特許第6651601号(P6651601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6651601
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】エレベータの群管理制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20200210BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   B66B1/18 R
   B66B3/00 M
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-226532(P2018-226532)
(22)【出願日】2018年12月3日
【審査請求日】2018年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/008143(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/049328(WO,A1)
【文献】 特開平08−277074(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0016755(US,A1)
【文献】 特開2013−067497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数号機のエレベータを群管理制御する群管理制御装置であって、
新規の乗場呼びの操作を行った乗場利用者の属性を判定する乗場属性判定部と、
前記複数号機の各々について、前記乗場利用者がかごに乗車した場合にかご内で相乗りするかご内利用者の属性を判定するかご内属性判定部と、
前記乗場利用者の属性と前記かご内利用者の属性とを用いて前記複数号機の各々に対する割当評価値を算出し、算出した前記割当評価値に基づいて、前記複数号機のうち前記乗場呼びを割当てる割当号機を決定する割当号機決定部と、
利用者の属性の組合せごとに組合せ評価値を格納した組合せ評価値テーブルを保持するデータベースと、を備え、
前記割当号機決定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者の属性と前記かご内利用者の属性との組合せを前記組合せ評価値テーブルと照合して前記組合せ評価値を求め、乗場待機時間の長さに応じた基礎評価値と前記組合せ評価値とに基づいて、前記複数号機の各々に対する前記割当評価値を算出し、
前記かご内属性判定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者と前記かご内利用者とがかご内で相乗りする相乗り階床数をさらに判定し、
前記割当号機決定部は、前記基礎評価値と前記組合せ評価値と前記相乗り階床数とに基づいて、前記複数号機の各々に対する前記割当評価値を算出することを特徴とするエレベータの群管理制御装置。
【請求項2】
前記データベースは、前記複数号機の各々に対し現在割当てられている呼びの情報を格納した割当管理テーブルをさらに保持し、
前記かご内属性判定部は、前記乗場利用者の行先階の情報と前記割当管理テーブルに格納されている情報とに基づいて、前記相乗り階床数を判定することを特徴とする請求項に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項3】
前記乗場利用者の行先階は、前記乗場呼びで指定されることを特徴とする請求項に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項4】
前記乗場利用者の行先階は、エレベータの過去の運転履歴に基づいて推定されることを特徴とする請求項に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項5】
前記乗場利用者が前記割当号機のかごに乗車したか否かに応じて、前記組合せ評価値テーブルに格納された前記組合せ評価値を更新するテーブル更新部をさらに備えることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のエレベータの群管理制御装置。
【請求項6】
前記テーブル更新部は、前記乗場利用者が前記割当号機に乗車した回数と乗車しなかった回数との割合に応じて、前記組合せ評価値の更新の度合いを決定することを特徴とする請求項に記載のエレベータの群管理制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの群管理制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数号機のエレベータを群管理制御する群管理制御装置は、一般的に、乗場待機時間の長さなどをもとに算出した号機ごとの割当評価値に基づいて、複数号機の中から乗場呼びを割当てる割当号機を決定している。しかし、例えば乗場呼びの操作を行った利用者が女性であり、この乗場呼びに応答して乗場に到着した割当号機のかご内に男性の利用者のみが乗車しているような場合、乗場の利用者がかご内の利用者との相乗りを回避したいと考えてかごに乗車しない場合があり、結果としてエレベータのサービス効率の低下を招く場合があった。
【0003】
単体のエレベータの運転制御においては、例えば、かご内への乗車を1人の利用者のみに制限するとともに、乗車した利用者の行先階までかごを直通運転することにより、相乗りを防止する技術が知られている。しかし、群管理されるエレベータは利用者が多数いる環境に設置されるため、このような運転制御を群管理制御にそのまま適用すると、サービス効率の著しい低下を招く懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−124919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、かご内での相乗りに対する乗場の利用者の心理的な負担を加味した最適な号機を乗場呼びに割り当てて、サービス効率の低下を抑制することができるエレベータの群管理制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るエレベータの群管理制御装置は、複数号機のエレベータを群管理制御する群管理制御装置であって、乗場属性判定部と、かご内属性判定部と、割当号機決定部と、データベースと、を備える。乗場属性判定部は、新規の乗場呼びの操作を行った乗場利用者の属性を判定する。かご内属性判定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者がかごに乗車した場合にかご内で相乗りするかご内利用者の属性を判定する。割当号機決定部は、前記乗場利用者の属性と前記かご内利用者の属性とを用いて前記複数号機の各々に対する割当評価値を算出し、算出した前記割当評価値に基づいて、前記複数号機のうち新規の乗場呼びを割当てる割当号機を決定する。データベースは、利用者の属性の組合せごとに組合せ評価値を格納した組合せ評価値テーブルを保持する。さらに、前記割当号機決定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者の属性と前記かご内利用者の属性との組合せを前記組合せ評価値テーブルと照合して前記組合せ評価値を求め、乗場待機時間の長さに応じた基礎評価値と前記組合せ評価値とに基づいて、前記複数号機の各々に対する前記割当評価値を算出する。前記かご内属性判定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者と前記かご内利用者とがかご内で相乗りする相乗り階床数をさらに判定する。前記割当号機決定部は、前記基礎評価値と前記組合せ評価値と前記相乗り階床数とに基づいて、前記複数号機の各々に対する前記割当評価値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る群管理制御装置の機能的な構成例を示すブロック図である。
図2図2は、組合せ評価値テーブルの一例を示す図である。
図3図3は、割当管理テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、かご内利用者の属性を判定する他の例を説明する図である。
図5図5は、実施形態に係る群管理制御装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用したエレベータの群管理制御装置の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下で説明する実施形態は、乗場で利用者が行先階を指定可能なDCS(Destination Control System)と呼ばれる群管理エレベータシステムへの適用例である。ただし、本発明は、乗場で利用者が行先方向のみを指定する通常の群管理エレベータシステムに対しても有効に適用可能である。
【0009】
図1は、本実施形態に係る群管理制御装置1の機能的な構成例を示すブロック図である。この群管理制御装置1は、複数号機のエレベータの運転状態を監視しながら各号機に対する乗場呼びの割当て(群管理制御)を行う装置であり、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータで実行されるプログラムとにより、図1に示す機能的な各部を実現する。
【0010】
本実施形態に係る群管理制御装置1は、図1に示すように、データベース10と、乗場属性判定部2と、かご内属性判定部3と、運転状態監視部4と、割当号機決定部5と、応答指令出力部6と、テーブル更新部7とを備える。この群管理制御装置1には、各階の乗場に設けられた乗場操作装置21および乗場カメラ22が接続されている。また、この群管理制御装置1には、群管理制御の対象となる各号機のかご30の運転を個別に制御する号機ごとのエレベータ制御装置31が接続されている。
【0011】
データベース10は、組合せ評価値テーブル11と、割当管理テーブル12とを保持する。組合せ評価値テーブル11は、利用者の属性の組合せごとに、それらの組合せが相乗りに適しているか否かを示す組合せ評価値を格納する。この組合せ評価値テーブル11に基づいて、新規の乗場呼びの操作を行った乗場利用者の属性(乗場属性)と、乗場利用者がかご30に乗車した場合にかご30内で相乗りするかご内利用者の属性(かご内属性)との組合せに対応する組合せ評価値が得られる。
【0012】
データベース10が保持する組合せ評価値テーブル11の一例を図2に示す。この図2に示す組合せ評価値テーブル11は、利用者の属性を、A:成人男性、B:成人女性、C:男の子、D:女の子の4種類に区分けした単純な例である。組合せ評価値は、0から1の間の値が設定され、値が大きいほどその属性の組合せが相乗りに適していないことを示している。例えば、乗場属性Bとかご内属性Aとの組み合わせは、成人男性が乗車しているかごに成人女性が乗車するシーンに対応し、この場合は相乗りに対する乗場利用者の心理的負担が大きいと想定されるため、組み合わせ評価値は0.8と高い値が設定されている。一方、乗場属性とかご内属性とが同じ属性となる組み合わせは、相乗りに対する乗場利用者の心理的負担は低いと想定されるため、組み合わせ評価値は0.1と低い値が設定されている。
【0013】
なお、図2の例では、説明を簡単にするために、利用者の属性を性別と成人か否かとによる4種類の大まかな分類に区分けしているが、より細かな粒度で利用者の属性を区分けしてもよい。例えば、利用者の属性を成人か否かではなく10歳刻みの年代で区分けしたり、利用者の服装や持ち物、体型、利用者が1人なのか複数人のグループなのかといった他の分類基準も加えて細かく区分けしたりしてもよい。
【0014】
図3は、データベース10が保持する割当管理テーブル12の一例を示す図である。この割当管理テーブル12は、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、現在割当てられている呼びの情報を格納する。本実施形態では、DCSへの適用例を想定しているため、割当管理テーブル12には、行先階を指定した乗場呼びの情報が格納されている。すなわち、行先階を指定した乗場呼びを割当てる号機(割当号機)が後述の割当号機決定部5によって決定されると、図3に示すように、利用者がかご30に乗車する出発階(つまり、乗場呼びがあった階)、利用者がかご30から降車する行先階、および、その利用者の属性を含む乗場呼びの情報が、新たなレコードとして割当号機に対応付けて割当管理テーブル12に格納される。この乗場呼びの情報は、行先階にかご30が到着して利用者が降車すると、割当管理テーブル12から消去される。図3に例示する割当管理テーブル12は、1号機に現在、属性Aの利用者をB2階から3階まで搬送する乗場呼びと、属性Cの利用者を3階から8階まで搬送する乗場呼びとが割当てられていることを示している。
【0015】
乗場属性判定部2は、新規の乗場呼びの操作を行った乗場呼び利用者の属性(乗場属性)を判定する。例えば、乗場属性判定部2は、乗場利用者が乗場操作装置21を操作して乗場呼びを行った階床の乗場に設置された乗場カメラ22から、乗場の様子を撮影した映像を取得し、この映像を解析することによって乗場属性を判定する。乗場属性は、乗場カメラ22から取得した映像から乗場利用者の画像特徴を抽出し、この画像特徴をもとにニューラルネットワークなどの識別器を用いて上述のように区分けされた属性の種類を識別することにより判定できる。なお、ここでは乗場カメラ22の映像を用いて乗場属性を判定するものとしたが、例えば、ICカードやICタグに格納された乗場利用者の個人情報を読み取ることで、乗場属性を判定するようにしてもよい。
【0016】
乗場属性判定部2により判定された乗場属性の情報は、割当号機決定部5に伝達される。なお、乗場属性判定部2の機能を乗場側に設け、この乗場属性判定部2により判定された乗場属性の情報を、乗場利用者による乗場操作装置21の操作に応じた乗場呼びの情報とともに、割当号機決定部5に伝達する構成であってもよい。
【0017】
かご内属性判定部3は、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、乗場利用者がかご30に乗車した場合にかご30内で相乗りするかご内利用者の属性(かご内属性)を判定する。例えば、かご内属性判定部3は、乗場利用者が操作した乗場操作装置21から新規の乗場呼びの情報を取得するとともに、データベース10が保持する割当管理テーブル12を参照して、各号機に現在割当てられている乗場呼びの情報を取得する。そして、かご内属性判定部3は、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、現在割当てられている乗場呼びの中に新規の乗場呼びとかご30の行程が重複するものがあれば、その乗場呼びの利用者の属性を、かご内属性として判定する。
【0018】
具体的な例を挙げて説明すると、データベース10に図3に例示した割当管理テーブル12が保持されている状態で、2階の乗場において6階を行先階として指定した新規の乗場呼びがあったとする。この場合、1号機に現在割当てられている乗場呼びのうち、出発階がB2階、行先階が3階、利用者属性が属性Aの乗場呼びは、2階から3階までの間で新規の乗場呼びとかご30の行程が重複する。このため、かご内属性判定部3は、この乗場呼びの利用者属性である属性Aを1号機のかご内属性として判定する。同様に、1号機に現在割当てられている乗場呼びのうち、出発階が3階、行先階が8階、利用者属性が属性Cの乗場呼びは、3階から6階までの間で新規の乗場呼びとかご30の行程が重複する。このため、かご内属性判定部3は、この乗場呼びの利用者属性である属性Cについても1号機のかご内属性として判定する。すなわち、この例の場合、かご内属性判定部3は、1号機のかご内属性が属性Aと属性Cであると判定する。他の号機についても、同様の手法によりかご内属性を判定することができる。
【0019】
また、かご内属性判定部3は、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、乗場利用者とかご内利用者とがかご30内で相乗りする相乗り階床数をさらに判定する。相乗り階床数は、上述のように、各号機に現在割当てられている乗場呼びと新規の乗場呼びとで、かご30の行程が重複する階床数である。例えば、上述の例を用いて説明すると、乗場利用者が1号機のかご30に乗車した場合、乗場利用者は2階から3階までの間で属性Aのかご内利用者と相乗りすることになるため、1号機のかご内属性Aに対応する相乗り階床数は2となる。また、乗場利用者が1号機のかご30に乗車した場合、乗場利用者は3階から6階までの間で属性Cのかご内利用者と相乗りすることになるため、1号機のかご内属性Cに対応する相乗り階床数は4となる。
【0020】
かご内属性判定部3により判定された号機ごとのかご内属性および相乗り階床数の情報は、割当号機決定部5に伝達される。なお、かご内属性判定部3は、各号機のかご内属性のみを判定し、相乗り階床数は判定しない構成であってもよい。この場合、かご内属性判定部3から割当号機決定部5に対して、号機ごとのかご内属性の情報のみが伝達される。
【0021】
なお、以上の説明では、かご内属性判定部3がデータベース10に保持された割当管理テーブル12を用いて複数号機の各々についてのかご内属性や相乗り階床数を判定するものとしたが、例えば図4に示すように、各号機のかご30内にかご内カメラ32が設置されている場合には、このかご内カメラ32で撮影された映像を用いて、乗場属性判定部2と同様の手法でかご内利用者の属性(かご内属性)を判定することもできる。すなわち、かご内属性判定部3は、乗場利用者が操作した乗場操作装置21から新規の乗場呼びの情報が伝達されると、各号機のかご30に設置されたかご内カメラ32から、かご30内の様子を撮影した映像を取得する。そして、かご内属性判定部3は、この時点でかご30内に乗車している利用者が、乗場利用者とかご30内で相乗りするかご内利用者であると仮定し、かご内カメラ32から取得した映像を用いて、乗場属性判定部2と同様の手法でかご内利用者の属性(かご内属性)を判定することができる。
【0022】
また、かご内カメラ32が、かご30内に設置されたかご内操作装置33により行先階を指定する操作を行う利用者の映像を撮影している場合、かご内属性判定部3は、図4に示すように、かご内カメラ32により撮影された映像とともにかご内操作装置33の操作情報を取得することにより、かご30内の利用者の行先階を知ることができ、この利用者が乗場利用者と相乗りすることになるかご内利用者であるか否かを判断できる。この場合は、かご内属性判定部3は、かご内カメラ32により撮影された映像をもとに、かご内属性をより正確に判定することができる。
【0023】
運転状態監視部4は、群管理制御の対象となる各号機のエレベータ制御装置31から各号機の運転状態(かご30の現在位置や進行方向、移動中か停止中かなど)を示す情報を収集し、各号機の運転状態を統括的に監視する。そして運転状態監視部4は、割当号機決定部5が後述の各号機ごとの基礎評価値を算出するために必要な情報を、割当号機決定部5に伝達する。
【0024】
また、運転状態監視部4は、各号機の運転状態に応じてデータベース10に保持された割当管理テーブル12を更新する機能を持つ。すなわち、運転状態監視部4は、割当管理テーブル12に格納されている号機ごとの乗場呼びの情報のうち、行先階にかご30が到着して利用者が降車することで応答が完了した乗場呼びの情報を消去する。
【0025】
割当号機決定部5は、乗場属性判定部2により判定された乗場属性、かご内属性判定部3により判定された各号機のかご内属性と相乗り階床数、および、運転状態監視部4が監視する各号機の運転状態に基づいて、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対する割当評価値を算出する。そして、割当号機決定部5は、算出した号機ごとの割当評価値に基づいて、複数号機のうちで新規の乗場呼びを割当てる割当号機を決定する。
【0026】
例えば、割当号機決定部5は、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、乗場属性判定部2により判定された乗場属性とかご内属性判定部3により判定されたかご内属性との組合せを、データベース10が保持する組合せ評価値テーブル11と照合することにより、複数号機の各々に対する組合せ評価値を求める。このとき、1つの号機に対して複数のかご内属性が判定されている場合は、個々のかご内属性それぞれに対する組合せ評価値を求める。また、割当号機決定部5は、例えば、かご内属性判定部3により判定された相乗り階床数を建物の全階床数で除算して得られる値を相乗り度合いとして求め、組合せ評価値に相乗り度合いを掛け合わせて、複数号機の各々に対する相乗り評価値を算出する。このとき、1つの号機に対して複数のかご内属性と相乗り階床数が判定されている場合には、個々のかご内属性に対する相乗り評価値を算出する。
【0027】
具体的な例を挙げて説明すると、データベース10に図2に例示した組合せ評価値テーブル11と図3に例示した割当管理テーブル12が保持されている状態で、2階の乗場において6階を行先階として指定した新規の乗場呼びがあり、乗場属性判定部2により乗場利用者の属性(乗場属性)が属性Bと判定されたとする。この場合、上述のように、かご内属性判定部3によって、1号機のかご内利用者の属性(かご内属性)は属性Aと属性Cであると判定され、1号機のかご内属性Aに対応する相乗り階床数は2、1号機のかご内属性Cに対応する相乗り階床数は4と判定される。
【0028】
ここで、建物の全階床数が12であるとすると、1号機のかご内属性Aの相乗り度合いは、相乗り階床数2を全階床数12で除算して1/6となる。そして、乗場属性Bとかご内属性Aとの組合せに対する組合せ評価値は0.8であるため、1号機のかご内属性Aに対する相乗り評価値は、0.8に1/6を掛け合わせて、およそ0.13となる。また、1号機のかご内属性Cの相乗り度合いは、相乗り階床数4を全階床数12で除算して1/3となる。そして、乗場属性Bとかご内属性Cとの組合せに対する組合せ評価値は0.2であるため、1号機のかご内属性Cに対する相乗り評価値は、0.2に1/3を掛け合わせて、およそ0.07となる。
【0029】
割当号機決定部5は、運転状態監視部4から取得する情報を用いて、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対する基礎評価値を算出し、その基礎評価値に、以上のように算出した相乗り評価値を加算することにより、複数号機の各々に対する割当評価値を算出する。1つの号機に対して複数の相乗り評価値が算出されている場合は、その号機の基礎評価値に対して複数の相乗り評価値をそれぞれ加算する。例えば、上述の例では、1号機の相乗り評価値として、かご内属性Aに対する相乗り評価値0.13と、かご内属性Cに対する相乗り評価値0.07とが算出されるため、1号機の割当て評価値は、基礎評価値に0.13と0.07とを加算した値となる。
【0030】
基礎評価値は、各号機の乗場待機時間(つまり、その号機が乗場呼びに応答する場合にかご30が乗場に到着するまでにかかる所要時間)の長さに応じた評価値であり、例えば、乗場待機時間に所定の係数αを掛け合わせて算出される。かご30内の利用者の人数など、乗場待機時間の長さ以外のパラメータも加えて基礎評価値を算出してもよい。
【0031】
なお、以上説明した割当評価値の算出方法は一例であり、この例に限らない。割当評価値は、少なくとも、乗場属性とかご内属性との組合せを加味して算出されればよい。例えば、以上の例では、乗場属性とかご内属性との組合せに応じた組合せ評価値に対し、相乗り階床数に応じた相乗り度合いを掛け合わせて相乗り評価値を算出し、基礎評価値に相乗り評価値を加算して割当評価値を算出しているが、より単純に、乗場属性とかご内属性との組合せに応じた組合せ評価値を基礎評価値に加算して割当評価値を算出してもよい。この場合は、相乗り階床数を判定する必要がなく、乗場属性とかご内属性との組合せを加味した割当評価値を、より簡便に算出することができる。
【0032】
割当号機決定部5は、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対して以上のように算出された割当評価値に基づいて、複数号機のうちで新規の乗場呼びを割当てる割当号機を決定する。以上の例では、新規の乗場呼びを割当てるのに適しているほど低い値の割当評価値が算出されるので、割当号機決定部5は、複数号機のうちで、算出された割当評価値が最小の値をとる号機を割当号機として決定する。割当号機決定部5が決定した割当号機の情報は、応答指令出力部6に伝達される。また、割当号機決定部5は、新規の乗場呼びを割当てる割当号機を決定すると、新規の乗場呼びの情報(出発階、行先階、利用者の属性)をその割当号機に対応付けて割当管理テーブル12に格納する。
【0033】
応答指令出力部6は、割当号機決定部5により決定された割当号機のエレベータ制御装置31に対し、乗場呼び応答指令を出力する。割当号機のエレベータ制御装置31は、応答指令出力部6からの乗場呼び応答指令に応じてかご30の運転を制御し、乗場呼びの応答を行う。
【0034】
テーブル更新部7は、割当号機決定部5により決定された割当号機のかご30が新規の乗場呼びがあった乗場に到着した後、実際に乗場利用者が割当号機のかご30に乗車したか否かに応じて、組合せ評価値テーブル11に格納された組合せ評価値を更新する。乗場利用者が割当号機のかご30に乗車したか否かは、例えば、乗場カメラ22により撮影された乗場の映像を解析することで判定できる。
【0035】
例えば、乗場利用者の属性(乗場属性)が属性Bであり、かご内利用者の属性(かご内属性)が属性Cの号機が割当号機と決定された場合、テーブル更新部7は、この割当号機に乗場利用者が乗車しなかった場合に、組合せ評価値テーブル11に格納された組合せ評価値のうち、乗場属性Bとかご内属性Cとの組合せに対応する組合せ評価値を高くするように更新する。また、この割当号機に乗場利用者が乗車した場合に、乗場属性Bとかご内属性Cとの組合せに対応する組合せ評価値を低くするように更新してもよい。
【0036】
また、テーブル更新部7は、割当号機決定部5により決定された割当号機のかご30が新規の乗場呼びがあった乗場に到着するたびに組合せ評価値の更新を行うのではなく、乗場属性とかご内属性との組合せごとに、乗場利用者が割当号機のかご30に乗車したか否かの乗車履歴を所定回数分蓄積し、この乗車履歴に基づいて任意のタイミングで組合せ評価値の更新を行うようにしてもよい。この場合、テーブル更新部7は、乗場属性とかご内属性との組合せごとに、乗場利用者が割当号機のかご30に乗車した回数と乗車しなかった回数との割合に応じて、組合せ評価値の更新の度合いを決定する。すなわち、乗場利用者が割当号機のかご30に乗車した回数よりも乗車しなかった回数が多い場合は、組合せ評価値を大きくするように更新し、乗車しなかった回数が多いほど更新の度合いを大きくする。また、乗場利用者が割当号機のかご30に乗車しなかった回数よりも乗車した回数が多い場合は、組合せ評価値を小さくするように更新し、乗車した回数が多いほど更新の度合いを大きくする。
【0037】
以上のように、テーブル更新部7が組合せ評価値テーブル11に格納された組合せ評価値を更新することにより、実際の乗車履歴を反映させて組合せ評価値を最適化することができる。
【0038】
次に、以上のように構成される群管理制御装置1の動作について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る群管理制御装置1による処理手順の一例を示すフローチャートである。この図5のフローチャートで示す一連の処理は、乗場利用者が乗場操作装置21を操作して新規の乗場呼びを行うたびに開始される。
【0039】
乗場利用者によって新規の乗場呼びの操作が行われると、まず、乗場属性判定部2が、例えば乗場カメラ22の映像を解析することにより、乗場利用者の属性(乗場属性)を判定する(ステップS101)。
【0040】
また、かご内属性判定部3が、例えば、データベース10が保持する割当管理テーブル12を参照して、群管理制御の対象となる複数号機の各々について、かご内利用者の属性(かご内属性)と相乗り階床数を判定する(ステップS102)。
【0041】
次に、割当号機決定部5が、データベース10が保持する組合せ評価値テーブル11と、ステップS101で判定された乗場属性と、ステップS102で判定された号機ごとのカゴ内属性および相乗り階床数とに基づいて、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対する相乗り評価値を算出する(ステップS103)。そして、割当号機決定部5は、運転状態監視部4からの情報に基づいて算出される各号機の基準評価値と、ステップS103で算出した相乗り評価値とを用いて、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対する割当評価値を算出する(ステップS104)。
【0042】
次に、割当号機決定部5は、ステップS104で算出した割当評価値に基づいて、群管理制御の対象となる複数号機のうち、新規の乗場呼びに応答する割当号機を決定し(ステップS105)、その割当号機の情報を応答指令出力部6に伝達する。また、割当号機決定部5は、データベース10が保持する割当管理テーブル12に、乗場呼びの情報を割当号機と対応付けて格納する(ステップS106)。
【0043】
そして、応答指令出力部6が、割当号機のエレベータ制御装置31に対して、乗場呼び応答指令を出力し(ステップS107)、図5のフローチャートで示す一連の処理が終了する。
【0044】
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態に係る群管理制御装置1は、新規の乗場呼びの操作を行った乗場利用者の属性(乗場属性)と、その利用者がかご30に乗車した場合にかご30内で相乗りするかご内利用者の属性(かご内属性)とを用いて、群管理制御の対象となる複数号機の各々に対する割当評価値を算出し、この割当評価値に基づいて新規の乗場呼びを割当てる割当号機を決定している。したがって、本実施形態に係る群管理制御装置1によれば、かご30内での相乗りに対する乗場利用者の心理的な負担を加味した最適な号機を乗場呼びに割り当てて、サービス効率の低下を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、乗場属性とかご内属性との組合せに応じた組合せ評価値と、乗場利用者とかご内利用者がかご30内で相乗りする相乗り階床数とに基づいて相乗り評価値を算出し、乗場待機時間の長さに応じた基礎評価値に相乗り評価値を加算して、各号機の割当評価値を算出するようにしている。したがって、相乗りに対する乗場利用者の心理的な負担を、各号機の割当評価値に精度よく反映させることができる。
【0046】
なお、以上説明した実施形態は、様々な変形を加えて実施することができる。例えば、以上説明した実施形態はDCSへの適用例を想定しているが、本発明は、乗場呼びで行先方向のみが指定される通常の群管理エレベータシステムに対しても適用できる。この場合、乗場利用者の行先階は、例えば、エレベータの過去の運転履歴に基づいて推定することができる。すなわち、各階の乗場からかご30に乗車した利用者が実際にどの階でかご30から降車したかを運転履歴として保持しておき、新規の乗場呼びがあった階床に対し、その階で乗車した利用者が降車した頻度が最も高い階床を、新規の乗場呼びを行った乗場利用者の行先階と推定することができる。また、かご内利用者の行先階は、上述したように、かご内カメラ32により撮影された映像を解析することで判定できる。
【0047】
また、各号機に対する割当評価値の算出に相乗り階床数を用いない場合は、上述したように、新規の乗場呼びが行われた時点で各号機のかご30内に乗車している利用者をかご内利用者と仮定し、乗場カメラ22の映像を解析して判定された乗場属性と、かご内カメラ32の映像を解析して判定されたかご内属性との組合せに対応する組合せ評価値を用いて、各号機の割当評価値を算出してもよい。これにより、相乗りに対する乗場利用者の心理的な負担を加味した割当号機を、より簡便に決定することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 群管理制御装置、2 乗場属性判定部、3 かご内属性判定部、4 運転状態監視部、5 割当号機決定部、6 応答指令出力部、7 テーブル更新部、10 データベース、11 組合せ評価値テーブル、12 割当管理テーブル、21 乗場操作装置、22 乗場カメラ、30 かご、31 エレベータ制御装置、32 かご内カメラ、33 かご内操作装置。
【要約】
【課題】かご内での相乗りに対する乗場の利用者の心理的な負担を加味した最適な号機を乗場呼びに割り当てて、サービス効率の低下を抑制する。
【解決手段】実施形態に係るエレベータの群管理制御装置は、複数号機のエレベータを群管理制御するものであり、乗場属性判定部と、かご内属性判定部と、割当号機決定部と、を備える。乗場属性判定部は、新規の乗場呼びの操作を行った乗場利用者の属性を判定する。かご内属性判定部は、前記複数号機の各々について、前記乗場利用者がかごに乗車した場合にかご内で相乗りするかご内利用者の属性を判定する。割当号機決定部は、前記乗場利用者の属性と前記かご内利用者の属性とを用いて前記複数号機の各々に対する割当評価値を算出し、算出した前記割当評価値に基づいて、前記複数号機のうち前記乗場呼びを割当てる割当号機を決定する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5