(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外周部に複数の切刃が突出する2枚以上の刃板と、動力源と、減速機構を有し、前記刃板が同一軸心上に配置され、前記動力源の動力を前記減速機構で減速して刃板の少なくとも一方を回転させ、2枚の刃板の切刃の間に草木を挟んで草木を切断する草刈り機において、
前記減速機構は、サンギア側部材とリングギア側部材と、1又は複数の小ギアを有し、
サンギア側部材は外周部に歯車が形成されたサンギアと、サンギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたサンギア側ガイドを有し、
リングギア側部材は内周側に歯車が形成されたリングギアと、リングギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたリングギア側ガイドを有し、
サンギア側ガイドとリングア側ガイドとが直接又は他の部材を介在させて係合していてサンギアとリングギアの径方向の相対移動が阻止され、
サンギアとリングギアとの間に小ギアが介在され、前記小ギアはサンギアとリングギアの双方と係合し、少なくとも一つの小ギアに動力源の動力が伝動されることを特徴とする草刈り機。
サンギア及びリングギアは共に板状であり、動力源の動力が伝動される小ギアはその厚さがサンギア及びリングギアの2倍以上であってサンギア及びリングギアと係合する際には軸方向の一端寄りの領域だけが係合し、必要に応じて小ギアの天地方向の入替えが可能であり、小ギアの天地方向を入替えることによってサンギア及びリングギアと係合する領域を変更することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の草刈り機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示した草刈り機は、上刃板と下刃板がゆっくりと回転するので安全性が高い。しかしながら、特許文献1に開示した草刈り機は、耐久性という点で改良すべき点があった。
即ち二枚刃式の草刈り機は、従来主として家庭用に使用されてきた。しかしながら近年、二枚刃式の草刈り機の高い安全性に注目され、業務用としても二枚刃式の草刈り機が使われつつある。
【0007】
そのため二枚刃式の草刈り機に対して、業務用に耐えるだけの高い耐久性が求められている。
特許文献1に開示した草刈り機を高頻度、且つ高負荷状態で使用した場合、遊星ギア列にガタが生じることがある。
即ち特許文献1に開示した草刈り機では、サンギアに下刃板が設けられ、リングギアに上刃板が設けられている。
そして草刈り作業においては、下刃板及び上刃板が草木に押し当てられる。
【0008】
前記した様に、特許文献1に開示した草刈り機では、小ギアを複数個介在させることによって、サンギアとリングギアの相対位置関係を保っている。即ち特許文献1に開示した草刈り機では、複数の小ギアが、サンギアとリングギアの間に挟まれ、小ギアによってサンギアとリングギアとの位置関係が確保されている。
従って長期に渡って使用し、サンギア、リングギア及び小ギアの磨耗が進むと、サンギア、リングギア及び小ギアの間の隙間が大きくなる。
【0009】
そのため特許文献1に開示した草刈り機を高頻度、且つ高負荷状態で使用した場合、遊星ギア列にガタが生じることがある。
またギアの磨耗が進むと、各ギアが正常にかみ合わなくなってしまう懸念がある。
即ち特許文献1に開示した草刈り機を使用した際、仮に上刃板だけが草木に押し当てられると、上刃板が固定されたリングギアだけにスラスト加重が掛かり、リングギアにサンギアに対する偏心力が生じる。
下刃板だけが草木に押し当たった場合も同様であり、下刃板が固定されたサンギアだけにスラスト加重が掛かり、サンギアにリングギアに対する偏心力が生じる。
その結果、リングギアとサンギアの中心が不一致となり、歯飛びが生じ、刃板が正常に回転しなくなってしまう。
【0010】
本発明は、特許文献1に開示した草刈り機を改良するものであり、耐久性の高い草刈り機を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、外周部に複数の切刃が突出する2枚以上の刃板と、動力源と、減速機構を有し、前記刃板が同一軸心上に配置され、前記動力源の動力を前記減速機構で減速して刃板の少なくとも一方を回転させ、2枚の刃板の切刃の間に草木を挟んで草木を切断する草刈り機において、前記減速機構は、サンギア側部材とリングギア側部材と、1又は複数の小ギアを有し、サンギア側部材は外周部に歯車が形成されたサンギアと、サンギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたサンギア側ガイドを有し、リングギア側部材は内周側に歯車が形成されたリングギアと、リングギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたリングギア側ガイドを有し、サンギア側ガイドとリングア側ガイドとが直接又は他の部材を介在させて係合していてサンギアとリングギアの
径方向の相対移動が阻止され、サンギアとリングギアとの間に小ギアが介在され、前記小ギアはサンギアとリングギアの双方と係合し、少なくとも一つの小ギアに動力源の動力が伝動されることを特徴とする草刈り機である。
【0012】
本発明の草刈り機は、遊星ギア列を構成するギアとは別に、サンギアとリングギアのラジアル方向
(径方向)の相対移動を阻止する構造を備えている。
即ち本発明の草刈り機では、サンギア側部材にサンギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたサンギア側ガイドがある。一方、リングギア側部材にはリングギアに対して同一軸心上に一体的に設けられたリングギア側ガイドがある。
そして本発明では、サンギア側ガイドとリングア側ガイドとが直接又は他の部材を介在させて係合し、サンギアとリングギアのラジアル方向の相対移動を阻止する。
そのため本発明の草刈り機では、長期間に渡って使用した結果、ギアが磨耗し、ギア同士のクリアランスが増大しても、サンギア側ガイドとリングア側ガイドとの係合関係により、サンギアとリングギアの位置関係は正常な状態が確保される。
そのためギアが磨耗しても、サンギア、リングギア及び小ギアは正常に係合し、動力を伝達することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、リングギア側ガイドは部材に形成された円形開口であってその内周に設けられた円弧状部を有し、サンギア側ガイドは円形部材の外周であって円弧状部を有し、リングギア側ガイドの円弧状部の内径は、サンギア側ガイドの円弧状部の外径よりも大きく、サンギア側ガイドはリングギア側ガイドの中にあってサンギア側ガイドの円弧状部はリングギア側ガイドの円弧状部と同心状に配置され、サンギア側ガイドの円弧状部とリングギア側ガイドの円弧状部との間にコロが介在されていることを特徴とする請求項1に記載の草刈り機である。
【0014】
本発明の草刈り機では、サンギア側ガイドとリングギア側ガイドとがコロを介して係合している。そのためサンギア側ガイドとリングギア側ガイドとの間の摩擦抵抗が少なく、動力の損失が少ない。
【0015】
請求項3に記載の発明は、板状又はリング状の保持板を有し、前記保持板に複数のコロ及び1以上の小ギアが回転可能に支持又は取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の草刈り機である。
【0016】
本発明によると、各コロ及び小ギアの相対位置関係が確保される。
【0017】
請求項4に記載の発明は、サンギア及びリングギアは共に板状であり、動力源の動力が伝動される小ギアはその厚さがサンギア及びリングギアの2倍以上であってサンギア及びリングギアと係合する際には軸方向の一端寄りの領域だけが係合し、必要に応じて小ギアの天地方向の入替えが可能であり、小ギアの天地方向を入替えることによってサンギア及びリングギアと係合する領域を変更することが可能であることを特徴とする請求項1乃至あのいずれかに記載の草刈り機である。
【0018】
経験即上、動力源の動力が伝動される小ギアは他のギアに比べて著しく磨耗する。そのため、草刈り機を長期に渡って使用するには、定期的に動力源の動力が伝動される小ギアを取り替える必要がある。
しかしながら、取り替えパーツとして複数の小ギアを購入しても、その置き場所が分からなくなってしまうことがある。一方、取り替え時期のつど、小ギアを購入するのは面倒である。
そこで本発明では、小ギアの厚さを厚くし、最初の一定期間は軸方向の一端寄りの領域だけを使用する。即ち最初の一定期間は軸方向の一端寄りの領域だけをサンギア及びリングギアと係合させる。
そして小ギアの磨耗が進むと、小ギアの天地方向を入替え、それまで動力伝動に供していなかった領域をサンギア及びリングギアと係合させる。
本発明によると、小ギアの寿命を倍に伸ばすことができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、サンギアは板状の基端部に歯部が設けられたものであり、リングギアについても板状の基端部に歯部が設けられたものであり、サンギアの基端部又はリングギアの基端部の少なくともいずれかにシールパッキンがあり、当該シールパッキンは少なくとも前記ギアの径方向に一体的に固定され、シールパッキンの一部が他の部材と接していて水封構造を構築するものであり、前記他の部材には係合部があり、シールパッキンはサンギア及び/又はリングギアの
径方向荷重を支持し得る様に、前記他の部材の係合部と係合していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の草刈り機である。
【0020】
本発明の草刈り機では、シールパッキンによってもサンギア及び/又はリングギアのラジアル方向荷重を支持することができる。
そのため本発明の草刈り機では、シールパッキンもサンギアとリングギアの位置関係を保つことに寄与する。
【0021】
請求項6に記載の発明は、サンギアは板状の基端部に歯部が設けられたものであり、リングギアについても板状の基端部に歯部が設けられたものであり、サンギアの基端部又はリングギアの基端部の少なくともいずれかにシールパッキンがあり、当該シールパッキンは少なくとも前記ギアの軸方向に一体的に固定され、シールパッキンの一部が他の部材と接していて水封構造を構築するものであり、前記他の部材には係合部があり、シールパッキンはサンギア及び/又はリングギアの
軸方向荷重を支持し得る様に、前記他の部材の係合部と係合していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の草刈り機である。
【0022】
本発明の草刈り機では、シールパッキンによってもサンギア及び/又はリングギアのスラスト方向荷重を支持することができる。
そのため本発明の草刈り機では、シールパッキンもサンギアとリングギアの位置関係を保つことに寄与する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の草刈り機は、ギアが多少磨耗してもギアの係合を維持することができ、耐久性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の草刈り機1は、二枚刃式の草刈り機1である。草刈り機1は、公知のそれと同様に、本体部2と、柄杆3及び動力源5によって構成されている。
柄杆3は、公知の様に中空のパイプであり、内部にドライブシャフト(図示せず)が挿通されている。動力源5は、モータまたはエンジンである。
草刈り機1は、柄杆3の先端に本体部2が取り付けられ、後端部に動力源5が取り付けられたものである。
そして動力源5の回転力が図示しないドライブシャフトを経て本体部2に伝動され、本体部2の上刃板10と下刃板11とを互いに反対方向に回転させる。
【0026】
草刈り機1の本体部2は、
図4の様に上カバー部材13、上部側中板部材12、減速機構部15、下部側中板部材14、下カバー部材17、上刃板10及び下刃板11によって構成されている。
上刃板10と下刃板11は、公知のそれと同様のものであり、円板状であって、その周囲に切刃16が等間隔に設けられている。各切刃16は、いずれも台形であり、一方の斜辺に相当する辺に刃が形成されている。
【0027】
減速機構部15は、一種の遊星ギア列を内蔵するものである。減速機構部15は、さらに
図6の様に、リングギア側部材20とサンギア側部材21と保持板部材22及び小ギア23に分解することができる。
またリングギア側部材20、サンギア側部材21、保持板部材22をさらに細かく分解すると
図5の様になる。
【0028】
リングギア側部材20は、
図5の様にリングギア25とリングギアフランジ26によって構成されている。リングギア25は厚さの薄い内歯車である。リングギア25は、板状の基端部43に歯部76が設けられたものである。
本実施形態では、リングギア25の基端部43にシールパッキン60が設けられている。シールパッキン60は、図示しない接着剤等によって、リングギア25に一体的に固定されている。
リングギア25の基端部43には、リングギア25をリングギアフランジ26に固定するための孔64が設けられている。
【0029】
リングギアフランジ26は、外形形状が円形であり中央に大きな開口27がある。ただし開口27の径は、前記したリングギア25の歯先円直径よりも小さい。
またリングギアフランジ26は、
図5、
図7の様に断面形状が段状であって高部と低部がある。即ちリングギアフランジ26は外周近傍部が使用状態を基準として低く作られており、当該部位が上刃板取り付け部62となっている。
上刃板取り付け部62には、複数の長孔28と、丸孔30が設けられている。
【0030】
リングギアフランジ26の中心寄りの領域、即ち開口27の近傍は、前記した様に上刃板取り付け部62よりも高く作られている。当該部位はギア取り付け面31として機能する。ギア取り付け面31には多数のネジ孔63が設けられている。
リングギア25は、リングギアフランジ26のギア取り付け面31に図示しないネジ等によって一体的に取り付けられている。
リングギア25の中心軸はリングギアフランジ26の中心軸、及び開口27の中心軸と一致する。
【0031】
前記した様にリングギアフランジ26の開口27の径は、リングギア25の歯先円直径よりも小さい。そのため、リングギアフランジ26の開口27端は、リングギア25の開口内にある。そのためリングギアフランジ26の開口27端は、
図6の様にリングギア25の開口側に突出する。本実施形態では、この突出部分がリングギア側ガイド32として機能する。
リングギア側部材20を平面視すると、リングギア側ガイド32は円形であり、その内端33を結ぶ線は真円である。
リングギア25のピッチ円等とリングギア側ガイド32の円は、同心円である。
リングギア側ガイド32は、リングギアフランジ26に形成された円形開口であってその内周に設けられた円弧状部38がある。
【0032】
次にサンギア側部材21について説明する。
サンギア側部材21は、
図5の様にサンギア35とサンギアフランジ36及び補助板65によって構成されている。サンギア35は厚さの薄い外歯車である。サンギア35のモジュールは前記したリングギア25と同一である。
サンギア35は、外形形状が円形であり中央に大きな開口37がある。
サンギア35は、板状の基端部67に歯部68が設けられたものである。
本実施形態では、サンギア35の基端部67にシールパッキン70が設けられている。 シールパッキン70は、図示しない接着剤等によって、サンギア35に一体的に固定されている。
サンギア35の基端部67には、サンギア35を固定するための孔69が設けられている。
補助板65は、中央に開口71を有する円板であって複数の取り付け孔72が設けられている。
【0033】
サンギア35の歯数は前記したリングギア25よりも10乃至24程度少ない。
サンギアフランジ36の外径は、前記したリングギアフランジ26の開口27よりも小さい。
ただしサンギアフランジ36の外径は、サンギア35の歯先円よりも大きい。
サンギア35は、サンギアフランジ36及び補助板65に図示しない鋲等によって一体的に取り付けられている。
【0034】
サンギア35の中心軸はサンギアフランジ36の中心軸と一致する。
前記した様にサンギアフランジ36の外径は、前記した様にサンギア35の歯先円よりも大きい。そのため、サンギアフランジ36の外周端は、サンギア35の外周よりも外側に突出している。本実施形態では、この突出部分がサンギア側ガイド42として機能する。
サンギア側部材21を平面視すると、サンギア側ガイド42は円形であり、その外周端73を結ぶ線は真円である。
サンギア35のピッチ円等とサンギア側ガイド42の外周端73を結ぶ円は、同心円である。
サンギア側ガイド42は円形の部材の外周であって円弧状部47を有している。
【0035】
次に保持板部材22について説明する。
保持板部材22は、リング状の保持板45に、11個のコロ46と、一つのギア保持孔75が設けられたものである。
11個のコロ46と一つのギア保持孔75は同一円周上にあって等間隔に並べられている。
コロ46は、小径に作られた係合部48と、当該係合部48よりも大径の係止フランジ部54を有している。11個のコロ46はいずれも保持板45に自由回転可能な様に取り付けられている。11個のコロ46の内、5個のコロ46には貫通孔98があり、後記する上カバー部材13のピン52が挿入される。
各コロ46には図示しないブッシュが内蔵されている。
【0036】
次に小ギア23について説明する。小ギア23はリングギア25及びサンギア35と同一モジュールの歯車である。小ギア23の歯数は、リングギア25及びサンギア35に比べて極めて少ない。具体的には小ギア23の歯数は5から10程度である。
また小ギア23の厚さ(使用時には高さ方向となる)は、リングギア25及びサンギア35に比べて厚い。小ギア23の厚さは、リングギア25及びサンギア35に比べて2倍以上、より好ましくは3倍以上4倍以下の厚さである。
小ギア23には貫通孔41があり、当該貫通孔41にはキー溝等の回り止め部(図示せず)が形成されている。
【0037】
次に、減速機構部15の各部材の位置関係について説明する。
減速機構部15は、前記した様に、リングギア側部材20とサンギア側部材21と保持板部材22及び小ギア23によって構成されている。
リングギア側部材20とサンギア側部材21とは略同一平面であって、同心状に配置されている。即ちリングギア側部材20のリングギア25と、サンギア側部材21のサンギア35は、同一平面であって同心状に配置されている。具体的には、リングギア25の開口27内にサンギア35がすっぽりと収まっている。リングギア25の内周とサンギア35の外周との間には空隙がある。
【0038】
またリングギア側部材20のリングギア側ガイド32とサンギア側部材21側のサンギア側ガイド42は、同一平面であって同心状に配置されている。具体的には、リングギア側ガイド32の開口27内にサンギア側ガイド42がすっぽりと収まっている。リングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42の間には空隙がある。
【0039】
保持板部材22は、リングギア側部材20及びサンギア側部材21の下に配置されている。保持板部材22に取り付けられた11個のコロ46は、いずれもリングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42の間の空隙にあり、コロ46の係合部48が、リングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42の双方と接している。即ち本実施形態では、リングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42がコロ46を介して係合している。そのためリングギア側部材20及びサンギア側部材21の相対位置がリングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42の係合によって決まり、リングギア側部材20及びサンギア側部材21の相対位置がずれることはない。
【0040】
また小ギア23が、リングギア25の内周とサンギア35の外周との間の空隙に配置され、小ギア23はリングギア25とサンギア35の双方と係合している。なお小ギア23の一端は、保持板部材22のギア保持孔75に回転可能に支持されている。
本実施形態では、サンギア35の周囲に小ギア23があり、さらにその外周にリングギア25があり、これらによって一種の遊星ギア列を構成している。
【0041】
減速機構部15は、上部側中板部材12と下部側中板部材14に挟まれている。さらにその上下に上カバー部材13と下カバー部材17が装着されている。
【0042】
上部側中板部材12は、円板状の部材であり、上カバー部材13の開口50に相当する位置に開口53が設けられている。
上部側中板部材12は、
図4の様に中央に開口53が設けられている。
そして開口53の周囲と、外周部には
図11の様に縦壁80,81が設けられている。縦壁80,81で囲まれた領域90は、開口53を環状に取り巻いている。縦壁80,81で囲まれた領域90は、ギア収容部として機能する。
また上部側中板部材12には、孔91が11箇所に設けられている。
【0043】
下部側中板部材14は、底面(取り付けられた姿勢を基準とすると天面側となる)88を有し、その中央に開口83がある。そして開口83の開口端と外周部に縦壁80,81が設けられている。
本実施形態では、底面88は、軸方向係合部として機能し、縦壁80,81は、径方向係合部として機能する。
縦壁(径方向係合部)80,81で囲まれた領域87は、シール収容部として機能する。
【0044】
本実施形態では、前記した様に減速機構部15は、上部側中板部材12と下部側中板部材14に挟まれている。そして上部側中板部材12の縦壁80,81で囲まれた領域90(ギア収容部)によって、リングギア25とサンギア35が被われている。そして縦壁80,81で囲まれた領域90(ギア収容部)内に図示しないグリスが収容されている。
【0045】
本実施形態では、リングギア25に一体的に設けられたシールパッキン60が、上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88と、外周側の縦壁(径方向係合部)81に接している。
一方、サンギア35に一体的に設けられたシールパッキン70は、その一部が上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88と、開口周囲の縦壁(径方向係合部)80に接している。
【0046】
本実施形態では、外側にあるリングギア25に一体的に設けられたシールパッキン60が上部側中板部材12の底面88と接し、内側にあるサンギア35に一体的に設けられたシールパッキン70についても上部側中板部材12の底面88と接しているから、縦壁80,81で囲まれた領域90(ギア収容部)は、密閉状態となり、水封構造を構築している。
【0047】
また本実施形態では、外側にあるリングギア25に一体的に設けられたシールパッキン60が上部側中板部材12の外周側の縦壁(径方向係合部)81と接している。ここでシールパッキン60はリングギア25に一体的に設けられていてリングギア25の外周を取り巻いている。そしてシールパッキン60は、リングギア25の軸線方向に立設する外周側の縦壁(径方向係合部)81と接し、シールパッキン60はリングギア25が径方向に移動しない様に縦壁81と係合している。
即ちシールパッキン60はリングギア25に径方向(ラジアル方向)に作用する力に抗する様に縦壁(径方向係合部)81と係合している。
【0048】
また本実施形態では、シールパッキン60はリングギア25の上面と上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88の双方と接しているから、リングギア25に軸方向(スラスト方向)に作用する力に抗する作用もある。
このため、シールパッキン60はリングギア25に軸方向(スラスト方向)に作用する力に抗する様に上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88と係合している。
【0049】
同様に、内側にあるサンギア35に一体的に設けられたシールパッキン70についても 上部側中板部材12の開口周囲の縦壁80に接している。ここでシールパッキン70はサンギア35に一体的に設けられていてサンギア35の内周を取り巻いている。そしてシールパッキン70は、サンギア35の軸線方向に立設する開口周囲の縦壁(径方向係合部)80と接し、シールパッキン70はサンギア35が径方向(ラジアル方向)に移動しない様に縦壁80と係合している。
即ちシールパッキン70はサンギア35に径方向に作用する力に抗する様に縦壁(径方向係合部)80と係合している。
また本実施形態では、シールパッキン70はサンギア35の上面と上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88の双方と接しているから、サンギア35に軸方向(スラスト方向)に作用する力に抗する作用もある。
このため、シールパッキン70はサンギア35に軸方向(スラスト方向)に作用する力に抗する様に上部側中板部材12の底面(軸方向係合部)88と係合している。
【0050】
また本実施形態では、縦壁80,81で囲まれた領域87にもシールパッキン92,93が配されており、縦壁80,81で囲まれた領域87も密閉状態となり、水封構造を構築している。縦壁80,81で囲まれた領域87には図示しないグリスが収容されている。
【0051】
上カバー部材13は、
図4の様に、薄い盆状の部材である。上カバー部材13の外周寄りの一部には、開口51が設けられている。上カバー部材13の中心にも開口50がある。
図9の様に上カバー部材13の内面には、ピン52が5本突出している。
【0052】
下カバー部材17は、碗状に成形された部材であり、開口近傍に下刃取り付け部61が形成されている。下刃取り付け部61はフランジ状であり、平面視した際に5か所に突出部55が設けられている。各突出部55には取り付け孔56が設けられている。
【0053】
下カバー部材17の中央部には隆起部57がある。隆起部57の頂部は、平面視がリング状を呈している。
隆起部57は、減速機構部15と接続する接続部として機能する。隆起部57には、長孔58が、同一の円周上に等間隔に設けられている。長孔58の中央には、幅が広く形成された部位がある。
【0054】
本実施形態では、前記した様に、減速機構部15の上に上部側中板部材12が被さり、さらに上部側中板部材12の上に上カバー部材13が被さっている。なお上カバー部材13の開口50の近傍と、上部側中板部材12の開口53近傍との間にはパッキン96が装着されている。
上カバー部材13に設けられたピン52は、上部側中板部材12の孔91を貫通して、減速機構部15の5個のコロ46の貫通孔98に挿通されている。
従って5個のコロ46の中心は、上カバー部材13に対して移動しない。また5個のコロ46が取り付けられた保持板45は上カバー部材13に対して移動しないから、上カバー部材13に取り付けられた他のコロ46及び小ギア23の中心軸は、上カバー部材13に対して移動しない。
従ってコロ及び小ギア23は、いずれも一定の位置で回転し、回転位置は移動しない。即ちコロ46及び小ギア23は、同じ位置で自転するだけであり、サンギア35やサンギア側ガイド42の周囲を公転することはない。
【0055】
また本実施形態では、減速機構部15の下面を下カバー部材17が被っている。下カバー部材17には、サンギア側部材21が一体的に取り付けられている。
具体的には、サンギア側部材21のサンギアフランジ36が下カバー部材17の隆起部57と接し、両者の間が図示しないネジ等によって結合されている。
そのため本実施形態では、下カバー部材17は、サンギア側部材21と共に回転する。
【0056】
本実施形態では、減速機構部15のリングギアフランジ26の上刃板取り付け部62に、上刃板10が取り付けられている。リングギアフランジ26は、リングギア25と一体的に回転するから、上刃板10はリングギア25と一体的に回転する。
また下カバー部材17の下刃取り付け部61に下刃板11が取り付けられている。
下カバー部材17は、サンギア側部材21と共に回転するから、下刃板11はサンギア35と一体的に回転する。
【0057】
本実施形態の草刈り機1は、柄杆3の先端に本体部2が取り付けられ、柄杆3に挿通されている図示しないドライブシャフトが小ギア23の貫通孔41に挿通され、ドライブシャフトの図示しない係合部が貫通孔41内の回り止め部(図示せず)と係合している。
【0058】
次に、本実施形態の草刈り機1の機能について説明する。
本実施形態の草刈り機1は、公知のそれと同様、柄杆3の後端に取り付けられたモータやエンジン等の動力源5を起動して使用される。
動力源5の回転力は、図示しないドライブシヤフトを経由して小ギア23に伝動され、小ギア23が回転する。
ここで小ギア23は、リングギア25とサンギア35の双方と係合している。そのため小ギア23、リングギア25、サンギア35の三者で一種の遊星ギア列を構成している。 ただし本実施形態では、小ギア23を保持する保持板45は、公転しない。そのため小ギア23は、一定の位置に止まったままの状態で自転する。
その結果、内側で係合するサンギア35と、外側で係合するリングギア25は、いずれも小ギア23から回転力を受け、回転する。
ここで、サンギア35は外歯車である、リングギア25は内歯車であるから、両者と係合する小ギア23が回転すると、サンギア35とリングギア25は、相対的に反対方向に回転する。
またサンギア35とリングギア25は、相対的に反対方向に回転することにより、上刃板10と下刃板11が相対的に反対方向に回転する。
従って上刃板10の切刃と下刃板11の切刃との間で草木を挟んで剪断することができる。
【0059】
また上記した様に、小ギア23、リングギア25、サンギア35の三者で一種の遊星ギア列を構成しているから、動力源5の回転力は大きく減速され、上刃板10と下刃板11はゆっくりと相対回転する。そのため本実施形態の草刈り機1は、安全性が高い。
また、本実施形態の草刈り機1は、動力源5の回転力を小ギア23に伝動し、小ギア23を駆動歯車として他のリングギア25、サンギア35を従動させる。また本実施形態の草刈り機1の減速機構部15は、一種の遊星ギア列を構成する減速機構であるから、駆動歯車たる小ギア23は、遊星ギア列の中心からアフセットした位置にある。
そのため本実施形態の草刈り機1では、小ギア23に動力を伝える柄杆3が、本体部2の中心から外れた位置に取り付けられている。そのため本実施形態の草刈り機1では、草刈り作業の際に、刈った草が柄杆3や柄杆3と本体部2との接続部分に巻きつきにくい。
【0060】
本実施形態の草刈り機1においても、長期に渡って使用すると、小ギア23、リングギア25、サンギア35が磨耗する。しかしながら、本実施形態では、小ギア23、リングギア25、サンギア35の相対位置関係は、ギアではなく、リングギア側ガイド32とサンギア側ガイド42の係合によって固定されている。そのため小ギア23、リングギア25、サンギア35が磨耗して係合時のクリアランスが変化しても、小ギア23、リングギア25、サンギア35の相対位置関係は変わらない。
そのため小ギア23、リングギア25、サンギア35ががた付かず、正常な係合関係を維持し続ける。
【0061】
また本実施形態では、シールパッキン60,70についてもリングギア25及びサンギア35が径方向(ラジアル方向)に移動しない様に上部側中板部材12の一部と係合している。そのためシールパッキン60,70についてもリングギア25とサンギア35の位置関係を保つ効果に寄与している。
【0062】
また長期に渡って使用すると、他のギアに比べて小ギア23が著しく磨耗する。
この場合には、本体部2から柄杆3を取り外し、本体部2の開口を露出させる。そして開口から小ギア23を取り出し、天地を逆にして開口に再挿入してリングギア25、サンギア35に再係合させる。
前記した様に、小ギア23は、リングギア25、サンギア35と比較して厚さが厚いから、小ギア23がリングギア25及びサンギア35と係合する領域は、小ギア23の全長の先端側に一部に過ぎない。そのため小ギア23の先端側は磨耗しているが、逆側は磨耗していない。
従って小ギア23を取り出し、天地を逆にして再挿入すると、小ギア23の正常な歯形部分がリングギア25及びサンギア35と係合することとなり、正常な係合関係が再構築される。
【0063】
以上説明した実施形態では、サンギア側ガイドとリングギア側ガイドの間にコロを介在させ、コロを介してサンギア側ガイドとリングギア側ガイドを係合させたが、サンギア側ガイドとリングギア側ガイドとを直接係合してもよい。
【0064】
以上説明した実施形態では、リングギア25によって上刃板10を回転し、サンギア35によって下刃板11を回転することとしたが、逆にサンギア35によって上刃板10を回転しリングギア25によって下刃板11を回転する構造とすることもできる。
さらに上刃板10又は下刃板11の一方を固定刃とし、他方だけを回転させてもよい。