特許第6651390号(P6651390)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6651390トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651390
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20200210BHJP
   H01L 29/47 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   H01L29/86 301F
   H01L29/48 F
   H01L29/48 D
   H01L29/86 301D
   H01L29/91 K
   H01L29/91 B
   H01L29/91 D
   H01L29/91 F
   H01L29/91 L
   H01L29/86 301P
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-45751(P2016-45751)
(22)【出願日】2016年3月9日
(65)【公開番号】特開2016-167598(P2016-167598A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年11月29日
(31)【優先権主張番号】10 2015 204 138.7
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニン クゥ
(72)【発明者】
【氏名】アルフレート ゲアラッハ
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/077861(WO,A1)
【文献】 特表2013−545295(JP,A)
【文献】 特表2008−519447(JP,A)
【文献】 特開2006−186134(JP,A)
【文献】 特開2002−050773(JP,A)
【文献】 特表2008−521226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 21/329
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置(10)であって、
前記半導体装置(10)は、第1導電型の半導体ブロック(12)を有し、
前記半導体ブロック(12)は、金属層(14)によって被覆された第1の面(16)と、少なくとも部分的に、金属及び/又は第2導電型の半導体材料によって充填された、前記第1の面(16)に延在する少なくとも1つのトレンチ(18)とを有し、
前記トレンチ(18)は、少なくとも1つの壁部(20)を有し、
前記壁部(20)は、少なくとも部分的に酸化物層(22)を有する、
半導体装置(10)において、
前記金属層(14)によって被覆された前記第1の面(16)の、前記トレンチ(18)に隣接して位置する少なくとも1つの領域(24)は、前記金属層(14)と前記半導体ブロック(12)との間に位置する第2導電型の第1半導体材料からなる層(26)を備えており、
前記少なくとも1つのトレンチ(18)の底部(38)の少なくとも1つの領域(36)は、第2導電型の前記半導体材料である第2半導体材料からなる層(40)によって充填されており、
前記金属層(14)は、前記酸化物層(22)、前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる前記層(26)、及び、前記第2導電型の前記第2半導体材料からなる層(40)によって、前記半導体ブロック(12)から離隔されている、
ことを特徴とする半導体装置(10)。
【請求項2】
前記金属層(14)によって被覆された前記第1の面(16)の反対側に位置する、前記半導体ブロック(12)の第2の面(30)は、導電性材料からなるコンタクト層(28)によって被覆されており、
前記コンタクト層(28)に隣接する、前記半導体ブロック(12)の部分ブロック(34)は、前記第1導電型の前記半導体ブロック(12)のその他の部分よりも高濃度にドーピングされている
請求項に記載の半導体装置(10)。
【請求項3】
前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる層(26)は、10nm乃至500nmの層厚(27)を有する
請求項1又は2に記載の半導体装置(10)。
【請求項4】
前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる層(26)のドーピング濃度は、1016原子/cm乃至1017原子/cmである
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのトレンチ(18)の深さ(42)は、1μm乃至4μmである
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのトレンチ(18)の深さ(42)は、2μmである
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置(10)。
【請求項7】
前記半導体ブロック(12)は、少なくとも2つのトレンチ(18)を有する
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置(10)。
【請求項8】
各2つのトレンチ(18)の間の内法間隔(46)に対する、前記トレンチ(18)の深さ(42)の比は、2以上である
請求項に記載の半導体装置(10)。
【請求項9】
前記第1導電型は、n型であり、前記第2導電型は、p型であり、
又は、
前記第1導電型は、p型であり、前記第2導電型は、n型である
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体装置(10)。
【請求項10】
トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置(10)を製造する方法であって、
・高濃度にドーピングされた部分ブロック(34)を含む、第1導電型の半導体ブロック(12)を形成するステップと、
・前記部分ブロック(34)とは反対側の第1の面(16)において、エッチングによって前記半導体ブロック(12)に少なくとも1つのトレンチ(18)を形成するステップと、
・前記トレンチ(18)の少なくとも1つの壁部(20)に酸化物層(22)を形成するステップと、
・前記トレンチ(18)の底部(38)の領域(36)において、前記酸化物層(22)の少なくとも一部を除去するステップと、
・前記底部(38)の前記領域(36)において第2導電型の半導体材料を充填して、前記底部(38)の前記領域(36)に前記第2導電型の前記半導体材料からなる層(40)を形成するステップと、
・前記少なくとも1つのトレンチ(18)の残りの容積の少なくとも一部を、金属によって又は第2導電型の多結晶半導体材料によって充填して、前記金属からなる層(14a)又は前記第2導電型の前記多結晶半導体材料からなる層(41)を形成するステップと、
・前記半導体ブロック(12)の前記第1の面(16)において、前記第1導電型の前記半導体ブロック(12)の上に前記第2導電型の第1半導体材料からなる層(26)を形成するステップと、
・前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる前記層(26)の上に、及び、前記金属からなる層(14a)の上に又は前記トレンチ(18)の前記残りの容積の前記少なくとも一部を充填した前記第2導電型の前記多結晶半導体材料からなる前記層(41)の上に、金属層(14)を形成するステップと、
・前記半導体ブロック(12)の前記第1の面(16)とは反対側の第2の面(30)において、前記部分ブロック(34)上に、導電性材料からなるコンタクト層(28)を形成するステップと、
を含み、
前記金属層(14)は、前記酸化物層(22)、前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる前記層(26)、及び、前記第2導電型の前記半導体材料からなる層(40)によって、前記半導体ブロック(12)から離隔されるように形成されている、
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記導電性材料からなるコンタクト層(28)は、金属層である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
・前記半導体装置(10)のボンディング、パッケージング及びコンタクト形成のうちの少なくとも1つを含む追加的な製造工程を実施するステップをさらに含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の半導体装置に関し、即ち、トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置であって、前記半導体装置は、第1導電型の半導体ブロックを有し、前記半導体ブロックは、金属層によって被覆された第1の面と、少なくとも部分的に金属及び/又は第2導電型の半導体材料によって充填された、前記第1の面に延在する少なくとも1つのトレンチとを有し、前記トレンチは、少なくとも1つの壁部を有し、前記壁部は、少なくとも部分的に酸化物層を有する、半導体装置に関する。本発明はさらに、独立請求項に記載の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
その種の半導体装置は、独国特許出願公開第102004053760号明細書からトレンチMOSバリアショットキーダイオードの形態で公知であり、このような半導体装置は、金属層によって被覆された第1の面と、ドーピングされた多結晶シリコンによって充填された、前記第1の面に延在する少なくとも1つのトレンチとを備える第1導電型の半導体ブロックを有する。さらには、このトレンチの壁は、酸化物層を備える少なくとも1つの壁部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004053760号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショットキーダイオードは通常の場合、金属−半導体接触、又は、ケイ化物−半導体接触を有する。ショットキーダイオードの場合には、順方向動作時に高注入は行われず、従って、スイッチオフ時に少数キャリアの除去は行われない。ショットキーダイオードでは、スイッチングが比較的高速に行われ、損失が少ない。ここで、高注入という用語は、注入される少数キャリアの密度が多数キャリアの規模に達する状態を意味する。
【0005】
もっとも、ショットキーダイオードは、比較的大きな漏れ電流を示し、特に比較的高温時には、いわゆる「障壁低下効果(Barrier-Lowering-Effect )」に起因して強い電圧依存性を有している。さらには一般的に、逆方向電圧が高い場合には、低濃度にドーピングされた厚い半導体層が必要となり、このことにより、大電流では比較的高い順方向電圧が生じる。従って、シリコン技術におけるパワー・ショットキーダイオードは、スイッチング特性が良好であるにもかかわらず、約100Vを上回る逆方向電圧に対しては適しておらず又はほとんど適していない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明に係る半導体装置は、請求項1の特徴部分に記載されている構成によって、冒頭に述べたような従来技術とは異なっており、従って、前記金属層によって被覆された前記第1の面の、前記トレンチに隣接して位置する少なくとも1つの領域が、前記金属層と前記半導体ブロックとの間に位置する、第2導電型の第1半導体材料からなる層を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記半導体ブロックは、少なくとも2つのトレンチを有する。
【0008】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記少なくとも1つのトレンチの底部の少なくとも1つの領域は、第2導電型の半導体材料である第2半導体材料によって充填されている。
【0009】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記少なくとも1つのトレンチの底部の領域は、イオン注入によって前記第2導電型の第2半導体材料に変換されている。
【0010】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記金属層によって被覆された前記第1の面の反対側に位置する、前記半導体ブロックの第2の面は、導電性のコンタクト材料によって被覆されており、前記コンタクト材料に隣接する、前記半導体ブロックの部分ブロックは、前記第1導電型の前記半導体ブロックのその他の部分よりも高濃度にドーピングされている。
【0011】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記金属層は、それぞれの部分に応じて、前記酸化物層、又は、前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる前記層、又は、前記第2導電型の前記第2半導体材料のいずれかによって、前記半導体ブロックから離隔されている。
【0012】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記第2導電型の前記第1半導体材料は、約10nm乃至約500nmの層厚を有する。
【0013】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記第2導電型の前記第1半導体材料のドーピング濃度は、約1016原子/cm乃至約1017原子/cmである。
【0014】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記少なくとも1つのトレンチの深さは、1μm乃至4μmであり、好ましくは約2μmである。
【0015】
本発明に係る装置の好ましい態様では、各2つのトレンチの間の内法間隔に対する、前記トレンチの深さの比は、約2以上である。
【0016】
本発明に係る装置の好ましい態様では、前記第1導電型は、n型ドーピングされた半導体材料に対応し、前記第2導電型は、p型ドーピングされた半導体材料に対応する、又は、前記第1導電型は、p型ドーピングされた半導体材料に対応し、前記第2導電型は、n型ドーピングされた半導体材料に対応する。
【0017】
本発明に係る装置の好ましい態様では、トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置を製造する方法であって、
・比較的高濃度にドーピングされた部分ブロックを含む、第1導電型の半導体ブロックを形成するステップと、
・エッチングによって前記半導体ブロックに少なくとも1つのトレンチを形成するステップと、
・前記トレンチの少なくとも1つの壁部に酸化物層を形成するステップと、
・好ましくは前記トレンチの底部の領域において、前記酸化物層の少なくとも一部を除去するステップと、
・好ましくは前記底部の前記領域において、前記第1導電型の導電率を高めるドーパント材料を前記半導体ブロックに使用及びドーピングして、前記第1導電型の半導体ブロックを形成するステップと、
・前記少なくとも1つのトレンチの残りの容積の少なくとも一部を、金属によって又は前記第2導電型の多結晶半導体材料によって充填するステップと、
・前記導電性のコンタクト材料の反対側に位置する、前記半導体ブロックの一方の側において、前記第1導電型の前記半導体ブロックの上に、第2導電型の半導体材料からなる層を形成するステップと、
・前記第2導電型の前記半導体材料からなる前記層の上に、及び、前記金属の上に又は前記トレンチの前記残りの容積の少なくとも一部を充填する多結晶半導体材料の上に、金属層を形成するステップと、
・前記半導体ブロックの前記部分ブロックに、導電性のコンタクト材料、特に金属層を形成するステップと、
・前記半導体装置のボンディング及び/又はパッケージング及び/又はコンタクトのような追加的な製造工程を実施するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る半導体装置は、有利には高電圧用途のために使用することができ、本半導体装置は、比較的低い順方向電圧と、比較的小さな漏れ電流又は逆方向電流と、比較的小さなスイッチング損失とを同時に有する。本半導体装置はさらに、動作時に比較的高いロバスト性を有する。
【0019】
上述した酸化物層によって、追加的な障壁−酸化物−構造(トレンチMOS構造)が実現される。本発明によればさらに、p型ドーピングされたトレンチ充填物の代わりに、金属層を使用することができる。この金属層は、例えばトレンチの深さ方向に上下に重なり合って配置された−好ましくはそれぞれ異なる−2つ又は3つ以上の金属層を含むことも可能である。
【0020】
本発明に係る半導体装置は、本明細書では「TMBS−PN−P」とも呼ばれる。「TMBS」は、酸化物層を使用して形成されたトレンチMOSバリアショットキーダイオード(Trench-MOS-Schottky-Barrier-Schottky-Diode)を意味する。さらに「PN」は、TMBSに対して電気的に並列に作用するPNダイオードを意味する。そして「P」は、金属層と半導体ブロックとの間に位置する、本発明による第2導電型の第1半導体材料からなる層を意味する。この場合のPは、p型の導電型からなる層を意味する。相補的に構造化される態様の場合には、これが「N」層となる。
【0021】
以下ではまず、PNダイオードと併せて、トレンチMOSバリアショットキーダイオードの特性について説明する。即ち、本発明による第2導電型の半導体材料からなる層については差し当たり考慮しないこととする。しかしながら、この説明は、上に既に説明したように、部分的に格段に良好な電気的特性を有する本発明に係る半導体装置にも実質的に転用可能である。
【0022】
電気的な観点から、本発明に係る半導体装置は、MOS構造(金属層と酸化物層と半導体ブロックとに相当)と、ショットキーダイオード(それぞれの導電型に応じて、例えばアノードとして機能する金属層と、カソードとして機能する半導体ブロックとの間にあるショットキー障壁)と、PNダイオード(さらに後で述べる)との組み合わせたものである。金属層は、ショットキーダイオードのための電極として機能すると同時に、PNダイオードのための電極としても機能する。この場合には電極は、例えばそれぞれアノードである。(例えばエピタキシャルに形成された層として、即ち、例えばいわゆる「n型エピタキシャル層」として構成された)半導体ブロックのドーピングは、順方向における大電流による動作時に、当該層においてキャリアの高注入が実施されるように選択されている。
【0023】
TMBS−PNの場合、順方向電流は、まずショットキーダイオードのみを通って流れる。電流が増加するにつれて、順方向電流は、PN接合部も通ってますます流れるようになる。トレンチMOSショットキー構造をPNダイオードに並列接続すると、順方向動作時に、低濃度にドーピングされた領域のキャリア濃度は、ショットキーダイオードのキャリア濃度よりも格段に高くなるが、PINダイオードのキャリア濃度よりも格段に低くなる。こうすることによって、順方向電圧とスイッチング損失との間の最適化が実現される。
【0024】
TMBS−PNはさらに、PNダイオードによって実現されるいわゆる「クランプ機能」によって、高いロバスト性を提供する。PNダイオードの降伏電圧は、ショットキーダイオードの降伏電圧よりも低くなるように且つMOS構造の降伏電圧よりも低くなるように構成されることが好ましい。本発明に係る半導体装置は、比較的大電流によって降伏時に動作することができるように構成されることが好ましい。
【0025】
TMBS−PNはさらに、半導体ブロック(「n型エピタキシャル層」)と、トレンチの底部にある第2導電型の第2半導体材料との間に、いわゆる「電荷補償」が生じ得ないように構成され、さらには、トレンチの底部において電気的な「降伏」が生じるように構成されることが好ましい。そうすると、降伏動作時に電流はPN接合部のみを通って流れ、MOS構造の逆転層を通っては流れなくなる。
【0026】
従って、TMBS−PNは、PNダイオードと同様のロバスト性を有する。さらにはTMBS−PNにおいて、いわゆる「ホット」キャリアの注入を懸念しなくてよくなる。なぜなら、降伏時に高電界強度はMOS構造の近傍には存在しないからである。従って、TMBS−PNは、特に自動車の発電機システムにおいて使用するためのツェナーダイオードとして適している。
【0027】
他方で、トレンチ構造がショットキー効果を遮蔽するにもかかわらず、TMBS−PNにおいてショットキーダイオードの特性は部分的に残存する。さらには、特に高温時における漏れ電流又は逆方向電流は、PINダイオードよりも格段に大きい(「PIN」は、p型ドーピング領域とn型ドーピング領域との間に配置された、ドーピングされていない又は僅かにしかドーピングされていない真性領域を有するPNダイオードを意味する)。
【0028】
以下では、PNダイオードと、本明細書では「TMBS−PN−P」と称される、本発明による第2導電型の第1半導体材料からなる層と併せて、トレンチMOSバリアショットキーダイオードの特性について説明する。
【0029】
本発明によれば、シリコントレンチ技術による(又は別の半導体材料からなる)高遮断性の新しいパワーダイオードが実現される。即ち、順方向電圧が比較的低い場合におけるスイッチング損失が、従来のPINパワーダイオードに比べて格段に小さく、且つ、順方向電圧及びスイッチング損失がほぼ同じ場合における逆方向電流がTMBS−PNに比べて格段に小さい、TMBS−PN−Pが実現される。
【0030】
さらには、金属層と半導体層との間に位置する、第2導電型の第1半導体材料からなる層(本明細書では「p型薄層」とも呼ばれる)によれば、ショットキーコンタクトの真下においてショットキーコンタクトの追加的な遮蔽が可能となる。こうすることによって、順方向電圧及び/又はスイッチング損失を増加させることなく、特に高温時における逆方向電流を格段に低減することができる。
【0031】
本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に示されている。有利な実施形態はさらに以下の説明及び図面に示されており、これらの特徴的構成は、明示的に言及せずとも、単独においても種々異なる組み合わせにおいても有利であるとすることができる。
【0032】
本発明に係る半導体装置は、上に既に説明したように、少なくとも2つのトレンチを備える半導体ブロックを有することが好ましい。特に少なくとも2つのトレンチを互いに比較的緊密に隣接して配置した場合には、半導体装置の特性をさらに改善させる有利な効果を生じさせることができる。
【0033】
少なくとも2つのトレンチは、好ましくはストリップ形状、即ち、延在形状に形成されている。少なくとも2つのトレンチを、実質的に平行に互いに隣接して配置して、互いの間隔を比較的小さくすることも好ましい。これに代えてトレンチを、集中的な形状(「アイランド形状」)、例えば円形又は六角形に構成してもよい。
【0034】
少なくとも2つのトレンチを隣接して配置することの利点は、逆方向電圧の低減にある。逆方向において、MOS構造においても、ショットキーダイオードにおいても、PNダイオードにおいても、空間電荷領域が形成される。逆方向電圧が増加するにつれて空間電荷領域は拡大し、TMBS−PNの降伏電圧よりも小さい電圧の場合に、隣接し合うトレンチの間の領域の中央にて境界を接する。これによって高い逆方向電流の原因であるショットキー効果が遮蔽され、逆方向電流が低減される。
【0035】
この遮蔽効果は、構造パラメータに大きく依存している。これらの構造パラメータは特に、各トレンチの、酸化物層によって被覆されている壁部の深さと、各トレンチ間の内法間隔と、各トレンチの幅又はPNダイオードを特徴付ける体積の幅と、PNダイオードを特徴付ける体積の深さ寸法(例えばp型ドーピングされた半導体材料又は「p型ウェル」又は多結晶半導体材料を備えるトレンチ部分の深さ寸法)と、酸化物層の層厚とに関連する。各トレンチ間の間隔よりもトレンチの深さが格段に大きい場合には、各トレンチ間のいわゆる「メサ領域」における空間電荷領域の広がりは、ほぼ一次元である。従って、ショットキー効果に対する遮断効果は、TMBS−PNの場合には、拡散されたp型ウェルを有する従来のショットキーダイオード(JBS、英語の「junction barrier schottky diode」)と比較して格段に効率的である。
【0036】
半導体装置の1つの実施形態では、前記少なくとも1つのトレンチの底部の少なくとも1つの領域は、第2導電型の半導体材料である第2半導体材料によって充填されている。こうすることによって、既に上に説明した利点を有する、半導体装置に集積されたPNダイオードが実現される。
【0037】
これに加えて又はこれに代えて、前記少なくとも1つのトレンチの底部の領域を、イオン注入によって前記第2導電型の第2半導体材料に変換させることができる。こうすることによっても、PN接合部又は上述したPNダイオードを実現することができる。
【0038】
さらには、前記金属層によって被覆された前記第1の面の反対側に位置する、前記半導体ブロックの第2の面を、導電性のコンタクト材料によって被覆することができ、前記コンタクト材料に隣接する、前記半導体ブロックの部分ブロックを、前記第1導電型の残りの前記半導体ブロックよりも高濃度にドーピングすることができる。この部分ブロックは特に、従来技術から同様に公知のいわゆる「n基板」(半導体装置のドーピングが逆の場合には「p基板」)である。この場合には、既に上で説明した金属層は、第1電極(アノード電極)として使用することができ、(好ましくは同様に金属又は金属層として構成された)上述のコンタクト材料は、第2電極(カソード電極)として使用することができる。こうすることによって全体として、本発明に係る半導体装置のために特に適した構造が説明される。
【0039】
前記金属層が、それぞれの部分に応じて、前記酸化物層、又は、前記第2導電型の前記第1半導体材料からなる前記層、又は、前記第2導電型の前記第2半導体材料のいずれかによって、前記第1導電型の前記半導体ブロックから離隔されるように、前記半導体装置を構成することが好ましい。このことは特に、金属層と半導体ブロックとが互いに直接隣接していないということを意味しており、このことから本発明に係る半導体装置にとって有利な特性が生じる。
【0040】
さらには、前記第2導電型の前記第1半導体材料は、10nm乃至500nmの範囲の層厚を有することができる。さらには、前記第2導電型の前記第1半導体材料のドーピング濃度は、1016原子/cm乃至1017原子/cmの範囲とすることができる。特に上述したドーピング濃度を有するこのような薄層は、本発明に係るダイオードの比較的小さい逆方向電流と、比較的低い順方向電圧と、比較的小さなスイッチング損失とを実現するために特に適している。
【0041】
半導体装置のさらなる実施形態では、前記少なくとも1つのトレンチの深さは、少なくとも1μm乃至4μm、好ましくは約2μm、特に1.5μm乃至2.5μmである。上記の寸法によって、例えば本発明に係るダイオードを自動車内の整流装置に使用するために特に適した寸法が示される。しかしながら、その適用は、典型的な搭載電圧に制限されているわけではない。例えば上述した寸法によって、本発明に係るダイオードの約600Vの逆方向電圧を実現することができる。半導体装置のさらなる有利な寸法は、それぞれ2つのトレンチの間の内法間隔に対する、前記トレンチの深さの比が、約2以上、特に1.5乃至2.5である場合にもたらされる。
【0042】
本発明に係る半導体装置の第1変形例では、前記第1導電型は、n型ドーピングされた半導体材料が有するようなn型導電性を有しており、前記第2導電型は、p型ドーピングされた半導体材料が有するようなp型導電性を有している。第2変形例では、前記第1導電型がp型導電性であり、前記第2導電型がn型導電性である。従って、アノードの機能とカソードの機能とが入れ替わっている。従って、半導体装置は、原則的に、半導体材料の相互に相補的な2つの態様のために適している。
【0043】
本発明はさらに、トレンチMOSバリアショットキーダイオード(TMBS)を備える半導体装置を製造する方法であって、
・例えばエピタキシャル方法と、これに並行して又はこれに後続して実施されるドーピングとによって、比較的高濃度にドーピングされている第1導電型の第1半導体ブロック(「部分ブロック」)を形成するステップと、
・例えばエピタキシャル方法によって、前記第1半導体ブロックと同一の導電型を有するが、前記第1半導体ブロックよりもドーピング濃度が低い、前記第1半導体ブロックに隣接する第2半導体ブロックを形成するステップと、
又はこれに代えて、
まず、比較的低濃度のドーピングを有する第2半導体ブロックを形成し、次いで、前記第2半導体ブロックの部分ブロックをさらにより高濃度に追加ドーピングすることによって、前記部分ブロックにおいて、比較的高濃度にドーピングされた第1半導体ブロックを形成するステップと、
・エッチングによって前記半導体ブロックに少なくとも1つのトレンチを形成するステップと、
・前記トレンチの少なくとも1つの壁部に酸化物層を形成するステップと、
・好ましくは前記トレンチの底部の領域において、前記酸化物層の少なくとも一部を除去するステップと、
・好ましくは前記トレンチの前記底部の前記領域において、第2導電型の半導体材料を使用して、前記第2導電型の導電率を高めるドーパント材料をドーピングすることによって、前記第2導電型の前記領域を形成するステップと、
・前記少なくとも1つのトレンチの残りの容積の少なくとも一部を、金属によって、又は、好ましくは、前記第2導電型の多結晶半導体材料によって、充填するステップと、
・比較的高濃度にドーピングされた前記部分ブロックの反対側に位置する、前記半導体ブロックの一方の側において、前記第1導電型の前記半導体ブロックの上に、第2導電型の半導体材料からなる層からなる層を形成するステップと、
・前記第2導電型の前記半導体材料からなる前記層の上に、及び、前記金属の上に又は前記トレンチの前記残りの容積の少なくとも一部を充填する前記多結晶半導体材料の上に、金属層を形成するステップと、
・前記金属層の反対側に位置する、前記半導体ブロックの側に、導電性のコンタクト材料、特に金属又は金属層を形成するステップと、
・前記半導体装置のボンディング及び/又はパッケージング及び/又はコンタクトのような追加的な製造工程を実施するステップと、
を有することを特徴とする、方法を含む。
【0044】
本発明に係る方法を、当業者には公知の比較的僅かな修正を加えて実施することも可能であることは自明である。例えば酸化物層を、後で部分的に再び除去する必要がなくなるように、トレンチの壁部の所定の領域にのみ形成することが考えられる。
【0045】
本発明に係る半導体装置は、少なくとも部分的にエピタキシャル方法によって、及び/又は、エッチング方法によって、及び/又は、イオン注入方法によって製造することが好ましい。こうすることによって、本発明に係る半導体装置を製造するために有利な手段が説明される。
【0046】
本発明はさらに、シリコン半導体材料に限定されているわけではなく、これに加えて又はこれに代えて、別の半導体材料、即ち、シリコン材料、及び/又は、シリコン炭化物材料、及び/又は、シリコン・ゲルマニウム材料、及び/又は、ガリウム砒素材料を含むことができる。
【0047】
さらにトレンチの壁部には、シリコン酸化物層の代わりに、別の誘電体からなる薄層、例えばシリコン窒化物、アルミニウム酸化物、ハフニウム酸化物、又は、複数の異なる誘電体層のさらなる組み合わせからなる薄層を配置することができる。
【0048】
以下、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】トレンチMOSバリアショットキーダイオードと、集積されたPNダイオードとを備える半導体装置の第1実施形態の概略断面図である。
図2】トレンチMOSバリアショットキーダイオードと、集積されたPNダイオードとを備える半導体装置の第2実施形態の概略断面図である。
図3】半導体装置を製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
全ての図面において、機能的に同等の要素及び寸法に対しては、相異なる実施形態であっても同一の参照符号が使用される。
【0051】
図1は、トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置10の第1実施形態を示す。半導体装置10は、第1導電型の半導体ブロック12を有し、該第1導電型の半導体ブロック12は、金属層14(図1の上側)によって被覆された第1の面16と、該第1の面16に延在する少なくとも1つのトレンチ18とを有し、該トレンチ18は、少なくとも部分的に金属14a(図1では、この金属14aはそれぞれ金属層14の一部に相当する)、及び/又は、半導体材料40又は41(図2参照)によって充填されている。図1から見て取れるように、半導体ブロック12は、本実施例ではこのようなトレンチ18を2つ有する。これらのトレンチ18は、それぞれ1つの幅44を有する。
【0052】
本実施例では、少なくとも1つのトレンチ18の深さ42は、約2μmである。これに代わる半導体装置10の実施形態では、この深さ42は、1μm乃至約4μmである。さらには、それぞれ2つのトレンチ18の間の内法間隔46に対する、トレンチ18の深さ42の比は、約2以上である。これに代わる半導体装置10の実施形態では、この比を2未満とすることもできる。
【0053】
トレンチ18の(側方の)壁部20は、少なくとも部分的に酸化物層22を有する。酸化物層22は、本実施例では層厚50及び深さ寸法52を特徴としている。この酸化物層22によって、追加的な障壁・酸化物・構造(トレンチ・MOS・構造)が実現される。
【0054】
本発明によれば、金属層14によって被覆された第1の面16の、トレンチ18の隣に位置する領域24は、金属層14と半導体ブロック12との間に位置する、第2導電型の第1半導体材料26からなる層を有する。このことから、本半導体装置10を用いてトレンチMOSバリアショットキーダイオードを実現した場合には、以下に挙げる複数の利点、即ち、特に比較的低い順方向電圧、比較的小さい漏れ電流又は逆方向電流、比較的小さいスイッチング損失、及び、比較的高いロバスト性がもたらされる。従って、本半導体装置10は、例えば高電圧用途にも使用することが可能である。
【0055】
半導体装置10のそれぞれの実施形態に応じて、第2導電型の第1半導体材料26は、約10nm乃至約500nmの層厚27を有する。層厚27は、例えば約70nmである。この場合、第2導電型の第1半導体材料26のドーピング濃度(例えばドーピング濃度「Np」を有する)は、約1016原子/cm乃至約1017原子/cmであることが好ましい。
【0056】
金属層14によって被覆された第1の面16の反対側に位置する、半導体ブロック12の第2の面30は、導電性のコンタクト材料28によって被覆されている。この場合、コンタクト材料28に隣接している半導体ブロック12の部分ブロック34は、第1導電型の半導体ブロック12のその他の部分よりも高濃度にドーピングされている。この部分ブロック34は、例えばいわゆる「n基板」である。導電性のコンタクト材料28は、金属であることが好ましい。
【0057】
本発明によれば、例えば第1導電型は、n型ドーピングされた半導体材料に対応し、第2導電型は、p型ドーピングされた半導体材料に対応し得る。この場合の金属層14は、ショットキーコンタクトの一部であり、この第1選択例では、アノード電極として機能する。コンタクト材料28は、これに応じて対応するカソード電極を形成する。
【0058】
これに代えて、本発明によれば、第1導電型が、p型ドーピングされた半導体材料に対応し、第2導電型が、n型ドーピングされた半導体材料に対応するようにしてもよい。この第2選択例では、上述した第1選択例におけるアノードの機能とカソードの機能とが入れ替わっている。
【0059】
半導体装置10の第1変形形態によれば、又は、第1製造方法によれば、各トレンチ18の底部38の各領域36は、深さ寸法48に対応するように第2半導体材料40によって充填されている。この場合には、第2半導体材料40は、第2導電型の半導体材料である。
【0060】
金属層14と第2半導体材料40との間にはオーミックコンタクトが形成され、第2半導体材料40と半導体ブロック12との間にはPN接合部即ちPNダイオードが形成される。このPNダイオードは、金属層14と半導体ブロック12とによって形成されるトレンチMOSバリアショットキーダイオードに対して電気的に並列に接続されている。領域36は、本明細書では「ウェル」、特に「p型ウェル」とも呼ばれる。半導体装置10又はPNダイオードは、トレンチ18の底部38に電気的「降伏」が発生するように構成されることが好ましい。第2半導体材料40は、(好ましくは各トレンチ18の下側において)イオン注入によって第2導電型の第2半導体材料40に変換される。
【0061】
半導体装置10の第2変形形態によれば、又は第2製造方法によれば、第2半導体材料40は、多結晶半導体材料である。
【0062】
これに代えて、化学的に3価(又は5価)の元素によって被覆し、次いで半導体ブロック12の中に拡散させることによって、これを実現してもよい。このことは、例えば化学元素のホウ素を用いて実施される。これに代えて、いわゆる「気相被覆」を実施してもよい。この場合にも同様に、半導体ブロック12の底部38の領域にPNダイオードが形成される。このPNダイオードも、金属層14によって形成されるトレンチMOSバリアショットキーダイオードに対して電気的に並列に接続されている。
【0063】
金属層14は、ショットキーダイオードのためにも電気的に並列なPNダイオードのためにも、電極として、例えば共通のアノードとして使用される。図1からはさらに、金属層14又は金属14aと、第1導電型の半導体ブロック12との間に位置するそれぞれの境界領域が、それぞれの部分に応じて、酸化物層22、又は、第2導電型の第1半導体材料26からなる層、又は、第2導電型の第2半導体材料40のいずれかを含むことが見て取れる。
【0064】
図2は、トレンチMOSバリアショットキーダイオードと、第2半導体材料40によって形成された集積されたPNダイオードとを備える、半導体装置10の第2実施形態を示す。図1の第1実施形態とは異なり、図2の第2実施形態では、各トレンチ18内の、酸化物層22によって包囲された体積が、第2導電型の多結晶半導体材料41によって充填されている。半導体材料41の図面上側部分には金属層14が配置されており、導電性の接合部(オーミックコンタクト)が形成されている。
【0065】
図2の実施形態では、金属層14は、酸化物層22から実質的に離隔されている。このことから、本発明に係るトレンチMOSバリアショットキーダイオードの寿命に関する利点がもたらされる。
【0066】
図1の実施形態も図2の実施形態も、本発明に係る半導体装置10の縁部領域において、それぞれ縁部電界強度を低減するための追加的な構造をさらに有することができる。この追加的な構造は、例えば低濃度にドーピングされた領域とすることができ、例えば低濃度にドーピングされたp型領域、フィールドプレート、又は、従来技術に相当する同様の構造とすることができる。
【0067】
図1及び図2からも見て取れるように、比較的薄い第1半導体材料26は、金属層14と第1導電型の半導体ブロック12との間にそれぞれ直接配置されている。こうすることによって、従来のTMBS−PNのような単純なショットキーコンタクトではなく、「ショットキーコンタクトシステム」が形成される。
【0068】
さらなる機能的態様に関する以下の記載においては、簡略化のために、第1導電型をそれぞれn型ドーピングと仮定し、第2導電型をそれぞれp型ドーピングと仮定する。上に既に説明したように、これに代えて、各ドーピングを逆に構成してもよい。このことは、図1及び図2に関連してこれまで説明してきた各実施形態にも同様に当てはまる。
【0069】
注意:本明細書では、一般的に「p型薄層」は、それぞれの電流路においてこのような薄層が厳密に1つだけ導通されることを示すために単数形で用いられる。但し、本発明に係る半導体装置10は、特にトレンチ18に基づいてこのような薄層を有利には複数(並列に)有しており、これらの層が1つ又は複数のトレンチ18によって互いに分離されているということは自明である。
【0070】
例1:第2導電型の第1半導体材料26からなる上述したp型薄層を、比較的厚く形成し且つ比較的高濃度にドーピングした場合には、ショットキーコンタクトはほぼ完全に遮蔽される。本発明に係る半導体装置10(「チップ」)の第1の面(「表面」)16に設けられた金属層14は、p型薄層と共にオーミックコンタクトを形成する。上下に重なり合って配置された複数の層、即ち、上側金属層14、p型薄層(半導体材料26)と、n型エピタキシャル層(半導体ブロック12)と、n型基板(部分ブロック34)との積層体は、PINダイオードに類似して機能する。この例1では、逆方向電流は確かに比較的小さくなるが、低電流密度の場合における順方向電圧が比較的高くなり、スイッチング損失も比較的大きくなってしまう。
例2:しかしながら、p型薄層を特に薄く形成し且つ充分に低濃度にドーピングした場合には、このp型薄層は、ショットキーコンタクトに対してほぼ完全に透過性になる。半導体装置10の第1の面16(「表面」)に設けられた金属層14は、「金属層14/p型薄層(半導体材料26)/n型エピタキシャル層(半導体ブロック12)」の積層体と共にショットキーコンタクトを形成する。この場合、「金属層14/p型薄層(半導体材料26)/n型エピタキシャル層(半導体ブロック12)/n基板(部分ブロック34)」の積層体は、ショットキーダイオードと同等に機能する。この場合、逆方向電流は比較的大きくなり、高電流密度の場合における順方向電圧は比較的高くなり、スイッチング損失は比較的小さくなる。
【0071】
本明細書では、p型薄層が少数キャリアに対して、即ち、p型エミッタである本例の場合における電子に対して透過性である場合に、p型薄層が透過性であると表現される。このためには一方で、ドーピング濃度及び層厚27に応じて決まる、p型薄層を含むこのショットキーコンタクトシステムの障壁を低く抑え、且つ、ショットキーコンタクトから半導体材料26又は半導体ブロック12(例えばシリコン)へと電子を注入可能にするために、充分に薄くしなければならない。他方では、少数キャリア(電子)は、p型薄層を通過する途上においてほとんど再結合してはならない。即ち、電子の走行時間は、電子の少数キャリアの寿命よりも格段に短くなければならない。
【0072】
例3:p型薄層の厚さ及びドーピング濃度が(本発明に即して)適切に設定される場合には、重要な特性値、例えば高電流密度の場合における順方向電圧、逆方向電流、及びスイッチング損失を予め設定する又は最適化することができる。この例3では、「金属層14/p型薄層(半導体材料26)/n型エピタキシャル層(半導体ブロック12)/n型基板(部分ブロック34)」の積層体は、部分的に透過性のp型薄層を備えるショットキーダイオードのように機能する。p型薄層に関する最適化パラメータは、p型薄層の層厚27及びp型薄層のドーピング濃度「Np」である。
【0073】
特に本発明によれば、ショットキーコンタクトの真下にp型薄層を形成することによって、特に高温時における逆方向電流を格段に低減することができると同時に、順方向電圧及びスイッチング損失に対する顕著な影響を排することができる。このことは一方では、好ましくは、順方向動作時にp型層の正孔注入がほぼ生じない又は非常に僅かしか生じないように、ひいてはキャリア分布が実質的にTSBS−PNに相当するように、p型層を薄く形成し且つ低濃度にドーピングすべきであるということを意味する。他方では、ショットキーコンタクトを逆方向において少なくとも部分的に遮蔽するために、p型薄層を比較的厚く形成し且つ比較的高濃度にドーピングすべきであるということを意味する。従って、p型層は、適用条件に応じて、上に既に説明したように10nm乃至500nmの範囲の厚さと、1016乃至1017/cmの範囲内のドーピング濃度とを有するように構成される。
【0074】
以下に、本発明の利点を要約して記載又は反復する:
(a)従来の高電圧ショットキーダイオードと比較して:
・高電流密度の範囲における順方向電圧を特に低くすることが可能である。なぜなら、集積されたPNダイオードの高注入によって、低濃度にドーピングされた領域の導電率が著しく増加しているからである。
・ショットキーコンタクトの真下にあるp型薄層と組み合わせたトレンチ構造を用いてショットキー効果を遮断することにより、漏れ電流が比較的小さくなる。さらには、PNダイオードのクランプ機能により比較的高いロバスト性がもたらされる。
【0075】
(b)従来の高電圧PINダイオードと比較して:
・高電流密度の場合における高注入と組み合わせたショットキーコンタクトの適切な障壁高さにより、高電流密度に至るまでの順方向電圧が比較的低くなる。
・スイッチング損失が比較的小さい。なぜなら、順方向動作時に、ショットキーコンタクトシステム(ショットキーコンタクトの真下にあるp型薄層と組み合わせたショットキーコンタクト)を介して低濃度にドーピングされた領域に注入及び蓄積されるキャリアがより少なくなるからである。
【0076】
(c)従来技術からの別の解決方法(いわゆる「Cool−SBD」ダイオード)と比較して:
・より高注入により、高電流密度の場合における順方向電圧がより小さくなる。ショットキー効果の効果的な遮断により、漏れ電流がより小さくなる。
【0077】
(d)ショットキーコンタクトの真下にp型薄層が設けられていない従来のTSBS−PNと比較して:
・高電流密度の場合における順方向電圧がほぼ同じであり且つスイッチング損失がほぼ同じである場合に、漏れ電流が特に小さい。
【0078】
図3は、以下に記載する各ステップを特徴とする、トレンチMOSバリアショットキーダイオードを備える半導体装置10を製造する方法のフローチャートを示す。
【0079】
第1方法ステップ100では、第1導電型の半導体ブロック12が形成され、半導体ブロック12の部分ブロック34が、比較的高濃度にドーピングされる(ステップ100:半導体ブロック12を形成するステップ)。
【0080】
さらなる方法ステップ102では、エッチングによって半導体ブロック12に少なくとも1つのトレンチ18が形成される。トレンチ18は例えば、長方形の断面形状、又は、底部が湾曲した長方形の断面形状、即ち、U字形の断面形状を有するように製造することができる(ステップ102:エッチングによって少なくとも1つのトレンチ18を形成するステップ)。
【0081】
さらなる方法ステップ104では、トレンチ18の少なくとも1つの壁部20に酸化物層22が形成される(ステップ104:酸化物層22を形成するステップ)。
【0082】
さらなる方法ステップ106では、好ましくはトレンチ18の底部38の領域において、酸化物層22の少なくとも一部が除去される(ステップ106:酸化物層22の少なくとも一部を除去するステップ)。
【0083】
さらなる方法ステップ108では、好ましくは底部38の領域36において、第2導電型の導電率を高めるドーパント材料を半導体ブロック12に使用及びドーピングすることによって、第2導電型の領域36を形成するステップ(ステップ108:領域36を形成するステップ)。
【0084】
さらなる方法ステップ110では、少なくとも1つのトレンチ18の残りの容積の少なくとも一部が、金属(即ち、例えば金属層14の一部)によって、又は第2導電型の多結晶半導体材料41によって充填される(ステップ110:少なくとも1つのトレンチ18の残りの容積の一部を充填するステップ)。
【0085】
さらなる方法ステップ112では、導電性のコンタクト材料28の反対側に位置する、半導体ブロック12の第1の面16において、第1導電型の半導体ブロック12の上に、第2導電型の半導体材料26からなる層が形成される(ステップ112:第1導電型の半導体ブロック12の上に、第2導電型の半導体材料26からなる層を形成するステップ)。
【0086】
さらなる方法ステップ114では、第2導電型の半導体材料26からなる層の上に、及び、金属14aの上に又はトレンチ18の残りの容積の少なくとも一部を充填する第2導電型の多結晶半導体材料41の上に、金属層14が形成される(ステップ114:金属層14を形成するステップ)。
【0087】
さらなる方法ステップ116では、特に金属層として導電性のコンタクト材料28が形成され、(オプションとして)半導体装置10のボンディング及び/又はパッケージング及び/又はコンタクトのような追加的な製造工程が実施される。例えば半導体装置10は、電極又は素子コンタクトにおいてはんだ付け可能な金属被覆を有することができる。本発明によれば、圧入ケーシングを有する実施形態も可能である(ステップ116:半導体装置10のボンディング及び/又はパッケージング及び/又はコンタクトのような追加的な製造工程を実施するステップ)。
【0088】
図3で説明した方法は、少なくとも部分的にエピタキシャル方法及び/又はエッチング方法及び/又は拡散方法及び/又はイオン注入方法によって実施することが好ましい。
図1
図2
図3