特許第6651329号(P6651329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6651329インクジェットプリンタ制御システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651329
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   B41J2/01 203
   B41J2/01 451
   B41J2/01 305
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-223169(P2015-223169)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-87645(P2017-87645A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(74)【代理人】
【識別番号】100106817
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 みふね
(72)【発明者】
【氏名】荒井 肇
(72)【発明者】
【氏名】土井 智文
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智也
(72)【発明者】
【氏名】寺西 憲久
【審査官】 馬渕 貴洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−144665(JP,A)
【文献】 特開2004−243571(JP,A)
【文献】 特開2007−196483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 〜 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定材料が吐出される印刷ヘッドを備えたインクジェットユニットを有し、印刷処理が施される印刷領域と該印刷領域と所定の位置関係にて配置されたアライメントマークとを有する被処理基材に対し、該被処理基材を搬送しつつ、前記印刷ヘッドを用いて前記所定材料の印刷処理を行うインクジェットプリンタの制御システムであって、
前記アライメントマークを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段にて撮像された画像を取得し、該画像中の前記アライメントマークの位置をその正規の位置と比較し、前記画像中の前記アライメントマークの位置ズレ量を検出する位置ズレ量算出部と、
前記位置ズレ量から、前記所定材料の搬送方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、搬送方向の前記位置ズレ量の算出に要する時間中における前記被処理基材の移動量を算出し、搬送方向の前記位置ズレ量と前記被処理基材の前記移動量に基づいて、前記印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出する補正量算出部と、
前記位置ズレ量から、前記所定材料の幅方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから、幅方向の前記位置ズレ量に基づいて最適なパターンを選定する印刷パターン選択部と、
前記補正量算出部にて算出された前記補正量と、前記印刷パターン選択部にて選択された前記印刷パターンに基づいて、前記位置ズレ量を補正しつつ印刷処理を行うよう印刷指示を行う印刷制御部と、
前記印刷制御部の指示に沿って前記印刷ヘッドを作動させ、前記被処理基材に対し印刷処理を実行する吐出制御部と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項2】
請求項1記載のインクジェットプリンタ制御システムにおいて、
当該システムはさらに、印刷処理実行中に、前記撮像手段にて次の前記アライメントマークの画像が得られた場合、現在進行中の印刷処理が終了するまで、当該画像に基づく印刷処理を保留する印刷処理保留部を有することを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項3】
請求項2記載のインクジェットプリンタ制御システムにおいて、
前記印刷処理保留部は、前記位置ズレ量算出部が次の前記アライメントマークの画像に基づいて前記位置ズレ量を検出し、該位置ズレ量に基づいて、前記補正量算出部にて前記補正量を算出すると共に、前記印刷パターン選択部にて前記印刷パターンを選択した後、現在進行中の印刷処理が終了するまで次の印刷処理を保留することを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ制御システムにおいて、
前記吐出制御部は、前記被処理基材の搬送量に応じて出力されるパルス信号をカウントするカウンタを有し、
該カウンタが所定カウント値に達したとき、前記吐出制御部は、前記印刷ヘッドを作動させ印刷処理を実行することを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項5】
請求項4記載のインクジェットプリンタ制御システムにおいて、
前記補正量算出部は、前記補正量の算出が完了したとき、前記印刷制御部に対し補正量算出処理完了信号を送出し、
前記カウンタは、前記補正量算出処理完了信号を受けた後、前記印刷指示にてリセットされ、その後、所定距離を前記補正量によって調整した距離分のパルス信号をカウントするまでリセット状態が維持され、
前記吐出制御部は、前記カウンタのリセット状態が解除された後、前記所定カウント値にて前記印刷ヘッドを作動させることを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項6】
請求項4又は5記載のインクジェットプリンタ制御システムにおいて、
前記カウンタは複数設けられ、互いに異なるカウント動作を並行して実行可能であることを特徴とするインクジェットプリンタ制御システム。
【請求項7】
所定材料が吐出される印刷ヘッドを備えたインクジェットユニットを有し、印刷処理が施される印刷領域と該印刷領域と所定の位置関係にて配置されたアライメントマークとを有する被処理基材に対し、該被処理基材を搬送しつつ、前記印刷ヘッドを用いて前記所定材料の印刷処理を行うインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記アライメントマークを撮像する撮像手段にて撮像された画像を取得し、該画像中の前記アライメントマークの位置をその正規の位置と比較して前記画像中の前記アライメントマークの位置ズレ量を検出し、
前記位置ズレ量から、前記所定材料の搬送方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、搬送方向の前記位置ズレ量の算出に要する時間中における前記被処理基材の移動量を算出し、搬送方向の前記位置ズレ量と前記被処理基材の前記移動量に基づいて、前記印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出し、
前記位置ズレ量から、前記所定材料の幅方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから、幅方向の前記位置ズレ量に基づいて最適なパターンを選定し、
前記補正量と、選択された前記印刷パターンに基づいて、前記位置ズレ量を補正しつつ印刷処理を行うよう印刷指示を行い、
前記印刷指示に沿って前記印刷ヘッドを作動させ、前記被処理基材に対し印刷処理を実行することを特徴とするインクジェットプリンタ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式によりフィルム等の処理対象物に印字や描画、パターン印刷、素材塗布等の処理を行うインクジェットプリンタの制御技術に関し、特に、移動する処理対象物に対し、正確な位置に断続的な印刷が可能なインクジェットプリンタの制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンタでは、インクジェットヘッドに設けたノズルからごく微小なインク滴を処理対象物に対して吐出し、所望の印字や画像記録等を行っている。インクジェットプリンタは、処理対象物から離間した状態で印刷処理が可能なため、様々な材質の処理対象物に印字や素材塗布等を行うことができ、写真印刷のみならず、幅広い用途に利用されている。近年では、他の記録方式に比べて高精細な記録が可能であることから、カラー液晶ディスプレイ用のカラーフィルタや有機EL等の製造にもインクジェット方式が採用されている。
【0003】
一方、カラーフィルタ等の製造にインクジェットプリンタを用いる場合、非常に高精細な印刷処理が求められるため、ノズルから吐出されたインクの着弾位置を高精度に制御する必要がある。そこで、従来より、インク液滴を所望の位置に着弾させるべく、処理対象物上の塗布目標位置を直接計測してインクの着弾位置を補正する方式が提案されている(特許文献1)。そこでは、フィルム上の次回塗布位置を撮像カメラによって撮像し、この撮像結果を画像処理手段で処理することにより、当初設定された塗布位置とのずれ量を補正する。そして、3次元的に移動可能なインクジェットヘッドを補正計算された次回塗布位置に移動させ、ヘッドに配したノズルから正しい位置に液滴を射出し、塗布品質の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−143390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような方式の場合、ヘッド位置調整に要する制御負担が大きく、調整に時間がかかると共に、調整中には印刷装置を稼働できない、という問題がある。すなわち、特許文献1のような装置では、固定されたフィルムに対して印刷処理を行い、処理が終了した後、フィルムを移動させて次の印刷を行う、という処理形態となる。このため、ロール状のフィルムを流しながら印刷を行うような、移動する処理対象物に対する印刷処理が行えないという問題もあった。また、インクジェットヘッドを3次元的に移動させるための機構も必要となり、装置が大型化し、装置コストも増大するという問題もあった。
【0006】
本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであり、本発明は、移動する処理対象物に対し、正確な位置に連続的な印刷処理が可能なインクジェットプリンタの制御システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェットプリンタ制御システムは、所定材料が吐出される印刷ヘッドを備えたインクジェットユニットを有し、印刷処理が施される印刷領域と該印刷領域と所定の位置関係にて配置されたアライメントマークとを有する被処理基材に対し、該被処理基材を搬送しつつ、前記印刷ヘッドを用いて前記所定材料の印刷処理を行うインクジェットプリンタの制御システムであって、前記アライメントマークを撮像する撮像手段と、前記撮像手段にて撮像された画像を取得し、該画像中の前記アライメントマークの位置をその正規の位置と比較し、前記画像中の前記アライメントマークの位置ズレ量を検出する位置ズレ量算出部と、前記位置ズレ量から、前記所定材料の搬送方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、搬送方向の前記位置ズレ量の算出に要する時間中における前記被処理基材の移動量を算出し、搬送方向の前記位置ズレ量と前記被処理基材の前記移動量に基づいて、前記印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出する補正量算出部と、前記位置ズレ量から、前記所定材料の幅方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから、幅方向の前記位置ズレ量に基づいて最適なパターンを選定する印刷パターン選択部と、前記補正量算出部にて算出された前記補正量と、前記印刷パターン選択部にて選択された前記印刷パターンに基づいて、前記位置ズレ量を補正しつつ印刷処理を行うよう印刷指示を行う印刷制御部と、前記印刷制御部の指示に沿って前記印刷ヘッドを作動させ、前記被処理基材に対し印刷処理を実行する吐出制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
前記インクジェットプリンタ制御システムにおいて、当該システムに、印刷処理実行中に、前記撮像手段にて次の前記アライメントマークの画像が得られた場合、現在進行中の印刷処理が終了するまで、当該画像に基づく印刷処理を保留する印刷処理保留部をさらに設けても良い。また、前記印刷処理保留部により、前記位置ズレ量算出部が次の前記アライメントマークの画像に基づいて前記位置ズレ量を検出し、該位置ズレ量に基づいて、前記補正量算出部にて前記補正量を算出すると共に、前記印刷パターン選択部にて前記印刷パターンを選択した後、現在進行中の印刷処理が終了するまで次の印刷処理を保留するようにしても良い。
【0009】
前記吐出制御部に、前記被処理基材の搬送量に応じて出力されるパルス信号をカウントするカウンタを設け、該カウンタが所定カウント値に達したとき、前記吐出制御部は、前記印刷ヘッドを作動させ印刷処理を実行するようにしても良い。この場合、前記補正量算出部は、前記補正量の算出が完了したとき、前記印刷制御部に対し補正量算出処理完了信号を送出し、前記カウンタは、前記補正量算出処理完了信号を受けた後、前記印刷指示にてリセットされ、その後、所定距離を前記補正量によって調整した距離分のパルス信号をカウントするまでリセット状態が維持され、前記吐出制御部は、前記カウンタのリセット状態が解除された後、前記所定カウント値にて前記印刷ヘッドを作動させるようにしても良い。この場合、前記カウンタを複数設け、互いに異なるカウント動作を並行して実行可能なようにしても良い。
【0010】
本発明のインクジェットプリンタ制御方法は、所定材料が吐出される印刷ヘッドを備えたインクジェットユニットを有し、印刷処理が施される印刷領域と該印刷領域と所定の位置関係にて配置されたアライメントマークとを有する被処理基材に対し、該被処理基材を搬送しつつ、前記印刷ヘッドを用いて前記所定材料の印刷処理を行うインクジェットプリンタの制御方法であって、前記アライメントマークを撮像する撮像手段にて撮像された画像を取得し、該画像中の前記アライメントマークの位置をその正規の位置と比較して前記画像中の前記アライメントマークの位置ズレ量を検出し、前記位置ズレ量から、前記所定材料の搬送方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、搬送方向の前記位置ズレ量の算出に要する時間中における前記被処理基材の移動量を算出し、搬送方向の前記位置ズレ量と前記被処理基材の前記移動量に基づいて、前記印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出し、前記位置ズレ量から、前記所定材料の幅方向に関する前記アライメントマークの位置ズレ量を算出すると共に、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから、幅方向の前記位置ズレ量に基づいて最適なパターンを選定し、前記補正量と、選択された前記印刷パターンに基づいて、前記位置ズレ量を補正しつつ印刷処理を行うよう印刷指示を行い、前記印刷指示に沿って前記印刷ヘッドを作動させ、前記被処理基材に対し印刷処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインクジェットプリンタ制御システムによれば、印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出するに際し、アライメントマークの搬送方向の位置ズレ量を算出する処理時間を考慮して当該補正量を算出する補正量算出部を設けたので、移動する処理対象物に対し、より正確な位置に印刷処理を施すことが可能となる。また、アライメントマークの幅方向の位置ズレ量に基づいて、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから最適なパターンを選定する印刷パターン選択部を設けたので、幅方向の位置ズレに対する調整処理が容易となり、処理負担が軽減され、処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0012】
本発明のインクジェットプリンタ制御方法によれば、印刷ヘッドの作動タイミングを調整する補正量を算出するに際し、アライメントマークの搬送方向の位置ズレ量を算出する処理時間を考慮して当該補正量を算出するので、移動する処理対象物に対し、より正確な位置に印刷処理を施すことが可能となる。また、アライメントマークの幅方向の位置ズレ量に基づいて、予め設定された幅方向の位置を異にする複数の印刷パターンから最適なパターンを選定するので、幅方向の位置ズレに対する調整処理が容易となり、処理負担が軽減され、処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の制御システムによって駆動制御されるインクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態であるインクジェットプリンタ制御システムのシステム構成を示す説明図である。
図3】本発明の制御システムにおける制御の流れを示すフローチャートである。
図4図3の制御の流れのうち搬送方向の制御処理を示すタイムチャートである。
図5】印刷領域が幅方向や搬送方向にずれている場合における、印刷ズレNGの状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である制御システムによって駆動制御されるインクジェットプリンタ装置1(以下、プリンタ装置1と略記する)の概要を示す説明図である。プリンタ装置1は、フィルム状の処理対象物に対して連続搬送印刷を行うラインプリンタであり、巻出しローラ2と巻取りローラ3を有している。巻出しローラ2には、処理対象物であるフィルム(被処理基材)4がロール状に巻装されている。フィルム4は両ローラ2,3の間に張設され、巻出しローラ2側から巻取りローラ3側に搬送される。巻出しローラ2と巻取りローラ3の間には印刷部5が設けられており、巻取りローラ3には、印刷処理後のフィルム4が巻き取られる。
【0015】
巻取りローラ3は、モータ6によって駆動される。巻取りローラ3には、同軸状にロータリーエンコーダ7が取り付けられている。ロータリーエンコーダ7からは、巻取りローラ3の回転に伴ってパルス信号が出力され、フィルム4の送り速度や送り量をリアルタイムで検出できるようになっている。印刷部5には、インクジェットユニット8が配されている。インクジェットユニット8内には、フィルム送給方向に沿って複数個(ここでは4個)の印刷ヘッド9(9a〜9d)が設けられている。印刷ヘッド9としては、例えば、ピエゾ式の既知のインクジェットヘッドが使用され、フィルム4に対し所定材料の印刷処理(印字や素材の塗布等)が行われる。当該プリンタ装置1では、コントローラ10にて制御される印刷ヘッド9により、フィルム4に所定材料を含むインクが塗布され、所定のパターンが印刷形成される。
【0016】
印刷部5の上流側(巻出しローラ2側)には、撮像カメラ11(11a,11b:撮像手段)が配されている。撮像カメラ11は、フィルム4の幅方向に2個並置されている。フィルム4には、アライメントマーク12(12a,12b)とパターン(印刷領域)13が予め形成されており(図5参照)、各撮像カメラ11a,11bはアライメントマーク12a,12bをそれぞれ撮像する。撮像カメラ11にはストロボ14が付属しており、ストロボ14を一定周期にて発光させることにより、所定時間間隔にて撮像画像を形成する。フィルム4の送り量と撮像周期は同期しており、フィルム4上にほぼ等間隔に並んだアライメントマーク12を撮像カメラ11によって順次撮影し、各アライメントマーク12の位置情報を取得する。そして、アライメントマーク12の位置情報に基づいて、フィルム4のパターン13上に所定の印刷処理が行われる。
【0017】
一方、パターン13上に印刷処理を行うに際し、実際のフィルム4ではパターン13が必ずしも等間隔には並んでいない。すなわち、図5に示すように、パターン13が幅方向や搬送方向にずれているため、単純な制御では所望の位置に印刷を行うことができず、印刷ズレNGが生じてしまう。そこで、本発明によるシステムでは、搬送方向と幅方向のそれぞれについて、撮像カメラ11にて取得したアライメントマーク12の位置情報に基づいて、印刷位置の調整を行う。また、印刷位置の調整に際しては、高速素子を用いても、僅かではあるがデータ処理時間が存在するため、当該システムでは、その処理時間を加味した形で印刷タイミングの補正量Cを決定する。図2は、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンタ制御システムのシステム構成を示す説明図である。
【0018】
図2に示すように、当該システムのコントローラ10は、インクジェットユニット8の駆動制御を行うメインPLC(programmable logic controller)21と、撮像カメラ11に接続された画像処理ユニット(画像処理部)22を備えている。コントローラ10には、制御用PC(パーソナルコンピュータ)23が接続されている。また、インクジェットユニット8内には、吐出制御用にインクジェット(IJ)PLC(印刷制御部)24と、タイミング制御基板(TCK)25、吐出制御基板(TSK:吐出制御部)26が設けられている。TCK25とTSK26は、IJ−PLC24の指示に基づいて印刷ヘッド9の動作を制御し、フィルム4上に所定の印刷処理を行う。
【0019】
本実施の形態では、印刷ヘッド9にはそれぞれ6個のノズル15が設けられており、各ノズル15にはTSK26(26−1〜26−6)が配されている。TSK26はTCK25に接続されており、各ノズル15はTCK25(25−1A,1B等)によって3個ずつが一組となって吐出制御される。TCK25は各印刷ヘッド9ごとに2個ずつ、計8個(25−1A,1B〜25−4A,4B等)設けられている。TCK25には第1カウンタ27、TSK26には第2カウンタ28がそれぞれ設けられており、各カウンタ27,28にはロータリーエンコーダ7からパルス信号が入力される。なお、TCK25,TSK26には、複数の並行した処理が可能なように、カウンタ27,28が複数個設けられている。
【0020】
本発明による制御システムでは、搬送方向と幅方向とでは位置ずれに対する調整方法を異にしている。ここではまず、各方向における位置調整方法について概要を述べ、その後に具体的な制御形態について説明する。
【0021】
[搬送方向の位置調整]
搬送方向の位置調整では、まず、アライメントマーク12の位置情報に基づき、正規のマーク位置からの位置ズレ量を検出し、このズレ量に基づいて印刷ヘッド9の作動タイミングを補正する。その際、プリンタ装置1では、フィルム4の移動量を考慮し、システム内におけるデータ処理時間分のフィルム移動量を算出し補正量Cが決定される。この場合、撮像カメラ11からノズル15までの距離や、アライメントマーク12からパターン13(印刷位置)までの距離は、装置設定や印刷対象フィルムごとに予め所定の値が設定され、これとロータリーエンコーダ7のピッチから、規定値となる印刷ヘッド9の作動タイミングが算出される。プリンタ装置1では、フィルム4の搬送速度が変わっても高精度に印刷処理が行えるよう、距離をエンコーダのパルス数に変換し、印刷ヘッド9の作動タイミングを算出している。そして、この規定値に対し、アライメントマーク12の位置ズレ量とデータ処理時間の補正を行った上で所望の印刷処理が実行される。
【0022】
さらに、本システムでは、連続搬送印刷を行う関係から、補正量Cが算出され当該印刷処理が完了する以前に、次のアライメントマーク12の位置情報が得られるケースが想定される。そこで、この場合は次の補正処理を行いつつその実行は保留し、先の印刷処理の完了を待って次の印刷処理を行う。このため、当該制御システムは、複数の独立した補正処理ができるようになっており、これにより、連続搬送印刷が遅滞なく実行可能となる。
【0023】
[幅方向の位置調整]
幅方向の位置調整は、幅方向に少しずつずらした複数の印刷パターンを予め用意しておき、位置ズレ量に応じてそれらを適宜選択する。すなわち、幅方向に関しては、求められる印刷精度(例えば、±0.5mm以内)に合わせて複数の印刷パターンを用意しておき、位置ズレ量に基づいてそれを選択する。プリンタ装置1では、印刷ヘッド9自体は固定された状態となっており、位置ズレ量に合わせてヘッドを移動させる構成とはなっていないが、このような印刷パターンの選択により、所望の印刷精度を確保することが可能となる。これにより、印刷ヘッドの細かな移動制御が不要となり、制御負担が軽減され、高速な補正処理が可能となると共に、機械的な構造も簡素化される。
【0024】
次に、本発明の制御システムによる搬送方向・幅方向の位置調整制御について具体的に説明する。図3は、当該システムにおける制御の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、当該システムでは、ストロボ14が一定周期にて発光しており(S1)、メインPLC21の指令により、所定時間間隔にて撮像カメラ11がフィルム4上を撮像(撮影)する(S2)。撮像カメラ11にて取得された画像情報は、画像処理ユニット22に送られ解析される(S3)。画像処理ユニット22では、取得した画像情報から、アライメントマーク12(及びパターン13)が所定のマーク位置からどれだけずれているか(位置ズレ量)を検出する(S4)。画像処理ユニット22内には位置ズレ量算出部31が設けられており、位置ズレ量算出部31によりアライメントマーク12の位置ズレ量が算出される。
【0025】
この位置ズレ量に基づいて、搬送方向の補正量C算出(S5)と、幅方向の印刷パターン選定(S6)が行われる。まず、搬送方向については、メインPLC21に設けられた補正量算出部32により、印刷ヘッド9の作動タイミングを調整するための補正量Cが算出される(S5)。前述のように、この補正量Cは、アライメントマーク12の位置ズレ量に加えて、S2からS6に至るまでのデータ処理時間が考慮されている。算出された補正量Cは、メインPLC21を介してIJ−PLC24に送られ、IJ−PLC24内のRAM33に書き込まれる。また、幅方向については、制御用PC23によって印刷パターンが選定される(S6)。PC23内には、印刷パターン選定部34と印刷パターン格納部35が設けられており、印刷パターン選定部34は、位置ズレ量に基づき、印刷パターン格納部35内のパターンデータを参照して幅方向の印刷パターンを選定する。
【0026】
搬送方向の補正量算出と幅方向の印刷パターン選定が終わった後、IJ−PLC24は、各TCK25に対し、算出した補正量と選定した印刷パターンに基づいて、位置ズレ量を補正しつつ印刷処理を行うよう印刷指示を行う(S7)。これを受けた各TCK25は、補正された印刷タイミングと印刷パターンに沿って印刷処理を行うよう、各TSK26に指令を出しノズル吐出動作を調整する(S8)。指令を受けた各TSK26は、それぞれに与えられた指示に基づいてノズル15を作動させ、印刷処理を実行する(S9)。これにより、フィルム4上には、現実のアライメントマーク12の位置に適合した印刷処理が実行される。
【0027】
図4は、図3の制御の流れのうち搬送方向の制御処理を示すタイムチャートである。図3,4に示すように、当該システムではまず、フィルム4上のアライメントマーク12を撮像し、その位置ズレ量を算出する(S1〜S4)。その際、メインPLC21は、(1)ストロボ14に発光信号を送出すると共に、(2)撮像カメラ11に対し一定周期にて撮像指示を行う(括弧付き数字は図2参照)。撮像指示を受けた撮像カメラ11は、フィルム4上を一定周期で撮像し、(3)その画像を画像処理ユニット22に送る。画像処理ユニット22では、送られてきた画像内にアライメントマーク12を認識したとき、それを有効な画像としてS3以下の処理を行う。有効な画像を得た場合、画像処理ユニット22は、位置ズレ量算出部31により、取得した画像のアライメントマーク12の位置と、正規のアライメントマーク位置とを比較し、アライメントマーク12の位置ズレ量(搬送方向・幅方向)を算出する。(4)算出された位置ズレ量は、画像処理ユニット22からメインPLC21に送られる。
【0028】
アライメントマーク12の位置ズレ量を取得したメインPLC21は、補正量算出部32により、位置ズレ量(搬送方向)に基づく位置的な補正と、データ処理に起因する時間的な補正の両方を考慮して、搬送方向に関する補正量Cを算出する(S5)。補正量Cを算出したメインPLC21は、(5)それをIJ−PLC24内のRAM33に書き込むと共に、(6)補正量算出部32は、IJ−PLC24と各TCK25に、アライメントマーク12を捕捉し補正量Cの算出が完了した旨の信号(補正量算出処理完了信号)ACQ(Acquisition)を送出する。また、(7)IJ−PLC24は、各TCK25に対し、当該印刷処理に関する補正量Cを通知し、TCK25内のRAM36に書き込む。
【0029】
一方、幅方向に関しては、ACQを受け取ったTCK25は、(8)IJ−PLC24に対し、位置ズレ量に合ったパターンを送給するようパターン要求を行う。ここで、(9)PC23は、IJ−PLC24にパターン要求が来ているか否か(パターン要求のフラグの有無)を所定周期にて確認している。そこで、TCK25からIJ−PLC24にパターン要求が為されると、それを確認したPC23は、(10)パターン要求の存在を認知した旨の信号をIJ−PLC24に返すと共に、(11)アライメントマーク12の位置ズレ量(幅方向)をメインPLC21からIJ−PLC24経由で取得する。このように、印刷中のPC23の通信対象をIJ−PLC24に一本化することにより、データ処理をより高速化することができる。そして、この位置ズレ量に基づいて、印刷パターン選定部34により、印刷パターン格納部35から最適な幅方向の印刷パターンを選定する(S6)。幅方向の印刷パターンを選定したPC23は、(12)それを各TSK26に送り設定する。
【0030】
ACQの通知(6)、各TCK25への補正量Cの書き込み(7)、各TSK26に対する幅方向の印刷パターンの設定(12)が完了した後、(13)IJ−PLC24は、各TCK25に対し印刷開始を求める「プリントON要求(印刷指示)」を送出する(S7)。これを受けた各TCK25は、(14)各TSK26に対し印刷指令(プリントON指令)を送出する(S8)。各TSK26は、プリントON指令を受けて印刷の準備を行い、準備が完了次第、(15)印刷準備完了信号CFDNを各TCK25に返す。プリントON指令から印刷準備完了(CFDN)までの時間は、TSK26の仕様によって異なる(例えば190ms)。
【0031】
ここで、TCK25は、次の(a)〜(f)の制御パラメータを有しており、印刷ヘッド9a〜9dによる印刷処理は、ACQやプリントON指令から、(a)〜(f)に対応するフィルム移動時間(パルス数)によって制御される。
(a)撮像カメラ11からノズル15までの距離
(b)アライメントマーク12からパターン13までの距離
(c)補正量C
(d)印刷開始位置
(カウンタリセット解除後から実際の印刷処理が開始されるまでの所定距離)
(e)印刷物の長さ
(f)印刷停止待ち時間
【0032】
図4に示すように、TCK25からTSK26に対する「プリントON指令」は、カウンタ27によるパルスカウントの下、ACQの通知から(a+b+c+e+f)の間行われる。また、プリントON指令に伴い、各TCK25は、(16)各TSK26内のカウンタ28をリセットする信号(C−RST)をTSK26に送る。カウンタリセット信号C−RSTにより、カウンタ28がリセットされ、それが解除されるまでその状態が維持される。カウンタ28は、ロータリーエンコーダ7から出力されるパルス信号をカウントしており、C−RST信号を受けた各TSK26では、パルス信号の入力に関わらずカウンタ28が0状態となる。
【0033】
その後、カウンタ28は、ACQの通知から(a+b+c−d)が経過するまでリセット状態が維持される。そして、フィルム4がACQから(a+b+c−d)分だけ移動すると、C−RST信号が停止し、リセット状態が解除される。リセットが解除されると、カウンタ28がカウントを開始し、印刷開始位置(d)分のパルス数をカウントすると(所定カウント値)、各TSK26から各印刷ヘッド9a〜9dに対し吐出指示が為され、所定のノズル15が順に作動し、印刷処理が実行される(S9)。印刷処理は、カウント開始後、所定パルスにて始まり、所定パルスにて終わる(例えば、1000パルスにて印刷開始、5000パルスにて終了)。その際、印刷ヘッド9a〜9dは、撮像から印刷までのフィルム4の移動距離と共に、補正量C、すなわち、アライメントマーク12の位置ズレ量と、補正量Cの算出処理時間中におけるフィルム移動量を考慮した値によって調整され印刷処理を実行する。
【0034】
このように、本システムにおいては、単なるアライメントマーク12の位置ズレ量による補正ではなく、システム内のデータ処理時間を考慮した補正処理が行われる。この場合、補正量の算出時間自体にも処理ごとにバラツキがあり、当該システムでは、そのバラツキも吸収される。従って、搬送方向における補正をより正確に行うことができ、印刷精度の向上を図ることが可能となる。また、幅方向に関しては、アライメントマーク12の位置ズレ量に基づいて、予め用意された印刷パターンを選択する形を採用する。このため、メインPLC21やPC23の処理負担が小さく、その分、データ処理時間を短縮することができ、印刷時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0035】
一方、プリンタ装置1ではフィルム4が搬送されているため、S1〜S9の処理を行っている間に、次の撮像が行われ、撮像カメラ11の画像情報が画像処理ユニット22に送られて来る場合がある。その際、現在S1〜S9の処理が実行されている場合、次の印刷動作を開始させることができず、新しい画像情報は捨てざるを得ない、という事態も想定され、処理効率が良くないという課題がある。
【0036】
そこで、本発明によるシステムでは、次の画像情報が得られた場合には、補正量の算出を行いACQ信号の送出を行った上で、現在の印刷処理が終了するまで次の印刷動作を待機させる。すなわち、次々と作成される画像情報を並行処理し、それぞれを印刷実行直前の状態にまで処理し、そこで待機させる。これにより、現在進行中の印刷処理が終了すると直ちに次の印刷処理動作を開始させることができ、タイムラグ無く連続的に印刷処理を行うことが可能となる。
【0037】
この場合、IJ−PLC24は、図4の次ACQに対し、補正量Cの書き込み(7)、幅方向の印刷パターンの設定(12)が完了した後、各TCK25に「プリントON要求」を送出するが(次プリントON要求)、TCK25はそこで処理を保留し、TSK26に「プリントON指令」を送出せず待機する。TCK25には、印刷処理保留部37が設けられており、印刷処理保留部37は、搬送方向の補正量C等のデータをRAM36に格納し、次の印刷処理動作を留保する。なお、その際、幅方向のパターンはPC23が記憶し、印刷処理実行の際にPC23からTSK26に送出する。
【0038】
TCK25は、「プリントON指令」の送出を待機しつつ、カウンタ27により、現在の印刷処理が終了するタイミング(ACQの通知→a+b+c+e+f)を計時する。なお、前述のように、TCK25,TSK26には、複数の並行した処理が可能なように、カウンタ27,28が複数個設けられている。そして、そこから、所定の次処理開始バッファ時間(例えば50ms)を待って、TSK26に「プリントON指令」を送出する。「プリントON指令」を受けたTSK26は、前述同様に印刷処理を行い、連続した印刷処理が遅滞なく実行される。
【0039】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態に記載した各種数値はあくまでも一例であり、本発明は前記数値には限定されない。また、前述のインクジェットプリンタ装置1は、印刷解像度を上げるため1つの画像を複数(ここでは4つ)の印刷ヘッドにて印刷するようになっているが、各ヘッドにて異なる画像を印刷する形とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のインクジェットプリンタ装置は、有機EL素子の製造のみならず、カラーテレビやパーソナルコンピュータのディスプレイ等に用いられるカラー液晶ディスプレイの構成部材であるカラーフィルタ等の製造にも使用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 インクジェットプリンタ装置
2 巻出しローラ
3 巻取りローラ
4 フィルム(被処理基材)
5 印刷部
6 モータ
7 ロータリーエンコーダ
8 インクジェットユニット
9 印刷ヘッド
9a〜9d 印刷ヘッド
10 コントローラ
11 撮像カメラ(撮像手段)
11a,11b 撮像カメラ
12 アライメントマーク
12a,12b アライメントマーク
13 パターン(印刷領域)
14 ストロボ
15 ノズル
21 メインPLC
22 画像処理ユニット(画像処理部)
23 制御用PC
24 インクジェット(IJ)PLC(印刷制御部)
25 タイミング制御基板(TCK)
26 吐出制御基板(TSK:吐出制御部)
27 第1カウンタ
28 第2カウンタ
31 位置ズレ量算出部
32 補正量算出部
33 RAM
34 印刷パターン選定部
35 印刷パターン格納部
36 RAM
37 印刷処理保留部
C−RST カウンタリセット信号
ACQ 補正量算出処理完了信号
CFDN 印刷準備完了信号
図1
図2
図3
図4
図5