特許第6651319号(P6651319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651319
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/72 20060101AFI20200210BHJP
   B65D 23/02 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B65D85/72 100
   B65D23/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-192961(P2015-192961)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65725(P2017-65725A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 耕太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】丹生 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 知之
【審査官】 二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0076030(US,A1)
【文献】 特表2015−510857(JP,A)
【文献】 特許第5673870(JP,B1)
【文献】 特許第5713154(JP,B1)
【文献】 特開2016−5966(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/194251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/72
B65D 23/02
B65D 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内面の全体にわたって凹凸が形成されている容器本体を含み、該容器本体の内部には、ヘッドスペースを残すように流動性内容物が収容されている包装容器において、
前記容器本体の内面は、前記流動性内容物とは非混和性の潤滑液で被覆されており、該内面と該流動性内容物との間には、該潤滑液の被覆層が介在していると共に、
正立状態において、前記容器本体内に収容されている流動性内容物の上端面の周縁部には、前記ヘッドスペースに対応する部分を被覆している潤滑液が垂れ落ちて液溜りが形成されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記凹凸は、0.7μm以上の高さを有する微細突起により形成されており、該微細突起のピッチが高さよりも大きい形態を有している請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記容器本体の内面は、粗面化剤として平均粒子径が40μm以下の微細粒子が分散されている熱可塑性樹脂層により形成されている請求項1または2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記流動性内容物が、100mPa・s(25℃)以上の粘度を有する粘稠物質である請求項1〜3の何れかに記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内に流動性物質が収容されている包装容器に関するものであり、より詳細には、容器本体の内面に凹凸が形成されており、容器本体内面には、流動性内容物に対する滑り性を向上させるための潤滑液の被覆層が形成されている包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、成形が容易であり、安価に製造できることなどから、各種の用途に広く使用されている。特に、容器壁の内面が低密度ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂で形成され且つダイレクトブロー成形で成形されたボトル形状のオレフィン系樹脂容器は、内容物を絞り出し易いという観点から、ケチャップなどの粘稠なスラリー状或いはペースト状の内容物を収容するための容器として好適に使用されている。
【0003】
また、粘稠な内容物を収容するボトルでは、該内容物を速やかに排出するため、或いはボトル内に残存させることなくきれいに最後まで使いきるために、ボトルを倒立状態で保存しておかれる場合が多い。従って、ボトルを倒立させたときには、粘稠な内容物がボトル内壁面に付着残存せずに、速やかに落下するという特性が望まれている。
【0004】
このような要求を満足するボトルとして、例えば、特許文献1には、一次粒子平均径が3〜100nmの疎水性酸化物微粒子が内面に付着している容器が提案されている。
また、特許文献2には、平均粒径が1μm〜20μmの樹脂粒子により形成された樹脂膜の表面に平均粒径が5nm〜100nmの酸化物微粒子が分散付着している構造の撥水性膜が表面に形成されている蓋体が提案されている。
【0005】
上記の特許文献で提案されている技術は、何れも内容物が接触する面に微細な凹凸を形成し、微細な凹凸面により撥水性(疎水性)を発現させている。即ち、この凹凸面を形成する材料の疎水性に加え、凹凸面に存在する空隙中に空気層が形成され、この空気層は容器を形成する材料よりも撥水性が高く、この結果、水性の内容物に対する非付着性が高められるというものである。
しかるに、このような微細な凹凸面を形成した場合では、水性の内容物に対する非付着性が高められるものの、内容物と微細な凹凸面が常時接触する場合、微細な凹凸面の凹部では水分の凝縮が非常におこりやすく、水分凝縮により凹部が埋まるためにその滑り性が悪化していく問題があり、さらなる滑り性の向上が求められている。
【0006】
また、特許文献3には、内面に凹凸が形成されており、この凹凸に液体を安定に保持させた容器が提案されている。かかる容器は、凹凸の毛管現象を利用して容器内面に液体の層を安定に保持し、この液体の層により、内容物に対する滑り性を向上させるというものである。
しかしながら、かかる技術では、容器内面に凹凸を形成する手段に難がある。即ち、かかる凹凸は、毛管現象により液体を保持するものであるため、そのピッチが極めて小さく、ピッチに対して、凹凸の高さがかなり高いという形態を有する。このような形態でなければ、毛管力が支配的にならず、重力により液体が落下してしまうからである。しかるに、このような形態の凹凸は、容器本体を成形した後の後加工、例えば、凹凸形成用の微粒子が分散された液を吹き付けたり或いはエッチング等の手段により形成されるものである。このため、ボトルなどの形態を有する容器では、容器成形後の凹凸形成のための工程が極めて煩雑となってしまい、コスト等の大幅な増大を免れない。
【0007】
一方、本発明者等は、特許文献4により、上記の問題が解決された容器を提案している。かかる容器も、内面に凹凸が形成されており、このような凹凸の内面に潤滑液の液層が形成されており、この液層を利用して、容器内容物に対する滑り性を向上させるという点では、上記の特許文献3の技術と同じである。
しかるに、この特許文献4は、液層の表面に局部的に突出している部分を形成していること、具体的には、容器内面の凹凸が液層表面に反映されており、容器内面の凸部に対応して、液層表面に局部的に突出ている部分を形成している点に、重要な特徴を有している。即ち、ここで形成されている液層は、容器内面を濡らす程度の薄層であり、このような液層が形成されている部分を容器内容物が流れるとき、容器内容物は、液層(局部的に突出している部分)と、局部的に突出している液層間に存在している空気層とに接触して流れることとなり、これにより、単に液層と接触させて容器内容物を流す場合に比して、より優れた滑り性が発揮されるというものである。
【0008】
上記特許文献4の技術は、容器内容物に対する滑り性を大きく向上させ得ることは勿論であるが、注目すべきは、容器内面の凹凸を、容器成形後の後加工によらず、容器内面を形成する樹脂に粗面化剤となる微粒子を混合して容器を成形することにより作製できることである。即ち、かかる凹凸は、容器内面が濡れる程度の液体が保持されればよく、凹凸間に液体を保持するような毛管力を発現させるものではないため、そのピッチは大きく、例えば凹凸の高さよりも大きいものである。この結果、このような凹凸は、容器内面を形成する樹脂にある程度の量の粗面化用の微粒子を混合して成形を行うことにより形成させることができ、容器成形後の面倒な後加工を必要とせず、生産性、製造コスト等の点で大きな利点を有している。
【0009】
しかしながら、本発明者等が開発した上記特許文献4の技術においても、課題が残されている。
即ち、特許文献4の技術では、容器内面の潤滑液の液層が極めて薄い層であるため、容器内面に潤滑液をスプレー噴霧して液層を形成するという手段に適しておらず、容器内面を形成する樹脂に潤滑液を混合して容器を成形するという内添手段によって液層が形成される。即ち、容器内面を形成する樹脂層からのブリーディングにより液層が形成されるわけである。
このような内添手段は、確かに薄い液層の形成には有利であるが、内面全体に均一な厚みで形成し難く、部分的に液層が存在しない部分が形成されたり、場合によっては、内面の凹凸が液体保持力を有していないため、部分的に過剰な厚みの液層が形成されてしまうことがあり、このため、内容物に対する滑り性にバラつきが生じ易く、さらなる改善が必要である。
【0010】
勿論、上記の液層を容器内面に潤滑液をスプレー噴霧することにより形成することは可能であるが、この場合には、液層を形成する液量が過剰となってしまい、スプレー噴霧後、内容物の充填に先立って、容器を倒立させて過剰な量の潤滑液を排出する工程が必要となってしまう。即ち、潤滑液の無駄使いや無駄な工程の存在などの点で、スプレー噴霧による手段を採用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−254377号公報
【特許文献2】特許第4878650号
【特許文献3】特表2015−510857号公報
【特許文献4】特許第5673870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、内面の全体にわたって凹凸が形成されており、このような凹凸を有する内面が潤滑液で被覆されている容器本体の内部に、流動性内容物が収容されている包装容器を提供することにあり、特に、該潤滑液による流動性内容物に対する滑り性が安定して発揮され、その速やかな排出が可能であると共に、コストの増大などを生じることなく容易に製造すること可能な包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記のような包装容器について多くの実験を行った結果、容器本体の内面に毛管力が支配的でない小さな凹凸を形成し、このような凹凸を完全に覆うように過剰の潤滑液で被覆している場合には、容器本体内に収容させる流動性内容物に対する滑り性が安定して長期にわたって発揮されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明によれば、内面の全体にわたって凹凸が形成されている容器本体を含み、該容器本体の内部には、ヘッドスペースを残すように流動性内容物が収容されている包装容器において、
前記容器本体の内面は、前記流動性内容物とは非混和性の潤滑液で被覆されており、該内面と該流動性内容物との間には、該潤滑液の被覆層が介在していると共に、
正立状態において、前記容器本体内に収容されている流動性内容物の上端面の周縁部には、前記潤滑液の液溜りが形成されていることを特徴とする包装容器が提供される。
【0015】
本発明の包装容器においては、
(1)前記凹凸は、0.7μm以上の高さを有する微細突起により形成されており、該微細突起のピッチが高さよりも大きい形態を有していること、
(2)前記容器本体の内面は、粗面化剤として平均粒子径が40μm以下の微細粒子が分散されている熱可塑性樹脂層により形成されていること、
(3)前記流動性内容物が、100mPa・s(25℃)以上の粘度を有する粘稠物質であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の包装容器は、正立状態において、容器本体内に収容されている流動性内容物の上端面の周縁部に、潤滑液の液溜りが形成されている点に顕著な特徴を有している。即ち、このような潤滑液の液溜りが流動性内容物の上端周縁部に形成されているため、容器本体を傾けて流動性内容物を排出する際、この流動性内容物は、常に、潤滑液と接触しながら排出されることを意味する。この結果、本発明の包装容器では、常に潤滑液による滑り性が発揮されることとなる。
【0017】
また、上記のような潤滑液の液溜りを形成する場合、容器本体の内面に形成されている凹凸は、流動性内容物に対する毛管力が支配的となるような形態を有している必要はなく、容器本体内面を形成する樹脂に内添して成形することにより該凹凸を形成することができ、容器成形後の後加工は必要でない。
さらに、上記の潤滑液の液溜りは、ヘッドスペース部分の凹凸を被覆している潤滑液の落下により形成される。このことから理解されるように、容器本体の内面の凹凸を被覆する潤滑液の層は、過剰な量の潤滑液を容器本体の内面にスプレー噴霧することによって形成できる。即ち、厚みのバラつき等を生じ易い樹脂への内添によらず、潤滑液の被覆層を形成することができる。
従って、本発明の包装容器では、容器本体内面の凹凸を、煩雑で且つコストのかかる後加工を用いずに形成することができ、また、潤滑液の被覆も、容器本体内面に潤滑液をスプレー噴霧するという容易な手段で行い、潤滑液の被覆層の厚み等のバラつきを有効に回避することできる。
【0018】
このように、本発明によれば、煩雑でコストのかかる手段を用いず、至って容易な手段で、潤滑液の特性が安定に発揮される包装容器が得られる。
【0019】
また、本発明においては、液層を支持している樹脂成形体の表面樹脂層の下側に、液層を形成している液体の拡散を抑制もしくは遮断する液拡散防止層を設けることにより、液層を長期間にわたって安定に保持することができ、その表面改質効果を長期間にわたって発揮させることができる。
【0020】
本発明の包装容器は、容器本体内に収容される流動性内容物の種類に応じて適宜の潤滑液を選択して使用することにより、流動性内容物に対する滑り性を安定に向上させることができるので、特に粘稠な液体、例えば100mPa・s(25℃)以上の粘度を有する粘稠物質(ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシングなど)の収容に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の包装容器の要部及び流動性内容物を排出するときの状態を示す概略断面図。
図2】本発明の包装容器における容器本体の最も好適な形態であるダイレクトブローボトルの全体の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<包装容器の構造及び機能>
図1を参照して、本発明の包装容器は、容器本体1の内部に流動性内容物3が収容されたものであり、特に図1(A)に示されているように、正立状態において、容器本体1の上端は、シール箔5によりシールされており、適宜、蓋体(図示せず)により閉じられており、流動性内容物3の上端面と容器本体1の上端(シール箔5)との間にはヘッドスペース7が形成されている。
【0023】
上記のような容器本体1の好適例は、ダイレクトブローボトルであり、この形態は、図2に示されている。
図2において、全体として10で示されるダイレクトブローボトル(図1の容器本体1に相当)は、螺条を備えた首部11、肩部13を介して首部11に連なる胴部壁15及び胴部壁15の下端を閉じている底壁17を有しており、その上端の開口部は、前記の流動性内容物3(図2では図示せず)を充填した後に、アルミ箔等のシール部材19(図1のシール箔5に相当)によって閉じられ、さらにキャップ20が螺子装着されてシール性が確保されるものとなっている。
かかるボトル10は、粘稠な流動性内容物の収容に好適に使用され、胴部壁15をスクイズすることにより、内部に収容された粘稠な物質を排出するというものである。
【0024】
再び図1に戻って、容器本体1(例えば図2のダイレクトブローボトル10)の内面は、その全体にわたって分布している高さhが0.7μm以上の微細突起8により形成される凹凸面1aとなっており、このような凹凸面1aは、流動性内容物3に対する滑り性を向上させる潤滑液30で被覆されており、流動性内容物3と容器本体1の内面(凹凸面1a)との間には、潤滑液30が介在しているおり、その間に空気層は存在していない。
尚、凹凸面1aには、上記微細突起8よりも高さの小さい小突起9が分布しているが、このような小突起9は、滑り性等に影響を与えるものではなく、本発明では無視することができる。
【0025】
上記のような基本構造を有する本発明の包装容器では、図1(A)に示されているように、正立状態において、流動性内容物3の上端面の周縁部に潤滑液30の液溜り31が形成されている。即ち、正立状態では、流動性内容物3よりも上方に位置するヘッドスペース7部分の凹凸面1aを被覆している潤滑液30が流れ落ちることにより、潤滑液30の液溜り31が形成されるわけである。従って、ヘッドスペース7部分の凹凸面1aの上方部分では、微細突起8の間に潤滑液30が入り込んでいない空隙部が形成されている。
本発明では、上記のようにして形成されている液溜り31により、流動性内容物3の排出に際して、安定して優れた滑り性が発揮されることとなる。
【0026】
例えば、この流動性内容物3を排出するには、図1(B)に示されているように、シール箔5を引き剥がした後、容器本体1を傾けるが、これにより、液溜り31を形成している潤滑液30は、凹凸面1aに沿って容器本体1の上端部分に流れ落ちる。この状態で流動性内容物3が排出されるが、この時には図1(C)に示されているように、液溜り31を形成している潤滑液30の流れ落ちにより、ヘッドスペース7に対応する位置の凹凸面1aには、微細突起8を完全に覆い且つ微細突起8の間の空隙部を完全に埋め込んでいる潤滑液30の厚い膜30aが形成されており、このような潤滑液30の厚い膜30aに接触しながら流動性内容物3が潤滑液30の一部と共に排出、あるいは潤滑液30の厚い膜30a上を滑ることとなり、これにより、安定して優れた滑り性が発揮されることとなる。
このとき、凹凸面1a上には潤滑液30の厚い膜30aが形成されているが、この厚い膜30aが凹凸面1a上を流れる際、凹凸面1aを形成する微細突起8との存在により、流動抵抗が発生する。この流動抵抗により、厚い膜30a自体が流れる速度は、平滑な面上を潤滑液が流れる場合と比較して遅くなっている。したがって、平滑な面上に潤滑液の膜を被覆した場合と比較して、凹凸面1a上に潤滑液の膜を形成することで、流動性内容物3の排出により共に排出される潤滑液30の量を低減することが可能となる。この潤滑液30の保有量を低減させない効果も本発明の重要な利点といえる。
また、容器本体1を傾けると、図1(C)に示す厚い潤滑液30a側に対向する凹凸面(図示なし)、即ち、傾けたときに上になる凹凸面(すなわち、凹凸面が下向きになる側の面)から流動性内容物3が剥離されることになるが、液溜り31が剥離の起点となって側壁から底部へ進行する。液溜まり31がこのような剥離の起点のなることも内容物の滑り性を向上させる上で利点となる。
また、上記のように容器本体1を傾けて流動性内容物3の一部を排出した後は、容器本体1は正立状態に保持され、適宜、蓋体が装着されてシールされることとなるが、このような正立状態では、ヘッドスペース7部分に対応する位置の凹凸面1aを被覆している余剰の潤滑液30が流れ落ち、再び、流動性内容物3の上端面の周縁部には、図1(A)に示されるように潤滑液30の液溜り31が形成されることとなる。従って、再度、容器本体1を傾けて流動性内容物3を排出するときにも、上記と同様に、ヘッドスペース部分に潤滑液30の厚い膜30aが形成されることとなり、優れた滑り性が発現することとなる。
【0027】
このような本発明の包装容器では、上述した微細突起8により凹凸面1aが形成されていればよいが、この微細突起8のピッチpは、微細突起8の高さhよりも大きいことが望ましい。特に平均して20〜500μm、さらに好ましくは30〜400μmのピッチで形成されていることが望ましい。かかる条件は、微細突起8による潤滑液に対する毛管力が重力に対して支配的とはならず、凹凸面1aを被覆している潤滑液30が毛管力によって保持されずに、速やかに流れ落ちることを意味する。
例えば、潤滑液30が毛管力によって凹凸面1a上に保持されてしまうと、滑り性を向上するに有効な量の液溜り31を形成することが困難となるおそれがある。ヘッドスペース7部分での凹凸面1aから流れ落ちる潤滑液30の量が少なくなってしまうからである。
【0028】
また、上記のような微細突起8は、10〜2500個/mm、さらに好ましくは20〜1500個/mmの密度で容器本体1の内面に分布していることが好適である。即ち、適度な密度で微細突起8が形成されていないと、潤滑液30の流れに対する抵抗が少なくなり、この結果、容器本体1を傾けて流動性内容物3を排出する際、多量の潤滑液30が流動性内容物30と共に排出されてしまい、潤滑液30による滑り性向上効果が短時間で消失してしまうこととなる。とくに、凹凸面1aが容器内面に形成されていない場合には、前述のように潤滑液30が直ちに排出されてしまい、滑り性向上効果を実質的に発揮させることができなくなってしまう。
【0029】
尚、上述した凹凸面1aを形成する微細突起8の存在等は、後述する実施例で説明するように、原子力間顕微鏡、レーザ顕微鏡や白色干渉顕微鏡などによって解析することができる。また、液溜り31の存在は、目視や、ガラス製のキャピラリーチューブ(ガラス毛細管)等を用いての回収によって、容易にその存在を確認することができる。
【0030】
本発明において、上記のような微細突起8による凹凸面1aの形成は、容器本体1を成形した後の後加工によらず、容器本体1の内面を形成する樹脂に粗面化剤を内添しておくことにより形成することができ、これは、本発明の大きな利点である。このような粗面化剤の内添による凹凸面1aの形成では、通常、微細突起8の高さの上限は、50〜100μm程度であり、例えば、粗面化剤として平均粒子径が40μm以下の微細粒子を熱可塑性樹脂層に分散させた場合では、高さの上限は30μm程度、平均粒子径が20μm程度の微細粒子では、高さの上限は15μm程度である。
【0031】
また、上記の説明から理解されるように、凹凸面1aを被覆している潤滑液30は、この凹凸面1aを形成している微細突起8を完全に覆い、該突起8間の空隙を埋めるような過剰量で施される。即ち、このことは、上記のような容器本体1の内面の凹凸面1aに潤滑液30をスプレー噴霧することにより、潤滑液30を施すことができ、これも本発明の大きな利点である。
【0032】
<容器本体1>
本発明において、上述した容器本体1は、その内面が上記の微細突起8によって凹凸面1aとなっている。
【0033】
容器本体1の内面を形成する材料は特に制限されず、熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂、ガラス、金属など用途・内容物に応じて選択して使用することができる。この中でも、熱可塑性樹脂は、容器の形態に成形可能なものであれば特に制限されないが、一般的には、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系樹脂や、これらのオレフィン類の共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート等のポリエステル樹脂が好ましく、これらは容器外面の形成にも好適である。
特に、この容器本体1を、図2に示されているようなダイレクトブローボトルとして使用する場合には、内容物の絞り出しに適しているという点で、低密度ポリエチレンや直鎖低密度ポリエチレンに代表されるオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
また、上記の内面を形成する熱可塑性樹脂には、微細突起8による凹凸面1aを形成するために、粗面化剤が配合される。かかる粗面化剤は、平均粒子径が40μm以下、特に0.2〜20μmの微細粒子が使用される。即ち、このような微細粒子が配合された熱可塑性樹脂を用いて成形を行うと、かかる微細粒子が連なった部分が隆起して、前述した微細突起8が形成されることとなる。しかも、このような微細粒子は、その表面を熱可塑性樹脂に被覆された状態で容器本体1の内表面を形成し、しっかりと固定されている。このため、このような微細突起8により形成される凹凸面1aに接触している潤滑液30を安定に保持することができる。
特に、本発明では、上記の粗面化剤を樹脂に内添することにより微細突起8による凹凸面1aが形成されるため、粗面化のための粒子をスプレー噴霧等により塗布することにより凹凸面1aを形成する場合に比して、微細突起8の脱落などを有効に回避することができ、これは本発明の大きな利点である。
【0035】
尚、上記の平均粒子径は、例えばレーザ回折式粒度分布測定装置などを用いてのレーザ回折・散乱法による方法等によって測定することができ、測定された粒度分布において、体積換算での積算値50%での粒子径として算出される。なお、シリカなどの一次粒子径が0.2μm以下の微粒子においては、一次粒子のまま単独で存在させることが極めて困難であるため、二次粒子の粒子径が平均粒子径として算出される。
【0036】
上記のような粗面化剤として使用される微細粒子としては、平均粒子径が上記範囲にある限り特に制限されないが、一般的には、例えば酸化チタン、アルミナ、シリカ等の金属酸化物粒子、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、カーボンブラックなどの炭素系微粒子、ポリメチル(メタ)アクリレート硬化物や、超高分子量ポリエチレン、ポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン粒子などから成る有機微粒子が代表的であり、これらは、シランカップリング剤やシリコーンオイル等により疎水化処理されていても、されていなくてもよい。本発明においては、ダイレクトブロー成形に代表される押出成形によっても実施可能であるため、溶融成形後に粒子径が保持できれば良く、例えば、疎水化処理されている微細粒子、特に疎水性シリカ、ポリメチルメタクリレート硬化物、超高分子量ポリエチレン、ポリオルガノシルセスキオキサン、シリコーン粒子が好適に使用される。
【0037】
このような粗面化剤として使用される微細粒子は、微細突起8を前述した高さh、ピッチp及び密度で形成するために、通常、容器本体1の内面を形成する樹脂100質量部当り0.1乃至30質量部、好ましくは0.3乃至20質量部、さらに好ましくは0.3乃至10質量部の量で使用される。
【0038】
さらに、本発明において、容器本体1は、その内面が微細突起8により形成された凹凸面1aとなっている限りにおいて、上記の粗面化剤が配合された樹脂の単層構造であってもよいし、多層構造とすることも可能である。
【0039】
例えば、容器本体1の内面層(前述した粗面化剤含有の樹脂層)と外面層(粗面化剤が配合されていない樹脂層)との間に、中間層として、ガスバリア性樹脂層を形成し、酸素等のガス透過による内容物3の劣化を抑制することができる。
【0040】
上記のガスバリア性樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物)、芳香族ポリアミド及び環状ポリオレフィンなどが代表的であり、中でもエチレン・ビニルアルコール共重合体は、特に優れた酸素バリア性を示すため、最も好適である。
上記のようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、一般に、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適である。
上述したガスバリア性樹脂は、それぞれ単独で使用することもできるし、2種以上がブレンドされていてもよい。また、内面層や外面層との接着性を高めるたるために、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ポリエチレン等のポリオレフィンがガスバリア性樹脂にブレンドされていてもよい。
【0041】
また、上記のようなガスバリア性樹脂層を中間層として設ける場合には、所定の凹凸面1aが形成されている内面層或いは外面層との接着性を高め、デラミネーションを防止するために、これらの層とガスバリア性樹脂層との間に接着剤樹脂層を設けることが好ましい。
このような接着樹脂層の形成に用いる接着剤樹脂はそれ自体公知であり、例えば、カルボニル基(>C=O)を主鎖若しくは側鎖に1乃至100meq/100g樹脂、特に10乃至100meq/100g樹脂の量で含有する樹脂、具体的には、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸もしくはその無水物、アミド、エステルなどでグラフト変性されたオレフィン樹脂;エチレン−アクリル酸共重合体;イオン架橋オレフィン系共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;などが接着性樹脂として使用される。
【0042】
さらに、上記のような多層構造においては、この容器本体1を成形する際に生じるバリなどのスクラップ樹脂が内層或いは外層形成用のバージンの樹脂に配合されたリプロ層を形成することもできる。
【0043】
上述した各層は、当該層に要求される特性が発揮されるように、それ自体公知の厚みに設定される。また、各層を形成するための樹脂には、各層の特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤などの添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0044】
容器本体1は、内面が所定の凹凸面1aとなっており、凹凸面1aを潤滑液30で被覆したとき、液溜り31を形成し得る限りにおいて、種々の形態を有していてよく、例えば、ボトル或いはカップの形態を有していてよい。
このような容器本体1は、前述した各層を形成する樹脂を用いての押出成形によりプリフォームを形成した後、ブロー成形、プラグアシスト成形、真空成形等の後加工により所定の容器形状に賦形することにより製造される。
特に本発明では、この容器本体1は、図2に示されているような粘稠な流動性内容物の排出に適したダイレクトブローボトルの形態を有していることが最適である。このようなダイレクトブローボトルは、押出成形によりチューブ形状のプリフォームを成形し、このプリフォームの一端をピンチオフして閉じ、次いで、エア等のブロー流体をプリフォーム内に吹き込んでボトル形状に賦形することにより製造される。
【0045】
<潤滑液30及び流動性内容物3>
本発明の包装容器においては、上記のようにして得られる容器本体1の内面である凹凸面1aを潤滑液30で被覆し、次いで、ヘッドスペース7が形成されるように流動性内容物3が充填される。
【0046】
上記の潤滑液30としては、容器本体1内に充填される流動性内容物3の種類に応じて、適宜の表面特性を有するものが使用されるが、かかる潤滑液30は、当然、流動性内容物3と非混和性であることが必要である。本発明において、流動性内容物3と非混和性であるとは、流動性内容物3と接触しても即座に分子分散せずに、潤滑液30として存在することを意味する。さらに、大気圧下での蒸気圧が小さい不揮発性の液体、例えば沸点が200℃以上の高沸点液体でなければならない。揮発性液体を用いた場合には、容易に揮散して経時と共に消失し、流動性内容物3に対する滑り性を向上させることが困難となってしまうからである。
【0047】
このような潤滑液30の具体例としては、上記のような高沸点液体であることを条件として、種々のものを挙げることができるが、特に表面張力が、滑り性の対象となる流動性内容物3と大きく異なるものほど、潤滑効果が高く、本発明には好適である。
例えば、流動性内容物3が水や水を含む親水性物質である場合には、表面張力が10乃至40mN/m、特に16乃至35mN/mの範囲にある液体を潤滑液30として用いることが好ましく、フッ素系液体、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイル、脂肪酸トリグリセライド、各種の植物油などが代表的である。この植物油としては、大豆油、菜種油、オリーブオイル、米油、コーン油、べに花油、ごま油、パーム油、ひまし油、アボガド油、ココナッツ油、アーモンド油、クルミ油、はしばみ油、サラダ油などが好適に使用できる。また、上記の液体をブレンドして用いてもよい。
【0048】
本発明においては、上記の潤滑液30を用いて容器本体1の内面の凹凸面1aを被覆するが、流動性内容物3を充填したときに、ヘッドスペース7に面している流動性内容物3の周縁部に液溜り31が形成されるように(図1(A)参照)、過剰量の潤滑液30を容器本体1の内面(凹凸面1a)に施すことにより、かかる被覆が行われる。
即ち、図1(A)に示されているように、流動性内容物3が充填されている容器本体1が正立状態に保持されたとき、ヘッドスペース7に対面する部分に位置している凹凸面1から潤滑液30が垂れ落ちるように、過剰の潤滑液30で凹凸面1aの全体を被覆しておくことが必要である。
このために、この潤滑液30をスプレー噴霧により、容器本体1の内面全体に塗布することが必要であり、例えば、その塗布量は、平均して、2.5g/m以上、特に10〜40g/m程度とするのがよい。このような塗布量とすることにより、凹凸面1aを形成している微細突起8が完全に潤滑液30で覆われ且つ微細突起8間の空隙が潤滑液30で完全に充満した状態となる。例えば、潤滑液30を容器本体1の内面を形成する樹脂に配合しておく等の方法では、このような過剰の潤滑液30により凹凸面1aを被覆して液溜り31を形成することはできない。
【0049】
尚、過剰量の潤滑液30で凹凸面1a(内面)の全体を被覆することができる限りにおいて、潤滑液30のスプレー噴霧は、容器本体1を正立状態に保持した状態で行ってもよいし、倒立状態に保持した状態で行ってもよい。
【0050】
上記のようにして潤滑液30を塗布した後、正立状態に保持され且つ過剰の潤滑液30で内面全体が被覆されている容器本体1の内部に、流動性内容物3が、所定の充填用パイプから、ヘッドスペース7を残すように供給される。
【0051】
即ち、本発明においては、凹凸面1aを形成している微細突起8が、潤滑液30に対して重力よりも毛管力が支配的とならないような高さや密度で形成されているため、上記のように流動性内容物3を充填したとき、ヘッドスペース7に対応する部分の凹凸面1aを被覆している潤滑液30が垂れ落ち、流動性内容物3の上端面の周縁部分に液溜り31を形成することが可能となるわけである。従って、図1(A)に示されているように、液溜り31よりも上方部分の潤滑液30の液膜30aは、流動性内容物3の側面と凹凸面1aとの間に存在する潤滑液の液膜30bに比して、その厚みが薄くなっている。
【0052】
上記のようにして充填される流動性内容物3は、先にも述べたように、潤滑液30と表面張力が大きく異なるものであり、特に粘度(25℃)が100mPa・s以上の粘稠な流体、具体的には、ケチャップ、水性糊、蜂蜜、各種ソース類、マヨネーズ、マスタード、ドレッシング、ジャム、チョコレートシロップ、乳液等の化粧液、液体洗剤、シャンプー、リンス等である。即ち、流動性内容物3の種類に応じて適宜の潤滑液30を使用して液溜り31を形成しておくことにより、容器を傾斜或いは倒立させることにより、これらの粘稠な流動性内容物3を速やかに排出できるからである。
例えば、ケチャップ、各種ソース類、蜂蜜、マヨネーズ、マスタード、ジャム、チョコレートシロップ、乳液などは、水分を含む親水性物質であり、潤滑液30としては、シリコーンオイル、グリセリン脂肪酸エステル、食用油などの食品添加物として認可されている油性液体が好適に使用される。
【0053】
上記のようにしてヘッドスペース7を残すようにして流動性内容物3を充填し且つ潤滑液30の液溜り31を形成した後、シール箔5をヒートシールにより施し、適宜、蓋体を装着することにより、本発明の包装容器が得られる。
【実施例】
【0054】
本発明を次の実施例にて説明する。
尚、以下の実施例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及び包装容器(ボトル)は次の通りである。
【0055】
<包装容器>
下記の層構成を有する、容量約200mLの多層ダイレクトブローボトルを公知の手法により成形し、下記の実験に用いた。
5種9層ダイレクトブロー多層ボトルA(ボトルA);
層構成:内層/接着層/液拡散抑制層/接着層/メイン層/接着層/酸素バリア層/接着層/外層
内層:シリカ5重量%含有低密度ポリエチレン(シリカの平均粒子径=5μm)
接着層:酸変性ポリエチレン
液拡散抑制層:エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
メイン層:低密度ポリエチレン(LDPE)
酸素バリア層:エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
外層:低密度ポリエチレン(LDPE)
5種9層ダイレクトブロー多層ボトルB(ボトルB);
層構成:内層/接着層/液拡散抑制層/接着層/メイン層/接着層/酸素バリア層/接着層/外層
内層:低密度ポリエチレン(LDPE)
接着層:酸変性ポリエチレン
液拡散抑制層:エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
メイン層:低密度ポリエチレン(LDPE)
酸素バリア層:エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)
外層:低密度ポリエチレン(LDPE)
【0056】
<潤滑液>
中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)
表面張力:28.8mN/m(23℃)
粘度:33.8mPa・s(23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。また、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0057】
<ボトル内面の表面形状測定>
上記多層ダイレクトブローボトル(ボトルA、ボトルB)の胴部から20mmx20mmの試験片を切り出し、非接触表面形状測定機(NewView7300,zygo社製)を用いて、ボトル内面の表面形状測定を行った。測定ならびに画像解析には、アプリケーションとして、MetroPro(Ver.9.1.4 64−bit)を用いた。0.699mmx0.524mmの範囲を測定し、得られたデータから、0.7μm以上の高さの突起に対し、突起密度(1mm面積当たり)、平均突起間隔(ピッチ)、最大突起高さ、および平均突起高さを求めた。ボトル内面の表面形状測定の結果は、後述の表1に示す。
【0058】
<流動性内容物>
マヨネーズ様粘稠性食品
粘度:499Pa・s(0.1sec−1)、
94Pa・s(1sec−1)、
0.30Pa・s(1000sec−1
尚、粘度の測定にはレオメーター(ARES、ティー・エイ・インスツルメント製)を用いた。パラレルプレートのジオメトリ、ギャップ0.5mmにて定常流法で測定した値を示した。
【0059】
<潤滑液の液溜りの確認>
流動性内容物をボトル内に200g充填し、100g取り出した後、1日以上正立保管した。この正立保管時の外観を目視にて評価した。ここで、ボトル本体内に収容されている流動性内容物の上端面の周縁部において、潤滑液の液溜まりが形成されていることを目視で確認できるものを液溜り有り、目視で確認できないものを液溜り無しと判断した。
【0060】
<流動性内容物の滑り性試験>
潤滑液の液溜りの確認を行った後の流動性内容物が100g内部に残っているボトルを用いて、室温下(25℃)において、正立状態のボトルから流動性内容物を50gスクイズして使用した後、ボトルをサックバックさせてボトル形状を復元させた後、室温下(25℃)で倒立させた際の内容物の滑り性を評価した。
倒立後、内容物がボトル口部側に滑り落ちきる時間を測定し、この時間を滑り性の尺度とした。滑り落ちきる時間が、2分未満のものを◎、2分以上5分未満のものを○、5分以上10分未満のものを△、10分以上かかったものを×とした。
【0061】
<実験例1〜3>
包装容器として、5種9層ダイレクトブロー多層ボトルA(ボトルA)を用意した。ボトルAの内面にエアブラシを用いたエアスプレー法で、潤滑液として中鎖脂肪酸トリグリセリドを表1に示す量となるように塗布した。内面に潤滑液が塗布されたボトルを用いて、前述の、潤滑液の液溜りの確認、および、流動性内容物の滑り性試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0062】
<実験例4〜6>
包装容器として、5種9層ダイレクトブロー多層ボトルB(ボトルB)を用意した以外は実施例1と同様の手順で中鎖脂肪酸トリグリセリドを表1に示す量となるように塗布し、潤滑液の液溜りの確認、および、流動性内容物の滑り性試験を行った。結果をまとめて表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より、ボトル内面に凹凸が形成されており、この凹凸を有する内面が潤滑液で被覆されている実験例1〜3においては、潤滑液の液溜まりの形成が確認された実施例1、2において内容物の滑り性が良好であること、さらに、液溜まりの形成が確認されなかった実験例3では内容物の滑り性が不良であることが分かる。
一方、ボトル内面に凹凸が形成されていないボトルBに潤滑液で被覆されている実験例4〜6においては、潤滑液の液溜まりが確認された実験例4では滑り性がほどほど良好であるが、実験例5では液溜まりが確認されたにもかかわらず、滑り性が不良となることが分かる。さらに、液溜まりの形成が確認されなかった実験例6では実験例3と同様に滑り性が不良となった。
実験例1と実験例4、実験例2と実験例5はそれぞれ同等量の潤滑液をボトル内面に塗布しているが、その滑り性はボトル内面に凹凸が形成されている場合の方が良好となっている。これは、ボトルを倒立(傾斜)した際、内容物の上端面の周縁部に形成されていた潤滑液の液溜まりによって、内容物の進行方向に潤滑液の厚い液膜が形成されることにより、優れた滑り性が発現されたと考えられる。
【符号の説明】
【0065】
1:容器本体
1a:凹凸面(容器本体1の内面)
3:流動性内容物
5:シール箔
7:ヘッドスペース
8:微細突起
9:微細突起8よりも高さの小さい小突起
30:潤滑液
31:液溜り
図1
図2