する平均的な電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を含み、前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子が水溶性又はコロイド状水分散液であることが好ましい。それにより、前記分散液又は懸濁液を塗布若しくは散布及び注入すると同時又はその後に発生しやすい前記無粒子の大気中への飛散を防止することができる。前記無機粒子は微粒子であり、落ち葉や表土表面に一旦塗布又は散布された時だけでなく、その工程の後でも飛散によって一定の場所に留まることができないため、放射性物質の除染効果が十分に得られない場合がある。前記イオン性高分子又は前記ノニオン性高分子は、前記無機粒子を落ち葉や腐葉土等の土壌の一定場所に固定して静置できる機能を有することから、放射性物質の除染効果が促進される。また、高い除染効果を得るには前記無機粒子と落ち葉や腐葉土等の土壌との接触面積を増やす必要があり、前記無機粒子を凝集させないことが不可欠である。したがって、前記無機粒子の表面が有する電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子、又は電荷を有しないノニオン性高分を使用する。
【0034】
前記無機粒子が有する平均的な電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子は、前記無機粒子の表面が有する電荷が正(+)又は負(−)に応じて、それぞれカチオン性高分子又はアニオン性高分子を使用することができる。カチオン性高分子としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種であり、また、アニオン高分子としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのカチオン性高分子及びアニオン性高分子は、自然的な雨水の流水、又は人工的な流水若しくは噴水により溶解又は分散し、前記放射性物質を吸着した無機粒子をできるだけ小さな粒子として前記緩衝地帯に流入させることが望ましい。そのため、水溶性又は水分散性の高分子であることが好ましい。
【0035】
前記ノニオン性高分子は分子中に電荷を有しない高分子を意味するものであり、例えば、(a)多糖類の天然高分子、(b)ポリビニルアルコール等の化学合成高分子等の水溶性又は水分散性の高分子、(c)キトサン、カゼイン等の天然高分子、及び(d)ポリ乳酸、ポリカプロラクタン、ポリアスパラギン酸等の化学合成高分子からなる群の少なくともいずれか1種からなる水溶性又は水分散性の高分子を使用することができる。これらの高分子は生分解性の特徴を有するため、塗布又は散布後に除去作業を行う必要がなく、除染作業の省力化に貢献できるものである。
【0036】
前記多糖類としては、実質的に水溶性であり、可塑化(溶融化)後脱水化により剛直化(硬化)するものであれば、特に限定されない。前記(a)多糖類の天然高分子の具体例としては、例えば、下記の各多糖類が挙げられる。
(a1)コーンスターチ、小麦デンプン等の地上茎未変性デンプン、
(a2)タピオカ、馬鈴薯デンプン等の地下茎未変性デンプン、
(a3)各地上茎、地下茎デンプンの低度エステル化、低度エーテル化、架橋、酸化、酸処理、デキストリン化、α化された化工デンプン、
(a4)セルロース類
カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等
(a5)海藻多糖類
寒天、アルギン酸、カラーギナン等
(a6)微生物多糖類
プルラン、デキストラン、キサンタンガム等
(a7)その他の植物性多糖類
マンナン、アラビアゴム、グアガム、トラガントガム、ローカストガム、タマリンド等。
【0037】
また、上記のデンプンの反応性水酸基をエステル置換(有機酸、無機酸の、さらにはグラフト置換体を含む)、エーテル置換(グラフト置換体を含む)されたものを水に分散した後、可塑剤エマルジョン水(水、可塑剤及び分散安定剤等から構成されるエマルジョン水)を加えて水分散性の高分子溶液としても良い。
【0038】
前記(b)化学合成高分子の1種として使用するポリビニルアルコール(PVA)は、重合度が1000〜5000が好ましく、1700〜2400がさらに好ましい。さらに、PVAのケン化度は、溶液が水溶性ということから85〜99%が好ましく、87〜93%がさらに好ましい。
【0039】
ノニオン性高分子としては、別の(e)水溶性又は水分散性高分子を使用してもよい。(e)水溶性又は水分散性高分子としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸とその塩、及び水酸基を含有するポリアクリル酸エステル等の水溶性の合成高分子、又はエチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンービニルアルコール共重合体、スチレンーアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニルーアクリル酸エステル共重合体等の水分散性の合成高分子の1種又は2種以上を使用することができる。
【0040】
それらの中で、前記の汚染土壌と高分子とからなる連続層を形成することが容易であり、前記連続層として様々な剥離条件に十分に耐え得る強度及び弾性を発現できるだけでなく、安全性、取扱い性、長期保管時の環境への負荷の低減、廃棄処分性及び低価格等の点から、ポリ酢酸ビニル又はポリ酢酸ビニルを主成分とする高分子が好適である。本発明において、ポリ酢酸ビニルを主成分とする高分子とは、ポリ酢酸ビニルを50質量%以上、好ましくは70重量%以上を含有する高分子を意味する。好適なポリ酢酸ビニルとしては、分子量が2000〜50000であることが好ましい。分子量が200未満では前記の高分子フィルムの強度が弱くなり、50000を超えると水への溶解性が低下したり、水溶液の粘度が高くなって土壌固定化溶液としての操作性や施工性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明において、無機粒子が有する平均的な電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子、又は電荷を有しないノニオン性高分を、前記無機粒子と混合した状態で、分散液又は懸濁液として使用するときの媒体としては、水を主成分とする水系媒体を用いる。ここで、前記水系溶媒は、水が80質量%以上、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上を占める媒体である。本発明の放射性物質除染溶液は、落ち葉及び土壌の除染を対象としているため、取扱い性や作業性並びに周辺への環境負荷の低減を考慮すると、水を主成分とする水系媒体を使用する必要がある。水以外には、例えば、水溶性のメチルアルコール、エチルアルコール、2プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類又はアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類の溶媒を少量配合して使用してもよい。これらの溶媒は、本発明の放射性物質除染溶液に対して粘度を調整したり、必要に応じて上記の各種高分子の溶解性を高める必要がある場合に使用される。これらの溶媒の中で、人体に対する影響と環境負荷を少なくするためにエチルアルコールが好ましい。
【0042】
次に、本発明の除染方法及び除染システムで使用する凝集剤について説明する。本発明は以下の(i)、(ii)、(iii)及び(iv)に示す4つの組合せを適用し、それぞれの組合せに適した凝集方法を適用する。
(i)無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子
凝集剤としては、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)を使用する。このイオン性高分子(A)を前記緩衝地帯に含有させ、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって前記緩衝地帯に流入した前記無機粒子をイオン性高分子(A)によって凝集させる。
【0043】
(ii)2種のイオン性高分子の組合せ
図3は、本発明の除染方法において、2種のイオン性高分子の組合せを含む凝集剤を用いて無機粒子の凝集を行う本発明の除染方法及び除染システムを模式的に示す図である。凝集剤としては、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)7及びイオン性高分子(A)7とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子(B)8の組合せを使用する。
図3に示すように、前記緩衝地帯において森林1及び里山2の少なくとも何れかの側に隣接して位置し、イオン性高分子(A)7を含有する領域で、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を、逆極性の電荷を有するイオン性高分子(A)7によって凝集させる。その後、凝集しないで流れ出るイオン性高分子(A)7を、緩衝地帯5において居住地3又は田畑4の側に隣接して位置し、イオン性高分子(B)8を含有する領域で、イオン性高分子(B)8によって凝集させる。
【0044】
図4は、上記の(i)及び(ii)の方法において、1種又は2種のイオン性高分子を使用するときに形成される無機粒子の凝集形態の一例を模式的に示す図である。
図4において実線及び点線で囲んだ部分が、それぞれ上記(i)及び(ii)の方法に該当する。
図4には負(−)の電荷を表面に有するものを無機粒子の例として示しており、カチオン性高分子及びアニオン性性高分子が、それぞれイオン性高分子(A)及びイオン性高分子(B)として使用される。
【0045】
図4において実線で囲んだ部分に示すように、上記(i)の方法においては、表面に負(−)の電荷を有する無機粒子9が雨水又は人工的な流水若しくは噴水により流入した後、緩衝地帯5に含まれるカチオン性高分子10によって凝集する。この凝集により、無機粒子の動きが束縛されて緩衝地帯5の領域内に留まるため、居住地3や田畑4への移行を抑制することができる。その工程において無機粒子9の凝集に関与しない余剰のカチオン性の高分子10は、緩衝地帯5において森林1及び里山2の少なくとも何れかの側に隣接する領域内に、凝集しない状態でそのまま残存する。
【0046】
一方、上記(ii)の方法では、
図4において点線で囲んだ部分の下部に示すように、緩衝地帯5において居住地3又は里山4の側に隣接した領域内にアニオン性高分子11が含まれる領域を新たに設け、自然的な雨水又は人工的な流水若しくは噴水によってその領域に流れ出るカチオン性高分子10を、アニオン性高分子11によって凝集させる工程を採用する。アニオン性高分子11が含まれる領域は、余剰のカチオン性高分子10をアニオン性高分子11によって凝集させることを主な目的として、カチオン性高分子10が含まれる領域の下流側に直列的に設けられるものである。その領域においてはカチオン性高分子10によって凝集した無機粒子9が粗大化するという造粒効果も同時に得ることができる(
図4において点線で囲んだ部分の上部に示す図を参照)。この造粒効果は、無機粒子同士の凝集に寄与し、無機粒子9の表面に結合又は付着したカチオン性高分子10がアニオン性高分子11とのイオン的な相互作用によって凝集粒子を粗大化させていくという作用に基づいている。
【0047】
上記(ii)の方法においては、カチオン性高分子を凝集させるためアニオン性高分子を使用するが、アニオン性高分子に代えて、下記で述べるようにアニオン当量の高いアニオンリッチの両性高分子を使用してもよい。
【0048】
このようにして、イオン性高分子(A)と前記無機粒子との凝集物及びイオン性高分子(A)とイオン性高分子(B)との凝集物は次第に造粒が進行し、大きな塊となって緩衝地帯5に固定化されやすくなるため、居住地3や田畑4への移行が抑制される。また、これらの凝集物は土壌に対して大きさの違いが明確となることから分離回収が行いやすくなる。そのため、次の工程においてイオン性高分子(A)によって凝集した無機粒子の分離回収を効率的に行うことができるだけでなく、上記(ii)の方法を採用することにより、造粒によって粗大化した凝集無機粒子だけでなく、イオン性高分子(A)とイオン性高分子(B)との分離回収も同時に行うことができる。それにより、前記緩衝地帯に残存する前記無機粒子及びイオン性高分子(A)と(B)の量が大幅に低減され、大きな除染効果が得られるとともに、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
【0049】
<イオン性高分子凝集剤>
上記の(i)及び(ii)の方法で使用するイオン性高分子(A)は、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するものであればよく、前記無機粒子が有する平均的な電荷が正(+)又は負(−)に応じて、それぞれアニオン性高分子又はカチオン性高分子を使用することができる。他方、上記(ii)の方法で使用するイオン性高分子(B)は、イオン性高分子(A)とは逆極性の電荷を有するイオン性高分子である。例えば、イオン性高分子(A)が正(+)の平均的な電荷を有する場合は、負(−)の平均的な電荷を有するものである。
【0050】
アニオン高分子としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、リグニンスルホン酸及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリスルホン酸及びその塩から選択される少なくとも1種であり、また、カチオン性高分子としては、カチオン化セルロース、カチオン化でんぷん、アミノ基を有する高分子若しくは4級アンモニウム塩の高分子から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらのアニオン性高分子及びカチオン性高分子は、前記無機粒子の表面が有する電荷に応じて、どちらか一方が選択される。仮に前記無機粒子の表面が有する電荷が不明な場合は、あらかじめ使用する無機粒子とアニオン性高分子又はカチオン性高分とを混合させ、凝集が生じた方のイオン性高分子をイオン性高分子(A)として適用する。イオン性高分子(A)として適用する前記のイオン性高分子は、取扱い性や作業性並びに周辺への環境負荷の低減を考慮すると、水溶性又は水分散性の高分子であることが好ましい。
【0051】
(iii)カチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤
凝集剤としては、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する高分子凝集剤(C)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有する両性高分子凝集剤(D)を使用する。
図1に示す除染方法及び除染システムにおいて、高分子凝集剤(C)又は両性高分子凝集剤(D)を緩衝地帯5に含有させた後、自然的な雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を高分子凝集剤(C)又は両性高分子凝集剤(D)によって凝集させる。
【0052】
高分子凝集剤(C)としては、前記の<イオン性高分子>において例として挙げたカチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比がほぼ1:1になるように配合した高分子凝集剤、又は両者の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤のどちらか一方を使用することができる。同様に、1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、両単量体の電荷比がほぼ1:1になるように調製した両性高分子凝集剤、又は両者の電荷比が1から外れるように調製した高分子凝集剤のどちらか一方を使用することができる。
【0053】
<高分子凝集剤>
高分子凝集剤(C)としてカチオン性高分子及びアニオン性高分子を含む高分子凝集剤を分散水溶液又は懸濁水溶液の形態で使用する場合は、水溶液中においてそれぞれ異なる極性を有するイオン性高分子同士が近接し、お互いの電荷を打ち消すように凝集した沈殿物が生成しやすい。そのため、前記無機粒子に対しては凝集効果がほとんど得られないか、又は非常に小さい。しかしながら、高分子凝集剤(C)を凝集しない状態で前記緩衝地帯に塗布又は散布できれば、各イオン性高分子の動きが束縛された状態で、前記緩衝地帯の土壌の表面及び内部で局所的に分離して存在するようになり、逆極性の電荷を有する無機粒子が近接するとき凝集を起こさせることができる。この機能を利用することにより、放射性物質を吸着した無機粒子との凝集を促進させることができる。
【0054】
高分子凝集剤(C)として、カチオン性高分子及びアニオン性高分の電荷比がほぼ1:1になるように配合した高分子凝集剤を使用するときは、分散水溶液又は懸濁水溶液にゲル化による沈殿物の発生がみられるため、対イオンの他にも、通常は塩化ナトリウム等の無機塩を新たに添加する必要がある。しかしながら、高分子凝集剤(C)の塗布又は散布が森林や里山(雑木林を含む)とは別の場所に設ける緩衝地帯で行われるため、植物生育等に与える悪影響は前記緩衝地帯だけに限定される。したがって、森林や里山(雑木林を含む)に対する悪影響は、従来の除染方法と比べると大幅な低減を図ることができる。
【0055】
高分子凝集剤(C)として、両者の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤を使用する場合は、後述するように、新たに塩化ナトリウム等の無機塩を添加しなくても沈殿物が発生しないコロイド溶液を形成できることが分かった。したがって、森林や里山(雑木林を含む)だけでなく、他の地域についても植物生育等に対する影響を最小限にすることを目的とする場合は、高分子凝集剤(C)として、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤を使用することが好ましい。
【0056】
<カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤>
本発明において使用する、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の電荷比が1から外れるように配合した高分子凝集剤は、カチオン性高分子とアニオン性高分子とを含む水溶液において、どちらかの高分子を第1の高分子とし、もう一方の高分子を第2の高分子としたときに、前記第1の高分子が前記第2の高分子よりも電荷比で過剰に配合することによって得られる分散型高分子凝集剤である。この分散型高分子凝集剤は、沈殿物を生成せずに長期間安定した均一のコロイド水溶を形成しながら、前記無機粒子との混合では大きな凝集力を有することを見出すことにより、本発明に適用されたものである。
【0057】
図5は、カチオン性高分子を電荷比で過剰に調整した分散型高分子12を凝集剤として用いるときに形成される無機粒子の凝集形態の一例を模式的に示す図である。
図5で示す凝集形態は、負(−)の電荷を表面に有する無機粒子13を使用するときに水溶液中で観測されるものの一例である。
【0058】
図5に示すように、本発明において高分子凝集剤(C)として使用する分散型高分子凝集剤12は、前記(i)の2種のイオン性高分子の組合せにおいて例示したようなカチオン性高分子とアニオン性高分子の両者を含むことによって分子鎖の絡まり合いが生じ、大きな凝集力を生むための核となる疎水的なフロック14が形成される。他方、カチオン性高分子及びアニオン性高分子のどちらか一方が過剰に含まれるため水との親和性が増した親水的な分子鎖の存在によって沈殿物の生成が抑制され、水溶液中でコロイド状態となって均一分散する。それによって、水溶液は不透明又は乳白色状の性状を有し、沈殿物を生成しないで長期間安定した均一の溶液が形成できる点に大きな特徴を有する。この分散型高分子凝集剤が、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した放射性物質を吸着した後の無機粒子と接触すると凝集が起き、徐々に大きな塊の凝集物に転化する。それにより、放射性物質を吸着した無機粒子が居住地や田畑に移行するのを抑制することができる。
【0059】
分散型高分子凝集剤12が呈する「不透明又は乳白色」とは目視ならびに濁度によって判定されるもので、例えば、高分子凝集剤のコロイド溶液の濁度を分光光度計を用いて660nmの波長で測定し、その濁度が24時間経過しても85%以上を維持している場合に、コロイドが凝集沈殿せずに安定に存在するものと結論した。また、本願発明の効果を奏するためには、夏冬(温度範囲:5〜30℃)で24時間以上放置しても沈殿物が観測されない均一の溶液であることが必要条件である。
【0060】
本発明で使用するコロイド水溶液は、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の添加量を等電荷比にしないで、どちらかの方が電荷比で過剰になるように添加することによって沈殿物の生成を抑制することができるため、従来技術のように一液性のポリイオンコンプレックスを得るために不可欠な塩をコロイド水溶液中に積極的に加える必要がない。しかしながら、イオン性高分子はもともと対イオンが微量含まれており、本発明で使用するコロイド水溶液には実質的に微量の塩が含まれる場合があるが、これらの対イオンは無機粒子の沈殿物の生成に対してほとんど影響を与えない。対イオンを形成するための塩としては、使用するイオン性高分子の種類に応じて異なるが、一般的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムから選択される塩の少なくとも1種が使用される。
【0061】
分散型高分子凝集剤12に含まれるカチオン性及びアニオン性の両イオン性の高分子において、両者のイオン性高分子の電荷比とは、イオン性高分子が有する「イオン当量質量」によって以下のように定義されるものである。
【0062】
本発明で使用するどちらか一方のイオン性高分子(A1)の分子量をM
1、そのイオン当量質量をEW
1とする。イオン性高分子(A1)のイオン当量質量(EW
1)は、そのイオンを有する構成単位の割合が100モル%であると、そのイオンを有する構成単位の分子量(m
A)と同じになる。例えば、イオンを有する構成単位の割合が50モル%でイオンを有しない構成単位の割合が50モル%の場合は、イオン当量質量は、イオンを有する構成単位の分子量(m
A)とイオンを有しない構成単位の分子量(m
N)との和(m
A+m
N)となる。このように、イオン当量質量は、イオンを有する構成単位とイオンを有しない構成単位とのモル比で決まる。もう一方のイオン性高分子(B1)の場合も、イオン性高分子(B1)の分子量をM
2、そのイオン当量質量をEW
2とすると、同様にしてイオン当量質量が求まる。
【0063】
本発明のコロイド溶液に含まれるイオン性高分子の中でどちらか一方のイオン性高分子(A1)の配合量をC
1とし、もう一方のイオン性性高分子(B1)の配合量をC
2とする。その場合、コロイド溶液には、イオン性高分子(A1)が(C
1/M
1)モル、イオン性高分子(B1)が(C
2/M
2)モルの濃度で含まれる。したがって、コロイド溶液には、イオン性高分子(A1)及びイオン性高分子(B1)に含まれる各イオンによる電荷数が、それぞれP
1(当量)=(C
1/M
1)×(M
1/EW
1)及びP
2(当量)=(C
2/M
2)×(M
2/EW
2)となる。
【0064】
仮に、P
1=P
2(総電荷がゼロ)となる場合は、C
1/EW
1=C
2/EW
2となる。他方、コロイド水溶液の総電荷がゼロでない場合は、P
1/P
2=(C
1/EW
1)/(C2/EW
2)>1となり、(C
1/EW
1)/(C
2/EW
2)>1の関係を満たす。P
1及びP
2は、アニオン性高分子及びカチオン性高分子のどちらかに特定されず、逆の場合であってもよい。したがって、本発明においては、(C
1/EW
1)/(C
2/EW
2)>1の関係を満たすようにアニオン性高分子及びカチオン性高分子を配合することによって、どちらか一方のイオン性高分子を電荷比で過剰に加えたコロイド水溶液を調製することができる。
【0065】
<両性高分子凝集剤>
高分子凝集剤(C)として両性高分子を使用する場合を説明する。両性高分子は、分子内に正(+)と負(−)の荷電を併せ持っている高分子であり、カチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有する二元共重合体、必要に応じて疎水性単位として機能するノニオン性の単量体構造単位を含む三元共重合体として合成される。両性高分子の極性は、カチオン当量とアニオン当量をほぼ同じにして、両単量体の電荷比がほぼ1:1となるように調製したり、また、カチオン当量の高いカチオンリッチ両性高分子とその逆のアニオン当量の高いアニオンリッチ両性高分子のように、両者の電荷比が1から外れるように調製することもできる。
【0066】
高分子凝集剤(C)として使用する両性高分子は、両単量体の電荷比がほぼ1:1となるように調製したものであっても、分散水溶液又は懸濁水溶液においてゲル化による沈殿物の発生はほとんど見られない。これは、カチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位が一分子中でそれぞれ分離して配列されており、加えて対イオンの存在やpH等によって両者の単量体構造単位が互いに近接しないように調整して凝集を抑えているためである。したがって、両性高分子凝集剤を使用する場合は、それぞれ逆極性を有する単量体の電荷比がほぼ1:1になるように調製した両性高分子、又は両者の電荷比が1から外れるように調製した両性高分子のいずれも、分散水溶液又は懸濁水溶液に塩化ナトリウム等の無機塩を新たに添加しないで使用することができる。
【0067】
図6は、両性高分子を凝集剤として用いるときに形成される無機粒子の凝集形態の一例を模式的に示す図である。
図6に示すように、本発明において高分子凝集剤(C)として使用する両性高分子凝集剤15を有する分散液又は懸濁液は、沈殿物を生成しないで長期間安定した均一の溶液が形成できるため、前記緩衝地帯に塗布若しくは散布及び注入ができる。この両性高分子凝集剤15が、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入し、放射性物質を吸着した後の無機粒子(
図6においては表面に負(1)の電荷を有する無機粒子16)と接触すると凝集が起き、徐々に大きな塊の凝集物に転化する。それにより、放射性物質を吸着した無機粒子が居住地や田畑に移行するのを抑制することができる。
【0068】
本発明で使用する両性高分子凝集剤は、一般的に以下の単量体成分を含む。
(f)カチオン性単量体
カチオン性単量体の例としては、モノアリルアミン、N−メチルアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−シクロヘキシルアミン、N,N−(メチル)シクロヘキシルアリルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアリルアミン、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−ベンジルジアリルアミン及びそれらの付加塩、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ジアリルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルメチルアンモニウム、臭化ジアリルメチルアンモニウム、ヨウ化ジアリルメチルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルメチルアンモニウム、塩化ジアリルジベンジルアンモニウム、臭化ジアリルジベンジルアンモニウム、ヨウ化ジアリルジベンジルアンモニウム、メチル硫酸ジアリルジベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0069】
(g)アニオン性単量体
アニオン性単量体の例としては、(メタ)アクリル酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩のような水溶性塩等が挙げられる。また、2つのカルボキシル基を有するアニオン性単量体も使用することができ、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0070】
(h)ノニオン性単量体
ノニオン性単量体としては、アクリル酸アミド及びN−メチル、N,N−ジメチル、N,N−ジエチル、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドのようなN−置換体等が挙げられる。
【0071】
本発明で使用する両性高分子は、少なくとも上記カチオン性単量体の1種又は2種以上及びアニオン性単量体の1種又は2種以上の共重合によって得られるが、必要に応じて上記ノニオン性単量体の1種又は2種以上を含む3元共重合としてもよい。共重合は、前記の各種単量体混合物の水溶液を過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の水溶性開始剤を使って溶液重合する方法、又は光増感剤を使って光重合する方法等のような常法によって行うことができる。
【0072】
本発明において高分子凝集剤(C)として両性高分子を使用するときは、無機粒子の凝集粒子径及び凝集速度に応じて、それぞれ逆極性を有する単量体の電荷比を変えて使用することができる、また、それぞれ逆極性を有する単量体の電荷比がほぼ1:1になるように調製した両性高分子、両者の電荷比が1から外れるように調製したカチオンリッチ両性高分子及びアニオンリッチ両性高分子の何れか1種だけでなく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0073】
(iv)2種のカチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する高分子凝集剤又は両性高分子凝集剤の組合せ
凝集剤としては、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を両者の電荷比が1から外れるように配合し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C1)、又は1分子中にカチオン性の単量体構造単位及びアニオン性の単量体構造単位を有し、前記無機粒子の表面が有する電荷とは逆極性の電荷を有するように両者の単量体構造単位の1分子における電荷比が1から外れるように調製された両性高分子凝集剤(D1)と、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)が過剰に有する電荷とは逆極性の電荷を過剰に有する高分子凝集剤(C2)、又は両性高分子凝集剤(D2)との組合せを使用する。
図3に示す除染方法及び除染システムの緩衝地帯において、イオン性高分子(A)7に代えて前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を、また、イオン性高分子(B)8に代えて前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)をそれぞれ含む領域が、この順で直列的に設けられる。ここで、両性高分子凝集剤(D1)及び両性高分子凝集剤(D2)は、カチオン当量の高いカチオンリッチ両性高分子とその逆のアニオン当量の高いアニオンリッチ両性高分子のどちらかを、それぞれの電荷が逆極性になる組合せとなるように選んで使用する。
【0074】
図3に示す緩衝地帯5において、森林1及び里山2の少なくとも何れかの側に隣接して位置し、前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を含有する領域で、雨水又は人工的な流水若しくは噴水によって流入した前記無機粒子を前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)によって凝集させる。その後、前記凝集しないで流れ出る前記高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)を、前記緩衝地帯において居住地3又は田畑4の側に隣接して位置し、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)を含有する領域で、前記高分子凝集剤(C2)又は前記両性高分子凝集剤(D2)によって凝集させる。
【0075】
以上のように、高分子凝集剤(C1)及び高分子凝集剤(C2)、又は両性高分子凝集剤(D1)及び両性高分子凝集剤(D2)は、前記(ii)2種のイオン性高分子の組合せの項で説明したイオン性高分子(A)及びイオン性高分子(B)とそれぞれ同じ機能を有する。すなわち、高分子凝集剤(C1)又は両性高分子凝集剤(D1)は、放射性物質を吸着した前記無機粒子を凝集させることにより、居住地や田畑に移行するのを抑制するために使用される。また、前記高分子凝集剤(C2)又は両性高分子凝集剤(D2)は、前記凝集しないで流れ出る高分子凝集剤(C1)又は前記両性高分子凝集剤(D1)の居住地や田畑への移行を防止する目的を以て、それら(C1)又は(D1)の高分子を凝集させるために使用される。さらに、前記高分子凝集剤(C2)又は両性高分子凝集剤(D2)が含まれる領域においては、前記高分子凝集剤(C1)又は両性高分子凝集剤(D1)によって凝集した無機粒子を造粒させる効果が得られるため、凝集粒子の粗大化を図ることができる。それにより、放射性物質を吸着した前記無機粒子の居住地や田畑への移行を抑制及び防止する効果がより高くなる。
【0076】
また、(iv)の方法において使用する凝集剤は、高分子凝集剤(C1)及び高分子凝集剤(C2)、又は両性高分子凝集剤(D1)及び両性高分子凝集剤(D2)に代えて、高分子凝集剤(C1)及び両性高分子凝集剤(D2)、又は両性高分子凝集剤(D1)及び高分子凝集剤(C2)の組合せを使用してもよい。(C1)及び(D2)、又は(D1)及び(C2)の組合せであっても、前記無機粒子及び高分子凝集剤同士の凝集機能には基本的に差異が無いためである。
【0077】
上記の(i)、(ii)、(iii)及び(iv)の4つの組合せで使用する各凝集剤は、分散水溶液又はコロイド溶液の形態で塗布又は散布することにより、
図1〜
図3に示す緩衝地帯5に含有される。このときの分散水溶液又はコロイド状水溶液の粘度は、塗布又は散布のための作業効率の点から、4〜30℃の温度域で2〜4000mPa・sの範囲に調整するのが実用的である。粘度が2mPa.s未満では、各凝集剤の配合量が少ないため、塗布又は散布のための作業効率が大幅に低下する。また、粘度が4000mPa・sを超えると、分散水溶液又はコロイド状水溶液の粘度が顕著に増大するため、塗布又は散布が困難になる。
【0078】
前記の各凝集剤を含む分散水溶液又はコロイド状水溶液は、緩衝地帯5に吹き付け法、流し込み法又は刷毛塗り法等によって塗布又は散布した後、乾燥することによって各凝集剤の定着を行うことができる。また、スプリンクラー等の設置又はヘリコプター等によって塗布又は散布を行ってもよい。分散水溶液又はコロイド状水溶液の塗布量又は散布量は、含まれる各凝集剤の量及び前記無機粒子及び前記無機粒子と逆極性の電荷を有する高分子を凝集させるために必要な量に基づいて決めることができる。
【0079】
本発明による除染方法及び除染システムの構成は上記で説明した通りであるが、本発明においては、さらに、森林及び里山の少なくとも何れかを除染した後、前記森林及び里山の少なくとも何れかにそのまま残存した状態にある落葉及び該落葉を含む腐葉土を、前記落葉が存在する場所の地面から剥離する工程及び手段と、前記剥離された落葉及び腐葉土を、地力回復のために農地や原野に加える工程及び手段と、を有することが好ましい。除染後にそのまま残存した状態にある落葉及び該落葉を含む腐葉土は、放射線測定及び土壌検査等を行い、放射性物質による放射線の影響が無くなったことを十分に確認した後に使用する。
【0080】
従来から、農地や原野の地力回復のために、新しい肥料や土壌を加える方法は採用されているが、除染後の落葉及び該落葉を含む腐葉土を利用することにより、既に除染が終了した農地や原野の再生を効率的かつ安全に行うことができる。特に、同じ地域にある落葉や腐葉土は、気候及び風土の点から農地や原野との相性がよいため、地力回復の効果とスピードを高めることが可能になる。
【0081】
<無機粒子>
本発明で使用する無機粒子系の放射性物質吸着剤としては、放射性物質の吸着機能を有する無機粒子であれば使用することができる。例えば、ベントナイト、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリ
ロナイト、イライト及びカオリナイトが挙げられ、これらの群から選ばれる1以上を使用することができる。これらの無機粒子は、一般的に多孔質であり、その表面には正(+)又は負(−)の電荷を有するため、放射性物質の吸着能だけでなく、本発明で使用する各凝集剤によって凝集される機能を有するものである。
【0082】
前記無機粒子の平均粒径は0.01〜20μmの範囲にあるものが使用できるが、好ましくは1〜2μmである。また、これらの無機粒子の最大粒径は100μm以下、好ましくは50μm以下である。平均粒径が0.01μm未満であると、無機粒子の凝集が起こりやすく、固定化溶液の調整や塗布等における作業性の低下が顕著になる。また、平均粒径が20μmを超えると大きな径を有する無機粒子が混在するようになるため、上記の放射線物質含有森林土壌を含む固定層の機械強度が大きく低下して剥離除去が困難になる。同じ理由から、これらの無機粒子の最大粒径は、100μm以下、好ましくは50μm以下である。
【0083】
本発明では、上記の無機粒子の中で、放射性物質吸着剤としての実績、取扱い性及び低コスト等の点からベントナイトが好適である。ベントナイトは、乾燥することにより周辺土壌等の水分を吸収する効果(サンクション効果)が他の無機粒子よりも優れ、Cs等の放射性物質のベントナイトへの吸着が促進されるため、特に有用である。ベントナイトは、層間にNa
+、K+、Ca
2+,Mg
2+等の交換性陽イオンを持ち、イオン交換によって放射性物質であるCs
+を吸着及び保持する機能を有する。そして、アルミナ層のAl
3+がMg
2+等に置換されているため、ベントナイトの表面は負電荷を有する。また、ベントナイトは、ベントナイト鉱山で採掘した状態のものから粗粒分を除き、最大粒径を100μm以下、好ましくは50μm以下に調整したものをそのまま使用できるため、安価に入手できる。
【0084】
前記無機粒子系の放射性物質吸着剤は、森林及び里山の少なくとも何れか場所に任意の量で散布することができる。前記無機粒子の散布量が少ない場合は、森林及び里山を汚染する全ての放射性物質量を吸着することができないため、森林や里山において放射線量測定を臨時で又は定期的に行うことにより、その測定値に基づいて散布量又は散布回数を増やして対応する。仮に、散布量が多くなっても、前記無機粒子は人体にほとんど無害であるため、森林や里山に放置されてもほとんど問題は起きない。さらに、自然的に発生する雨水又は人工的な散水による流水や噴水によって前記無機粒子が緩衝地帯に押し流され、森林や里山に存在する前記無機粒子の量は徐々に減少するため、森林や里山に対する影響は小さくなる。前記無機粒子の量の減少が顕著であって、除染を継続的に維持したい場合には、再度、森林や里山に前記無機粒子の散布を行う。
【0085】
前記無機粒子を分散液又は懸濁液の形態で塗布若しくは散布及び注入を行うときは、水系媒体を100質量部としたときに0.1〜20質量部にすることが好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部である。前記無機粒子の含有量が0.1質量部未満であると、分散液又は懸濁液の塗布量又は散布量が大量となり、除染作業の効率が大幅に低下する。また、前記無機粒子の含有量が20質量部を超えると、無機粒子の分離が顕著になり、均一な塗布若しくは散布を行うことが困難であるだけではなく、除染作業の効率が大幅に低下する。
【0086】
前記無機粒子を含む分散液又は懸濁液に、さらに無機粒子が有する平均的な電荷と同極性の電荷を有するイオン性高分子、又は電荷を有しないノニオン性高分を混合させる場合、前記イオン性高分子又はノニオン性高分子の含有量は、水系媒体を100質量部としたときに0.2〜60質量部にすることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。前記イオン性高分子又はノニオン性高分子の含有量が0.2質量部未満では、前記無粒子の大気中への飛散防止の効果が得られず、また、60質量部を超えると、分散液又は懸濁液の粘度が顕著に増大するため、除染作業の効率が大幅に低下する。分散液又は懸濁液の粘度は、4〜30℃の温度域で2〜4000mPa・sの範囲に調整するのが実用的である。
【0087】
以上の本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムの基本構成に基づいて、本発明を実施例によって説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
本実施例において、無機粒子として表面に負(−)の電荷を有するベントナイトを使用し、放射性物質であるCsの移行を確認する実験を行った。高分子凝集剤は、上記(iii)及び(iv)の方法で説明したように、カチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する分散型高分子凝集剤を使用した。カチオン性高分子として下記の(1)式で示されるポリジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩(あるいはクロリド)(センカ株式会社商品名ユニセンスFPA1001L:分子量10〜50万、以下DADMACと略す。)と、アニオン性高分子として下記の(2)式で示されるカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(ダイセル化学工業株式会社商品名CMCダイセル1220:分子量16万〜38万、以下CMCと略す。)とを用い、ポリカチオン過剰(DADMAC過剰)及びポリアニオン過剰(CMC過剰)の水溶液をそれぞれ作製し、それぞれ高分子凝集剤(C1)及び高分子凝集剤(C2)のポリイオンコンプレックス水溶液とした。
【0091】
本実施例において、高分子凝集剤(C1)のカチオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液及び高分子凝集剤(C2)のアニオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液としては、DADMAC及びCMCを質量比でDADMAC:CMC=43:3及びDADMAC:CMC=1:3で配合した凝集剤を、それぞれ1.5質量%含む水溶液に調整して使用した。ここで、カチオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液のDADMAC:CMCの電荷比は69:1であり、他方、アニオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液のDADMAC:CMCの電荷比は1:3である。前記カチオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液及び前記アニオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液はどちらも沈殿物の生成がみられず、コロイド状態の水溶液を呈した。DADMAC:CMCの電荷比は次にようにして求めることができる。
【0092】
前記(2)式で示されるCMCは、エーテル化度が0.8〜1.0である。ここで、エーテル化度とは、CMCの−O−Rの−Rの部分が−CH
2COONaに置換した数であり、本実施例ではエーテル化度として平均の0.9を採用した。エーテル化度が0及び1の場合、1molあたりのそれぞれ分子量は162g及び242gである。CMCのエーテル化度が0.9であるときは、みかけの分子量は162(g/mol)×0.1+242(g/mol)×0.9=234(g/mol)と計算できる。CMCの前記(2)式で示す繰り返し構成単位あたり負電荷が0.9当量存在することになるので、イオン当量質量(EW
1)は234g/0.9当量で計算できる。他方、DADMACは1molあたりの分子量が161.7gであり、純度が高く、前記(1)式で示す繰返し構成単位あたりの電荷が1当量で存在するため、イオン当量質量(EW
2)は161.7g/1当量で計算でき、これは繰り返し構成単位の分子量と同じになる。
【0093】
Cs移行のモデル実験は
図7に示す方法に従って行った。
図7において、(a)はモデル実験を行うときの治具の基本構成であり、(b)はモデル実験を行う時に設定した条件である。
【0094】
図7の(a)に示すように、モデル実験を行うための治具は、基本的に腐葉土を2kg入れた1層目の容器17と、砂をそれぞれ4kg入れた2層目の容器18及び3層目の容器19とから構成され、各容器の底部には第1層目の容器17の上部から散布又は注入した水が通過できる程度の微細な穴又は孔を多数設けた。最下部には、第1層目の容器17に散布又は注入され、2層目及び3層目の容器18、19を通過してきた水を受けて溜めるための貯水容器20を配置した。
【0095】
モデル実験を行う時に設定した条件は、
図7(b)に示す4通りである。
図7の(b)において、「腐葉土とベントナイト」はベントナイト懸濁液を腐葉土に散布した層を示し、また、「PIC」はポリイオンコンプレックスの略称であり、例えば「砂とカチオン過剰PIC」はカチオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液を砂に散布した層を示す。
【0096】
図7の(b)において第1層目の容器17に無機粒子であるベントナイトを混入させるときは、腐葉土10kgに500gを懸濁させた7L(リットル)の水を加えて撹拌後、乾燥させたものの2kgを入れた。ベントナイトとしては、ベントナイトドンミン((株)ボルクレイ・ジャパン製)を使用した。また、砂が入れられた2層目の容器18に前記カチオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液を散布するときは、5L(リットル)/m
2の条件で散布した。同様に、砂が入れられた3層目の容器19に前記アニオン過剰ポリイオンコンプレックス水溶液を散布する場合も、5L(リットル)/m
2の条件で散布を行った。ここで、第3層目に混入するアニオン過剰ポリイオンコンプレックスは、第2層目に混入させたカチオン過剰ポリイオンコンプレックスがより下方の貯水容器20に流出するのを抑制させる役目を担う。第1層目の容器17の上部から散布又は注入する水の量は、日本の1ヶ月分の平均雨量150mに相当する24L(リットル)である。放射線セシウム濃度は、CsI(TI)シンチレーション検出器を用いて測定を行い、砂1kg当たりの放射線量(ベクレル(Bq)/kg)で表した。
【0097】
Cs移行モデル実験において測定した放射性Cs濃度(Bq/kg)の測定結果を
図8に示す。
図8において(a)及び(b)はそれぞれ1層目及び2層目の測定結果であり、ベントナイトの有無による放射性Cs濃度の違い及びカチオン過剰ポリイオンコンプレックスの有無による放射性Cs濃度の違いを、それぞれ(a)及び(b)において対比することができる。
【0098】
図8の(a)に示すように、1層目の容器においてベントナイトが有りの場合は、バントナイトが無しの場合と比べて、水を散布又は注入した後で放射性Cs濃度の低下が大きくなっていることが分かる。ベントナイトが有りの場合で放射性Cs濃度の低下が大きくなったのは、腐葉土中のCsが吸着したベントナイトの粒子が水で流されたためである。
【0099】
また、カチオン過剰ポリイオンコンプレックスの有無による放射性Cs濃度の違いについては、
図8の(b)に示すように、1層目にベントナイトが有りの場合に放射性Cs濃度が大きくなった。この放射性Cs濃度の増加は、放射性Cs濃度を吸着したベントナイト粒子が上流から散布又は注入された水によって2層目に流入し、2層目に混入させたカチオン過剰ポリイオンコンプレックスによって凝集されるためであり、結果的に放射性Csが補足された放射線量に起因する。
【0100】
以上のように、腐葉土にベントナイトを加えると、イオン交換反応により腐葉土中の放射性Csはベントナイトに移行すること、さらに、水の散布又は注入により移動したベントナイト粒子は、カチオン過剰ポリイオンコンプレックスによって凝集し、砂の中に補足されることが確認できた。
【0101】
図7に示すモデル実験において、ベントナイトを有する懸濁液に、ベントナイトの表面が有する電荷と同じ負(−)の電荷を有するイオン性高分子又はノニオン性高分子を同時に含む水溶液又は懸濁液を使用しても、第1層目及び第2層目における放射性Cs濃度の測定結果は
図8に示すものと同じ傾向を示すことが容易に推察される。例えば、ベントナイトを有する懸濁液に、生分解性の水溶性デンプン(コーンスターチ)を溶解したもの[水:ベントライト:デンプン=100:30:5(質量比)]を用いて、第1層目の容器に入れた腐葉土に塗布した場合、腐葉土の表面近くにデンプン層が形成できることが分かった。このデンプン層は、、ベントナイトを中長期間にわたり腐葉土の内部に静置することができるため、ベントナイトと腐葉土に含まれる放射性Csとの接触が十分に確保できるようになり、放射性Csの吸着を促進する効果を有する。そして、第1層目の容器に水を散布又は注入するときにデンプンは水と一緒に流れ出るため、デンプンを同時に含んでもベントナイトの移動に対してほとんど影響を与えることがない。このように、イオン性高分子又はノニオン性高分子の添加は、ベントナイトによる除染効果をさらに高めることを可能にするものと考えられる。
【0102】
[実施例2]
前記のCs移行のモデル実験結果に基づき、森林に放置された状態で実際に降雨等に遭遇した土壌を使用し、模式的に
図9に示すように土壌を4区画に分けて森林実装試験を行った。4区画に分けた各土壌の形状及び面積は、
図9に示す通りである。各区画の仕切りは細長いビニール袋に黒土を入れたものを配置して行うことにより、各区画の間で土壌の流入を防止した。森林の表面において放射性Csで汚染された腐葉土を回収し、土壌斜面の最上部に移動して配置した。このようにして土壌斜面の最上部に移動した腐葉土は、本発明において森林及び里山の少なくとも何れかの場所に存在する腐葉土に該当するものとみなすことができる。また、
図9に示す測定地点(●)は、放射性Cs濃度を実際に測定した箇所を意味する。放射性Cs濃度の測定は、、CsI(TI)シンチレーション検出器を用いて、それぞれ上部、中間及び下部の3地点で行った。
【0103】
森林実証試験を行う前に、まず、
図9に示す上部、中間及び下部の3地点で放射性Cs濃度を測定した。その測定結果を
図10に示す。
図10に示すように、上方より下方の腐葉土の方が放射性Cs濃度が高くなっており、降雨によって放射性Csは上方から下方へ移動することが分かる。
【0104】
次いで、
図9に示す森林実証試験用土壌を使用し、放射性Cs濃度の各測定地点において、ベントナイトの有無、及びカチオン過剰ポリイオンコンプレックスとアニオン性ポリイオンコンプレックスの有無による放射性Cs濃度の変化を調べた。
図11は、森林実証試験を行ったときに設定した条件の概要を示す図である。
図11において、左2列の土壌は、回収した腐葉土の部分にベントナイトを1質量%含む懸濁水溶液を5L/m
2の条件で散布するのに対して、右2列の土壌ではベントナイトの散布を行わなかった。また、ベント内筒の散布を行った左2列の土壌斜面において、左側に位置する土壌には、上部から中間地点にかけてカチオン過剰ポリイオンコンプレックス(ポリイオンコンプレックスをPICと略す。)水溶液を、中間地点から下部にかけてアニオン性PIC水溶液をそれぞれ5L/m
2の条件で塗布した。他方、左2列の土壌の中で右側に位置する土壌は、両者のポリイオンコンプレックス水溶液の塗布を行わなかった。同様に、ベントナイトの散布を行わなかった右2列の土壌についても、左側に位置する土壌には、上部から中間地点にかけてカチオン過剰PIC水溶液を、中間地点から下部にかけてアニオン過剰PIC水溶液をそれぞれ5L/m
2の条件で塗布したのに対し、右側に位置する土壌は両者のポリイオンコンプレックス水溶液の塗布を行わなかった。ここで、前記のカチオン過剰PIC水溶液及びアニオン性PIC水溶が塗布される地帯が、本発明において設ける緩衝地帯に該当するものとみなすことができる。これらの条件で試験用土壌の改質を行ってから、それらの土壌を1ヶ月間報知した後、表面の土壌を採取し、上部、中間及び下部の3つの測定地点で放射性Cs濃度を測定した。
【0105】
図11に示す4列の土壌において、それぞれ上部、中間及び下部の各測定地点で行った放射性Cs濃度の測定結果を、腐葉土回収直後の測定結果と合わせて、放射性Cs濃度の分布として
図12に示す。
図12に示す放射性Cs濃度の分布は、それぞれ上部、中間及び下部の各測定地点で行った放射性Cs濃度の合計を100%としたときに、各測定地点での放射性Cs濃度の割合を意味する。なお、
図12に示す腐葉土回収直後の測定結果は、
図10に示す(1)〜(4)の測定値の平均値で表した。
【0106】
図12に示すように、1ヶ月放置後の斜面土壌は、腐葉土回収直後と比べて、ベントナイトの有無、及びカチオン過剰ポリイオンコンプレックスとアニオン性ポリイオンコンプレックスの有無によって測定された放射性Cs濃度の分布はやや異なる。しかしながら、ベントナイト及びカチオン過剰ポリイオンコンプレックスが有りの場合(
図12の最左側)を除けば、他の3つの場合においては中間及び下部が上部に比べて放射性Cs濃度の割合が高くなるという傾向はほぼ同じである。それに対して、ベントナイト及びカチオン過剰ポリイオンコンプレックスが有りの場合(
図12の最左側)は、土壌斜面上部の放射性Cs濃度の割合が高くなっている、このことから、腐葉土中で放射性Csを吸着したベントナイト粒子が、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって凝集し、土壌斜面のより上部で放射性Csが補足されていることが分かる。したがって、森林実証試験においても、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスが、放射性Csを吸着したベントナイト粒子を凝集させ、斜面土壌の下方への移行を抑制させる効果を有することが確認された。
【0107】
さらに、ベントナイト粒子及びカチオン過剰ポリイオンコンプレッックスの有りの場合は、斜面土壌の中間から下部にかけてアニオン過剰ポリイオンコンプレックスを散布することにより、放射性Cs濃度の割合が土壌斜面の中間において低いのに対して、下部では高くなっており、
図12に示す他の3つの場合と比べて、斜面土壌の中間と下部との間で顕著な差異が観測された。これは、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって凝集した無機粒子が過剰アニオン性ポリイオンコンプレックスによって造粒し、凝集粒子の粗大化が図られたものとも考えられるが、詳細は不明である。もともと、土壌斜面の中間から下部に含まれるアニオン過剰ポリイオンコンプレックスは、土壌斜面の上部から中間に含まれるカチオン過剰ポリイオンコンプレックスを凝集させるために使用するものであるが、アニオン過剰ポリイオンコンプレックスの添加がカチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって凝集した無機粒子の造粒による粗大化を促進させる効果を有することが考えられる。
【0108】
このようにして斜面土壌の上方でカチオン過剰ポリイオンコンプレッックスとともに凝集した無機粒子は、凝集した無機粒子を含む土壌とともに剥離した後、所定の大きさ以上の径を有する篩等を用いて無機粒子の凝集物だけを分離収集した形態で、又は凝集した無機粒子を含む土壌をそのままの形態で、保管用の袋やパックに詰め込む。その後、放射性物質が外部へ飛散又は漏洩しないように処置が施された場所に搬送し、集めてから保管、保存を行う。斜面土壌の中間及び下方で、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって造粒した無機粒子の凝集物、及びカチオン過剰ポリイオンコンプレッックスとアニオン過剰ポリイオンコンプレックスとの凝集物も、同様な処理により保管用の袋やパック等に詰め込んだ後、所定の場所で保管、保存を行う。
【0109】
また、放射性Csを吸着した無機粒子の凝集物が土壌と分けられて保管、保存する場合には、
図2に示すように、前記無機粒子の透過可能な網状又はメッシュ状の濾過容器6を使用するのが好ましい。濾過容器6を、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスを単独で又は他の材料と混合した形態で封入した後、緩衝地帯5の上方の部分に設置する。そして、前記無機粒子がカチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって凝集した後に、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスとともに凝集した前記無機粒子を含む濾過容器6だけを、緩衝地帯5から分離して回収する。放射性Csを吸着した無機粒子が他材料とともに含まれる場合は、篩等によって無機粒子の凝集物だけを分離するか、又は凝集した無機粒子を他材料とともに、保管用の袋やパック等に詰め込んで回収した後、所定の場所で保管、保存を行う。それにより、カチオン過剰ポリイオンコンプレッックスによって凝集した無機粒子を緩衝地帯5の表土とともに剥離して回収する必要が無くなるため、分離回収の工程を大幅に省力化することができる。また、
図2に示す方法は、濾過容器6を中長期間にわたって放置した状態であっても、放射性Csを吸着した無機粒子の外部への飛散を抑制できるため、除染作業が楽になるという利点を有する。
【0110】
また、
図2には、アニオン過剰ポリイオンコンプレックスの凝集剤が緩衝地帯5の下方部分の土壌に散布される方法を示しているが、散布の方法に代えて、アニオン過剰ポリイオンコンプレックスを単独で又は他の材料と混合した形態で封入した濾過容器を使用してもよい。このように、
図2に示す方法においては、凝集剤の機能に応じて緩衝地帯5を大きく2つの区域に分け、それぞれの区域に一つ又は複数個の集合体の形態で各凝集剤を含む濾過容器を設置することができる。
【0111】
前記実施例1及び2において、上記(iii)及び(iv)の方法で説明したカチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する分散型高分子凝集剤を用いて本発明の効果を説明したが、上記(i)及び(ii)の方法で説明したカチオン性高分子又はアニオン性高分子を使用する場合においても、Cs移行のモデル実験及び森林実証試験において同じような効果が得られる。
【0112】
カチオン性高分子として、例えば、上記の(1)式で示されるポリジアリルジメチルアンモニウム塩酸塩(あるいはクロリド)(センカ株式会社商品名ユニセンスFPA1001L:分子量10〜50万、以下DADMACと略す。)を用い、アニオン性高分子として、例えば、上記の(2)式で示されるカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(ダイセル化学工業株式会社商品名CMCダイセル1220:分子量16万〜38万、以下CMCと略す。)を使用する場合、Cs移行のモデル実験及び森林実証試験は、凝集剤の種類及びそれらの組合せが異なるだけで、前記実施例1及び2と同じ方法で行うことができる。DADMA及びCCMCは、前記(iii)及び(iv)の方法で使用したカチオン性高分子及びアニオン性高分子を有する分散型高分子凝集剤と基本的に同じイオン相互作用によって放射性Csを吸着したベントナイトを凝集させる機能、及び逆極性の電荷を有するイオン性高分子を凝集させる機能をそれぞれ有する。したがって、前記(i)及び(ii)に方法においても、
図8及び
図12に示す結果とほぼ同じような除染効果が得られることは容易に推察できる。
【0113】
また、本発明においては、放射性Csを吸着する無機粒子としてベントナイトを使用するのが好適であるが、ベントナイトには限定されない。無機粒子としては、入手の容易性、取扱い性及び価格に応じて、例えば、ゼオライト、層状ケイ酸塩、フェロシアン化鉄、結晶シリコチタネート、雲母、バーミキュラライト、スメクタイトモンモリ
ロナイト、イライト又はカオリナイトを使用してもよい。これらの無機粒子の表面が有する電荷をあらかじめ調べたり、又はこれらの無機粒子とイオン性高分子、分散型高分子又は両性高分子とを混合し凝集発生の有無を事前にチェックすることにより、高分子凝集剤の種類及び組合せを選ぶことができる。
【0114】
以上のように、本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムによれば、森林や里山(雑木林を含む)の除染ともに、除染が未実施又は不十分である森林や里山(雑木林を含む)からセシウム等の放射性物質が居住地及び田畑等へ移行を抑え、すでに除染を行ったこれら住環境地域の再汚染を防止することができる。その際、放射性物質の移行が継続的に抑制されるため、居住地又は田畑等の再汚染を中長期的に防止できる。また、汚染された森林や里山(雑木林を含む)に存在する落葉や腐葉土等の土壌は除染作業時に剥離する必要がなく、その場所に残存又は蓄積するセシウム等の放射性物質を、無機粒子の吸着剤によって、効率的に、かつ中長期にわたって安定的に吸着し固定化できるため、除染作業が容易になる。さらに、放射性物質を吸着し固定化した状態の無機粒子吸着剤は、凝集した状態で森林や里山から分離し捕集されるため、汚染物の減容化を図ることができる。
【0115】
したがって、本発明による放射性物質の除染方法及び除染システムは、除染の省力化及びコスト低減を図りながら、居住地及び田畑等への放射性物質の移行を継続的に防止することができるため、将来的に安全で、安心感の持てる生活空間を提供することが可能となり、その技術的有用性が極めて高い。