(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伝導層セグメントが、前記2つ以上のEC領域のうちの1つ以上で重なり合う別個の伝導層セグメントでの別の印加電圧に少なくとも部分的に基づいて、前記2つ以上のEC領域で前記ECフィルムスタック両端に2つ以上の異なる電位差を選択的に印加するよう構造化されている請求項4記載のエレクトロクロミックデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0008】
エレクトロクロミック(EC)デバイスの様々な実施形態、及びエレクトロクロミックデバイスを形成する方法を開示する。ECデバイスは、ECデバイスの異なる領域で、異なる透過レベル間で選択的に切り替わるよう構造化することができる。ECデバイスを形成する方法は、ECデバイスの異なる領域で、異なる透過レベル間で選択的に切り替わるようECデバイスを形成する方法を含むことができる。ECデバイスは、デバイスのECスタックと外部環境との間への水分の浸透を制限するよう構造化することができる。ECデバイスを形成する方法は、デバイスのECスタックと外部環境との間への水分の浸透を制限するようECデバイスを構造化する方法を含むことができる。
【0009】
これ以後で使用する場合、ECデバイスを「形成すること」は、ECデバイスを「構造化すること」と互換に言うことができる。また、何かをするよう「形成された」ECデバイスは、何かをするよう「構造化された」ECデバイス、何かをするよう「構造形成された」ECデバイスなどと互換に言うことができる。
【0010】
I.分離エレクトロクロミック領域での被制御エレクトロクロミックスイッチング
いくつかの実施形態においては、エレクトロクロミック(EC)デバイスは、独立して制御可能な複数の領域(「EC領域」)を備えており、2つ以上の別個の領域を、2つ以上の異なる透過レベルのうち別のレベルへ選択的に切り替え、また可逆的に切り替えるなどすることができる。いくつかの実施形態においては、2つ以上の別個のEC領域を、1つ以上の透過率分布パターンを含む1つ以上の別個の透過パターンへ切り替えることができる。いくつかの実施形態においては、ECデバイスの各EC領域は、同じかまたは異なるサイズ、体積及び/または表面積を有してもよい。他の実施形態においては、各EC領域は、同じかまたは異なる形状(湾曲形状または弓形状を含める)を有してもよい。
【0011】
図1A、
図1B及び
図1Cはそれぞれ、いくつかの実施形態に従って、複数の別個のEC領域を備えたECデバイス100の平面図及び断面図を示している。示された実施形態においては、ECデバイス100は、ECスタック102と、ECスタックの両側に2つ以上の別個の伝導層104A〜104Bとを備える。ECスタック102は、1つ以上のEC層、IC層及びCE層を備えることができる。伝導層104A〜104Bは、1つ以上の透明伝導(TC)層を含むことができる。
【0012】
各伝導層104A〜104Bは、別個の層104A〜104B中の別個のセグメンテーション142A〜142Bによって、別個のセグメント106A〜106B、108A〜108Bへとそれぞれセグメント化されている。伝導層は、様々な周知の切断プロセス、アブレーションプロセスなどによってセグメント化することができる。いくつかの実施形態においては、伝導層104A〜104B中の1つ以上のセグメンテーション142A〜142Bは、少なくとも部分的に層を貫通して延びる切れ目である。いくつかの実施形態においては、1つ以上のセグメンテーション142A〜142Bは、アブレーション線である。レーザーを使用して1つ以上のセグメンテーション142A〜142Bを作製することができる。セグメンテーションの作製に好適なレーザーには、波長1064nmのNd:YAGを含めた1種以上の固体レーザー、ならびにそれぞれ248nm及び193nmで発生するArF及びKrFエキシマレーザーを含めた1種以上のエキシマレーザーが含まれ得る。他の固体レーザー及びエキシマレーザーも好適である。
【0013】
図1A〜1Cに図示した実施形態で示されるように、ECデバイス100は、複数のEC領域110、120、130を備えることができる。これらのEC領域では、EC領域の1つ以上の境界は、1つ以上の伝導層104A〜104Bの1つ以上のセグメンテーション142A〜142Bによって画定されている。例えば、
図1A〜1Bに示されているように、EC領域120は、伝導層104A〜104Bのセグメンテーション142A〜142Bによって画定される境界を有する。
【0014】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスのEC領域は、1つ以上の電極との直接的な電気接続から分離されている1つ以上のEC領域を含むことができる。本明細書で言及する場合、EC領域と電極との間の直接的な電気接続とは、各EC領域内にあるECデバイスの一部分に物理的に結合している電極を指すことができる。例えば、図示した実施形態において、EC領域110は、電極152、156の両方との直接的な電気接続を含み、EC領域130は、電極154、158の両方との直接的な電気接続を含む。逆に、ECデバイス100と結合している電極152〜158のうち、領域120でECデバイス100と物理的に結合しているものはない。結果として、領域120は、いずれの電極152〜158との直接的な電気接続からも分離されていると理解してもよい。さらに、EC領域120は、EC領域110、130によって少なくとも2つの側面で境界を作られているため、EC領域120は「内部」EC領域として理解してもよく、領域110、130は「外部」EC領域として理解してもよい。電極152〜158は1つ以上のバスバーを備えることができ、このバスバーは、1つ以上の様々な周知のプロセスによってECデバイスの1つ以上の部分に取り付けられる。
【0015】
いくつかの実施形態においては、任意の電極との直接的な電気接続から分離されている「分離」EC領域は、1つ以上の「介在」EC領域を介して1つ以上の電極との非直接的な電気接続を有することができる。この介在EC領域は、分離EC領域と1つ以上の電極との間の非直接的な電気接続に介在する。例えば、電極が1つの領域で伝導層セグメントと結合しており、このセグメントが、その1つの領域と、電極が物理的に結合していない別の領域(すなわち、分離EC領域)との両方にわたって広がっている場合、そのセグメントは、少なくとも電極が物理的に結合したEC領域と分離領域とにわたって広がるセグメントの部分を介して、電極と分離領域との間に「非直接的な」電気接続を成立させることができる。結果として、電極が物理的に結合したEC領域を含めた、電極と分離EC領域との間で伝導層セグメントが広がる1つ以上のEC領域は、分離EC領域と電極との間の非直接的な電気接続に介在する「介在」EC領域として理解される。
【0016】
例えば、
図1A〜1Cに図示した実施形態において、EC領域120は、ECデバイス110に結合しているいずれの電極152〜158との直接的な電気接続からも分離されている「分離」領域であり、EC領域110、130は、電極152、158のうちの異なる1つとEC領域との間の別個の非直接的な電気接続にそれぞれ介在する「介在」領域である。例えば、伝導層セグメント106Aは、EC領域110と120の両方にわたって広がっており、電極152はセグメント106Aと物理的に結合している。結果として、伝導層セグメント106Aは、電極152とEC領域120との間に電気的な接続を成立させており、領域120におけるECスタック102両端の電位差は、電極152への印加電圧に少なくとも部分的に基づいて生じ得る。電極152は領域120でセグメント106Aと物理的に結合しておらず、領域110でセグメント106Aと物理的に結合しているので、EC領域120と電極152との間の電気接続は「非直接的」であると理解されるべきであり、それに対してEC領域110と電極152との間の電気接続は「直接的」であると理解されるべきである。
【0017】
いくつかの実施形態においては、所定のEC領域でのECスタック両端の電位差(electrical potential difference)(「電位差(potential difference)」とも呼ばれる)が、所定のEC領域のECスタックの、ECスタックのCE層からECスタックのEC層までの各部分を通る電流の最大速度を決定し、それにより所定領域のECデバイスの透過レベルが変化する。この透過レベルの変化には、着色状態への変化が含まれ得るので、その結果、ECデバイスが着色する。電荷がリチウムイオン及び電子の形態で素早く供給されて要求を満たすならば、電流はデバイスの層両端の電位差に比例した速度で流れることができる。
【0018】
ECデバイスのいくつかの実施形態は、主伝導層セグメントと副伝導層セグメントとを含む伝導層セグメントへセグメント化された伝導層を備えることができる。主伝導層セグメントの各々は、1つ以上の外部EC領域と、一部分以上の内部EC領域とにわたって広がるよう構造化されている。例えば、
図1A〜1Cに図示した実施形態において、伝導層104Aは、主伝導層セグメント106Aと副伝導層セグメント106Bとを含む伝導層セグメントへセグメント化されている。セグメント106Aは、外部領域110にわたって、かつ内部領域120全体にわたって広がっている。セグメント106Bは、外部領域130にわたって広がっている。同様に、伝導層104Bは、主伝導層セグメント108Aと副伝導層セグメント108Bとを含む伝導層セグメントへセグメント化されている。セグメント108Aは、外部領域130にわたって、かつ内部領域120全体にわたって広がっている。セグメント108Bは、外部領域110にわたって広がっている。図示した実施形態において、外部領域110及び130は、領域120と1つ以上の電極152〜158との間の1つ以上の非直接的な電気接続に介在する介在EC領域であり、主セグメント106A、108Bの各々は、別個の介在領域にわたって広がり、かついずれの電極152〜158との直接的な電気接続からも分離されているEC領域120へと広がっていると理解される。
【0019】
主セグメント106A、108Aは両方ともに、ECスタック102の両側でEC領域120にわたって広がっているので、主セグメント106A、108Aは、EC領域120においてECスタック102の両側で「重なり合っている」と理解される。結果として、セグメント106A及び108Aは、EC領域120中で、電極152、158の間に電気経路を成立させている。したがって、領域120におけるECスタック102両端の電位差(electrical potential difference)(本明細書においては「電位差(potential difference)」とも呼ばれる)は、電極152への印加電圧と電極158への印加電圧との差を含むことができる。さらに、主伝導層セグメント106A〜106Bの各々の一部分以上が、任意の電極との直接的な電気接続から分離された「内部」EC領域と理解され得るEC領域120にわたって広がっているので、図示した実施形態の伝導層セグメントは、回転対称配置で配置されていると理解してもよい。
【0020】
副伝導層セグメント106BはEC領域130にわたって広がっているので、セグメント106Bは、ECスタック102の反対側で領域130にわたって広がる主伝導層セグメント108Aの一部分と「重なり合っている」と理解され得る。結果として、セグメント106B及び108Aは、EC領域130中で、電極154、158の間に電気経路を成立させている。したがって、領域130におけるECスタック102両端の電位差は、電極154への印加電圧と電極158への印加電圧との差を含むことができる。副伝導層セグメント108BはEC領域110にわたって広がっているので、セグメント108Bは、ECスタック102の反対側で領域110にわたって広がる主伝導層セグメント106Aの一部分と「重なり合っている」と理解され得る。結果として、セグメント108B及び106Aは、EC領域110中で、電極152、156の間に電気経路を成立させている。したがって、領域110におけるECスタック102両端の電位差は、電極152への印加電圧と電極156への印加電圧との差を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態においては、別のEC領域中での電気経路は、異なる電極セット間の異なる経路である。結果として、異なる電極への異なる印加電圧に少なくとも部分的に基づき、ECデバイスの別の領域の両端では、異なる電位差が生じ得る(「誘起され得る」)。別の電極に別の電圧を印加し、その結果異なるEC領域では異なる電位差が誘起されることにより、別個のEC領域にあるECスタックの別個の領域では透過レベルが異なって変化し得る。例えば、別の電極に別の電圧を印加することにより、別個のEC領域で、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと切り替えることができる。この共通の透過レベルには、透明または「完全」透過状態が含まれ得る。
【0022】
図1Cに図示した実施形態においては、別個の電極152〜158の各々に別の電圧を印加することにより、2つ以上の分かれたEC領域セットで別の電位差が生じ、それにより、ECスタックは分かれたEC領域セットにおいて異なる透過レベルへと変化する。示されるように、EC領域110中で、電極152、156の間に電気経路が成立しており、EC領域130中で、電極154、158の間に別の電気経路が成立しているので、図示されている電極152への2ボルト印加、電極156への0ボルト印加、電極154への3ボルトの印加、及び電極158への1ボルト印加の結果、別個のEC領域110、130にあるECスタックの別個の領域で2ボルトの電位差となる。ECスタックの透過レベルはECスタック両端の電位差と逆相関を有し得るので、別個のEC領域110、130の各々においてECスタック両端に2ボルトの電圧差が誘起されると、別個のEC領域110、130にあるECスタックの部分は、示されているように透過レベルが変化する。
【0023】
「分離」EC領域120中での電気経路は電極152と158の間であるので、EC領域120にあるECスタック102の領域の両端では1ボルトの電位差が生じる。EC領域120での電位差はEC領域110、130での電位差とは異なるので、EC領域120は、EC領域110、130で切り替わる透過レベルとは異なる透過レベルに切り替わり得る。示されているように、EC領域120での電位差はEC領域110、130での電位差よりも小さいので、EC領域120の透過レベルは、EC領域110、130の透過レベルよりも大きくなり得る。
【0024】
示されているように、別個のEC領域110、120、130での電位差は、別個の電極152〜158に特定の電圧を印加することによって独立して制御することができる。別個のEC領域の電位差によってEC領域の透過レベルが切り替わるので、別個のEC領域において独立して電位差を制御することにより、別個のEC領域での透過レベルを独立して制御することが可能となる。一例においては、
図1A〜1Cに図示した実施形態において示されるように、ECデバイスは、別個のEC領域の各々が、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと選択的に切り替わるよう構造化する。このような透過レベルのスイッチングは可逆的であることができる。
【0025】
いくつかの実施形態においては、EC領域は、異なる透過レベル間で切り替わるよう独立して制御され、その結果ECデバイスは1つ以上の特定の透過パターン間で切り替わる。例えば、ECデバイスは、ECデバイスの別個の電極に選択的に電圧を印加した場合に、別個のEC領域が共通の透過レベルから別の透過レベルへと切り替わるよう構造化してもよく、その結果、ECデバイスは、異なる透過レベルを有するECデバイスの異なる領域によって作られる特定の透過パターンを有する。このように、透過レベルのスイッチングを異なるEC領域によって独立して制御することで、ECデバイスの様々なEC領域の着色レベルを独立して制御することが可能となる。いくつかの実施形態においては、領域は、特定パターンの一部または全てを形成するよう形状化することができ、その結果、ECデバイスは、異なる透過レベルへ切り替わるECデバイスの異なる領域に少なくとも部分的に基づいて、パターンが現れるよう構造化される。上記の特定パターンには、1つ以上のロゴ、名前、絵などが含まれ得る。
図2Aは、いくつかの実施形態に従って、別個のEC領域202、204を有するECデバイス210を含む多層面である窓表面200を示している。ECデバイス210は、1つ以上の分離EC領域を含む、
図1A〜1Cに示したECデバイス100の一部または全てを備えることができる。例えば、領域204は、ECデバイス210の任意の他のEC領域に結合した任意のバスバーを含む任意の電極との直接的な電気接続から分離されたEC領域であることができる。領域202は、領域204と1つ以上の電極との間の非直接的な電気接続に介在する介在EC領域であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態においては、領域202、204は、ECデバイス210の1種以上の様々な構造化によって設定される。このような構造化には、上記で論じたような、ECデバイス210の1つ以上のTC層を含む1つ以上の伝導層のセグメント化が含まれ得る。このような構造化には、以下でさらに論じるような1種以上の様々な他の構造化が含まれ得る。他の構造化には、ECデバイス210の1つ以上の層のシート抵抗を調節すること、ECデバイス210のECスタックの異なる領域において異なる輸送速度の荷電電解質種を導入することなどが含まれる。ECデバイス210は、以下でさらに論じるように、ECデバイス210のECスタックと外部環境との間への水分の浸透を阻止するよう構造化してもよい。領域204は、特定の7頂点の星型パターンに適合するよう形状化されている。いくつかの実施形態においては、領域204は、1つ以上のEC領域202によって取り囲まれる1つ以上のEC領域を含み、その結果、EC領域204は、ECデバイス210の外側縁部を境界としない。
【0027】
別個の領域202、204で異なるECデバイス両端の電位を誘起することにより、別個の領域202、204は、異なる透過レベルへ切り替わる。結果として、示されているような7頂点の星形パターンが観測可能となる。領域202、204の両方で電位差が誘起されない場合、またはEC領域202、204の両方での電位差が同じである場合、上記のパターンは観測可能でなくてもよい。結果として、表面200は、表面200に結合した1つ以上の電極に1つ以上の特定電圧を印加することに少なくとも部分的に基づき、EC領域202、204が共通の透過レベルでありかつ星形パターンが観測可能でない特定の透過状態と、EC領域202、204が異なる透過レベルでありかつ星形パターンが目に見える別の透過状態との間で選択的に切り替えることができる。
【0028】
いくつかの実施形態においては、別の透過レベルへ選択的に切り替わるよう独立して制御することができる複数のEC領域を備えるエレクトロクロミックデバイスが、カメラデバイスのカメラアパーチャーフィルターに備えられている。このカメラデバイスでは、ECデバイスのEC領域を別の透過レベル間で選択的に切り替えて、カメラによって記録される像の回折を制御することができる。
【0029】
図2B〜2Dは、いくつかの実施形態に従って、複数の別個のEC領域を備えるECデバイス250の平面図を示している。図示した実施形態においては、ECデバイス250は、ECスタック270と、ECスタック270の両側に2つ以上の別個の伝導層260、280とを備える。ECスタック270は、1つ以上のEC層、IC層及びCE層を備えることができる。伝導層260、280は、1つ以上の透明伝導(TC)層を含むことができる。
【0030】
図2B〜2Cに示すように、各伝導層260、280は、別個の層260、280にある別個のセグメンテーション267、287によって、それぞれ別個のセグメント262A〜262B、282A〜282Bへとセグメント化されている。伝導層は、様々な周知の切断プロセス、アブレーションプロセスなどによってセグメント化することができる。いくつかの実施形態においては、伝導層にある1つ以上のセグメンテーション267、287は、少なくとも部分的に層を貫通して延びる切り口である。いくつかの実施形態においては、1つ以上のセグメンテーション267、287は、アブレーション線である。レーザーを使用して1つ以上のセグメンテーション267、287を作製することができる。セグメンテーションの作製に好適なレーザーには、波長1064nmのNd:YAGを含めた1種以上の固体レーザー、ならびにそれぞれ248nm及び193nmで発生するArF及びKrFエキシマレーザーを含めた1種以上のエキシマレーザーが含まれ得る。他の固体レーザー及びエキシマレーザーも好適である。
【0031】
図2B〜2Dに図示した実施形態で示されているように、ECデバイス250は、複数のEC領域292A〜292B及び290を備えることができる。これらのEC領域では、EC領域の1つ以上の境界は、1つ以上の伝導層260、280の1つ以上のセグメンテーション267、287によって画定されている。例えば、
図2B〜2Dに示されているように、EC領域290は、伝導層260、280のセグメンテーション267、287によって画定される境界を有する。
図2B〜2Dに示されているように、領域290のサイズ及び形状は、セグメンテーション267、287に基づいて調節することができる。
【0032】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスのEC領域は、1つ以上の電極との直接的な電気接続から分離されている1つ以上のEC領域を含むことができる。本明細書で言及する場合、EC領域と電極との間の直接的な電気接続とは、各EC領域内にあるECデバイスの一部分に物理的に結合している電極を指すことができる。
【0033】
例えば、
図2B〜2Dで図示した実施形態において、EC領域292Aは、電極266A、286Aの両方との直接的な電気接続を含み、EC領域292Bは、電極266B、286Bの両方との直接的な電気接続を含む。逆に、ECデバイス250と結合している電極266、286のうち、領域290でECデバイス250と物理的に結合しているものはない。結果として、領域290は、いずれの電極266、286との直接的な電気接続からも分離されていると理解してもよい。さらに、EC領域290は、EC領域292A〜292Bによって少なくとも2つの側面で境界を作られているため、EC領域290は「内部」EC領域として理解してもよく、領域292A〜292Bは「外部」EC領域として理解してもよい。電極266、286は1つ以上のバスバーを備えることができ、このバスバーは、1つ以上の様々な周知のプロセスによってECデバイスの1つ以上の部分に取り付けられる。
【0034】
いくつかの実施形態においては、任意の電極との直接的な電気接続から分離されている「分離」EC領域は、1つ以上の「介在」EC領域を介して1つ以上の電極との非直接的な電気接続を有することができる。この介在EC領域は、分離EC領域と1つ以上の電極との間の非直接的な電気接続に介在する。例えば、電極が1つの領域で伝導層セグメントと結合しており、このセグメントが、その1つの領域と、電極が物理的に結合していない別の領域(すなわち、分離EC領域)との両方にわたって広がっている場合、そのセグメントは、少なくとも電極が物理的に結合したEC領域と分離領域とにわたって広がるセグメントの部分を介して、電極と分離領域との間に「非直接的な」電気接続を成立させることができる。結果として、電極が物理的に結合したEC領域を含めた、電極と分離EC領域との間で伝導層セグメントが広がる1つ以上のEC領域は、分離EC領域と電極との間の非直接的な電気接続に介在する「介在」EC領域として理解される。
【0035】
例えば、
図2B〜2Dに図示した実施形態において、EC領域290は、ECデバイス250に結合しているいずれの電極266、286との直接的な電気接続からも分離されている「分離」領域であり、EC領域292A〜292Bは、電極266、286のうちの異なる1つとEC領域との間の別個の非直接的な電気接続にそれぞれ介在する「介在」領域である。例えば、伝導層セグメント262Bは、EC領域292A〜292Bの両方にわたって広がっており、電極266Bはセグメント262Bと物理的に結合している。結果として、伝導層セグメント262Bは、電極266BとEC領域292Aとの間に電気的な接続を成立させており、領域290におけるECスタック270両端の電位差は、電極266Bへの印加電圧に少なくとも部分的に基づいて生じ得る。電極266Bは領域290でセグメント262Bと物理的に結合しておらず、領域292Bでセグメント262Bと物理的に結合しているので、EC領域290と電極266Bとの間の電気接続は「非直接的」であると理解されるべきであり、それに対してEC領域292Bと電極266Bとの間の電気接続は「直接的」であると理解されるべきである。
【0036】
ECデバイスのいくつかの実施形態は、主伝導層セグメントと副伝導層セグメントとを含む伝導層セグメントへセグメント化された伝導層を備えることができる。主伝導層セグメントの各々は、1つ以上の外部EC領域と、一部分以上の内部EC領域とにわたって広がるよう構造化されている。
【0037】
例えば、
図2B〜2Dに図示した実施形態において、伝導層280は、主伝導層セグメント282Aと副伝導層セグメント282Bとを含む伝導層セグメントへセグメント化されている。セグメント282Aは、外部領域292Aにわたって、かつ内部領域290全体にわたって広がっている。セグメント282Bは、外部領域292Bにわたって広がっている。同様に、伝導層260は、主伝導層セグメント262Bと副伝導層セグメント262Aとを含む伝導層セグメントへセグメント化されている。セグメント262Bは、外部領域292Bにわたって、かつ内部領域290全体にわたって広がっている。セグメント262Aは、外部領域292Aにわたって広がっている。図示した実施形態において、外部領域292A〜292Bは、領域290と1つ以上の電極266、286との間の1つ以上の非直接的な電気接続に介在する介在EC領域であり、主セグメント262B、282Aの各々は、別個の介在領域にわたって広がり、かついずれの電極266、286との直接的な電気接続からも分離されているEC領域292へと広がっていると理解される。
【0038】
主セグメント262B、282Aは両方ともに、ECスタック270の両側でEC領域290にわたって広がっているので、主セグメント262B、282Aは、EC領域290においてECスタック270の両側で「重なり合っている」と理解される。結果として、セグメント262B及び282Aは、EC領域290中で、電極266B、286Aの間に電気経路を成立させている。したがって、領域290におけるECスタック270両端の電位差(electrical potential difference)(本明細書においては「電位差(potential difference)」とも呼ばれる)は、電極266Bへの印加電圧と電極286Aへの印加電圧との差を含むことができる。
【0039】
図3A〜3Bは、いくつかの実施形態に従って、カメラデバイス300を示している。カメラデバイス300は、アパーチャー312と、レンズ315と、光センサー316とが設置された筐体310を備える。カメラ300の外にある被写体302からの光は、フィルターのアパーチャー313を通過し、レンズ315を通過し、光センサー316に届く。
図3A〜3Bに示されるように、フィルター314を調節することに少なくとも部分的に基づいてアパーチャー313のサイズを調節し、レンズ315及び光センサー316に届く光量を制御することができる。このようなアパーチャー313のサイズ調節は、アパーチャーフィルター312の様々な部分の透過レベルを選択的に調節してアパーチャー313のサイズを調節することを含むことができる。この透過レベルを選択的に調節することには、フィルター312の環状領域を選択的に暗くすることが含まれる。このようなアパーチャー313のサイズ調節は、光センサー316で記録される被写体302の像の被写界深度318を調節することができる。例えば、
図3Aにおいて、アパーチャーが「広げられ」、比較的多い光量が被写体302からセンサー316に届く場合、被写界深度318は狭くなり得、その結果、被写体302の像は被写体で焦点が合ってもよいが、被写体と比較して背景及び前景の像は、被写体302と比較してぼけていてもよい。
図3Bにおいて、アパーチャー313がフィルター314によって「絞られ」、比較的少ない光量が被写体302からセンサー316に届く場合、結果として被写界深度318は
図3Aと比較して広がり得、記録される像において焦点がしっかり合う域は、被写体302の前及び後ろに広がる。
【0040】
いくつかの実施形態においては、アパーチャー313を通る光は回折パターンを示す。このような回折パターンには、周知のエアリー回折パターン(「エアリーディスク」とも呼ばれる)が含まれ得る。周知のように、エアリーディスクを含めた、アパーチャー313を通って撮像された点光源の回折パターンは、明るい同心円環に囲まれた明るい中心領域となり得る(「エアリーパターン」)。回折パターンは、アパーチャーを通る光の波長及びアパーチャー313のサイズのうちの1つ以上によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態においては、被写体302からの光が同心円パターンを伴う中心スポットを有するエアリーパターン(エアリーディスクを含める)を形成し、カメラデバイス300が有する被写体302での細部の解像能は回折によって制限され得る。2つ以上の被写体302がカメラ300によって記録される像に含まれ、また2つ以上の被写体302が、センサー316において各被写体302周囲のエアリーパターンが重なり合うのに十分な程度に小さい角度で離れている場合、2つ以上の被写体302は、記録された像ではっきり解像されなくてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態においては、レンズの外縁部を通過する被写体302からの光は、レンズ315の中心を通過する光の量とほぼ等しい。結果として、記録された像の前景及び背景にある要素は、被写体302と比較してぼけていてもよいが、記録された像においてはっきりとした対象物として存在してもよい。これにより、被写体302は、ぼけた前景対象物及び背景対象物と比較して、記録された像において鮮明さが減少し得る。いくつかの実施形態においては、カメラデバイスは、カメラを通過する光をアポダイズして、レンズの中心と比較してレンズの外縁部を通過する光が減るよう形成される。アポダイゼーションには、アパーチャー313をアポダイズすることが含まれ得る。このようなアポダイゼーションの結果、センサー316で被写体302の像に記録される、焦点の合っていない要素の縁部でぼかしが生じる。このようなぼかしの結果、焦点の合っていない要素が滑らかになり、焦点の合っていない要素に対して被写体302をより鮮明に際立たせることができる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、カメラアパーチャー313をアポダイズすることにより、センサー316における被写体302の像周囲の回折パターンが減少してもよいため、カメラ300による像の解像度を増加させることができる。例えば、アポダイズしたアパーチャー313は、レンズ315の外縁部を通過する光量を減らすので、全てを除去しないならば、被写体302の像は、被写体の像周囲のエアリーパターンの強度が減少した像となり得る。さらに、レンズ315の収差に対する光センサー316の感度が軽減されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態においては、1つ以上のレンズ315、アパーチャーフィルター312などを備えるカメラ300の1つ以上の部分が、別個の領域を異なる透過レベルの間で選択的に切り替えるよう構造化されたECデバイスを含み、その結果、ECデバイスがアパーチャー313、レンズ315などのうちの1つ以上を選択的にアポダイズすることができる。
【0044】
図4A、
図4Bは、いくつかの実施形態に従って、
図3に示されるカメラ300を含めたカメラデバイスに備えられ得る装置を示しており、この装置は、別個のEC領域を異なる透過レベル間で選択的に切り替えて、被撮像体からカメラの光センサーへと光が通過する窓を選択的にアポダイズするよう構造化された1つ以上のエレクトロクロミックデバイスを備えることができる。装置400は、窓410がアパーチャー313、レンズ315になるようにして、カメラアパーチャーフィルター312に備えられることができ、また各々別個であるなどできる。
【0045】
装置400は、基材404に結合したECデバイス402を備える。基材は1種以上の様々な材料を含むことができる。いくつかの実施形態においては、基材は1種以上の透明材料または反射材料を含むことができる。反射材料には、電磁スペクトルの1つ以上の波長を反射することができる材料が含まれる。基材は1種以上の様々な透明材料を含むことができる。透明材料には、1種以上のガラス、結晶性材料、高分子材料などが含まれる。結晶性材料には、サファイア、ゲルマニウム、ケイ素などが含まれ得る。高分子材料には、PC、PMMA、PETなどが含まれ得る。基材は1つ以上の様々な厚さを有することができる。例えば、基材は、1ミクロン以上100ミクロン以下の1つ以上の厚さを有することができる。基材は、1種以上の熱的に強化された材料、化学的に強化された材料などを含むことができる。例えば、基材はGORILLA GLASS(商標)を含むことができる。基材は、1つ以上の様々な熱膨張係数を有する材料を含むことができる。基材は、IGU、TGU、積層体、単結晶基材などのうちの1つ以上を含むことができる。基材404は、装置400が備えられたカメラデバイスの外側に向くことができ、被撮像体の方向に向くことができる。いくつかの実施形態においては、ECデバイス402が備えられている面とは反対の基材404の面は、カメラデバイス外部の周囲環境に曝されている。ECデバイスは、本開示の別の箇所で論じられるように、1つ以上の伝導層、ECスタック層などを含めた様々な層を備えることができる。いくつかの実施形態においては、ECデバイスは1つ以上の封入層を備えており、デバイス402のECスタックと、周囲環境を含めた装置400の外部環境との間への水分の浸透の制限、軽減、阻止などを行うよう構造化されている。支持構造体406は、構造体406を通して電力を分布させることができる1つ以上の電気経路を備えることができる。支持構造体406は、ECデバイス402及び基材404を支持する「可撓」構造体408と、接続素子407とを備える。この接続素子407は、構造体406をECデバイス402に結合させ、かつECデバイスの1つ以上の電極(「端子」)と電気的に結合して、構造体406の1つ以上の電気経路を経由したECデバイス402と1つ以上の電源との間の電気接続を成立させる。
【0046】
いくつかの実施形態においては、ECデバイス402は、デバイス402の様々なEC領域を、別々の異なる透過レベルに選択的に切り替えるよう構造化されている。このような選択的スイッチングにより、窓410において1つ以上の様々な透過パターンが生じ得る。いくつかの実施形態においては、以下でさらに論じるように、ECデバイス402は複数の同心円環状EC領域を備え、その1つ以上の環状EC領域を1つ以上の別の透過レベルへと切り替えて、窓410を選択的にアポダイズすることができる。例えば、ECデバイス402は、複数の同心円環状領域を共通の透過レベルから、異なる透過レベルのうちの別々の透過レベルへと切り替えてもよく、ここで1つ以上の環状EC領域は、窓410の中心からさらに離れた別の環状領域よりも高い透過レベルを有する。このような選択的アポダイゼーションは、
図4Cに示されるようなECデバイス402の1つ以上の特定の電極412A〜412Bに印加される1つ以上の特定電圧に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0047】
図5A及び
図5Bは、いくつかの実施形態に従って、円形ECデバイス500を示しており、円形ECデバイス500は、少なくとも
図4A〜4Cに示されている、選択的にアポダイズされる1つ以上のECデバイスに備えられ得る。デバイス500は、光の透過を制限する外側部分510と、内側部分520とを備える。内側部分520は独立して制御可能なEC領域を含み、EC領域の各々は、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと別個に切り替えられ得る。図示した実施形態においては、部分520は、部分520の全てのEC領域が共通の透過レベルである透過状態で示されている。この共通の透過レベルは完全透過レベルであることができ、したがって
図5Aにおいて部分520は透明の透過状態である。
図5Bにおいては、デバイス500は、部分520の複数の領域が別々の透過レベルへと選択的に切り替えられて示されており、部分520は透明な透過状態から特定の透過パターンへと切り替えられている。図示した実施形態においては、部分520の様々なEC領域には、部分520の中心530から部分510に向かって外側に広がる同心円環状EC領域が含まれる。いくつかの実施形態においては、1つ以上のEC領域の1つ以上の透過パターンには、1つ以上の様々な連続的透過率分布パターンが含まれ得る。例えば、
図5Bに図示した実施形態では、ECデバイス500は、中心530を中心とする透過率分布パターンへと切り替わる。このパターンでは、部分520で最も高い透過レベルであるのは中心530の位置であり、中心530からECデバイス500の1つ以上の縁部に向かって外側に延びる距離に応じて透過レベルが連続的に減少する。いくつかの実施形態においては、透過率分布パターンは、ガウスパターン(本明細書においては「ガウス型」とも呼ばれる)にほぼ等しい。
【0048】
図5Cは、一実施形態に従って、
図5Bに示されるようなアポダイズしたECデバイス部分の透過率分布パターンを、中心530からの距離に対する透過率の関数として示している。この図で、分布パターン580は、ガウス型590にほぼ等しい。本明細書において使用する場合、ガウス型にほぼ等しい分布には、透過率が複数桁にわたってガウス型に適合する分布パターンが含まれ得る。例えば、
図5Cにおいて、部分520における透過率分布パターン580は透過率が6桁減少するまでガウス型590と適合するので、パターン580はガウス型590とほぼ等しい。いくつかの実施形態においては、ECデバイスが切り替わり得る透過パターンは、ガウス型の近似とは異なる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスでの連続的分布パターンは、十分に多い数のEC領域や、透過率分布パターンに関連するECデバイス中の1つ以上の分布などに少なくとも部分的に基づいて作られる。このような分布については、以下でさらに論じる。
【0050】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、非連続的分布パターンへと選択的に切り替わることができる。ECデバイスは、不連続かつ異なる透過レベルに切り替わるよう制御され得る複数の領域を備えてもよく、その結果、「段階的な」透過パターンとなる。
図6は、いくつかの実施形態に従って、ECデバイス600を示しており、ECデバイス600は、少なくとも
図4A〜4Cに示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。ECデバイス600は、円形EC領域620と、この円形EC領域620を取り囲む環状EC領域610とを備える。いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、1つ以上の領域610〜620両端の電位差を独立して制御して、2つ以上の透過状態の間で選択的に切り替わる。この2つ以上の透過状態では、1つ以上の透過状態は、EC領域610〜620の両方が透明の透過状態を含めた共通の透過レベルを有する透過状態であり得る。別の透過状態は、別個のEC領域610、620が共通の透過レベルから2つ以上の別の透過レベルへと切り替えられた状態であり得る。いくつかの実施形態においては、EC領域620は、いずれの電気接続からも分離されており、透過レベル制御は環状EC領域610に制限されている。EC領域610を別の透過レベル間で切り替わるよう制御して、ECデバイス600をアポダイズすることができる。
【0051】
図7は、いくつかの実施形態に従って、円形EC領域730と、その円形領域730から外側に広がる2つ以上の同心円環状EC領域710、720とを含むECデバイス700を示している。ECデバイス700は、少なくとも
図4A〜4Cに示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。円形領域730は、ECデバイスに結合したいずれかの電極とのいずれの電気接続(直接、非直接またはその他方法)からも分離されていてもよく、内部環状EC領域720は、いずれの直接的な電気接続から分離されていてもよく、また外部環状EC領域710は、EC領域720と1つ以上の電極との間の非直接的な電気接続に介在してもよい。領域710に結合した1つ以上の電極に1つ以上の電圧を印加すると、別個の環状EC領域710、720は、共通の透過レベルと、2つの透過レベルのうちの別々の透過レベルとの間で切り替わってもよいが、領域730は、電位差がすぐには誘起されないので、初期の段階では透過レベル間で切り替わらない。しかしながら、いくつかの実施形態においては、領域730への漏電電流により、時間の経過と共に領域730で透過レベルが変化する。領域710、720を別々の透過レベルへと選択的に変化させることで、ECデバイス700を選択的にアポダイズすることができる。
【0052】
図8A〜8Cは、いくつかの実施形態に従って、基材860上に配置された複数の層802、850、804を備えるECデバイス800を示している。ECデバイス800は、ECスタック850と、ECスタック850の両側に2つ以上の別個の伝導層802、804とを備えることができる。伝導層802、804は、別個の伝導層セグメントへとセグメント化され、デバイス800において別個のEC領域を設定する。デバイス800においては、別個のEC領域には、円形EC領域と、円形EC領域から外側に広がる2つの同心円環状EC領域とが含まれる。ECデバイス800は、少なくとも
図4A〜4Cに示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。
【0053】
ECデバイス800は2つの別個の伝導層を備えており、この伝導層はセグメント化されて、ECデバイスの複数の別個のEC領域を設定する。このように伝導層をセグメント化することによって別個のEC領域を設定することは、
図1A〜1Cに関して上記で論じたセグメント化と同様に行われてもよい。
【0054】
ECデバイス800は、基材860上に配置された下部伝導層804と、下部伝導層804上に配置されたECスタックと、ECスタック上に配置された上部伝導層802とを備える。各伝導層は透明伝導(TC)層を含むことができ、また各伝導層は、別個の伝導層セグメントへとセグメント化818、838されて、セグメント化に少なくとも部分的に基づいて別個のEC領域を設定する。
【0055】
図8Aに示される上部伝導層802は、主伝導層セグメント810と副伝導層セグメント820とにセグメント化されている。各セグメントは、設定された外部環状EC領域にわたって広がるそれぞれのセグメントの一部分に物理的に結合した電極815、825を有する。主セグメントは、ECデバイス800の外部環状EC領域にわたって広がる外側部分816と、ECデバイス800の内部環状EC領域全体にわたって広がる内側部分814とを備えるよう構造化されている。さらに、主セグメント810の円形部分812は、セグメント810からセグメント化されて、同心円環状EC領域によって取り囲まれた円形EC領域を設定している。主セグメント810の外側部分816及び副セグメント820の全体部分822は、デバイス800の外部環状EC領域にわたって集合体として広がる上部伝導層802の部分を含む。
【0056】
図8Bに示される下部伝導層804は、主伝導層セグメント830と副伝導層セグメント840とにセグメント化されている。各セグメントは、設定された外部環状EC領域にわたって広がるそれぞれのセグメントの一部分に、物理的な結合、電気的な結合などをしている電極835、845を有する。主セグメント830は、ECデバイス800の外部環状EC領域にわたって広がる外側部分836と、ECデバイス800の内部環状EC領域全体にわたって広がる内側部分834とを備えるよう構造化されている。さらに、主セグメント830の円形部分832は、セグメント830からセグメント化されて、同心円環状EC領域によって取り囲まれた円形EC領域を設定している。主セグメント830の外側部分836及び副セグメント840の全体部分842は、デバイス800の外部環状EC領域にわたって集合体として広がる下部伝導層804の部分を含む。
【0057】
図8Cに示されているデバイス800の断面図では、
図1A〜1Cに図示されているECデバイス100と同様に、主セグメント810、830が部分814、834で重なり合って内部環状EC領域を設定し、内部環状領域は、電極815、825、835、845のいずれかとの直接的な電気接続から分離されており、主セグメント810、830の部分816、836は内部環状EC領域と電極815、835との電気接続を成立させており、したがって部分816、836が広がる外部環状EC領域は介在EC領域であることが図示されている。
【0058】
いくつかの実施形態においては、伝導層のセグメント化は、基材860上にECデバイス800の様々な層を配置するプロセス中に行われる。例えば、下部伝導層804のセグメンテーション838は、基材上に下部伝導層804を配置した後、かつ下部伝導層804上にECスタック850を配置する前に作製してもよい。同様に、上部伝導層802のセグメンテーション818は、ECスタック850上に上部伝導層802を配置した後に作製してもよい。いくつかの実施形態においては、1つ以上のセグメンテーション818、838は、セグメント810、830、820、840が互いにセグメント化されたセグメントとして配置されるようにして、マスクした部分に各伝導層802、804を配置することに少なくとも部分的に基づいて作製する。
【0059】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、基材上に配置された複数の層を備えており、そしてECデバイスのECスタック両側の2つ以上の別個の伝導層は別個の伝導層セグメントにセグメント化されて別個のEC領域を設定する。ここで別個のEC領域には「分離」円形領域と、その分離円形領域と1つ以上の電極との間の非直接的な電気接続に「介在する」ことができる1つ以上の環状EC領域とが含まれる。
図8D〜8Eは、円形「分離」EC領域と、環状「介在」EC領域とを備えるECデバイスの一実施形態の別個の伝導層を示している。
【0060】
図8Dに示される上部伝導層802は、主伝導層セグメント810と副伝導層セグメント820とにセグメント化されている。各セグメントは、設定された環状EC領域にわたって広がるそれぞれのセグメントの一部分に物理的に結合した電極815、825を有する。主セグメントは、ECデバイス800の環状EC領域にわたって広がる外側部分816と、ECデバイス800の円形EC領域全体にわたって広がる内側部分814とを備えるよう構造化されている。主セグメント810の外側部分816及び副セグメント820の全体部分822は、デバイス800の環状EC領域にわたって集合体として広がる上部伝導層802の部分を含む。
【0061】
図8Eに示される下部伝導層804は、主伝導層セグメント830と副伝導層セグメント840とにセグメント化されている。各セグメントは、設定された環状EC領域にわたって広がるそれぞれのセグメントの一部分に物理的に結合した電極835、845を有する。主セグメント830は、ECデバイス800の環状EC領域にわたって広がる外側部分836と、ECデバイス800の円形EC領域にわたって広がる内側部分834とを備えるよう構造化されている。主セグメント830の外側部分836及び副セグメント840の全体部分842は、デバイス800の環状EC領域にわたって集合体として広がる下部伝導層804の部分を含む。
【0062】
図9A〜9Bは、いくつかの実施形態に従って、別個のセグメント化操作を示しており、この操作は
図8A〜8Cに示されているECデバイス800の別個の伝導層で行って伝導層をセグメント化し、別個のEC領域を設定する操作である。
【0063】
図9Aはセグメント化操作を示しており、この操作はECデバイス800の下部伝導層804で行われる操作である。1つ以上のこの操作を、基材上に下部伝導層804を配置した後、かつ下部伝導層804上にECスタックを配置する前に行うことができる。セグメント化操作910を行って、上記のように、下部伝導層804を主伝導層セグメント830と副伝導層セグメント840とにセグメント化することができる。
図9に示す各セグメント化操作には、1種以上の切断操作、アブレーション操作などが含まれ得る。例えば、操作910は切断操作であることができ、この操作は
図9に示されるように伝導層804をセグメント830と840とに選択的に切断する。
【0064】
図9Bはセグメント化操作を示しており、この操作はECデバイス800の上部伝導層802で行われる操作である。1つ以上のこの操作を、ECスタック上に上部伝導層802を配置した後に行うことができる。ECスタック自体は下部伝導層804上に配置されている。セグメント化操作930を行って、上記のように、上部伝導層802を主伝導層セグメント810と副伝導層セグメント820とにセグメント化することができる。
【0065】
図9A〜9Bに示すように、1つ以上のセグメント化操作940A〜940Bを行って、主セグメント810、830それぞれの円形部分812、832をセグメント化することができる。いくつかの実施形態においては、セグメント化操作940A〜940Bは、配置された上部伝導層804と下部伝導層802とを同時にセグメント化する1つのセグメント化操作を含むことができ、この場合、セグメント化操作部分940Aは、配置されたECスタックを通して行う。いくつかの実施形態においては、セグメント化操作940A〜940Bのうちの1つは行わず、したがって円形EC領域は、主セグメント810、830のうちの1つをセグメント化して部分812、832のうちの1つを設定することに少なくとも部分的に基づいて設定される。いくつかの実施形態においては、セグメント化操作940A〜940Bをいずれも行わず、したがって円形EC領域は、円形EC領域の外側境界と、環状EC領域の内側境界とを設定する操作910及び930に少なくとも部分的に基づいて設定される。
【0066】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスの1つ以上の伝導層が別個のセグメントにセグメント化されて、中心円形EC領域の周囲に3つ以上の別個の同心円環状EC領域を設定する。複数の電極を別個のセグメントに結合させて、少なくともいくつかの別個のEC領域を異なる透過レベルの間で選択的に切り替えるようECデバイスを構造化させてもよい。
【0067】
図10は、いくつかの実施形態に従って、8つの別個の電極1010A〜1010Hが結合したECデバイス1000の上面図を示している。ECデバイス1000は、少なくとも
図4A〜4Cに示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。デバイス1000は、中心円形EC領域1002を備え、このEC領域1002は、いずれの電極との電気接続からも分離されている。円形EC領域1002は、セグメント化操作に少なくとも部分的に基づいて設定される。このセグメント化操作には、1種以上の切断操作、アブレーション操作、及びエレクトロクロミックデバイスの伝導層をセグメント化する当業者に公知の様々なセグメント化プロセスが含まれ得る。
【0068】
ECデバイス1000は3つの同心円EC領域を備えており、これらの同心円EC領域は、ECデバイス1000の1つ以上の伝導層で行われる様々なセグメント化操作に少なくとも部分的に基づいて設定される。EC領域1004は、領域1004全体にわたって広がって領域1002を取り囲む各伝導層の一部分によって設定される。EC領域1004は、電極1010A〜1010Hのいずれかとのいずれの直接的な電気接続からも分離されており、セグメント部分1008A、1006A、1008B及び1006Bが広がる介在EC領域1008及び1006の部分を介して、電極1010D及び1010Eと非直接的に電気接続している。同様に、EC領域1006は、別個の伝導層セグメントの部分1006A〜1006Bによって設定されており、電極1010A〜1010Hのいずれかとのいずれの直接的な電気接続からも分離されており、セグメント部分1008A〜1008Dが広がる介在EC領域1008の部分を介して、電極1010D、1010A及び1010E、1010Hと非直接的に電気接続している。
【0069】
図10に図示した実施形態で示されているように、円形EC領域及び3つの同心円環状EC領域は、「P1」、「P3」、「P4」で表示される3つ以上の別個のセグメント化操作に少なくとも部分的に基づいて設定される。セグメント化操作P1及びP3は、ECデバイス1000のECスタック両側の別個の伝導層で行い、セグメント化操作P4は、別個の伝導層両方で行うことができる。
【0070】
図示した実施形態で示されているように、セグメント化操作はECデバイスを別個のセグメントへとセグメント化し、ECデバイス1000の別個の部分に結合した別個の電極1010A〜1010Hに印加される特定の電圧に少なくとも部分的に基づいて別の電位差が誘起され得る別個のEC領域1004、1006、1008を設定する。示されるように、別個の電極に電圧を印加することにより、別個の各EC領域にある別個の各部分で、ECスタックの両側に異なる電圧を生じさせることができる。別個の電極にかける電圧は、所定のEC領域の別個の部分が共通の電位差を有するよう選択することができる。例えば、環状EC領域1008の別個の部分1008A〜1008Dの各々は、別個の電極1010A〜1010Hの各々に印加する電圧に少なくとも部分的に基づいて、共通の電位差を有することができる。同様に、環状EC領域1006の別個の部分1006A〜1006Bの両方は、電極1010D、1010A及び1010E、1010Hに印加する別々の電圧に少なくとも部分的に基づいて、共通の電位差を有することができ、この共通の電位差は、EC領域1008の別個の部分1008A〜1008B中の電位差とは異なる。同様に、EC環状領域1004は、電極1010D〜1010Eに印加する別々の電圧に少なくとも部分的に基づいて、特定の電位差を有することができ、この電位差は、領域1006及び1008の別個の部分中の電位差とは異なる。異なる電極1010A〜1010Hにかける別個の電圧を変化させて、ECデバイス1000で様々な透過パターンを作ることができる。いくつかの実施形態においては、EC領域は、共通の透過レベルから、各EC領域で異なる透過レベルへと選択的に切り替えられる。この異なる透過レベルでは、領域1006及び1004の透過レベルはEC領域1008の透過レベルよりも大きく、領域1004の透過レベルはEC領域1006及び1008の透過レベルよりも大きい。このような選択的スイッチングには、ECデバイスを透明な透過状態からアポダイズされた透過状態へと選択的に切り替えることが含まれ得る。
【0071】
II.シート抵抗を用いた被制御エレクトロクロミックスイッチング
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、別個のEC領域において異なる透過レベル間で選択的に切り替わるよう構造化されており、したがって、ECデバイスは、ECデバイスのEC領域を、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと選択的に切り替えることができる。
【0072】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、ECデバイスの1つ以上の伝導層の、対応する伝導層領域のそれぞれの異なるシート抵抗に少なくとも部分的に基づいて、異なる領域で異なる透過レベルに選択的に切り替わるよう構造化されている。上記の対応する伝導層領域は、それぞれのEC領域にわたって広がっている。対応するEC領域にある、1つ以上の伝導層の別個の伝導層領域のシート抵抗を調節して、別個のEC領域を異なる透過レベルへ選択的に切り替えるECデバイスを構造化することができる。
【0073】
図11A、
図11B及び
図11Cは、いくつかの実施形態に従って、ECスタックと、そのECスタックの両側に別個の伝導層1104A〜1104Bとを備えるECデバイス1100を示している。ECデバイス1100は3つの別個のEC領域1110、1120、1130を備えており、上部伝導層1104Aの別個の伝導層領域においてシート抵抗が異なることによって、EC領域1110、1120、1130の内部境界1142A〜1142Bが設定されている。伝導層1104A〜1104B両方の別個の伝導層領域におけるシート抵抗が、ECデバイス1100において別個の領域を設定し得ることが理解されよう。いくつかの実施形態においては、下部伝導層1104Bの別個の伝導層領域でシート抵抗が異なることにより、ECデバイス1100において1つ以上のEC領域の境界が設定されている。ECデバイス1100は、
図2AのECデバイス200、
図4A〜4CのECデバイス400などを含めた、本開示中の様々な他の図に関連して示され論じられている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。
【0074】
図11BはECデバイス1100の断面図を示しており、ここで上部伝導層1104Aは、別個のEC領域1110、1120、1130の境界を少なくとも部分的に設定する別個の伝導層領域1106A〜1106Cを含んでいる。図示されている実施形態においては、別個の伝導層領域1106A、1106Cは、伝導層領域1106Bとは異なるシート抵抗を有する。結果として、ECデバイス1100は、1つ以上の伝導層1104A〜1104Bへの電圧印加に少なくとも部分的に基づいて、別個のEC領域1110、1120、1130を共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと選択的に切り替えるよう構造化されている。上記の共通の透過レベルには、完全透過レベルが含まれ得る。言い換えると、
図11Cに示されるように、ECデバイス1100は、別個のECスタック領域1107A〜1107Cを共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルへと切り替えるよう構造化されており、ECスタック領域1107A、1107Cは、ECスタック領域1107Bが切り替えられる異なる透過レベルよりも低い透過レベルに切り替えられる。所定のEC領域にある所定のECスタック領域が切り替えられ得る透過レベルは、所定のECスタック領域の1つ以上の側面にある伝導層の伝導層領域のシート抵抗に少なくとも部分的に基づく。
【0075】
ECデバイスの1つ以上のEC領域にある1つ以上の伝導層領域のシート抵抗は、その1つ以上のEC領域にあるECスタック領域両端の電位差に影響を及ぼすことができる。いくつかの実施形態においては、所定のEC領域でのECスタック両端の電位差(electrical potential difference)(「電位差(potential difference)」とも呼ばれる)が、所定のEC領域のECスタックの、ECスタックのCE層からECスタックのEC層までの各部分を通る電流の最大速度を決定し、それにより所定領域のECデバイスの透過レベルが変化する。この透過レベルの変化には、着色状態への変化が含まれ得るので、その結果、ECデバイスが着色する。電荷がリチウムイオン及び電子の形態で素早く供給されて要求を満たすならば、電流はデバイスの層両端の電位差に比例した速度で流れることができる。
【0076】
いくつかの実施形態においては、所定のEC領域にある1つ以上の伝導層のシート抵抗を調節することにより、同じEC領域に広がるECスタックの領域の両端の電位差を調節することができる。結果として、1つ以上の伝導層の1つ以上の領域のシート抵抗を調節することにより、1つ以上の伝導層に電圧を印加した際に、1つ以上の対応するECスタック領域が異なる透過レベルに切り替わり得る。以下でさらに詳細に論じるように、シート抵抗の調節は、様々なプロセスによって行うことができる。
【0077】
図11Cに示されるように、別個の伝導層1104A〜1104Bに結合した1つ以上の電極1152〜1158に電圧を印加すると、別個のEC領域にある伝導層領域の異なるシート電圧に少なくとも部分的に基づいて、別個のEC領域のいくつかにおいて異なる電位差が誘起される。特に、伝導層領域1106A、1106Cは、
図11Bにも示されるように、伝導層領域1106Bよりも大きいシート抵抗を有している。結果として、1つ以上の電極1152〜1158に1つ以上の電圧を印加した場合、EC領域1120とEC領域1110、1130とにおいて異なる電位差が誘起される。伝導層領域1106Bよりも大きい、伝導層領域1106A、1106Cのシート抵抗に少なくとも部分的に基づいて、領域1110、1130における電位差は、EC領域1120における電位差よりも大きい。結果として、電圧を印加するとECスタック領域1107A〜1107Cは共通の透過レベルから切り替わるが、ECスタック領域1107Bは、ECスタック領域1107A、1107Cの両方が切り替わる透過レベルとは異なりかつその透過レベルよりも大きい透過レベルへと切り替わる。したがって、所定のEC領域でECスタックの特定の領域が切り替わる透過レベルは、所定のEC領域にある1つ以上の伝導層の1つ以上の伝導層領域のシート抵抗に少なくとも部分的に基づき得る。
【0078】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、別個のEC領域の各々を、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと選択的に切り替えるよう構造化されており、したがってECデバイスを構造化することは、様々な調節プロセスに少なくとも部分的に基づき、ECデバイスの1つ以上の伝導層の1つ以上の伝導層領域のシート抵抗を調節することを含む。
【0079】
いくつかの実施形態においては、別個の伝導層領域が異なるシート抵抗や異なるシート抵抗分布パターンなどを有するよう、別個の伝導層領域のシート抵抗を調節することは、別個の伝導層領域にある伝導層の1つ以上の様々な特性を調節することを含む。このような特性には、それぞれのTC層領域の特定のシート抵抗に関連する特定の結晶構造、特定の結晶化度レベル、特定の化学組成、特定の化学分布、特定の厚さなどのうちの1つ以上が含まれ得る。例えば、特定の伝導層領域にある伝導層の結晶構造や格子構造などを変化させることにより、その特定の領域にある伝導層のシート抵抗が変化し得る。別の例においては、所定の伝導層領域にある伝導層の化学組成や化学分布などを変化させることにより、その所定の伝導層領域のシート抵抗が変化し得る。1つの伝導層領域においてシート抵抗を調節することは、隣接伝導層領域を含めた他の伝導層領域から独立していることができる。
【0080】
図12A〜12Dは、いくつかの実施形態に従って、ECデバイスの1つ以上の伝導層の別個の伝導層領域でシート抵抗を変化させる様々な方法を示している。このようなECデバイスは、
図2のECデバイス200、
図4A〜4CのECデバイス400などを含めた、本開示の1つ以上の様々な他の図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。
図12Aは、特定の伝導層の別個の伝導層領域のシート抵抗を変化させることを示しており、1種以上の化学種を別個の伝導層領域に導入して、特定の選択されたシート抵抗分布に関連する1種以上の特定の化学種の分布を、別個の伝導層領域で作製することによって行う。このような化学種の導入は、伝導層領域における電荷担体密度や電荷担体分布などを調節して、その伝導層領域でのシート抵抗分布を調節することを含むことができる。このような導入は、1つ以上の伝導層領域において1種以上の酸化種を導入することを含むことができる。酸化種は、伝導層領域の酸化レベルを増加させ、伝導層領域のシート抵抗を調節する。その後、導電材料中の導入化学種を活性化する様々なプロセスに従って、伝導層領域を加熱して、層領域に導入された1種以上の化学種を活性化することができる。上記の様々なプロセスには、1つ以上のイオン注入プロセスによって材料中に導入された異なる化学種を活性化する1つ以上の異なるプロセスが含まれる。いくつかの実施形態においては、このような伝導層領域の加熱(「焼成」とも呼ばれる)は、少なくとも伝導層領域を、ピーク温度まで加熱することを含む。伝導層の少なくとも一部分を「焼成」するいくつかの実施形態は、少なくとも伝導層の材料に関連する特定の温度まで、約370セ氏度、380セ氏度などまで伝導層部分を加熱することを含むことができる。導入され得る酸化種の非限定的な例には、酸素、窒素などが含まれ得る。別の例においては、1種以上の様々な金属種を導入して、伝導層領域における電荷担体密度や電荷担体分布などを変化させることができる。このような金属種の非限定的な例には、インジウム、スズ、それらのいくつかの組合せなどが含まれ得る。要約すると、1種以上の化学種を伝導層領域に導入することにより、その伝導層領域のシート抵抗を調節することができる。この化学種は、伝導層領域における電荷担体密度や電荷担体分布などを変化させることができる。このような導入は、1種以上の化学種の1回以上の注入を含むことができ、この注入は周知のイオン注入プロセスによって行うことができる。
【0081】
図12Aは、上部及び下部伝導層1202、1206と、ECスタック1204とを備えるECデバイス1200を示している。ECデバイス1200は、本開示の様々な他の図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。化学種導入システム1210を使用して、1種以上の化学種1208を、1つ以上の伝導層1202、1206の別個の伝導層領域1212に導入する。化学種導入システム1210には、イオン注入システム、マスクイオンビーム、集束イオンビームなどが含まれ得る。別個の領域1212全域にわたって化学種の分布を調節して変化させ、別個の伝導層領域でシート抵抗が異なるように調節することができる。例えば、イオン注入システム1210を使用して別個の領域1212に別個のイオンを注入する場合、各領域1212でイオン注入量、イオンエネルギーレベル、イオン注入プロセスの数などのうちの1つ以上を調節して、別個の領域1212において異なる化学種分布、電荷担体分布、電荷担体密度などを生じさせることができ、よって別個の領域1212で異なるシート抵抗を設定することができる。いくつかの実施形態においては、イオン注入、マスクイオンビーム、集束イオンビーム(FIB)などのうちの1つ以上を使用して、1つ以上の伝導層領域に、特定のシート抵抗パターン「描く」ことができる。いくつかの実施形態においては、化学種の「分布」には、1つ以上の伝導層の領域全体にわたっての、化学種の密度、濃度、伝導層の厚みへの導入深さなどでの1つ以上の変化が含まれてもよい。例えば、伝導層において化学種が導入される深さは伝導層全体にわたって変化してもよく、その伝導層のシート抵抗は、化学種の深さの変化に従って変化する。別の例においては、導入された化学種の濃度や密度などは伝導層全体にわたって変化してもよく、その伝導層のシート抵抗は、化学種の濃度や密度などの変化に従って変化する。
【0082】
いくつかの実施形態においては、別個の伝導層領域のシート抵抗は、別個の伝導層領域を空気中または酸素含有ガス中で高温に加熱することに少なくとも部分的に基づいて調節することができる。このようなプロセスは、加熱中に別個の伝導層領域を大気へ選択的に曝すことや、レーザーまたはキセノン閃光ランプなどの方法を使用して伝導層を特定のパターンで加熱することなどを含むことができる。伝導層領域を高温に加熱することにより、伝導層領域を酸化する1種以上の化学反応を起こさせることや誘発することなどが可能である。いくつかの実施形態においては、パターンを描くようにして加熱を行い、他の伝導層領域とは独立して特定の伝導層領域を酸化する。この他の伝導層領域は、異なるように加熱すること、全く加熱しないことなどが可能である。結果として、1つ以上の別個の酸化パターンを作ることができ、よって伝導層において1つ以上のシート抵抗パターンが作製され、その結果、シート抵抗パターンに対応した透過パターンへ選択的に切り替わるECデバイスが構造化される。いくつかの実施形態においては、伝導層のさらなる酸化により、シート抵抗はより高くなる。いくつかの実施形態においては、レーザーアニーリングを使用して特定の伝導層領域を加熱し、1つ以上の特定の「パターン」でシート抵抗を変化させることができる。いくつかの実施形態においては、別個の伝導層領域のシート抵抗は、別個の伝導層領域を1種以上の別の雰囲気中で高温に加熱することに少なくとも部分的に基づいて調節することができる。この1種以上の別の雰囲気には、1つ以上の大気圧での1種以上の別のガスの1種以上の混合物が含まれる。いくつかの実施形態においては、別個の伝導層領域のシート抵抗は、別個の伝導層領域を真空中で高温に加熱することに少なくとも部分的に基づいて調節することができる。
【0083】
図12Bは、上部及び下部伝導層1222、1226と、ECスタック1224とを備えるECデバイス1220を示している。ECデバイス1200は、本開示の様々な他の図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。熱源1230を使用して、1つ以上の伝導層1222、1226の1つ以上の別個の伝導層領域1232に熱1228を印加する。熱源1230には、閃光ランプやレーザーなどが含まれ得る。別個の領域1232全域にわたって熱1228の印加を調節して変化させ、別個の伝導層領域でシート抵抗が異なるように調節することができる。例えば、アニーリングレーザー1230を使用して別個の領域1232で酸化化学反応を生じさせる場合、各領域1232でレーザーエネルギーや印加時間などのうちの1つ以上を調節して所定の領域1232における酸化の量を調節することができ、よって別個の領域1232において異なるシート抵抗が設定される。いくつかの実施形態においては、アニーリングレーザー1230を使用して、1つ以上の伝導層領域において特定のシート抵抗パターンを「描く」ことができる。
【0084】
いくつかの実施形態においては、別個の伝導層領域のシート抵抗は、この別個の伝導層領域のそれぞれの厚さの調節に少なくとも部分的に基づいて調節することができる。例えば、別個の伝導層領域にさらなる量の伝導層材料を配置して、別個の伝導層領域のシート抵抗を調節することができる。別の例においては、1つ以上の除去プロセスを行って特定の伝導層領域にある伝導層の厚さの少なくとも一部分を選択的に除去し、別個の伝導層領域のシート抵抗を調節することができる。除去プロセスには、レーザーアブレーションプロセス、レーザー切断プロセス、エッチングプロセスなどのうちの1つ以上が含まれ得る。所定の伝導層領域の厚さを追加または除去することは、特定のパターンに従って伝導層領域の伝導層材料を追加または除去することを含むことができ、その結果、伝導層領域におけるシート抵抗分布がパターンで描画される。このようなパターニングにより、対応する透過パターンへ選択的に切り替わるECデバイスを構造化することができる。
【0085】
いくつかの実施形態においては、所定の伝導層領域の厚さを追加または除去することは、さらなる緩衝材料を追加して、伝導層材料と緩衝材料とを含む伝導層を均一な合計厚さにすることを含むことができる。
【0086】
図12Cは、上部及び下部伝導層1242、1246と、ECスタック1244とを備えるECデバイス1240を示している。ECデバイス1240は、本開示の様々な他の図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。示されるように、上部伝導層の別個の領域は、異なる厚さの伝導層材料1248と緩衝材料1250とを含む。緩衝材料は、1種以上の様々な非導電材料を含むことができる。異なる伝導層領域において伝導層材料1248の厚さが異なることにより、異なる領域が異なるシート抵抗を有することができる。
【0087】
いくつかの実施形態においては、1つ以上のマスキングを使用して、ECデバイスの1つ以上の伝導層において1つ以上の別個のシート抵抗パターンを作製することができる。
図12Dは、上部伝導層1262と、ECスタック1264と、下部伝導層1266とを備えるECデバイス1260を示しており、上部伝導層は別個の伝導層領域1268、1269を含み、伝導層領域1268、1269はそれぞれ、異なるドット部分1270のパターンを備え、シート抵抗が調節されている。このようなパターンは、伝導層の一部分を選択的に曝すことによって作製することができる。この選択的に曝すことは、1つ以上の伝導層領域の1つ以上の部分を、1種以上の化学種導入、レーザーアニーリング、レーザーアブレーションなどを含めた1つ以上の上記のシート抵抗調節プロセスに選択的に曝すことを含む。いくつかの実施形態においては、連続的にマスキングに傾斜をつけることや段階的にマスキングに傾斜をつけることなどが可能であり、その結果、伝導層の別個の部分の曝露は、マスキングにおける1種以上のマスキング傾斜に基づいて選択的に変化してもよい。この場合、伝導層の曝露はマスキング傾斜に少なくとも部分的に基づいて変化するので、異なるレベルの化学種がマスキングを通ることができ、その結果、1種以上のマスキングの傾斜に少なくとも部分的に基づいて、伝導層全体にわたる1つ以上の別個の化学種分布が生じる。例えば、特定の化学種分布などに従ってマスキングの厚さや浸透性などが連続的に変化してもよく、その結果、マスキングの厚さや浸透性などの変化に少なくとも部分的に基づいて、マスキングを通って導入される化学種の量や密度などが面積や体積などにわたって連続的に変化する。
【0088】
いくつかの実施形態においては、1つ以上の様々な他のプロセスを使用して、1つ以上の伝導層領域のシート抵抗を調節することができる。例えば、欠陥のある格子構造により伝導層の伝導性が減少することが当技術分野において公知であるので、格子構造を損なわせる様々な重い化学種を注入することによって、1つ以上の伝導層領域の伝導性を阻害することができる。
【0089】
いくつかの実施形態においては、シート抵抗の調節は、1つ以上の伝導層で行うことができる。このような調節は、ECデバイスの層を用意するプロセスの様々な段階で行うことができる。例えば、ECデバイスが、基材上に順次配置された下部伝導層と、ECスタックと、上部伝導層とを備える場合、1つ以上のシート抵抗調節プロセスは、基材上に下部伝導層を配置した後、かつその下部伝導層上にECスタックを配置する前に、下部伝導層の別個の伝導層領域で行うことができる。別の例においては、1つ以上のシート抵抗調節プロセスは、ECスタック上に上部伝導層を配置した後に、上部伝導層の別個の伝導層領域で行うことができる。いくつかの実施形態においては、上記の2つのプロセスの組合せを行うことができる。
【0090】
図13は、いくつかの実施形態に従って、伝導層の別個の領域でシート抵抗を調節して、特定の透過パターンへと選択的に切り替わるECデバイスを構造化させることを図示している。別個の伝導層領域でシート抵抗を調節して、
図2のECデバイス200、
図4A〜4CのECデバイス400などを含めた、本開示中の様々な図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得るECデバイスを構造化することができる。
【0091】
1302では、伝導層の伝導層領域が選択される。1304では、上記の伝導層領域に対応するECスタック領域が構造化されて切り替わることが所望される特定の透過レベルが決定される。この対応するECスタック領域は、選択された伝導層領域と共通のEC領域にわたって広がるECスタック領域であってもよい。ガウス型透過パターンの近似を含めた、特定の全体の透過パターンへと選択的に切り替わるよう、ECデバイス全体を構造化することが望ましくてもよい。結果として、別個のEC領域は、特定の全体の透過パターンのうちの別個の一部分を含む、別個の特定の透過パターンに切り替わるよう構造化されることが望ましくてもよい。1306では、決定された対応するECスタックの透過レベルに関連する、選択された伝導層領域の特定のシート抵抗パターンや分布などが決定される。いくつかの実施形態においては、選択された伝導層領域における決定されたシート抵抗分布は、その伝導層領域の現在のシート抵抗パターンとは異なり、選択された伝導層領域でのシート抵抗分布の調節が必要とされる。1308では、選択された伝導層領域におけるシート抵抗分布を調節するよう実行される1つ以上の別個の調節プロセスが決定される。このようなプロセスは、1種以上の様々な化学種の導入、イオン注入、レーザーアニーリング、様々なパターンの厚さの伝導層材料の配置または除去などを含むことができる。1310では、調節プロセスを実行して、選択された伝導層領域で、決定された特定のシート抵抗分布を作製することができるよう、決定された調節プロセスの1つ以上の様々なパラメータが決定される。一例においては、選択された伝導層領域への化学種の導入に対しては、上記のパラメータは、決定されたシート抵抗分布に関連する決定された化学種分布を含むことができる。別の例においては、イオン注入プロセスに対しては、上記のパラメータは電荷担体密度、電荷担体分布、イオン注入量、イオンエネルギーレベル、伝導層材料でのイオン注入の深さなどを含むことができる。1312では、決定されたパラメータに従って、選択された伝導層領域で1つ以上の調節プロセスが実行される。いくつかの実施形態においては、選択された伝導層領域に対して調節プロセスを実行することは、伝導層の残りの伝導層領域から独立している。1314では、さらなる伝導層領域を選択してシート抵抗調整を行うかどうかに関する決定がなされる。もし行うならば、1316で次の伝導層領域が選択される。
【0092】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスの別個のEC領域で電位差を誘起させると、別個のEC領域にある伝導層領域の異なるシート抵抗に少なくとも部分的に基づいて、別個のEC領域の透過レベルは異なる速度で変化する。別個のECスタック領域の透過レベルは時間をかけて変化してもよく、特定の透過レベルで固定されたままではない可能性がある。いくつかの実施形態においては、伝導層領域のシート抵抗は、対応するECスタック領域の透過レベルスイッチングを妨げるのに十分大きい。
【0093】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、ECスタックのショートを備える。このようなECデバイスは、ECデバイスの別個のEC領域を、別々の異なる透過レベルへと切り替えるよう構造化され得、このECデバイスでは、別個のEC領域が異なる透過レベルで固定されたままであることができる。
【0094】
図14A、
図14Bはそれぞれ、いくつかの実施形態に従って、ECスタック1402のショート1410を備えるECデバイス1400の斜視図及び断面図を示している。ECデバイス1400は、本開示中の様々な図に示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。ECデバイス1400にある1つ以上の伝導層1404A〜1404Bに、1つ以上の結合した電極1452〜1458を介して電圧を印加すると、ECスタック1402は、ショート1410から離れるように広がる異なる領域において、共通の透過レベルから、複数の異なる透過レベルへと切り替わり得る。
図14Bに示すように、異なるEC領域は十分に小さく、かつ十分に数多くあることができるので、ECスタック1402は、別個のEC領域が共通の透過レベルにある1つの透過状態から、ECスタック1402での透過レベルが連続的な分布パターンである特定の透過パターンへと切り替わると理解される。この連続的な分布パターンでは、ECスタックの所定の部分は、電位差とショートからの距離との間の特定の関係に従って、ショート1410からの距離に基づいて変化する。いくつかの実施形態においては、電圧が印加され続け、かつ漏電が無視できるほどわずかであるならば、ECスタック1402は、無期限に、特定の平衡透過パターンに切り替わったままであることができる。
【0095】
図15は、いくつかの実施形態に従って、ECデバイス1400の1つ以上の伝導層1404A〜1404Bへ特定の電圧を印加した際の、
図14に示されるECデバイスのECスタック1402の電位差と透過レベルの関係を表したグラフを示している。示されるように、電位差1570は、ECスタック1402の中心にあるショート1410からの距離の関数として増加し、ショート1410から離れて広がるECスタック1402の透過率パターン1572は、対数分布にほぼ等しい。
【0096】
いくつかの実施形態においては、1つ以上の伝導層の1つ以上の伝導層領域の別個の領域のシート抵抗を調節して、ショートしているECスタックが切り替わり得る透過パターンを調節することが望ましい。いくつかの実施形態においては、1つ以上の伝導層領域において少なくとも1つの伝導層のシート抵抗を、ECデバイスのショートから離れて広がる特定の分布パターンに従うECスタック両端での電位差を構成する分布に従うよう調節することができ、その結果、電位差が誘起するとECデバイスが切り替わる透過パターンは、特定の分布パターンに従う。いくつかの実施形態においては、1つ以上の伝導層のシート抵抗を、伝導層におけるシート抵抗の特定の分布に従って調節して、ECスタックをガウスパターンにほぼ等しい透過率パターンへと選択的に切り替えるECデバイスを構造化する。
【0097】
図16Aは、いくつかの実施形態に従って、ECスタックのショートと、伝導層とを備えるECデバイスを示しており、この伝導層では別個の伝導層領域のシート抵抗を変化させて、1つの透過状態から特定の透過パターンへとECスタックを選択的に切り替えるようECデバイスを構造化している。特定の透過パターンは、ガウス型にほぼ等しいことができる。ECデバイス1600は、少なくとも
図4A〜4Cに示される、1つ以上のECデバイスに備えられ得、下部伝導層1620と、ECスタック1630と、上部伝導層1640と、ECスタック1630のショート1610とを備える。さらに、上部伝導層1640は別個の伝導層領域1642A〜1642Fを含み、別個の伝導層領域1642A〜1642Fのシート抵抗は異なるシート抵抗に調節されているので、ECデバイス1600は、透明な透過状態を含めた1つの透過状態から、上部伝導層1640の別個の領域1642A〜1642F全体にわたるシート抵抗の分布パターンに関連する特定の透過パターンへと、選択的に切り替わるよう構造化されている。ECスタックは、ECスタック領域1632A〜1632Fを含んでおり、このECスタック領域1632A〜1632Fは、対応する別個の伝導層領域1642A〜1642Fの別個のシート抵抗、シート抵抗の分布などに少なくとも部分的に基づいて、異なる透過レベルや透過パターンなどへと選択的に切り替わる。いくつかの実施形態においては、別個の領域1642A〜1642Fにおけるシート抵抗分布は、ECデバイス1600が、ECスタック1630をガウス型にほぼ等しい透過パターンへと選択的に切り替えるよう構造化されるような分布である。いくつかの実施形態においては、1つ以上の伝導層領域におけるシート抵抗分布は、1つ以上の伝導層領域における伝導層の深さによるシート抵抗の変化を含む。
【0098】
図16Bは、いくつかの実施形態に従って、ECデバイスの異なる透過パターンを表したグラフを示しており、ショートを備えるECデバイスの透過パターンと、1つ以上の伝導層領域中の1種以上のシート抵抗分布を含むECデバイスの透過パターンとを表したグラフを示している。このグラフでは、ショートを備えるECデバイスの透過パターン1660が示されており、表示されている透過パターン1660では、ショートからの様々な距離におけるECスタックの透過レベルが、完全透過レベルのパーセントとして示されている。ショートがECデバイスの中心に置かれている場合、パターン1660はデバイスの中心からの異なる距離で、異なる透過レベルを示している。いくつかの実施形態においては、透過パターン1660は、ECデバイスが共通のシート抵抗を有する1つ以上の伝導層を備える場合、ECデバイスが切り替わり得る透過パターンである。パターン1650は、ECデバイスの1つ以上のショート、ECデバイスの中心などと関連して、1つ以上の伝導層領域のシート抵抗を表したものである。パターン1670は、パターン1650によって示されるシート抵抗分布を含むECデバイスの透過レベルを表したものである。示されるように、ECデバイスのシート抵抗1650は、1つ以上のショート、ECデバイスの中心などからの距離が増えると、別個の均一なレベルの間で「階段状に変化して」いる。同様に、パターン1670によって示されるように、ECデバイスが1つ以上の伝導層で、示されたシート抵抗分布1650を含む場合にECデバイスが切り替わり得る透過パターンは、ECデバイスが均一な伝導層領域のシート抵抗とショートとを含む場合にECデバイスが切り替わり得る透過パターン1660とは異なることができる。均一な伝導層のシート抵抗とショートとを有するECデバイスは、対数分布とほぼ等しい透過パターン1660へと切り替わってもよく、また、1つ以上の伝導層での分布1650とショートとを有するECデバイスを含めた、1つ以上の伝導層でのシート抵抗分布1650を有するECデバイスは、パターン1660とは異なる透過パターン1670へと切り替わってもよい。いくつかの実施形態においては、パターン16670はガウスパターンとほぼ等しい。
【0099】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、1つ以上の外側境界において1つ以上の外部EC領域によって囲まれた1つ以上の特定のEC領域を備えており、この特定のEC領域は、1つ以上の外部EC領域にある伝導層領域のシート抵抗よりも大きいシート抵抗を有する伝導層領域を含む。いくつかの実施形態においては、この特定の領域は、1つ以上の内部EC領域を取り囲むことができ、この1つ以上の内部EC領域は、上記の特定のEC領域にある伝導層領域と比較して小さいシート抵抗を有する1つ以上の伝導層領域を含む。いくつかの実施形態においては、この特定のEC領域にある伝導層領域のシート抵抗は、このシート抵抗分布がECデバイスにある1つ以上の他の伝導層領域よりも大きくなるよう調節された特定の伝導層領域であることができる。
【0100】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは複数の同心円環状EC領域を備えることができ、この場合、上記の特定のEC領域は、少なくとも1つの外部領域によって取り囲まれた環状EC領域である。この特定の環状EC領域は、1つ以上の内部領域を取り囲むことができる。いくつかの実施形態においては、この特定の環状EC領域、外部環状EC領域及び内部環状EC領域は、ECスタックのショートから外側に広がっている。
図17は、いくつかの実施形態に従って、ECデバイス1700に備えられているECスタックの中心ショート1709から外側に延びる複数の同心円環状EC領域1702、1704、1706、1708を備えるECデバイス1700を示している。環状EC領域1702〜1708は、ECデバイスにある1つ以上の伝導層の別個の同心円環状伝導層領域に少なくとも部分的に基づいて設定されてもよく、その別個の同心円環状伝導層領域はそれぞれ、別個のシート抵抗分布を有する。ECデバイス1700は、本開示の様々な他の図に示されている1つ以上のECデバイスに備えられ得る。別個の電極1710A〜1710Dは、外部環状EC領域1708に含まれている1つ以上の伝導層領域に結合している。
【0101】
いくつかの実施形態においては、外部EC領域にある伝導層領域のシート抵抗よりも大きいシート抵抗を有する伝導層領域を有する特定のEC領域を備えるよう構造化されているECデバイス1700は、少なくとも特定のEC領域全体にわたって電流分布の均一性が向上するよう構造化されている。さらなる内部EC領域が上記の特定のEC領域によって囲まれており、その内部EC領域が、その特定領域のシート抵抗よりも小さいシート抵抗を有する伝導層領域を含む場合、この特定のEC領域は、1つ以上の内部EC領域への電流分布及び1つ以上の内部EC領域全体にわたる電流分布の均一性を向上させることができる。結果として、ECデバイスに結合する電極は、より小さく作製することができ、かつさらに間隔を空けて配置することができる。これは、均一な電流分布を作製する電極のサイズを特に変更したりその電極を間隔を空けて配置する必要性が、外部EC領域から1つ以上のEC領域全体にわたる電流分布の均一性を向上させる特定のEC領域によって少なくとも部分的に軽減されるためである。
【0102】
いくつかの実施形態においては、EC領域1706は、EC領域1712にある伝導層領域のシート抵抗よりも大きいシート抵抗を有する伝導層領域を含む特定の環状EC領域である。さらに、内部環状EC領域1702〜1706は、EC領域1706のシート抵抗よりも小さいシート抵抗を有する伝導層領域を含むことができる。結果として、また電極1710A〜1710CがEC領域1708にある伝導層部分に結合していることに少なくとも部分的に起因して、電流は、領域1708と比較して領域1706にある伝導層のシート抵抗が大きいことに少なくとも部分的に基づいて、EC領域1706全体にわたって分布する前に領域1708全体にわたって分布することができる。結果として、領域1708から領域1706へ、及び領域1706から内部領域1702〜1706の1つ以上への電流分布は、仮に領域1706が領域1708のシート抵抗よりも小さいシート抵抗を有する伝導層領域を含んでいた場合と比較して、均一性が向上する。
【0103】
一例においては、EC領域1706は約500オーム/平方mmのシート抵抗を有する伝導層領域を含み、領域1708は約50オーム/平方mmのシート抵抗を有する伝導層領域を含む。領域1706の外側境界の周りでシート抵抗が低いことにより、低シート抵抗領域1708で電極1710からの電流をより均一に分布させることが可能であり、これは高抵抗領域1706がECデバイスに電流制限をもたらすからである。結果として、1つ以上のバスバーを含むことができる電極1710は、切り替え速度や均一性に影響を及ぼすことなく、領域1706からさらに離して配置することができる。さらに、ECデバイス1700における電位差は、高シート抵抗環状領域1706両端であるので、ショートまでの電圧プロファイルの幅は、環状領域1706の寸法を変えることによって調節することができる。
【0104】
III.注入種輸送速度を用いたエレクトロクロミックスイッチングの制御
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、別個のEC領域において異なる透過レベル間で選択的に切り替わるよう構造化されており、したがって、ECデバイスは、ECデバイスのEC領域を、共通の透過レベルから、2つ以上の異なる透過レベルのうちの別の透過レベルへと選択的に切り替えることができる。
【0105】
上記及び下記で説明されるECデバイスは、ECスタック両端に誘起された電位差に少なくとも部分的に基づいて透過率を変化させることができるECスタックを備えることができる。このECスタックは、アノードを含めた1つの層から、カソードを含めた別の層へと電荷を移動させる。ECスタックに含まれている材料は、もしより吸収性になるならば、アノードが酸化された際に、またカソードが還元された際に、より吸収性になるように選択することができる。電荷は、1つ以上の様々な化学種の形態であることができ、プロトン、リチウムイオン、リチウムよりも重いイオンなどが挙げられる。いくつかの実施形態においては、荷電電解質種は、異なる層間での荷電電解質種の移動性に関連した特定の輸送速度を有するので、より低い輸送速度を有する荷電電解質種は層間をより遅く移動し、その結果、電位差を誘起させた際のECスタックの透過レベルの変化速度が遅くなる。
【0106】
いくつかの実施形態においては、ECスタックの1つ以上の層に様々な荷電電解質種を導入して、ECスタックの異なるEC領域で、異なる速度で透過レベルを変化させることや、異なる透過レベルへ変化することなどを行うよう、ECスタックを構造化することができる。上記の様々な荷電電解質種は、様々な異なる輸送速度を有する。
【0107】
いくつかの実施形態においては、様々な輸送速度を有する様々な種の導入は、可動電荷の幾分かを、可動性が低いかまたは可動性のない他の電荷で置き換えることを含むことができる。上記の可動電荷は、比較的高い輸送速度を有する荷電電解質種によって代表され、上記の可動性が低いかまたは可動性のない他の電荷は、比較的低い輸送速度を有する他の荷電電解質種によって代表される。このような導入は様々な方法を使用して行うことができ、この方法としては、化学浴拡散、マスクを通した異なる種のスパッタリング、マスクを通したイオン注入、集束イオンビーム(FIB)などが挙げられる。
【0108】
上述及び後述のECスタックは、電極(CE)層と、エレクトロクロミック(EC)層と、その2つの間にあるイオン伝導(IC)層とを備えることができる。いくつかの実施形態においては、CE層またはEC層のうちの1つは、H+、Li+、D+、Na+、K+のうちの1つ以上を含めたカチオン、または1つ以上のOH−を含めたアニオンなどの、特にアノードの(またはそれぞれカソードの)エレクトロクロミック材料からできたイオンを可逆的に挿入するよう構造化されており;CE層またはEC層のうちの他方は、特にカソードの(またはそれぞれアノードの)エレクトロクロミック材料からできた上記のイオンを可逆的に挿入するよう構造化されている。いくつかの実施形態においては、IC層は、電解質層を含むよう構造化されている。ECスタックは、CE層またはEC層のうちの1つ以上が、アノードまたはカソードのエレクトロクロミック材料でできた層を含めた上記のイオンを可逆的に挿入するよう構造化されていてもよいこと、上記の活性層を電気化学的に機能不全にせずに全てのイオンを挿入させるのに十分な厚さを有すること、電解質の機能を有するIC層が、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化クロム、酸化コバルト、酸化チタン、酸化スズ、酸化ニッケル、任意にアルミニウムと合金化された酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、任意にアルミニウムと合金化された酸化ケイ素、任意にアルミニウムまたはホウ素と合金化された窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、任意にアルミニウムと合金化された酸化バナジウム、及び酸化亜鉛(これらの酸化物のうちの1つ以上は任意に水素化または窒化されている)から選択される材料を主材料とする1つ以上の層を含むこと、CE層またはEC層のうちの1つ以上が、以下の化合物:タングステンW、ニオブNb、スズSn、ビスマスBi、バナジウムV、ニッケルNi、イリジウムIr、アンチモンSb及びタンタルTaの酸化物(単体または混合物として;また任意にチタン、レニウムまたはコバルトなどのさらなる金属を含む)の1つ以上を含むこと、ならびに、CE層またはEC層のうちの1つ以上の厚さが70〜250um、150〜220umなどであることを特徴としてもよい。
【0109】
EC層は、酸化タングステンを含めた様々な材料を含むことができる。CE層は、1種以上のタングステン‐ニッケル酸化物を含めた様々な材料を含むことができる。IC層は、1種以上の酸化ケイ素を含めた様々な材料を含むことができる。電荷には、リチウムイオンを含めた様々な荷電電解質種が含まれる。IC層は一層領域、多層領域、界面領域、それらのいくつかの組合せなどを含むことができる。界面領域を含むIC層は、EC層またはCE層のうちの1つ以上の成分材料を1種以上含むことができる。
【0110】
いくつかの実施形態においては、ECスタックの層の各々は、カチオン及び電子を可逆的に挿入することができ、これらの挿入/取り出しの結果、酸化度が変化し、光特性及び/または熱特性が変化する。特に、可視及び/または赤外にある波長での吸収及び/または反射を調節することが可能である。ECスタックは、電解質がポリマーまたはゲルの形態であるECデバイスに備えられ得る。例えば、プロトン伝導性ポリマー、またはリチウムイオンが伝導する伝導性ポリマーであり、システムの他の層は一般に無機物性である。別の例においては、ECスタックは、電解質及びECスタックの他の層が無機物性であるECデバイスに備えられ得、このデバイスは、「全固体」システムという用語で呼ばれてもよい。別の例においては、ECスタックは、全ての層がポリマーを主材料とするECデバイスに備えられ得、このデバイスは、「全ポリマー」システムという用語で表されてもよい。
【0111】
ECスタックが「休止」状態の場合、ECスタックを備えるECデバイスは、完全透過状態であると見なされ、電荷はCE層に存在して、CE層を還元して極めて透明にする。ECデバイスにあるECスタック両側の伝導層の両端に電位差を印加することによってデバイスのスイッチを入れると、リチウムイオンを含めた電荷はCE層からEC層へと移動し、ECスタックの透過レベルが変化する。いくつかの実施形態においては、幾分かのリチウムイオンを、CE層を還元するがリチウムイオンに比べて比較的小さい輸送速度を有する(より大きいこと、またはCE層の分子の格子構造内により強く結合していることのいずれかに起因している)別の荷電電解質種で置き換える。結果として、CE層の1つ以上の領域による透過レベルスイッチングの速度及び量が調節され得る。CE層領域による透過レベルスイッチングの速度及び量の調節は、対応するEC層による透過レベルスイッチングの速度及び量を調節することを含む。
【0112】
異なる輸送速度を有する荷電電解質種には、希土類金属及びアルカリ金属が含まれ得る。これらはリチウムよりも重いか、またはより堅く結合する種であり、例えばナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムなどが挙げられる。
【0113】
例えば、いくつかの実施形態においては、ECスタックのCE層は伝導層上に配置することができ、この伝導層は、ITOを含めた透明伝導層を含むことができ、様々な異なる荷電電解質種を別個のCE層領域へ導入、注入などすることができる。例えば、マグネシウムイオンを1つ以上のCE層領域に注入し、ナトリウムイオンを1つ以上の他のCE層領域へ注入することができる。本開示全体にわたり論じられるときは、イオン注入のパターン、深さ及び注入量は制御することができることを理解する必要がある。例えば、アルミホイルマスキングを利用して、1種以上の特定の荷電電解質種の注入に、あるパターンのCE層領域を選択的に曝露することができる。
【0114】
いくつかの実施形態においては、イオン注入プロセスを含めた1つ以上の特定の注入プロセスにより、1種以上の荷電電解質種をCE層領域に導入することができ、化学拡散や化学浴拡散などを含めた1つ以上の他の注入プロセスによって、1種以上の他の荷電電解質種を1つ以上のCE層領域に導入することができる。例えば、イオン注入プロセスによってマグネシウムイオンを1つ以上のCE層領域に注入した後、電気化学リチオ化プロセスによってリチウムイオンを1つ以上のCE層領域に導入することができる。その後、導入化学種を活性化する様々なプロセスに従って、CE層領域を加熱して、層領域に導入された1種以上の化学種を活性化することができる。上記の様々なプロセスには、1つ以上のイオン注入プロセスによって材料中に導入された異なる化学種を活性化する1つ以上の異なるプロセスが含まれる。いくつかの実施形態においては、このようなCE層領域の加熱(「焼成」とも呼ばれる)は、少なくともCE層領域を、ピーク温度まで加熱することを含む。CE層の少なくとも一部分を「焼成」するいくつかの実施形態は、少なくともCE層の材料に関連する特定の温度まで、約370セ氏度、380セ氏度などまでCE層部分を加熱することを含むことができる。マグネシウムイオンとリチウムイオンは異なる輸送速度を有し、マグネシウムの輸送速度はリチウムの輸送速度よりも小さいので、CE層領域を含むECスタック両端に電位差を誘起すると、マグネシウムイオンを含むCE層領域は、リチウムイオンを含むCE層領域よりも小さい速度で透過レベルを切り替えるという結果になり得る。
【0115】
いくつかの実施形態においては、1つ以上のCE層領域における1種以上の荷電電解質種の分布は、CE層において特定の荷電電解質種分布パターンを作るよう制御され、したがって、ECスタック両端で電位差を誘起させると、CE層は、異なる領域における透過率を異なる速度で変化させ、その結果、ECデバイスは、異なるCE層領域での異なる透過率変化速度に基づいて、「休止」または「透明」透過状態から特定の透過パターンへと選択的に切り替わるよう構造化される。
【0116】
いくつかの実施形態においては、輸送速度が十分に小さく不可動性である荷電電解質種を1つ以上のCE層領域に注入して、ECスタック両端に電圧を印加した際に、透過レベルを切り替えないようCE層領域を構造化する。いくつかの実施形態においては、CE層を備えるECデバイスは、CE層が備えられるECスタック両端での電位差の誘起に少なくとも部分的に基づいて、「休止」または「透明」透過状態から特定の透過パターンへと選択的に切り替わるよう構造化されており、別個のCE層領域は、別の可動性や輸送速度などを有する別個の荷電電解質種の別個の分布を含む。
【0117】
いくつかの実施形態においては、異なるCE層領域全域にわたって分布パターンを変化させて、ECデバイスを、特定の透過率分布パターンを含む特定の透過パターンへと切り替わるよう構造化することができる。このようなパターンは、ガウス型にほぼ等しいことが可能である。結果として、ECデバイスは、ほぼガウス型の透過率パターンへと選択的に切り替わるよう構造化され得る。ECデバイスがカメラデバイスに備えられる場合、ECデバイスは、アパーチャーをほぼガウス型の透過率パターンへと選択的にアポダイズするよう構造化され得る。いくつかの実施形態においては、様々な分布パターンは、別個のCE層領域の各々にある荷電電解質種の異なる輸送速度によって設定される複数の同心円環状CE層領域を含むことができる。結果として、複数の段階的領域を有するアパーチャーは、伝導層領域をセグメント化せずに作製することができる。別の例においては、分布パターンは、像や透かし模様などとほぼ等しいことが可能である。
【0118】
いくつかの実施形態においては、様々な輸送速度を有する荷電電解質種をECスタックの1つ以上の層に注入することにより、ECデバイスが、1つの透過状態と、1つ以上の層における荷電電解質種の分布に関連する特定の透過パターンとの間で切り替わるよう構造化される。電荷は、1つの電荷位置から別の位置へと動くことによって、CE層、IC層及びEC層を含めたECスタック層の間で動くので、ECスタックの1つ以上の層に導入された他の荷電電解質種と比べて輸送速度の小さい荷電電解質種を有するECスタック層の領域に電荷位置を注入することにより、注入された荷電電解質種は、少なくともその領域を通る他の荷電電解質種の輸送を少なくとも部分的に阻止することを可能にし得る。結果として、特定のEC領域における透過レベルスイッチングの速度、または透過スイッチングが一体起こり得るのかどうかについては、1つ以上のECスタック層の別個の領域で、異なる輸送速度を有する荷電電解質種を注入することによって調節することができる。
【0119】
例えば、ECスタックのIC層またはEC層の特定の領域に注入された、比較的小さい輸送速度を有する荷電電解質種は、ECスタックを通るより可動性の高い電荷の移動を少なくとも部分的に阻害することができ、これによりECスタックの1つ以上のEC領域において透過レベル変化の速度を変化させたり、ECスタックが切り替わり得る透過パターンを変化させるなどする。荷電電解質種がEC層に導入される場合、導入された荷電電解質種が分布することにより、CE層の1つ以上の領域が、1つ以上の領域における導入された種の分布に関連する特定の透過パターンへと切り変わってもよく、また1つ以上の領域を完全透過レベルに切り替えることが少なくとも部分的に妨げられてもよい。
【0120】
図18A〜18Bは、異なる輸送速度を有する異なる荷電電解質種の異なる分布を有する1つ以上のECスタック層を備えるECデバイス1800を示している。ECデバイス1800は、本開示の様々な他の図に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。ECデバイス1800は、基材上に配置され得る複数の層を備えている。ECデバイス1800は、封入層1802と、上部伝導層1804と、ECスタック1805と、下部伝導層1812とを備えている。ECスタックは、CE層1806と、IC層1808と、EC層1810とを備えている。CE層は、複数のCE層領域1807A〜1807Cを含んでおり、CE層領域1807A〜1807Cの各々は、1種以上の荷電電解質種の分布を含んでいる。CE層領域1807A〜1807Bはそれぞれ、1種の荷電電解質種の分布を含んでおり、領域1807Cは、別の異なる荷電電解質種の別の分布1809を含んでいる。いくつかの実施形態においては、領域1807A〜1807Bにおける種は、領域1807Cにおける種よりも低い輸送速度を含んでいる。示されるように、領域1807Cにおける荷電電解質種の分布1809は、CE層中の深さにおいて変化する。CE層領域での荷電電解質種の分布は、深さや濃度などにおいて変化し得る。この分布は、特定の選択された透過パターンに関連することができ、そしてCE層領域中の荷電電解質種の分布は、特定の選択された透過パターンへと選択的に切り替わるようECデバイス1800を構造化する。
図18Bは、ECスタック1805の両端で電位差が誘起されているECデバイス1800を示している。示されるように、領域1807A〜1807Bに導入された種が領域1807Cに分布1809Aした種よりも大きい輸送速度を有する場合、ECスタック1805の両端で電位差を誘起させると、領域1807Cと比較して、また少なくとも領域1807Cにおける種の分布1809Aに従って、領域1807A〜1807Bからのより多くの電荷がCE層とEC層との間で移動する結果となり得る。結果として、ECスタックのCE領域及びCE領域において、透過パターン1820が作製され、この透過パターン1820は、別個のCE層領域1807A〜1807Cにおける異なる輸送速度の2つの種の異なる分布に関連している。示されるように、分布1809A中の種は、少なくとも領域1807A〜1807Bにある種と比較して小さい輸送速度を有するので、領域1807Cに対応するECスタックの領域での透過レベルは、領域1807A〜1807Bに対応する領域よりも大きく、領域1807Cにおける輸送速度の小さい種の分布に少なくとも部分的に基づいて変化する。
【0121】
いくつかの実施形態においては、複数の別の種を共通CE層領域に導入し、その結果、そのCE層領域は、2種以上の別の荷電電解質種の少なくとも2つの別個の分布を含む。例えば、図示した実施形態において、領域1807Cは、1つの輸送速度を有する荷電電解質種の分布1809Aと、より大きい輸送速度を有する別の荷電電解質種の別の分布1809Bとを含んでもよい。1種の荷電電解質種が、CE層領域の一部分にわたって特定の分布で導入される場合、別の荷電電解質種は、そのCE層領域にある残りの電荷位置に導入することができる。例えば、分布1809Aは、領域1807Cにある様々な電荷位置に種を注入するイオン注入プロセスによって作製されてもよく、分布1809Bは、イオン注入プロセス後に化学拡散浴によって作製されて、別の種が、領域1807Cの残りの電荷位置に導入されてもよい。
【0122】
IV.耐湿性エレクトロクロミックデバイス
いくつかの実施形態においては、上記で図示され論じられている1つ以上の様々なECデバイスを含めたECデバイスは、ECデバイスのECスタックと外部環境との間への水分浸透を制限するよう構造化されている。
【0123】
いくつかの実施形態においては、耐湿性ECデバイスは、単一基材を備え、その基材上に、複数層のECデバイスまたは層のスタックのECデバイスが用意される。単一基材を使用して、ECデバイス全体の厚さを制限してもよい。複数層は、ECスタックと外部環境との間への水分の浸透を制限するよう構造化されていてもよい。このようなECデバイスの構造化は、デバイスを「不動態化すること」と見なされてもよく、またECスタックと外部環境との間への水分の浸透を制限するECデバイス構造体は、「不動態化」ECデバイスと呼ばれてもよい。
【0124】
このような構造化または「不動態化」は、ECデバイスの複数層において、1つ以上の封入層を用意することを含むことができる。封入層は水分の浸透に対して抵抗性であり、1つ以上の封入層は、ECデバイスにある様々な層上で広がって、縁部を含めた様々な層の様々な部分を外部環境への曝露から保護することができる。いくつかの実施形態においては、封入層は、1つ以上の反射防止(AR)層、赤外線カットフィルター(IRカット)層のうちの1つ以上を含み、その結果、封入層は、水分の阻止と、ECデバイスの1つ以上の様々な機能の実行とを同時に行うよう構造化されている。この様々な機能には、層がAR層を含む場合の反射の軽減が含まれる。いくつかの実施形態においては、ECデバイスはプロトンデバイスを備えており、このデバイスはイオンを層間で移動させるのに使用する水を含む。封入層は、プロトンデバイス中の水がデバイスから離れて外部環境に入ることを少なくとも部分的に制限することができる。
【0125】
いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスは、
図3に示されるカメラデバイス300に備えられたECデバイスを含めた、カメラデバイスに備えられ得る。不動態化ECデバイスは、カメラデバイスでアパーチャーフィルターや絞りなどとして使用されてもよく、かなり上で論じたように、選択的にアポダイズするよう構造化されていてもよい。いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスは、さらなる加工がなされるまえに長距離にわたって輸送され得る設計「マザーボード」に備えられる。マザーボードを不動態化することにより、湿気による損害から保護することができる。結果として、ECデバイスを不動態化することにより、露出したデバイスへの湿気による損害の危険性にさらされることなく、完成したマザーボードを遠方のIGUアセンブリ操作へと輸送することが可能となり得る。いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスは、輸送用途及び重量が重要である他の用途で、1枚以上の一重ガラス窓に備えられ得る。いくつかの実施形態においては、単一基材を備える不動態化ECデバイスは、携帯用デバイスやコンピュータなどのディスプレイ上で情報を隠したりまたは表示させることに使用することもできる。いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスは、ダイナミック・アイウェア(dynamic eyewear)で使用される。
【0126】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、1つ以上の封入層と、ECスタックと外部環境との間への水分の浸透を集合体として制限する1つ以上の伝導層とを備える。ECスタック層の縁部は水分を運ぶことができるので、ECデバイスの複数層上のみに封入層を用意することは、ECスタックと外部環境との間への水分の浸透を防ぐのに不十分であってもよい。伝導層の露出縁部が水分の浸透を阻止する場合、複数層における層の露出縁部のみが1つ以上の封入層と1つ以上の伝導層とを含むようECデバイスを構造化すると、不動態化ECデバイスとなり得る。いくつかの実施形態においては、伝導層は、透明導電性酸化物(TCO)とも呼ばれる1つ以上の透明伝導層を含み、この透明伝導層が水分の浸透を阻止する。結果として、伝導層は縁部まで広がることができ、かつ1つ以上の縁部で外部環境に曝されることが可能であり、そしてECスタックは外部環境から保護されたままである。
【0127】
いくつかの実施形態においては、伝導層は複数の要素を含んでおり、この要素には、耐湿性外側部分と、その外側部分によって外部環境への曝露から保護された、水分を輸送する内側部分とが含まれる。例えば、伝導層は、水分を輸送する内側透明導電性酸化物部分と、水分の浸透を阻止する1つ以上の外側不透明導電性部分とを含んでもよい。外側部分は外部環境に曝されてもよく、透明導電性酸化物を水分の浸透から保護する。
【0128】
いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスは、1セット以上のバスバーを備えており、このバスバーは、ECデバイスが、均一かつ対称的な放射状光学濃度分布を有する別個の透過状態間で切り替わるよう構造化されている。各セットのバスバーは、ECデバイスの第1側面でECデバイスの伝導層の1つに結合したバスバーと、そのデバイスの反対の側面で伝導層の別の1つに結合した別のバスバーとを含むことができる。セット中の別個のバスバーは、互いに均一な間隔で広がるよう構造化されてもよい。ECデバイスが円形である場合、セット中のバスバーは、互いに固定の距離で広がるよう曲げられていてもよい。
【0129】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、ECスタックと外部領域との間に配置された上部封入層と、ECスタックと基材との間に配置された下部封入層とを含めた、2つの別個の封入層を備える。下部封入層は、単一基材が水分を輸送する場合に存在してもよい。単一基材が水分の浸透を阻止するよう構造化されている場合、下部封入層はECデバイスに存在しなくてもよい。基材は、サファイア、化学的に強化されたガラス、GORILLA GLASS(商標)を含めた化学的に焼入れをしたガラス、化学的に焼入れをしたホウケイ酸ガラスなどのうちの1つ以上を含むことができる
【0130】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、ECスタックと単一基材との間に配置されたオブスキュレーション層を備える。ECデバイスが下部封入層を備える場合、オブスキュレーション層は、下部封入層と単一基材との間に配置されてもよい。いくつかの実施形態においては、オブスキュレーション層は、基材上に配置された1番目の層であり、ECデバイスの層が配置されている側面とは反対側の単一基材側面からECデバイスを観測する観測者から、他の全ての膜の層を不明瞭にする。オブスキュレーション層は、≧3の光学濃度を有する黒色材料からなり得る。黒色材料は誘電体スタックを含むことができ、この誘電体スタックは、基材の観測側からは暗い黒色に見えるが、基材のデバイス側での選択的なレーザーアブレーションに使用される重要なレーザー加工波長(例えば、緑色及び近IR)は反射するよう構造化されている。オブスキュレーション層は、バスバーや様々な層の縁部などを不明瞭にしてもよく、その結果、観察者が基材を通して見た際に、伝導バスバーまたはいずれかのレーザー加工跡が見えることを防ぐ。
【0131】
いくつかの実施形態においては、ECデバイスは、ECスタックとオブスキュレーション層との間に配置された緩衝層を備える。緩衝層は、ECデバイス製作中の様々な他の層のレーザーアブレーションに起因する損傷を含めた、複数層の1つ以上の部分を除去する間の損傷から、オブスキュレーション層を少なくとも部分的に隔離することができる。緩衝層は、ECデバイスの光特性に影響を及ぼさない材料の厚い層を含み得る。例えば、緩衝層が含むことのできる材料は、Al
2O
3もしくはSiO
x、または同様の材料であってもよい。いくつかの実施形態においては、レーザーによるオブスキュレーション層の損傷を防ぐのに十分なほど下部封入層が厚い場合は、下部封入層が緩衝層としての役割を果たすことができる。緩衝層は、ECスタックとオブスキュレーション層との間の誘電干渉を防ぐことができ、したがってオブスキュレーション層の光特性により、オブスキュレーション層の黒色材料はレーザーエネルギーを吸収して劣化するのではなく、レーザーエネルギーを反射する。緩衝層の厚さにより、選択されたアブレーションプロセスがECデバイス層で可能となり、またそのプロセスを強めることができる。
【0132】
図19A〜19Gは、いくつかの実施形態に従って、不動態化ECデバイスの作製プロセスを示している。いくつかの実施形態においては、このプロセスは、不動態化ECデバイスの少なくとも一部が作製されるチャンバーを予め加熱し、それにより吸着水を除去することを含む。
図19Aに示されるように、単一基材1902から開始して、オブスキュレーション層1904を基材上に配置する。いくつかの実施形態においては、不動態化ECデバイスを作成するプロセスは、基材を予め加熱すること含み、この加熱により少なくとも幾分かの吸着水を除去する。いくつかの実施形態においては、基材は1つ以上の層の配置中に加熱する。このような加熱は、基材を80セ氏度〜150セ氏度で加熱することを含むことができる。いくつかの実施形態においては、このような加熱は、基材を90セ氏度〜120セ氏度で加熱することを含む。
【0133】
いくつかの実施形態においては、オブスキュレーション層1904は環状形状であり、したがって配置されたオブスキュレーション層1904は、基材1902の露出部分を取り囲んでいる。下部封入層1906は、基材の露出部分上及びオブスキュレーション層上に配置することができる。いくつかの実施形態においては、オブスキュレーション層は水分を輸送することができるが、オブスキュレーション層とECスタックとの間への水分の浸透は、1つ以上の耐湿性層によって制限される。この耐湿性層には、伝導層や封入層などが含まれ得る。
図19Aでさらに示されるように、下部伝導層1908及び下部ECスタック層1910は、下部封入層1906上に配置することができる。かなり上で論じたように、ECスタック層は1つ以上のCE層、IC層、EC層などを含むことができる。図示される実施形態においては、層1910は、CE層またはEC層のうちの1つであることができる。
【0134】
図19Bに示されるように、下部ECスタック層1910及び下部伝導層1908の外側部分は、除去操作1911により、ECデバイス1900の第1側面近傍で選択的に除去され、下部ECスタック層及び下部伝導層の縁部1912が露出され得る。除去操作はレーザーアブレーション操作を含むことができ、除去操作によって、デバイスの第1側面において、少なくとも下部ECスタックの縁部1912をECデバイス1900の縁部から減縮させることができる。さらに、示されるように、除去操作1911により、ECデバイス1900の第1側面において、下部封入層の外側部分が露出され得る。
【0135】
図19Cに示されるように、上部ECスタック層1920は、下部ECスタック層と、ECデバイス1900の第1側面における下部封入層の露出した部分との上に配置される。配置された上部ECスタック層は、下部ECスタック層1910及び下部伝導層1908の縁部1912を覆う。
【0136】
図19Dに示されるように、上部ECスタック層1920の外側部分は、除去操作1930により、ECデバイス1900の第1側面近傍で選択的に除去1930され、第1側面近傍の下部封入層1906の外側部分が露出され得る。除去操作1930はレーザーアブレーション操作を含むことができ、除去操作1930は、上部EC層1920の縁部1932を残すことができる。縁部1932は、下部EC層1910及び下部伝導層の縁部1912を、外部環境への曝露から保護する。
【0137】
図19Eに示されるように、上部伝導層1940は、上部ECスタック層1920と、ECデバイス1900の第1側面における下部封入層1906の露出した外側部分との上に配置される。配置された上部伝導層1940は、上部ECスタック層1920の縁部1932を覆う。示されるように、上部ECスタック層1920の縁部1932は、上部及び下部伝導層1940、1908を互いから隔離し、上部伝導層1940は、上部ECスタック層の縁部1932を外部環境から隔離する。
【0138】
図19Fに示されるように、上部伝導層1940、上部ECスタック層1920及び下部ECスタック層1910の外側部分は、除去操作1950により、ECデバイス1900の第2側面近傍で選択的に除去され得る。除去操作1950はレーザーアブレーション操作を含むことができ、除去操作1950によって、デバイスの第2側面において、少なくとも上部伝導層1940、上部ECスタック層1920及び下部ECスタック層1910の縁部1952をECデバイス1900の縁部から減縮させることができる。結果として、ECスタック層1910、1920の区域は、ECデバイス1920の全域にわたって広がることを制限される。さらに、示されるように、除去操作1950により、ECデバイス1900の第2側面において、下部伝導層の外側部分が露出され得る。
【0139】
図19Gに示されるように、上部伝導層1940の外側部分は、ECデバイス1900の第1側面近傍で選択的に除去1960され得る。除去操作1960はレーザーアブレーション操作を含むことができ、除去操作1960によって、デバイスの第1側面において、上部伝導層1940をECデバイス1900の縁部から減縮させることができる。結果として、バスバーを下部封入層1906に結合する経路が作られる。
【0140】
いくつかの実施形態においては、除去操作は「パターニング」と呼ばれる。ECデバイスの様々な層は、レーザーアブレーション、連続精密シャドウマスク及び/または光リソグラフィーを用いてパターン形成され得る。いくつかの実施形態においては、様々な層は、1つ以上のマスキングを用いることによって、いずれの除去操作も用いずに
図19Gに示されるような形態で配置される。このマスキングはECデバイスの一部分を選択的に露出させるので、層をその部分に配置すると、配置された層は特定の形状及びサイズを有する。
【0141】
除去操作1960の後、上部伝導層1940の上に上部封入層を配置することができ、また1セット以上のバスバーをECデバイス1900に結合することができる。バスバーは、1セットあたり2つのバスバーを2セット以上の含むことができ、したがって4つ以上のバスバーがデバイス1900に備えられる。いくつかの実施形態においては、デバイス1900の接触とバスバーとを構造化することによって対称的なアパーチャー形状が得られ、環状に対称的なアパーチャーは、デバイス1900の両側での2つのバスバーよりも、4つ以上のバスバーセグメントによってより良好に近づけられる。
【0142】
図20A〜20Bは、いくつかの実施形態に従って、ECデバイスに上部封入層1970を配置し、ECデバイスに1セット以上のバスバー1980、1982を結合した後のECデバイス1900を示しており、1セットのバスバー1980は少なくとも下部伝導層1908の外側部分1984に結合し、もう一方のセットのバスバー1982は上部伝導層1940の外側部分に結合している。
【0143】
示されるように、いくつかの実施形態においては、上部封入層1970は、ECデバイスの一部分の上に配置されており、上部封入層は、ECスタック層1910、1920の1つ以上の露出した縁部1952を覆っており、これにより、外部環境からのECスタック層1910、1920の縁部の隔離が完全になる。
【0144】
いくつかの実施形態においては、伝導層の外側部分1984、1986は、それぞれの層1908、1940の残部とは異なる材料である。例えば、外部環境に曝されている外側部分1984、1986は、水分の浸透を阻止する不透明導電性材料含んでもよいが、層1908、1940の残部は、水分を輸送する、TCOを含めた透明導電性材料を含む。結果として、伝導層の外側部分1984、1986は、封入層1970、1906と共に集合体として、外部環境とECスタック層1910、1920との間への水分の浸透を防ぐ。図示されている上部封入層は、ECスタック層1910、1920の隔離を完全にするのに対し最小限で十分となっており、別個の封入層1906、1970及び伝導層1908、1940は集合体としてECスタック層1910、1920を隔離しており、したがってECスタック層と外部環境との間への水分の浸透が制限される。
【0145】
示されるように、
図20BはECデバイス1900の2つの異なる断面「A」及び「A’」を示しており、断面A及びA’は互いに直交する。結果として、ECデバイス1900の第1側面は、ECデバイス1900の第2側面と90度の角度をなしている。
【0146】
上述のように、上部封入層1970は、1つ以上のAR層やIRカット層などを含むことができる。いくつかの実施形態においては、封入層1970は、高屈折率材料と低屈折率材料とが交互になった密な多層構造(例えば100層以下)を含むことができる。交互になった層の各々は、5ミクロン厚以下であってもよい。いくつかの実施形態においては、上部封入層1970は、ECスタック層、伝導層及びバスバーを覆う。封入が厚い多層構造であることに起因して、封入層は水分の浸透を減少させてもよく、その結果、ECデバイスは十分に保護され、水分の浸透を制限する上部基材を必要としない。
【0147】
いくつかの実施形態においては、封入層は無機物多層スタックを含む。例えばSi
3N
4/SiO
2などの高/低反射率材料が交互になったこのような多層構造は、例えばメタモードプロセス(スパッタリング)によって塗布され得る。これは、膜全体にわたる水分の経路に寄与し得る粒子を最小限に有する非常にきれいな表面を必要とする。スタックがデバイス表面への良好な付着力を有すること、及びスタック中の圧縮応力を<600MPaまで最小化することが重要である。密な非結晶性の交互積層した無機物スタックは、PECVD法によって塗布され得る。非結晶性で適合性の膜特性に起因して、これらの膜は、欠陥が少なく高付着性であり得る。密で欠陥の少ない多層コーティングは、原子層堆積(ALD)技術によっても塗布され得る。使用することができるALD技術としては、熱ALD技術、プラズマALD技術などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0148】
いくつかの実施形態においては、ALD技術によって塗布される多層コーティングには、5ナノメートル厚以上の酸化アルミニウム(Al
2O
3)層、5ナノメートル厚以上の酸化チタン(TiO
x)層を含む多層スタックが含まれ、この多層スタックは、50ナノメートル以上200ナノメートル以下の合計厚さを含む。いくつかの実施形態においては、多層スタックは、100ナノメートル以上150ナノメートル以下の合計した層の厚さを含む。
【0149】
いくつかの実施形態においては、封入層は、交互の有機/無機ユニットを含む多層スタックを含み、この有機/無機ユニットは、アクリレート類を含めた有機モノマーと、SiO
2またはAl
2O
3などの無機層とを含む。バリアースタックは、後から配置した2個対を複数含んで、小さい水分浸透速度を得ることができる。このようなスタックは粒子混入要件を軽減し、また完成したスタック中でのクラック型経路の発生機会を減少させる。プロセスの全体を真空中で行う。モノマーは液体として塗布され得、急速に硬化され得る。次の付着物は無機層などを含むことができる。有機層は欠陥を適合的にコーティングすることができ、スタック中で欠陥が直ちに広がることを阻止することができる。スタックを通って入る水の経路は非常に曲がりくねっており、浸透速度は減少し得る。
【0150】
いくつかの実施形態においては、封入層は、ECスタックの上部に積層されるバリアー層スタックを含むことができる。例えば、封入層は、1つ以上のバリアー層を含むことができ、このバリアー層は、基材上に形成される多層スタックを含むことができ、また基材はECスタック上に積層され得る。基材は、薄いガラス基材やポリマー基材などを含むことができ、それらは基材を通る水分の浸透に対して抵抗性である。多層スタックは、1つ以上のAR層やIRカットフィルター層などを含むことができる。いくつかの実施形態においては、多層スタックは少なくとも部分的に水分を透過することができ、また多層スタックが形成される基材は水分の浸透に対し抵抗性であるので、基材と多層スタックとを含む封入層は水分の対し浸透に抵抗性である。基材は、1種以上の様々な接着剤や1種以上のインデックス調節層などにより、ECスタックに積層することができる。
【0151】
いくつかの実施形態においては、VITEX(商標)を含めたバリアー膜スタックは、薄いポリマー基材上で形成される。ポリマー基材にはPETが含まれ得る。次に、1種以上の様々な接着剤を使用して、このバリアースタックをECデバイスに積層することができる。この接着剤には、シリコーン接着剤、SENTRYGLAS(商標)などの他の「ドライ」接着剤が含まれる。
【0152】
図21A〜21Dは、いくつかの実施形態に従って、積層封入層2120を備えるECデバイス2100を示している。
図21AはECデバイス2100を示しており、このECデバイス2100は、本開示の様々な他の図面に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。ECデバイス2100は、オブスキュレーション層2104、下部封入層2105、下部伝導層2106、ECスタック2107、上部伝導層2108及びインデックス調節層2110を含む、単一基材上に配置された様々な層2104〜2110と、単一基材2102とを含む。インデックス調節層は、ECデバイス2100への積層封入層2120の結合を可能にし得る。示されるように、
図21Aの封入層2120は、多層スタックを含むことができるバリアー膜スタック2116を含み、バリアー膜スタック2116は基材2114上に形成されている。封入層2120はECデバイス上に積層されていて、光学接着剤2112及びインデックス調節層2110などに少なくとも部分的に基づいて、デバイス2100に結合している。いくつかの実施形態においては、図示されている層の1つ以上がなくてもよい。例えば、オブスキュレーション層2104及び下部封入層2105のうちの1つ以上は、ECデバイス2100になくてもよい。基材2102は水分の浸透を阻止してもよく、結果として下部封入層2105は余分となっていてもよい。
【0153】
図21BはECデバイス2100を示しており、このECデバイス2100は、本開示の様々な他の図面に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。このECデバイス2100では、
図21Aに示されているECデバイス2100と比べて、基材とバリアー膜スタックの配置が変更されていて、バリアー膜スタックは、基材とECスタックとの間にある。
図21Bに示されるECデバイス2100は、オブスキュレーション層2104、下部封入層2105、下部伝導層2106、ECスタック2107、上部伝導層2108及びインデックス調節層2110を含む、単一基材上に配置された様々な層2104〜2110と、単一基材2102とを含む。インデックス調節層は、ECデバイス2100への積層封入層2120の結合を可能にし得る。示されるように、
図21Bの封入層2120は、多層スタックを含むことができるバリアー膜スタック2116を含み、バリアー膜スタック2116は基材2114上に形成されている。封入層2120はECデバイス上に積層されていて、光学接着剤2112及びインデックス調節層2110などに少なくとも部分的に基づいて、デバイス2100に結合しており、バリアー膜スタック2116は基材とECスタック2107との間にある。いくつかの実施形態においては、図示されている層の1つ以上がなくてもよい。例えば、オブスキュレーション層2104及び下部封入層2105のうちの1つ以上は、ECデバイス2100になくてもよい。基材2102は水分の浸透を阻止してもよく、結果として下部封入層2105は余分となっていてもよい。
【0154】
図21CはECデバイス2100を示しており、このECデバイス2100は、本開示の様々な他の図面に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。このECデバイス2100では、1つ以上のバリアー膜スタックが、基材の複数の側面上で封入層中に含まれている。
図21Cに示されるECデバイス2100は、オブスキュレーション層2104、下部封入層2105、下部伝導層2106、ECスタック2107、上部伝導層2108及びインデックス調節層2110を含む、単一基材上に配置された様々な層2104〜2110と、単一基材2102とを含む。インデックス調節層は、ECデバイス2100への積層封入層2120の結合を可能にし得る。示されるように、
図21Cの封入層2120は、2つの別のバリアー膜スタック2116及び2118を含み、これらのうちの1つ以上が多層スタックを含むことができる。バリアー膜スタックは基材2114の両側で形成されている。封入層2120はECデバイス上に積層されていて、光学接着剤2112及びインデックス調節層2110などに少なくとも部分的に基づいて、デバイス2100に結合しており、バリアー膜スタック2116は基材とECスタック2107との間にある。いくつかの実施形態においては、図示されている層の1つ以上がなくてもよい。例えば、オブスキュレーション層2104及び下部封入層2105のうちの1つ以上は、ECデバイス2100になくてもよい。基材2102は水分の浸透を阻止してもよく、結果として下部封入層2105は余分となっていてもよい。
【0155】
図21DはECデバイス2100を示しており、このECデバイス2100は、本開示の様々な他の図面に示されている1つ以上の様々なECデバイスに備えられ得る。このECデバイス2100では、基材から離れたバリアー膜スタックが、封入層に存在していない。このような封入層は、水分の浸透を阻止するよう構造化された基材を含んでもよい。
図21Dに示されるECデバイス2100は、オブスキュレーション層2104、下部封入層2105、下部伝導層2106、ECスタック2107、上部伝導層2108及びインデックス調節層2110を含む、単一基材上に配置された様々な層2104〜2110と、単一基材2102とを含む。インデックス調節層は、ECデバイス2100への積層封入層2120の結合を可能にし得る。示されるように、
図21Dの封入層2120は基材2114を含み、基材2114は、水分の浸透を阻止するよう構造化された基材であることができる。封入層2120はECデバイス上に積層されていて、光学接着剤2112及びインデックス調節層2110などに少なくとも部分的に基づいて、デバイス2100に結合しており、バリアー膜スタック2116は基材とECスタック2107との間にある。いくつかの実施形態においては、図示されている層の1つ以上がなくてもよい。例えば、オブスキュレーション層2104及び下部封入層2105のうちの1つ以上は、ECデバイス2100になくてもよい。基材2102は水分の浸透を阻止してもよく、結果として下部封入層2105は余分となっていてもよい。
【0156】
いくつかの実施形態においては、基材は、ガラスホイル紙及び接着剤層を含む、薄いガラス積層体を含む。薄いガラス積層体は、厚さが約25マイクロメートルのガラスホイルを含むことができる。いくつかの実施形態においては、薄いガラス積層体は、1つ以上の様々な厚さを含むことができる。例えば、薄いガラス積層体は、厚さ約50マイクロメートルであることができる。
【0157】
いくつかの実施形態においては、本明細書で開示されるエレクトロクロミック(EC)材料の代わりに、または追加して、フォトクロミック材料またはサーモクロミック材料を使用してもよい。例えば、デバイスのいくつかの領域は、ECスタックを含めたエレクトロクロミック材料を含んでもよいが、他の領域は、エレクトロクロミック材料、フォトクロミック材料またはサーモクロミック材料のうちの1つ以上を含んでもよい。好適なフォトクロミック材料としては、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロオキサジン及びキノンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なサーモクロミック材料としては液晶及びロイコ染料が挙げられるが、これらに限定されない。フォトクロミック材料及びサーモクロミック材料は両方ともに、周知の手段で基材上に形成することができる。フォトクロミックまたはサーモクロミック動的領域に対してはバスバーや電極などが必要とされず、これはそれぞれ光及び熱が材料の特性を変調するからである。フォトクロミック及び/またはサーモクロミック動的領域用いた例示的一実施形態は、1つ以上のエレクトロクロミック動的領域と、1つ以上のフォトクロミック動的領域と、1つ以上の第2エレクトロクロミック領域とを有する窓であり得る。上記の1つ以上のエレクトロクロミック動的領域は窓の上部用であり、昼光照明のために、1つ以上の特定の透過パターンなどの間で選択的に切り替わるよう活発に制御される。上記のフォトクロミック動的領域は窓の下部用であり、直射日光の下では自己を暗色化する。上記の第2エレクトロクロミック領域は、デバイスの別の部分に配置される。
【0158】
いくつかの実施形態においては、1つ以上のECデバイスは、カメラデバイスでアパーチャーフィルターや絞りなどとして使用することができ、かなり上で論じたように、選択的にアポダイズするよう構造化されていてもよい。いくつかの実施形態においては、1つ以上のECデバイスは、さらなる加工がなされるまえに長距離にわたって輸送され得る設計「マザーボード」に備えることができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上のECデバイスは、輸送用途及び重量が重要である他の用途で、1枚以上の一重ガラス窓に備えることができる。いくつかの実施形態においては、単一基材を含む1つ以上のECデバイスを含めた、1つ以上のECデバイスは、携帯用デバイスやコンピュータなどのディスプレイ上で情報を隠したりまたは表示させることに使用することができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上のECデバイスは、ダイナミック・アイウェア(dynamic eyewear)で使用することができる。
【0159】
さらに、本明細書において開示される主題の一実施形態は、独立して制御される複数の動的領域を備える窓ガラスまたはライト(lite)を有する建築窓を含めた窓を含むことを理解する必要がある。本明細書において開示される主題の別の実施形態は、1枚の窓ガラス上に複数領域のエレクトロクロミック窓を備え、かつ他の窓ガラス上に透明ガラスを備える絶縁グレージングユニット(「IGU」)を含む。本明細書において開示される主題のさらに別の実施形態は、1枚の窓ガラス上に複数領域のエレクトロクロミック窓を備え、かつ他の窓ガラス上に低Eガラス、着色ガラスまたは反射ガラスを備えるIGUを含む。本明細書において開示される主題のさらに別の実施形態は、IGUの1枚の窓ガラス上に複数領域のエレクトロクロミック窓を備え、かつ他の窓ガラス上にパターン形成ガラスまたは特殊ガラスを備えるIGUを含み、そのパターニングまたは特徴は第1の窓ガラス上の動的領域の区域と適合し、その区域を補完し、かつ/またはその領域と対照をなしてもよい。上述の実施形態は、複数の動的領域を備えるライト(lite)が透明なライト、低Eライト、反射性ライト及び/または部分的に反射性のライトであるよう、形成や構造化などすることができることを理解する必要がある。
【0160】
図に示し、かつ本明細書において説明した様々な方法は、方法の例示的な実施形態を表す。この方法は、ソフトウェア、ハードウェアまたはそれらの組合せで行ってもよい。方法の順序は変更されてもよく、様々な要素の追加、並び替え、組合せ、省略、変更などを行ってもよい。
【0161】
上記の実施形態はかなり詳細に説明されてきたが、上記の開示が完全に理解されれば、多数の変形形態及び変更形態が当業者に明らかとなるであろう。以下の特許請求の範囲は、これらの変形形態及び変更形態の全てを包含すると解釈されることが意図される。