(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズルは、前記血管組織の脈管および非血管組織を類似速度で除去するために、前記血管組織から閾値遷移距離を超えない距離において、前記血管組織と配列されるように構成される、請求項1に記載の装置。
前記ポンプは、複数のポンプパルスを送達するためのピストンを備え、前記ノズルと、前記ポンプの流速とは、複数の飛散パルスを提供するように構成され、前記複数のポンプパルスはそれぞれ、前記複数の飛散パルスを提供する、請求項1に記載の装置。
前記ジェットは、切断されるべき組織に向かって指向されるように配列され、ジェット流体力学パラメータが、前記組織の機械的破壊を可能にするように構成され、前記ジェット流体力学パラメータはまた、出血を阻止するように構成される、請求項1に記載の装置。
前記ジェット流体力学パラメータは、流体ジェット速度または剪断応力場のうちの1つ以上を含み、かつ/または、前記ジェット流体力学パラメータは、出血の阻止とともに前記組織を切断するために、キャビテーション場を制御するように構成される、請求項5に記載の装置。
前記ノズルは、前記ジェットを提供するように構成され、前記ノズルは、前記液体中で血管新生組織に向かって、前記ジェットと前記組織との機械的相互作用を通して前記組織を切断するように指向され、前記組織内の切断された血管の出血は、前記ジェットの1つ以上の流体力学パラメータに応答して、血小板凝集または血栓形成のうちの1つ以上によって、阻止される、請求項1に記載の装置。
前記ジェットは、前記血管組織の脈管および非血管組織を類似速度で除去するために、実質的に浸食性のジェットを含み、かつ/または、前記複数の飛散パルスは、前記血管組織の脈管および非血管組織を類似速度で除去するために、実質的に浸食性の飛散パルスを含む、請求項1に記載の装置。
前記血管組織の出血は、内皮傷害、剪断応力、および血流の低下に関連する毛細血管ならびに細動脈内の誘発性血栓症;血小板の付着および凝集;フィブリンの沈着;閉塞性脈管凝血に関連するフィブリンの沈着;影響を受ける域内の流体圧力;除去プロファイルからある距離における影響を受ける域内の流体圧力;前記影響を受ける脈管内の血流阻害;前記影響を受ける血管の部分的圧潰;前記影響を受ける血管の完全圧潰;ならびにそれらの組み合わせのうちの1つ以上に伴って阻止される、請求項10に記載の装置。
前記複数のポンプパルスは、除去のための組織の場所に指向され、前記組織は、前記複数のポンプパルスのそれぞれの前記複数の飛散パルスを用いて、前記場所から除去される、請求項4に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(詳細な説明)
本開示の実施形態の原理が利用される、例証的実施形態を記載する以下の発明を実施するための形態、および添付図面を参照することにより、本開示の特徴および利点のより良い理解が得られるであろう。
【0027】
発明を実施するための形態は、多くの詳細を含有するが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の異なる実施例および側面を例証するにすぎないと解釈されるべきである。本発明の範囲は、上記で詳細に議論されていない他の実施形態を含むことを理解されたい。当業者に明白となるであろう、種々の他の修正、変更、および変化例が、本明細書で説明されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明の方法および装置の配列、動作、および詳細に行われてもよい。
【0028】
本明細書で使用されるように、用語「アクァビーム(AquaBeam)」は、キャビテーションを組織に提供するために液体中に提供される液体ジェットを包含する。
【0029】
本明細書に開示されるような組織切断に伴って止血を提供するための流体ジェット組織アブレーション(以降、「アクァアブレーション(Aquablation)」)ならびに方法および装置は、多くの先行技術の外科手術手技および装置との組み合わせに非常に好適である。多くの実施形態では、ジェットを用いた組織切開に関連する、改良された止血が、提供される。多くの実施形態では、ジェットは、ジェットのキャビテーションを誘発する、液体媒体中のジェットを含み、これは、冷炎域と称され得、高速度流体ジェットとジェットに接触する脈管との間の実質的に機械的な剪断応力相互作用に関連し得る。多くの実施形態では、ジェットは、ジェットの組織除去が、組織のタイプおよび組織のコラーゲンの量に実質的に鈍感であって、血管および肉芽組織を類似速度で切断し得るように、キャビテーションの閾値を上回る十分なエネルギーを含む。組織のジェットおよび対応する剪断との機械的接触は、微小な血栓症を毛細血管内に誘発することができ、細動脈は、改良された凝血および対応する止血を提供することができる。多くの実施形態では、内皮細胞が、血液凝血因子の放出を促進するように影響を受け得る。本明細書に説明されるような内皮細胞への影響は、改良された止血を提供するために、ジェットおよび液体媒体のキャビテーションが組織に衝打する部位から所定の距離で生じ得る。多くの実施形態では、実質的に機械的な剪断応力は、内皮細胞への損傷を提供し、そして血流の低下を提供することができ、閉塞性脈管凝血を提供するように、血小板の付着および凝集ならびにフィブリンの沈着を促進かつ向上させ得る。
【0030】
多くの実施形態では、ジェットによって供給される剪断応力は、補体活性化から独立して、血小板凝集を誘発するために十分である。補体活性化から独立した血小板凝集は、前述のような動脈狭窄等における高い血流力学剪断の面積に類似する様式で生じ得る。Blood.Sep 15,2006;108(6):1903−1910.PMCID:PMC1895550 Activation−independent platelet adhesion and aggregation under elevated shear stress(ZM Rugerri et al)を参照されたい。十分な期間の間、ウォータージェット剪断応力を影響を受ける脈管に直接提供することによって、血小板凝集は、初期止血を達成し、凝血カスケードが、影響を受ける脈管を血栓症にし、持続的止血を達成することを可能にし得る。剪断が増加するにつれて、止血血小板凝集を達成するための時間は、減少し得る。本明細書に説明されるようなアクァアブレーションは、ポンプパワー(およびそれに伴って、流体速度ならびに剪断応力の大きさ)およびウォータージェットの並進の速度を制御することによって、止血を改良するように調整されることができる。多くの実施形態では、ポンプパワーがより高く、ジェットの並進がより低速であるほど、促進性の止血となる(pro−hemostatic)。代替として、または組み合わせて、種々の止血因子(局所圧力勾配、剪断変調止血、キャビテーション誘発性血栓症)の相対的寄与は、ジェットノズル出口から進行した距離に伴う炎域の発生に関連するため、ジェット(具体的ポンプパワーのための)位置に対する脈管位置に応じて変動し得る。
【0031】
脈管凝血は、多くの方法のうちの1つ以上において提供されることができるが、多くの実施形態では、ウォータージェットを用いた組織処置の間の影響を受ける域内の流体圧力は、影響を受ける脈管から退出する血液を迅速に阻止し、実質的に低下させ得る。多くの実施形態では、本明細書に説明されるような止血は、影響を受ける脈管の部分的または完全圧潰に関連する。多くの実施形態では、キャビテーションを用いて提供される実質的に機械的な剪断応力は、流体ジェット組織切除および組織のアブレーションだけではなく、また、熱を伴わない組織凝血を提供することができる。
【0032】
図1Aは、本明細書に開示されるようなキャビテーション103を伴う軸方向の流れのウォータージェット101として加圧された流体を送達するように配向されるノズル104を伴う遠位端を有するシャフト102を備え得る、ハンドヘルドデバイスを備える、装置100を示す。ジェットおよび組織Tは、生理食塩水または別の液体等の液体L中に浸漬され、例えば、本明細書に開示されるようなキャビテーションを伴う飛散パルスを提供することができる。液体は、液体の上方の空気等のガスGとともに、組織上に提供されることができる。代替として、または組み合わせて、組織は、例えば、液体で被覆された内部組織を含んでいてもよい。水または他の流体が、ノズルから圧力下で送達される。ハンドヘルドデバイス100は、軸方向ウォータージェットまたは他の加圧された流体流れを送達可能であって、例えば、組織または骨を手動切断するために有用である。ハンドヘルドデバイス100は、典型的には、接続コード126によって、加圧された流体源120、流体フローモニタ122、および制御回路124に接続される。流体フローモニタ122は、例えば、圧力モニタを備えてもよい。ユーザは、したがって、制御回路を使用して、軸方向および回転移動パラメータに加え、流体圧力、ノズルの移動(速度、方向、限界等)および処置プロトコルの他の側面を制御することができる。随意に、図示されないが、ノズル104は、処置のさらなる柔軟性を可能にするため、流体流れFSの幅および焦点を調節するために調節可能であり得る。組織を切断するために使用されるとき、ハンドヘルドシャフトは、解剖刀として操作されることができる。代替として、ノズルは、回転、並進、および発振プローブ等のコンピュータ制御される位置決めシステム、またはロボットアーム、ならびにそれらの組み合わせ上に搭載されることができる。
【0033】
多くの実施形態では、加圧されたポンプは、例えば、ピストンポンプ等の高圧ポンプを備える。制御回路は、制御された流速を提供するように、圧力モニタ122に結合されることができる。制御された流速は、ノズルと組み合わせて、本明細書に開示されるように、組織を切開するために、所定の距離でキャビテーション炎域を提供することができる。
【0034】
図1Bは、実施形態による、組織Tを処置するために好適なコンピュータ制御デバイスを備える、装置100を示す。装置100は、コンピュータコマンドに応答して組織を処置するために、処置プローブに結合される、連結部130を備えてもよい。連結部は、例えば、並進可能であるか、または回転、発振、および並進可能であるか、ならびにそれらの組み合わせである、連結部を備えてもよい。連結部は、プロセッサ132に結合されることができ、そして例えば、ユーザ制御下、誘導されてもよい。本明細書に開示される実施形態は、参照することによって本明細書のいずれかに組み込まれる、コンピュータ制御式画像誘導処置装置等の組織を除去するための多くのデバイスとの組み合わせに好適である。
【0035】
図1Cは、実施形態による、組織を処置するためのノズル104を示す。ノズルは、本明細書に説明されるような多くの方法のうちの1つ以上で構成されることができ、本明細書に説明されるような止血を伴う組織除去を提供するための流速と組み合わせるために好適である。多くの実施形態では、ノズルを通る流速およびノズルの構成は、最大組織除去距離を提供する。ノズルからのジェット101は、選択的組織除去領域105および非選択的組織除去領域107を備えてもよい。ジェットの選択的組織除去領域105は、組織のコラーゲンに応答した速度で組織を選択的に除去することができる。例えば、血管壁等のコラーゲン性組織は、肉芽組織等のコラーゲンのより少ない組織より迅速に除去されることができる。ジェットの非選択的組織除去領域107は、異なる量のコラーゲンを有する組織を実質的に類似する速度で除去することができる。例えば、血管壁等のコラーゲン性組織は、肉芽組織等のコラーゲンのより少ない組織と実質的に類似する速度で除去されることができる。閾値遷移域109は、選択的組織除去領域と非選択的組織除去領域との間に位置することができる。
【0036】
ノズルは、流体送達要素の流体送達要素および設計考察を備える、キャリア382上に搭載されることができる。キャリア382は、例えば、回転し、並進し、そして発振するプローブ上に提供されることができる。流体送達要素のジェットオリフィス111の設計は、複数の飛散パルスを提供するように、本明細書で説明される多くの方法のうちの1つ以上の方法で構成することができる。ジェットオリフィス幾何学形状を変化させることによって、流体ジェットアブレーション特性を変化させることができる。例えば、円錐角変動113が、ノズル出口で発生するキャビテーション103の増加または減少をもたらし得る。ジェットオリフィス設計は、オリフィス111の入口または出口のうちの1つ以上に円錐を備えてもよい。円錐角は、例えば、0度から180度まで様々であり得る。
【0037】
多くの実施形態では、ジェットノズルプロファイルもまた、流体加速度およびキャビテーションの量に影響を及ぼす。例えば、鋭いエッジのオリフィスは、大静脈効果(vena cava effect)から出口においてより高いジェット速度を誘発することができ、対応して、ジェット遠方場におけるより多くの量のキャビテーション103を伴う。
【0038】
オリフィス直径115およびオリフィス長117変動が、ノズル背圧および流体流;の退出速度の変動をもたらし得る。結果として生じるキャビテーション領域は、これらのパラメータのそれぞれとともに変化する。キャビテーション領域は、ノズルによって生成されるキャビテーション気泡雲を含み得る。組織浸透の深さは、本明細書に説明されるように判定および制御されることができる。多くの実施形態では、キャビテーション領域は、超音波撮像または光学撮像を用いて、それらの組み合わせで可視化することができる。キャビテーション領域は、同伴領域が可視化されることを可能にし、流体炎域と称され得る、気泡が形成される領域に対応する。キャビテーション領域の冷却切断は、最小限の組織損傷を伴って、組織除去を可能にすることができる。多くの実施形態では、約40度〜約80度の範囲内の円錐角である。オリフィスの内径に対するオリフィス長の比は、約1〜10の範囲内、例えば、約4〜7の範囲内であり得る。当業者は、本明細書で提供される教示に基づいて、本明細書で説明されるように組織を処置するようなジェットオリフィスを設計することができる。
【0040】
図2は、実施形態による、ヒトの眼に可視的なアブレーション炎域を示す。
【0041】
図3は、
図2におけるようなアブレーション炎域の高速画像を示す。画像は、約1/400秒の速度で撮影された。
【0042】
図2および3のデータは、アブレーション炎域が、ノズルから放出されたときにアブレーション流れで生成される複数の白色雲を含むことを示す。実施形態に関連する研究は、キャビテーション雲が特徴的な飛散周波数でジェットから飛散できることを示している。各雲の長さ992は、雲の飛散周波数および速度に関連する。ジェットの相対的に冷たいアブレーション炎域は、本明細書で説明されるように組織を制御された深さまで切断するように調節することができる、ジェットの切断長に対応する長さ990を備える。多くの実施形態では、ジェットのノズルは、雲が組織を衝打する前に、飛散雲が実質的に形成することを可能にするために、
図3に示されるような非切断構成で飛散雲の長さ992の少なくとも約4分の1に配置される。より大きい断面サイズへのこの飛散雲の飛散はまた、雲をより大きい組織の領域に分配する際に改良された組織除去を提供し、ジェットのパルス間で改良された重複を提供することもできる。
【0043】
ジェットの衝撃圧力に加えて、画像の白色雲に対応する、高度乱流および侵襲的領域は、本明細書で説明されるような組織のアブレーションに実質的に寄与する。白色雲は、複数のキャビテーション領域を備える。水を含む加圧液体が水に注入されるとき、小さなキャビテーションが、ノズル出口付近で、剪断層内の低い圧力の領域中に生成される。小型キャビテーションは、キャビテーション渦を含んでもよい。キャビテーション渦は、相互と合併し、高速画像内でキャビテーション雲として出現する、大きな離散キャビテーション構造を形成する。これらのキャビテーション雲は、組織と相互作用するときに効果的なアブレーションを提供する。いかなる特定の理論によっても束縛されることなく、組織を衝打するキャビテーション雲は、組織を衝打するキャビテーション雲を画定する高速流体と組み合わせて、キャビテーションに関連する組織の大幅な浸食を引き起こすと考えられる。
【0044】
本明細書で説明されるようなノズルおよび圧力は、本明細書で提供される教示に基づいて、例えば、当業者によるノズルの角度の制御により、パルス状の雲を提供するように構成することができる。多くの実施形態では、流体送達要素のノズルは、組織のアブレーションを向上させるために、キャビテーションジェットを備える。
【0045】
流体送達要素ノズルおよび圧力は、組織の除去に好適な飛散周波数を提供するように配列することができる。流体送達要素は、本明細書に説明されるように、改良された組織切除を提供するように、組織から所定の距離でプローブ上に位置することができる。
【0046】
多くの実施形態では、「炎域」の「白色雲」は、周辺の水がジェットに引き込まれるか、またはその中に「同伴される」、「同伴」領域を備える。実施形態に関する作業は、流体の同伴が飛散周波数に関連し得ることを示唆する。
【0047】
ジェットから飛散される雲の飛散周波数およびサイズは、実施形態によると、組織アブレーションを提供するために使用することができる。飛散周波数は、各雲が組織と相互作用する場所の重複を提供するように、長手軸の周囲のプローブの角度掃引速度と組み合わせることができる。
【0048】
本明細書で説明されるような飛散パルスは、本明細書で説明されるように、ジェットのスキャンと有利に組み合わせることができる。
【0049】
図4は、実施形態による、複数の重複場所997で円滑な制御された組織浸食を提供する、複数の飛散パルス995およびアブレーションジェットの掃引を示す。本飛散周波数は、複数の飛散雲が脈動ポンプの各パルスについて提供されるように、ポンプが使用されるときにポンプ周波数より実質的に速くあり得る。プローブの掃引速度は、例えば、重複パルスを提供するように構成される飛散雲を用いて、改良された組織除去を提供するように飛散周波数に関連し得る。
【0050】
多くの実施形態では、本システムは、ポンプの各パルスについて複数の飛散パルスを提供するために、飛散パルスの周波数より小さい周波数を有するポンプを備える。ポンプは、例えば、約50Hz〜約200Hzの範囲内で、少なくとも約50Hzのパルス繰り返し数を有することができ、飛散パルスは、例えば、約1kHz〜約10kHzの範囲内で、少なくとも約500Hzの周波数を含む。
【0051】
ポンプのパルスが例証されているが、連続流れポンプを用いて、パルス状雲の類似スキャンを提供することができる。
【0052】
ノズルは、多くの方法のうちの1つ以上の方法で構成することができるが、多くの実施形態では、ノズルは、約0.02〜約0.3の範囲内、例えば、約0.10〜約0.25の範囲内、そして多くの実施形態では、約0.14〜約0.2の範囲内のストローハル数(以降、「St」)を含む。
【0053】
多くの実施形態では、ストローハル数は、以下によって定義される。
【0055】
式中、Fshedは、飛散周波数であり、Wは、キャビテーションジェットの幅または直径であり、Uは、出口におけるジェットの速度である。当業者は、本明細書で説明される実施形態による組み合わせに好適な飛散周波数を得るために、本明細書で説明されるようなノズルを修正することができ、組織除去に好適な雲の長さ、および飛散周波数を判定するように、実験を行うことができる。
【0056】
複数の飛散雲を提供するノズル構成は、本明細書で説明されるような処置プローブのうちの1つ以上とともに使用するために好適である。
【0058】
キャビテーションは、高圧ウォータージェットがノズルを通って液体媒体の中へ発射するときに起こる現象である。微量の蒸気および/またはガスを含有する核が、一般的に知られている熱付加方法よりもむしろ圧力の降下を受けるとそれらは不安定になるため、局所的蒸気ポケットが形成される。キャビテーションは、局所圧力が蒸気圧を下回るときに起こり、これは、それぞれ以下の方程式によって統制される、負の圧力係数(−Cp)がキャビテーション数(σ)より大きいときに起こる。
【数1】
【0059】
式中、prefは、ノズル深さにおける静水圧であり、pは、ジェットにおける局所圧力であり、ρは、流体密度であり、vrefは、ノズルにおけるウォータージェットの出口速度であり、pvは、蒸気圧である。液体が収縮領域を通って流れるとき、その速度は、連続性を維持するように増加し、ベンチュリ効果として知られている、対応する圧力の降下がある。これを水面下のウォータージェットに適用して、ノズルを通って退出する水の速度が、収縮により著しく増加させられる一方で、ジェット流れの圧力は、実質的に低減させられる。圧力低減が十分に有意であるとき、これは、蒸気圧を下回り、蒸気空洞形成をもたらし得る。
【0060】
所定の流動力学のために、それを上回るとキャビテーションが起こらず、そしてそれを下回ると増加したキャビテーションする領域サイズが存在し得る、キャビテーション数σが存在する。いくつかのより小さいポケットが、より大きい蒸気空洞を形成するように組み合わされ得る。ウォータージェットのモーメントが、ノズルからさらに離れて周辺媒体の中へ蒸気雲を運搬すると、粘性力がジェット速度を降下させ、対応する圧力の上昇がある。この上昇は、蒸気空洞を崩壊させ、近くの水をさらに加速し、局在化マイクロジェットを形成させる圧力パルスをもたらす。液体マイクロジェットおよび圧力パルスの両方が、材料の損傷閾値エネルギーを超え、浸食を引き起こし得る。速度の急速な損失により、ジェットが所定の距離を超えてノズルから離れて移動すると、流れの運動エネルギーが、もはや閾値エネルギーを超えなくなり、崩壊したキャビテーション雲からの圧力波およびマイクロジェットが、浸食のための主な様式になる。
【0061】
多くの実施形態では、キャビテーションは、圧力の局所変化のみに依存しており、熱変動が予期されないことを意味する、等温現象にする。実験的に、蒸気キャビテーションがサイズを増大させると、潜熱が周辺液体から引き出され、温度の非常にわずかな降下(約0.35度)を観察することができる。多くの実施形態では、このプロセスは完全には等温ではないが、温度のほぼ無視できる変化は、ウォータージェット切断が、熱の影響を受けたゾーンを要求しない機械加工感受性部品に有用である理由である。
【0062】
多くの実施形態では、物質除去の主要な様式になる、圧力パルスおよびマイクロジェット浸食は、限定浸食半径である。キャビテーションが、周囲液体圧力に対するウォータージェットの圧力差に起因して起こるため、ジェットが減速し、圧力が周辺液体と平衡状態になるにつれて、空洞が崩壊する前に、蒸気空洞は最大距離までしか存在することができない。結果として、水面下の水中ジェット切断は、それらが消散する前の圧力パルスおよびマイクロジェットの範囲に起因して、実質的に自己制限的になり、切断するための非常に安全かつ高精度のツールとなる。代替実施形態では、減速させるようにジェットに作用する比較的最小限の力があるため、ガス状ウォータージェットは、はるかに長い距離で閾値エネルギーを超える高い運動エネルギーを有し得る。
【0063】
図5は、実施形態による、切断の最大組織浸透深さ、およびノズルを通した流速を示す。最大浸透深さは、「冷たい」アクァアブレーション炎域を備える、ジェットのキャビテーション気泡の長さに実質的に対応する。アブレーションの最大組織浸透深さは、流速に直接対応し、多くの実施形態では、流速に直線的に関連する。
【0064】
キャビテーションを伴う炎域は、本明細書に説明されるようなノズルおよび回転プローブを用いて、約50ml/分〜約250ml/分の範囲内の流速に対応する10個のフロー設定とともに示される。最大浸透深さは、50ml/分で約4mm〜250ml/分で約20mmに及ぶ。
【0065】
図5の差込図は、実施形態による、前立腺BPHのモデルとして切断されたジャガイモを示す。ジャガイモの最大浸透深さは、BPHの最大切断深さに密接に対応する。ジャガイモは、本明細書で説明されるようなノズルおよび回転プローブを用いて、約50ml/分〜約250ml/分の範囲内の流速に対応する6つのフロー設定を用いて切断されて示される。最大浸透深さは、50ml/分で約4mm〜250ml/分で約20mmに及び、本明細書に説明されるような冷「炎域」を含むジェットのキャビテーションの画像と一致する。
【0066】
多くの実施形態では、キャビテーション雲の成長および長さは、本明細書で説明されるような適切に構成されたノズルについて、注入圧力に比例する流速の関数を含み、その逆も同様である。圧力が上昇するにつれて、最大浸食半径は、直線的に増加するように見え、これは、
図5の最大浸透深さとして示されている。
【0067】
連続またはパルス状流れのいずれかにおいて、ノズルを通して水を推し進めるために、既知の高圧ポンプを使用することによって、高速キャビテーションジェットを作成することができる。ポンプによって生成される流れのタイプにかかわらず、キャビテーション現象は、蒸気空洞の不安定な性質に起因してパルス状であり得、空洞形成は、本明細書で説明されるような連続流れジェットでさえもパルス状であり得る。特定の理論に束縛されるわけではないが、パルス状ウォータージェットおよび連続流れウォータージェットの両方が、所定の時間量にわたって等価な量の物質浸食をもたらし得ると考えられる。多くの実施形態では、ノズルの幾何学形状は、本明細書で説明されるような流動力学およびキャビテーションプロセスを提供するように構成される。多くの実施形態では、ノズルは、ノズル自体の内側で起こり得るキャビテーションに関連し得る、ウォータージェット出口における緊密な収縮を阻止するように構成される。多くの実施形態では、鋭い角は、水を壁から分離させてノズル中心線に向かって集中させ、ノズル壁によって引き起こされる摩擦効果を同時に低減させながら、ウォータージェット経路をさらに収縮させる。これは、対応する圧力降下および蒸気空洞形成とともに、増加した速度をもたらす。蒸気空洞形成は、それらの最終的な崩壊が乱流をもたらし、浸食深さに影響を及ぼし得るため、全体の流動力学に影響し得る。当業者は、過度の実験を伴わずに、本明細書で説明されるような組織除去を提供するように、適切なノズルの幾何学形状および流速を判定する実験を行うことができる。
【0069】
本明細書で説明されるような水面下のウォータージェット切断は、良性前立腺肥大(BPH)がある患者を処置するためにキャビテーション現象を利用する能力を有する。ジェットは、崩壊した蒸気空洞によって引き起こされる圧力パルスおよびマイクロジェットを通して、BPHで見られる過剰な軟組織成長を除去する。ウォータージェット方向は、多くの方法のうちの1つ以上において、デバイスのノズルの場所および配向を変化させることによって操作することができる。例えば、前後方向に沿ってノズルを並進させることによって、または、例えば、180度等の角度までノズルを回転させることによって、ならびにそれらの組み合わせのうちの1つ以上によってである。ハンドピースプローブは、前立腺の前方側に着座し得るため、所定の回転角度が、組織障害物をアブレーションするために使用されることができる。
【0070】
蒸気空洞形成およびその浸食強さは、注入圧力および流動力学の両方の関数であるため、圧力ならびにノズル幾何学形状を構成することによって、物質の深さを制御することができる。より大きい注入圧力が、より速い出口速度をもたらし得る。本明細書に説明されるように、ノズル幾何学形状はさらに、収縮に応じて速度を増加させることができ、ウォータージェットがベンチュリ効果を通して退出すると、圧力降下の程度に影響を及ぼし得る。これらの因子は、崩壊して圧力パルスおよびマイクロジェットを放出する前に、キャビテーション雲が成長して移動することができる、より長い距離をもたらし得る。アクァアブレーションシステムのノズル幾何学形状および圧力設定は、ユーザに精密制御を与え、キャビテーションジェットが所望の良性組織成長のみを除去することを確実にするように最適化されている。
【0071】
本明細書で提供される画像は、実施形態によると、どのように組織浸食深さが圧力の関数であるかを示す。画像は、他の画像と比較して、より低い注入圧力について、より小さいキャビテーション雲の長さ、および対応する組織切除深さを示す。
【0072】
多くの実施形態では、本明細書で説明されるようなアクァアブレーションは、動脈と静脈の実質的除去および損傷ならびに出血阻止を伴って、過剰な組織成長、例えば、BPHを除去可能である。多くの実施形態では、ジェットは、出血の減少を伴って、BPH等の成長組織および血管等のコラーゲン性組織の両方の閾値を上回るキャビテーションエネルギーを提供するように位置付けられる。キャビテーションによって提供される圧力パルスおよびマイクロジェットは、軟組織成長およびはるかに高い閾値エネルギーを有する血管のような他の構造を浸食するために必要とされる閾値エネルギーを超える。
【0073】
多くの実施形態では、有害な塞栓の生成が阻止される。蒸気空洞形成は、例えば、血流中にすでに存在している微細な空気の核から利益を享受し得る。キャビテーションは、いかなる付加的な空気もシステムに導入されることなく、核の成長をもたらし得る。さらに、空気ポケットがそれらの元の核サイズに戻って縮小し得るように、いったん局所ジェット圧力が蒸気圧を超えると、空洞が崩壊し得る。多くの実施形態では、キャビテーションが尿道周囲の生理食塩水に元来ある微量の空気に依存し、かつそれに制限されるので、塞栓形成が阻止され、ジェット圧力が上昇し始めると、蒸気空洞が迅速に消散する。
【0074】
図6は、実施形態による、
図5に類似する最大組織浸透110 対 流速を示す。組織に対するノズル位置は、例えば、実質的浸食性、または実質的に選択的、ならびにそれらの組み合わせとして、組織切開を判定するために使用されることができる。脈管等のコラーゲン性組織より実質的により早い速度におけるBPH等の実質的に非コラーゲン性の組織の選択的組織除去105は、遷移閾値109を超えた距離に提供されることができる。高度に浸食性の実質的に非選択的な除去107は、例えば、閾値距離109未満の組織からの距離に提供されることができる。遷移閾値は、オフセットを伴って、実質的に線形関数を含み得る。例えば、傾きは、オフセットを伴って、遷移閾値より幾分急峻であり得る。
【0075】
選択的組織除去から高度に浸食性の実質的に非選択的な組織除去への閾値遷移は、流速およびノズルからの距離の多くの関数のうちの1つ以上を含んでもよい。例えば、閾値遷移は、例えば、線形関数、多項式関数、または実験的に判定された変換関数、ならびにそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。当業者は、過度の実験を伴わずに、本明細書に説明されるような教示に従って、選択的除去および実質的浸食性組織除去のための距離を判定することができる。
【0076】
図7は、実施形態による、オフセットを伴って、最大浸透深さ110の傾きに類似する傾きを含む、選択的除去105から浸食性除去107への閾値109遷移を示す。オフセットは、本明細書に説明されるような流体ジェットパラメータに関連し得る。
【0077】
図8Aおよび8Bは、実施形態による、選択的組織除去を示す。組織は、選択的組織除去を提供するために、遷移閾値を上回る距離に位置付けられることができる。
図8Aは、選択的除去に先立った組織Tを示す。軟肉芽組織GTは、
図8Bに示されるように、実質的に除去され、血管V等のコラーゲン性組織CTの除去は、阻止されることができる。実施形態に関連する研究は、本明細書に説明されるような飛散パルスが、内皮に影響を及ぼし得、これは、いくつかの実施形態による、凝血および出血低下に寄与し得ることを示唆する。
【0078】
図9Aおよび9Bは、実施形態による、高度に浸食性の組織除去を示す。
図9Aは、除去に先立った組織Tを示す。
図9Bは、除去後の組織を示す。血管Vを含むコラーゲン性組織CTは、除去プロファイルRPを用いて示されるように、BPH等の実質的にコラーゲンがより少ない肉芽組織GTと実質的に同じ速度で除去されることができる。高度に浸食性の組織除去は、本明細書に説明されるように提供される流速のための遷移閾値未満の距離に位置付けられるノズルを用いて提供されることができる。
【0079】
多くの実施形態では、血管Vの内皮細胞内膜Eは、微小凝血、凝血、塞栓、または微小塞栓、および本明細書に説明されるような1つ以上の生物学的応答のうちの1つ以上を提供するように影響を受け得る。多くの実施形態では、誘発性微小凝血Cは、閉塞された組織の血管および毛細血管を実質的に閉塞することができる。
【0080】
図10は、実施形態による、圧潰された脈管壁CWを示す。圧潰された脈管壁CWは、本明細書に説明されるような高度に浸食性のキャビテーションを用いて生成されることができる。多くの実施形態では、キャビテーションおよびジェットは、脈管壁Wの圧潰を誘発することができる。脈管壁の圧潰は、脈管Vの切開された端部を通る血流を阻止することができる。
【0081】
脈管壁は、キャビテーションに応答して、多くの方法のうちの1つ以上において、血流を阻止することができる。多くの実施形態では、切断された脈管の端部は、増加した表面積を提供し、血小板および血液細胞との相互作用を提供し、凝血を誘発させる、切断されたコラーゲンの束を含み得る。血管のすり切れた端部は、例えば、出血を阻止するように、切られた血管の端部に向かって内向きに延在し得る。代替として、または組み合わせて、血管の内皮は、脈管内に凝血を提供するように影響を受け得る。
【0082】
図11Aは、実施形態による、飛散パルスを用いて組織を除去する、ウォータージェット炎域101を示す。多くの実施形態では、水飛散パルスは、血管Vの管腔に沿って剪断波121を誘発する。本明細書に説明されるような複数の飛散パルスは、血管内の液体の発振を提供することができる。多くの実施形態では、発振は、炎域が衝打する組織領域からある距離において脈管壁Wを横断して伝搬する剪断波を提供する。本剪断波は、
図11Aに示されるように、キャビテーション103と接触される領域からある距離において凝血を誘発させることができる。ジェットからある距離における脈管の破壊は、例えば、脈管の内皮層Eの剪断、ある距離における複数の内皮細胞の溶解、複数の赤血球RBCの剪断、複数の赤血球の溶解、血小板の剪断、血管壁からの内皮細胞の部分的除去、内皮細胞の完全除去、フィブリンまたは凝血の発生、ならびにそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含み得る。
【0083】
多くの実施形態では、複数の飛散パルスは、例えば、約5〜約20飛散パルス/ポンプのパルスの範囲内のポンプのパルス毎に少なくとも約2つの飛散パルスを含む。飛散パルスは、例えば、本明細書に説明されるような高度に浸食性の飛散パルス、または本明細書に説明されるような選択的飛散パルス、ならびにそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0084】
実施形態に関連する研究は、飛散パルスを含むジェットの実質的に浸食性の域が、本明細書に説明されるような凝血増加の提供に効果的であり得ることを示唆する。代替として、または組み合わせて、選択的組織除去域は、本明細書に説明されるような増加し凝血の提供に効果的であり得る。
【0085】
図11Bは、実施形態による、血管Vへの破壊123を示す。本明細書に説明されるような内皮Eの破壊および対応する凝血Cは、組織除去プロファイルRPからある距離125に示される。
【0086】
本開示の好ましい実施形態が、本明細書で示され、説明されているが、そのような実施形態は、一例のみとして提供されることが当業者に明白となるであろう。本開示の範囲から逸脱することなく、多数の変形例、変更、および置換が当業者に明白となるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明される本開示の実施形態の種々の代替案が採用されてもよいことを理解されたい。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項およびそれらの同等物の範囲のみによって、定義されるものとする。