特許第6651607号(P6651607)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6651607
(24)【登録日】2020年1月24日
(45)【発行日】2020年2月19日
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20200210BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20200210BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20200210BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20200210BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20200210BHJP
【FI】
   G01C15/00 104Z
   G01B21/00 E
   G01C3/06 110V
   E02F9/26 B
   E02F9/20 M
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-505986(P2018-505986)
(86)(22)【出願日】2017年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2017010481
(87)【国際公開番号】WO2017159744
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-53007(P2016-53007)
(32)【優先日】2016年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 裕介
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−255286(JP,A)
【文献】 特開平11−094550(JP,A)
【文献】 特開2016−008484(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/013691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
E02F 9/20
E02F 9/26
G01B 21/00
G01C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、
前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、
前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、
前記アタッチメントに取り付けられた、測定対象地表の形状を測定する土砂形状測定装置と、
前記アタッチメントの姿勢を計測する姿勢センサと、
前記土砂形状測定装置の第1測定値により、前記アタッチメントの姿勢の変化の前後において前記土砂形状測定装置から前記測定対象地表までの距離情報を算出する制御部をえるショベルであって、
前記制御部は、前記姿勢センサの検出値に基づいて前記アタッチメントの姿勢の変化の前後における前記土砂形状測定装置の高さの変化量を算出し、更に、前記土砂形状測定装置の前記第1測定値と前記変化量とに基づいて生成される第2測定値から前記アタッチメントの姿勢の変化の後の距離情報を算出する、若しくは、前記土砂形状測定装置から取得した前記第1測定値より算出される第1距離情報と前記変化量とに基づいて前記アタッチメントの姿勢の変化の後の距離情報を算出する、
ショベル。
【請求項2】
前記制御部は、基準高さを設定し、前記土砂形状測定装置から取得した前記第1測定値を、前記姿勢センサの前記検出値と前記基準高さとに基づいて補正して、前記基準高さからの距離情報を算出する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記制御部は、前記土砂形状測定装置の前記第1測定値と前記姿勢センサの前記検出値と前記基準高さとに基づいて第2測定値を生成し、前記第2測定値から前記基準高さからの距離情報を算出する、
請求項に記載のショベル。
【請求項4】
前記制御部は、前記土砂形状測定装置から取得した前記第1測定値から第1距離情報を算出し、前記第1距離情報と前記姿勢センサの前記検出値と前記基準高さとに基づいて、前記基準高さからの距離情報を算出する、
請求項に記載のショベル。
【請求項5】
前記基準高さを設定する信号を出力する高さ設定スイッチが備えられている、
請求項に記載のショベル。
【請求項6】
前記上部旋回体に取り付けられた運転室と、
前記運転室内に設置された表示部と、を更に有し、
前記制御部は、距離情報を前記表示部に表示する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項7】
通信手段を更に備え、
前記制御部は、距離情報を前記通信手段を介して管理装置へ送信する、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビン上に取り付けられたステレオカメラにより、掘削箇所の地形を測定可能なショベルが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−328022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るショベルは、土砂形状測定装置としてのステレオカメラがキャビン上に取り付けられている。そのため、深掘り掘削時においては、掘削箇所が手前の土砂に遮られて測定できない場合がある。
【0005】
上記課題に鑑み、深掘り掘削時においても掘削箇所の地形を正確に測定可能なショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るショベルは、下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられるアタッチメントと、前記アタッチメントに取り付けられた、測定対象地表の形状を測定する土砂形状測定装置と、前記アタッチメントの姿勢を計測する姿勢センサと、前記土砂形状測定装置の第1測定値により、前記アタッチメントの姿勢の変化の前後において前記土砂形状測定装置から前記測定対象地表までの距離情報を算出する制御部をえるショベルであって、前記制御部は、前記姿勢センサの検出値に基づいて前記アタッチメントの姿勢の変化の前後における前記土砂形状測定装置の高さの変化量を算出し、更に、前記土砂形状測定装置の前記第1測定値と前記変化量とに基づいて生成される第2測定値から前記アタッチメントの姿勢の変化の後の距離情報を算出する、若しくは、前記土砂形状測定装置から取得した前記第1測定値より算出される第1距離情報と前記変化量とに基づいて前記アタッチメントの姿勢の変化の後の距離情報を算出する。

【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、深掘り掘削時においても掘削箇所の地形を正確に測定可能なショベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係るショベルの側面図である。
図2図1のショベルの構成例を示す図である。
図3】距離情報算出処理の一例のフローチャートである。
図4】第2測定値へ補正する原理の説明図である。
図5】ステレオカメラの焦点距離を調整する手法の説明図である。
図6】本発明の別の実施例に係るショベルの構成例を示す図である。
図7】距離情報算出処理の別の一例のフローチャートである。
図8】距離情報を算出する原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係るショベルの側面図である。
【0010】
ショベルは、自走可能なクローラ式の下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回機構2を介して旋回可能に搭載された上部旋回体3を有している。
【0011】
上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
【0012】
ブーム4、アーム5、及びバケット6によりアタッチメントが構成される。ブーム4、アーム5、バケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブーム4には姿勢センサとしてのブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5には姿勢センサとしてのアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6には姿勢センサとしてのバケット角度センサS3が取り付けられる。
【0013】
ブーム角度センサS1はブーム4の姿勢を計測する。本実施例では、ブーム角度センサS1は水平面に対する傾斜を検出して上部旋回体3に対するブーム4の回動角度を検出する加速度センサである。
【0014】
アーム角度センサS2はアーム5の姿勢を計測する。本実施例では、アーム角度センサS2は水平面に対する傾斜を検出してブーム4に対するアーム5の回動角度を検出する加速度センサである。
【0015】
バケット角度センサS3はバケット6の姿勢を計測する。本実施例では、バケット角度センサS3は水平面に対する傾斜を検出してアーム5に対するバケット6の回動角度を検出する加速度センサである。
【0016】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3は、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ等であってもよい。加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成されていてもよい。
【0017】
ブーム4には土砂形状測定装置としてのステレオカメラS4が取り付けられている。土砂形状測定装置は、レーザー距離計、レーザレンジファインダ等であってよい。ステレオカメラS4はアーム5に取り付けられていてもよい。ステレオカメラS4はブーム4とアーム5の両方に取り付けられていてもよい。
【0018】
上部旋回体3には運転室としてのキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、キャビン10には通信手段としての通信装置S5が設けられている。
【0019】
通信装置S5は、ショベルと外部との間の通信を制御する。通信装置S5は、例えば、他の場所にある管理装置100とショベルとの間の無線通信を制御する。
【0020】
キャビン10内には、入力装置D1、音声出力装置D2、表示装置D3、高さ設定スイッチD4、コントローラ30等が設置されている。
【0021】
コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う制御部として機能する。本実施例では、コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成される。コントローラ30の各種機能は、CPUが内部メモリに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0022】
入力装置D1は、ショベルの操作者がコントローラ30等に各種情報を入力するための装置である。本実施例では、入力装置D1は、表示装置D3の周囲に取り付けられるメンブレンスイッチである。入力装置D1としてタッチパネル等が用いられてもよい。
【0023】
音声出力装置D2は、コントローラ30等からの音声出力指令に応じて各種音声情報を出力する。本実施例では、音声出力装置D2として、コントローラ30に直接接続される車載スピーカが利用される。音声出力装置D2として、ブザー等の警報器が利用されてもよい。
【0024】
表示部としての表示装置D3は、コントローラ30からの指令に応じて各種画像情報を出力する。本実施例では、キャビン10内で運転席に向かって取り付けられる表示装置D3として、コントローラ30に直接接続される車載液晶ディスプレイが利用される。
【0025】
高さ設定スイッチD4は、ショベルの操作者がコントローラ30等に基準高さを入力するための装置である。本実施例では、高さ設定スイッチD4として、操作レバーに付与されているスイッチが利用される。キャリブレーションスイッチ等が利用されてもよい。
【0026】
次に、図2を参照しながら、ショベルの各種機能要素について説明する。図2は、ショベルの構成例を示す機能ブロック図である。
【0027】
本実施例では、コントローラ30は、ステレオカメラS4から測定対象地表までの距離情報を算出する。コントローラ30にはステレオカメラS4から第1測定値が入力される。第1測定値は、ステレオカメラS4が取得するデータであり、例えば視差データである。視差データは、例えば、左右のカメラで得られたステレオペア画像である。ステレオペア画像に写る範囲及びステレオペア画像に写っている物の大きさは外乱に応じて変化する。外乱は、例えば、ブーム4の姿勢の変化、すなわち、ステレオカメラS4の高さの変化を含む。コントローラ30は、ブーム4の姿勢の変化がステレオペア画像に与える影響を推定する。そして、その影響が相殺されるようにステレオペア画像に写る範囲及びステレオペア画像に写っている物の大きさを変化させることでステレオペア画像を調整する。そして、調整後のステレオペア画像に基づいて正確な距離情報を算出する。
【0028】
コントローラ30は、様々な機能を担う機能部を含む。本実施例では、コントローラ30は、高さ位置演算部31、距離演算部32、メモリ部33を含む。
【0029】
高さ位置演算部31は、ブーム角度センサS1の検出値に基づいて、ブーム4に取り付けられたステレオカメラS4の高さ位置を演算する。高さ位置演算部31には、高さ設定スイッチD4から基準高さを設定する信号が入力される。
【0030】
基準高さを設定する信号は、例えば、ショベルの操作者が高さ設定スイッチD4を押したときに高さ位置演算部31に入力される。高さ位置演算部31は、基準高さを設定する信号が入力されると、ブーム角度センサS1の検出値からそのときのステレオカメラS4の高さ位置を演算して基準高さとする。高さ位置は、ショベルの接地面を含む平面に対する高さである。基準高さの設定は、例えば、ステレオカメラS4による測定が開始される前に行われる。
【0031】
高さ位置演算部31は、測定時のステレオカメラS4の高さ位置と、基準高さとに基づいて、ステレオカメラS4の移動高さ(基準高さからの高さ変化量)を算出する。ステレオカメラS4の移動高さは、基準高さ設定時のステレオカメラS4の高さ位置から、移動後のステレオカメラS4の高さ位置までの変化量に相当する。高さ位置演算部31は、ステレオカメラS4の移動高さを、ステレオカメラS4の移動高さに相当する視差データ関連情報に変換して出力してもよい。視差データ関連情報は、例えば、ステレオペア画像に写る範囲及びステレオペア画像に写っている物の大きさに関する情報である。
【0032】
コントローラ30は、高さ位置演算部31から出力されたステレオカメラS4の移動高さに相当する視差データ関連情報に基づいて、ステレオカメラS4から出力された第1測定値(視差データ)を第2測定値(視差データ)へ補正する。第2測定値は、基準高さに位置する仮想的なステレオカメラが取得した視差データ(ステレオペア画像)に相当する。その際、コントローラ30は、第1測定値(第1ステレオペア画像)が、第2測定値(第2ステレオペア画像)となるように焦点距離を調整(視差を調整)する。コントローラ30は、例えば、第1ステレオペア画像に写る範囲及び第1ステレオペア画像に写っている物の大きさを変化させて第2ステレオペア画像を生成する。
【0033】
その後、コントローラ30は、第2ステレオペア画像を距離演算部32へ出力する。
【0034】
距離演算部32は、第2ステレオペア画像に基づいて、基準高さから測定対象地表Jまでの距離情報を演算する。距離情報は、距離画像であってもよい。距離演算部32は、演算した距離情報を表示装置D3と、メモリ部33へ出力する。
【0035】
表示装置D3は、取得した複数の距離情報に基づいて地形の断面形状を生成して表示する。
【0036】
メモリ部33は、取得した距離情報を通信装置S5へ出力する。通信装置S5は、通信回線を利用して距離情報を管理装置100へ送信する。
【0037】
次に、図3を参照しながら、コントローラ30が実行する距離情報算出処理について説明する。図3は、距離情報算出処理のフローチャートである。この処理は所定の時間間隔で繰り返される。
【0038】
コントローラ30の高さ位置演算部31は、ステップ(以下、STと略す)1で、高さ設定スイッチD4から入力された基準高さを設定する信号に基づいて基準高さを設定する。
【0039】
その後、コントローラ30は、ST2でステレオカメラS4を用いた測定を開始する。
【0040】
コントローラ30は、高さ位置演算部31から出力されたステレオカメラS4の移動高さに相当する視差データ関連情報に基づいて、ステレオカメラS4から出力された第1測定値(第1ステレオペア画像)を第2測定値(第2ステレオペア画像)へ補正する(ST3)。
【0041】
図4を参照しながら、コントローラ30が実施するST3の処理について詳しく説明する。図4は、第2ステレオペア画像を生成する原理の説明図である。
【0042】
図4において、Hnは、第2ステレオペア画像に基づく高さを指す。Hは、基準高さである。Hn'は、第1ステレオペア画像に基づく高さを指す。ΔZは、ステレオカメラS4の移動高さである。したがって、第2ステレオペア画像に基づく高さHnは、第1ステレオペア画像に基づく高さHn'から移動高さΔZを差し引いて算出できる。移動高さΔZは、高さ位置演算部31で算出される。
【0043】
その後、コントローラ30は、第1ステレオペア画像が、第2ステレオペア画像となるように焦点距離を調整(視差を調整)する処理を行う(ST4)。
【0044】
次に図5を参照しながら、コントローラ30が実行するST4の処理を説明する。図5は、ステレオカメラS4の焦点距離(画角)を調整する手法の説明図である。図5は、ステレオペア画像のうちの一方である右視点画像を実線で示し、ステレオペア画像のうちの他方である左視点画像を破線で示している。
【0045】
(1)は、ステレオカメラS4が基準高さから撮像した際の物体Xの画像を示している。(1)が有する視差を例えば15画素とする。(2)は、ブーム4が上方へ移動した際にステレオカメラS4が撮像した物体Xの画像を示している。(2)が有する視差を例えば10画素とする。コントローラ30は、(3)に示すように(2)の物体Xが(1)の物体Xと同じ大きさになるように焦点距離(画角)を調整させて視差を5画素分増やす処理を行う。本実施例のコントローラ30は、ステレオカメラS4の高さの変化に応じて、画素数の補正を行う。すなわち、コントローラ30は、第1ステレオペア画像に写る範囲及び第1ステレオペア画像に写っている物の大きさを光学的に変化させる。但し、コントローラ30は、第1ステレオペア画像に写る範囲及び第1ステレオペア画像に写っている物の大きさをデジタル画像処理的に変化させてもよい。
【0046】
その後、コントローラ30の距離演算部32は、ST3で生成された第2測定値(第2ステレオペア画像)に基づいて、基準高さから測定対象地表Jまでの距離情報を演算する(ST5)。
【0047】
上述では、コントローラ30がステレオカメラS4の鉛直下方の距離情報を算出する処理を説明したが、コントローラ30は、アタッチメントの動作によって、ステレオカメラS4の姿勢が変化しても同様の処理を行う。
【0048】
その後、コントローラ30は、演算した距離情報を、表示装置D3やメモリ部33へ出力する。
【0049】
上述のように、本実施例のショベルは、ステレオカメラS4をアタッチメントとしてのブーム4に取り付けたので、深掘り掘削時においても掘削箇所の地形を測定できる。また、本実施例のショベルは、ステレオカメラS4の第1ステレオペア画像から、ステレオカメラS4の移動高さによる影響を取り除くように生成された第2ステレオペア画像に基づいて正確な距離情報を算出するので、測定時にブーム4の姿勢が変化しても掘削箇所の地形を正確に測定できる。
【0050】
次に、本発明の別の実施例に係るショベルについて説明する。図6は本発明の別の実施例に係るショベルの構成例を示す図である。
【0051】
図6に示すショベルの構成例は、コントローラ30が距離情報を演算する手順が異なる点で図2に示すショベルの構成例と異なるが、その他の点で共通する。そのため共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0052】
本実施例の距離演算部32には、ステレオカメラS4から第1測定値(第1ステレオペア画像)が入力される。距離演算部32は、入力された第1測定値(第1ステレオペア画像)に基づいて第1距離情報を演算する。本実施例では例えば第1ステレオペア画像が有する視差から第1距離情報を演算する。第1距離情報は、ステレオカメラS4の移動高さを含んだステレオカメラS4から測定対象地表Jまでの距離情報である。
【0053】
コントローラ30は、高さ位置演算部31から出力されたステレオカメラS4の移動高さに基づいて距離演算部32が演算した第1距離情報を、基準高さからの距離情報へ補正する。
【0054】
次に、図7を参照しながら、コントローラ30が実行する距離情報算出処理を説明する。図7は、距離情報算出処理のフローチャートである。この処理は所定の時間間隔で繰り返される。
【0055】
コントローラ30の高さ位置演算部31は、ST21で、高さ設定スイッチD4から入力された基準高さを設定する信号に基づいて基準高さを設定する。
【0056】
その後、コントローラ30は、ST22でステレオカメラS4を用いた測定を開始する。
【0057】
コントローラ30の距離演算部32は、ステレオカメラS4から出力された第1測定値(第1ステレオペア画像)に基づいて第1距離情報を算出する(ST23)。
【0058】
コントローラ30は、高さ位置演算部31から出力されたステレオカメラS4の移動高さに基づいて、距離演算部32が演算した第1距離情報を、基準高さからの距離情報へ補正する(ST24)。
【0059】
図8を参照しながら、コントローラ30が実施するST24の処理について詳しく説明する。図8は、第1距離情報から正確な距離情報を算出する原理の説明図である。
【0060】
図8において、Hnは、補正後の距離情報を指す。Hは、基準高さを指す。ΔZは、ステレオカメラS4の移動高さを指す。X2は、ステレオカメラS4が撮像する物体を指す。
【0061】
Rnは、基準高さにあるステレオカメラS4から物体X2までの距離を指す。Rn'は、移動したステレオカメラS4から物体X2までの距離を指す。Rn、Rn'は、ステレオカメラS4が出力する第1ステレオペア画像から導き出される。Hn'は、Rn'から算出される第1距離情報を指す。Lは、上部旋回体3からステレオカメラS4までの距離を指す。Lは、例えば、内部メモリ等に予め記憶されている。αは、ステレオカメラS4が基準高さにあるときのブーム4の角度を指す。α'は、ステレオカメラS4がΔZだけ移動したときのブーム4の角度を指す。α、α'は、例えば、ブーム角度センサS1によって検出される。θnは、ステレオカメラS4が基準高さにあるときのステレオカメラS4と物体X2とを結ぶ線分の、ステレオカメラS4の光軸(鉛直線)に対する角度を指す。θn'は、ステレオカメラS4がΔZだけ移動したときのステレオカメラS4と物体X2とを結ぶ線分の、ステレオカメラS4の光軸(鉛直線)に対する角度を指す。θn、θn'は、例えば、ステレオカメラS4の内部パラメータから算出される。ΔXは、ステレオカメラS4のX方向(図8の左右方向)の移動距離を指す。Wは、基準高さにあるステレオカメラS4の光軸とX2との距離を指す。
【0062】
具体的に距離情報Hnは、以下の式により算出できる。
【0063】
移動高さΔZは、式(1)により求められる。
【0064】
ΔZ=Lsinα'−Lsinα (1)
ΔXは、式(2)により求められる。
【0065】
ΔX=Lcosα'−Lcosα (2)
θnは、式(3)で表される。θn'は、式(3)'で表される。
【0066】
θn=sin−1(W/Rn) (3)
θn'=sin−1((W−ΔX)/Rn') (3)'
第1距離情報Hn'は、式(4)により求められる。
【0067】
Hn'=Rn'×cоsθn' (4)
距離情報Hnは、式(5)により求められる。
【0068】
Hn=Rn'×cоsθn'−ΔZ (5)
端的にいうと、距離情報Hnは、第1距離情報Hn'から移動高さΔZを差し引くことにより算出できる。
【0069】
上述では、コントローラ30がステレオカメラS4の鉛直下方の距離情報を算出する処理を説明したが、コントローラ30は、アタッチメントの動作によって、ステレオカメラS4の姿勢が変化しても同様の処理を行う。鉛直下方以外の複数方向においても同様の処理を行う。
【0070】
その後、コントローラ30は、演算した距離情報を、表示装置D3やメモリ部33へ出力する。
【0071】
上述のように、別の実施例のショベルにおいても、ステレオカメラS4の第1測定値(第1ステレオペア画像)からステレオカメラS4の移動高さによる影響を排除して正確な距離情報を算出するので、測定時にブーム4の姿勢が移動しても掘削箇所の地形を正確に測定できる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限
されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び
置換を加えることができる。
【0073】
本願は、2016年3月16日に出願した日本国特許出願2016−053007号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0074】
1・・・下部走行体 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 5・・・アーム 6・・・バケット 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 30・・・コントローラ 31・・・高さ位置演算部 32・・・距離演算部 33・・・メモリ部 S1・・・ブーム角度センサ S2・・・アーム角度センサ S3・・・バケット角度センサ S4・・・ステレオカメラ(土砂形状測定装置) S5・・・通信装置(通信手段) 100・・・管理装置 D1・・・入力装置 D2・・・音声出力装置 D3・・・表示装置(表示部) D4・・・高さ設定スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8