(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作レバーには、クランプ状態の位置にある当該操作レバーをロック/アンロックするスライドロック機構が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の手術用頭部固定装置。
前記スライドロック機構は、前記第1関節部または第2関節部に係合して前記操作レバーをロックするスライドロックと、ロック状態を解除する解除ボタンと、前記解除ボタンと前記スライドロックを連動させる連動クランクを有することを請求項5に記載の手術用頭部固定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による手術用頭部固定装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態による手術用頭部固定装置の全体を示す斜視図である。まず、
図1を参照しながら、手術用頭部固定装置の概要について説明する。
【0012】
図1において、参照番号10は、手術用頭部固定装置を示している。参照番号11は、患者を載せる手術台を示している。
【0013】
本実施形態による手術用頭部固定装置10は、大きく分けると、患者の頭部に取り付けられ、これを保持する頭部保持器12と、この頭部保持器12を支持する多関節リンクユニット14と、この多関節リンクユニット14を支持する支持シャフト15を有し、手術台11に取り付けられる支持ベースユニット16と、の各部から構成されている。
【0014】
ここで、多関節リンクユニット14の各部の動く方向を明確にするために、次のように方向を定義する。X軸は、手術台11の幅方向と平行な方向の軸であり、Y軸は、水平面上でX軸と直交する軸である。Z軸は、上下方向の軸である。
【0015】
本実施形態の多関節リンクユニット14では、リンク節の回動軸として、X軸と平行なX1軸、X軸2、X3軸、X4軸がある。X1軸は、回動軸とともに直線移動軸も兼ねている。また、X軸と直交するB1軸、B2軸、B3軸も、リンク節の回動軸である。
【0016】
次に、次に、手術用頭部固定装置10の具体的な構成について説明する。
まず、支持ベースユニット16について説明する。
多関節リンクユニット14を支持する支持シャフト15の両端部には、ブラケット18が取り付けられている。手術台11の左右端部には、穴19のあいた固定ブロック20が設けられ、固定ブロック20には脚21が取り付けられている。ブラケット18のピン21を穴19に挿入することで、支持シャフト15は、手術台11の端部で水平に支持されるようになっている。
【0017】
多関節リンクユニット14は、次のようなリンク節から構成されている。すなわち、多関節リンクユニット14は、第1のリンク形クランプ操作ユニット22と、第2のリンク形クランプ操作ユニット24と、これを連結する中間リンク部材25a、25bと、先端リンク26と、を主要なリンク節として構成されている。
【0018】
図1において、第1のリンク形クランプ操作ユニット22の基端部は、支持シャフト15に回動可能でかつ軸方向に移動可能に取り付けられている。したがって、第1のリンク形クランプ操作ユニット22は、X1軸回りを可動可能であるとともに、X1軸方向に移動可能である。
【0019】
第1のリンク形クランプ操作ユニット22の先端部には、中間リンク部材25a、25bの一端部が連結軸27を介して連結されている。これにより中間リンク部材25a、25bは、X1軸と平行なX2軸回りを回動可能になっている。また、第1のリンク形クランプ操作ユニット22は、その中心軸であるB1軸回りに回動可能な構造を有している。
【0020】
このように本実施形態の第1のリンク形クランプ操作ユニット22では、X1軸回りの回動及び移動、X2軸回りの回動、B1軸回りに回動が可能であるが、各軸について位置を固定するクランプ操作、クランプを解除するアンクランプ操作を操作レバー30の操作により、各軸同時に行うことができるクランプ機構を備えている。これについては後述する。
【0021】
次に、第2のリンク形クランプ操作ユニット24の一端部は、中間リンク部材25a、25bの先端部に連結軸31を介して回動自在に連結されており、第2のリンク形クランプ操作ユニット24は、X3軸回りを可動可能である。また、第2のリンク形クランプ操作ユニット24の他端部は、連結軸32を介して先端リンク26と連結されている。先端リンク26は、X4軸回りを可動可能である。さらに第2のリンク形クランプ操作ユニット24は、その中心軸であるB2軸回りに回動可能な構造を有している。
【0022】
このような第2のリンク形クランプ操作ユニット24では、X3軸回りの回動、X4軸回りの回動、B2軸回りに回動が可能であるが、各軸について位置を固定するクランプ操作、クランプを解除するアンクランプ操作を操作レバー34の操作により、各軸同時に行うことができるクランプ機構を第1リンク形クランプ操作ユニット22と同様に備えている。
【0023】
先端リンク26には、ホルダ35が連結されており、頭部保持器12は、ホルダ35によって保持されている。このホルダ35の場合、半円状の頭部保持器12は、ボルト37を締め込むことで固定されている。また、ホルダ35には、ホルダ35を回転させる軸(図示せず)が組み込まれており、ボルト36を締め込むことで固定されている。したがって、頭部保持器12は、X4軸に対して直角なB3軸回りに回動可能であり、ボルトなどによって固定することが可能になっている。
【0024】
次に、
図2は、支持シャフト15に取り付けられた第1のリンク形クランプ操作ユニット22を示す図である。なお、第2のリンク形クランプ操作ユニット24も第1のリンク形クランプ操作ユニット22と同じ構成を有しているので、以下、第1のリンク形クランプ操作ユニット22についてより詳細に構成を説明する。
この第1のリンク形クランプ操作ユニット22は、大きく分けると、軸穴41を有する第1関節部40と、軸穴43を有する第2関節部42と、クランプ機構を内蔵した中間胴部44と、クランプ機構の操作レバー30と、を有している。
【0025】
図2に示されるように、第1関節部40の軸穴41には、支持シャフト15が嵌合しており、第1のリンク形クランプ操作ユニット22の全体は、支持シャフト15の回り(X1軸回り)に回動が可能であるとともに、支持シャフト15の軸方向(X1軸方向)に移動可能である。
【0026】
第2関節部42の軸穴43には、
図2では示されていないが、
図1に示されるように、連結軸27が嵌合しており、この連結軸27を介して中間リンク部材25a、25bが連結されている。中間リンク部材25a、25bは、連結軸27の軸回り(X2軸回り)に回動可能である。
【0027】
第2関節部42は、第1関節部40に対して、中間胴部44を介してその軸回り(B1軸回り)に回動可能になっている。
【0028】
操作レバー30は、これらの各軸回り(X1軸、X2軸、B1軸)の回動およびX1軸方向の移動を可能にするアンクランプ操作および回動および移動後の位置を固定するクランプ操作をするのに用いられるレバーである。
【0029】
次に、第1のリンク形クランプ操作ユニット22のクランプ機構について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0030】
第1のリンク形クランプ操作ユニット22では、操作レバー30による操作により、クランプ状態、クランプ−レディ状態、アンクランプ状態の3つのモードに切り換えることができる。
【0031】
図3(A)乃至
図3(B)は、アンクランプ状態にある第1のリンク形クランプ操作ユニット22を示す図で、このうち、アンクランプ状態とは、すべての軸回り(X1軸、X2軸、B1軸)の回動およびX1軸方向の移動が可能になっている状態である。
【0032】
図4(A)乃至
図4(D)は、クランプ−レディ状態にある第1のリンク形クランプ操作ユニット22を示す図で、このうち
図4(A)は操作レバー30の位置を示す斜視図、
図4(B)は縦断面図、
図4(C)は
図4(B)におけるA−A断面を示す図、
図4(D)は、B1軸回りの回動をクランプするクランプ機構を示す斜視図である。クランプ−レディ状態というのは、第2関節部42のB1軸回りの回動のみがロックされた状態である。
【0033】
図5(A)、
図5(B)は、クランプ状態にある第1のリンク形クランプ操作ユニット22を示す図で、このうち
図5(A)は操作レバー30の位置を示す斜視図、
図5(B)は縦断面図である。クランプ状態とは、すべての軸回り(X1軸、X2軸、B1軸)の回動およびX1軸方向の移動ができないようにクランプされた状態である。
【0034】
第1のリンク形クランプ操作ユニット22において、第1関節部40は、軸穴41を形成する円筒部40aとスリット51が形成されているC字形の形状を有しており、同様に、第2関節部42も軸穴43を成形する円筒部42aとスリット52が形成されたC字形形状を有している。
【0035】
第1のリンク形クランプ操作ユニット22を軸方向に貫くように、引き込み軸54が組み込まれており、この引き込み軸54を操作レバー30で引張することで、円筒部40a、42aを撓ませてスリット51、52を狭め、第1関節部40、第2関節部42をクランプすることができるようになっている。
【0036】
引き込み軸54の先端部には、ナット受けワッシャ53、係止リング55がナット56を介して取り付けられている。この係止リング55は、第1関節部41に形成されている段部57に係合している。したがって、引き込み軸54の先端部は、スリット51の外側(第1のリンク形クランプ操作ユニット22の先端側)の位置で固定されている。
【0037】
引き込み軸54の基端部は、連結部材74を介してスリット52を超えて突出するようになっており、連結部材74は、クランク58を介して操作レバー30に連結されている。
【0038】
この場合、クランク58の一端部は、ピン59を介して回動可能に連結部材74に連結されている。クランク58の他端部は、ピン60を介して操作レバー30の基端部に形成された二叉連結部61に連結されている。操作レバー30の基端部は、第2関節部42と一体的なブロック64に軸62によって回動可能に取り付けられている。ピン59、60と軸62は、アンクランプの位置では、三角形の頂点をなす位置にあり、ピン59と軸62は、引き込み軸54の軸線上に位置するようになっている。
【0039】
操作レバー30を
図4(B)に示す位置から
図5(B)に示す位置まで回動すると、操作レバー30によって引き込み軸54は引張されることで、スリット51、52を狭め、第1関節部40、第2関節部42をクランプすることができる。
【0040】
次に、第1のリンク形クランプ操作ユニット22の中間胴部44では、第1関節部40に対して、第2関節部42が相対的に軸回り(B1軸回り)に回動しないように固定するクランプ機構が以下のように設けられている。
【0041】
図3(B)において、中間胴部44は、外筒部70と、内筒部72と、引き込み軸54と、を含んでいる。外筒部70は、第1関節部40を接合する継手71を有し、内筒部72は第2関節部42を接合する継手73を有している。引き込み軸54は、内筒部72および外筒部70を同軸に貫通している。
【0042】
図3(C)に示されるように、内筒部72には、軸心に関して対称に複数の溝78が半径方向に貫通するように形成されている。それぞれ溝78には、クランプ板80が挿入されている。
【0043】
引き込み軸54の外周部には、軸心に関して対称な位置に複数のカム溝82が形成されている。この場合、カム溝82は、底面が周方向に次第に深く傾斜していくカム溝になっている。クランプ板80はばね81によってカム溝82に押し付けられている。なお、83は、ばね押さえ用のリングである。
【0044】
引き込み軸54の基端は連結部材74を介して操作レバー30と連結されている。引き込み軸54は、
図3(A)において、操作レバー30を矢印方向に回すと、回転するようになっており、引き込み軸54のカム溝82によってクランプ板80が半径方向に押し出される。
【0045】
図3(C)では、アンクランプ位置にある引き込み軸54の回転位置が示されている。このとき、クランプ板80の先端は、内筒部72の外周面に並んだ位置にある。外筒部70の内周面には、軸方向に伸びる多数の溝83が所定のピッチで形成されている。溝83には、クランプ板80の先端が係合可能になっている。
【0046】
図4(C)では、クランプ位置にある引き込み軸54の回転位置が示されている。
【0047】
図3(A)から
図4(A)に示す位置まで、操作レバー30を回すと、引き込み軸54が回り、クランプ板80を押し出し、その先端を溝83に係合させる。
図4(D)には、押し出されたクランプ板80の様子が示されている。これによって、外筒部70および第1関節部40が回らないようにクランプすることができる。クランプ板80と溝83との係合状態は、次のクランプ状態でも維持される。
【0048】
このようなクランプ−レディ状態では、第1関節部40および第2関節部42では、クランプは効いていない。そこで、操作レバー30を
図4(B)に示す位置から
図5(B)に示す位置まで回動させると、第1関節部40および第2関節部42を次のようにクランプすることができる。
【0049】
図4(B)において、曲線100は、クランク58がピン59を中心に回動したときのピン60の動く軌跡を示している。曲線102は、操作レバー30が軸62を中心に回動したときのピン60の動く軌跡を示している。このようにクランク58の回動中心に対して操作レバー30の回動中心がオフセットしているため、クランク58が引き込み軸54と同一直線状に位置するまで回動させると、引き込み軸54が引き込み量ΔPで引っ張れることになる。一方、引き込み軸54の尾端部は、係止リング55を介して段部57に係止して動けないので、引き込み軸54を引き込む力は、スリット51、52の隙間を狭めて、第1関節部40、第2関節部42の各円筒部40a、42bを縮径変形させる。
図5(B)に示されるように、第1関節部40では、支持シャフト15から動かないようにクランプされ、第2関節部42では連結軸27にクランプされる。
【0050】
このようなクランプ状態の位置にある操作レバー30をロック/アンロックするために、操作レバー30には、
図6、
図7に示されるようなスライドロック84が設けられている。ここで、
図6(A)は、スライドロック84が操作レバー30をロックしている状態を示す図で、
図6(B)は、操作レバー30がアンロックされた状態を示す図である。
図7は、スライドロック84によるロック/アンロック機構を分解して示す図である。
【0051】
スライドロック84は、操作レバー30にスライド可能に両側で一対設けられている。操作レバー30の基端部の内部には、バネ受け部材86が収納されており、スライドロック84は、バネ受け部材86の両端にねじ87によって固着されている。また、操作レバー30の基端部の中には、コイルバネ88が収納され、このコイルバネ88の弾性力によって、スライドロック84はロック方向に押し出される方向に常時付勢されている。第2関節部42には、操作レバー30がクランプ位置まで閉じたときに、スライドロック84の先端が係合する切欠き溝90が形成されている。
【0052】
本実施形態では、スライドロック84によるロック状態を解錠するために、次のような解除ボタン92が設けられている。解除ボタン92の端部には操作レバー30側のガイド穴93に挿通される円筒ピース94がねじ95、95を介して固定されている。解除ボタン91は、ガイド穴93を案内に移動可能である。
【0053】
解除ボタン92とスライドロック84とは、操作レバー30の両側に一対設けられている連動クランク96によって連結されている。連動クランク96は、揺動可能にクランク軸97によって支持されており、スライドロック84を解除ボタン92と連動させるための部品である。この場合、連動クランク96の一端部は、スライドロック84の溝98に係合し、他端部は解除ボタン92に当接するようになっている。なお、
図7において、99は、連動クランク96を覆うカバー部材を示している。
【0054】
図8は、以上のような解除ボタン92とスライドロック84とを連動クランク96の連結状態を示す図である。
図8において、解除ボタン92を矢印方向に押し込むと、スライドロック84はロック位置から後退し、ロック状態がアンロックされる。
【0055】
ここで、
図9は、操作レバー30の回動に伴うスライドロック84の動作を示す図である。
図9(A)から
図9(C)に示されるように、操作レバー30が閉じていくと、完全クランプ位置まで閉じた時点(
図9(C))で、スライドロック84の先端部が切欠き溝90に係合する。これと同時に、上述したように、第1関節部40および第2関節部42はクランプされた状態になる。その後も、スライドロック84は、切欠き溝60から外れないようにコイルバネ88の弾性力で保持されるので、操作レバー30は、開かないようにロックされる。このように操作レバー30はクランプの完了と同時にロックされる。なお、ロックを解除するには、解除ボタン92を押し込み、スライドロック84を引き下げることで切欠き溝90から外せばよい。
【0056】
そして、第1関節部40および第2関節部42をアンクランプするには、ロックを解除した後、操作レバー30を開く方向に回すだけでよい。
図5(B)に示されるクランプ位置から、
図4(B)に示されるクランプ−レディ位置まで、操作レバー30を回すと、引き込み軸58には引き込む力がなくなるため、スリット51、52の隙間が広がり、第1関節部40、第2関節部42の各円筒部40a、42aが弾性力によって元に復元する。これにより、第1関節部40と第2関節部42が同時にアンクランプされる。
【0057】
さらに、
図3(A)に示される位置まで、操作レバー30をわずかに回すと、
図3(C)に示されるように、クランプ板80が引っ込み、クランプ板80によるクランプ状態が解除される。このように、操作レバー30の簡単な操作により、アンクランプからクランプ−レディを経て完全クランプにすることができ、逆に、完全クランプからクランプレディを経てアンクランプにすることができる。
【0058】
図1に示されるように、本実施形態の手術用頭部固定装置10では、多関節リンクユニット14に、第1のリンク形クランプ操作ユニット22に加えて、第2のリンク形クランプ操作ユニット24が設けられているが、第2リンク形ロッククランプ操作ユニット24も第1のリンク形クランプ操作ユニット22と同様に構成されているので、同一の構成要素には同一の参照番号を付してその説明は省略する。
【0059】
以上説明した本実施形態による手術用頭部固定装置によれば、次のような効果が得られる。
頭部保持器12を支持する多関節リンクユニット14では、多関節リンク機構のリンク節のクランプ機能をそれぞれ有する第1のリンク形クランプ操作ユニット22と、第2のリンク形クランプ操作ユニット24を主体にリンク節を構成しており、第1のリンク形クランプ操作ユニット22は、X1軸、X2軸、B1軸回りの回動およびX1軸方向の移動を可能するリンクを構成し、第2のリンク形クランプ操作ユニット24も、X3軸、X4軸、B2軸回りの回動を可能するリンクを構成している。
【0060】
このように、多関節リンクユニット14に多くの運動の軸を付加できるため、頭部保持器12の動きの自由度、柔軟度が増し、患者の手術、処置に必要な最適な位置に頭部保持器12を動かすことが容易である。
【0061】
しかも、第1のリンク形クランプ操作ユニット22と第2のリンク形クランプ操作ユニット24は、それぞれ操作レバー30、34を回すだけという簡単な操作により、一度に複数軸についてクランプすることが可能であるので、最終的に患者の頭部を固定するまでの操作が簡易になり、頭部保持器12を迅速に最適な位置に固定することが可能になる。
【0062】
以上、本発明に係る手術用頭部固定装置について、リンク形クランプ操作ユニットを2つ用いて多関節リンクを構成した好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されない。リンク形クランプ操作ユニットは、1つあるいは2以上を連結して、多関節リンクを構成することも可能である。