【実施例】
【0024】
[各実施例に共通の構成]
各実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xはいずれも、第1電極15X、第1クラッド層141、活性層11、スペーサ層13、2次元フォトニック結晶層12、第2クラッド層142、及び第2電極16がこの順で積層された構成を有する(
図1)。但し、活性層11と2次元フォトニック結晶層12の順番は、上記のものとは逆であってもよい。
図1では便宜上、第1電極15Xを上側、第2電極16を下側として示しているが、各実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xの使用時における向きは、この図で示したものは限定されない。以下、各層及び電極の構成を説明する。
【0025】
活性層11は、第1電極15X及び第2電極16から電荷が注入されることにより、所定の波長帯を有する光を発光するものである。活性層11の材料には、本実施例ではInGaAs/AlGaAs多重量子井戸(発光波長帯:935〜945nm)を用いたが、本発明ではこの材料に限定されない。活性層11は厚みが約2μmの正方形状であって、該正方形の1辺は後述の第2電極16又は16Aと同じか又はそれよりもやや大きい。但し、活性層11は、本発明ではこの寸法には限定されず、また、円形状や六角形状等の他の形状とすることもできる。
【0026】
2次元フォトニック結晶層12は、例えば
図2に示すように、板状の母材121に、それとは屈折率が異なる異屈折率領域122を周期的に配置したものである。母材121の材料は、本実施例ではGaAsであるが、本発明ではこの材料に限定されない。異屈折率領域122は、本実施例では空孔(空気、あるいは真空)であるが、その代わりに、母材121と材料(屈折率)が異なる物を用いてもよい。本実施例では、平面形状が直角三角形である異屈折率領域122をそれらの直交辺に平行な正方格子の格子点上に配置した。正方格子の周期長aは、2次元フォトニック結晶層12内の屈折率を勘案して、活性層11における発光波長帯内の波長に対応する287nmとした。但し、異屈折率領域122の
平面形状は円形や正三角形等、異屈折率領域122の配置は三角格子状等、のように他の構成を取ってもよい。母材121の平面形状は活性層11と同じであり、厚みは約300nmである。なお、
図2には異屈折率領域122を縦に6個、横に6個ずつ描いているが、実際にはそれよりも多数の異屈折率領域122が設けられている。
【0027】
スペーサ層13は本発明における必須の構成要素ではないが、材料の異なる活性層11と2次元フォトニック結晶層12を接続するために設けられている。スペーサ層13の材料は、本実施例ではAlGaAsであるが、活性層11及び2次元フォトニック結晶層12の材料に応じて適宜変更されるものである。
【0028】
第1電極15Xは、実施例毎に特有の構成を有する。第1電極15Xの構成の詳細は各実施例の説明において述べる。なお、
図1では、第1電極15Xの詳細な構成は捨象され、外形のみが描かれている。ここでは各実施例に共通する、第1電極15Xの材料及び全体の大きさのみ説明する。第1電極15Xの材料は、本実施例ではp型半導体であって、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xから放出されるレーザ光(本実施例では真空中において波長940nm)に対して不透明である。第1電極15Xの全体は、1辺の長さLが約200μmの正方形状であり、活性層11や2次元フォトニック結晶123よりも小さい。また、第1電極15Xの周囲には、第1電極15Xとの間に絶縁体を介して、レーザ光に対して不透明な金属から成る反射層(図示せず)が設けられている。反射層は第1電極15Xと共に、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xで生じたレーザ光を反射して、第2電極16側から外部に放出させる役割を有する。
【0029】
第2電極16は、
図1(a)に示した例では、n型半導体であって、上記レーザ光に対して透明な材料であるインジウム錫酸化物(ITO)により形成されているが、本発明ではこの材料に限定されず、例えばインジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることもできる。第2電極16は、1辺が約800μmの正方形状であり、活性層11及び2次元フォトニック結晶層12の母材121と同じか又はそれよりもやや小さい平面寸法を有している。このような透明電極を用いる代わりに、
図1(b)に示す第2電極16Aを用いてもよい。第2電極16Aは、レーザ光に対して不透明な金属から成る正方形の板状部材の中央が正方形状にくり抜かれた構成を有する。板状部材がくり抜かれた部分を窓部161Aと呼び、板状部材が残された部分を枠部162Aと呼ぶ。板状部材(枠部162Aの外側)の正方形は1辺800μmであり、窓部161Aの正方形は1辺600μmである。この例の場合、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xで生成されたレーザ光は、窓部161Aを通過して外部に放出される。
【0030】
第1クラッド層141及び第2クラッド層142は本発明における必須の構成要素ではないが、第1電極15Xと活性層11、及び第2電極16と2次元フォトニック結晶層12を接続すると共に、第1電極15X及び第2電極16から活性層11に電流を注入し易くするという役割を有する。これらの役割を果たすために、第1クラッド層141の材料にはp型半導体が、第2クラッド層142の材料にはn型半導体が、それぞれ用いられている。第1クラッド層141は、第1電極15X側から順にp-GaAsから成る層とp-AlGaAsから成る層の2層構造を有し、同様に、第2クラッド層142は、第2電極16側から順にn-GaAsから成る層とn-AlGaAsから成る層の2層構造を有している(いずれも2層構造は図示せず)。これら第1クラッド層141及び第2クラッド層142においても、本発明では上記材料には限定されない。第1クラッド層141及び第2クラッド層142の平面寸法は、活性層11及び2次元フォトニック結晶層12の母材121と同じである。厚みは、第1クラッド層141では2μm、第2クラッド層142では200μmである。従って、活性層11は、第2電極16よりも第1電極15Xの方がはるかに近い。そのため、活性層11内における電荷注入領域111(
図3)は、第1電極15Xの平面形状及び大きさに近いものとなる。また、2次元フォトニック結晶123は、第1電極15Xよりも大きいことから、活性層11の電荷注入領域111よりも大きい(
図3)。
【0031】
2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Xの動作を説明する。第1電極15Xと第2電極16の間に所定の電圧を印加する。この電圧の印加の方法は各実施例の第1電極15Xの形態によって相違するため、その詳細は各実施例において説明する。これにより、両電極から電流が活性層11の電荷注入領域111に注入される。これにより、電荷注入領域111に電荷が注入され、電荷注入領域111から所定の波長帯内の波長を有する発光が生じる。電荷注入領域111での電荷の密度分布、及び発光の強度分布については、各実施例において説明する。こうして生じた発光は、2次元フォトニック結晶123内において、正方格子の周期長aに対応した波長の光が選択的に増幅され、レーザ発振する。発振したレーザ光は、第2電極16側から外部に出射する。
【0032】
以下、各実施例について、特有の構成を中心に説明する。
【0033】
[第1実施例−メッシュ状電極]
第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、
図4に示す構成を有する第1電極15Aを用いる。第1電極15Aは、全体が正方形状であって、中心付近に形成された正方形状の第1導電領域15A11と、第1導電領域15A11の周囲に形成された第2導電領域15A12の2つの領域を有する。第1導電領域15A11は、一様な導電体(p型半導体)により形成されている。それに対して第2導電領域15A12は、導電体がメッシュ状に形成されており、メッシュの線15A2の間は絶縁体から成る線間領域15A3で埋められている。線間領域15A3の材料には、SiNが用いられている。第1導電領域15A11の導電体と、第2導電領域15A12のメッシュの線15A2を構成する導電体は、一体のものであって電気的に接続されているため、等電位である。このようなメッシュ状電極は、通常のリソグラフィー法を用いて作製することができる。
【0034】
本実施例では、第1導電領域15A11の平面形状である正方形の1辺の長さL
iは100μmとした。また、活性層11中のキャリア拡散長は計算により2.5μmと見積もられることから、電流広がりL
Cの大きさは当該キャリア拡散長にほぼ等しいものとして、第2導電領域15A12におけるメッシュの線15A2の間隔L
2はL
Cの約1.2倍の3.0μmとした。メッシュの線15A2の幅L
1は1.25μmとした。
【0035】
第1実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、活性層11の電荷注入領域111に形成される電荷密度の分布を計算した結果を
図5に示す。これらの計算では、電流広がりL
Cはキャリア拡散長と同じ2.5μmとした。従って、メッシュの線15A2の間隔L
2は、L
Cの1.2倍である。
図5(a)は、電荷注入領域111内のうち、第1導電領域15A11に対応する中央部1111(
図6参照)における電荷密度の分布を示し、(b)は第2導電領域15A12に対応する周囲部1112(同)における電荷密度の分布を示している。(a)及び(b)のグラフでは中央部1111の中心からの位置をx軸とし、中央部1111の中心((a)のグラフにおけるx軸の原点)における値が1になるように、縦軸が規格化されている。これらのグラフに示されているように、中央部1111と周囲部1112にはそれぞれほぼ一様な電荷密度が形成されており、電荷注入領域111全体では、中央部1111の電荷密度が周囲部1112の電荷密度の約2倍という電荷密度の分布が形成されている。このような電荷密度の分布が形成されることにより、電荷注入領域111からは、中央部1111が最大となる強度分布を有する発光が生じ、この発光が2次元フォトニック結晶123において増幅されることにより、基本モードのレーザ発振が生じ易くなる。そのため、高次モードの無駄なレーザ発振を抑えることができ、全体としての光出力を高めることができる。
【0036】
基本モードのレーザ発振が生じ易くなることを確かめるために、第1実施例における閾値利得差Δαを計算で求めた。閾値利得差Δαは、基本モードの振動の閾値利得から、基本モードの次に振動の腹及び節の数が少ない次高次モードの振動の閾値利得を差し引いた値である。各振動モードの閾値利得は該振動モードによるレーザ発振の強度を示す値であり、閾値利得差Δαが大きいほど基本モードのレーザ発振が生じ易いことを意味する。
【0037】
まず、第1電極の1辺の長さを上記の通りL=200μmとし、L
iが上記の100μmを含む0〜200μmの範囲内の異なる複数の値の場合について閾値利得差Δαを計算した結果を
図7(a)のグラフに示す。このグラフの横軸はL
i/Lで示した。このグラフにおいてL
i/L=1のデータは本実施例のものではなく、第1電極全体が一様な導体板である従来の2次元フォトニック結晶レーザのものである。また、L
i/L=0のデータは、第1電極が、導電体の密度が一様なメッシュ状電極から成っていることを示している。このグラフより、一様な導電体から成る第1導電領域とメッシュ状の第2導電領域を有するL
i/L≠0及び1の場合にはいずれも従来のL
i/L=1の場合よりも、閾値利得差Δαが大きく、基本モードのレーザ発振が生じ易いといえる。また、
図7(a)に示したデータのうち、L
i/L=0.5の場合、すなわち上記のL
i=100μm、L=200μmの場合に、閾値利得差Δαが最も大きい。
【0038】
次に、L
i/Lを0.5とし、Lの値が異なる複数の場合について閾値利得差Δαを計算した結果を
図7(b)のグラフに示す。このグラフより、Lの値が300μmよりも大きい範囲では、Lが大きくなるほど閾値利得差Δαは小さくなる。一方、Lが大きくなるほど、第1電極全体の面積が大きくなるため、レーザ出力を高くするという点では有利である。そこで、
図7(b)で得られたΔαの計算値において、(a)中の従来例(L
i/L=1)におけるΔαの値以上であったもののうち、Lが最も大きいL=600μm(L
i=300μm)の場合についてレーザの光出力を計算した結果、2.4Wという値が得られた。この光出力の計算値は、非特許文献1及び2に記載の2次元フォトニック結晶レーザにおける実験値よりも(計算値と実験値という相違はあるものの)高い。
【0039】
ここまでは第1電極15Aの第2導電領域15A12におけるメッシュの線15A2の間隔L
2が3.0μmの場合について説明したが、この間隔L
2が異なる複数の例につき、活性層11中の周囲部1112における電荷密度を計算した結果を
図8に示す。メッシュの線15A2の幅L
1はいずれも0.50L
cμmとし、間隔L
2は
図8(a)では0.50L
cμm、(b)では0.80L
cμm、(c)では1.20L
cμm(従って、(c)は
図5(b)を再掲したものである)、(d)では1.40L
cμm、(e)では2.00L
cμmとした。これらの計算より、周囲部1112における電荷密度分布は、(a)〜(c)の場合にはほぼ一様であり、(d)の場合にはメッシュの線15A2の周期に対応したわずかな周期的変動が見られるものの、その変動幅は5%未満に抑えられている。それに対して、この間隔L
2が電流広がりL
cの1.4倍よりも大きい(e)の場合には、電荷密度分布の周期的変動の幅が10%を超える大きなものとなる。また、メッシュの線15A2の幅L
1が同じ場合において、間隔L
2を広くするほど電荷密度が小さくなる。
【0040】
図9に、メッシュの線15A2の間隔L
2が同じである場合において、幅L
1が異なる複数の例について活性層11中の周囲部1112における電荷密度を計算した結果を示す。メッシュの線15A2の間隔L
2はいずれも1.20L
cμmとし、幅L
1は
図9(a)では0.50L
cμm(従って、(a)は
図5(b)及び
図8(c)を再掲したものである)、(b)では0.32L
cμm、(c)では0.20L
cμm、(d)では0.16L
cμm、(e)では0.12L
cμm、(f)では0.08L
cμmとした。これらの計算より、周囲部1112における電荷密度分布は、メッシュの線15A2の幅L
1を小さくするほど電荷密度が小さくなる。
【0041】
以上のように、第1電極15Aにおけるメッシュの線15A2の間隔L
2及び/又は幅L
1の相違により、メッシュ内における導電体(線)の面積比が小さくなるほど電荷密度が小さくなる。従って、これら間隔L
2及び/又は幅L
1の設定により、対応する活性層11内の位置における電荷密度を定めることができる。
【0042】
第1導電領域15A11は、上記の例のように一様な導電体とする代わりに、例えば第2導電領域15A12よりもメッシュの線の幅L
1が広い(
図10(a))、あるいは幅L
1が同じであって間隔L
2が狭いといった、第2導電領域15A12よりも導電体の面積比が大きいメッシュから成るものであってもよい。あるいは、第1電極15Aの中心から周囲に向かって、導電体の面積比が小さくなってゆくように、3つ以上の導電領域(第1導電領域15A11、第2導電領域15A12、第3導電領域15A13…)を設けてもよい(
図10(b))。別の例として、導電体の面積比が最も大きい正方形の第1導電領域15A11を第1電極15Aの中央に設け、第1導電領域15A11の正方形の辺に接して、次に導電体の面積比が大きい第2導電領域15A12を設け、第1導電領域15A11の正方形の頂点に接して、それら2つの導電領域よりも導電体の面積比が小さい第3導電領域15A13を設けるという構成を取ることもできる(
図10(c))。
【0043】
図11に示すように、第1電極15Aの面内位置の中心から外側に向かって、各線間領域15A3の面積が漸増するようにしてもよい。この例では、メッシュの線15A2の間隔L
2は面内位置に依らず同じ値とし、幅L
1が面内位置の中心から離れるに従って漸減するように連続的に変化する。面内位置の中心では、幅L
1は間隔L
2と同じであり、線間領域15A3が設けられていない。これらの構成により、第1電極15A内の導電体の面積比は、面内位置の中心から離れるに従って漸減するように、ほぼ連続的に変化する。このような第1電極15Aから電流が注入される活性層11の電荷注入領域111では、面内位置の中心から外側に向かって漸減する電荷密度が形成され、それにより、発光の強度も同様に面内位置の中心から外側に向かって漸減する。このような発光の位置による強度分布は、これまでに挙げた他の例の場合よりもガウス分布に近いものとなるため、基本モードのレーザ発振がより生じ易くなる。
【0044】
図12に、
図11の例において閾値利得差Δαを計算した結果をグラフで示す。ここでは、電荷注入領域111内に幅w
pを有する電荷密度のガウス分布が形成されるものとした。
図12(a)ではLを200μmに固定してグラフの横軸をw
p/Lとし、(b)ではw
p/Lを0.25に固定してグラフの横軸をLとした。また、(a)において、w
p/L=0におけるデータは、本実施例のものではなく、板状の第1電極によって活性層に一様な電荷分布が形成される従来の2次元フォトニック結晶レーザのものである。(a)に示した本実施例のデータはいずれも、従来のw
p/L=0の場合よりも閾値利得差Δαが大きく、基本モードのレーザ発振が生じ易いといえる。また、(b)のグラフより、Lの値が400μmよりも大きい範囲では、Lが大きくなるほど閾値利得差Δαは小さくなるが、前述のように、Lが大きくなるほど、第1電極全体の面積が大きくなるため、レーザ出力を高くするという点では有利である。(b)で得られたΔαの計算値において、(a)中の従来例におけるΔαの値以上であったもののうち、Lが最も大きいL=2200μmの場合についてレーザの光出力を計算した結果、8Wという値が得られた。この光出力の計算値は、前述の第1導電領域15A11及び第2導電領域15A12を用いて電荷密度を2つの値のみで調整した場合の計算値よりも高い。
【0045】
図13に、高次モードのレーザを選択的に発振させるための第1電極15Aの例を示す。この例では、正方形の第1電極15Aにおいて、該正方形の4個の頂点のうち1本の対角線上にある2個の頂点付近にそれぞれ第1導電領域15A11を有し、それ以外の領域は第1導電領域15A11よりも導電体の面積比が小さい第2導電領域15A12とした。これにより、第1電極15Aの平面形状の中心付近では電流密度が低く、上記2個の頂点付近では電流密度が高いという分布が形成される。このような分布の電流が活性層11に注入されると、それにより活性層11で生じた光が2次元フォトニック結晶123において、中心付近を節とし、上記対角線上の2個の頂点に対応する位置の付近を腹とする高次モードの定在波となる。これにより、高次モードのレーザが発振される。
【0046】
[第2実施例−同心円状電極]
第2実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、
図14に示すように、環状の導電体15B1を同心円状に複数個有し、環状導電体15B1同士の境界
が環状絶縁体15B2で絶縁されているという構成を有する第1電極15Bを用いる。同心円の中心には、円形導電体15B0が設けられている。円形導電体15B0及び複数の環状導電体15B1同士は、線状導電体15B3により電気的に接続されている。環状導電体の幅15B1は、中心から離れるに従って環状絶縁体15B2の幅との比が小さくなるようにした。これにより、第1電極15Bの中心から離れるに従って小さくなるという電流密度分布が形成される。
【0047】
[第3実施例−分割電極]
第3実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、
図15に示す構成を有する第1電極15Cを用いる。第1電極15Cは、全体が正方形状であって、中心付近に形成された正方形状の第1導電領域15C11と、第1導電領域15C11の周囲に形成された第2導電領域15C12の2つの領域を有する。第1導電領域15C11と第2導電領域15C12の境界には、正方形の4辺のように線状に形成された、絶縁体から成る絶縁領域15C21を有する。これにより、第1導電領域15C11と第2導電領域15C12はそれぞれ、前述のサブ電極として機能する。また、第1電極15Cは、第1導電領域15C11の正方形の1頂点から第2導電領域15C12の正方形の対角線上に延び、第2導電領域15C12の1頂点に達する、導電体から成る線状の接続領域15C31を有する。接続領域15C31の線の両側にも絶縁領域15C21が設けられている。この第1電極15Cは、通常のリソグラフィー法を用いて作製することができる。
【0048】
第3実施例の2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、第1導電領域15C11−第2電極16間に第1電圧V1を印加すると共に、第2導電領域15C12−第2電極16間に、第1電圧V1よりも小さい第2電圧V2を印加する。その際、第1導電領域15C11には接続領域15C31を介して第1電源(図示せず)を接続し、第2導電領域15C12には直接、第
1電源とは別の第2電源(図示せず)を接続する。第1導電領域15C11と第2導電領域15C12は、上述のように絶縁領域15C21で電気的に隔たれているため、互いに異なる電圧を印加することができる。このように電圧を印加することにより、活性層11の電荷注入領域111には、周囲部1112よりも中央部1111の方が高いという電荷密度の分布が形成される。これにより、電荷注入領域111からは、中央部1111が最大となる強度分布を有する発光が生じ、この発光が2次元フォトニック結晶123において増幅されることにより、基本モードのレーザ発振が生じ易くなる。そのため、高次モードの無駄なレーザ発振を抑えることができ、全体としての光出力を高めることができる。
【0049】
第3実施例の第1電極15Cは、中心から周囲に向かって3つ以上の導電領域(第1導電領域15C11、第2導電領域15C12、第3導電領域15C13…)を有していてもよい(
図16)。3つ以上の導電領域を設ける場合には、導電領域同士の境界の全てに絶縁領域15C21、15C22…を設ける。また、一番外側にある導電領域以外の導電領域には、接続領域15C31、15C32…を設ける。各導電領域(サブ電極)にはそれぞれ、異なる電源を接続する。