【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的新構造材料等研究開発のうち熱可塑性CFRPの開発及び構造設計・応用加工技術の開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リブは、隣り合う2つの前記凹部における一方の凹部の中心と他方の凹部の中心とを結ぶ直線に対して平行に設けられている、請求項1に記載の車両用フロアパネル。
1つの凹部と該凹部を囲むように該凹部と隣り合って設けられた6つの凹部とからなる単位凹部群が、前記フロアパネル本体部の車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方向に沿って複数個配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両用フロアパネル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス繊維又はカーボン繊維といった繊維を混ぜた繊維強化樹脂を板状体の材料として用いる場合、該板状体を成形する成形型内の位置によって熱拡散率、熱伝達係数などの熱的特性が異なることがある。これに伴って、成形型内の樹脂を冷却して板状体として成形する際に反りなどの変形が生じるおそれがある。
【0005】
また、板状体の例として、車両の床面部分を構成するフロアパネルが挙げられる。このフロアパネルには、当該車両が衝突などした際に、様々な方向から大きな力が加わる可能性がある。このような場合でもフロアパネルが変形することのないように該フロアパネルを設計する必要がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、成形時の変形と、車両に配置された状態において車両外部から様々な方向で荷重を受けた際の変形とが起こりにくい、一定の剛性を有する車両用フロアパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、繊維強化樹脂製のフロアパネル本体部と、前記フロアパネル本体部の下面及び上面の一方において突出しているとともに他方において凹んでおり、互いに間隔を置いて配置された複数の凹部と、前記フロアパネル本体部の前記一方の面において、隣り合う2つの前記凹部を連結したリブとを備えた車両用フロアパネルが提供される。
前記フロアパネル本体部の前記他方の面において、隣り合う2つの前記凹部は平面部分により連結されている。
【0008】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記リブは、隣り合う2つの前記凹部における一方の凹部の中心と他方の凹部の中心とを結ぶ直線に対して平行に設けられている。
【0009】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記直線と平行に複数の前記リブが設けられている。
【0010】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記リブの高さは、前記凹部の深さよりも小さい。
【0011】
本車両用フロアパネルの一態様において、複数の前記凹部は平面視円形状かつ縦断面円弧形状である。
【0012】
本車両用フロアパネルの一態様において、1つの凹部と該凹部を囲むように該凹部と隣り合って設けられた6つの凹部とからなる単位凹部群が、前記フロアパネル本体部の車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方向に沿って複数個配置されている。
【0013】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記6つの凹部が周方向に沿って一定の間隔を置いて配置されている。
【0014】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記繊維強化樹脂が不連続繊維強化樹脂である。
【0015】
本車両用フロアパネルの一態様において、前記
フロアパネル本体部の外縁から上方に起立した周壁部をさらに有し、前記周壁部から間隔を置いて前記凹部が設けられている。
【発明の効果】
【0016】
上述の如く、本発明によれば、車両用フロアパネルは、繊維強化樹脂製のフロアパネル本体部と、前記フロアパネル本体部の下面及び上面の一方において突出しているとともに他方において凹んでおり、互いに間隔を置いて配置された複数の凹部と、前記フロアパネル本体部の前記一方の面において、隣り合う2つの前記凹部を連結したリブとを備えている。
前記フロアパネル本体部の前記他方の面において、隣り合う2つの前記凹部は平面部分により連結されている。
これにより、凹部及びリブが設けられていない、同じ板厚のフロアパネルに比べて剛性を高めることができる。その結果、成形時の変形と、車両に配置された状態において車両外部から様々な方向で荷重を受けた際の変形とを抑えることができる。
また、凹部及びリブが設けられていないフロアパネル本体部の剛性と同程度の剛性を、凹部及びリブが設けられたフロアパネル本体部で得ようとする場合は、その板厚を、凹部及びリブが設けられていないフロアパネル本体部の板厚に比べて小さくすることができる。つまり、凹部及びリブを設けることで軽量化が図られる。
【0017】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記リブは、隣り合う2つの前記凹部における一方の凹部の中心と他方の凹部の中心とを結ぶ直線に対して平行に設けられている。これにより、衝突時などにフロアパネルに加わる力を2つの凹部に対して効率的に分散させることができる。
【0018】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記直線と平行に複数の前記リブが設けられている。これにより、フロアパネル本体部に加わる力を、複数のリブを通してさらに効率的に分散させることができる。
【0019】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記リブの高さは、前記凹部の深さよりも小さい。これにより、リブの重量ひいてはフロアパネル本体部の重量を抑えつつ、剛性向上を図ることができる。
【0020】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、複数の前記凹部は平面視円形状かつ縦断面円弧形状である。これにより、凹部の特定部分に対する力の集中を抑えることができる。
【0021】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、1つの凹部と該凹部を囲むように該凹部と隣り合って設けられた6つの凹部とからなる単位凹部群が、前記フロアパネル本体部の車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方向に沿って複数個配置されている。これにより、フロアパネル全体の剛性を向上させることができるとともに、車両外部からの荷重によるフロアパネルの変形をより一層抑えることができる。
【0022】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記6つの凹部が周方向に沿って一定の間隔を置いて配置されている。これにより、前記6つの凹部のうちのある凹部と、該凹部と周方向において一方向に隣り合っている別の凹部との間にある平面部分と、前記別の凹部と前記1つの凹部との間にある平面部分と、前記別の凹部に同方向に隣り合っているさらに別の凹部と前記1つの凹部との間にある平面部分と、前記さらに別の凹部と、該凹部に同方向に隣り合っている他の凹部との間にある平面部分とが平面視でジグザグ状に配置される。結果として、平面部分における特定箇所への応力集中を抑えることができる。
【0023】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記繊維強化樹脂が不連続繊維強化樹脂である。これにより、機械的特性の高低に方向性を持たないという不連続繊維強化樹脂の性質を生かしたフロアパネルとすることができる。
【0024】
上述の如く、本車両用フロアパネルの一態様において、前記
フロアパネル本体部の外縁から上方に起立した周壁部をさらに有し、前記周壁部から間隔を置いて前記凹部が設けられている。これにより、周壁部に大きな力が加わった場合でも、凹部を起点とした
周壁部の破損を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。また、図において、矢印Fは、車両用フロアパネルが車両に配置された状態における車両前後方向の前方を示し、矢印Bは車両前後方向の後方を示し、矢印Lは車幅方向の左方向を示し、矢印Rは車幅方向の右方向を示している。
【0027】
[第1の実施形態]
図1〜
図4に示しているように、車両用フロアパネル1は、板状で繊維強化樹脂製のフロアパネル本体部2を備えている。フロアパネル本体部2は、上面21と下面22とを有している。また、フロアパネル本体部2の板厚を符号tとして示している。
【0028】
フロアパネル本体部2には、下面22において突出しているとともに上面21において凹んだ複数の凹部からなる単位凹部群Gが、車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方向に沿って複数個配置されている。単位凹部群Gは、第1凹部23−1と、この第1凹部23−1を囲むように該第1凹部23−1と隣り合って設けられた第2凹部23−2〜第7凹部23−7とから構成されている。これら7つの凹部は、互いに間隔を置いて配置されている。さらに、第2凹部23−2〜第7凹部23−7は、周方向に沿って一定の間隔を置いて配置されている。
【0029】
具体的には、第2凹部23−2と周方向において一方向Qに隣り合って第3凹部23−3が位置し、第3凹部23−3と方向Qに隣り合って第4凹部23−4が位置し、第4凹部23−4と方向Qに隣り合って第5凹部23−5が位置している。さらに、第5凹部23−5と方向Qに隣り合って第6凹部23−6が位置し、第6凹部23−6と方向Qに隣り合って第7凹部23−7が位置し、第7凹部23−7と方向Qに隣り合って第2凹部23−2が位置している。
【0030】
単位凹部群Gにおける7つの凹部はいずれも、平面視円形状かつ縦断面円弧形状である。各凹部の縁部によって形成される平面状の円の直径は全て等しく、この直径を符号aとして示している。また、各凹部の深さも全て等しく、この深さを符号dとして示している。さらに、隣り合う2つの凹部の縁部間距離も全て等しく、この縁部間距離を符号cとして示している。
【0031】
第1凹部23−1の縁部により形成される平面状の円は、該円と同一の中心C−1を持つ第1正六角形H−1により囲まれている。また、第2凹部23−2の縁部により形成される平面状の円は、該円と同一の中心C−2を持つ第2正六角形H−2により囲まれている。以下同様であり、第3凹部23−3〜第7凹部23−7の縁部により形成される平面状の円が、それぞれ、第3正六角形H−3〜第7正六角形H−7により囲まれている。これら第3正六角形H−3〜第7正六角形H−7は、中心C−3〜C−7をそれぞれ有している。
【0032】
第1正六角形H−1〜第7正六角形H−7は互いに合同である。第1正六角形H−1〜第7正六角形H−7の各々は、一組の対向する2頂点を結ぶ直線が車幅方向と平行となるように、配置されている。そして、第1正六角形H−1は、第2正六角形H−2〜第7正六角形H−7の各々と接している。また、第2正六角形H−2と第3正六角形H−3とが接しており、第3正六角形H−3と第4正六角形H−4とが接しており、第4正六角形H−4と第5正六角形H−5とが接している。さらに、第5正六角形H−5と第6正六角形H−6とが接しており、第6正六角形H−6と第7正六角形H−7とが接しており、第7正六角形H−7と第2正六角形H−2とが接している。このように、第1正六角形H−1〜第7正六角形H−7はハニカム構造をなしている。
【0033】
フロアパネル本体部2の下面22には、単位凹部群Gにおいて隣り合う2つの凹部23を連結するリブが形成されている。具体的には、第1凹部23−1と第2凹部23−2とを連結する第1リブ24−1と、第1凹部23−1と第3凹部23−3とを連結する第2リブ24−2と、第1凹部23−1と第4凹部23−4とを連結する第3リブ24−3とが形成されている。また、第1凹部23−1と第5凹部23−5とを連結する第4リブ24−4と、第1凹部23−1と第6凹部23−6とを連結する第5リブ24−5と、第1凹部23−1と第7凹部23−7とを連結する第6リブ24−6とが形成されている。
【0034】
加えて、第2凹部23−2と第3凹部23−3とを連結する第7リブ24−7と、第3凹部23−3と第4凹部23−4とを連結する第8リブ24−8と、第4凹部23−4と第5凹部23−5とを連結する第9リブ24−9とが形成されている。また、第5凹部23−5と第6凹部23−6とを連結する第10リブ24−10と、第6凹部23−6と第7凹部23−7とを連結する第11リブ24−11と、第7凹部23−7と第2凹部23−2とを連結する第12リブ24−12とが形成されている。
【0035】
各リブは、当該リブにより連結された2つの凹部のうちの一方の凹部の縁部により形成される平面状の円の中心と、他方の凹部の縁部により形成される平面状の円の中心とを結ぶ直線に対して平行に設けられている。なお、ある凹部の縁部により形成される平面状の円の中心を、該凹部の中心とも呼ぶ。
【0036】
各リブのフロアパネル上下方向の高さは全て等しく、この高さを符号hとして示している。このリブの高さhは、凹部の深さdよりも小さい。また、各リブのフロアパネル水平方向の幅すなわち各リブの厚さは全て等しく、この厚さを符号wとして示している。このリブの厚さwは、フロアパネル本体部の板厚tよりも小さい。
【0037】
上述したように、第2凹部23−2〜第7凹部23−7は、第1凹部23−1を囲むように該第1凹部23−1と隣り合って設けられているとともに、周方向に沿って一定の間隔を置いて配置されている。これによる、隣り合う2つの凹部間に存在する平面部分の配置について以下に説明する。
【0038】
第3凹部23−3と第4凹部23−4との間には第1平面部分25−1が存在し、第4凹部23−4と第1凹部23−1との間には第2平面部分25−2が存在している。また、第5凹部23−5と第1凹部23−1との間には第3平面部分25−3が存在し、第5凹部23−5と第6凹部23−6との間には第4平面部分25−4が存在している。そして、第1平面部分25−1と第2平面部分25−2と第3平面部分25−3と第4平面部分25−4とは、平面視でジグザグ状に配置されている。
【0039】
また、第6凹部23−6と第7凹部23−7との間には第5平面部分25−5が存在し、第7凹部23−7と第1凹部23−1との間には第6平面部分25−6が存在している。また、第2凹部23−2と第1凹部23−1との間には第7平面部分25−7が存在し、第2凹部23−2と第3凹部23−3との間には第8平面部分25−8が存在している。そして、第5平面部分25−5と第6平面部分25−6と第7平面部分25−7と第8平面部分25−8とは、平面視でジグザグ状に配置されている。
【0040】
このように複数の平面部分が平面視でジグザグ状に配置されている。このときの凹部の直径aと縁部間距離cとの関係を以下に述べる。まず、隣り合う3つの凹部における計3つの中心により形成される正三角形を考える。第1凹部の中心C−1と第4凹部の中心C−4と第5凹部の中心C−5とを頂点とする正三角形Tにおいて、各辺の長さT
e及び高さT
hは以下のように表される。
【数1】
【0041】
そして、正三角形Tの高さT
hについて以下のような条件を設定する。
【数2】
【0042】
すなわち、正三角形の高さT
hを凹部の直径aよりも小さく設定する。このように、凹部の直径aと縁部間距離cとの関係を定めることにより、各平面部分の面積が比較的小さくなり、かつ複数の平面部分が平面視でジグザグ状に配置されるようになる。なお、式(1)に鑑みて、縁部間距離cを凹部の直径aの0.15倍よりも小さくしてもよい。
【0043】
なお、各正六角形の対向する二辺間の距離L
1は以下のように表される。
【数3】
【0044】
そして、第6正六角形H−6の対向する二辺間の距離と、第1正六角形H−1の対向する二辺間の距離と、第3正六角形H−3の対向する二辺間の距離との合計距離L
2すなわち単位凹部群Gの車両前後方向の長さL
2は、以下のように表される。
【数4】
【0045】
以上のような形態においては、フロアパネル本体部に複数の凹部が設けられているとともに、隣り合う2つの凹部を連結したリブが設けられている。これにより、フロアパネル本体部に加わる力がリブを通して複数の凹部に分散されるため、凹部及びリブが設けられていない、同じ板厚のフロアパネルに比べて剛性を高めることができる。その結果、成形時の変形と、車両に配置された状態において車両外部から様々な方向で荷重を受けた際の変形とを抑えることができる。
また、凹部及びリブが設けられていないフロアパネル本体部の剛性と同程度の剛性を、凹部及びリブが設けられたフロアパネル本体部で得ようとする場合は、その板厚を、凹部及びリブが設けられていないフロアパネル本体部の板厚に比べて小さくすることができる。つまり、凹部及びリブを設けることで軽量化が図られる。
【0046】
上記形態において、リブは、隣り合う2つの前記凹部における一方の凹部の中心と他方の凹部の中心とを結ぶ直線に対して平行に設けられている。そのため、衝突時などにフロアパネルに加わる力を2つの凹部に対して効率的に分散させることができる。
【0047】
リブの厚さを大きくするか、又はリブの高さを高くすることにより、フロアパネル本体部の剛性をさらに高めることができる。その反面、フロアパネル本体部の重量が増加してしまうという問題がある。上記実施形態によれば、リブの厚さwは、フロアパネル本体部の板厚tよりも薄く、リブの高さhは凹部の深さdよりも小さいため、重量増加を抑えつつ、剛性向上を図ることができる。また、リブが凹部よりも下方に突出することがないため、例えばフロアパネルを平面上に設置した場合、複数の凹部が該平面に接触することで、フロアパネルを安定的に設置できる。
【0048】
また、リブはフロアパネルの下面に設けられている。そのため、フロアパネルの上面にはパネル上方に突出した部分が存在せず、上面の外観も良い。
【0049】
凹部は、平面視円形状かつ縦断面円弧形状であるため、凹部の特定部分に対する力の集中を抑えることができる。
【0050】
7つの凹部からなる単位凹部群が、前記フロアパネル本体部の車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方向に沿って複数個配置されている。そのため、フロアパネル全体の剛性を向上させることができるとともに、車両外部からの荷重によるフロアパネルの変形をより一層抑えることができる。
また、単位凹部群Gの中央にある第1凹部23−1に対して放射状に6個のリブが設けられている。このように単一の凹部に対して複数のリブを連結させることにより、力の分散のさらなる効率化を図ることができる。
【0051】
第2凹部23−2〜第7凹部23−7という6つの凹部が周方向に沿って一定の間隔を置いて配置されている。これにより、複数の平面部分が平面視でジグザグ状に配置されることになる。その結果、平面部分における特定箇所への応力集中を抑えることができる。
【0052】
[試作例]
凹部及びリブを備えたフロアパネル本体部2の試作品Ref1と、凹部のみを備え、リブを備えていない比較対象の試作品Ref0とを作製した。その詳細を表1に示す。試作品Ref1及びRef0はともに矩形状であり、長さと幅と板厚は同一である。Ref1及びRef0ともに、単位凹部群Gを幅方向に5個、長さ方向に12個配置した。また、両試作品に関して、凹部半径と凹部深さと縁部間距離とはそれぞれ同一である。
【表1】
【0053】
両試作品の重量を測定したところ、Ref1は、Ref0よりも重量が大きかった。
【0054】
さらに、Ref1及びRef0の剛性を測定した。具体的には、
図5に示すように、Ref1及びRef0の各々について、水平方向に変位しないように端部を固定部材7に固定した。そして、直径100mmの圧子8で100Nの荷重をRef1及びRef0の各々に対して矢印Pの方向に加えることで、3点曲げによる曲げたわみを推定した。
【0055】
表1に示しているように、Ref0の曲げたわみは53mmであったのに対し、Ref1の曲げたわみは40mmであった。曲げたわみの値を重量で除した値の比は、Ref0の値を1.00とすると、Ref1の値は0.72であった。つまり、Ref1の剛性はRef0の剛性よりも高かった。
【0056】
[他の実施形態]
上記実施形態では、単位凹部群Gにおいて計12個のリブを設けたが、これに限られず、リブを少なくとも1個設ければよい。すなわち、単位凹部群G内の少なくとも一組の隣り合う2つの凹部において、両凹部がリブにより連結されていればよい。
【0057】
また、隣り合う2つの凹部間にリブを複数設けてもよい。これら複数のリブはいずれも、一方の凹部の縁部により形成される平面状の円の中心と、他方の凹部の縁部により形成される平面状の円の中心とを結ぶ直線と平行に設けることができる。これにより、フロアパネル本体部に加わる力を、複数のリブを通してさらに効率的に分散させることができる。
【0058】
単位凹部群Gを複数個配置し、ある単位凹部群に属する凹部と別の単位凹部群に属する凹部とが隣り合って位置する場合において、これら2つの凹部を連結する1個又は複数個のリブをさらに設けてもよい。
【0059】
凹部の直径aが比較的小さい場合、式(1)に照らして、縁部間距離cも小さくなるため、フロアパネル本体部の単位領域あたりの凹部の個数が多くなる。その結果、リブの個数が増えてフロアパネル本体部の剛性は向上する可能性があるものの、フロアパネル本体部の重量も増加する。また、多数の小さな凹部及びリブをフロアパネル本体部に形成する必要があること、凹部にアンダーカットが形成されないようにすること等の成形性の観点から考慮すべきことが多く、フロアパネルの設計が煩雑になる。そこで、凹部の直径aを凹部の深さdの2倍以上にすると、フロアパネルの設計を比較的簡易なものとすることができる。それと同時に、フロアパネルの重量増加を抑えることができる。
【0060】
繊維強化樹脂に用いられる繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維等の種々の繊維を用いることができる。
【0061】
また、繊維強化樹脂には、連続繊維強化樹脂と不連続繊維強化樹脂とがある。連続繊維強化樹脂とは、例えば、連続した炭素繊維を一方向に並べて樹脂を含浸させて得られる樹脂のことである。この連続繊維強化樹脂においては、炭素繊維が配向する方向の機械的特性(剛性等)は高いものの、炭素繊維が配向する方向と直交する方向の機械的特性は低い。
【0062】
不連続繊維強化樹脂とは、例えば、ある程度の長さを有する不連続な繊維に樹脂を含浸させて得られる樹脂のことである。このような不連続繊維強化樹脂は、炭素繊維毎に炭素繊維の配向方向が異なるため、機械的特性の高低に方向性を持たない。また、連続繊維樹脂に比べて成形が簡単である。その一方で、繊維の含有量が位置によって偏ってしまう可能性があるため、熱拡散率、熱伝達係数などの熱的特性が位置によって異なり、成形時に変形が起こる恐れが繊維強化樹脂に比べて高い。
【0063】
以上に鑑みて、フロアパネル本体部の材料として、繊維強化樹脂の中でも不連続繊維強化樹脂を用いることにより、当該樹脂の、機械的特性の高低に方向性を持たないという性質を生かしたフロアパネルとすることができる。また、不連続繊維強化樹脂を用いる場合は成形時に変形が起こる恐れが一般的に高まるものの、上述のように、凹部とリブを設けて剛性を高めることで変形を抑えることができる。
【0064】
車両用フロアパネル本体部2の外縁から上方に起立した周壁部3を設け、この周壁部3を、サイドシル、ダッシュパネル、リヤクロスメンバー等に接続させることができる。その一方で、前面衝突又は側面衝突などが起こった場合、周壁部3が内側に折れる方向に周壁部3に対して力が加わる可能性がある。そして、周壁部3の間近にまで凹部を設けると、その凹部を起点として割れ又は変形が生じることにより周壁部3が内側に折れてしまう可能性が高まる。そこで、凹部23を周壁部3から間隔を置いて設けることで、大きな力が加わったとしても、凹部を起点として周壁部3が内側に折れてしまう可能性を低減することができる。
【0065】
各凹部の直径、深さが凹部によって異なっていてもよい。また、リブの幅及び高さがリブによって異なっていてもよい。
【0066】
凹部によって形状が異なっていてもよい。また、凹部の形状は、縦断面円弧形状に限られない。例えば、凹部の縁部により形成される平面状の図形と該凹部の内壁面とにより形成される形状は、円錐形状、円柱形状、多角柱形状、多角錐形状などとすることができる。
【0067】
単位凹部群にとらわれずに、複数の凹部をフロアパネル本体部に設けてもよい。
【0068】
フロアパネル本体部2に設けられる複数の凹部は全て下面22において突出しているため、車両の室内空間を広く確保できる。しかし、複数の凹部の全てを、上面21において突出しているとともに下面22において凹んだ形状とすることもできる。この場合、リブは上面21に設けられる。
【0069】
リブの厚さwは、フロアパネル本体部の板厚tより大きくすることもできる。リブの厚さwとフロアパネル本体部の板厚tとが等しくてもよい。
【0070】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。