特許第6651452号(P6651452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651452
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20200210BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20200210BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20200210BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20200210BHJP
   C08L 61/10 20060101ALI20200210BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08J3/22CEQ
   C08K3/34
   C08K5/098
   C08L61/10
   C08L91/00
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-550267(P2016-550267)
(86)(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公表番号】特表2017-505373(P2017-505373A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2015051973
(87)【国際公開番号】WO2015117900
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年9月26日
【審判番号】不服2018-10966(P2018-10966/J1)
【審判請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】14153991.6
(32)【優先日】2014年2月5日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ハフ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ファン・ダイン
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 佐藤 健史
【審判官】 橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−20541(JP,A)
【文献】 特開2013−224347(JP,A)
【文献】 特開2015−63633(JP,A)
【文献】 特開2012−82422(JP,A)
【文献】 特開2013−224426(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2690136(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/16
C08K3/00-13/08
C08J3/00-3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫のためのプロセスにおける、加硫可能なゴム組成物との混合に使用するためのポリマー組成物であって、
a)エラストマー性ポリマー、
b)ゼオライト
を含み、前記ポリマー組成物中の前記成分a)およびb)の合計量が94重量%より高く、TGA測定を550℃まで続けた後に得られる残存物の量を規準にして、TGAにより25〜380℃の温度範囲において5℃/分の速度で測定した水の全量が15重量%未満であり、前記ゼオライト成分b)の量が、20〜90重量%であり、
加硫可能なゴム組成物が、
i)エラストマー性ポリマー、
ii)フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤、および
iii)活性化剤パッケージ
またはその個別の成分
を含み、前記ポリマー組成物と混合された後、任意選択的に成形および加硫される、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物中の前記成分a)およびb)の合計量が、98重量%より高い、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ゼオライト成分b)の量が、25〜90重量%である、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記エラストマー性ポリマーa)が、NR、IR、SBR、BR、NBR、XNBR、IIR、0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(BIIR)、0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(CIIR)、HNBR、SIBR、SNBR、EPDM、EPM、EVM、QM、FKM、AEM、CM、およびCSM、またはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、飽和および不飽和脂肪酸の金属塩、オレフィン系、パラフィン系およびその他の炭化水素ワックス、炭化水素プロセスオイル、ならびに加硫植物油からなる群から選択される加工助剤成分c)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ゼオライト成分b)が、2〜10オングストロームの開孔を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
成分a)およびb)が混合される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー組成物を製造するためのプロセス。
【請求項8】
i)エラストマー性ポリマー、
ii)フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤、および
iii)活性化剤パッケージ
またはその個別の成分
を含む加硫可能なゴム組成物が、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー組成物と混合され、任意選択的に成形および次いで加硫される、加硫のためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、それを製造するためのプロセス、および加硫可能なポリマー組成物を含む樹脂を加硫するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)および(特許文献2)からも公知のように、加硫可能なゴム組成物中での樹脂架橋剤の硬化速度、さらには硬化状態を改良する目的で、ゼオライトが使用されている。これらの所望の便益を達成するためには、ゼオライトが活性化された形態で使用され、それはほとんどの場合、ゼオライトを不活性化させる可能性がある、湿分およびその他の揮発分を除去するための乾燥処理による。そのような処理をするためには、ある程度の条件および装置が必要となり、この技術を適用することのみを望むすべての顧客でそれらが利用できるわけではない。従って、本発明の目的は、その活性を多大に失うことなく、再現性のある良好な硬化結果が得られるようにするための、加硫反応のためのゼオライトを提供する方法を見出すことであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第2441798号明細書
【特許文献2】欧州特許第2650327号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、ポリマー組成物であって、
a)ポリマー、および
b)ゼオライト
を含み、その組成物中の成分a)およびb)を合計量が、TGA測定を550℃まで続けた後に得られる残存物の量を規準にして、90重量%より高く、特には94重量%より高く、より好ましくは98重量%より高く、およびTGAにより25〜380℃の温度範囲において5℃/分の速度で測定した水の全量が15重量%未満である、ポリマー組成物を提供することによって達成される。
【0005】
ポリマー:
成分a)のポリマーは、熱可塑性プラスチック、エラストマー性ポリマー、またはそれらの混合物であってよい。
【0006】
熱可塑性ポリマーとしては、特には、エチレンベースのポリマー、たとえば高エチレンポリマー、たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ならびにエチレンとブチレン、ヘキセンおよびオクテンとのコポリマー(EBM、EHMおよびEOMプラストマー)、さらにはプロピレンベースのポリマー、たとえば、ポリプロピレン、またはプロピレンとエチレンとのコポリマー(PEM)、またはそれらの混合物が好ましい。
【0007】
成分a)のポリマーが、Rゴムのタイプのエラストマー性ポリマーであるのが好ましい。Rゴムは、加硫される前には、DIN/ISO 1629においてRゴムと定義されている不飽和ゴムを含んでいるのが好ましい。それらのゴムは、主鎖中に不飽和を有し、不飽和の主鎖に加えて、側鎖中にも不飽和を含んでいてもよい。
【0008】
Rゴムとしては、たとえば以下のものが挙げられる:天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、好ましくは0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(BIIR)、好ましくは0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(CIIR)、水素化もしくは部分水素化ニトリルゴム(HNBR)、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリルゴム(SNBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、およびポリクロロプレン(CR)、またはそれらの混合物。
【0009】
成分a)の別の好ましいポリマーは、Mゴムのタイプのエラストマー性ポリマーである。Mゴムとしては、たとえば以下のものが挙げられる:エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ゴム(CSM)、エチレンプロピレンコポリマー(EPM)、エチレン酢酸ビニルゴム(EVM)、シリコーンゴム(QM)、フルオロエラストマー(FKM)、およびエチレンアクリレートゴム(AEM)。
【0010】
本発明によるゴム組成物におけるMゴムと呼ばれるタイプのエラストマー性ポリマーは、当然のことながら、さらなる官能基によって変性することもできる。特に、ヒドロキシル、カルボキシル、無水物、アミノ、アミドおよび/またはエポキシ基によって官能化されたエラストマー性ポリマーがより好ましい。官能基は、適切なコモノマーを用いた共重合の手段によって重合の際に直接導入することもでき、または重合後にポリマー変性の手段によって導入することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、そのエラストマー性ポリマーが、以下のものである:天然ゴム(NR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化もしくは部分水素化ニトリルゴムニトリルゴム(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、ブチルゴム(IIR)、ポリクロロプレン(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、塩素化ポリエチレン(CM)、クロロスルホン化ゴム(CSM)、特には0.1〜10重量%の塩素含量を有する塩素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(CIIR)、特には0.1〜10重量%の臭素含量を有する臭素化イソブチレン−イソプレンコポリマー(BIIR)、ポリイソプレンゴム(IR),(EPM)、エチレン酢酸ビニルゴム(EVM)、シリコーンゴム(QM)、フルオロエラストマー(FKM)、エチレンアクリレートゴム(AEM)、またはそれらの混合物。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、そのエラストマー性ポリマーは、1,1−二置換されるか、または1,1,2−三置換された炭素−炭素二重結合を含む。そのような二置換および三置換された構造は、本発明におけるフェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤と特に満足なレベルで反応する。
【0013】
そのエラストマー性ポリマーは、好ましくは10〜150MUの範囲、特に好ましくは30〜80MUの範囲のムーニー粘度(ML(1+4),125℃)を有している(ISO 289−1:2005)。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態においては、そのエラストマー性ポリマーが、好ましくは10〜50MUの範囲、特に好ましくは30〜30MUの範囲のムーニー粘度(ML(1+4),125℃)を有している(ISO 289−1:2005)。
【0015】
好ましいエラストマー性ポリマーは、エチレンと、1種または複数のC〜C23α−オレフィンと、ポリエンモノマーとのコポリマーである、Mゴムである。エチレン、プロピレン、およびポリエンモノマーのコポリマー(EPDM)が最も好ましい。コポリマーを形成するのに適したその他のα−オレフィンとしては、以下のものが挙げられる:1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、およびスチレン、分岐鎖α−オレフィン、たとえば、4−メチルブテ−1−エン、5−メチルペンテ−1−エン、6−メチルヘプテ−1−エン、または前記α−オレフィンの混合物。
【0016】
それらのポリエンモノマーは、非共役ジエンおよびトリエンから選択されてもよい。ジエンまたはトリエンモノマーを共重合させることによって、1種または複数の不飽和結合を導入することができる。
【0017】
それらの非共役ジエンモノマーは、5〜14個の炭素原子を有しているのが好ましい。そのジエンモノマーが、その構造中にビニル基またはノルボルネン基が存在していることを特徴とするのが好ましく、環状化合物およびビシクロ化合物も含むことができる。代表的なジエンモノマーとしては、以下のものが挙げられる:1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−ヘプタジエン、および1,6−オクタジエン。コポリマーには、2種以上のジエンモノマーの混合物が含まれていてもよい。コポリマーを調製するために好ましい非共役ジエンモノマーは、1,4−ヘキサジエン(HD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)である。ENBが最も好ましいポリエンである。
【0018】
トリエンモノマーは、少なくとも2個の非共役二重結合と、約30個までの炭素原子とを有するであろう。本発明のコポリマーにおいて有用な典型的なトリエンモノマーは、以下のものである:1−イソプロピリデン−3,4,7,7−テトラヒドロインデン、1−イソプロピリデン−ジシクロ−ペンタジエン、ジヒドロ−イソジシクロペンタジエン、2−(2−メチレン−4−メチル−3−ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ−5−ヘプテン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、4−エチリデン−6,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、および3,4,8−トリメチル−1,4,7−ノナトリエン。
【0019】
エチレン−プロピレンまたは高級α−オレフィンのコポリマーは、好ましくは、約10〜90重量%、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%、特には45〜75重量%のエチレンから誘導された単位と、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%、またはより好ましくは1〜10重量%のポリエンから誘導された単位とを含んでおり、ここで、好ましくは、100重量%までのバランス量は、C〜C23α−オレフィンから誘導された単位の量である。
【0020】
好ましいエラストマーは、エチレンと、2〜23個の炭素原子を有するα−オレフィン、特にはプロピレンと、1,4−ヘキサジエン(HD)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、特にはENBまたはVNB、またはENBおよびVNBからなる群から選択されるジエンとをランダム共重合させることによって得ることが可能なエチレンα−オレフィンジエンゴムである。
【0021】
極めて好ましいエラストマー性ポリマーは、45〜75重量%のエチレンと、1〜10重量%のジエン、特にはENBと、バランス量のプロピレンとを共重合させたエチレンプロピレンジエンゴムである。
【0022】
20〜24MUのムーニー粘度(1+4)@125℃を有し、かつ3〜6重量%の量のENBを有する、単一のEPDMまたはEPDMのブレンド物が好ましい。
【0023】
本発明において好ましいその他のエラストマー性ポリマーはブチルゴムであり、これは、イソオレフィンを、1分子あたり4〜14個の炭素原子を有する少量のポリエンと共重合させることによって作られるタイプの合成ゴムである。そのイソオレフィンは、一般的には4〜7個の炭素原子を有しており、イソブチレンまたはエチルメチルエチレンなどのイソオレフィンが好ましい。ポリエンは通常、4〜6個の炭素原子を有する脂肪族共役ジオレフィンであり、イソプレンまたはブタジエンであるのが好ましい。その他の好適なジオレフィンとしては以下の化合物が挙げられる:ピペリレン;2,3−ジメチルブタジエン−1,3;1,2−ジメチルブタジエン−1,3;1,3−ジメチルブタジエン−1,3;1−メチルブタジエン−1,3、および1,4−ジメチルブタジエン−1,3。ブチルゴムには、比較的少量の共重合ジエンを含んでおり、その量は、エラストマーの全重量を基準にして、典型的には約0.5〜5重量%であり、10重量%を超えることは稀である。利便性および簡潔性のために、このクラスの範囲に入る可能性のある各種の合成ゴムは、「ブチルゴム」の用語で一般的に呼ぶものとする。
【0024】
好ましいブチルゴムは、40〜60のムーニー粘度ML(1+8)@125℃を有するイソブチレン−イソプレンコポリマーである。そのようなブチルゴムが、0.89〜0.94g/cmの密度および1.85±0.2mol%の不飽和レベルを有しているのが好ましい。
【0025】
本発明においてさらに好ましいエラストマー性ポリマーは、特に天然ゴムおよびその合成相当品のポリイソプレンゴムである。
【0026】
本発明によるポリマー組成物には、上述のエラストマー性ポリマー以外のポリマーを含んでいてもよい。そのようなポリマーとしては、以下のものが挙げられる:ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンゴム(EPM)、エチレンと、ブチレン、ヘキシレンまたはオクチレンとのコポリマー、アクリル系ポリマー(たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど)、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、スチレン−エチレン−ブチレンスチレンブロックコポリマー(SEBS)、およびエポキシ樹脂。
【0027】
ゼオライト:
本発明の熱可塑性エラストマー組成物中に含まれるゼオライトは、三次元の多孔質構造を有する、天然または合成の結晶性アルミナ−シリケートミクロポーラス材料であってよい。ゼオライトは、それらの化学的組成およびX線回折パターンで求められる結晶構造によって、明白に区別することができる。欧州特許第2441798号明細書に記載されているように、ゼオライトは、レゾール硬化ゴムにおいて、硬化速度を加速する目的ですでに使用されている。
【0028】
可能なゼオライトについては、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyにすでに記載がある。
【0029】
アルミナが存在しているために、ゼオライトは負に荷電する骨格を示し、それが正のカチオンと釣り合いをとることになる。それらのカチオンは交換することが可能であり、それによって孔径および吸着特性が影響を受ける。好ましいのは、ゼオライトAタイプのカリウム、ナトリウム、およびカルシウム形である。好ましいゼオライトは、およそ2〜10オングストロームの気孔の大きさを有している。特に、2〜10オングストローム、特には3〜6オングストロームの気孔の大きさを有するゼオライトAが好ましい。好ましいのは、それぞれおよそ3、4、および5オングストロームである。従って、それらは、ゼオライト3A、4A、および5Aと呼ばれている。プロトンを用いて金属カチオンをイオン交換させることも可能である。
【0030】
合成ゼオライトのさらなる例としては、ゼオライトXタイプおよびゼオライトYタイプがあり(これらに限定されない)、これらは当業者には周知である。限定されないが、天然由来のゼオライトの例としては、モルデナイト、フォージャサイト、およびエリオナイトがある。
【0031】
ゼオライト成分b)のさらに好ましい実施形態については、以下の製造プロセスにおいて説明する。
【0032】
本出願の成分b)に従うゼオライトは、水を含んでいてもよい。この含量は、そのマスターバッチについて、上述の方法によって測定することができる。
【0033】
加工助剤
本発明によるポリマー組成物にはさらに、成分c)として加工助剤を含んでいてもよく、ここで加工助剤とは、ゼオライト成分b)とポリマー成分a)との混合に役立たせるものと理解されたい。ゼオライトの使用量が多くなるほど、そのような成分c)の加工助剤の使用が有効となる。
【0034】
本発明による組成物の加工助剤c)は、好ましくは、プロセスオイル、ステアリン酸塩、およびワックスからなる群から選択される。加工助剤c)としては、特に以下のものが挙げられる:飽和脂肪酸(たとえば、ステアリン酸)および不飽和脂肪酸(たとえば、オレイン酸)の金属塩(たとえば、亜鉛、マグネシウム、およびカルシウム塩)、オレフィン系、パラフィン系、およびその他の炭化水素ワックス、炭化水素プロセスオイル、ならびに加硫植物油。さらには、識別を目的とした染料、または好ましくは顔料のような着色剤もまた、加工助剤c)として考慮してもよい。
【0035】
そのポリマー組成物が、ポリマー組成物を規準にして、好ましくは0〜10重量%、特には0〜5重量%、最も好ましくは0〜2重量%の範囲の量で成分c)を含む。
【0036】
本発明による好ましいポリマー組成物においては、ゼオライト成分b)の量が、20〜90重量%、特には25〜90重量%である。成分a)の好ましい量は、10〜80重量%、好ましくは10〜75重量%、特には10〜65重量%である。任意成分の加工助剤c)の好ましい量は、高分子量ポリマー組成物を規準にして、0〜10重量%、特には0〜5重量%、より好ましくは0〜2重量%である。
【0037】
本発明によるエラストマー組成物は、「マスターバッチ」と呼ばれることもある。本発明はさらに、本発明によるポリマー組成物を製造するためのプロセスであって、成分a)、b)、および任意選択的にc)が混合される、プロセスにも関する。好ましい実施形態においては、その混合プロセスは、インターナルミキサー中、エクストルーダー中、またはミル上で実施される。成分b)の少なくとも1種のゼオライトは、任意選択的に成分a)の少なくとも1種のポリマーを添加する前か、添加と同時か、または成分a)の少なくとも1種のポリマーをその混合プロセスに添加した後かのいずれかで、その混合プロセスに添加してよい。同様にして、任意成分の加工助剤c)の添加も、いずれの添加タイミングがその混合プロセスに最も効果的と考えるかに依存して、混合プロセスのいずれの時点で実施してもよい。
【0038】
混合の際に、その混合物を加熱してもよい。最初にポリマーa)を混練し、次いで成分b)の少なくとも1種のゼオライトを、任意成分c)の少なくとも1種の加工助剤と共に添加することによって、混合を実施するのが好ましい。
【0039】
本発明において調製されるポリマー組成物は、その混合プロセスからバルクで回収することもでき、またはシート、スラブ、もしくはペレットの形態で成形することもできる。エラストマー性組成物の成形は、混合後に独立した成形工程として実施することができる。
【0040】
好ましい実施形態においては、そのエラストマー組成物の成形を、ミル加工、押出し加工、またはカレンダー加工で実施する。
【0041】
本発明の利点は、そのポリマー組成物が倉庫で保管されている間も極めて安定であり、そのため、同一の通常の環境条件下に同様に曝露されたゼオライト粉体に比較して、樹脂の硬化を活性化させる性能に関して有用なレベルの官能性を保持できるという点にある。
【0042】
成分a)およびc)ならびにその好ましい実施形態が本発明によるエラストマー組成物の製造に関わる限りにおいて、それらはすでに先に述べた。ゼオライトb)に関しては、出発物質として使用されるゼオライトの湿分含量が1.5重量%未満であるのが好ましい。ポリマーとのゼオライトの混合が完了するまで、ゼオライトは、周囲環境から追加の水を取り込む可能性がある。しかしながら、好ましくは、湿分レベルを好ましくは1.5重量%未満のレベルに維持できるように備えられた密閉された容器または任意のその他の包装形態から、好適な乾燥ゼオライトを取り出してから、ポリマーとの混合が完了するまでの時間は、好ましくは1時間以内、好ましくは45分以内、特には30分以内とするべきである。この時間制限は、ゼオライトによる水の取り込みを制限して、ゼオライトのマスターバッチ組成物の機能に悪影響を与える可能性があるレベル未満に保持するために好ましい。本発明のゼオライトのマスターバッチ組成物におけるゼオライトの最終的な水分含量は、好ましくは15重量%未満、特には13重量%未満である。
【0043】
本出願に関連して、「1.5重量%未満の湿分含量を有するゼオライト」という用語は、以後において「活性化ゼオライト」とも呼ぶものとする。そのように予め吸着されている分子の典型例としては、低分子量の極性化合物または炭化水素がある。しかしながら、ゼオライトが、湿分の形態の水分子を含んでいてもよく、これについては以下において説明する。そのような分子の吸着は、ゼオライトの活性を低下させることになるであろう。
【0044】
活性化ゼオライトは、高温および/または低圧処理にかけて、それらの成分を実質的に分解するかおよび/またはその細孔から除去することによって得ることができる。好ましい実施形態においては、活性化ゼオライトが、好ましくは少なくとも170℃の温度および低圧力、特には300mmHg未満の圧力の処理にかけることによって得られ、特には、300mmHg未満、特には50mmHg未満、好ましくは15mm未満の圧力と、少なくとも170℃の温度で、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも12時間、特には少なくとも24時間かけてゼオライトを処理することによって得られる。活性化させるゼオライトについては、以下において説明する。良好な活性を有する活性化ゼオライトは、市販のゼオライト、特に粉体の形態のゼオライト5Aを、180℃、10mmHgで48時間処理することによって得ることができる。処理はさらに、ゼオライトを200℃、減圧下で24時間保存することからなっていてもよく、その際の好ましい圧力は、先に挙げた範囲とする。そのようなゼオライトの活性化プロセスは、乾燥剤に適したゼオライトを製造する当業者には周知である。その活性化ゼオライトが、0.5重量%未満の水の水分含量を有する乾燥ゼオライトであるのが好ましく、0〜1重量%を含んでいるのが好ましい。その活性化ゼオライトが、0.1重量%を超える酸ハロゲン化物を含まないのが特に好ましい。ゼオライトの失活は、ゼオライトの細孔中に、たとえば水、炭化水素、酸または塩基などの化合物が拡散し、活性化プロセスによって存在していた、たとえば酸素および窒素などの潜在的に存在している不活性ガスを追い出すことによって、進行する可能性がある。
【0045】
活性化ゼオライトを、それから湿分および/または他の化合物を吸収するであろう環境に曝露させると、ゼオライトの偶発的な失活が起きるであろう。本発明の組成物が主として調製され、使用されるゴム加工の環境においては、湿分による偶発的な失活を回避することは困難であり、従って、特に湿分によって活性化ゼオライトがかなり失活することが本発明の範囲に入ると考えられることを認識しておくべきである。本発明による組成物に含まれるゼオライトの湿分によるそのような失活は、周囲条件下における最大湿分失活の、75%、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満のレベルに達する可能性があるであろう。湿分失活がかなりの程度で許容されるのに対して、本発明の組成物に含まれる活性化ゼオライトの、水以外の化合物による担持量は、活性化ゼオライトに比較して、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。
【0046】
米国特許第3,036,986号明細書には、強酸を使用することにより、ブチルゴム配合物の硬化反応を促進させるための方法が記載されている。前記強酸は、結晶質のゼオライト系モレキュラーシーブ吸着剤の細孔中に、少なくとも5重量%の担持レベルで含まれた状態で配合物中に導入される。
【0047】
ゼオライト化合物b)を良好に分散させるためには、そのゼオライトが、微細で小さい分散可能な粒子の形態であるのが好ましく、それには、凝集させて、より大きい凝集体にしてもよく、またはペレットに加工してもよい。一般的には、その分散された平均粒径が0.1〜200μmの範囲であり、ゼオライトが0.2〜50μmの平均粒径を有していればより好ましい。このことによって、ポリマー組成物中に、さらには本発明のポリマー組成物を使用することによって得られる加硫可能なゴム組成物中に、良好に分散された大量のサイトが生じ、加硫可能なゴム組成物の硬化速度を上げるのに最高の効果を与え、しかも成形および加硫させた物品の表面品質に悪影響を及ぼすこともないであろう。
【0048】
本発明はさらに、加硫物を製造するためのプロセスであって、
i)エラストマー性ポリマー、
ii)フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤、および
iii)活性化剤パッケージ、
またはその個別の成分
を含む加硫可能なゴム組成物が、本発明によるポリマー組成物と混合され、任意選択的に成形および次いで加硫させる、プロセスにも関する。
【0049】
加硫可能なゴム組成物としてのエラストマー性ポリマーi)は、Rゴム、Mゴム、またはそれらの混合物であってよい。そのようなゴムのタイプおよび好ましい実施形態については先に述べた。
【0050】
それに加えて、そのエラストマー性ポリマー成分i)には、上述のエラストマー性ポリマーとは別のポリマーがさらに含まれていてもよい。エラストマー性ポリマーとは異なるそのようなポリマーとしては、以下のものが挙げられる:熱可塑性ポリマー、特にはエチレンベースのポリマー、たとえば高エチレンポリマー、たとえば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ならびにエチレンとブチレン、ヘキセンおよびオクテンとのコポリマー(EBM、EHM、およびEOMプラストマー)、さらにはプロピレンベースのポリマー、たとえばポリプロピレン、またはプロピレンとエチレンとのコポリマー(PEM)、またはそれらの混合物が好ましい。さらには、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、塩素化ポリエチレン、ウレタンポリマー、スチレンポリマー、シリコーンポリマー、スチレン−エチレン−ブチレンスチレンブロックコポリマー(SEBS)、およびエポキシ樹脂が存在していてもよい。
【0051】
エラストマーとしてEPDMを使用する場合、さらなるゴムとしては、EPMが好ましい。
【0052】
成分ii)フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤
「フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤」、「フェノール樹脂」、「樹脂架橋剤」または「レゾール」という用語は、本明細書においては同一の意味を有しており、ゴム硬化剤として使用される、フェノールとホルムアルデヒドとをベースとする縮合反応生成物を表すものとする。
【0053】
さらに、「架橋(cross−linking)」、「硬化(curing)」および「加硫(vulcanizing)」といった用語も単一の意味で使用されており、本出願に関連して完全に相互に言い換え可能であり、すべて、ゴム鎖間またはそのペンダント基間で共有結合が生成することによるポリマーネットワークの熱硬化または固定を表している。
【0054】
成分ii)のフェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤は、本発明による組成物においては、そのままで存在していることもでき、またはフェノールおよびフェノール誘導体と、アルデヒドおよびアルデヒド誘導体とから、組成物中でインサイチュープロセスによって形成することもできる。フェノール誘導体の適切な例としては以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レソルシノール、メラミンおよびホルムアルデヒド、特にパラホルムアルデヒドとしておよびヘキサメチレンテトラミンとしてキャップされた形態にあるもの、さらにはより高級なアルデヒド、たとえば、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸エステル、およびグリオキサール。
【0055】
アルキル化フェノールおよび/またはレソルシノールとホルムアルデヒドとをベースとするレゾールが特に好適である。
【0056】
好適なフェノール樹脂の例は、オクチル−フェノールホルムアルデヒド硬化樹脂である。このタイプの市販されている樹脂としては、たとえばRibetak R7530E(Arkema製)、またはSP1045(SI Group製)などがある。
【0057】
100部のエラストマー性ポリマーi)あたり0.5〜20部の成分ii)のフェノール樹脂が存在すれば、良好なゴム製品が得られる。フェノール樹脂を、好ましくは1〜15部、より好ましくは2〜10部存在させる。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態においては、そのフェノールホルムアルデヒド樹脂ii)がハロゲン化されている。そのようなハロゲン化樹脂は、上述のフェノール樹脂と、以下に記すハロゲン化有機化合物との官能性を併せ持つ。臭素化フェノール樹脂が好ましい。市販されているこのタイプの樹脂としては、たとえば、SP1055(SI Group製)がある。
【0059】
成分iii)活性化剤パッケージ
この活性化剤パッケージには、フェノール樹脂と協同して作用する、1種または複数の加硫促進剤または触媒が含まれる。
【0060】
ゴム組成物中における加硫促進剤の基本的な機能は、硬化速度を高めることである。そのような反応剤は、加硫ゴム組成物の架橋密度、それに対応する物理的性質にも影響する可能性があるため、いかなる加硫促進添加剤であっても、そのような物性を改良する傾向を有しているはずである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態においては、その活性化剤パッケージiii)が金属ハロゲン化物を含んでいる。
【0062】
本発明の金属ハロゲン化物加硫促進剤の例としては、酸性ハロゲン化物として知られているもの、たとえば、塩化スズ、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、および一般的には、元素周期律表の第三族以上の各種の金属のハロゲン化物などが挙げられる。このクラスのものとしては、特に、塩化第一鉄、塩化クロムおよび塩化ニッケル、さらには塩化コバルト、塩化マンガンおよび塩化銅が挙げられる。金属塩化物は、本発明の組成物における好ましいクラスの加硫促進剤を構成している。しかしながら、他のハロゲン化物の金属塩、たとえば、臭化アルミニウムおよびヨウ化第二スズを用いても促進させることは可能である。金属フッ化物、たとえばフッ化アルミニウムも促進させることが可能であるが、フッ化アルミニウムが特に望ましいわけではない。金属塩化物の中でも、最も好ましいのは、スズ、亜鉛、およびアルミニウムの塩化物である。
【0063】
重金属ハロゲン化物は、その金属の酸化状態とは無関係に効果があり、そのハロゲン化物が部分的に加水分解されているか、またはたとえばオキシ塩化亜鉛におけるように、部分的ハロゲン化物でしかない場合には、さらに効果が高い。
【0064】
ゴム組成物の調製を改良するためには、錯形成剤、たとえば、水、アルコール、およびエーテルを用いて、金属ハロゲン化物をさらに配位させるのが望ましい。そのような錯体化金属ハロゲン化物は、ゴム組成物中における改良された溶解性および分散性を有している。好ましい例は、二塩化スズ二水和物である。活性化剤パッケージiii)としての金属ハロゲン化物の好ましい量は、100部のエラストマー性ポリマーi)あたり0.25〜5.0部、好ましくは0.5〜2部である。
【0065】
本発明の別の好ましい実施形態においては、その活性化剤パッケージiii)にハロゲン化有機化合物を含む。
【0066】
好適なハロゲン化有機化合物は、金属化合物の存在下で、それからハロゲン化水素が解離される化合物である。
【0067】
ハロゲン化有機化合物としては、たとえば以下のもの挙げられる:塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデンおよび/またはその他の重合性化合物のポリマーまたはコポリマー;ハロゲン含有プラスチック、たとえばポリクロロプレン;ハロゲン化、たとえば塩素化または臭素化ブチルゴム;高密度もしくは低密度ポリエチレンまたは高級ポリオレフィンのハロゲン化反応生成物またはクロロスルホン化反応生成物;ポリ塩化ビニルとアクリロニトリル−ブタジエンコポリマーとのコロイド状混合物;それ自体が解離可能であるかまたはハロゲン化水素を解離することが可能なハロゲン原子を含む、ハロゲン化炭化水素、たとえば天然由来または合成由来のパラフィン系炭化水素の液状または固体の塩素化反応生成物;ハロゲン含有ファクチス、塩素化酢酸;酸ハロゲン化物、たとえば、ラウロイル、オレイル、ステアリルまたはベンゾイルの塩化物または臭化物;または、たとえばN−ブロモスクシンイミドもしくはN−ブロモ−フタルイミドなどの化合物。
【0068】
活性化剤パッケージiii)としてのハロゲン化有機化合物の好ましい量は、100部のエラストマー性ポリマーi)あたり0.5〜10.0部、好ましくは2〜5部である。
【0069】
本発明の1つの実施形態においては、その活性化剤パッケージiii)に重金属酸化物がさらに含まれる。本発明に関連して重金属とみなしているのは、少なくとも46g/molの原子量を有する金属である。その重金属酸化物が、酸化亜鉛、酸化鉛または酸化第一スズであるのが好ましい。
【0070】
そのような重金属酸化物は、上述のハロゲン化有機化合物および/またはハロゲン化フェノール樹脂と組み合わせると特に有用であると認められる。本出願の実験で記載されるさらなる利点は、硬化速度の穏和性、たとえば、スコーチ抑制性、ならびにその加硫された化合物の加熱エージングに対する安定性である。
【0071】
本発明による組成物における重金属酸化物の利点は、加硫されたゴム組成物の改良された加熱エージング性能であり、それは、加熱エージング後でも引張性能が保持されることに反映されている。
【0072】
100部のエラストマー性ポリマーi)あたり0.5〜10.0部の重金属酸化物を用いることにより、良好な結果が得られる。好ましくは0.5〜5.0部、より好ましくは1〜2部の重金属酸化物を使用する。受容可能なスコーチ時間および加硫された化合物の良好な熱安定性を達成するためには、十分な量の重金属酸化物を使用することが重要である。使用する重金属酸化物が多すぎると、硬化速度が実質的に低下することになるであろう。
【0073】
活性化剤パッケージiii)が、ゴム組成物中に、100部のエラストマー性ポリマーi)あたり0.25〜10.0部、好ましくは0.25〜5部の量で存在しているのが好ましい。
【0074】
加硫物を製造するために使用される本発明によるポリマー組成物の量は、成分i)の、好ましくは、0.1〜20phr(100部のゴムi)あたり)、より好ましくは0.5〜15phr、最も好ましくは1〜10phrである。加硫可能なゴム組成物には、フェノールホルムアルデヒド樹脂とは異なる少なくとも1種の架橋剤をさらに含んでいてもよい。
【0075】
フェノールホルムアルデヒド樹脂とは異なる架橋剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:硫黄、硫黄化合物、たとえば4,4’−ジチオモルホリン;有機ペルオキシド、たとえば、ジクミルペルオキシド;ニトロソ化合物、たとえばp−ジニトロソベンゼン、ビスアジド、およびポリヒドロシラン。1種または複数の架橋性加硫促進剤および/または架橋助剤(coagent)を存在させて、架橋剤を支援させることもできる。一般的な加硫促進剤と組み合わせた硫黄、または一般的な架橋助剤と組み合わせ有機ペルオキシドが好ましい。
【0076】
さらなる架橋剤を存在させることによって、ゴム化合物の改良された硬化状態、および改良された加硫ポリマーの物性が得られる可能性がある。そのような改良は、架橋剤の相乗的効果、それぞれ個別の架橋剤による二重のネットワーク形成、またはゴムブレンド物の場合にはゴム相の硬化非相溶性などからもたらされうる。
【0077】
加硫可能なゴム組成物中にさらなる架橋剤が存在している場合においては、エラストマー性ポリマー100重量部あたり0.1〜20重量部のさらなる架橋剤を用いると、良好な結果が得られる。エラストマー性ポリマー100重量部あたり、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.3〜5重量部の架橋剤を使用する。2種以上のさらなる架橋剤を採用する場合には、先に述べたさらなる架橋剤の量が、その採用した複数のさらなる架橋剤を合計したものに相当する。
【0078】
加硫可能なゴム組成物にはさらに、加工助剤、充填剤、およびワックスが含まれていてもよい。
【0079】
加工助剤
加工助剤としては、たとえば、ステアリン酸およびその誘導体が挙げられる。これらの加工助剤は、単独で使用してもよく、または2種以上の組合せで使用してもよい。加硫可能なゴム組成物中に加工助剤が存在している場合においては、その加工助剤の量は、たとえば0.1〜20phr、好ましくは1〜10phr(ゴム100部あたりの部数)の範囲である。2種以上の加工助剤を採用する場合には、先に述べた加工助剤の量が、その採用した複数の加工助剤を合計したものに相当する。
【0080】
充填剤としては、たとえば以下のものが挙げられる:カーボンブラック、カーボンナノチューブ、無機充填剤、たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸、およびそれらの塩、クレー、ナノクレー、タルク、マイカ粉末、ベントナイト、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、アセチレンブラック、およびアルミニウム粉末;有機充填剤、たとえばコルク、セルロース、ならびにその他の公知の充填剤。これらの充填剤は、単独で使用してもよく、または2種以上の組合せで使用してもよい。
【0081】
実際、本発明によるマスターバッチの、加硫可能なゴム組成物またはその個別の成分との混合とは、加硫可能なゴム組成物およびポリマーエラストマー組成物の全部の成分を合わせて混練させることであると考えられる。
【0082】
加硫可能なゴム組成物またはその成分に、エラストマー性ポリマーi)を規準にして、100%ゼオライト含量として計算して1〜20phr、好ましくは5〜10phrの量でマスターバッチを添加するのが好ましい。
【0083】
充填剤、軟化剤、保護系、活性化剤、および硬化系を含むゴムコンパウンディング構成成分を、ゴムマトリックス中に組み入れ、分散させることを目的として設計された、接線型またはかみ合い型のいずれかのローターを有するインターナルミキサーにおいて混練を実施するのが好ましい。典型的には、すべてのゴムコンパウンディング構成成分を良好に組み入れることを確保するのに十分な時間で、しかもそれより高いと硬化系の加硫が起きてしまう温度よりは低い温度に保って、混合工程を進行させる。樹脂硬化コンパウンド物の場合、その混合温度は、85〜110℃、好ましくは90〜95℃の範囲にするべきである。
【0084】
混練の際に、その混合物を加熱してもよい。ステアリン酸などの加工助剤は、そのプロセスに対してどのような改良が所望されるかに応じて、フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤および活性化剤パッケージの添加の前、途中、または後に、任意選択的に添加してよい。フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤、活性化剤パッケージおよび任意の二次的な架橋剤成分の添加は、同一の混合装置において実施可能であるのに対して、プレミックスの冷却およびそれらの成分の添加は、2本ロールミルなどの第二の混合装置で容易に実施することができる。そのような第二の混合装置の使用は、フェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤、活性化剤パッケージおよび任意の二次的な架橋剤成分が熱の影響を受けやすいことを考慮すると、混練プロセスにおける温度の調節が困難である場合においては有利となり、それによって、より低い温度で混合して組成物とすることができる。
【0085】
本発明によるエラストマー組成物と混合した加硫可能なゴム組成物は、バルクにおいて、またはシート、スラブもしくはペレットの形態で成形して、その混合プロセスから回収することができる。エラストマー性組成物の成形は、混合後で、加硫プロセスの前または加硫プロセスの間に、個々の成形工程として実施することができる。
【0086】
好ましい実施形態においては、加硫可能なゴム組成物の成形は、押出成形、カレンダー成形、圧縮成形、トランスファー成形、または射出成形によって実施する。
【0087】
そのようにして調製された加硫可能なゴム組成物を、硬化過程が起きる温度にまで加熱すると、それによって架橋されたゴム組成物が得られる。本発明の特徴は、活性化ゼオライトを存在させることによって、硬化プロセスを起こさせる温度を下げることが可能となり、その結果として、より経済的なプロセスとなることである。さらに、加硫温度が低いと、加硫ゴム組成物の劣化が少ないことにもなるであろう。
【0088】
好ましい実施形態においては、ゴム組成物の硬化は、以下の方法で実施される:スチームオートクレーブ法、赤外線ヒータートンネル法、マイクロ波トンネル法、加熱空気トンネル法、塩浴法、流動床法、モールド法、またはそれらの方法の任意の組合せ。
【0089】
本発明の利点は、そのフェノールホルムアルデヒド樹脂架橋剤を含む加硫可能なゴム組成物の加硫時間が5秒〜30分であり、加硫温度が120〜250℃の範囲であることである。加硫時間が、15秒〜15分であり、加硫温度が140〜240℃の範囲であれば、より好ましい。加硫時間が1分〜10分であり、加硫温度が160〜220℃の範囲であれば最も好ましい。
【0090】
硬化プロセスは、公知であり、ゴム組成物を硬化させるのに適したものであれば、いかなる装置でも実施することができる。これは、静的なプロセス、さらには動的なプロセスのいずれのプロセスでも実施することができる。第一のケースにおいては、加熱した形を使用することによる、所定の形状での硬化すなわち熱成形を挙げることができる。
【0091】
動的なプロセスが、たとえば押出し法によって成形する工程と、その成形したゴム組成物を硬化セクション(たとえば、加熱空気トンネル)に連続的にフィードする工程とを含んでいるのが好ましい。ゴム組成物の成形にエクストルーダーを使用する場合には、その温度を注意深く調節して、早すぎる加硫、たとえばスコーチを起こさないようにするべきである。次いでその混合物を、そのゴム組成物が加硫される条件にまで加熱する。
【0092】
任意選択的に、硬化させた組成物を後硬化処理にかけて、加硫時間をさらに長くする。
【0093】
ゴム組成物を硬化させるための方法は、上述のプロセスに特に限定されない。別の方法として、カレンダー法などを用いて組成物をシートの形状に成形し、次いでスチームオートクレーブ内で硬化させることもできる。別の方法として、ゴム組成物を、射出成形法、プレス成形法、またはその他の成形方法を用いて、複雑な形状、たとえば凹凸のある形状に成形し、次いで硬化させることも可能である。
【0094】
好ましくは,本発明におけるプロセスは、通常の周囲空気の圧力で、酸素の存在下に加硫可能なゴム組成物を加熱することによって、加硫を実施することを特徴としている。
【0095】
このプロセスオプションは、そのようにして調製した加硫可能なゴム組成物を、バッチプロセスとしてか、またはゴム組成物が成形され、連続的に加熱空気硬化オーブン内を通過するプロセスによるかのいずれかで、通常の周囲空気の圧力で加熱空気中で、硬化過程が起きる温度に加熱して、それによって架橋されたゴム組成物が得られるように実施するのが好ましい。好ましい加熱空気硬化温度は115〜260℃、好ましくは160〜220℃である。
【0096】
本発明はさらに、本発明におけるプロセスによって調製された加硫された物品にも関する。
【0097】
本発明がさらに有利なのは、本発明のマスターバッチから調製した加硫された物品が、高い最終的な硬化状態(MH)を示すことにある。本発明における加硫された物品のさらなる特徴は、低温(−25℃)および高温(150℃)のいずれにおいても圧縮永久歪みが小さいこと、および引張強度が高いことである。別の特徴は、加硫された物質の熱老化安定性が良好なことであって、それは、長時間の温度処理をしても、その引張性能には極めて限られた劣化しか認められないことに現れている。
【0098】
本発明によって加硫された物品のための典型的な用途としては、以下のものが挙げられる:自動車セグメントにおいては、たとえば排気管ハンガー、前灯シール、エアホース、封止用形材、エンジンマウント、建築建設セグメントにおいては、たとえば、シールズビルディングプロファイル(seals building profile)およびゴムシーティング、一般的なゴム製品においては、たとえば、コンベヤベルト、ローラー、化学ライニング、および繊維強化軟質構造物(textile reinforced flexible fabrication)。
【実施例】
【0099】
一般的手順
実施例のゼオライト/ポリマーマスターバッチは、かみ合いローターブレードを有する容量3リットルのインターナルミキサー(Shaw K1 Mark IV Intermix)を使用し、開始温度25℃で調製した。ゼオライト5Aは、ゼオライト/ポリマーのマスターバッチの混合より前、10分以内に秤量した。最初にエラストマー性ポリマーをミキサーに導入し、45rpmのローター速度を使用して、30秒間かけて破砕させ、その後、ゼオライト5A粉体(アルミノシリケート粉体、粒径50μm未満、1.5重量%未満の湿分含量で供給されたもの)を添加した。同一のローター速度を維持しながら、40重量%のマスターバッチに対して140℃のバッチ温度に達するまで(全部で8分の混合時間)、80重量%のマスターバッチに対して155℃に達するまで(全部で13分の混合時間)混合を進め、そこでバッチをインターナルミキサーから取り出し、2本ロールミル(Troester WNU 2)に移して、冷却し、厚み5mmのシートに成形した。
【0100】
それぞれのゼオライト/ポリマーのマスターバッチ組成物を十分な量で製造して、試験期間全体にわたって、比較例を繰り返して混ぜ込めるようにした。
【0101】
ゼオライト/ポリマー組成物を製造してから24時間以内に、ゼオライト/ポリマーのマスターバッチを製造するために使用したのと同じ品質のゼオライト粉体と、ゼオライト/ポリマーのマスターバッチとの両方を使用して、初期実施例および比較例を実施した。
【0102】
実施例および比較例の加硫可能なゴム組成物もまた、かみ合いローターブレードを有する容量3リットルのインターナルミキサー(Shaw K1 Mark IV Intermix)を使用し、開始温度25℃で調製した。最初に、エラストマー性ポリマーをミキサーに導入して、45rpmのローター速度を使用し、30秒かけて破砕させ、その後、カーボンブラック、鉱油、およびゼオライト(粉体として、またはゼオライト/ポリマーのマスターバッチとしてのいずれかで)を添加した。混合温度が70℃に達するまで混合を続けさせ、そこで、硬化樹脂および活性化剤を添加した。混合温度が80℃に達するまで、さらに混合を続けさせてから、そこで、混合温度を80℃に維持するのに十分な程度にローター速度を下げて、1分間混合させた。次いで、PE AC 617ワックスおよびステアリン酸を添加し、さらに1分間混合を続け、その間、混合温度は80℃に維持した。次いでそのバッチを2本ロールミル(Troester WNU 2)に移して、冷却し、ブレンドして、高レベルの成分分散体を得た。
【0103】
初期の実施例および比較例を調製するのに使用しなかった残りのゼオライト/ポリマーのマスターバッチ組成物およびゼオライト粉体を、温湿度が調節されていない貯蔵場所に、露出させた状態で隣同士で貯蔵しておいた。3ヶ月の貯蔵期間後、ゼオライト粉体およびゼオライト/ポリマーのマスターバッチ組成物の両方を使用して、新しい実施例および比較例を実施した。
【0104】
樹脂硬化を活性化させる性能に関するゼオライトの官能性の保持率を、実施例および比較例の硬化レオロジー(cure rheology)を比較することによって求めた。硬化レオロジーの解析では、ムービングダイレオメーター(MDR2000E)を使用し、試験条件を180℃で20分間とした。硬化特性は、ISO 6502:1999に従って、ML、MH、MH−ML、ts2、およびt’c(90)で表す。
【0105】
マスターバッチの水分含量は、以下の方法によって求めることができる:その試験は、Mettler−Toledo TGA/DSC−1 Star System装置で実施した。11mgのサンプルを、受け入れたままの状態で、TGA装置の熱天秤において秤量する。記載された通りにTGA試験手順を開始させ、時間経過と共に重量損失を連続的に記録する。加熱は、不活性雰囲気下で、5℃/分の速度で550℃まで実施する。この処理後の残存物の量を秤量する。
【0106】
ゼオライト/ポリマーのマスターバッチの組成を表1に示す。
IIR MB 40%は、ブチルゴム中に混ぜ込んだ40重量%のゼオライトを含むゼオライト/ポリマーのマスターバッチを表している。
IIR MB 80%は、ブチルゴム中に混ぜ込んだ80重量%のゼオライトを含むゼオライト/ポリマーのマスターバッチを表している。
EPDM MB 40%は、EPDMゴム中に混ぜ込んだ40重量%のゼオライトを含むゼオライト/ポリマーのマスターバッチを表している。
EPDM MB 80%は、EPDMゴム中に混ぜ込んだ80重量%のゼオライトを含むゼオライト/ポリマーのマスターバッチを表している。
【0107】
【表1】
【0108】
表2に、1.5重量%未満の湿分含量を有するゼオライト5A粉体を使用した比較例A、ならびに各種のタイプのゼオライト/ポリマーのマスターバッチを使用した実施例1、2、3および4を示す。3ヶ月の期間後に比較例Aで使用したゼオライトが保持していた活性を、実施例1、2、3および4で使用したゼオライト/ポリマーのマスターバッチに比較して表3に示す。
【0109】
樹脂硬化の活性を向上させる性能に関しての、ゼオライト粉体と、各種のゼオライト/ポリマーのマスターバッチとを対比させた劣化のレベルを、比較例Aおよび実施例1、2、3および4の初期に(時間ゼロ)得られたレオロジー的データと、ゼオライト粉体およびゼオライト/ポリマーのマスターバッチを上述のようにして3ヶ月間保存した後で、再混合した比較例Aおよび実施例1、2、3および4から得られたレオロジー的データとの差で表す。
【0110】
すべてのタイプのゼオライト/ポリマーのマスターバッチ(MB)の、3ヶ月の貯蔵後での、重要な硬化特性、特にスコーチ時間(ts2)、硬化時間(tc90)および架橋密度(MH−ML)の劣化が、同じ貯蔵条件下で3ヶ月貯蔵した後のゼオライト粉体で観察された差よりはるかに小さいものであることが明らかに示された。
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】