特許第6651370号(P6651370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651370
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】低温液化ガス用BOG加温システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20200210BHJP
【FI】
   F17C13/00 302A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-21035(P2016-21035)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-137978(P2017-137978A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】林 尚一郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 裕也
(72)【発明者】
【氏名】高田 大地
(72)【発明者】
【氏名】岩鶴 要
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃夫
(72)【発明者】
【氏名】島田 洋
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0089335(KR,A)
【文献】 特表2015−505941(JP,A)
【文献】 特表2014−514486(JP,A)
【文献】 特開2006−168711(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0115127(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0115097(KR,A)
【文献】 特開2004−330831(JP,A)
【文献】 特開2006−348752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
F17C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスのBOGを加温するBOG加温システムにおいて、
低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第1のBOG加温器と、
低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第2のBOG加温器と、
前記第1,第2のBOG加温器で加温されたBOGを受けて圧縮するBOG圧縮機と、
前記BOG圧縮機で発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を前記第1のBOG加温器に供給する加温冷却水供給系統と
温水を発生するボイラーと、
前記ボイラーで発生した温水を前記第2のBOG加温器に供給すると共に前記温水を前記第1のBOG加温器に第1の開閉弁手段を介して供給可能な温水供給系統と、
を備えたことを特徴とする低温液化ガス用BOG加温システム。
【請求項2】
前記第1のBOG加温器から排出された冷却水を受けて冷却可能な冷却手段と、
前記第1のBOG加温器から排出されて冷却手段を通過した冷却水を常温式の前記BOG圧縮機に供給可能な冷却水供給系統とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の低温液化ガス用BOG加温システム。
【請求項3】
低温液化ガスのBOGを加温するBOG加温システムにおいて、
低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第1,第2のBOG加温器と、
前記第1,第2のBOG加温器で加温されたBOGを受けて圧縮するBOG圧縮機と、
前記BOG圧縮機で発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を前記第1,第2のBOG加温器に供給する加温冷却水供給系統と、
温水を発生するボイラーと、
前記ボイラーで発生した温水で前記加温冷却水供給系統の温水を加温する熱交換器と、
前記ボイラーで発生した温水を加温冷却水供給系統に供給可能な第2の開閉弁手段とを備えたことを特徴とする低温液化ガス用BOG加温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温液化ガス用BOG加温システムに関し、特にBOG圧縮機で発生した圧縮熱を有効利用してBOGを加温するようにした低温液化ガス用BOG加温システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント等においては、LNGを貯蔵するLNGタンクからLNG供給系統により発電部にLNGを供給して発電を行っている。LNGタンクや配管系で発生するLNGのBOG(ボイル・オフ・ガス)は、BOG圧縮機により圧縮してLNG供給系統又はガス供給系統に戻すのが普通である。ところで、BOG圧縮機は圧縮熱で加熱されるため冷却する必要があり、通常は火力発電プラント等におけるプロセス冷却水等を用いてBOG圧縮機を冷却し、その圧縮熱を吸収した温水は排水として廃棄、若しくは冷却塔で温度降下させて再度使用する循環運転を行っていた。
していた。
【0003】
ここで、LNGのBOGは−160〜−140℃程度の低温であるため、BOG圧縮機としては、低温のBOGをそのまま圧縮する低温式BOG圧縮機と、低温のBOGを常温近くまで加温してから圧縮する常温式BOG圧縮機とが採用されている。
低温式BOG圧縮機は、低温用金属材料製のBOG圧縮機であるため、設備コストが高価になるという問題があり、通常は常温式BOG圧縮機が採用されている。
【0004】
この常温式BOG圧縮機を採用する場合、低温のBOGをボイラー等で発生させた温水を用いて加温するBOG加温器を設け、このBOG加温器で加温したBOGを常温式BOG圧縮機に供給する。
【0005】
特許文献1に記載の発電システムでは、LNGタンクから供給されるBOGを貯留するBOG圧縮機入口ドラム、BOG加温器、BOG圧縮機を直列状に配置し、BOG加温器ではプロセス冷却水等によりBOGを加温してBOG圧縮機へ供給する。但し、BOG圧縮機で発生した圧縮熱を有効利用する技術については何ら開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−64213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術では、BOG圧縮機で発生した圧縮熱を有効利用していなかったため、BOG加温システムの熱効率を高めることができず、省エネルギーの面で不利であった。
【0008】
本発明の目的は、BOG加温システムの熱効率を高めて省エネルギー運転を実現できる低温液化ガス用BOG加温システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の低温液化ガス用BOG加温システムは、低温液化ガスのBOGを加温するBOG加温システムにおいて、低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第1のBOG加温器と、低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第2のBOG加温器と、前記第1,第2のBOG加温器で加温されたBOGを受けて圧縮するBOG圧縮機と、前記BOG圧縮機で発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を前記第1のBOG加温器に供給する加温冷却水供給系統と、温水を発生するボイラーと、前記ボイラーで発生した温水を前記第2のBOG加温器に供給すると共に前記温水を前記第1のBOG加温器に第1の開閉弁手段を介して供給可能な温水供給系統とを備えたことを特徴としている。
【0010】
【0011】
請求項の低温液化ガス用BOG加温システムは、請求項の発明において、前記第1のBOG加温器から排出された冷却水を受けて冷却可能な冷却手段と、前記第1のBOG加温器から排出されて冷却手段を通過した冷却水を常温式の前記BOG圧縮機に供給可能な冷却水供給系統とを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項の低温液化ガス用BOG加温システムは、低温液化ガスのBOGを加温するBOG加温システムにおいて、低温液化ガスタンクで発生したBOGを受けて加温する第1,第2のBOG加温器と、前記第1,第2のBOG加温器で加温されたBOGを受けて圧縮するBOG圧縮機と、前記BOG圧縮機で発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を前記第1,第2のBOG加温器に供給する加温冷却水供給系統と、温水を発生するボイラーと、前記ボイラーで発生した温水で前記加温冷却水供給系統の温水を加温する熱交換器と、前記ボイラーで発生した温水を加温冷却水供給系統に供給可能な第2の開閉弁手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本願の発明は、課題解決手段の欄に記載の構成を有するため、次の効果を奏する。
請求項1の発明によれば、BOG圧縮機で発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を加温冷却水供給系統により第1のBOG加温器へ供給してBOGを加温するため、低温液化ガス用BOG加温システムの熱効率を高め、省エネルギーを図ることができる。
【0014】
そして、ボイラーで発生させた温水によりBOGを加温する第2のBOG加温器を設けたため、停電や故障によりBOG圧縮機が停止した場合やBOG圧縮機の起動時に加温冷却水が発生しない場合でも、第2のBOG加温器によりBOGを加温することができる。しかも、必要に応じて第1の開閉弁手段を開弁してボイラーで発生した温水を第1のBOG加温器へ供給することもできる。
【0015】
請求項の発明によれば、第1のBOG加温器から排出される冷却水の温度が高い場合には、その冷却水を冷却手段により冷却してから冷却水供給系統により常温式のBOG圧縮機へ供給することができる。
【0016】
請求項の発明によれば、通常は、BOG圧縮機の圧縮熱で加温された加温冷却水を、ボイラーで発生した温水により熱交換器を介して加温し、その温水冷却水を加温冷却水供給系統により第1,第2のBOG加温器へ供給してBOGを加温する。
停電や故障により両方又は片方のBOG圧縮機が停止した場合には、第2の開閉弁手段を開弁して、ボイラーで発生させた温水を加温冷却水供給系統に供給して、第1,第2のBOG加温器を稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係るLNG用BOG加温システムのブロック図である。
図2】実施例2に係るLNG用BOG加温システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
この実施例に係るLNG用BOG加温システム1について説明する。
図1はこのLNG用BOG加温システム1のブロック図であり、このLNG用BOG加温システム1は、LNGのBOG(ボイル・オフ・ガス)を加温するBOG加温システムである。このBOG加温システム1は、第1,第2のBOG加温器2A,2Bと、第1,第2の常温式BOG圧縮機3A,3Bと、第1,第2の冷却装置4A,4B(冷却手段)と、ボイラー5と、BOG供給系統6と、加温冷却水供給系統7と、冷却水供給系統8と、温水供給系統9と、その他バルブ類や温度センサ類等を備えている。
【0020】
第1,第2のBOG加温器2A,2Bは、シェル・アンド・チューブ型の熱交換器である。第1のBOG加温器2Aは、BOG供給系統6から供給されるBOG(例えば、約−145℃)を加温冷却水供給系統7から供給される加温冷却水でもって加温する。第2のBOG加温器2Bは、BOG供給系統6から供給されるBOGを温水供給系統9から供給される温水により加温する。
【0021】
第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bは、BOG供給系統6から図示外のBOG供給通路により供給されるBOGを圧縮して図示外のLNG供給通路へ供給する。
第1,第2の冷却装置4A,4Bは、冷却水供給系統8から供給される冷却水を冷却して第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bへ供給する。第1,第2の冷却装置4A,4Bは、冷却塔10a,10bと送風機11a,11bを夫々備えている。
【0022】
ボイラー5は、気化器等から戻って来た低温水を加温して温水供給系統9に供給する。温水供給系統9は、ボイラー5から供給される温水を第2のBOG加温器2Bヘ供給し、第2のBOG加温器2Bを経由した低温温水をポンプ5aで加圧してボイラー5へ還流させると共に、温水の一部を気化器等へ供給する。温水供給系統9のうちの第2のBOG加温器2Bへの入口側通路には温度調節用の流量調整弁12が介装されている。
【0023】
BOG供給系統6は、LNGタンクから供給されるLNGのBOGを第1,第2のBOG加温器2A,2Bに供給し、第1,第2のBOG加温器2A,2Bを経由して常温付近の温度(例えば、約10℃)に加温されたBOGを第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bへ供給する。BOG供給系統6のうちの第1,第2のBOG加温器2A,2Bへの入口側には流量調整弁13a,13bが介装されており、流量調整弁13aは通常は開弁しており、流量調整弁13bは通常は閉止状態又は絞り状態になっている。
【0024】
加温冷却水供給系統7は、第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bから供給される加温冷却水(例えば、約40℃)を第1のBOG加温器2Aへ供給するものであり、その上流通路は第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bに並列接続されており、この上流通路は第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bに夫々接続された第1,第2の分岐通路7a,7bを有する。加温冷却水供給系統7の下流通路は、第1,第2の分岐通路7a,7bの合流部から延びて第1のBOG加温器2Aに接続されている。この下流通路の途中部には開閉弁14が介装され、この下流通路の第1のBOG加温器2Aへの入口側には流量調整弁15(通常は全開)が介装されている。
【0025】
第1,第2の分岐通路7a,7b には切換弁16a,16bが夫々介装されており、切換弁16aは通常開弁しており、切換弁16bは通常閉止している。加温冷却水供給系統7の下流通路の途中部は第1の開閉弁手段19(通常は閉止状態)を介して温水供給系統9に接続されている。
【0026】
冷却水供給系統8は、第1のBOG加温器2Aから供給された低温の冷却水(例えば、約30℃)を第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bへ供給するものである。冷却水供給系統8の下流通路は、第1,第2の分岐通路8a,8bを有し、第1,第2の分岐通路8a,8bには開閉弁24a,24bが夫々介装されており、第1,第2の分岐通路8a,8bは第1,第2の冷却装置4A,4Bを夫々経由して第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bに夫々接続されている。第1,第2の分岐通路8a,8bには、ポンプ20a,20bと逆止弁21a,21bが夫々介装されている。
【0027】
第1,第2の分岐通路8a,8bは切換弁22a,22bを介して加温冷却水供給系統7の第1,第2の分岐通路7a,7bに夫々接続されている。尚、第1,第2の分岐通路8a,8bは開閉弁25が介装された接続通路26により接続されている。
冷却水供給系統8の上流通路の途中部には開閉弁27が介装され、この上流通路は第1のBOG加温器2Aに接続され、上流通路の途中部は開閉弁29(通常は閉止状態)を介して温水供給系統9に接続されている。
【0028】
次に、温度センサ等について説明する。
第1のBOG加温器2Aの出口側においてBOG供給系統6には温度センサ30が介装され、この温度センサ30で検出されるBOGの温度に基づいて、流量調整弁13a,13b,15が制御される。第2のBOG加温器2Bの出口側においてBOG供給系統6には温度センサ31が介装され、この温度センサ31で検出されるBOGの温度に基づいて、流量調整弁12が制御される。
【0029】
冷却水供給系統8の第1,第2分岐通路8a,8bには、冷却水の温度を検出する温度サンサ32a,32bが夫々介装され、これら温度センサ32a,32bで検出された冷却水の温度に基づいて、送風機11a,11bが夫々制御される。
【0030】
次に、上記のLNG用BOG加温システム1の作用、効果について説明する。
通常の運転状態においては、図1に示すように、第2のBOG圧縮機2Bはほぼ休止しており、第1のBOG圧縮機3Aから供給される加温冷却水が第1のBOG加温器2Aに供給されて第1のBOG加温器2AによりBOGが加温される。通常、第1のBOG加温器2Aの加温能力が十分である場合には、第2のBOG加温器2BではBOGが加温されないが、第1のBOG加温器2Aの加温能力が不足する場合には、流量調整弁13bが開弁されて第2のBOG加温器2Bも稼働する。尚、BOGの流量が多い場合には、必要に応じて、第1,第2のBOG加温器2A,2Bと、第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bを稼働させることも可能である。
【0031】
第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bが停止中の場合は、温水使用の第2のBOG加温器2BのみでBOGを加温する。この場合、流量調整弁13bが開弁され、流量調整弁13aが閉止状態に切換えられる。第1のBOG圧縮機3Aの起動時には、上記と同様に温水使用の第2のBOG加温器2BのみでBOGを加温する。第1のBOG圧縮機3Aの起動後は、第1のBOG加温器2AでBOGを加温し、第2のBOG加温器2Bは補助的に稼働させる。但し、第2のBOG加温器2Bで加温している場合でも、必要に応じて温水供給系統9から第1のBOG加温器2Aに温水を供給してそれを稼働させることができる。
【0032】
第1のBOG加温器2AのBOG出口温度を温度センサ30で検出し、このBOG出口温度が10℃(設定温度)となるように、流量調整弁13bを制御してBOG入口流量を制御する。この場合、10℃以上のときは流量調整弁13aを全開とし、流量調整弁13bを絞り動作させる。10℃以下のときは流量調整弁13aを全開とし、流量調整弁13bを開状態にする。尚、前記の設定温度の10℃は変更可能である。
【0033】
温水供給系統9においては、温度センサ31で検出されるBOG出口温度に基づいて、流量調整弁12を制御することで温水流量を制御する。但し、最低流量以上の温水は常に流れるようにすることが必要である。加温冷却水供給系統7に流す加温冷却水の流量は調整せずに、BOG圧縮機3A又は3Bの1台分の加温冷却水は常に流すものとする。
【0034】
第1のBOG圧縮機3Aのみが稼働し、第2のBOG圧縮機3Bが停止中の場合は、図示のように、切換弁16aが開弁し、切換弁16bが閉止状態であり、切換弁22aが閉止状態で、切換弁22bが開弁状態である。
この状態から、第1のBOG圧縮機3Aの故障や点検修理のため、第1のBOG圧縮機3Aを停止させ、第2のBOG圧縮機3Bを稼働させる場合は、切換弁16aを閉止し、切換弁16bを開弁状態にし、切換弁22aを開弁し、切換弁22bを閉止状態に切換える。
【0035】
ところで、LNGタンクのクールダウン時には、多量のBOGが発生するが、この多量のBOGを加温してから大気中へ放散させる必要がある場合がある。その場合、第1,第2のBOG加温器2A,2Bは、停電等により第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bが稼働してない状況においても、BOGを加温できることが必要である。その場合、開閉弁14を閉止し、開閉弁19,29を開弁し、流量調整弁13bを開弁することにより、温水供給系統9から第1のBOG加温器2Aへ温水を供給する。この場合、温度センサ30で検出されるBOGの温度に基づいて、流量調整弁15を制御することが可能である。
【0036】
また、例えば、1台のBOG圧縮機3A又は3Bが点検修理のため停止中のとき、何らかの原因でLNGタンク内のBOGのガス圧が上昇した場合には、BOG圧縮機の稼働台数とは関係なく、第2のBOG加温器2Bを稼働させてBOGを加温し、大気放散させる。この場合、必要に応じて、温水供給系統9から第1のBOG加温器2Aへ温水を供給して第1のBOG加温器2Aを稼働させることができる。この場合、温度センサ30で検出されるBOGの温度に基づいて、流量調整弁15を制御することが可能である。
【0037】
以上説明したように、第1の常温式BOG圧縮機3Aで発生する圧縮熱で加温された加温冷却水を加温冷却水供給系統7により第1のBOG加温器2Aへ供給してBOGを加温するため、LNG用BOG加温システム1の熱効率を高め、省エネルギーを図ることができる。
【0038】
ボイラー5で発生させた温水によりBOGを加温する第2のBOG加温器2Bを設けたため、停電や故障や点検修理により常温式BOG圧縮機3A,3Bが停止した場合や常温式BOG圧縮機3A,3Bの起動時に加温冷却水が発生しない場合でも、第2のBOG加温器3BによりBOGを加温することができる。しかも、必要に応じてボイラー5で発生した温水を第1のBOG加温器2Aへ供給することもできる。
【0039】
第1のBOG加温器2Aから排出される冷却水の温度が高い場合には、その冷却水を冷却手段4A,4Bにより冷却してから冷却水供給系統8により常温式BOG圧縮機3A,3Bへ供給することができる。但し、第1のBOG加温器2Aから排出される冷却水の温度が高くない場合には、冷却手段4A,4Bを作動させずに冷却水を通過させ、冷却水供給系統8により常温式BOG圧縮機3A,3Bへ供給することができる。
【0040】
前記常温式BOG圧縮機と前記冷却手段とが2組設けられ、前記冷却水供給系統8が2組の冷却手段4A,4Bと第1,第2の常温式BOG圧縮機3A,3Bに並列接続されているため、片方の常温式BOG圧縮機4A又は4Bが稼働できない場合にも、他方の常温式BOG圧縮機4A又は4Bが稼働するため、加温冷却水を第1のBOG加温器2Aへ供給することができる。
【実施例2】
【0041】
次に、実施例2に係るLNG用BOG加温システム1Aについて説明する。
図2は、このLNG用BOG加温システム1Aのブロック図であり、図1のLNG用BOG加温システム1の構成要素と同じ構成要素に同一又は類似の符号を付して説明を省略し、異なる構成について説明する。
【0042】
このBOG加温システム1Aにおいては、第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bからの加温冷却水を第1,第2のBOG加温器2A,2Bに供給し、ボイラー5で発生させた温水を、加温冷却水供給系統7Aに設けた熱交換器41に供給して、温水により加温冷却水を加温する。
【0043】
加温冷却水供給系統7Aの下流通路の途中部に、流量調整弁44と熱交換器41とが並列に介装され、ボイラー5で発生させた温水を循環させる温水循環系統40であって前記熱交換器41を経由する温水循環系統40が設けられている。熱交換器41よりも上流側で温水循環系統41には流量調整弁42が介装されている。
【0044】
加温冷却水供給系統7Aの下流通路に、第1,第2のBOG加温器2A,2Bに接続される第1,第2の加温冷却水分岐通路7c,7dが設けられ、第2の加温冷却水分岐通路7dの途中部が開閉弁19Aを介して温水循環系統40のボイラー出口側に接続されている。冷却水供給系統8の上流通路には、第1,第2のBOG加温器2A,2Bから延びて開閉弁27の上流側で合流する第1,第2の分岐上流通路8c,8d が設けられている。 第2の分岐上流通路8dの途中部が開閉弁29Aを介して温水循環系統40のポンプ5aよりも上流の上流部に接続されている。
【0045】
図1のBOG加温システム1における、第1,第2のBOG加温器2A,2BのBOG入口側の流量調整弁13a,13bが省略され、また、第1,第2の分岐通路7a,7bの流量調整弁16a,16bも省略されている。
【0046】
加温冷却水供給系統7の下流通路を流れる加温冷却水の温度を検出する温度センサ43が設けられ、この温度センサ43で検出した加温冷却水の温度に基づいて流量調整弁44が調整される。
【0047】
次に、上記のBOG加温システム1Aの作用、効果について説明する。
通常は、第1のBOG圧縮機3Aからの加温冷却水を第1,第2のBOG加温器2A,2Bへ供給してBOGを加温する。また、通常は、流量調整弁42が閉止又は絞り状態にされるが、加温冷却水の温度が低い場合には、流量調整弁44を絞り、流量調整弁42を開いて温水による加温の比率を大きくする。
【0048】
第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bが稼働できない場合、開閉弁14を閉止し、開閉弁19A,29Aを開弁状態に切換え、温水循環系統40から第1,第2のBOG加温器2A,2Bへ温水を供給して温水によりBOGを加温する。
【0049】
このように、温水のみでBOGを加温することができるため、LNGタンクのクールダウン時、第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bの起動時、停電や故障や点検修理による第1,第2のBOG圧縮機3A,3Bの停止時にも、BOGの加温を行うことができる。
その他、図1のBOG加温システム1と同様の作用、効果を奏する。
【0050】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
(1)BOG加温器の台数は2組に限らず、3組以上設けてもよい。また、BOG圧縮機の台数も2組に限らず、3組以上設けてもよい。
(2)前記実施例は、LNG用BOG加温システムについて説明したが、本発明はLPG等のその他の低温液化ガス用BOG加温システムにも適用することができる。
(3)本発明は前記実施例に限定されるものではなく、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0051】
1,1A LNG用BOG加温システム
2A,2B 第1,第2のBOG加温器
3A,3B 第1,第2のBOG圧縮機
4A,4B 冷却手段
5 ボイラー
7 加温冷却水供給系統
8 冷却水供給系統
19 第1の開閉弁手段
19A 第2の開閉弁手段
41 熱交換器
図1
図2