特許第6651408号(P6651408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 光洋サーモシステム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6651408-熱処理装置 図000002
  • 特許6651408-熱処理装置 図000003
  • 特許6651408-熱処理装置 図000004
  • 特許6651408-熱処理装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651408
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20200210BHJP
   F27B 5/16 20060101ALI20200210BHJP
   F27B 5/18 20060101ALI20200210BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20200210BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20200210BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   H01L21/324 T
   F27B5/16
   F27B5/18
   F27D19/00 A
   F27D15/02 H
   H01L21/68 N
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-91525(P2016-91525)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-199874(P2017-199874A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】光洋サーモシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】和田 頼彦
【審査官】 桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−075890(JP,A)
【文献】 特開2013−062361(JP,A)
【文献】 特開平07−096168(JP,A)
【文献】 特開平01−282619(JP,A)
【文献】 特開平06−349753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/683
F27B 5/16
F27B 5/18
F27D 15/02
F27D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の熱処理時に前記被処理物を収容する容器と、
温度調整用の媒体を前記容器に供給するための基準弁およびサブ弁を含む媒体供給部と、
前記基準弁の開度を基準として、前記サブ弁の開度を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記基準弁の開度を一定にした状態で前記サブ弁の開度を制御し、且つ、前記容器のうち前記基準弁から前記媒体が供給される箇所における温度と、前記容器のうち前記サブ弁から前記媒体が供給される箇所における温度との偏差を減少させるように、前記サブ弁の開度を制御することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項2】
請求項に記載の熱処理装置であって、
前記制御部は、前記容器のうち前記基準弁から前記媒体が供給される箇所における温度を基準として、前記サブ弁から前記容器へ供給される前記媒体の流量を制御するように構成されていることを特徴とする、熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記サブ弁は、複数設けられており、
前記制御部は、一の前記サブ弁と他の前記サブ弁とが異なる動作を行うように各前記サブ弁を制御することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項4】
請求項に記載の熱処理装置であって、
前記制御部は、比例制御を用いて各前記サブ弁を制御するように構成されており、一の前記サブ弁の制御ゲインと他の前記サブ弁の制御ゲインとを異なる値に設定することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項5】
請求項に記載の熱処理装置であって、
前記媒体は、前記容器を冷却するための冷却媒体であり、
一の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は、他の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置よりも高く設定されており、
前記制御部は、一の前記サブ弁に関する前記制御ゲインを他の前記サブ弁に関する前記制御ゲインよりも大きく設定することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項6】
請求項または請求項に記載の熱処理装置であって、
前記容器は、前記容器の外部に開放された開口部、および、前記容器の外部に対して閉じられた形状の奥部を含み、
前記媒体は、前記容器を冷却するための冷却媒体であり、
一の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は前記開口部および前記奥部のうちの前記奥部寄りに設定されているとともに、他の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は前記開口部および前記奥部のうちの前記開口部寄りに設定されており、
前記制御部は、一の前記サブ弁に関する前記制御ゲインを他の前記サブ弁に関する前記制御ゲインよりも大きく設定することを特徴とする、熱処理装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項の何れか1項に記載の熱処理装置であって、
前記サブ弁は、複数設けられており、
各前記サブ弁からの前記媒体の出口位置間に前記基準弁からの前記媒体の出口位置が設定されていることを特徴とする、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板など被処理物に熱処理を行うための、熱処理装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。熱処理装置の一例として、特許文献1に記載の熱処理装置は、断熱材に囲まれたヒータと、ヒータに取り囲まれた石英管と、を有している。また、断熱材を貫通するパイプが接続されており、このパイプにブロワが接続されている。
【0003】
ヒータの加熱によって石英管内の被処理物が熱処理された後、ブロワが動作することで、冷却空気が石英管に導かれる。これにより、石英管および被処理物が冷却される。この際、ブロワを制御する制御部は、石英管の実際の温度と目標温度との偏差をゼロにするよう、ヒータの出力とブロワの風量とを制御する。このように、石英管の強制冷却にブロワを用いる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−282619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブロワを用いて石英管などの容器を強制冷却する構成において、複数のダンパを用いる構成を考えることができる。たとえば、この構成では、ブロワに接続された配管は、複数に分岐した分岐管を有している。そして、各分岐管に、ダンパが接続されている。複数のダンパは、たとえば、容器の長手方向に沿った複数箇所にブロワからの冷却空気を供給する。各ダンパは、たとえば、作業員による手動操作によって、開度を調整される。そして、冷却空気は、ブロワから対応するダンパを通過した後、容器に当てられることで、当該容器を冷却する。作業員は、容器の冷却速度が当該容器の各部において可及的に均等になるようにするため、各ダンパの開度を手動で調整する。
【0006】
一方で、容器内で熱処理される被処理物の内容および数量は、毎回同じとは限らない。すなわち、容器内の被処理物の合計の熱容量は、毎回同じとは限らない。また、容器(被処理物)の目標冷却温度および冷却領域も、毎回同じとは限らない。さらに、ブロワを駆動するブロワモータの周波数(たとえば、ブロワモータの回転速度)も、電源の条件に応じて異なる場合がある。このように、冷却条件の違いが生じた場合に、各ダンパの開度を調整しない場合、容器の各部の冷却速度にばらつきが生じてしまう。
【0007】
一方で、冷却条件の違いにかかわらず、容器および複数の被処理物の全体が可及的に均等に冷却されることが、均一な熱処理を行う観点から好ましい。このため、冷却条件に応じて、作業員は、各ダンパの開度を手作業で調整する。これにより、各ダンパから容器に当てられる冷却空気の流量が調整され、容器および被処理物のより均等な冷却が実現する。
【0008】
このように、各ダンパの開度調整作業が手作業で行われる構成に対して、自動的な調整作業が実現されることが好ましい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物をより均等に温度変化させることができるとともに、被処理物をより均等に温度変化させるための調整作業を自動的に行うことのできる熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理物の熱処理時に前記被処理物を収容する容器と、温度調整用の媒体を前記容器に供給するための基準弁およびサブ弁を含む媒体供給部と、前記基準弁の開度を基準として、前記サブ弁の開度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記基準弁の開度を一定にした状態で前記サブ弁の開度を制御し、且つ、前記容器のうち前記基準弁から前記媒体が供給される箇所における温度と、前記容器のうち前記サブ弁から前記媒体が供給される箇所における温度との偏差を減少させるように、前記サブ弁の開度を制御する。
【0011】
この構成によると、制御部によって、サブ弁による媒体の供給態様が制御される。これにより、被処理物の温度制御条件に変化が生じた場合に、サブ弁による媒体の供給態様を変更することができる。その結果、被処理物の温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物をより均等に冷却できる。また、基準弁による媒体の供給態様を基準として、サブ弁による媒体の供給態様が制御される結果、サブ弁の制御演算が発散することをより確実に抑制できる。よって、被処理物へのより正確な温度制御が実現される。また、制御部によってサブ弁が制御されるので、人力によるサブ弁の調整作業が不要である。以上の次第で、本発明によると、温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物をより均等に温度変化させることができるとともに、被処理物をより均等に温度変化させるための調整作業を自動的に行うことのできる熱処理装置を実現できる。
【0013】
さらに、制御部は、サブ弁の開度制御において、基準弁の開度を変更する必要がない結果、サブ弁の制御に必要な演算をより簡素にできる。また、サブ弁の開度制御において、ハンチングが生じることをより確実に抑制できる。
【0014】
)前記制御部は、前記容器のうち前記基準弁から前記媒体が供給される箇所における温度を基準として、前記サブ弁から前記容器へ供給される前記媒体の流量を制御するように構成されている場合がある。
【0015】
この構成によると、サブ弁から容器に供給される媒体による容器の温度変化度合いを、基準弁から容器に供給される媒体による容器の温度変化度合いとより等しくできる。
【0018】
)前記サブ弁は、複数設けられており、前記制御部は、一の前記サブ弁と他の前記サブ弁とが異なる動作を行うように各前記サブ弁を制御する場合がある。
【0019】
この構成によると、複数のサブ弁の動作によって、容器のより広い領域を均等に温度変化させることができる。また、容器の各領域を、よりきめ細かく温度制御できる。
【0020】
)前記制御部は、比例制御を用いて各前記サブ弁を制御するように構成されており、一の前記サブ弁の制御ゲインと他の前記サブ弁の制御ゲインとを異なる値に設定する場合がある。
【0021】
この構成によると、一の前記サブ弁は、目標とする媒体の供給態様を実現するための応答速度をより高くできる。一方、他の前記サブ弁は、目標とする媒体の供給態様を実現するための応答速度をより低くできる。このように、目標に対する応答速度の異なるサブ弁を組み合わせることで、熱の偏りが生じ易い容器に対して、より均等な温度変化を生じさせることが可能である。
【0022】
)前記媒体は、前記容器を冷却するための冷却媒体であり、一の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は、他の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置よりも高く設定されており、前記制御部は、一の前記サブ弁に関する前記制御ゲインを他の前記サブ弁に関する前記制御ゲインよりも大きく設定する場合がある。
【0023】
この構成によると、容器の熱は、上方に向かうため、容器の上部の熱量は、容器の下部の熱量よりも大きくなる傾向にある。よって、容器の上部側を冷却する一のサブ弁の制御ゲインをより大きくすることで、容器の上部側に向けて、より迅速により多くの媒体を供給できる。これにより、熱のこもりやすい容器の上部側をより確実に冷却できる。一方、容器の下部側を冷却する他のサブ弁の制御ゲインをより小さくすることで、容器の下部側に向けて、急激に過度の媒体が供給されることを抑制できる。これにより、熱が比較的逃げ易い容器の下部側が、容器の他の部分よりも先に冷却されることを抑制できる。その結果、容器の各部は、より均等に冷却される。
【0024】
)前記容器は、前記容器の外部に開放された開口部、および、前記容器の外部に対して閉じられた形状の奥部を含み、前記媒体は、前記容器を冷却するための冷却媒体であり、一の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は前記開口部および前記奥部のうちの前記奥部寄りに設定されているとともに、他の前記サブ弁から前記容器へ前記冷却媒体が供給される位置は前記開口部および前記奥部のうちの前記開口部寄りに設定されており、前記制御部は、一の前記サブ弁に関する前記制御ゲインを他の前記サブ弁に関する前記制御ゲインよりも大きく設定する場合がある。
【0025】
この構成によると、容器の熱は、奥部にこもりやすいため、容器の奥部の熱量は、容器の開口部の熱量よりも大きくなる傾向にある。よって、容器の奥部側を冷却する一のサブ弁の制御ゲインをより大きくすることで、容器の奥部側に向けて、より迅速により多くの媒体を供給できる。これにより、熱のこもりやすい容器の奥部側をより確実に冷却できる。一方、容器の開口部側を冷却する他のサブ弁の制御ゲインをより小さくすることで、容器の開口部側に向けて、急激に過度の媒体が供給されることを抑制できる。これにより、熱が比較的逃げ易い容器の開口部側が、容器の他の部分よりも先に冷却されることを抑制できる。その結果、容器の各部は、より均等に冷却される。
【0026】
)前記サブ弁は、複数設けられており、各前記サブ弁からの前記媒体の出口位置間に前記基準弁からの前記媒体の出口位置が設定されている場合がある。
【0027】
この構成によると、複数の弁によって、容器のより広い領域を媒体によってより均等に温度変化させることができる。また、容器のうち基準弁からの媒体が供給される箇所以外の領域について、基準弁からの媒体が供給される箇所の近くに配置される割合を、より大きくできる。その結果、容器のより広い領域について、基準弁からの媒体が供給される箇所との温度差を小さくできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物をより均等に温度変化させることができるとともに、被処理物をより均等に温度変化させるための調整作業を自動的に行うことができる熱処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る熱処理装置の一部を断面で示す模式図であり、熱処理装置を側方から見た状態を示している。
図2図1の熱処理装置の主要部を拡大して示す図である。
図3】熱処理装置の冷媒供給部に設けられたダンパの断面図であり、ダンパを側方から見た状態を示している。
図4】熱処理装置における冷却動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、被処理物を熱処理するための熱処理装置として広く適用することができる。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱処理装置1の一部を断面で示す模式図であり、熱処理装置1を側方から見た状態を示している。図2は、図1の熱処理装置1の主要部を拡大して示す図である。図3は、熱処理装置1の媒体供給部7に設けられたダンパ30の断面図であり、ダンパ30を側方から見た状態を示している。
【0032】
図1を参照して、熱処理装置1は、被処理物100に熱処理を施すことが可能に構成されている。より具体的には、熱処理装置1は、被処理物100に向けて加熱されたガスを供給することで、被処理物100の表面に熱処理を施すことが可能に構成されている。また、熱処理装置1は、媒体としての空気を冷却空気として用いて被処理物100を強制的に冷却することが可能に構成されている。
【0033】
被処理物100は、たとえば、ガラス基板または半導体基板などである。
【0034】
熱処理装置1は、ベース板2と、ヒータ3と、容器としてのチャンバ4と、ボート5と、昇降機構6と、媒体供給部7と、を有している。
【0035】
ベース板2は、ヒータ3およびチャンバ4を支持する部材として設けられている。ベース板2の中央には、貫通孔2aが形成されている。この貫通孔2aを上方から塞ぐようにして、ヒータ3が配置されている。
【0036】
ヒータ3は、たとえば電熱ヒータであり、たとえば、600℃程度まで気体を加熱することが可能に構成されている。ヒータ3は、全体として箱状に形成されている。ヒータ3は、上下方向(鉛直方向)に延びる円筒状の側壁3aと、側壁3aの上端を塞ぐ天壁3bと、を有している。側壁3aの下端部には、下向きに開放された開口部が形成されている。ヒータ3の側壁3aの下端部は、ベース板2によって受けられている。ヒータ3に取り囲まれた空間に、チャンバ4が配置されている。
【0037】
チャンバ4は、被処理物100の熱処理時に被処理物100を収容する容器として構成されている。チャンバ4は、全体として円筒状に形成されている。チャンバ4の上端部は、塞がれている。また、チャンバ4は、下向きに開放されている。チャンバ4の下端部は、ベース板2に受けられている。チャンバ4内の空間は、ベース板2の貫通孔2aを通して、ベース板2の下方の空間に開放されている。このように、チャンバ4は、チャンバ4の外部に開放された開口部4dと、チャンバ4の外部に対して閉じられた形状の奥部4eと、を含んでいる。
【0038】
熱処理装置1における熱処理動作時、チャンバ4内の空間には、被処理物100が配置される。被処理物100は、たとえば、水平に配置された状態で、ボート5に支持される。
【0039】
ボート5は、被処理物100をチャンバ4内に配置するために設けられている。ボート5は、たとえば、上下に並ぶ複数のスロットを有しており、これらのスロットに、複数の被処理物100が保持されている。ボート5は、昇降機構6によって支持されており、昇降機構6の動作によって、被処理物100とともに上下方向に変位可能である。この昇降機構6の動作によって、被処理物100およびボート5は、チャンバ4に対して出し入れされる。
【0040】
ボート5および被処理物100がチャンバ4内に配置された状態において、チャンバ4の下端部およびベース板2の貫通孔2aは、ボート5に連結されたフランジ8によって閉じられる。これにより、被処理物100およびボート5は、チャンバ4内に密閉される。この状態で、ヒータ3の加熱による被処理物100の加熱が行われる。そして、ヒータ3による被処理物100の加熱が完了した後、被処理物100、ボート5およびチャンバ4は、媒体供給部7から供給される冷却空気によって強制的に冷却される。
【0041】
媒体供給部7は、ヒータ3とチャンバ4との間に形成された空間10に、温度調整用の冷却媒体としての冷却空気を強制的に供給することで、チャンバ4、および、被処理物100を冷却するように構成されている。空間10は、ベース板2、当該ベース板2上に配置されたチャンバ4およびヒータ3間に形成された空間である。この空間10は、チャンバ4の外周部を全周に亘って取り囲んでいる。また、この空間10は、チャンバ4の上端部を上方から覆う空間である。なお、図1では、冷却空気の流れを矢印A1で模式的に示している。本実施形態では、媒体供給部7は、電子制御によって、空間10への冷却空気の供給態様を制御するように構成されている。
【0042】
媒体供給部7は、ブロワユニット11と、供給管12と、マニホールド13と、ダンパユニット14と、排気管15と、排気クーラ16と、センサユニット17と、制御部18と、を有している。
【0043】
ブロワユニット11は、ヒータ3の外部に存在する空気を取り込んで当該空気を冷却空気として供給管12に供給するために設けられている。
【0044】
ブロワユニット11は、ブロワ21と、このブロワ21を駆動させるためのブロワモータ22と、を有している。
【0045】
ブロワ21は、たとえば、遠心ブロワであり、ヒータ3の外部に存在する空気を吸い込むとともに当該空気を加圧し、冷却空気として加圧状態で出力するように構成されている。このブロワ21は、羽根車(図示せず)を有している。この羽根車は、ブロワモータ22の出力軸に連結されており、このブロワモータ22の駆動によって動作する。ブロワモータ22は、本実施形態では、電動モータである。このブロワモータ22は、与えられる電力の周波数に応じた出力を発生する。
【0046】
なお、ブロワ21に吸い込まれる空気は、常温であってもよいし、予めクーラ(図示せず)によって冷却されていてもよい。ブロワ21の吐出口に、供給管12の一端が接続されている。
【0047】
供給管12は、略真っ直ぐに延びる配管である。供給管12は、剛体状の金属管であってもよいし、弾性変形可能なフレキシブル管であってもよい。供給管12の他端は、マニホールド13に接続されている。
【0048】
マニホールド13は、ダンパユニット14の後述する複数のダンパ30のそれぞれに冷却空気を分配するために設けられている。マニホールド13は、たとえば、所定の直径を有する円筒状の金属管を用いて形成されている。本実施形態では、マニホールド13の両端部が塞がれている。また、本実施形態では、マニホールド13は、供給管12の延びる方向とは略直交する方向に延びている。
【0049】
より具体的には、本実施形態では、マニホールド13は、上下方向に延びており、チャンバ4の長手方向と平行な方向に沿って配置されている。マニホールド13は、ヒータ3の側方(換言すれば、チャンバ4の側方)に配置されている。
【0050】
本実施形態では、マニホールド13の上端部の外周部に、供給管12が接続されている。上記の構成により、供給管12を通過した冷却空気は、マニホールド13に入った後、マニホールド13内を下方に向けて進行する。そして、この冷却空気は、ダンパユニット14のダンパ30に送られる。
【0051】
ダンパユニット14は、マニホールド13に送られた冷却空気を、チャンバ4の上部4a、中間部4b、および、下部4cのそれぞれに向けて供給するために設けられている。ダンパユニット14は、本実施形態では、マニホールド13とヒータ3との間に配置されている。
【0052】
ダンパユニット14は、複数のダンパ30を有している。本実施形態では、複数のダンパ30として、基準ダンパ32と、複数のサブダンパとしての第1サブダンパ31および第2サブダンパ33と、を有している。なお、ダンパ31,32,33を総称していう場合、ダンパ30という。
【0053】
基準ダンパ32は、冷却空気をチャンバ4に向けて供給するための基準弁として設けられている。また、サブダンパ31,33は、冷却空気をチャンバ4に向けて供給するためのサブ弁として設けられている。第1サブダンパ31は、本発明の「一のサブ弁」の一例である。第2サブダンパ33は、本発明の「他のサブ弁」の一例である。各ダンパ30は、開度を調整可能に構成されている。すなわち、各ダンパ30を通過する冷却空気の流量を調整可能に構成されている。
【0054】
第1サブダンパ31は、チャンバ4の上部4aに向けて冷却空気を供給するように構成されている。基準ダンパ32は、チャンバ4の中間部4bに向けて冷却空気を供給するように構成されている。第2サブダンパ33は、チャンバ4の下部4cに向けて冷却空気を供給するように構成されている。
【0055】
第1サブダンパ31、基準ダンパ32、および、第2サブダンパ33は、この順に、チャンバ4の長手方向である上下方向に沿って配列されている。すなわち、第1サブダンパ31の下方に基準ダンパ32が配置されている。また、基準ダンパ32の下方に第2サブダンパ33が配置されている。
【0056】
図1図3を参照して、ダンパ30(すなわち、基準ダンパ32、サブダンパ31,33のそれぞれ)は、入口管41と、弁箱42と、支軸43と、弁体44と、ダンパモータ45と、出口管46,47と、を有している。
【0057】
なお、本実施形態では、基準ダンパ32がダンパモータ45を含む電動式のダンパである形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。たとえば、基準ダンパ32は、ダンパモータ45が設けられていない、人力による手動開度調整式で且つ弁体44の開度を固定可能なダンパであってもよい。
【0058】
入口管41は、マニホールド13と弁箱42に接続されており、マニホールド13からの冷却空気を弁箱42内に導入するように構成されている。入口管41の内径は、マニホールド13の内径よりも小さく設定されている。入口管41の一端は、マニホールド13の外周部に接続されている。
【0059】
第1サブダンパ31の入口管41は、マニホールド13の上部に接続されている。基準ダンパ32の入口管41は、マニホールド13の中間部に接続されている。第2サブダンパ33の入口管41は、マニホールド13の下部に接続されている。入口管41は、マニホールド13から対応する弁箱42に向けて水平に延びている。
【0060】
弁箱42は、たとえば、中空の四角柱状に形成されている。弁箱42の一側壁に、入口管41の他端が接続されている。入口管41を通過した冷却空気は、弁箱42内に導かれる。弁箱42は、支軸43および弁体44を収容している。
【0061】
支軸43は、弁箱42に支持されているとともに、弁体44を当該支軸43回りに揺動可能に支持している。本実施形態では、支軸43は、弁体44と一体回転可能に連結されている。支軸43は、たとえば、水平方向に延びており、入口管41に隣接して配置されている。支軸43の一部は、弁箱42を貫通しており、ダンパモータ45の出力軸49に連結されている。
【0062】
ダンパモータ45は、弁体44を支軸43回りに揺動させることで、ダンパ30における弁開度を設定するために設けられている。
【0063】
ダンパモータ45は、モータハウジング48と、このモータハウジング48に支持された出力軸49と、を有している。
【0064】
ダンパモータ45は、サーボモータなどの、回転位置制御を可能に構成された電動モータである。ダンパモータ45は、制御部18からの制御信号を受けて、当該ダンパモータ45の出力軸49の回転位置を変更可能に構成されている。
【0065】
モータハウジング48は、たとえば、弁箱42に固定されている。ダンパモータ45の出力軸49は、支軸43と連動回転可能に連結されている。この出力軸49は、支軸43と一体回転可能に連結されていてもよいし、図示しない減速機構を介して支軸43と連動回転可能に連結されていてもよい。上記の構成により、ダンパモータ45の駆動によって出力軸49の回転位置が設定され、これに伴い、支軸43回りにおける弁体44の回転位置(すなわち、ダンパ30の開度)が設定される。
【0066】
弁体44は、入口管41の他端を開閉するように構成されている。弁体44は、たとえば、矩形の平板状部材を用いて形成されている。弁体44の一縁部が、支軸43に連結されている。弁体44は、たとえば、垂直に起立した姿勢において、入口管41を塞ぐように配置されている。
【0067】
弁体44は、垂直に起立した姿勢から支軸43回りにたとえば数十度回転することで、全開位置P2に配置される。すなわち、弁体44が垂直位置である全閉位置P1にあるときには、ダンパ30の開度がゼロである。また、弁体44が垂直位置から数十度回転した所定の全開位置P2にあるときには、ダンパ30の開度が100%となる。
【0068】
なお、弁体44の回転位置とダンパ30の開度との関係は、ダンパ30の構造に応じて決まる。よって、弁体44の回転位置とダンパ30の開度との関係は、線形的である場合と、非線形である場合とが存在する。本実施形態では、弁体44の回転位置とダンパ30の回転位置との関係は、制御部18に予め記憶されている。
【0069】
弁体44が入口管41の他端を開いているとき、入口管41からの冷却空気は、弁体44内に導入され、さらに、出口管46,47へ導かれる。
【0070】
本実施形態では、各ダンパ31,32,33に2つの出口管(すなわち、出口管46,47)が設けられている。各出口管46,47は、対応する弁箱42内の空間と、ヒータ3内に形成された空間10とを接続するために設けられている。各出口管46,47の一端は、対応する弁箱42の一側壁に接続されている。
【0071】
また、各出口管46,47の他端は、ヒータ3の側壁3aを貫通しており、空間10に臨んでいる。各ダンパ31,32,33において、出口管46の他端と,出口管47の他端とは、ヒータ3の側壁3aの周方向において、等間隔に(本実施形態では、180度間隔に)配置されている。
【0072】
第1サブダンパ31の出口管46,47の他端は、チャンバ4の上部4aと水平に向かい合うように配置されている。基準ダンパ32の出口管46,47の他端は、チャンバ4の中間部4bと水平に向かい合うように配置されている。第2サブダンパ33の出口管46,47の他端は、チャンバ4の下部4cと水平に向かい合うように配置されている。
【0073】
上記の構成により、第1サブダンパ31からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置(すなわち、第1サブダンパ31の出口管46,47の他端位置)は、第2サブダンパ33からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置(すなわち、第2サブダンパ33の出口管46,47の他端位置)よりも高く設定されている。
【0074】
また、第1サブダンパ31からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置は、開口部4dおよび奥部4eのうちの奥部4e寄りに設定されている。また、第2サブダンパ33からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置は、開口部4dおよび奥部4eのうちの開口部4d寄りに設定されている。
【0075】
また、第1サブダンパ31からの冷却空気の出口である出口管46,47の他端位置と、第2サブダンパ33からの冷却空気の出口である出口管46,47の他端位置との間に、基準ダンパ32からの冷却空気の出口である出口管46,47の他端の位置が設定されている。
【0076】
また、本実施形態では、各ダンパ31,32,33の出口管46の他端は、チャンバ4の周方向における位置が揃えられている。同様に、各ダンパ31,32,33の出口管47の他端は、チャンバ4の周方向における位置が揃えられている。
【0077】
上記の構成により、第1サブダンパ31を通過した冷却空気は、チャンバ4の上部4aに向かうようにして空間10に供給される。また、基準ダンパ32を通過した冷却空気は、チャンバ4の中間部4bに向かうようにして空間10に供給される。さらに、第2サブダンパ33を通過した冷却空気は、チャンバ4の下部4cに向かうようにして空間10に供給される。空間10に供給された冷却空気は、チャンバ4からの熱を吸収しつつ、排気管15に向けて流れる。
【0078】
排気管15は、ヒータ3の天壁3bを貫通している。排気管15の一端は、空間10に臨んでいる。排気管15は、空間10の上端に到達した冷却空気を排気管15の他端側に導く。排気管15は、ヒータ3の外側の空間において、排気クーラ16に接続されている。排気クーラ16は、チャンバ4からの熱を吸収した冷却空気を冷却する。排気クーラ16を通過することで冷却された冷却空気は、熱処理装置1の外部の空間へ排出される。
【0079】
上記の構成により、冷却空気は、ブロワ21から供給管12およびマニホールド13を通って対応するダンパ31,32,33を通過することで、空間10に到達し、さらに、排気管15および排気クーラ16を通って熱処理装置1の外部に排出される。各ダンパ31,32,33の出口管46,47の他端に隣接する位置でのチャンバ4の温度は、センサユニット17によって検出される。
【0080】
より具体的には、センサユニット17は、第1サブダンパ31の出口管46の他端と向かい合う位置でのチャンバ4の温度、基準ダンパ32の出口管46の他端と向かい合う位置でのチャンバ4の温度、および、第2サブダンパ33の出口管46の他端と向かい合う位置でのチャンバ4の温度のそれぞれを検出する。
【0081】
センサユニット17は、温度センサ51〜53を有している。
【0082】
温度センサ51〜53は、たとえば、熱電対などの電気式温度センサであり、検出温度を特定する電気信号を出力するように構成されている。温度センサ51〜53は、たとえば、チャンバ4に隣接した位置において、ヒータ3に支持されている。
【0083】
温度センサ51は、チャンバ4の上部4aの外周面に隣接して配置されており、第1サブダンパ31の出口管46の他端に隣接している。温度センサ51は、第1サブダンパ31の出口管46と水平に対向しているチャンバ4の上部4aの温度を、チャンバ上部温度T1として検出する。
【0084】
温度センサ52は、チャンバ4の中間部4bの外周面に隣接して配置されており、基準ダンパ32の出口管46の他端に隣接している。温度センサ52は、基準ダンパ32の出口管46と水平に対向しているチャンバ4の中間部4bの温度を、チャンバ中間部温度T2として検出する。
【0085】
温度センサ53は、チャンバ4の下部4cの外周面に隣接して配置されており、第2サブダンパ33の出口管46の他端に隣接している。温度センサ53は、第2サブダンパ33の出口管46と水平に対向しているチャンバ4の下部4cの温度を、チャンバ下部温度T3として検出する。各温度センサ51〜53の温度検出結果は、制御部18に与えられる。
【0086】
制御部18は、基準ダンパ32による冷却空気の供給態様を基準として、サブダンパ31,33による冷却空気の供給態様を制御するように構成されている。制御部18は、PLC(Programmable Logic Controller)などを用いて形成されている。なお、制御部18は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータを用いて形成されていてもよいし、シーケンス回路などを用いて形成されていてもよい。
【0087】
制御部18は、各温度センサ51〜53に接続されており、これらの温度センサ51〜53の温度検出結果であるチャンバ温度T1〜T3を特定する電気信号を受信する。また、制御部18は、ブロワモータ22に接続されており、ブロワモータ22の駆動を制御することで、ブロワ21から供給される冷却空気の流量を制御する。
【0088】
また、制御部18は、第1サブダンパ31のダンパモータ45、基準ダンパ32のダンパモータ45、および、第2サブダンパ33のダンパモータ45に接続されており、これらのモータ45の動作を個別に制御する。
【0089】
本実施形態では、制御部18は、基準ダンパ32の開度が一定である状態を基準として、第1サブダンパ31および第2サブダンパ33のそれぞれの開度を制御する。より具体的には、媒体供給部7がチャンバ4および被処理物100を冷却する動作の開始時、制御部18は、まず、基準ダンパ32の開度を設定する。
【0090】
この際の基準ダンパ32の開度は、たとえば、50%に設定される。このように、制御部18は、基準ダンパ32の開度を50%、たとえば、弁体44を全閉位置P1と全開位置P2との半分の位置に配置するよう、基準ダンパ32のダンパモータ45を駆動する。このように、基準ダンパ32の開度を0%と100%の中間の50%とすることで、基準ダンパ32からの冷却空気の流量に対する各サブダンパ31,33からの冷却空気の流量の調整幅をより大きくできる。
【0091】
なお、基準ダンパ32の開度は、被処理物100の熱容量(具体的には、被処理物100の枚数、材質、体積)、被処理物100の目標冷却温度、ブロワモータ22の動作周波数などに応じて、制御部18によって適宜設定されてもよい。
【0092】
また、制御部18は、チャンバ4のうち基準ダンパ32から冷却空気が供給される中間部4bにおけるチャンバ中間部温度T2を基準として、各サブダンパ31,33の出口管46,47からチャンバ4へ供給される冷却空気の流量を制御するように構成されている。より具体的には、制御部18は、チャンバ4のうち基準ダンパ32から冷却空気が供給される箇所における温度(チャンバ中間部温度T2)と、チャンバ4のうち各サブダンパ31,33から冷却空気が供給される上部4aおよび下部4cにおける温度(チャンバ上部温度T1,チャンバ下部温度T3)との偏差を減少させるように、各サブダンパ31,33の開度をフィードバック制御する。
【0093】
制御部18は、各ダンパ31,32,33を、個別に、比例制御を用いて制御するように構成されている。本実施形態では、制御部18は、PID制御(Proportional Integral Differential Control、比例積分微分制御)によって、各ダンパ31,32,33のダンパモータ45を個別に制御することにより、各ダンパ31,32,33の開度を制御する。なお、制御部18は、PI制御(Proportional Integral Control、比例積分制御)など、他の制御方法によって各ダンパ31,32,33を制御してもよい。
【0094】
制御部18は、第1サブダンパ31と第2サブダンパ33とが異なる動作を行うように各サブダンパ31,33を制御する。具体的には、制御部18は、第1サブダンパ31の制御ゲインkp1と第2サブダンパ33の制御ゲインkp2とを異なる値に設定する。本実施形態では、制御部18は、チャンバ4の上部4aに冷却空気を供給する第1サブダンパ31の制御ゲインkp1を、チャンバ4の下部4cに冷却空気を供給する第2サブダンパ33の制御ゲインkp2よりも大きく設定する(kp1>kp2)。
【0095】
次に、熱処理装置1における冷却動作の一例を説明する。なお、熱処理装置1における冷却動作は、たとえば、ヒータ3の加熱動作が停止された後に行われる。図4は、熱処理装置1における冷却動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、フローチャートを参照して説明する場合、フローチャート以外の図も適宜参照しながら説明する。
【0096】
図4を参照して、冷却動作の開始時、制御部18は、まず、ブロワモータ22を動作させることにより、冷却空気を媒体供給部7に導入する(ステップS1)。
【0097】
次に、制御部18は、基準ダンパ32の開度を制御する(ステップS2)。すなわち、制御部18は、基準ダンパ32の目標開度を設定し、さらに、基準ダンパ32のダンパモータ45を駆動することで、当該目標開度に相当する値に、基準ダンパ32の開度を設定する。
【0098】
次に、制御部18は、チャンバ中間部温度T2を参照することで、チャンバ中間部温度T2を測定する(ステップS3)。
【0099】
次に、制御部18は、第1サブダンパ31の開度を制御する(ステップS4)。すなわち、制御部18は、第1サブダンパ31の目標開度を設定し、さらに、第1サブダンパ31のダンパモータ45を駆動することで、当該目標開度に相当する値に、第1サブダンパ31の開度を設定する。この際、制御部18は、検出したチャンバ中間部温度T2に基づいて目標温度T1tを演算する。そして、制御部18は、目標温度T1tとチャンバ上部温度T1との偏差(T1t−T1)が減少するように、第1サブダンパ31の開度を制御する。
【0100】
また、制御部18は、第2サブダンパ33の開度を制御する(ステップS5)。すなわち、制御部18は、第2サブダンパ33の目標開度を設定し、さらに、第2サブダンパ33のダンパモータ45を駆動することで、当該目標開度に相当する値に、第2サブダンパ33の開度を設定する。この際、制御部18は、検出したチャンバ中間部温度T2に基づいて目標温度T3tを演算する。そして、制御部18は、目標温度T3tとチャンバ下部温度T3との偏差(T3t−T3)が減少するように、第2サブダンパ33の開度を制御する。
【0101】
なお、第1サブダンパ31の開度制御(ステップS4)と第2サブダンパ33の開度制御(ステップS5)の順番を入れ替えてもよいし、これらのステップS4,S5が並行して行われてもよい。
【0102】
次に、制御部18は、チャンバ上部温度T1、チャンバ中間部温度T2、および、チャンバ下部温度T3を測定する(ステップS6)。そして、制御部18は、これらの温度T1〜T3が、冷却動作完了の目標温度Tftに到達したか否かを判定する(ステップS7)。
【0103】
温度T1〜T3が、目標温度Tftに到達した場合(ステップS8でYES)、制御部18は、ブロワモータ22の動作を停止させ(ステップS8)、チャンバ4および被処理物100の冷却動作を終了する。
【0104】
一方、温度T1〜T3が、冷却動作完了の目標温度Tftに到達していない場合(ステップS8でNO)、制御部18は、再び、ステップS3以降の制御を行う。
【0105】
以上説明したように、本実施形態によると、制御部18は、基準ダンパ32による冷却空気の供給態様を基準として、サブダンパ31,33による冷却空気の供給態様を制御する。この構成によると、制御部18によって、サブダンパ31,33による冷却空気の供給態様が制御される。これにより、被処理物100の枚数など、被処理物100の温度制御条件に変化が生じた場合に、サブダンパ31,33による冷却空気の供給態様を変更することができる。その結果、被処理物100の温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物100をより均等に冷却できる。また、基準ダンパ32による冷却空気の供給態様を基準として、サブダンパ31,33による冷却空気の供給態様が制御される結果、サブダンパ31,33の制御演算が発散することをより確実に抑制できる。よって、被処理物100へのより正確な温度制御が実現される。また、制御部18によってサブダンパ31,33が制御されるので、人力によるサブダンパ31,33の調整作業が不要である。以上の次第で、温度制御条件に変化が生じた場合でも、被処理物100をより均等に温度変化させることができるとともに、被処理物100をより均等に温度変化させるための調整作業を自動的に行うことのできる熱処理装置1を実現できる。
【0106】
また、本実施形態によると、制御部18は、基準ダンパ32の開度が一定である状態を基準として、サブダンパ31,33の開度を制御する。この構成によると、制御部18は、サブダンパ30の開度制御において、基準ダンパ32の開度を変更する必要がない結果、サブダンパ31,33の制御に必要な演算をより簡素にできる。また、サブダンパ31,33の開度制御において、ハンチングが生じることをより確実に抑制できる。
【0107】
また、本実施形態によると、制御部18は、チャンバ4のうち基準ダンパ32から冷却空気が供給される中間部4bにおける温度(チャンバ中間部温度T2)を基準として、サブダンパ31,33からチャンバ4へ供給される冷却空気の流量を制御するように構成されている。この構成によると、サブダンパ31,33からチャンバ4に供給される冷却空気によるチャンバ4の上部4aおよび下部4cの温度変化度合いを、基準ダンパ32からチャンバ4の中間部4bに供給される冷却空気によるチャンバ4の中間部4bの温度変化度合いとより等しくできる。
【0108】
また、本実施形態によると、制御部18は、チャンバ中間部温度T2とチャンバ上部温度T1との偏差(T2−T1)、および、チャンバ中間部温度T2とチャンバ下部温度T3との偏差(T2−T3)のそれぞれを減少させるように、サブダンパ31,33の開度を制御する。この構成によると、チャンバ4のうち基準ダンパ32から冷却空気が供給されるチャンバ4の中間部4bでの温度(チャンバ中間部温度T3)と、チャンバ4のうちサブダンパ31,33から冷却空気が供給されるチャンバ4の上部4aおよび下部4cにおける温度(チャンバ上部温度T1とチャンバ下部温度T2)とがより等しくなるように、制御部18がサブダンパ31,33を制御できる。
【0109】
また、本実施形態によると、制御部18は、第1サブダンパ31と第2サブダンパ33とが異なる動作を行うように各サブダンパ31,33を制御する。この構成によると、複数のサブダンパ31,33の動作によって、チャンバ4のより広い領域を均等に温度変化させることができる。また、チャンバ4の各領域を、よりきめ細かく温度制御できる。
【0110】
また、本実施形態によると、制御部18は、比例積分微分制御を用いて各サブダンパ31,33を制御するように構成されており、第1サブダンパ31の制御ゲインkp1と第2サブダンパ33の制御ゲインkp2とを異なる値に設定する。この構成によると、第1サブダンパ31は、目標とする冷却空気の供給態様(すなわち、開度)を実現するための応答速度をより高くできる。一方、第2サブダンパ33は、目標とする冷却空気の供給態様(すなわち、開度)を実現するための応答速度をより低くできる。このように、目標開度に対する応答速度の異なるサブダンパ31,33を組み合わせることで、熱の偏りが生じ易いチャンバ4に対して、より均等な温度変化を生じさせることが可能である。
【0111】
より詳細には、第1サブダンパ31からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置は、第2サブダンパ33からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置よりも高く設定されている。そして、制御部18は、第1サブダンパ31に関する制御ゲインkp1を第2サブダンパ33に関する制御ゲインkp2よりも大きく設定している。この構成によると、チャンバ4の熱は、上方に向かうため、チャンバ4の上部4aの熱量は、チャンバ4の下部4bの熱量よりも大きくなる傾向にある。よって、チャンバ4の上部4a側を冷却する第1サブダンパ31の制御ゲインkp1をより大きくすることで、チャンバ4の上部4a側に向けて、より迅速により多くの冷却空気を供給できる。これにより、熱のこもりやすいチャンバ4の上部4a側をより確実に冷却できる。一方、チャンバ4の下部4c側を冷却する第2サブダンパ33の制御ゲインkp2をより小さくすることで、チャンバ4の下部4c側に向けて、急激に過度の冷却空気が供給されることを抑制できる。これにより、熱が比較的逃げ易いチャンバ4の下部4c側が、チャンバ4の他の部分よりも先に冷却されることを抑制できる。その結果、チャンバ4の各部は、より均等に冷却される。
【0112】
また、第1サブダンパ31からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置は、開口部4dおよび奥部4eのうちの奥部4e寄りに設定されている。また、第2サブダンパ33からチャンバ4へ冷却空気が供給される位置は、開口部4dおよび奥部4eのうちの開口部4d寄りに設定されている。そして、制御部18は、第1サブダンパ31に関する制御ゲインkp1を第2サブダンパ33に関する制御ゲインkp2よりも大きく設定している。この構成によると、チャンバ4の熱は、奥部4eにこもりやすいため、奥部4eの熱量は、開口部4dの熱量よりも大きくなる傾向にある。よって、奥部4e側を冷却する第1サブダンパ31に関する制御ゲインkp1をより大きくすることで、チャンバ4の奥部4e側に向けて、より迅速により多くの冷却空気を供給できる。これにより、熱のこもりやすいチャンバ4の奥部4e側をより確実に冷却できる。一方、チャンバ4の開口部4d側を冷却する第2サブダンパ33に関する制御ゲインkp2をより小さくすることで、チャンバ4の開口部4d側に向けて、急激に過度の冷却空気が供給されることを抑制できる。これにより、熱が比較的逃げ易いチャンバ4の開口部4d側が、チャンバ4の他の部分よりも先に冷却されることを抑制できる。その結果、チャンバ4の各部は、より均等に冷却される。
【0113】
また、第1サブダンパ31の出口管46,47の他端位置と、第2サブダンパ33の出口管46,47の他端位置との間に、基準ダンパ32の出口管46,47の他端位置設定されている。この構成によると、複数のダンパ31,32,33によって、チャンバ4のより広い領域を冷却空気によってより均等に温度変化させることができる。また、チャンバ4のうち基準ダンパ32からの冷却空気が供給される箇所(中間部4b)以外の領域について、基準ダンパ32からの冷却空気が供給される箇所の近くに配置される割合を、より大きくできる。その結果、チャンバ4のより広い領域について、基準ダンパ32からの冷却空気が供給される中間部4bとの温度差を小さくできる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0115】
(1)上記の実施形態では、各サブダンパ31,33の開度制御が行われている間、基準ダンパ32の開度が一定である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、各サブダンパ31,33の開度制御が行われている間、基準ダンパ32の開度は、定期的に制御部18または人力によって変更されてもよい。
【0116】
(2)また、上記の実施形態では、ブロワ21の風量が一定である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、ブロワ21の風量は、チャンバ4の各部の温度T1,T2,T3などに応じて、制御部18によって変更されてもよい。
【0117】
(3)また、上記の実施形態では、ヒータ3の加熱動作が完了した後に媒体供給部7がチャンバ4および被処理物100の冷却処理を開始する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、媒体供給部7は、ヒータ3と協調動作されることにより、ヒータ3の停止動作の途中で媒体供給部7からチャンバ4に向けて冷却空気が供給されてもよい。
【0118】
(4)また、上記の実施形態では、サブダンパが2つ設けられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、サブダンパは、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0119】
(5)また、上記の実施形態では、制御部18が各ダンパ31,32,33の開度を制御する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、制御部18は、各ダンパ31,32,33を通過する冷却空気の圧力など、他の要素を制御対象としてもよい。
【0120】
(6)また、上記の実施形態では、冷却空気を制御する弁部材として、ダンパを例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、冷却空気を制御する弁部材として、電磁弁など、弁体の開度を調整可能な構成を有する他の弁部材が用いられてもよい。
【0121】
(7)また、上述の実施形態では、加熱蒸着などに用いられる炉に本発明が適用される場合を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、熱風循環炉などの他の炉を有する熱処理装置に本発明が適用されてもよい。
【0122】
(8)また、上述の実施形態では、熱処理用媒体として空気が用いられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、熱処理用媒体として、空気以外のガスが用いられてもよいし、水などの液体が用いられてもよい。熱処理用媒体として液体が用いられる場合、ブロワに代えて、ポンプが用いられる。
【0123】
(9)また、上述の実施形態では、冷媒供給部7がチャンバ4および被処理物100を冷却する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、チャンバ4などの容器、および、被処理物100を加熱する際に、本発明の構成が用いられてもよい。この場合、各ダンパ31,32,33は、加熱された空気などの熱処理用媒体をチャンバ4に向けて供給することとなる。
【0124】
(10)また、上述の実施形態では、チャンバ4が縦型炉である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、横向きに配置されたチャンバを有する熱処理装置に本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、熱処理装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 熱処理装置
4 チャンバ(容器)
4d 開口部
4e 奥部
7 媒体供給部
18 制御部
31 第1サブダンパ(サブ弁。一のサブ弁)
32 基準ダンパ(基準弁)
33 第2サブダンパ(サブ弁。他のサブ弁)
100 被処理物
T1 チャンバ上部温度(容器のうちサブ弁から媒体が供給される箇所における温度)
T2 チャンバ中間部温度(容器のうち基準弁から媒体が供給される箇所における温度)
T3 チャンバ下部温度(容器のうちサブ弁から媒体が供給される箇所における温度)
kp1,kp2 制御ゲイン
図1
図2
図3
図4