(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651569
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】浄水製造装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20200210BHJP
E03B 3/30 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
C02F1/32
E03B3/30
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-80673(P2018-80673)
(22)【出願日】2018年4月19日
(65)【公開番号】特開2019-188280(P2019-188280A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2018年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】新関 彰一
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153444(JP,A)
【文献】
特開2015−001312(JP,A)
【文献】
実開昭54−037962(JP,U)
【文献】
特開2001−279630(JP,A)
【文献】
特開2004−278042(JP,A)
【文献】
特開2017−051887(JP,A)
【文献】
実開平03−125826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/30−1/32
E03B1/00−11/16
E01H1/00−15/00
A61L2/00−2/28
A61L11/00
B01J6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪または氷を収容する貯留室と、
前記貯留室の重力方向下側に設けられ、前記貯留室の雪または氷を融解させて得られる水を収容する処理室と、
前記貯留室と前記処理室の間に設けられる仕切部材と、
前記仕切部材の下面に設けられ、前記処理室内の水に紫外光を照射する光源と、を備え、
前記仕切部材は、前記光源の点灯時に生じる熱により加熱され、加熱された前記仕切部材を用いて前記貯留室の雪または氷を融解させることを特徴とする浄水製造装置。
【請求項2】
前記貯留室内の水を前記処理室に送る送水路をさらに備え、
前記送水路の出口は、前記仕切部材の下面よりも前記光源と対向する前記処理室の底面に近い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の浄水製造装置。
【請求項3】
前記送水路は、前記仕切部材を貫通して前記処理室の底面に向けて延在することを特徴する請求項2に記載の浄水製造装置。
【請求項4】
前記処理室内で紫外光が照射された浄水を外部に供給する給水口をさらに備え、
前記給水口は、前記処理室の底面よりも前記仕切部材の下面に近い位置に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の浄水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水製造装置に関し、特に、紫外光を照射して水を殺菌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外光には殺菌能力があることが知られており、医療や食品加工の現場などでの殺菌処理に紫外光照射装置が用いられる。紫外光を照射して水を殺菌して浄水を製造する装置も知られている。例えば、紫外光源の発光時の発熱を活用して雪を溶かして雪解け水を生成し、雪解け水に紫外光を照射して殺菌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−153444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
雪や氷から効率的に浄水を製造できることが好ましい。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、雪から効率的に浄水を製造する浄水製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の浄水製造装置は、雪または氷を収容する貯留室と、貯留室の重力方向下側に設けられ、貯留室の雪または氷を融解させて得られる水を収容する処理室と、貯留室と処理室の間に設けられる仕切部材と、仕切部材の下面に設けられ、処理室内の水に紫外光を照射する光源と、を備える。仕切部材は、光源と熱的に接続されており、光源の点灯時に生じる熱を用いて貯留室の雪または氷を融解させる。
【0007】
この態様によると、処理室内の水に紫外光を照射して殺菌された浄水を製造できる。貯留室と処理室の間の仕切部材に光源を取り付けることで、光源の点灯時に生じる熱を用いて貯留室の底部にある雪や氷を効率的に融解させることができる。また、処理室が貯留室の重力方向下側に設けられるため、重力を利用して貯留室内で融解された水を処理室に送ることができる。したがって、より少ない消費電力で雪や氷から効率的に浄水を製造できる。
【0008】
貯留室内の水を処理室に送る送水路をさらに備えてもよい。送水路の出口は、仕切部材の下面よりも光源と対向する処理室の底面に近い位置に設けられてもよい。
【0009】
送水路は、仕切部材を貫通して処理室の底面に向けて延在してもよい。
【0010】
処理室内で紫外光が照射された浄水を外部に供給する給水口をさらに備えてもよい。給水口は、処理室の底面よりも仕切部材の下面に近い位置に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雪や氷から効率的に浄水を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る浄水製造装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1の光源および送水路の配置を概略的に示す断面図である。
【
図3】変形例に係る浄水製造装置の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、実施の形態に係る浄水製造装置10の構成を概略的に示す図である。浄水製造装置10は、貯留室12と、処理室14と、仕切部材22と、複数の光源30と、複数の送水路32と、給水口34とを備える。浄水製造装置10は、貯留室12に収容される雪または氷40を融解させ、融解して得られた水42を処理室14に送り、処理室14に溜まる水44に紫外光を照射することで浄水を製造する。紫外光が照射された浄水44は、給水口34から外部に供給される。
【0015】
筐体20は、貯留室12および処理室14を区画する容器である。貯留室12は、重力方向Gの上側に設けられ、処理室14は、重力方向Gの下側に設けられる。貯留室12と処理室14の間は仕切部材22により区画される。筐体20の材質は特に問わないが、少なくとも処理室14の内面が紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料であることが好ましい。筐体20の内面23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂やアルミニウム(Al)などの金属材料で構成されることが好ましい。
【0016】
貯留室12は、雪や氷を貯留しやすいように上部が開口した構造を有する。例えば、積雪の多い地域に浄水製造装置10を設置することで、貯留室12に降り積もった雪を蓄えることができる。一方、処理室14は、浄水44を衛生的に保持するために密閉された構造を有する。なお、貯留室12が密閉型の構造であってもよく、貯留室12の上部に蓋などが設けられてもよい。
【0017】
光源30は、仕切部材22の下面26に取り付けられ、処理室14に溜まる水44に向けて紫外光を照射する。光源30は、いわゆるUV−LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)である。光源30は、発光の中心波長またはピーク波長が約200nm〜350nmの範囲に含まれ、殺菌効率の高い波長である260nm〜290nm付近の紫外光を発することが好ましい。光源30は複数設けられており、例えば、仕切部材22の下面26に二次元アレイ状に配置される。
【0018】
光源30は、仕切部材22と熱的に接続されている。光源30は、点灯時に生じる熱により仕切部材22を加熱する。加熱された仕切部材22は、仕切部材22の上面24の近傍に位置する雪または氷40を融解させ、液体の水42を生じさせる。光源30は、仕切部材22を通じて冷却される。このため、仕切部材22は、光源30を冷却するためのヒートシンクとして機能する。
【0019】
送水路32は、貯留室12にて融解された水42を処理室14に向けて送る。送水路32は、仕切部材22を貫通し、仕切部材22から処理室14の底面28に向けて延びる。 送水路32は、紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料であることが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂やアルミニウム(Al)などの金属材料で構成されることが好ましい。
【0020】
送水路32は、光源30と対向する処理室14の底面28の近傍まで延びており、送水路32の出口36が仕切部材22よりも底面28の近くに設けられる。送水路32の出口36を底面28の近傍に設けることで、処理室14にて紫外光が照射されて浄化された水44と、紫外光が照射されていない浄化前の水42とが混ざり合うのを抑制できる。
【0021】
給水口34は、処理室14にて紫外光が照射されて浄化された水44を外部に供給する。給水口34は、処理室14の重力方向Gの上側に設けられ、処理室14の底面28より仕切部材22の下面26の近くに設けられる。給水口34は、処理室14に蓄えられた浄水44のうち水面46の近傍の上澄みを外部に供給する。水面46の近傍の上澄みは、光源30からの距離が近く、送水路32の出口36から遠いため、処理室14に蓄えられる水44のうちで紫外光の作用量が最も多い部分である。給水口34を上側に設けることで、水面46の近傍の適切に浄化された上澄み水を外部に供給できる。
【0022】
図2は、光源30および送水路32の配置を概略的に示す断面図であり、
図1のA−A線断面を示す。複数の光源30は、仕切部材22の
下面26において二次元アレイ状に配置される。図示する例において、複数の光源30は四角格子状に配置されている。複数の光源30の配置は特に問わず、例えば、三角格子状に配置されてもよい。複数の送水路32は、複数の光源30の間の位置に設けられている。送水路32は、図示されるように複数設けられてもよいし、一つだけ設けられてもよい。
【0023】
つづいて、浄水製造装置10の動作について説明する。まず、貯留室12に雪または氷40が貯留される。貯留室12に収容される雪または氷40のうち、仕切部材22の近傍の部分は仕切部材22により加熱され、融解して液体の水42となる。貯留室12にて生じた水42は、送水路32を通じて処理室14の底面28に供給される。処理室14の内部の水44には、光源30からの紫外光が照射される。貯留室12から処理室14に供給される水が増えていくと、処理室14の水面46が上昇していく。処理室14の水面46の近傍の上澄みは、処理室14の底面28の近傍の水と比べて処理室14の滞在時間が長く、光源30により近い位置にあるため、処理室14内の他の部分と比べて紫外光の累積作用量が多い。したがって、処理室14の水面46が上昇していくと、水面46の近傍の上澄みの紫外光の累積作用量が増え、上澄み水が適切に浄化される。処理室14の水面46が給水口34の高さに到達すると、給水口34から外部に供給可能となる。このようにして、貯留室12に投入された雪または氷40から浄水が生成され、生成された浄水が給水口34から供給される。
【0024】
本実施の形態によれば、貯留室12を上側、処理室14を下側に配置することで、貯留室12の雪または氷40を融解して得られる水42を重力を利用して処理室14に送ることができる。貯留室12と処理室14の間の仕切部材22に光源30を取り付けることで、光源30の点灯時に生じる熱を効率的に利用して雪または氷40を融解させることができる。送水路32の出口36を処理室14の底面28の近くに設け、給水口34を底面28よりも仕切部材22の近くに設けることで、処理室14に蓄えられる水を効率的に浄化し、浄化された水を給水口34から供給できる。したがって、本実施の形態によれば、少ない消費電力で効率的に雪や氷から浄水を製造できる。
【0025】
図3は、変形例に係る浄水製造装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、処理室14の内部に送水路32を設ける代わりに、筐体20の外部に送水路38を設ける点で上述の実施の形態と相違する。
【0026】
送水路38は、筐体20の外部に設けられ、貯留室12の下部と、処理室14の下部を接続するように設けられる。送水路38は、貯留室12にて生じた水42を処理室14の底面28の近傍に供給する。本変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0027】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0028】
さらなる変形例においては、貯留室12に光源30とは別の熱源が設けられてもよい。例えば、貯留室12に電気ヒータが設けられてもよい。また、太陽熱を利用して貯留室12の雪や氷40を融解させてもよく、例えば、筐体20を黒色にすることで太陽光を吸収しやすくしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…浄水製造装置、12…貯留室、14…処理室、22…仕切部材、24…上面、26…下面、28…底面、30…光源、32…送水路、34…給水口、36…出口。