(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の技術は、UV光作用からの毛髪を保護し、毛髪損傷や枝毛を防止する効果が高いが、一方で、カロテノイドの経時での安定化が十分に得られず、カロテノイドの褪色が見られる場合があった。
【0008】
また、特許文献3、4の技術は、カロテノイドの褪色の安定化は図られているが、ダメージをうけた毛髪への補修効果が得られない場合があり、また、高粘度になることから、製剤として、特定のアイテムに限られ、ヘアシャンプー、ヘアスタイリング剤など多様なアイテムがある毛髪化粧料への配合に適さない場合があった。
【0009】
このため、毛髪への補修効果を有し、かつカロテノイドの経時での安定化にも優れる組成物の開発が求められており、本発明は、これを解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような事情に鑑み、本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、カロテノイドにダメージを受けた毛髪を補修する効果、すなわち、毛髪破断強度を向上させる効果があることを見出し、さらに、カロテノイドと特定の化学構造を有するカチオン性界面活性剤と組み合わせてベシクル組成物化することで、毛髪内部への浸透性に優れ、さらに高い毛髪補修効果を付与し、かつカロテノイドの褪色の経時安定性が優れるという知見を見出し、本発明のベシクル組成物を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)〜(B);
(A)カロテノイド
(B)ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート及びジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートからなる群より選択されるカチオン性界面活性剤
を含有するベシクル組成物を提供するものである。
【0012】
また、成分(A)と成分(B)の配合質量割合(B)/(A)が、50〜10000であるベシクル組成物を提供するものである。
【0013】
さらに成分(A)が、アスタキサンチン類であるベシクル組成物を提供するものである。
【0014】
そしてさらに、成分(C)として、ステロール類を配合するベシクル組成物を提供するものである。
【0015】
また、成分(C)が、コレステロールであるベシクル組成物を提供するものである。
【0016】
そしてさらに、成分(D)として、トリグリセリド油を配合するベシクル組成物を提供するものである。
【0017】
また、(D)が脂肪酸数8〜12のトリグリセリドであるベシクル組成物を提供するものである。
【0018】
また上記ベシクル組成物を配合した毛髪化粧料を提供するものである。
【0019】
さらに、成分(E)として、トコフェロール類を配合する毛髪化粧料を提供するものである。
【0020】
さらに、成分(F)として、オリーブ脂肪酸エチル及び/又はオレイン酸エチルを配合する毛髪化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のベシクル組成物及びそれを配合した毛髪化粧料は、毛髪に適用した場合、ベシクル組成物が毛髪内部へ浸透し、ダメージ毛への補修効果として、毛髪破断強度を向上する効果及びカロテノイドの安定化に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書においては、「〜」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値を含むものとする。
また、本明細書において「ベシクル組成物」とは、水中で球状の閉鎖小胞体を意味し、偏光顕微鏡観察でマルテローゼクロス像が観察されるものであり、また別の観察方法としては、透過型電子顕微鏡観察で多重層構造のマルチラメラベシクルが観察されるものをいう。
【0023】
本発明に用いられる成分(A)のカロテノイドは、植物類、魚類、藻類及びバクテリアのいずれのものも含まれる。また天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも本発明におけるカロテノイドに包含される。
【0024】
カロテノイドとしては、炭化水素類(カロテン類)及びこれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)並びにこれらのエステルが挙げられる。本発明では特に断らない限り、これらの化合物を含めて「カロテノイド」と称する。カロテノイドの例としては、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、δ−カロテン、β−クリプトキサンチン、エキネノン、パーム油カロテン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、フコキサンチン及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類を挙げることができる。
【0025】
本発明に用いられるカロテノイドとしては、好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチン類である。
【0026】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でキサントフィル類に分類され、化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione(C
40H
52O
4、分子量596.82)である。また、アスタキサンチンの誘導体としては、例えばアスタキサンチンエステルがあげられ、アスタキサンチンのジアセタート(C
40H
50O
2(OCOCH
3)
2)やジパルミタート(C
40H
50O
2(OCOC
15H
31)
2)等がある。本発明においては、特に断らない限り、上記のアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステルを含めて「アスタキサンチン類」と称する。なお、アスタキサンチンエステルの誘導体に比べアスタキサンチンの方が不安定であるため、本発明ではアスタキサンチンを用いるとより高い効果が期待できる。
【0027】
本発明に用いられるアスタキサンチン類は、例えば、オキアミ、サケ、マス、福寿草、赤色酵母、ヘマトコッカス藻等の天然物から抽出したものや合成品を用いることができるが、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう)が、品質、生産性の点から特に好ましい。天然物からアスタキサンチン類を得る場合の抽出溶媒については、水系溶媒でも有機溶媒であってもよい。有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン等を用いることができる。また、超臨界状態の二酸化炭素等を用いることもできる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。また、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同5F等、オリザ油化製のアスタキサンチン−5C、同20C、バイオアクティブズジャパン社製のアスタキサンチン5%オイル、バイオジェニック社製のASTABIO(登録商標)AR1、AR5等が挙げられる。またオキアミ由来としては、マリン大王社製Astax−S等が挙げられる。
【0029】
本発明の成分(A)のカロチノイドは、ダメージ毛への補修効果として、毛髪破断強度を向上する効果の点から好ましい。本発明に用いられる成分(A)のカロチノイドは、必要に応じて1種又は2種以上を単独または併用して用いることができる。これらのうち、アスタキサンチンがより好ましい。
【0030】
本発明の成分(A)の配合量は、特に限定されるものではないが、毛髪補修効果の点からは、ベシクル組成物中、概ね0.001〜1.0質量%(以下、質量%は単に、「%」と略す)が好ましく、0.01〜0.1%がより好ましい。
【0031】
本発明に用いられる成分(B)のジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート及びジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートは、2つの脂肪酸鎖及び疎水鎖中にエステル結合を有する、2長鎖型のカチオン性界面活性剤である。本発明の成分(B)は、ベシクル組成物を形成するための基剤成分として好適である。
【0032】
本発明においては、成分(B)を用いることで、経時安定性に優れたベシクル組成物を調製することができるので、成分(B)により形成されるベシクル中に成分(A)を内包させると、成分(A)の毛髪補修効果をさらに高め、かつ安定に保持できる。そして、毛髪に塗布した際には、毛髪内部まで効率的に浸透し、成分(A)等の毛髪有効成分を安定的に毛髪内部へ送達させ、ダメージ毛への補修効果として、毛髪破断強度を向上する効果及びカロテノイドの褪色の安定化に優れたものが得られる。
【0033】
成分(B)のジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、ジパルミトイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートは、これらを1種、又は2種以上組み合わせて使用でき、DEHYQUART L80、DEHYQUART AU56/G、DEHYQUART C4046(いずれもBASF社製)などの市販品も使用可能である。このうち、特にジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートが、得られるベシクル組成物の経時安定性や、そのベシクル組成物を配合した毛髪用化粧料の毛髪補修効果及びカロテノイドの褪色の安定化の点からより好ましい。
【0034】
本発明の成分(B)の配合量は、特に限定されないが、ベシクル組成物の安定化の点から、ベシクル組成物中、概ね1.0〜10.0%が好ましく、2.0〜5.0%がより好ましい。
【0035】
上記した成分(A)、成分(B)の配合量は、任意に選択可能であり、配合する比も特に限定されるものではないが、これらの配合量の質量割合を特定の範囲とすることにより、さらに本発明の効果を高めることが可能となり好ましい。成分(A)と成分(B)の配合質量割合(B)/(A)は、特に限定されないが、ベシクル組成物の安定化及び毛髪補修効果及びカロテノイドの褪色の安定化の点から、概ね50〜10000が好ましく、100〜1000がより好ましい。
【0036】
本発明には、さらに成分(C)のステロール類の配合が可能である。本発明に用いられるステロール類は、ステロール骨格を持つ物質であればよい。例えば、ステロール骨格を持つ物質あるいはその誘導体としては、コレステロール、フィトステロール(β−シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等)、ラノステロール、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、オレイン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル、ヤシ油脂肪酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(オクチルドデシル・フィトステリル・ベヘニル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、オレイン酸フィトステリル等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ベシクル組成物の安定化及び毛髪補修効果の点から、コレステロール、フィトステロールが好ましく、さらに、コレステロールがより好ましい。市販品としては、海麗マリンコレステロール(日本水産社製)、マリンコレステロール(共和テクノス社製)、フィトステロール(エーザイ・フードケミカル社製)等、が使用可能である。
【0037】
本発明の成分(C)の配合量は、特に限定されないが、ベシクル組成物の安定化及び毛髪補修効果の点から、ベシクル組成物中、概ね0.001〜5%が好ましく、0.01〜3%がより好ましい。
【0038】
さらに、本発明には、成分(D)として、トリグリセリド油を配合することも可能である。本発明に用いられる成分(D)のトリグリセリド油は、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルであり、脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸、分岐脂肪酸のいずれでもよく、植物油も含まれる。本発明使用される成分(D)のトリグリセリド油としては、特に限定されないが、具体的には、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリリノール酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、メドウフォーム油、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、胚芽油などが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ベシクル組成物の安定化の点から、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸グリセリル)がより好ましい。
【0039】
本発明の成分(D)の配合量は、特に限定されないが、ベシクル組成物の安定化の点から、ベシクル組成物中、概ね0.001〜2.0%が好ましく、0.1〜1.0%がより好ましい。
【0040】
本発明のベシクル組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、均一に加温した成分(A)、(B)を、同様に加温した精製水に分散させ、その後攪拌を続けながら徐々に室温まで冷却させることにより得られる。また、使用感や毛髪への更なる効果等を期待して後述するような任意に配合可能な成分をベシクル調製時に、適宜その性質等に応じて加えても良い。
得られたベシクル組成物の平均粒子径は、概ね100nm〜10μmであるが、好ましくは、エクストルーダー等の機器を用いて平均粒子径を50〜500nmとすることにより、経時でもベシクルが崩壊することがなく、平均粒子径の変化(増大)も少ない安定性に優れたものが得られる。なお、ここでの平均粒子径の測定は、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5)による測定値である。
【0041】
上記方法等によって調製される本発明のベシクル組成物は、これを毛髪化粧料に配合することも可能である。
【0042】
さらに、本発明の毛髪化粧料には、成分(E)として、トコフェロール類を配合することも可能である。成分(E)のトコフェロール類は、トコフェロール又はその誘導体である。具体的には、トコフェロールは、メチル基の位置により、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、d−α−トコフェロール、d−β−トコフェロール、d−γ−トコフェロール、d−δ−トコフェロールの8つの型があり、通常、化粧品に用いられるビタミンEはこれらの混合物である。また、トコフェロール誘導体としては、、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸d−α−トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、リノール酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールなどが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、カロチノイドの褪色抑制及び毛髪補修効果の点から、トコフェロール、酢酸トコフェロールがより好ましい。また、成分(E)は、ベシクル組成物に配合することも可能である。
【0043】
本発明の毛髪化粧料における成分(E)の配合量は、特に限定されないが、カロチノイドの褪色抑制及び毛髪補修効果の点から概ね0.001〜5.0%が好ましく、0.1〜1.0%がより好ましい。
【0044】
さらに、本発明の毛髪化粧料には、成分(F)として、オリーブ脂肪酸エチル及び/又はオレイン酸エチルを配合することも可能である。本発明に用いられる成分(F)は、オリーブ脂肪酸またはオレイン酸とエチルアルコールとのエステルである。本発明において、成分(F)は、毛髪補修効果の点から好ましい。これらは、1種又は2種を組み合わせて用いることができる。市販品としては、オリーブ脂肪酸エチルとして、NIKKOL EOO(日本サーファクタント社製)、オレイン酸エチルとして、CLEARBRIGHT E−81S(日油社製)を挙げることができる。また、成分(F)は、ベシクル組成物に配合することも可能である。
【0045】
本発明の毛髪化粧料における成分(F)の配合量は、特に限定されないが、毛髪補修効果の点から、概ね0.01〜50.0%が好ましく、0.1〜10.0がより好ましい。
【0046】
本発明の毛髪化粧料の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、上記の通り、成分(A)、(B)を、精製水に分散させた後、室温まで冷却させてベシクル組成物を調製すること、及び該ベシクル組成物に、後述の任意成分等を配合することにより製造することができる。
【0047】
本発明の毛髪化粧料へのベシクル組成物の配合量は、特に限定はなく、毛髪化粧料全量中、概ね0.5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。また、本発明のベシクル組成物をそのまま100%として、毛髪化粧料として用いることもできる。
なお、本発明の毛髪化粧料の剤型については特に制限はないが、ベシクルを安定に維持するという観点では、外相が水系である剤型の毛髪化粧料として調製するのが好ましい。外相は、水以外に、水に溶解及び/又は分散可能な種々の剤(例えば、エチルアルコール、多価アルコール、塩類、界面活性剤等)を含んでいてもよい。
【0048】
本発明のベシクル組成物及びそれを配合する毛髪化粧料には、上記成分(A)〜(F)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、これら以外の油剤や界面活性剤、アルコール類、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、保湿剤、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、紫外線吸収剤、植物抽出物、アミノ酸類、糖類、ビタミン類等の毛髪ケア用美容成分等を配合することができる。
【0049】
本発明の毛髪化粧料は、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状等、剤型に特に限定はなく調製することができ、例えば、ヘアローション、ヘアミルク、ヘアクリーム、ヘアトリートメント、枝毛コート剤等のアウトバスヘア製品や、リンス、ヘアパック、シャンプー等のインバスヘア製品等の毛髪用化粧料とすることができる。また、噴射剤を配合してエアゾールヘアスプレーやヘアフォームとしての実施も可能である。
また、本発明のベシクル組成物は、毛髪補修効果に優れることより、毛髪補修用のベシクル組成物、あるいは、ベシクル組成物を配合する毛髪補修用の毛髪化粧料として使用することも可能である。
【実施例】
【0050】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0051】
実施例1〜8及び比較例1〜4:ヘアミルク
表1、表2に示す処方及び下記製造方法により、ベシクル組成物及びヘアミルクを調製し、「毛髪補修効果」及び「経時安定性」について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1、表2に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
(注1)DEHYQUARTL 80(BASF社製)
(注2)DEHYQUARTL AU56/G(BASF社製)
(注3)アスタキサンチン5C(アスタキサンチン5%、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル74%、ヘマトコッカスプルビアリスエキス20%、トコフェロール1%)(オリザ油化社製)
【0055】
(製造方法1):ベシクル組成物
A:成分(1)〜(6)を80℃に加熱して均一混合する。
B:成分(7)を80℃に加熱する。
C:BにAを添加して均一に混合後、冷却し、ベシクル組成物を得た。
【0056】
(製造方法2):ヘアミルク
D:成分(8)〜(14)を80℃に加熱して均一混合する。
E:成分(15)〜(17)を80℃に加熱して均一混合する。
F:EにDを添加して均一に乳化混合後、冷却し、乳化組成物を得た。
G:FにCを混合し、ヘアミルクを得た。
【0057】
〔評価方法1〕毛髪補修効果
毛髪補修効果は、毛髪破断強度の変化を指標として、下記実験条件にて設定し、測定を行い、(イ)判定基準に従って判定した。
1.上記表1、表2及び上記製造方法により調製したベシクル組成物含有ヘアミルクに、同一人由来の毛髪を1時間浸漬する。
2.1時間浸漬した毛髪を取り出し、毛髪表面のヘアミルクをキムタオルにて除去し、25℃恒温恒湿槽にて24時間放置する。
3.24時間放置後の毛髪をEZテスター(島津製作所製製)を用いて、毛髪の破断時の応力を測定する。5本測定し、破断応力の平均値を求める
4.比較例3の破断応力の平均値を100としたときの、その他実施例、比較例の値を求める。
5.比較例3の破断応力との比較から、毛髪破断強度の向上の度合いにより、毛髪補修効果を(イ)判定基準に従って判定した。
(イ)判定基準
[判定]:[比較値]
◎:125以上
〇:115以上〜125未満
△:105以上〜115未満
×:105以下
【0058】
〔評価方法2〕経時安定性
各試料を50℃にて2週間保管した後、各試料を室温に戻し、化粧料評価の専門家が目視により、各試料の外観について、カロテノイドによる着色の色変化を観察し、褪色のレベルを、下記(ロ)判定基準に従って判定した。(比較例3、4は、カロテノイドを配合しないため、カロテノイドによる着色の色変化の評価対象外)
(ロ)判定基準
[判定]:[評価]
◎:褪色が全く見られない、あるいは、ほとんどない
〇:褪色がわずかに見られる
△:褪色が見られる
×:褪色が著しい
【0059】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明品の実施例1〜8のヘアミルクは、いずれも「毛髪補修効果」、「経時安定性」に優れた効果を示すものであることが実証された。
これに対して、成分(A)のカロテノイドをベシクル組成物内に配合せず、カロテノイドを乳化区分に配合した比較例1や比較例2は、「経時安定性」に劣っており、「毛髪補修効果」も十分ではなかった。成分(A)の代わりに、毛髪細胞間脂質成分として知られているラノリン脂肪酸をベシクル組成物に配合した比較例4では、「毛髪補修効果」が十分ではなかった。成分(A)が配合されていないベシクル組成物を配合した比較品3に対して、本発明品の実施例は、いずれも、「毛髪補修効果」、「経時安定性」が優れたものであった。
【0060】
実施例9:毛髪化粧料(ヘアローション)
(成分) (%)
1.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
80%プロピレングリコール溶液(注1) 3
2.β−カロチン 0.05
3.イソステアリン酸 60
4.精製水 0.5
5.アミノ変性シリコンエマルション(注4) 0.5
6.プロピレングリコール 5
7.エチルアルコール 5
8.精製水 残量
9.香料 0.1
(注4)SM 8904 COSMETIC EMULSION(東レ・ダウコーニング社製)
【0061】
(製造方法)
A:成分1〜3を80℃に加熱溶解する。
B:成分4を80℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却しベシクル組成物を得る。
E:Dに成分5を加え均一に混合する。
F:Eに成分6〜9を加え均一に混合する。
G:Fを容器に充填して毛髪化粧料(ヘアローション)を得た。
【0062】
以上のようにして得られた実施例9の毛髪化粧料(ヘアローション)は「毛髪補修効果」、「経時安定性」に優れたものであった。
【0063】
実施例10:毛髪化粧料(ヘアトリートメント)
(成分) (%)
1.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
80%プロピレングリコール溶液(注1) 1
2.アスタキサンチン液(注5) 0.01
3.オリーブ脂肪酸エチル 0.2
4・精製水 20
5・セトステアリルアルコール 2.5
6・ベへニルアルコール 2.5
7.ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.5
8.モノステアリン酸グリセリル 0.2
9.N―ラウロイル―L―グルタミン酸ジ(フィトステリル
・ベヘニル・2−オクチルドデシル) 1
10.イソステアリン酸デキストリン 3
11.ジメチルポリシロキサン(100mPa・s) 5
12.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
13.ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート
80%プロピレングリコール溶液(注1) 2
14.精製水 残量
15.プロピレングリコール 10
16.フェノキシエタノール 0.1
17.香料 適量
(注5)ASTAX−S(マリン大王社製)
【0064】
(製造方法)
A:成分1〜3を80℃に加熱溶解する。
B:成分4を80℃に加熱する。
C:BにAを添加してホモミキサーにて混合攪拌する。
D:Cを室温まで冷却しベシクル組成物を得る。
E:成分5〜13を80℃に均一に加熱溶解する。
F:成分14〜16を80℃に均一に加熱溶解する。
G:FにEを添加し、ホモミキサーにてし、乳化する。
H:Gを冷却し、成分17、及びDを添加混合した後、容器に充填し毛髪化粧料
(ヘアトリートメント)を得た。
【0065】
以上のようにして得られた実施例10の毛髪化粧料(ヘアトリートメント)は「毛髪補修効果」、「経時安定性」に優れたものであった。